JP6926861B2 - R−t−b系永久磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、R−T−B系永久磁石に関する。
永久磁石を用いたモータにおける永久磁石としては、高い磁気特性、特に高い保磁力が得られることから希土類焼結磁石が盛んに用いられている。特に、R−T−B系焼結磁石が盛んに用いられている。
モータの高性能化に伴う要求から、R−T−B系焼結磁石にはさらなる改良が求められている。例えば残留磁束密度Brの向上、保磁力HcJの向上、強度の向上、耐食性の向上、渦電流の抑制のための高電気抵抗化等が挙げられる。中でも高耐熱用途への対応から保磁力HcJ向上に対する期待は大きい。
例えば、R−T−B系焼結磁石の室温における保磁力HcJを高める手法として、主相を構成する結晶粒子(以下、主相粒子ともいう)であるRFe14B化合物において、R=Ndの一部を、Dy、Tbといった重希土類元素で置換する手法が知られている。Ndの一部を重希土類元素で置換することで、RFe14B化合物の結晶磁気異方性が高まり、結果としてNd−Fe−B系焼結磁石の保磁力HcJを充分に高めることができる。例えば、特許文献1には、NdFe14B化合物のNdの一部をDyまたはTbに置換することで保磁力HcJを高める発明が記載されている。
特開2004−103659号公報
多種多様な要求に応えるR−T−B系焼結磁石を得るためには、上記のR=Ndの一部をDy、Tbといった重希土類元素で置換する手法以外の手法でも、保磁力HcJをさらに向上させられるようにすることが重要である。保磁力HcJをさらに向上させるためには、主相粒子であるR14B化合物の組成や粒径等を最適化するだけではなく、粒界に存在する粒界相の最適化も重要であることを本発明者らは見出した。そして、本発明者らは、粒界に存在する粒界相の種類や各種粒界相の面積比率等に着目して種々の検討を行った。その結果、特定の種類の粒界相を含む場合において、残留磁束密度Br、保磁力HcJ、強度、粒界相の電気抵抗、および焼結安定性が優れたR−T−B系永久磁石を得ることが出来ることを見出した。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、さらなる保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上が実現されているとともに、強度、粒界相の電気抵抗または焼結安定性が良好なR−T−B系永久磁石を提供することを目的とする。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、R14B化合物からなる主相粒子および粒界を含むR−T−B系永久磁石であって、
RはNdを必須とする1種以上の希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoであり、Bはホウ素であり、
さらにX,ZおよびMを含有し、
XはTi,V,Zr,Nb,HfおよびTaから選択される1種以上であり、Zは、CおよびNから選択される1種以上であり、MはGaを必須とし、さらにAl,Si,Ge,Cu,BiおよびSnから選択される1種以上からなり、
前記粒界が面心立方構造からなるXZ相を含むことを特徴とする。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、上記の特徴を有することで、さらなる保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上が実現されているとともに、強度、粒界相の電気抵抗または焼結安定性が良好である。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、R,T,B,MおよびXの各元素の含有量の合計を100at%として、
Rの含有量が13.3at%以上15.5at%以下、
Mの含有量が0.5at%以上5.0at%以下、
Bの含有量が4.0at%以上5.5at%以下、
Xの含有量が0.05at%以上0.5at%以下、
Tが実質的な残部であり、
さらに以下の式を全て満たしていてもよい。
4.5<T/R<7.0,14<T/B<18,2.5<R/B<3.0
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記XZ相の最大面積が16μm以下であってもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記XZ相の最大面積が12μm以下であってもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記XZ相全体に含まれるZrの存在比率がX全体を100at%として50at%以上であり、前記XZ相全体に含まれるCの存在比率がZ全体を100at%として50at%以上であってもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記R−T−B系焼結磁石の一の断面の一領域における前記XZ相の面積比率が0.1〜2%であってもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記粒界がLaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相を含んでもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記結晶相がR,M,BおよびXを含み、前記結晶相において
Rの含有量が27.0at%以上32.0at%以下、
Mの含有量が3.0at%以上8.0at%以下、
Bの含有量が0at%以上0.40at%以下、
