JP7388604B1 - ヒートシール剤、ヒートシール性フィルム、及び包装材 - Google Patents

ヒートシール剤、ヒートシール性フィルム、及び包装材 Download PDF

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Abstract

変性ポリオレフィンと、有機溶剤とを有し、前記変性ポリオレフィンが、マレイン酸変性ポリオレフィンであり、前記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.2~0.5であり、前記変性ポリオレフィンの分子量分布が3.5以上であるヒートシール剤、前記記載のヒートシール剤を基材上に設けてなるヒートシール性フィルム、及び当該ヒートシール性フィルムを用いる包装材。前記変性ポリオレフィンの重量平均分子量が100,000以上であることが好ましい。

Description

本発明はヒートシール剤及びそれを用いたヒートシール性フィルム、包装材に関する。
従来、食品包装や医療用包装において、アルミニウム箔、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン等のプラスチックフィルムにヒートシール剤をコーティングしたヒートシール性フィルムが利用されている。
特にポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィンは、機械特性に優れ軽量であり、包装材として多用途に用いられている。しかし、ポリオレフィンフィルムは非極性であり、印刷や塗工がし辛いという難点がある。
このようなポリオレフィンフィルムに接着するヒートシール剤として、従来塩素化ポリオレフィンを主成分とするヒートシール剤が使用されてきたが、脱塩酸の問題があり、近年では主成分として酸変性ポリオレフィンが使用されている。
近年では、内容物に高温をかけられない冷蔵食品、例えばチーズやソーセージ等の個包装材にヒートシール性フィルムが使用されるようになり、従来のヒートシール温度よりも低温の、例えば80℃での低温ヒートシールが可能なヒートシール剤が望まれている。さらに循環型社会構築への対応のためリサイクル性の向上も求められ、これらの観点から、現在ヒートシール剤には、低温ヒートシールが可能で、包装材に多用されるポリオレフィンと同素材のものが求められている。
耐ブロッキング性を改良するために、多価アルコールをポリウレタン樹脂の原料とした例も知られている(例えば特許文献2 段落0029参照)。しかしながら、使用原料の重量平均分子量によっては、耐ブロッキング性や滑り性が確保できない場合があった。
これに対し本発明者らは、ヒートシール性樹脂成分と、脂肪族ジオール成分とを有し、上記脂肪族ジオール成分が、2級水酸基を有する炭素原子数10以上の脂肪族ジオールを含有する80℃の低温ヒートシールが可能なヒートシール剤を見出している。しかしながらこのヒートシール剤には、リサイクル性を向上させるという観点のヒートシール剤ではなかった。
特開2014-004799号公報 特開2019-203040号公報
本発明の課題は、低温ヒートシール性に優れ低塗布量でも安定したヒートシール強度を示し、リサイクルが可能なヒートシール剤、及びそれを用いたヒートシール性フィルムを提供することにある。
本発明者らは、リサイクルが可能なポリオレフィン樹脂をヒートシール性樹脂として採用し、且つ、使用するポリオレフィン樹脂の組成や分子量分布がシール性の温度と関係することを見出し上記課題を解決した。
ヒートシール性樹脂の分子量分布は小さいほど結晶化度を低くなる傾向にあり、低温でシールすることが可能となるがヒートシール強度は低下する方向にもある。本発明者らは、特定の分子量分布を有するポリオレフィン樹脂がこれらを両立できることを見出した。
即ち本発明は、変性ポリオレフィンと、有機溶剤とを有し、上記変性ポリオレフィンが、マレイン酸変性ポリオレフィンであり、上記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.2~0.5であり、上記変性ポリオレフィンの分子量分布が3.5以上であるヒートシール剤を提供する。
また本発明は、上記記載のヒートシール剤を基材上に設けてなるヒートシール性フィルムを提供する。
また本発明は、上記記載のヒートシール性フィルムを用いる包装材料を提供する。
本発明のヒートシール剤を使用することで、低温ヒートシール性に優れ、かつ低塗布量でも安定したヒートシール強度を示すヒートシール剤、及びそれを用いて、リサイクル可能なヒートシール性フィルムを得ることができる。
(ヒートシール剤)
本発明のヒートシール剤は、変性ポリオレフィンと、有機溶剤とを有し、上記変性ポリオレフィンが、マレイン酸変性ポリオレフィンであり、上記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.2~0.5であり、上記変性ポリオレフィンの分子量分布が3.5以上であることを特徴とする。
