JP6724974B2 - 焼結造形方法、液状結合剤、および焼結造形物 - Google Patents

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Description

本発明は、焼結造形方法、焼結造形に用いる液状結合剤、および焼結造形物に関する。
3次元形状の立体モデル(造形物)を形成する造形方法の一つに積層造形法がある。積層造形法としては、例えば、光硬化性樹脂を積層させながらレーザーで選択的に硬化させて造形物の断面各層を形成する光造形法、粉末材料を積層させながらレーザーで選択的に溶着し固化させて各層を形成する粉末焼結法、熱可塑性材料を加熱しノズルから押し出して堆積させることにより各層を形成する溶融物堆積法、紙などのシート材をモデルの断面形状にカットして積層し接着することにより形成するシート積層法、などが提案されている。
特許文献1には、次のような三次元プリント技術(三次元造形物の製造方法)が開示されている。
まず、セラミックや金属等を含む粉末材料を層状に沈積する。次いで、粉末材料同士を結合させる結合剤材料を、粉末材料の層の選択された領域に塗布する。すると、粉末材料間の空隙に浸透した結合剤材料が、粉末材料同士を接合することによって、三次元造形物の二次元断面層に対応する造形物が形成される。こうした粉末材料の沈積と、結合剤材料の塗布とを交互に繰り返すことによって二次元断面層が積層され、三次元構造を有した造形物が形成(造形)される。
特開平6−218712号公報
しかしながら、特許文献1の三次元造形物の製造方法は、粉末材料(造形材料)に塗布した結合剤材料によって粉末材料同士を接合するものであって、例えば、レーザーを照射するなどして選択的に金属材料(造形材料)を溶着して固化させる方法とは、造形材料を固化する方法、つまり造形材料が結び付く形態が異なる。得られた三次元造形物の強度は、この造形材料の結び付きの形態によって大きく異なってくる。一般的に、特許文献1のような粉末材料同士を結合剤材料によって接合する造形方法の方が、金属材料を溶着し固化させる方法と比較して、強度が劣ってしまう。そこで、粉末材料にセラミックや金属材料を用い、粉末材料同士の結びつきを向上させるために焼結工程を導入することにより、三次元造形物の強度を上げることが考えられた。しかしながら、この方法によると、粉末材料同士を接合する材料が熱分解によって除去(脱脂)され粉末材料同士が焼結するため、三次元造形物の寸法収縮が大きくなってしまい、形状の変化を起こしやすいという問題があった。つまり、特許文献1の三次元造形物の製造方法によって造形された三次元造形物は、その強度を上げるために焼結した場合に、基の寸法を維持することが難しく、より強度が高く高精細な三次元造形物の形成を安定してできないという問題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
[適用例1] 本適用例に係る焼結造形方法は、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料を用いて造形層を形成する造形層形成工程と、前記造形層の所望の領域に第2の無機粒子が含まれる液状結合剤を付与する工程と、付与された前記液状結合剤を硬化させて造形断面層を形成する工程と、前記造形層の前記液状結合剤が付与されていない領域を除去する工程と、前記造形断面層を加熱して焼結処理する工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の焼結造形方法は、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料を用いて造形層を形成する造形層形成工程と、造形層の所望の領域に第2の無機粒子が含まれる液状結合剤を付与する工程と、付与された液状結合剤を硬化させて造形断面層を形成する工程とを含む。これらの工程を含むことにより、造形断面層には、第1の無機粒子に加え、更に第2の無機粒子を含ませることができる。また、造形層の液状結合剤が付与されていない領域を除去する工程と、積層された造形断面層を加熱して焼結処理する工程と、を含む。これらの工程を含むことにより、積層された造形断面層によって三次元造形物が造形され、また焼結処理をすることによって、その強度を高めることができる。
