JP6923366B2 - 低弾性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は低弾性フィルムに関する。詳しくは表面保護シート、化粧シート、転写シート等に用いることができる伸びやすく、元の形状に戻り難い低弾性フィルムに関する。
深絞り成形加工される金属板等の表面を保護する表面保護シートは、金属板等と共に深絞り加工される為、深絞り加工時に歪んだり皺になったりしない性質が求められている。また深絞り加工後、経時で寸法変化しない性質も求められている。表面保護シートが経時で寸法変化すると、金属板等の被着体表面から浮き上がったり、剥れたりする恐れがある。
曲面を備える成型品の表面を化粧する化粧シートや、該成型品の表面に意匠層を転写する転写シート等にも、同様の性質が求められている。化粧シートや転写シート等で、曲面を備える成型品を覆う場合、通常、該シートは曲面に沿うように伸ばされる。該シートが小さな力で歪みなく伸長される性質を備えない場合、成型品が変形したり、図柄(化粧層や意匠層)に皺や歪みが入ったりする恐れがある。また該シートが成型品を覆った後に寸法変化すると、図柄が歪む恐れがある。
特許文献1は、伸長(引張操作)時にネッキング(試料が延伸される際に試料フィルムのある極限された点でくびれが発生し、延伸と共にそのくびれ部分が長く成長していくこと)が発生し難いポリオレフィン系軟質フィルムに関する発明である。該フィルムの片面に粘着剤層が形成された表面保護シート(表面保護粘着シート)は、各種金属板等の深絞り成形加工時に、金属板等の表面に貼合され、金属板等を汚れや傷から保護する。
該ポリオレフィン系軟質フィルムは、重量平均分子量が100,000〜450,000の範囲内にあり、クロス分別法による0℃以上20℃以下での樹脂溶出量が全ポリオレフィン系樹脂量の20〜50重量%であり、20℃超75℃以下での樹脂溶出量が5〜25重量%であり、75℃超125℃での樹脂溶出量が35〜70重量%であるポリオレフィン系樹脂を用いることを特徴とする。当該ポリオレフィン系樹脂は、一般に、低ポリオレフィンポリマーがプロピレン系ポリオレフィン中に重合に際して均一に分散された、ポリマーアロイ材料である。
特許文献1に開示されたポリオレフィン系軟質フィルムや表面保護シートは、エチレン等の共重合成分がポリマー鎖中に均一に存在するため、ポリプロピレンまたはEPR系ゴムがブレンドされたポリプロピレン等で形成されるフィルムに比べて、伸長時にネッキングが起こり難い。また該フィルムは100%伸長後の寸法回復性(引張変形回復率)が低い。その為、該フィルムを用いた表面保護シートを深絞り加工に利用した場合、表面保護シートが経時で金属板等から浮いてくるという現象は発生し難い。
しかしながら、該フィルムはプロピレン系ポリオレフィンを主成分とする為、ポリエチレン系のフィルムと比べると、伸長(引張操作)に大きな力を要するものと思われる。特に100%を超える高倍率に伸長する作業には、高荷重を要すると思われる。また高倍率に伸長した際のフィルムのネッキングや破れ等の問題については何ら検討されていない。
特許文献2は、均一延伸性に優れるポリエチレン系積層フィルムを開示する。詳しくは、(A)層がプロピレン及び/又はブテン−1の含有量が50重量%以上であり、沸騰n−ヘプタン不要分の量が60重量%以下である非晶性ポリオレフィン20〜100重量%と、結晶性ポリプロピレン0〜80重量%との樹脂組成物からなり、(B)層がメタロセン触媒で製造されたポリエチレンからなり、(A)層と(B)層とが積層されたことを特徴とするポリエチレン系積層フィルムを開示する。
該フィルムは、伸長性(均一延伸性)については確認されているものの、フィルムを伸長する為に必要な荷重や、伸長後のフィルムの寸法回復性については何ら検討されていない。また該フィルムは(A)層に非晶性ポリオレフィンが配合されているため、製膜時にフィルムが搬送ロール等に貼り付いたり、ロール状に巻かれたフィルムを繰り出す際にフィルムが変形したりする恐れがある。
特開平7−90091 特開2000−218745
本発明は低弾性フィルムの提供を課題とする。詳しくは、表面保護シートや化粧シート、転写シート等に好適に用いることができる低弾性フィルムの提供を課題とする。
本発明者らは、小さな力で300%程度の伸長ができるフィルムであって、300%程度伸長する際にネッキングせず、伸長後の伸縮歪みが大きいフィルムであれば、深絞り加工される金属板等を覆う表面保護シートや、曲面を備える成型品に用いられる化粧シートや転写シート等にも使用できることを見出した。
併せてこのような低弾性フィルムは、密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層に、ポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層を設けることにより得られることを見出した。但し、スキン層が厚くなり過ぎると、フィルムが伸長時にネッキングを起こす恐れがある。そこでスキン層としてMFRの高い樹脂を選定し、スキン層を可能な限り薄くすることにより、ネッキングすることなく均一に伸長し、伸長後に元の形状に戻り難いフィルムを容易に得られることを見出した。