本発明のヒートシール剤が低温シール性及び低塗布量でも安定したヒートシール性を発揮できる理由は定かではないが、一般にヒートシール強度は塗布量に依存するが、本発明で使用する変性ポリオレフィンは分子量分布がある程度広いため、高分子量領域の樹脂比率が高くなっている。これによりオレフィン樹脂の凝集力が高くなると推定され、安定したヒートシール性を発揮できるのではと推定している。
(変性ポリオレフィン)
本発明で使用する変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸等のマレイン酸骨格でグラフト変性されているマレイン酸変性ポリオレフィンである。また、上記変性ポリオレフィンにおいて、ポリプロピレンのIRピークに対するマレイン酸のIRピークの吸収比(IR吸収比)が0.2~0.5である。
上記変性ポリオレフィンの示差走査型熱量計(DSC)による融点は50~100℃であることが好ましく、55~80℃であることがより好ましく、60~70℃であることがさらに好ましい。融点が当該範囲であると、低温でのヒートシール性に優れたヒートシール剤となり、また溶剤溶解性及び溶液の安定性を両立することができる。特に融点が60~70℃の範囲であると100℃以下のシール温度でも非常に良好なシール性を発現することができる。
上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は100,000以上であることが好ましく、100,000~500,000であることがより好ましく、100,000~300,000であることが更に好ましい。一般的に、高分子量であるほど結晶化度が高くなり、低温シール性に影響する。本発明のヒートシール剤は比較的高分子量であっても、優れた低温シール性を発揮することができ、また比較的高分子量であるため、接着力が良好となる。さらに、重量平均分子量が当該範囲であれば、有機溶剤へ溶解した時の溶液安定性が良好となる。
上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、例えば、ポリオレフィンの重量平均分子量や変性成分の使用量により調整することができる。
上記変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンにマレイン酸骨格をグラフト重合することで得ることができる。当該ポリオレフィンとしては、例えば、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒、或いはメタロセン触媒を用いてエチレン、プロピレン又はα-オレフィンを共重合して得られるものが挙げられる。具体的には、ホモポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、複数の樹脂を混合して用いても良い。
上記ポリオレフィンの組成は特に限定されないが、プロピレン成分が60mol%以上のものが好ましく、80mol%以上のものがより好ましい。60mol%以上のものを用いた場合、ポリプロピレン系フィルムに対する接着性が良好となる。
上記マレイン酸骨格を有する化合物としては、マレイン酸、無水マレイン酸が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。変性ポリオレフィン中のポリプロピレンに対するマレイン酸比率(すなわち、マレイン酸/ポリプロピレン比)は、0.2~0.5が好ましく、0.3~0.4がさらに好ましい。当該マレイン酸比率がこの範囲であれば、十分な接着性及び低温シール性を得ることができる。
当該マレイン酸比率は、当該変性ポリオレフィンのIR分析によって得ることができ、IRスペクトルの1710cm-1、1740cm-1及び1780cm-1の吸収の合計をマレイン酸由来、1460cm-1の吸収をポリプロピレン由来の吸収とし、(マレイン酸由来の吸収)/(ポリプロピレン由来の吸収)を計算することにより算出できる。
本願においては、(マレイン酸由来の吸収)/(ポリプロピレン由来の吸収)をIR吸収比と称している。
リサイクル性を可能とするためには、ポリオレフィンの重量%が多い方が好ましく、この観点からマレイン酸骨格のグラフト重量%が低い方がより好ましい。上記変性ポリオレフィン中での無水マレイン酸のグラフト重量%は、0.5~20重量%が好ましく、さらに好ましくは2~15重量%である。グラフト重量%がこの範囲であれば、基材に対する接着性と有機溶剤への溶解性を両立することができ、またマレイン酸未反応物も少なくなる。
なお欧州の包装用フィルム業界における循環型経済実現のためのガイドライン設計「The Circular Economy for Flexible Packaging(CEFLEX)」によれば、非ポリオレフィン量が5%以下であることが望ましいと言われている。