Xの含有量が0at%以上0.45at%以下であってもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記粒界が、R−O−C−N相を含んでいてもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記粒界が、体心立方格子相を含んでいてもよい。
本発明に係るR−T−B系永久磁石は、前記粒界が、LaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相、Rリッチ相、R−O−C−N相および体心立方格子相を含み、
前記R−T−B系永久磁石の一の断面における前記結晶相の面積をS1、前記Rリッチ相の面積をS2、前記R−O−C−N相の面積をS3、前記体心立方格子相の面積をS4、前記XZ相の面積をS5とした場合に、
S1>S2、
S1>S3、
S1>S4、かつ、
S1>S5、
であってもよい。
実施例1のR−T−B系永久磁石の一の断面におけるSEM画像である。 図1Aの概略図である。 実施例2のR−T−B系永久磁石の一の断面におけるSEM画像である。 実施例3のR−T−B系永久磁石の一の断面におけるSEM画像である。 実施例1のR−T−B系永久磁石の一の断面におけるTEM画像である。 図4Aにおける主相粒子と粒界との境界を明確にしたTEM画像である。 実験例1におけるT/BとHcJとの関係を表すグラフである。 実験例2におけるS5とHcJとの関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、R14B化合物からなる主相粒子および複数の主相粒子の間に存在する粒界を含む。
Rは1種以上の希土類元素である。RはNdを必須とする1種以上の希土類元素であってよい。また、低コスト化および高残留磁束密度化を考慮する場合には、Rとして重希土類元素を実質的に含有しないことが好ましい。Rとして重希土類元素を実質的に含有しないとは、R全体に対する重希土類元素の含有量が1at%以下であることをいう。TはFeまたはFeおよびCoである。Bはホウ素である。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の断面をSEMの反射電子画像(以下、単にSEM画像と呼ぶことがある)で観察すると、例えば図1Aに示すように主相粒子および粒界に存在する複数種の粒界相が見える。そして、複数種の粒界相は、それぞれ組成に応じた色の濃淡や結晶系に応じた形状を持つ。
EPMAを用いて各粒界相を点分析し組成を明らかにすることで、それらがどのような粒界相であるかを特定することができる。
さらに各粒界相の結晶構造をTEMにより確認することで、粒界相を明確に特定することができる。例えば図1Aに示されたSEM画像について、各粒界相を特定し概略図としたものが図1Bである。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、主相粒子10および粒界からなり、粒界にXZ相5を含む。XZ相5は、面心立方構造を有する結晶相である。粒界にXZ相5を含むことにより、残留磁束密度を低下させずに保磁力を向上させることができる。さらに強度、粒界相の電気抵抗、または焼結安定性を良好にすることができる。
XZ相5は、図1Aでは濃い黒色部として観察される。また、形状が非常に小さな多角形となっている。後述する他の粒界相と比べて面積が小さいため、この相の組成分析はTEMで行うことが好ましい。XZ相5の最大面積は好ましくは16μm以下、より好ましくは12μm以下である。ここで、最大面積とは、各試料の1つの研磨断面を観察したSEM画像において確認されたXZ相の中で、最大の大きさを持つものの面積を指す。このとき、XZ相を複数の視野において最低20個以上観察し、大きさを比較する。
例えば、本実施形態の範囲内であるが図1Aとは異なるR−T−B系永久磁石についてSEM観察を行った図2および図3では、XZ相5の最大面積は1μm程度である。
XZ相5は、面心立方晶格子(NaCl構造)を有する結晶相である。具体的には、Xは、Ti、V、Zr、Nb、Hf、またはTaから選択される1種以上である。また、XはZr、TiまたはNbから選択される1種以上であることが好ましく、Zrであることが特に好ましい。XとしてZrを用いることがTiまたはNbを用いることより好ましいのは、添加量に対する残留磁化Brの低下が小さいためである。Zは、C、N、またはCおよびNであり、Cであることが好ましい。XZ相5は、例えばZrC、TiC、ZrN等からなる。XZ相5に含まれるZrの存在比率がX全体を100at%として50at%以上であり、前記XZ相全体に含まれるCの存在比率がZ全体を100at%として50at%以上であることが好ましい。
XZ相5が粒界に存在する場合にR−T−B系永久磁石の保磁力が改善するメカニズムは明らかではない。XZ相5が粒界に存在する場合にはCおよび/またはNが化合物として主に粒界に捕捉されるため、Cおよび/またはNが主相粒子に含まれることによる保磁力低下が抑制され、保磁力が改善されると考えられる。また、XZ相5を粒界に存在させることで粒界の電気抵抗を高くすることができ、渦電流の影響を抑制させていると考えられる。さらに、XZ相5は焼結時の主相粒子10の粒成長を抑制する効果もあると考えられる。そして、主相粒子10の粒成長を抑制することでもR−T−B系永久磁石の保磁力を向上させていると考えられる。
主相粒子10の平均粒径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。特に5μm以下に制御することで保磁力が向上する。2μm以上に制御することで後述する製造工程における粉砕時間を短くできる。それに伴い、生産性を向上させることができる。また、主相粒子10の平均粒径は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の1つの研磨断面におけるXZ相5の面積比率(以下、S5と記載することがある)には特に制限はないが、0.01%以上、2%以下であることが好ましく、0.1%以上、2%以下であることがより好ましい。0.1%以上とすることで上記の効果が発揮されやすくなり、2%以下とすることで主相粒子10の面積比率を十分に確保し、残留磁束密度Brを高く維持できる。S5は、さらに好ましくは0.2%以上、1%以下とする。なお、S5が0.01%未満である場合には、XZ相5を含まないとみなす。