即ち本発明によると上記課題を解決する為の手段として、ポリオレフィン系樹脂から成る低弾性フィルムにおいて、後述する伸縮試験における300%伸長荷重がMD方向、TD方向、共に5N/15mm以下であり、伸縮歪みが100%以上であり、300%伸長させる間に試験片がネッキングしないことを特徴とする低弾性フィルムが提供される。
また密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層と、密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層を備えることを特徴とする前記低弾性フィルムが提供される。
更に前記密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂または環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする前記低弾性フィルムが提供される。
更に、前記スキン層の厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする前記低弾性フィルムが提供される。
更に、前記低弾性フィルムが、前記スキン層、前記基材層、前記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1〜1:30:1であることを特徴とする前記低弾性フィルムが提供される。
更に、前記密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)の試験温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートをMa(g/10min)、前記密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)の試験温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートをMbとするとき、1.5Ma≦Mb≦5.0Maであることを特徴とする前記低弾性フィルムが提供される。
更に本発明によると、前記低弾性フィルムを用いることを特徴とする表面保護シートが提供される。
更に本発明によると、前記低弾性フィルムを用いることを特徴とする化粧シートが提供される。
更に本発明によると、前記低弾性フィルムを用いることを特徴とする転写シートが提供される。
本発明の低弾性フィルムは、小さな力で300%程度伸長し、更に300%程度伸長する際にネッキングしない。その為、本発明の低弾性フィルムを用いた表面保護シートは、被着体と共に深絞り加工されても、歪んだり皺になったりすることなく、被着体表面を保護することができる。また本発明の低弾性フィルムを用いた化粧シートや転写シートは、化粧層、或いは意匠層が転写される成型品が曲面を備えるものであっても、必要に応じ伸長し該曲面に沿うことができる。よって、歪みや皺のない美麗な化粧層あるいは意匠層を、成型品の表面に形成することができる。
また本発明の低弾性フィルムは伸長後の伸縮歪みが大きい。よって被着体と共に深絞り加工されたり、伸長された状態で被着体表面を覆ったりしても、残留応力が小さく、経時で寸法変化しない。その為、該低弾性フィルムを用いた表面保護シートや化粧シート、転写シート等は、シートを故意に剥離するまでの間に、シートが自然に被着体から浮き上がったり剥れたりすることがない。
実施例1の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 実施例2の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 実施例3の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 実施例4の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 比較例3の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 比較例4の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。 比較例5の低弾性フィルムを伸縮試験した際のヒステリシスループ図である。
[伸縮特性について]