本適用例によれば、造形断面層には、第1の無機粒子に加え、更に第2の無機粒子を含ませるため、より無機粒子(第1および第2の無機粒子)の密度(体積充填率)が高い三次元造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例2] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記焼結処理する工程は、前記第2の無機粒子を、前記第1の無機粒子が焼結を開始する焼結開始温度より低い温度において前記第1の無機粒子に融着させる加熱工程を含むことを特徴とする。
本適用例によれば、焼結処理する工程は、第2の無機粒子を、第1の無機粒子が焼結を開始する焼結開始温度より低い温度において第1の無機粒子に融着させることにより、第2の無機粒子を、第1の無機粒子同士を結着させるバインダーとして機能させることができる。その結果、焼結処理を行った場合の三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例3] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記焼結造形材料は、前記第1の無機粒子同士を結着する熱可塑性バインダーを含み、前記造形層形成工程は、前記焼結造形材料を前記熱可塑性バインダーの融点以上の温度に加熱して行うことを特徴とする。
本適用例によれば、焼結造形材料は、第1の無機粒子同士を結着する熱可塑性バインダーを含んでいる。また、造形層形成工程は、焼結造形材料を熱可塑性バインダーの融点以上の温度に加熱して行う。焼結造形材料を熱可塑性バインダーの融点以上の温度に加熱することで焼結造形材料の流動性が高まるため、焼結造形材料をより容易に展延させることが可能となり、より寸法精度の高い造形層を形成することが可能となる。また、焼結処理を進める加熱工程では、熱可塑性バインダーが熱分解されるまでの間(脱脂が完了するまでの間)熱可塑性バインダーが第1の無機粒子同士の結着に寄与する。本適用例によれば、これらの結果、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例4] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記造形断面層に含まれる前記第1の無機粒子の重量と前記第2の無機粒子の重量との比率が400:1〜3:1の範囲であることを特徴とする。
本適用例によれば、造形断面層に含まれる第1の無機粒子の重量と第2の無機粒子の重量との比率が400:1〜3:1の範囲であるため、第1の無機粒子を主材として造形することができる。また、この主材に付与する第2の無機粒子によって、より無機粒子の密度が高い三次元造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例5] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記第1の無機粒子の平均粒子径と前記第2の無機粒子の平均粒子径との比率が50000:1〜10:1の範囲であることを特徴とする。
本適用例によれば、第1の無機粒子の平均粒子径と第2の無機粒子の平均粒子径との比率が50000:1〜10:1の範囲であるため、第1の無機粒子を主材として造形することができ、また、付与する第2の無機粒子が、液状結合剤と共に主材(第1の無機粒子)の間に浸透しやすい。その結果、より均質に無機粒子の密度を高めた造形断面層を形成することができ、より均質に無機粒子の密度を高めた三次元造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例6] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記第2の無機粒子の平均粒
子径が0.001μm以上10μm以下であることを特徴とする。