上記変性ポリオレフィンは、上記マレイン酸骨格を有する化合物以外の化合物を併用してもよい。当該マレイン酸骨格を有する化合物と併用することのできる化合物としては、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはこれらの誘導体である、不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等が挙げられる。これらの化合物は、単独でも複数併用することもできる。
上記変性ポリオレフィンは、ヒートシール剤全体に対して1~50重量%、好ましくは5~40重量%、より好ましくは10~30重量%である。変性ポリオレフィンの量が当該範囲であると、十分なヒートシール性と塗工性を両立することができる。
上記変性ポリオレフィンは、公知の方法で合成でき、ラジカル重合開始剤を使用することもできる。例えば、ポリオレフィン及び無水マレイン酸の混合物を有機溶剤に加熱溶解し、ラジカル重合開始剤を添加したのち、変性ポリオレフィン溶液を得た後に溶剤を揮発させる溶液法や、ニーダー、押出機等の混練機を使用して、ポリオレフィン及び無水マレイン酸の混合物を、加熱下で溶融混練反応させて変性ポリオレフィン系樹脂を得る方法が挙げられる。ポリオレフィン、無水マレイン酸及びラジカル開始剤は一括添加しても、逐次添加してもよい。
(有機溶剤)
本発明において有機溶剤は、ヒートシール剤を希釈し塗工しやすくするために添加される。具体的には溶解性の高いトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-プロピル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を使用してもよい。近年の溶剤規制の観点からは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-プロピル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が好ましい有機溶剤として挙げられる。これらの中でも溶解性と塗工適性の点から酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン、酢酸n-プロピルが好ましく用いられ、特にメチルシクロヘキサン、酢酸エチル、及び酢酸n-プロピルが好ましい。これらの溶剤を用いることにより、溶液の安定性と塗工適性が良好となる。
有機溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。特に、メチルシクロヘキサンと酢酸エチル、メチルシクロヘキサンと酢酸n-プロピル、あるいはメチルシクロヘキサンと酢酸エチルと酢酸n-プロピルとを併用することが好ましい。メチルシクロヘキサンと酢酸エチルあるいは酢酸n-プロピルを併用する場合、メチルシクロヘキサン/(酢酸エチル及び又は酢酸n-プロピル)=50/50~90/10であることが好ましい。
有機溶剤の使用量は所望される粘度によるが、概ねヒートシール剤全体に対して20~80質量%の範囲で使用することができる。
(その他の成分)
本発明のヒートシール剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、適宜添加剤を使用することができる。例えば、滑剤、固形可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ポリスチレン系、ポリメタクリル酸エステル系の有機ポリマー微粒子、シリカ(二酸化ケイ素)等の無機微粒子などの公知のアンチブロッキング剤等を用いることができる。
(滑剤)
本発明のヒートシール剤は、さらに滑剤を含有することも好ましい。
滑剤としては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイドなどの脂肪酸アマイド系ワックス、ライスワックス、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ラノリンワックス、蜜蝋、鯨油、牛脂等の動植物油系ワックス、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、PTFEワックス、直鎖状高級アルコール等の石油系ワックス、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンの側鎖のメチル基の少なくとも1つがメチル基以外の有機基(カルビノール基、ポリエーテル基、炭素原子数が2以上のアルキル基等)で置換された変性シリコーン等のシリコーン等が挙げられる。中でも、エルカ酸アマイドが好ましい。
滑剤の添加量は、滑性を付与でき他の特性とのバランスがよくなることから、ヒートシール剤全体に対し0.1~2重量%が好ましい。また、変性ポリオレフィンに対して2~5重量%であることが、ヒートシール剤を塗工したヒートシール性フィルムの取扱いが容易になるため好ましい。
(無機微粒子)
本発明のヒートシール剤は、さらに無機微粒子を含有することも好ましい。
無機微粒子としては、シリカが好ましく、中でも合成非晶質シリカが好ましい粒子径のものが得られ易く好ましい。シリカの形状としては、特に制限されず、例えば、単粒子からなる球状シリカ、複数の1次粒子から2次粒子や3次粒子を形成する不定形シリカなどであってよい。中でも球状シリカが好ましい。