さらに、XZ相5は粒界のみに存在しているのではなく、主相粒子10内にも非常に微細な大きさで存在している。例えば、図1とは異なる箇所についてTEM観察を行った画像を図4Aに示す。また、図4Aの主相粒子と粒界との境界を明確にした図が図4Bである。図4Aに記載されているように、粒界中のXZ相5aの他、主相粒子10中にもXZ相5bが存在する。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は、さらに粒界にLaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相(以下、単に結晶構造相と呼ぶことがある)を含むことができる。図1Bでは結晶構造相1として図示されている。これにより、保磁力を向上させ、電気抵抗、耐食性および曲げ強度を良好にすることができる。
なお、結晶構造相1は、図1Aにおいて濃い灰色となっている部分である。結晶構造相1の結晶構造がLaCo11Ga型であることは例えば、TEMを用いて確認することができる。
結晶構造相1の組成には特に制限はない。例えばR、TおよびMからなるR−T−M系組成である。Mは、Gaを必須とし、さらにAl、Si、Ge、Cu、BiおよびSnから選択される1種以上である。Gaを必須とすることで、保磁力が良好になる傾向にある。
本実施形態に係る粒界は、図1Aおよび図1Bに示すように、XZ相5、結晶構造相1の他にも、例えばRリッチ相6、R−O−C−N相3、および体心立方格子相4が含まれていてもよい。
R−O−C−N相3は、R/(O+C+N)が原子数比でおよそ1である組成比を持つ化合物相で、O、C、およびNは不定比である。
R−O−C−N相3は、図1AではRリッチ相6などの粒界相と白黒濃淡の大きな差が無いが、略円形または略楕円形の特徴的な形状を有している。
体心立方格子相4とは、結晶構造格子が体心立方格子である粒界相である。具体的には、主にR−T−M系化合物からなる。結晶構造相1と構成元素は類似しているが、結晶構造が異なる。体心立方格子相4はTの含有量が10at%以上50at%以下であり、R,TおよびMを少なくとも含有する。
体心立方格子相4は、図1Aでは白黒濃淡がRリッチ相6とLaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相1との中間となっている。体心立方格子相4の結晶構造が体心立方格子であることは、例えば、TEMを用いて確認することができる。
Rリッチ相6は、Rの含有量が50at%以上である粒界相である。
ここで、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の10箇所以上の異なる視野(総観察視野における主相粒子の数が200個以上)でSEM観察し、各粒界相の面積を算出する。合計視野における主相粒子および粒界の合計面積を100%とし、各粒界相の面積の合計との比率を面積割合とする。LaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相(結晶構造相)の面積割合をS1(%)、Rリッチ相の面積割合をS2(%)、R−O−C−N相の面積割合をS3(%)、体心立方格子相の面積割合をS4(%)、XZ相の面積割合をS5(%)とする。これらの関係が、S1>S2、S1>S3、S1>S4かつS1>S5であってよい。結晶構造相1の面積割合S1が相対的に大きいことにより本願発明の効果がより大きくなる。
以下、SEMおよびEPMAによる測定条件について、より詳細に述べる。
観測対象の研磨断面において結果的に200個程度の主相粒子が観察できるように倍率と視野を設定し撮影するが、各粒界相のサイズや分散状態などに応じて、適宜適切に決定すればよい。研磨断面は主相粒子の配向軸に平行であっても、配向軸に直交していても、あるいは配向軸と任意の角度であってよい。この断面を、SEM-EDSおよびEPMAを用いて観察する。これにより、各元素の分布状態が明らかになり、主相粒子および各粒界相の分布状態が明らかになる。さらに、面分析を行った視野に含まれる各種粒界相を複数個EPMAで点分析し、各粒界相の組成を求める。例えば、結晶構造相1の組成を求める場合には、少なくとも5個、好ましくは10個以上の結晶構造相1の組成を測定し、平均する。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石において、R、T、B、MおよびXの各元素の含有量の合計を100at%として、
Rの含有量が13.3at%以上15.5at%以下、
Mの含有量が0.5at%以上5.0at%以下、
Bの含有量が4.0at%以上5.5at%以下、
Xの含有量が0.05at%以上0.5at%以下、
Tが実質的な残部であり、さらに
4.5<T/R<7.0
14<T/B<18
2.5<R/B<3.0
を全て満たすことが好ましい。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石が上記の組成を有することが好ましいのは、結晶構造相1を粒界相に生成しやすくするためである。
R−T−B系永久磁石の組成は上記の範囲外であってもよく、R−T−B系永久磁石の組成が同一であって粒界相にXZ相5を含む場合には粒界相にXZ相5を含まない場合と比較して保磁力HcJが向上する。
Tが実質的に残部であるとは、R−T−B系永久磁石において、O、CおよびNを除いた全原子量に対するR,B,M,TおよびX以外の元素の割合が1at%以下であることを指す。また、ここでのR,B,M,XおよびT以外の元素とは、主に原料または製造工程起因の不可避的不純物のことであり、例えば、Ca,Mn,PおよびS等が含まれる。