本適用例によれば、第2の無機粒子の平均粒子径が0.001μm以上10μm以下である。つまり、第2の無機粒子がナノ粒子レベル(1〜1万nm)の大きさの無機粒子であるため、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料の所望の領域に液状結合剤を付与した場合に、第1の無機粒子の空隙に容易に入り込ませることができる。つまり、より均質に無機粒子(第1および第2の無機粒子)の密度を高めることができ、より均質に無機粒子の密度を高めた三次元造形物を得ることができる。また、第2の無機粒子がナノ粒子レベルの大きさの無機粒子であるため、第2の無機粒子を付与することによって三次元造形物の焼結開始温度を降下させることができる。つまり、第2の無機粒子のサイズ効果により、第2の無機粒子と第1の無機粒子との焼結がより低い温度で開始されるため、例えば、第1の無機粒子と第2の無機粒子とが同じ金属の場合には、第1の無機粒子だけの場合の焼結開始温度に比較し、より低い温度で焼結を開始することができる。その結果、焼結処理のための加熱工程における寸法の変化(例えば、焼結造形材料に含まれるバインダー材料の熱分解(脱脂)による寸法の変化)を、より低い温度から抑制することができるため、三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物を造形することができる。
[適用例7] 上記適用例に係る焼結造形方法において、前記第1の無機粒子および前
記第2の無機粒子が、セラミック粒子または金属粒子であることを特徴とする。
本適用例によれば、第1の無機粒子および第2の無機粒子が、セラミック粒子または金属粒子であるため、これらが主材の三次元造形物に対して焼結処理を行うことができ、その結果、より強固な三次元造形物を得ることができる。
[適用例8] 本適用例に係る液状結合剤は、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料の所望の領域に液状結合剤を付与する工程と、付与した前記液状結合剤を硬化する工程と、を含む三次元造形物の製造に用い、第2の無機粒子が含まれていることを特徴とする。
本適用例の液状結合剤は、三次元造形物の製造に用いる液状結合剤であり、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料の所望の領域に付与され、付与された領域が硬化することで三次元造形物を構成する領域が形成される。また、この液状結合剤には、第2の無機粒子が含まれている。つまり、本適用例の液状結合剤によれば、三次元造形物を造形するための所望の領域には、第1の無機粒子に加え、更に第2の無機粒子を含ませることができる。その結果、より無機粒子の密度が高い三次元造形物を得ることができる。
[適用例9] 上記適用例に係る液状結合剤において、前記第2の無機粒子の平均粒子径が0.001μm以上10μm以下であることを特徴とする。
本適用例によれば、液状結合剤に含まれる第2の無機粒子の平均粒子径が0.001μm以上10μm以下である。つまり、第2の無機粒子は、ナノ粒子レベルの大きさの無機粒子であるため、第1の無機粒子が含まれる焼結造形材料の所望の領域に液状結合剤を付与した場合に、第1の無機粒子の空隙に容易に入り込ませることができる。つまり、より均質に無機粒子(第1および第2の無機粒子)の密度を高めることができ、より均質に無機粒子の密度を高めた三次元造形物を得ることができる。
[適用例10] 上記適用例に係る液状結合剤において、前記第2の無機粒子がセラミック粒子または金属粒子であることを特徴とする。
本適用例によれば、例えば、第1の無機粒子が第2の無機粒子と同様のセラミック粒子である場合、または、第1の無機粒子が第2の無機粒子と同様の金属粒子である場合において、これらを主材とした三次元造形物の焼結処理を行うことができ、その結果、より強固な三次元造形物を得ることができる。
[適用例11] 本適用例に係る焼結造形物は、適用例1ないし適用例7のいずれか一例に記載の焼結造形方法により造形されたことを特徴とする。
上記適用例に記載の焼結造形方法により造形された焼結造形物は、焼結処理を行った場合の三次元造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い三次元造形物として提供される。
[適用例12] 本適用例に係る焼結造形物は、適用例8ないし適用例10のいずれか一例に記載の液状結合剤を用いて造形されたことを特徴とする。
上記適用例に記載の液状結合剤を用いて造形された焼結造形物は、より寸法精度の高い三次元造形物として提供される。
[適用例13] 本適用例に係る焼結造形物は、積層する焼結造形材料に予め含まれる第1の無機粒子と、積層された前記焼結造形材料に付与する液状結合剤に含まれる第2の無機粒子と、を含んで構成されることを特徴とする。