球状シリカとしては、例えば、アドマテックス社製のアドマファインSO-C4、SO-C5、SO-E4、デンカ社製のUFP-30、SFP-30M、日本触媒社製のシーホスターKEシリーズ、富士シリシア社製のSYLOSPHEREシリーズ等が挙げられる。
球状シリカの平均粒径は0.1μm以上が好ましい、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上である。
不定形シリカとしては、例えば、EVONIK社製のAEROSIL200、R972、旭化成ワッカーシリコーン社製のHDK H15、H18、トクヤマ社製のMT-10、DM20S等が挙げられる。不定形シリカの平均粒径としては50nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下、特に好ましくは20nm以下である。
(ヒートシール性フィルム)
本発明のヒートシール性フィルムは本発明のヒートシール剤を基材上に設けてなる。本発明のヒートシール剤はそのまま後述の基材上に塗工しても良いし、後述の基材との間に一層以上のプライマー層を設けても良い。使用されるプライマー種については特に制限はない。
また塗工方法は、公知の方法、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ロールコーター、ディップコーター等により行うことができる。また、塗工は目的に応じてフィルムの片面のみもしくは両面に施すことができる。更には、オフライン(フィルム成形後に塗工)、インライン(フィルム成形時に塗工)の何れの方法もとりうる。
乾燥条件については特に制限はない。ヒートシール剤の塗膜が完全に乾燥する温度であればよく、通常は熱風乾燥機などが用いられ、乾燥温度は50~180℃(塗工方法による)、乾燥時間は1秒~5分程度である。また必要に応じて、後処理として、乾燥後にコロナ放電処理などを施しても良い。
ヒートシール剤の塗工量についても特に制限はないが、固形分に換算して0.5g/m以上が好ましく、より好ましくは1.0g/m以上が好ましい。本発明のヒートシール剤は塗工量が少量であっても充分なヒートシール性が得られる。一方塗工量が多量である場合も、問題なくヒートシール可能であるが、経済性の観点から塗工量は少量のほうが好ましい。
(基材)
本発明で使用する基材は、特に限定されることなく通常包装材で使用されるような公知のプラスチックフィルムを使用することができる。あるいは透明性を必要としない用途の場合はアルミ箔やアルミ蒸着層等の金属膜を有する基材や紙等を、単独あるいはプラスチックフィルムと組み合わせて使用することもできる。
プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のフィルムとして公知の樹脂を原料、あるいはこれらを複数組み合わせたフィルムを使用することができる。
リサイクルの観点からは、ポリオレフィン樹脂を主成分とするフィルムを使用することが好ましい。オレフィン系樹脂としては具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、α-オレフィン重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、環状オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂;オレフィン樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸で変性した変性オレフィン系樹脂が挙げられる。
また、フィルム基材として、バイオマス由来成分を含有する材料で形成させたフィルムを使用するのも好ましい。バイオマスフィルムは各社から販売されているほか、例えば、一般財団法人日本有機資源協会に記載のバイオマス認定商品一覧に挙げられるようなシートを使用することができる。
具体的によく知られているフィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールを原料としたものである。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
あるいは、ISO16620またはASTMD6866で規定されたバイオマスプラスチック度で区別されたバイオマス原料を使用したものも流通している。大気中では1012個に1個の割合で放射性炭素14Cが存在し、この割合は大気中の二酸化炭素でも変わらないので、この二酸化炭素を光合成で固定化した植物の中でも、この割合は変わらない。このため、植物由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cが含まれる。これに対し、化石燃料由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cがほとんど含まれない。そこで、加速器質量分析器で樹脂中の放射性炭素14Cの濃度を測定することにより、樹脂中の植物由来樹脂の含有割合、すなわちバイオマスプラスチック度を求めることができる。ISO16620またはASTM D6866で規定されたバイオマスプラスチック度が80%以上、好ましくは90%以上であるバイオマスプラスチックである植物由来の低密度ポリエチレンとしては、例えば、Braskem社製の商品名「SBC818」「SPB608」「SBF0323HC」「STN7006」「SEB853」「SPB681」等が挙げられ、これらを原料として使用したフィルムを好適に使用することができる。