本発明の低弾性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂から成り、以下の伸縮試験において(1)300%伸長荷重がMD方向、TD方向、共に5N/15mm以下であり、(2)伸縮歪みが100%以上であり、(3)300%伸長させる間に試験片がネッキングしない、という伸縮特性を備える。尚、本発明においてMD方向とはフィルムの長さ方向を、TD方向とはフィルムの幅方向を意味する。フィルムがロール巻きされている場合、MD方向とはフィルムの巻き方向(周方向)であり、TD方向とはそれと垂直な方向(幅方向)である。
<伸縮試験>
本発明における伸縮試験は以下の要領で行う。
初めにフィルムを幅15mmの矩形に切り出して試験片を作成する。尚、フィルムのMD方向の伸縮試験を行う際は、フィルムのMD方向が試験片の長さ方向となるように、TD方向の伸縮試験を行う際はフィルムのTD方向が試験片の長さ方向となるようにする。次いで、試験片を引張試験機に装着する。このときチャック間距離を40mmにする。
更に、該試験片を200mm/minの速度で300%(チャック間距離が160mmになるまで)伸長し、次いで200mm/minの速度でチャック間距離が40mmに戻るまで試験片の伸長を戻す。
本発明では、300%(チャック間距離が160mmになるまで)伸長したときに引張試験機に加わる荷重を300%伸長荷重(N/15mm)とする。また試験片の伸長を戻す際に、引張試験機に加わる荷重がほぼ0、厳密には0.01N/15mmになったときのチャック間距離をL1(mm)とし、100×(L1−40)/40を伸縮歪み(%)とする。
図1は実施例1のフィルムの伸縮試験の結果を表すヒステリシスループ図である。図1の上段の曲線は試験片伸長時の歪みと荷重の関係を、下段の曲線は試験片の伸長を戻す際の歪みと荷重の関係を記したものである。
本発明の低弾性フィルムは、(1)300%伸長荷重(図1におけるXの値)が5N/15mm以下である。300%伸長荷重が5N/15mmを超えるとフィルムを高倍率に伸長する際の荷重が高くなり、伸長作業が困難となる。該値は4N/15mm以下が好ましく、特に3.5N/15mm以下が好ましい。該値が5N/15mmを超える低弾性フィルムは、化粧シートや転写シートとした際に、被着体を変形させる恐れがある。
また本発明の低弾性フィルムは、(2)伸縮歪みが(図1におけるYの値)が100%以上である。伸縮歪みが100%未満であると、該フィルムを表面保護シートや化粧シート、転写シート等に用いた際に、該シートが金属板や成型品等の表面から浮き上がる恐れがある。また化粧シートや転写シート等に用いた場合は、図柄(化粧層や意匠層)が歪む恐れがある。尚、該値は120%以上であることが好ましく、特に150%以上であることが好ましい。
さらに本発明の低弾性フィルムは、(3)300%伸長させる間に試験片がネッキングしない(図1における上段の曲線が、歪み0%から300%までの間に減少しない)ことを特徴とする。本発明の低弾性フィルムが300%伸張させる間にネッキングを起こすと、該フィルムを高倍率に深絞り加工される金属板等の表面保護シート等に用いることができなくなる。深絞り加工時に、ネッキングによりシートの厚み差が生じ、シートが切れたり、シートにより被保護板表面に筋等の傷が出来たりする恐れがある。また該フィルムを化粧シートや転写シートに用いた場合、シートを被着体に沿うよう伸長させる際に、図柄が、歪んだり、皺が入ったりする恐れがある。
尚、ネッキングとは、試料が伸長される際に試料フィルムのある極限された点でくびれが発生し、伸長と共にそのくびれ部分が長く成長していくことである。くびれ部分の断面は残りの部分の断面よりはるかに小さくなる。
このような伸縮特性を備える低弾性フィルムは、密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層と、ポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層とにより達成することができる。
[基材層について]
本発明の低弾性フィルムの基材層は、密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする。密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)はメタロセン系の触媒により重合されたプラストマーと、チーグラー系触媒により重合された超低密度ポリエチレン(以下、VLDPEと略称する)に大別される。これらはいずれも、エチレン−αオレフィン共重合体が一般的である。
プラストマーは分子量分布、組成分布が狭く、衝撃強度、透明性、耐抽出性に非常に優れた性能を備え、柔軟な割には高強度で、耐熱性に優れる。プラストマーを主成分とする層は、VLDPEを主成分とする層よりも、厚さ方向の柔らかさを備える。よって、低弾性フィルムを表面保護シートとして用いる場合等は、基材層の主成分としてプラストマーを用いることにより、フィルムに耐衝撃性を付与することができる。