Rの含有量は13.3at%以上15.5at%以下であることが好ましい。Rは主相粒子であるR14B化合物の形成に不可欠な元素である。Rの含有量が13.3at%未満であると保磁力HcJおよび/または角形比Hk/HcJが低下することがある。Rの含有量が15.5at%超であると残留磁束密度Brが低下することがある。また、Rの含有量は、好ましくは13.3at%以上、15.0at%以下である。
Mの含有量は0.5at%以上5.0at%以下であることが好ましい。Mの含有量が0.5at%未満であると保磁力HcJが低下することがある。Mの含有量が5.0at%超であると残留磁束密度Brが低下することがある。また、Mの含有量は、好ましくは0.5at%以上3.0at%以下である。また、Gaの含有量は好ましくは0.19at%以上2.50at%以下である。
Bの含有量は4.5at%以上5.5at%以下であることが好ましい。Bは主相粒子を構成するR14B化合物の形成に不可欠な元素である。Bの含有量が4.5at%未満であると保磁力が低下する場合がある。Bの含有量が5.5at%超であると保磁力HcJが低下する場合がある。特にBの含有量が大きすぎるとXがZよりもBに対して結合しやすくXB相が生成しやすいため、XZ相が粒界相に生成しにくくなる。
4.5<T/R<7.0および14<T/B<18を満たすことが好ましい。T/Rおよび/またはT/Bが上記の数値範囲を満たさないと保磁力および/または曲げ強度が低下する場合がある。
さらに、2.5<R/B<3.0を満たすことが好ましい。R/Bが上記の数値範囲を満たさない場合には、耐食性が低下する場合がある。また、焼結安定性が低下する場合がある。
また、本実施形態では、粒界相には、XとBとが主要元素として含まれる相(例えばZrB相)は実質的に存在しないことが好ましい。粒界相におけるXとBとが主要元素として含まれる相のR−T−B系永久磁石の断面全体に対する面積割合が0.5%以下であることが好ましい。
Xの含有量は0.05at%以上0.5at%以下であることが好ましい。Xの含有量が0.05at%未満であると保磁力HcJが低下する場合がある。Xの含有量が0.5at%以下であると残留磁束密度Brが低下する場合がある。また、Xの含有量は好ましくは0.05at%以上、0.4at%以下である。
TはFeのみでもよく、FeおよびCoを含んでいてもよい。主にR−T−B系永久磁石の保磁力HcJを向上させる観点からは、Coの含有量を0at%とすること、すなわちCoを含有させないことが特に好ましい。主にR−T−B系永久磁石の耐食性を向上させる観点からは、Coの含有量を0.50at%以上3.5at%以下とすることが好ましく、1.0at%以上3.0at%以下とすることが特に好ましい。R−T−B系永久磁石はCoの含有量を増加させることで保磁力HcJが低下する傾向がある一方、耐食性が向上する傾向がある。また、Coの含有量を3.5at%より大きくしてもCoの含有量が3.5at%の場合と比較して耐食性が大きく変化しなくなる一方、コストが増大する。
本実施形態に係る希土類永久磁石におけるO、CおよびNの含有量には特に制限はない。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石において、粒界に含まれる結晶構造相1の組成には特に制限はなく、LaCo11Ga型結晶構造を維持する範囲であれば良い。例えば、結晶構造相1に含まれる全原子量に対する各元素の含有量が、それぞれ以下の通りであってもよい。
R:27.0at%以上32.0at%以下
M:3.0at%以上8.0at%以下
B:0at%以上0.40at%以下
X:0at%以上0.45at%以下
上記の元素のうち、BおよびXは、結晶構造相1における含有量が少ないほど好ましく、結晶構造相1に含まれなくてもよい。
また、結晶構造相1に含まれるR,M,BおよびX以外の元素は、通常は実質的にTのみである。すなわち、Tは結晶構造相1における実質的な残部である。なお、Tの含有量が実質的に残部であるとは、結晶構造相1に含まれる全原子量に対するR,M,B,XおよびT以外の元素の割合が2at%以下であることを指す。
また、結晶構造相1におけるGaの含有量に対するAlの含有量(Al/Ga)は0.35以下であることが好ましい。Al/Gaが0.35を超えると耐食性が低下する場合がある。さらに、結晶構造相における電気抵抗が主相粒子における電気抵抗と比較して低下しやすくなる。また、結晶構造相1におけるCuの含有量に対するGaの含有量(Cu/Ga)は0.09以下であることが好ましい。Cu/Gaが0.09未満であると耐食性が低下する場合がある。
さらに、磁石全体におけるNdの含有量に対するPrの含有量を原子数比でA1(=Pr/Nd)、磁石全体におけるFeの含有量に対するCoの含有量を原子数比でA2(=Co/Fe)、結晶構造相1におけるNdの含有量に対するPrの含有量を原子数比でB1(=Pr/Nd)、結晶構造相1におけるFeの含有量に対するCoの含有量を原子数比でB2(=Co/Fe)、とする場合において、0.85<B1/A1<1.25であることが好ましい。B1/A1が1.25以上であると耐食性が低下する場合がある。また、B2/A2>0.9であることが好ましい。B2/A2が0.9以下であると耐食性が低下する場合がある。
以下、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法の一例を説明する。実施形態に係るR−T−B系永久磁石の製造方法は下記の製造方法に特定されないが、下記の製造方法とすることにより、本発明の目的を達成しやすくなる。