例えば、従来の石油系原料を使用したポリオレフィン系フィルムの代替として、バイオマス由来のエチレングリコールを原料とするポリエチレン系樹脂を含有するバイオマスポリエチレン系フィルム、バイオマスポリエチレン-ポリプロピレン系フィルム等のバイオマスポリオレフィン系フィルムも知られている。
ポリエチレン系樹脂は、原料の一部に上記バイオマス由来のエチレングリコールを使用する以外は特に限定されず、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンとα-オレフィンとの共重合体(エチレン単位を90質量%以上含有するエチレン-α-オレフィン共重合体)などが挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を構成するα-オレフィンは特に限定されず、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンなどの炭素原子数4乃至8のα-オレフィンが挙げられる。低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などの公知のポリエチレン樹脂を用いることができる。
その中でも、フィルム同士が擦れても、穴開きや破けなどの損傷を一段と生じにくくする観点から、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、又はエチレンと1-オクテンとの共重合体)が好ましく、密度が0.910乃至0.925g/cm3である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
バイオマスフィルムは、複数のバイオマスフィルムを積層させた積層体であってもよいし、従来の石油系フィルムとバイオマスフィルムとの積層体であってもよい。
上記フィルムは、何等かの表面処理、例えばコロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的な処理や、化学薬品を用いた酸化処理等の化学的な処理、その他処理が施されたものであってもよい。
上記フィルムは、上述した樹脂を押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の、従来公知の製膜化方法により製造することができる。未延伸フィルムであってもよいし、フィルム(1)の強度、寸法安定性、耐熱性の観点から、テンター方式、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸したものであってもよい。
上記フィルムは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。具体的には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離型性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、エラストマー、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。添加剤の添加量は、他の性能やリサイクル性に影響を与えない範囲で調整する。
上記フィルムの膜厚は特に限定されず、成型性や透明性の観点から、0.1~300μmの範囲で適宜選択すればよい。好ましくは0.3~100μmの範囲である。0.1μmを下回ると強度が不足し、300μmを超えると剛性が高くなり過ぎ、加工が困難になる恐れがある。
上記フィルムは、必要に応じて、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対するバリア性を備える目的でバリア層を設けてもよい。具体的には、ポリ塩化ビニリデンコート(K-コート)等のコーティング層、アルミニウム等の金属蒸着層、シリカやアルミナ等の無機蒸着層、などを挙げることができる。
上記フィルムは、必要に応じて、印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティング層を設けてもよい。
リサイクルの観点から、できるだけ層構成は簡素であることが好ましいが、包装材の流通性の観点から、包装材の内容物や製品の説明や名称を表示するための印刷は必要であることが多い。このための印刷インキとして、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ等のリキッドインキが使用されることが多い。