本適用例によれば、焼結造形物は、積層する焼結造形材料に予め含まれる第1の無機粒子と、積層された焼結造形材料に付与する液状結合剤に含まれる第2の無機粒子と、を含んで構成される。つまり、焼結造形物は、第1の無機粒子に加え、第2の無機粒子を含んで構成されるため、第1の無機粒子のみで構成される焼結造形物に比較して、より無機粒子の充填率が高い焼結造形物を得ることができる。
焼結造形材料の常温における状態を示す概念図 焼結造形装置を説明する模式図 実施形態1に係る液状結合剤の概念図 造形層の所望の領域に液状結合剤を付与した様子を示す概念図 脱脂、焼結の熱処理工程を従来技術と比較する概念図
以下に本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。以下は、本発明の一実施形態であって、本発明を限定するものではない。なお、以下の各図においては、説明を分かりやすくするため、実際とは異なる尺度で記載している場合がある。
(実施形態1)
実施形態1として、3次元形状の立体モデル(焼結造形物)を造形する一つの手法としての積層造形における焼結造形材料、焼結造形装置、「焼結造形方法」、焼結造形に用いる「液状結合剤」、およびこれらによって造形された「焼結造形物」を説明する。
積層造形の方法としては、三次元造形物の断面形状を形成すべく焼結造形材料で構成された薄い層にインクジェット法により選択的に液状結合剤を付与し、液状結合剤を付与した部分を硬化させながら次々と積層することにより三次元造形物を形成する方法を用いている。
以下、それぞれについて具体的に説明する。
<焼結造形材料>
図1は、焼結造形材料1の常温(15〜25℃)における状態を示す概念図である。
焼結造形材料1は、積層造形法により3次元形状の立体モデル(焼結造形物)を造形する際に使用する材料(主材)であり、焼結造形材料1によって焼結造形物の基本となる各層、つまり焼結造形物の各断面形状を形成するための層(以下造形層という)を形成する。
焼結造形材料1は、粉末の「第1の無機粒子」から成る粉末材料2および「熱可塑性バインダー」としてのバインダー材料3などによって構成される。
粉末材料2は、焼結造形材料1を用いて形成される焼結造形物の主要な構成材料である。
粉末材料2は、「第1の無機粒子」としての無機粒子2aの集合体として構成される。 無機粒子2aには、金属粒子やセラミック粒子を用いることができる。無機粒子2aは、平均粒子径が0.1μm以上30μm以下の略球形である。平均粒子径は、1μm以上15μm以下であることが更に好ましい。また、真球形状に近いほどより好ましい。これにより、焼結造形物の形状に係る制御性、特に焼結造形物の外形を規定する辺や角部における形状の制御性が向上する。
また、無機粒子2aの粒径は、焼結造形材料1によって形成される造形層の平均厚さ以下であることが好ましく、造形層の平均厚さの2分の1以下であることがより好ましい。これにより、造形層における無機粒子2aの密度(体積充填率)を向上させ、ひいては、焼結造形物の機械的強度を向上させることができる。
また、粉末材料2には、上記粒径の範囲内で、互いに異なる粒径の無機粒子2aが含まれていることが好ましい。なお、無機粒子2aの粒径の分布としては、ガウス分布(正規分布)に近い分布であってもよいし、最大径側あるいは最小径側に粒径分布の最大値を有するような分布(片分散)であってもよい。
無機粒子2aの粒径が単一の値である場合、焼結造形物を形成したときの無機粒子2aによる体積充填率は、最密充填時の理論値である69.8%を超えることはなく、実際には50〜60%程度の充填率となる。これに対し、粉末材料2に互いに異なる粒径の無機粒子2aが含まれる(粒径が範囲を持って分布する)ようにすれば、例えば相対的に大きな粒径を有した無機粒子2a同士によって形成された空隙に、相対的に粒径の小さい無機粒子2aが配置されることによって体積充填率が向上する。これにより、焼結造形物の機械的強度を向上させることができる。このようにして、具体的には、体積充填率が、約70%となるようにすることが好ましい。