VLDPEは、フィラーを高充填しても良好な物性を保持し、耐ストレスクラッキング性に優れる。VLDPEを主成分とする層は、プラストマーを主成分とする層よりも、面方向の柔軟性を備える。よって、低弾性フィルムを化粧シートや転写シートとして用いる場合等は、基材層の主成分としてVLDPEを用いることにより、フィルムの伸長性を更に高めることができる。
尚、本発明の密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)として、これらの樹脂をブレンドして用いることもできる。
本発明の低弾性フィルムは、当該密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)により、低荷重で均一に伸長することが可能となり、寸法回復性も低く抑えられる。該ポリエチレン系樹脂(A)は密度900kg/m未満が好ましく、890kg/m未満が特に好ましい。
基材層における密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)は主成分(配合割合が50重量%以上)であるが、該ポリエチレン系樹脂(A)の配合割合は70〜100重量%が好ましく、90〜100重量%が特に好ましい。
[スキン層について]
上述した基材層は密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とし、非常に弱い力で伸びるため、該基材層のみではフィルムを搬送したり、巻き取ったりする際に、寸法変化が著しくハンドリング性に欠ける。
よって本発明の低弾性フィルムはスキン層を備えることが望まれる。該スキン層は基材層との密着性を考慮するとポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とすることが望ましい。ポリオレフィン系樹脂(B)として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のα−オレフィンの単独重合体や、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、プロピレンとエチレンのブロック共重合体やランダム共重合体、環状オレフィンのホモポリマー、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等を例示することができ、スキン層にはこれらの樹脂の中から、1種或いは2種以上を適宜選択して用いるとよい。
尚、スキン層の主成分として結晶性ポリエチレン系樹脂(B)を採用する場合は、密度910kg/m以上ものを選択する必要がある。密度910kg/m未満のポリエチレン系樹脂では、基材層のハンドリング性を改善する効果に乏しい。尚、スキン層、基材層、共に主成分としてポリエチレン系樹脂を採用する場合は、これらのポリエチレン系樹脂の密度差が40kg/m以上あることが望ましく、特に50kg/m以上あることが望ましい。
尚、上述した樹脂の中でも基材層との共押出成形性を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂(B)として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂を採用することが望ましく、特に密度が942kg/m以上の高密度ポリエチレンを採用することが望ましい。スキン層が当該高密度ポリエチレンを主成分とする場合、フィルムのハンドリング性改善の効果が高く、基材層との密着性もよく、更にフィルムの耐ブロッキング性も良好となる。
スキン層におけるポリオレフィン系樹脂(B)は主成分(配合割合が50重量%以上)であるが、ポリオレフィン系樹脂(B)の配合割合は70〜100重量%が好ましく、90〜100重量%が特に好ましい。
該スキン層は、フィルムのハンドリング性を改善できれば、その膜厚は薄い方が望ましい。詳しくは低弾性フィルムにおけるスキン層の厚みは0.5〜10μm程度、特に1〜5μm程度であることが望ましい。スキン層が0.5μm未満では、低弾性フィルムのハンドリング性を改善することが難しく、スキン層が10μmを超えてもフィルムのハンドリング性の更なる改善は見られず、フィルムの低弾性が低下するだけである。尚、低弾性フィルムがスキン層を複数備える場合は、各スキン層の厚さが上記範囲であることが望ましい。
[低弾性フィルムについて]
本発明の低弾性フィルムは、上述した基材層とスキン層とからなることが望ましく、例えばスキン層/基材層の2層のフィルムであっても良く、スキン層/基材層/スキン層を順に備える3層のフィルムであっても良く、更にはスキン層と基材層との間に他の樹脂層を備える4層以上のフィルムであっても良い。しかしながら、フィルムのブロッキング性を考慮すると、基材層の両側にスキン層を備えることが望ましい。また基材層の低弾性を最大限に発揮させるためには、基材層とスキン層以外の層を備えないことが望ましい。