本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は通常の粉末冶金法により製造することができる。粉末冶金法は、原料合金を調製する調製工程、原料合金を粉砕して原料微粉末得る粉砕工程、原料微粉末を成形して成形体を作製する成形工程、成形体を焼成して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に時効処理を施す熱処理工程を有する。
調製工程は、本実施形態に係る希土類磁石に含まれる各元素を有する原料合金を調製する工程である。まず、所定の元素を有する原料金属を準備する。これらにストリップキャスティング法等を用い、溶解、凝固させることによって原料合金を調製することができる。原料金属としては、例えば、希土類金属や希土類合金、純鉄、純コバルト、フェロボロン、またはこれらの合金が挙げられる。これらの原料金属を用い、所望の組成を有する希土類磁石が得られるような原料合金を調製する。
また、原料合金に対して、組織・組成均一化を目的として熱処理(溶体化処理)を施しても良い。原料合金全体に含まれるCは500ppm以下、好ましくは300ppm以下である。原料合金に含有されるC量が多すぎると、最終的に得られるR−T−B系永久磁石の保磁力が低下する。原料合金に含有されるC量が少なすぎると原料合金が高価となる。
なお、この溶体化処理により、主相粒子に含まれていたX(例えばZr)が主相粒子外(粒界)に排出されることがある。以後の粉砕工程〜熱処理工程の間でXとZ(例えばCおよび/またはN)とが結合してXZ相が生成する。また、Bが多い場合には、XとBとが優先的に結合しやすくなるため、XとZとが結合しにくくなる。
粉砕工程は、調製工程で得られた原料合金を粉砕して原料粉末を得る工程である。この工程は、粗粉砕工程及び微粉砕工程の2段階で行うことが好ましいが、1段階としても良い。粗粉砕工程は、例えばスタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。水素を吸蔵させた後に粉砕を行う水素吸蔵粉砕を行うこともできる。粗粉砕工程においては、原料合金の粒径が数百μmから数mm程度となるまで粉砕を行う。
微粉砕工程は、粗粉砕工程で得られた粉末に粉砕助剤を添加し、混合した後に粉砕して、平均粒径が数μm程度の原料粉末を調製する工程である。原料粉末の平均粒径は、焼結後の粒径を勘案して設定すればよい。微粉砕は、例えば、ジェットミルを用いて行うことができる。また、粉砕助剤の種類には特に制限はないが、例えば、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等を用いることができる。
成形工程は、原料粉末を磁場中で成形して成形体を作製する工程である。具体的には、原料粉末を電磁石中に配置された金型内に充填した後、電磁石により磁場を印加して原料粉末の結晶軸を配向させながら、原料粉末を加圧することにより成形を行う。この磁場中成形は、例えば、1000kA/m以上1600kA/m以下の磁場を印加し、30MPa以上300MPa以下程度の圧力で加圧すればよい。
焼結工程は、成形体を焼結して焼結体を得る工程である。磁場中成形後、成形体を真空もしくは不活性ガス雰囲気中で焼結し、焼結体を得ることができる。焼結条件は、成形体の組成、原料粉末の粉砕方法、粒度等の条件に応じて適宜設定することができる。例えば、焼結温度を1000℃以上1100℃以下で、焼結温度を1時間以上36時間以下に設定すればよい。
なお、上述した合金溶体化処理の処理時間が短く、焼結工程での燒結時間が短いほどXZ相の最大面積が小さくなる傾向にある。また、Xの含有量が大きいほどXZ相の最大面積が大きくなる傾向にある。
ここで、XZ相の最大面積が小さいほど焼結安定性に優れ、残留磁束密度および曲げ強度が向上する傾向にある。理由としては、XZ相が大きいほど磁石内での分散が悪化し、XZ相による粒成長抑制効果が低くなるためであると考えられる。また、粗大なXZ相は焼結時の主相粒子の配向を阻害し、R−T−B系永久磁石の残留磁束密度を低下させると考えられる。また、上記したXZ相のR−T−B系永久磁石内での分散の悪化によりR−T−B系永久磁石の曲げ強度が低下すると考えられる。
また、最終的に得られるR−T−B系永久磁石に含まれるXZ相の元となる化合物XZを粉砕工程にて別添加してもよい。
熱処理工程は、焼結体を時効処理する工程である。この工程により、最終的に各粒界相、特に結晶構造相の面積割合や組成が決定される。しかしながら、各粒界相の面積割合や組成は熱処理工程のみで制御されるのではなく、上記した焼結工程の諸条件及び原料微粉末の状況との兼ね合いで制御される。従って、熱処理条件と粒界相の構造との関係を勘案しながら、熱処理温度(時効処理温度)および熱処理時間(時効処理時間)を設定すればよい。熱処理は500℃〜900℃の温度範囲で行えばよいが、700℃以上900℃以下での熱処理(第1時効処理)を行った後に、450℃以上600℃以下での熱処理(第2時効処理)を行うというように2段階に分けて行ってもよい。
なお、第2時効処理後の冷却速度には特に制限はないが、80℃/min以下であることが好ましく、40℃/min以下であることがさらに好ましく、10℃/min以下であることが最も好ましい。第2時効処理後の冷却速度を低下させることにより、結晶構造相の生成量が増加し、保磁力が向上するためである。
以上の方法により、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石(R−T−B系焼結磁石)が得られるが、R−T−B系永久磁石の製造方法は上記に限定されず、適宜変更してよい。
本実施形態に係る希土類永久磁石におけるO、CおよびNの含有量は製造条件により制御できる。Oの含有量は酸素濃度を変化させることにより制御可能である。例えば粉砕工程から焼結工程までを100ppm以下の低酸素雰囲気で実施した場合、希土類永久磁石に含有されるOは1000ppm未満とすることができる。また、1000ppm〜10000ppmの酸素雰囲気で実施した場合には、2000ppm〜5000ppm程度となる。