粉末材料2(無機粒子2a)には、好適例としてステンレス合金粉末を使用している。なお、粉末材料2は、ステンレス合金粉末に限定するものではなく、例えば、銅、青銅(Cu/Sn)、真鍮(Cu/Zn)、錫、鉛、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、チタン、タンタル、鉄、カルボニル鉄などの粉末、また、チタン合金、コバルト合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄合金、ニッケル合金、クロム合金、シリコン合金、ジルコニウム合金、金合金などの金属合金粉末、また、Fe/Ni、Fe/Si、Fe/Al、Fe/Si/Al、Fe/Co、Fe/Co/Vなどを含む磁性合金粉末、あるいはチタンアルミニウムなどの金属間化合物粉末などであっても良い。また、セラミック粉末の場合、アルミナ粉末、ジルコニア粉末などであっても良い。
バインダー材料3は、熱可塑性の高分子化合物であり、焼結造形材料1において粉末材料2とバインダー材料3とを混ぜ、無機粒子2aを略均一に分散させたときに無機粒子2a同士を結着する機能を有する。図1に示すように、粉末材料2とバインダー材料3とが略均一に分散するように混ぜ合わせたとき、バインダー材料3は、例えば、フレーク状のバインダーフレーク3aとして無機粒子2aを結着している。
バインダー材料3には、例えば、好適例として、融点が55℃〜58℃、熱分解開始温度が、約200℃のポリカプロラクトンジオールを用いている。
なお、バインダー材料3は、ポリカプロラクトンジオールに限定するものではなく、常温で固体の熱可塑性を有し、その熱分解開始温度が50℃以上で無機粒子2aの焼結温度より低いものを用いる。例えば、融点が50〜100℃、熱分解開始温度が約250℃のエチレン酢酸ビニル共重合体や、融点が約120℃、熱分解開始温度が約400℃のポリエチレンなどであっても良い。
それぞれ、常温では、ろう状、ワセリン状、フレーク状などの固体で、融点を超えると融解し液状となる。
焼結造形物において粉末材料2を構成する無機粒子2aの充填率が高くなるほど、焼結造形物の形状に係る精度が高められる。それゆえに、焼結造形物の形状に係る精度を高める上では、無機粒子2aが密に充填されるべく、密に充填された無機粒子2aの空隙よりもバインダー材料3の占める体積が小さくなるような配合比が好ましい。したがって、粉末材料2:バインダー材料3の体積比として、7:3〜9:1の範囲が好ましい。
なお、焼結造形材料1には、溶媒を含んでも良い。溶媒としては、水および無機塩の水溶液等の非有機系溶媒を含む水系溶媒が好ましい。水系溶媒としては、水を用いることが更に好ましい。焼結造形材料1に溶媒を含むことで、粉末材料2が均一に分散したペースト状の焼結造形材料をより容易に得ることができる。また、溶媒によって、ペースト状の焼結造形材料をより展延させやすくなるため、造形層をより薄く形成することができる。
<焼結造形装置>
図2は、焼結造形装置100を説明する模式図である。
図2において、Z軸方向が上下方向、−Z方向が鉛直方向、Y軸方向が前後方向、+Y方向が手前方向、X軸方向が左右方向、+X方向が左方向、X−Y平面が、焼結造形装置100が設置される平面と平行な面としている。
焼結造形装置100は、焼結造形材料1を用いて積層造形法により3次元形状の立体モデル(焼結造形物)を造形する装置である。
焼結造形装置100は、材料供給部10、加熱部20、展延部30、造形部40、描画部50、硬化部60、現出部70、脱脂焼結部80、およびそれぞれを制御する制御部(図示省略)などを備えている。
材料供給部10は、収容された焼結造形材料1を加熱部20に供給する部分であり、例えば、図2に示すようなホッパー11を備えている。ホッパー11は加熱部20の上方に位置する材料吐出口12から内部に収容された焼結造形材料1を加熱部20に供給する。
なお、材料供給部10は、この構成に限定するものではなく、例えば、焼結造形材料1を収容したカートリッジを装填し加熱する装填部を備え、装填されたカートリッジをバインダー材料3の融点以上に加熱することで焼結造形材料1に流動性を持たせて加熱部20に供給する構成(図示省略)などであっても良い。
加熱部20は、焼結造形材料1をバインダー材料3の融点以上の温度に加熱し維持するホットプレート21を備えている。材料供給部10から供給された焼結造形材料1は、ホットプレート21上でバインダー材料3が融解することで、流動性の有る流動性造形材料4となる。
展延部30は、スクイージ31を備えている。
スクイージ31は、X軸方向に移動可能に設けられたY軸方向に延在する細長い板状体であり、X―Y平面上で流動性造形材料4を−X方向にすり押すように移動させることで、流動性造形材料4を薄く展延させることができる。