スキン層と基材層の厚さの比については特に限定されないが、スキン層/基材層の2層の場合は1:3〜1:30程度が望ましく、特に、1:5〜1:25程度が望ましく、スキン層/基材層/スキン層の3層の場合は1:6:1〜1:30:1程度であることが望ましく、特に1:10:1〜1:25:1程度が望ましい。基材層の厚さがスキン層の厚さ(スキン層が2層以上ある場合はそのトータルの厚さ)の3倍未満であると、得られるフィルムが十分な低弾性を備えない恐れがあり、またフィルムがネッキングを起こす恐れがある。また基材層の厚さがスキン層の30倍を超えると、基材層の表面に均一な膜厚のスキン層を形成することが困難となる。
尚、スキン層の厚さを基材層の厚さよりも著しく薄くするためには、スキン層の主成分となるポリオレフィン系樹脂(B)の試験温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFR(JIS K7210に準拠)をMbとし、基材層の主成分となる密度が910kg/m未満のポリエチレン系樹脂(A)の試験温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFR(JIS K7210に準拠)をMaとしたとき、1.5Ma≦Mb≦5.0Maであることが望ましく、特に2.0Ma≦Mb≦4.0であることが望ましい。スキン層の主成分となる樹脂のMFRを、基材層のMFRの1.5倍以上高くすることにより、均一な厚さの薄いスキン層(0.5〜10μm)の形成が可能となる。しかしながらスキン層の主成分となる樹脂のMFRが高くなり過ぎると、スキン層の膜厚が安定し難くなる。
本発明の低弾性フィルムの膜厚は特に限定されるものではないが、300%伸長荷重を5N/15mm以下とするためには、200μm以下であることが望ましく、特に100μm以下であることが望ましい。また薄すぎると表面保護シート等として使用する際に破れる恐れがある。よってフィルムの膜厚は20μm以上が望ましく、特に30μm以上であることが望ましい。
本発明の低弾性フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいても良い。このような他の成分としては、例えば離型剤、紫外線吸収剤、耐熱安定化剤、充填剤、滑剤、着色剤(染料等)、酸化防止剤、目ヤニ防止剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
[低弾性フィルムの製造方法について]
本発明の低弾性フィルムは、上述したスキン層と基材層とを別々に製膜し、その後ドライラミネート用接着剤等を介して積層し、製造してもよい。しかしながら、基材層を単独に製膜することは困難である。よって、例えばスキン層用の樹脂組成物と基材層用の樹脂組成物とを別々の押出機から1つのダイスに供給し、製膜する共押出法、あるいは、スキン層を予め製膜した後、該スキン層上に基材層用の樹脂組成物を押出す押出ラミネート法、二枚のスキン層を予め製膜した後、スキン層の間に基材層用の樹脂組成物を押出し、積層するサンドラミネート法等により製膜するとよい。
尚、フィルムの生産性を考慮すると共押出法によることが望ましく、膜厚精度等を考慮するとTダイ共押出法を採用することが特に望ましい。
[表面保護シート]
本発明では、上述した低弾性フィルムの用途として表面保護シートを提案する。該表面保護シートの製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用すればよい。例えば低弾性フィルムの片面にプライマー処理を施し、該処理面に粘着剤層を設けるとよい。粘着剤は、一般に用いられている粘着剤であれば特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を採用することができる。
本発明の表面保護シートは低弾性であるので、金属板等と共に深絞り加工されても、金属板等に皺や傷が入ることはない。
[化粧シート]
本発明では、上述した低弾性フィルムの用途として、更に化粧シートを提案する。化粧シートの製造方法も、従来公知の方法を採用すればよい。例えば低弾性フィルムに、必要に応じコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施し、図柄層(ベタインキ層、柄インキ層等)を形成し、更に必要に応じ機能性コート層を設けることにより製造することができる。
該化粧シートは公知の接着剤等を使用して被着体に積層される。本発明の化粧シートは低弾性であるため、被着体がR加工された木質材やなだらかな曲面を備えるプラスチック成型品等であっても、R加工面や曲面に沿うことができ、被着体外面を美麗に化粧することができる。
[転写シート]
本発明では、上述した低弾性フィルムの用途として、更に転写シートを提案する。転写シートもまた、従来公知の方法で製造することができる。例えば低弾性フィルムの表面をシリコーン系離型剤等で処理し、次いで該処理面に印刷により意匠層を設けることにより製造できる。