C量は、例えば原料金属中の含有量、粉砕時および/または成形時に助剤として添加する有機物の種類および量に依存する。本実施形態では、例えば150ppm〜1500ppm程度に制御することが好ましい。
N量は、例えば微粉砕工程にジェットミルを用いる場合には、用いるNガス気流の量、濃度、または微粉砕時間などを変化させることで制御可能である。本実施形態では、例えば、100ppm〜700ppm程度に制御することが好ましい。
また、本実施形態に係るR−T−B系永久磁石は上記のように焼結を行うことにより製造されるR−T−B系焼結磁石に限定されない。例えば、焼結の代わりに熱間成型および熱間加工を行い製造されるR−T−B系永久磁石であってもよい。
室温にて原料粉末を成型することにより得られる冷間成型体に対して、加熱しながら加圧する熱間成型を行うと、冷間成型体に残存する気孔が消滅し、焼結によらずに緻密化させることができる。さらに、熱間成型により得られた成型体に対して熱間加工として熱間押出し加工を行うことにより、所望の形状を有し、かつ、磁気異方性を有するR−T−B系永久磁石を得ることができる。
次に、本発明を具体的な実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実験例1)
R−T−B系焼結磁石の組成が表1で表される各試料の組成となるように原料金属を準備した。原料金属を用いてストリップキャスティング法を行うことで、原料合金を作製した。なお、表1に示した各元素の含有量は、R、T、XおよびMについては蛍光X線分析により、BについてはICP発光分析により測定した。
作製した原料合金に対し、Ar雰囲気下で、表2に示す処理温度および処理時間で溶体化処理を行った。なお、比較例1については溶体化処理を行わなかった。
次に、原料合金に水素粉砕処理を施して合金粗粉末を得た。水素粉砕処理では、原料合金に水素を吸蔵させた後にAr雰囲気下で600℃、1時間の脱水素を行い、その後、Ar雰囲気下で室温まで冷却した。
得られた合金粗粉末に粉砕助剤としてオレイン酸アミドを0.10重量%添加し、混合した後に、ジェットミルを用いて微粉砕を行った。得られた原料粉末の平均粒径D50は3.9μm以上4.1μm以下であった。
得られた原料粉末を金型に充填した。その後、低酸素雰囲気下において、配向磁場1200kA/m、成形圧力50MPaの条件で成形を行って、成形体を得た。
その後、成形体を、真空中で焼結した後、急冷して焼結体を得た。得られた焼結体に対し、二段階の熱処理(時効処理)を行った。焼結温度は1030℃以上1090℃以下、焼結時間は4時間以上36時間以下、第1時効温度は800℃以上900℃以下、第1時効時間は1時間以上2時間以下、第2時効温度は51℃以上550℃以下、第2時効時間は1時間以上2時間以下とした。具体的な条件は表2に示す。
以上の方法で得られた各試料のR−T−B系焼結磁石につき、B−Hトレーサーを用いて、残留磁束密度Brおよび保磁力HcJをそれぞれ測定した。また、各試料のR−T−B系焼結磁石全体の組成を、R、T、ZrおよびMについては蛍光X線分析により、BについてはICP発光分析により測定した。組成を表1に磁気特性を表2に示す。
また、各実施例および比較例について、異常粒成長を起こさずに高密度かつ高磁気特性が維持できる温度範囲(焼結温度範囲レンジ)を評価した。具体的には、1030℃以上1090℃以下の温度範囲において、5℃間隔で設定した複数の焼結温度で処理した磁石サンプルの破断面をSEM観察し、平均粒径の10倍以上の粒径を持つ異常粒の有無を確認した。異常粒の個数割合が0.5個/cm以下である温度では異常粒成長を起こさずに高密度かつ高磁気特性が維持できているとした。そして、異常粒の個数割合が0.5個/cm以下である温度範囲を焼結温度範囲レンジとした。焼結温度範囲レンジの大きさは量産上20℃以上あることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
さらに、それぞれの試料について、研磨断面をSEMおよびEPMAにより観察し、粒界に含まれる各粒界相を同定するとともに、研磨断面における各粒界相の面積比率を算出した。具体的には、SEMの反射電子画像における濃淡から、複数の粒界相に分類した。そして、分類された各粒界相についてEPMAマッピングの結果から得られた組成と照らし合わせることで、各粒界相がどのような相であるかを同定特定した。そして、各粒界相の面積割合を算出した。なお、本実施例においては、研磨断面の異なる場所のSEM画像を10枚観察した。各粒界相の面積割合は、観察した各SEM画像における各粒界相の面積割合を平均して算出した。
例えば、図1Aは実施例1のSEM画像の一つである。当該SEM画像における主相粒子および各粒界相を特定して模式図としたものが図1Bである。
そして、結晶構造相1の面積割合をS1(%)、Rリッチ相6の面積割合をS2(%)、R−O−C−N相3の面積割合をS3(%)、体心立方格子相4の面積割合をS4(%)、XZ相5の面積割合をS5(%)とした。なお、本実施例においては、研磨断面の異なる場所のSEM画像を10枚観察した。各粒界相の面積割合は、観察した各SEM画像における各粒界相の面積割合を平均して算出した。結果を表2に示す。なお、本実験例におけるXZ相5はZrC相で、N等を含む相も含めた。
図2は実施例2のSEM画像、図3は実施例3のSEM画像である。図2および図3には実験例1および後述する実験例2の中では比較的大きめのXZ相5が粒界に存在する場合のSEM画像が記載されているが、その最大面積は1μm程度であった。
また、各試料の研磨断面についてTEMを用いて観察した。実施例1のTEM画像を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aにおける主相粒子と粒界との境界を明確にした図面が図4Bである。図4Bより、実施例1には粒界相中にXZ相5aが存在し、かつ、主相粒子中にもXZ相5bが存在していることが確認できる。なお、全ての実施例において、主相粒子中にもXZ相5bが存在していることが確認できる。