(印刷層)
印刷層は、文字、図形、記号、その他所望の絵柄等が、リキッドインキ等を用いて印刷された層である。積層体が設けられる位置は任意である。本明細書においてリキッドインキはグラビア印刷またはフレキソ印刷に用いられる溶剤型のインキの総称である。樹脂、着色剤、溶剤を必須の成分として含むものであってもよいし、樹脂と溶剤を含み、着色剤を実質的に含まない、いわゆるクリアインキであってもよい。
リキッドインキに用いられる樹脂は特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン‐マレイン酸樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用できる。好ましくはポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種、あるいは2種以上である。
リキッドインキに用いられる着色剤としては、酸化チタン、弁柄、アンチモンレッド、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの無機顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料当の有機顔料、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料が挙げられる。
リキッドインキに用いられる有機溶剤は、芳香族炭化水素系有機溶剤を含まないことが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶剤、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素系有機溶剤などが挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
(ヒートシール性フィルムの構成)
リサイクルの観点から、本発明のヒートシール性フィルムは、例えば次のような構成が好ましく挙げられるが、本発明のヒートシール性フィルムは、この構成に限ることはなく、複数の基材と印刷層、接着剤層等を組み合わせた積層フィルムに本発明のヒートシール剤を塗工した構成が挙げられる。
基材/ヒートシール剤
印刷層/基材/ヒートシール剤
(包装材)
本発明の包装材は、本発明のヒートシール性フィルムのシール層同士を重ねてヒートシールすることにより得ることができる。また、本発明の本発明のヒートシール性フィルムと、他のヒートシール可能な樹脂層とを重ね合わせてヒートシールしてもよい。他のヒートシール可能な樹脂層としては、比較的機械強度の弱い低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンビニルアルコール(EVA)等が挙げられる。また、LDPE、EVA等のフィルムと、比較的引き裂き性の良い延伸フィルム、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等とを貼り合わせたラミネートフィルムとヒートシールして包装材としてもよい。
例えば当該積層体2枚を、所望する包装材の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒートシールして袋状にした後、ヒートシールをしていない1辺から内容物を充填しヒートシールして密封することで包装材として用いることができる。さらには自動包装機によりロール状のフィルムを円筒形に端部をシールした後、上下をシールすることにより包装材を形成することも可能である。
本発明の包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を向上するため、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き開始部を形成することが好ましい。
本発明の包装材に、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして本発明の包装材を使用した製品が製造される。充填される内容物として、例えば食品としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、液体調味料、レトルトカレー、ペットフードなどの食品類が挙げられる。
また非食品としては、タバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、化粧水や乳液等の化粧品、真空断熱材、電池等、様々な包装材料としても使用され得る。
(リサイクルプラスチック)
本発明のヒートシール性フィルムを使用した包装材は、リサイクル性に優れる。ここで、フィルム包装材をリサイクルプラスチックとする加工方法の一例を示す。もちろん本発明においてはこの限りではなく各種公知のリサイクルプラスチック加工方法を適用することが可能である。