展延部30は、造形部40が備えるステージ41上に流動性造形材料4を展延し造形層5を形成する。
なお、流動性造形材料4を薄く展延させる方法は、スクイージ31により展延する方法に限定するものでない。例えば、エアにより押圧して展延する方法や、加熱部を備えたステージを回転させて遠心力により展延する方法などであっても良い。
造形部40は、ステージ41と、ステージ41をZ軸方向に昇降させるステージ昇降機構42などを備えている。ステージ41は、ホットプレート21と同一の面内(同一の高さ)に位置する初期位置において、スクイージ31によって、流動性造形材料4が展延されるX―Y平面を構成する。
ステージ41は、常温(例えば室温)に維持され、ステージ41上に展延された流動性造形材料4は、融点未満になると流動性を失い、先に形成された造形層5上に新たに造形層5として積層される。展延された流動性造形材料4は、融点未満になるまで放置しても良いし、冷却しても良い。冷却方法としては、ファンなどを用いて造形層5に常温あるいは冷却した風を送風する方法や、造形層5に冷却プレートを接触させる方法などが可能である。
ステージ昇降機構42は、ステージ41上に展延され形成された造形層5の層厚みに応じてステージ41を降下させる。ステージ41が降下することで、造形層5の表面がホットプレート21と同一の面内(同一の高さ)に位置するようになり、再び、スクイージ31によって流動性造形材料4が展延され造形層5として積層されるX―Y平面が構成される。
描画部50は、吐出ヘッド51、カートリッジ装填部52、キャリッジ53、キャリッジ移動機構54(構成図省略)などを備えている。
吐出ヘッド51は、インクジェット法により液状結合剤8をステージ41上の造形層5に吐出するノズル(図示省略)を備えている。
カートリッジ装填部52は、液状結合剤8を収容したインクカートリッジを装填し、液状結合剤8を吐出ヘッド51に供給する。
キャリッジ53は、吐出ヘッド51、カートリッジ装填部52(つまりはインクカートリッジ)を搭載し、キャリッジ移動機構54によって、ステージ41の上面を移動する。
キャリッジ移動機構54は、X−Y軸直動搬送機構を有し、キャリッジ53をX―Y平面で移動(走査)させる。
描画部50は、制御部による制御によって、ステージ41上に展延された造形層5に、液状結合剤8による所望の画像(焼結造形物の断面形状を反映した画像)を形成する。具体的には、制御部は、予め入力された焼結造形物を構成する各断面層の画像情報を有し、この画像情報に応じて、吐出ヘッド51を移動する位置、液状結合剤8を吐出するタイミングを制御し、対応する各造形層5に液状結合剤8を付与する。
硬化部60は、造形層5に付与された液状結合剤8を硬化させて造形断面層6を形成する液状結合剤硬化機構61を備えている。例えば、液状結合剤8に紫外線硬化性樹脂を含む材料を用いる場合には、液状結合剤硬化機構61は、紫外線照射機により構成され、また、例えば、液状結合剤8に熱硬化性樹脂を含む材料を用いる場合には、液状結合剤硬化機構61は、加熱装置により構成される。
現出部70は、造形層5の液状結合剤8が付与されていない領域(非造形部5b)を除去して造形物7を現出する部分であり、造形部40の−X側に配置されている。現出部70は、切削ナイフ、回転ブラシなどの不要部除去手段(図示省略)を備えており、搬送機構43によって造形部40から搬送された造形物(造形層5の積層物)に対して現出処理を行う。
なお、現出処理は、バインダー材料3が水溶性の場合において、水洗などにより非造形部5bを洗い流し除去する方法であってもよいため、不要部除去手段として、水洗槽などを備える構成であっても良い。
脱脂焼結部80は、非造形部5bが除去された造形物7(積層された造形断面層6)を脱脂し、焼結処理する部分であり、現出部70の−X側に配置されている。脱脂焼結部80は、脱脂焼結炉81、加熱ヒーター82、脱脂ガス供給設備83、排気設備84などを備えており、搬送機構43によって現出部70から搬送された造形物7に対して脱脂焼結処理を行う。
なお、焼結造形装置100は、現出部70および脱脂焼結部80が、造形部40から連続して設けられている構成を例に説明したが、これに限定するものではない。例えば、現出部70および脱脂焼結部80と、あるいは、現出部70と脱脂焼結部80のそれぞれとが別体で構成されていても良い。