意匠層を転写させる方法は特に限定されるものではないが、例えば真空成型装置を用い、該装置内に意匠を転写したい物品(被着体)と転写シートとを配置し、該装置内を減圧するとよい。本発明の転写シートは低弾性フィルムを基材とする為、装置内で被着体に沿うよう伸長され、美麗な意匠層を転写することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例、比較例における評価の方法は以下の通りである。尚、引張試験機として島津製作所社製オートグラフAG−ISを使用した。
<300%伸長荷重>
前述した伸縮試験により、試験片を300%伸長(チャック間距離40mm→160mm)した時の引張試験機に加わる荷重を300%伸長荷重(N/15mm)とする。
<伸縮歪み>
前述した伸縮試験により、試験片を300%伸長後、伸長を戻す際に、引張試験機に加わる荷重が0.01N/15mmになったときのチャック間距離(L1(mm))を測定し、式(1)より伸縮歪み(%)を算出する。
式1:100×(L1−40)/40
<ネッキング>
伸縮試験後の試験片について、ネッキングの有無を目視で確認する。
実施例、比較例において用いた樹脂は以下の通りである。
プラストマー樹脂(PR):メタロセン触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体(密度886kg/m、MFR4.0g/min(190℃、2.16kg))
エラストマー樹脂(ER):メタロセン触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体(密度862kg/m、MFR3.0g/min(230℃、2.16kg)、エチレン含有量16重量%)
高密度ポリエチレン(HDPE):エチレンの単独重合体(密度960kg/m、MFR8.0g/min(190℃、2.16kg))
プロピレン−エチレンランダム共重合体(r−PP)(密度910kg/m、MFR12.8g/10min(190℃、2.16kg))
[実施例1]
基材層としてPRを、スキン層としてHDPEを用い、Tダイ共押出法にて、スキン層/基材層/スキン層からなる3層の低弾性フィルム(40μm)を得た。各層の厚み比を表1に記す。該低弾性フィルムについて300%伸長荷重、伸縮歪み、ネッキングの有無を確認した。結果を表1に併せて記す。
[実施例2〜4]
基材層を形成する樹脂及びスキン層を形成する樹脂、並びに各層の厚み比を表1に記すように変化させた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜4の低弾性フィルム(40μm)を得た。各フィルムの300%伸長荷重、伸縮歪み、ネッキングの有無を確認し、結果を表1に併せて記す。
[比較例1]
PRからなる単層のフィルム(40μm)の製膜を試みた。しかしながら、フィルムを搬送することができず、製膜できなかった。
[比較例2]
厚み比を表2に記すように変化させた以外は、実施例1と同様にして、低弾性フィルムの製膜を試みた。しかしながら、フィルムの端縁部においてスキン層が部分的に途切れており、該部分においてフィルムが搬送ロールに貼り付いて製膜できなかった。
[比較例3〜5]
基材層を形成する樹脂及びスキン層を形成する樹脂、並びに各層の厚み比を表2に記すように変化させた以外は、実施例1と同様にして比較例3〜5の低弾性フィルム(40μm)を得た。各フィルムの300%伸長荷重、伸縮歪み、ネッキングの有無を確認した。結果を表2に併せて記す。
Figure 0006923366
Figure 0006923366
基材層にPRを用いた実施例1〜4のフィルムは300%伸長荷重が低く、伸縮歪みが大きく、ネッキングが発生しなかった。
一方、スキン層/基材層/スキン層の厚み比が1/4/1である比較例3のフィルムや、基材にLLDPEを用いた比較例5のフィルムは、伸縮歪みが大きかったが、これはフィルムが降伏点を超えて伸長されたためと思われる。また基材層にERを用いた比較例4のフィルムは、300%伸長荷重は小さいものの、伸縮歪みが小さく、弾性の高いフィルムであった。
本発明では低弾性フィルムの用途として、表面保護シート、化粧シート、転写シートを例示し、詳説したが、本発明の低弾性フィルムの用途はこれに限定されるものではない。本発明の低弾性フィルムは弾性が極めて低く抑えられているため、特定の物品に貼合された状態で伸長される用途、或いは伸長されながら特定の物品に貼合される用途等に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 密度が910kg/m 3 未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層と、
    密度が910kg/m 3 未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層を備えるポリオレフィン系樹脂から成る低弾性フィルムを用いた表面保護シートにおいて、