結晶構造相の平均組成はEPMAにて測定した。同一サンプルに対しEPMAの複数視野観察範囲内で10点の組成を測定して平均組成を算出した。結果を表3に示す。
さらに、上記のR−T−B系焼結磁石について、磁石内の電気抵抗の観察を行った。具体的には、SPMのSSRMモードを使用した。装置は(株)日立ハイテクサイエンス製のAFM5000およびAFM5300Eを用いた。本実施例では、探針にはBドープダイヤモンドコートタイプを使用した。また、SSRMモードを使用する際には、探針のダメージ抑制および研磨屑の影響抑制のため、SISモードで行った。
まず、焼結磁石のサイズを調整して観察サンプルを作製した。観察サンプルのサイズは、観察面約10mm角、厚み5mmとした。
次に、観察面となる焼結磁石表面(磁場配向方向に垂直な面)を鏡面研磨した。具体的には、まず、研磨紙♯180、研磨紙♯400、研磨紙♯800および研磨紙♯1200を順番に使用し乾式で粗研磨した。その後、6μmのダイヤモンド砥粒を付着させた研磨布および丸本ストルアス製のDP−ルーブリカント青を用いて研磨した。さらに、0.5μmのダイヤモンド砥粒を付着させた研磨布および前記DP−ルーブリカント青を用いて研磨した。最後に、0.06μmのAl粒子をアルコールに分散させた溶液と研磨布を用いて仕上げを行った。鏡面研磨後の観察サンプルはすぐに真空パックし、観察直前に大気中に取り出した。
次に、観察サンプルを試料ホルダーにセットした。本実施例では、観察サンプルと試料ホルダーとを直接接触させることで観察サンプルと試料ホルダーとを導通させた。
次に、観察サンプルの観察面をSSRMモードで観察した。観察は真空中で行った。表面酸化層を除去して明瞭な観察像を取得するため、同一箇所を複数回走査した。そして、電気抵抗の大小によって色が異なる二次元の電気抵抗像を取得した。バイアス電圧は0.1Vで測定した。
また、複数回走査したので、観察面の硬さに応じた高低差が生じた。当該高低差によって色が異なる二次元の高低差像を取得した。
電気抵抗像および高低差像を参考にして、目視にて主相粒子と粒界との境界を定めた。そして、測定線を設定し、当該測定線上における電気抵抗の変化を観察した。本実施例では、SEM画像を参考にして、結晶構造相(LaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相)の電気抵抗と主相粒子の電気抵抗とを比較できるように測定線を設定した。
結晶構造相における電気抵抗が主相粒子の電気抵抗の1倍程度以上となっている場合、焼結磁石全体の渦電流の抑制効果があり、減磁が発生しにくいことを、別途確認している。また、結晶構造相における電気抵抗が主相粒子の電気抵抗の5倍を超えることが最も好ましい。そのため本実施例の表4および表9では、結晶構造相における電気抵抗が主相粒子の電気抵抗の5倍を超えている場合を○、1倍程度から5倍を超えていない場合を△とした。なお、比較例1では結晶構造相が存在しなかった。比較例2では5倍程度であり5倍を超えてはいなかった。Al/Gaが高い実施例19では1倍程度であった。
強度(曲げ強度)については、JIS R1601に基づき、島津製作所製AG−Xを用いて3点曲げ試験をn=30で実施した。磁石サイズは40x10x4mmである。結果を表5に示す。表5には曲げ強度の平均値を記載した。曲げ強度は最低でも250MPa以上であり、300MPa以上であることが好ましく、400MPa以上であることがさらに好ましい。
耐食性試験は120℃、100%RH、2atmの条件でPCT装置を用いて行った。そして、耐食性試験前の試料の重量に対する耐食性試験後の試料の重量減少率を測定した。結果を表5に示す。重量減少率が小さいほど耐食性が高い。
Figure 0006926861
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さらに、実験例1の各実施例(XZ相を含む)および比較例(XZ相を含まない)についてT/BとHcJとを比較したグラフを図5に示す。
表1〜表5より、XZ相としてZrC相を含む各実施例は、XZ相を含まない各比較例と比べてHcJが優れており、HcJが同等程度である場合にはBrが優れている結果となった。
比較例1〜3でXZ相が生成しなかったのは、Bの含有量が多すぎたためである。比較例4は、そもそもXに該当する元素を含有しない組成であるため、XZ相は当然に生成しなかった。
また、図5より、T/Bが高いほどHcJが低くなる傾向にある。そして、XZ相を含む各実施例は、T/Bが同等程度であるがXZ相を含まない各比較例と比べて保磁力が高くなる。
(実験例2)
実験例1では、主にRおよびBの組成および含有量を変化させて各実施例および比較例を作製したが、実験例2では表6に示すようにRおよびBの組成をほぼ同一とし、その他の組成等を変化させて各実施例を作製し、実験例1と同様の試験を行った。ただし、実施例19については、合金溶体化処理を行わず、かわりにAlを含まない主相合金とAlを含む粒界合金を使用するいわゆる2合金法で実施例を作製した。結果を表6〜表10に示す。
Figure 0006926861
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さらに、実験例2の各実施例および比較例4についてXZ相の面積割合およびHcJを比較したグラフを図6に示す。
表6〜表10および図6より、XZ相を含む各実施例は、RおよびBが同等の組成でありXZ相を含まない比較例4と比べてHcJが優れている結果となった。
さらに、Xに占めるZrおよびTiの割合のみが異なる実施例1、実施例24および実施例21を比較すると、全体的に見て実施例1が最も良好な試験結果となった。
さらに、Al/Gaが低いほど重量減少率が低くなる傾向があり、耐食性が向上する傾向がある。
(実験例3)