<液状結合剤>
図3は、実施形態1に係る「液状結合剤」としての液状結合剤8の概念図である。
液状結合剤8は、液状の液体部9に「第2の無機粒子」としての無機粒子8aを含んでいることを特徴としている。また、液体部9には、硬化剤8bを含んでいる。
無機粒子8aには、無機粒子2aと同様に、金属粒子やセラミック粒子を用いることができる。好適例として無機粒子2aと同様に、ステンレス合金粉末を使用している。なお、無機粒子8aは、ステンレス合金に限定するものではなく、例えば、銅、青銅(Cu/Sn)、真鍮(Cu/Zn)、錫、鉛、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、チタン、タンタル、鉄、カルボニル鉄など、また、チタン合金、コバルト合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄合金、ニッケル合金、クロム合金、シリコン合金、ジルコニウム合金、金合金などの金属合金、また、Fe/Ni、Fe/Si、Fe/Al、Fe/Si/Al、Fe/Co、Fe/Co/Vなどを含む磁性合金、あるいはチタンアルミニウムなどの金属間化合物などであっても良い。また、セラミックの場合、アルミナ、ジルコニアなどであっても良い。
無機粒子8aは、平均粒子径が0.001μm以上10μm以下の略球形である。なお、無機粒子8aの平均粒子径は、0.001μm以上5μm以下であることが更に好ましく、真球形状に近いほどより好ましい。また、無機粒子2aの平均粒子径と無機粒子8aの平均粒子径との比率は、50000:1〜10:1の範囲である。これにより、無機粒子8aを無機粒子2aの空隙に容易に入り込ませることができる。つまり、より均質に無機粒子(無機粒子2aおよび無機粒子8a)の密度を高めることができ、より均質に無機粒子の密度を高めた三次元造形物を得ることができる。
硬化剤8bとしては、好適例として紫外線硬化性樹脂(紫外線重合性化合物)を用いているが、これに限定するものではなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、可視光領域の光により硬化する可視光硬化性樹脂(狭義の光硬化性樹脂)、赤外線硬化性樹脂等の各種光硬化性樹脂、X線硬化性樹脂など、また、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせる構成であっても良い。
また、液状結合剤8(液体部9)は、例えば、分散剤、界面活性剤、重合開始剤、重合促進剤、溶媒、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤、凝集防止剤、消泡剤などの成分を含むものであってもよい。
<焼結造形方法>
次に、上述した焼結造形材料1および液状結合剤8を用い、焼結造形装置100を使用して「焼結造形物」を造形する「焼結造形方法」について説明する。
本実施形態に係る焼結造形方法は、以下の工程を含んでいる。
(1)無機粒子2aが含まれる焼結造形材料1を用いて造形層5を形成する造形層形成工程
(2)造形層5の所望の領域に無機粒子8aが含まれる液状結合剤8を付与する工程
(3)付与された液状結合剤8を硬化させて造形断面層6を形成する工程
(4)造形層5の液状結合剤8が付与されていない領域を除去する工程
(5)積層された造形断面層6を加熱して焼結処理する工程
以下、図2を参照して順に説明する。
なお、焼結造形装置100に焼結造形材料1を供給した後の工程から造形物7の焼結処理を行う工程までは、焼結造形装置100が備える制御部の制御によって行われる。
まず、無機粒子2aおよびバインダー材料3を含む焼結造形材料1を準備し、材料供給部10(ホッパー11)に充填する。それぞれの比率は、無機粒子2aの粒径、粒径の分布、無機粒子2aによる体積充填率、展延して形成する造形層5の層厚みなど、焼結造形物の造形仕様に応じ、適宜設定することが望ましい。具体的には、例えば、無機粒子2aの体積充填率が約70%となるようにする。また、それぞれの分散が均一になることが好ましい。
また、無機粒子8aおよび硬化剤8bを含む液状結合剤8を準備し、インクカートリッジに充填してカートリッジ装填部52にセットする。