フィルム包装材を、破砕機等で破砕する。破砕機は公知の粉砕機を使用すればよく特に限定はない。
粉砕した後のフィルム片は、溶融混練、溶媒キャストブレンド、ラテックスブレンド、ポリマーコンプレックス等で物理的にブレンドする。特に溶融混練法が一般的である。混練するための装置としては、タンブラ、ヘンシェルミキサ、ロータリーミキサ、スーパーミキサ、リボンタンブラ、Vブレンダ等が挙げられる。このような混練装置によって溶融混練した上で、ペレット化する。溶融混練ペレット化には単軸、または多軸押出機を用いるのが一般的で、フィルム片のまま投入しても、加熱または非加熱で圧縮減容処理した後に投入してもよい。更にこれら押出機以外に、バンバリーミキサ、ローラ、コ・ニーダ、ブラストミル、プラベンダーブラウトグラフ等を用いることもでき、これらは回分的、または連続的に運転される。また、溶融混練はせずに、成形用樹脂として使用し成形機加熱筒内で溶融混練する方法でもよい。
以下、本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
(ヒートシール剤の調整方法)
表1に示す配合量で混合しヒートシール剤とした。なお表中、空欄は未配合を表し数字は部を表す。
Figure 0007388604000001
表1中、略語等は次の通りである。
HS剤:ヒートシール剤
樹脂:マレイン酸変性ポリオレフィンAは前記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.31、前記変性ポリオレフィンの分子量分布が4.7
樹脂:マレイン酸変性ポリオレフィンBは前記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.35、前記変性ポリオレフィンの分子量分布が6.8
樹脂:ウレタン樹脂
滑剤:エルカ酸アミド
滑剤:PEワックス
不定形シリカ:平均粒径12nmの不定形シリカ
球状シリカ:平均粒径4.5μmの球状シリカ
有機溶剤X:メチルシクロヘキサンと酢酸エチルの混合溶剤
有機溶剤Y:メチルエチルケトンと酢酸エチルの混合溶剤
有機溶剤Z:メチルシクロヘキサンと酢酸n-プロピルの混合溶剤
(実施例1~9及び比較例1~2)
2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、パイレンフィルム-OT P2161、20μm)に表1に記載のヒートシール剤をワイヤーバーにて塗工し、70℃で30秒乾燥させることによって、ヒートシール剤の塗工量(固形分換算)約1.0g/m、3.0g/m、5.0g/mのヒートシール性フィルムを得た。
(評価方法)
(ヒートシール強度)
熱傾斜式ヒートシールテスター(テスター産業(株)製)を用い、シール温度80℃、100℃、120℃で圧力2kg/cm 、時間1秒で塗工面同士をヒートシールした。サンプル幅を15mmとし、引張り速度200mm/minでT型ピール強度を測定し、これをヒートシール強度とした。1.0N /15mm以上あれば実用レベルとみなせる。
(耐ブロッキング性)
4cm角にカッティングしたテストピースの塗工面/塗工面(以下、F/F)または塗工面/非塗工面(以下、F/B)を重ね合せ、40℃ において、荷重5kgをかけ、5時間静置した。室温に戻した後、テストピース剥離時の塗膜の状態、基材フィルムの破れ方などを目視で5段階評価した。
5:易剥離。
4:剥離可能、剥離時にパリパリと音がする。
3:剥離可能、剥離後の塗膜に跡残りあり。
2:剥離困難、基材破壊なし。
1:剥離困難、基材破壊あり。
結果を表2~表4に示す。なお表2はヒートシール剤の塗布量が1g/mのとき、表2は塗布量が3g/mのとき、表4は塗布量が5g/mの時の結果である。
Figure 0007388604000002
Figure 0007388604000003
Figure 0007388604000004
この結果、本発明のヒートシール剤は、80℃のヒートシール温度であってもヒートシール強度に優れることが明らかである。

Claims (5)

  1. 変性ポリオレフィンと、有機溶剤とを有し、前記変性ポリオレフィンが、マレイン酸変性ポリオレフィンであり、前記変性ポリオレフィンにおけるポリプロピレンに対するマレイン酸のIR吸収比が0.2~0.5であり、前記変性ポリオレフィンの分子量分布が3.5以上であり、滑剤を変性ポリオレフィンに対して2~5重量%含有することを特徴とするヒートシール剤。
  2. 前記変性ポリオレフィンの重量平均分子量が100,000以上である請求項1に記載のヒートシール剤。
  3. 前記有機溶剤が、メチルシクロヘキサンと酢酸エチル及び又は酢酸n-プロピルとの混合溶剤である請求項1に記載のヒートシール剤。
  4. 請求項1~のいずれかに記載のヒートシール剤を基材上に設けてなることを特徴とするヒートシール性フィルム。
  5. 請求項に記載のヒートシール性フィルムを用いることを特徴とする包装材。
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