    下記伸縮試験における300%伸長荷重がMD方向、TD方向、共に5N/15mm以下であり、伸縮歪みが100%以上であり、300%伸長させる間に試験片がネッキングしないことを特徴とする表面保護シート
    [伸縮試験]
    フィルムを幅15mmの矩形に切り出して試験片を作成し、チャック間距離が40mmとなるように試験片を引張試験機に装着し、該試験片を200mm/minの速度でチャック間距離が160mmになるまで伸長し、次いで200mm/minの速度でチャック間距離が40mmに戻るまで試験片の伸長を戻す。
    チャック間距離が160mmになったときの引張試験機に加わる荷重を300%伸長荷重(N/15mm)とする。また伸長を戻す際に引張試験機に加わる荷重が0.01N/15mmになったときのチャック間距離をL1(mm)とするとき、100×(L1−40)/40を伸縮歪み(%)とする。
  2. 密度が910kg/m3未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層と、
    密度が910kg/m3未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層を備えるポリオレフィン系樹脂から成る低弾性フィルムを用いた化粧シートにおいて、
    下記伸縮試験における300%伸長荷重がMD方向、TD方向、共に5N/15mm以下であり、伸縮歪みが100%以上であり、300%伸長させる間に試験片がネッキングしないことを特徴とする化粧シート
    [伸縮試験]
    フィルムを幅15mmの矩形に切り出して試験片を作成し、チャック間距離が40mmとなるように試験片を引張試験機に装着し、該試験片を200mm/minの速度でチャック間距離が160mmになるまで伸長し、次いで200mm/minの速度でチャック間距離が40mmに戻るまで試験片の伸長を戻す。
    チャック間距離が160mmになったときの引張試験機に加わる荷重を300%伸長荷重(N/15mm)とする。また伸長を戻す際に引張試験機に加わる荷重が0.01N/15mmになったときのチャック間距離をL1(mm)とするとき、100×(L1−40)/40を伸縮歪み(%)とする。
  3. 密度が910kg/m3未満のポリエチレン系樹脂(A)を主成分とする基材層と、
    密度が910kg/m 3 未満のポリエチレン系樹脂を除くポリオレフィン系樹脂(B)を主成分とするスキン層を備えるポリオレフィン系樹脂から成る低弾性フィルムを用いた転写シートにおいて、
    下記伸縮試験における300%伸長荷重がMD方向、TD方向、共に5N/15mm以下であり、伸縮歪みが100%以上であり、300%伸長させる間に試験片がネッキングしないことを特徴とする転写シート。
    [伸縮試験]
    フィルムを幅15mmの矩形に切り出して試験片を作成し、チャック間距離が40mmとなるように試験片を引張試験機に装着し、該試験片を200mm/minの速度でチャック間距離が160mmになるまで伸長し、次いで200mm/minの速度でチャック間距離が40mmに戻るまで試験片の伸長を戻す。
    チャック間距離が160mmになったときの引張試験機に加わる荷重を300%伸長荷重(N/15mm)とする。また伸長を戻す際に引張試験機に加わる荷重が0.01N/15mmになったときのチャック間距離をL1(mm)とするとき、100×(L1−40)/40を伸縮歪み(%)とする。
  4. 前記スキン層の厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項1記載の表面保護シート。
  5. 前記スキン層の厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項2記載の化粧シート。
  6. 前記スキン層の厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする請求項3記載の転写シート。
  7. 前記低弾性フィルムが、前記スキン層、前記基材層、前記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1〜1:30:1であることを特徴とする請求項1又は4記載の表面保護シート。
  8. 前記低弾性フィルムが、前記スキン層、前記基材層、前記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1〜1:30:1であることを特徴とする請求項2又は5記載の化粧シート。
  9. 前記低弾性フィルムが、前記スキン層、前記基材層、前記スキン層を順次備え、各層の厚さの比が、1:6:1〜1:30:1であることを特徴とする請求項3又は6記載の転写シート。
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