R−T−B系焼結磁石の組成が表11で表される各試料の組成となるように原料金属を準備し、表12に記載の条件で試験を行った点以外は実験例1と同条件にて実施例31〜35を作製した。なお、実施例34は合金溶体化処理を行わず、Zrを含まない原料合金を粗粉砕した後に、D50=5μmのZrCを添加して微粉砕した点以外は実施例33と同条件で実施した。結果を表12に示す。
表12に記載の特性のうち、XZ相最大面積については、各試料についてSEM観察を行い、特定した。
Figure 0006926861
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実施例31〜34より、XZ相の1個当たりの大きさは各種製造条件を制御することによって変化させることができる。また、実施例35のようにXの含有量が大きい場合には、XZ相最大面積が大きくなることが分かる。
また、表12よりXZ相の最大面積が小さいほど各種特性、特に残留磁束密度Br、焼結温度範囲レンジおよび曲げ強度が向上することが確認できた。
1…LaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相(結晶構造相)
3…R−O−C−N相
4…体心立方格子相
5…XZ相
5a…XZ相(粒界相中)
5b…XZ相(主相中)
6…Rリッチ相
10…主相粒子

Claims (11)

  1. 14B化合物からなる主相粒子および粒界を含むR−T−B系永久磁石であって、
    RはNdを必須とする1種以上の希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoであり、Bはホウ素であり、
    さらにX,ZおよびMを含有し、
    XはTi,V,Zr,Nb,HfおよびTaから選択される1種以上であり、Zは、CおよびNから選択される1種以上であり、MはGaを必須とし、さらにAl,Si,Ge,Cu,BiおよびSnから選択される1種以上からなり、
    前記粒界が面心立方構造からなるXZ相およびR−O−C−N相を含むことを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  2. 14B化合物からなる主相粒子および粒界を含むR−T−B系永久磁石であって、
    RはNdを必須とする1種以上の希土類元素であり、TはFeまたはFeおよびCoであり、Bはホウ素であり、
    さらにX,ZおよびMを含有し、
    XはTi,V,Zr,Nb,HfおよびTaから選択される1種以上であり、Zは、CおよびNから選択される1種以上であり、MはGaを必須とし、さらにAl,Si,Ge,Cu,BiおよびSnから選択される1種以上からなり、
    前記粒界が面心立方構造からなるXZ相および体心立方格子相を含むことを特徴とするR−T−B系永久磁石。
  3. R,T,B,MおよびXの各元素の含有量の合計を100at%として、
    Rの含有量が13.3at%以上15.5at%以下、
    Mの含有量が0.5at%以上5.0at%以下、
    Bの含有量が4.0at%以上5.5at%以下、
    Xの含有量が0.05at%以上0.5at%以下、
    Tが実質的な残部であり、
    さらに以下の式を全て満たす請求項1または2に記載のR−T−B系永久磁石。
    4.5<T/R<7.0
    14<T/B<18
    2.5<R/B<3.0
  4. 前記XZ相の最大面積が16μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  5. 前記XZ相の最大面積が12μm以下である請求項1〜のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  6. 前記XZ相全体に含まれるZrの存在比率がX全体を100at%として50at%以上であり、前記XZ相全体に含まれるCの存在比率がZ全体を100at%として50at%以上である請求項1〜のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  7. 前記R−T−B系焼結磁石の一の断面の一領域における前記XZ相の面積比率が0.1〜2%である請求項1〜のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  8. 前記粒界がLaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相を含む請求項1〜のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  9. 前記結晶相がR,M,BおよびXを含み、前記結晶相において
    Rの含有量が27.0at%以上32.0at%以下、
    Mの含有量が3.0at%以上8.0at%以下、
    Bの含有量が0at%以上0.40at%以下、
    Xの含有量が0at%以上0.45at%以下である請求項に記載のR−T−B系永久磁石。
  10. 前記粒界が、R−O−C−N相を含む請求項2〜9のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
  11. 前記粒界が、LaCo11Ga型結晶構造を有する結晶相、Rリッチ相、R−O−C−N相および体心立方格子相を含み、
    前記R−T−B系永久磁石の一の断面における前記結晶相の面積をS1、前記Rリッチ相の面積をS2、前記R−O−C−N相の面積をS3、前記体心立方格子相の面積をS4、前記XZ相の面積をS5とした場合に、
    S1>S2、
    S1>S3、
    S1>S4、かつ、
    S1>S5、
    である請求項1〜10のいずれかに記載のR−T−B系永久磁石。
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