無機粒子8aには、好適例として、無機粒子2aと同じ素材の無機粒子を用いるが、これに限定するものではない。また、液状結合剤8に含む無機粒子8aの量は、形成された造形断面層6に含まれる無機粒子2aの重量と無機粒子8aの重量との比率が400:1〜3:1の範囲となるように調整する。具体的には、好適例として、焼結造形材料1において体積充填率が約70%となるように調整された無機粒子2aに対して、無機粒子2aの重量と無機粒子8aの重量との比率が9.5:1となるように無機粒子8aの含有量を調整する。
硬化剤8bには、好適例として紫外線硬化性樹脂を使用する。
次に、材料供給部10から加熱部20(ホットプレート21)に焼結造形材料1を供給する。一度に加熱部20に供給される焼結造形材料1の量は、造形層5の1層分の量に見合う量に制御されている。
加熱部20は、ホットプレート21により焼結造形材料1をバインダー材料3の融点以上の温度に加熱し、バインダー材料3を融解することで、流動性造形材料4を形成する。
次に、展延部30により流動性造形材料4をステージ41上に展延する。具体的には、流動性を帯びた焼結造形材料1(流動性造形材料4)の+X側に当接させたスクイージ31を−X方向に移動させることによってステージ41の表面に押し伸ばす。
ステージ41は、常温(例えば室温)に維持されており、ステージ41上に展延された流動性造形材料4が常温に冷却される。流動性造形材料4は、常温に冷却されることで、バインダー材料3が凝固し、造形層5が形成され、造形層形成工程が完了する。
造形層5の層厚みは、スクイージ31による展延の仕様によって制御される。具体的には、造形層5の層厚みは、スクイージ31の下端とX−Y平面(例えば初期位置におけるステージ41の表面)との間隙の大きさ、スクイージ31の移動速度、流動性造形材料4の粘度などによって変化するため、所望の厚みになるように適宜設定を行うことが望ましい。
次に、描画部50は、ステージ41上に形成された造形層5の所望の領域に無機粒子8aが含まれる液状結合剤8を付与し、液状結合剤8による所望の画像を形成する。具体的には、予め制御部に入力された焼結造形物を構成する各断面層の画像情報に応じて、吐出ヘッド51を移動させながら液状結合剤8を吐出して、焼結造形物の断面形状に対応する位置に液状結合剤8を付与する。
図4は、焼結造形装置100によって造形層5の所望の領域に液状結合剤8を付与した様子を示す概念図である。
図1においてフレーク状に分散していたバインダー材料3は、一旦融解し凝固することで、無機粒子2aの体積充填率を高め、無機粒子2aの表面を覆うようにして造形層5の全体に略均一に分布する。所望の位置に選択的に付与された液状結合剤8は、図4に示すように、無機粒子2a、バインダー材料3を含む領域(バインダー材料3に覆われた無機粒子2aの空隙部)に浸透し、造形部5aが形成される。また、無機粒子2aに比較して粒径の小さい無機粒子8aは、液状結合剤8(液体部9)が造形層5の内部に浸透するのに伴って無機粒子2aの隙間に入り込んでいく。
次に、硬化部60は、造形層5に付与された液状結合剤8を硬化させて造形断面層6を形成する。具体的には、好適例として紫外線硬化性樹脂を含んだ液状結合剤8を使用しているため、キャリッジ53をステージ41上から退避させた後に、紫外線照射機(液状結合剤硬化機構61)によって造形層5に紫外線を照射し、造形層5に付与された液状結合剤8を硬化させることで、造形部5aを硬化させる。
なお、液状結合剤8の硬化は、次に積層される造形層5に付与される液状結合剤8との界面の接合強度を保つために、硬化が完了しない程度に硬化させることが好ましい。
次に、ステージ昇降機構42は、ステージ41上に展延され形成された造形層5の層厚みに応じてステージ41を降下させる。ステージ41が降下することで、造形層5の表面がホットプレート21と同一の面内に位置するようになり、再び、スクイージ31によって流動性造形材料4が展延され造形層5として積層されるX―Y平面が構成される。
以降、材料供給部10から加熱部20に焼結造形材料1を供給する工程から上記の工程までを繰り返し、造形層5を積層する。つまり、2層目以降の造形層5は、先に形成された造形層5の上に積層される。
なお、流動性造形材料4を展延して造形層5を形成する工程をステージ41上以外の場所で行い、造形層5を順次ステージ41に移送することで積層する方法であっても良い。
造形層5の積層が造形物7の造形に対応した高さに達し積層が完了したら、これを造形部40から取り出し、造形物7を現出させる。具体的には、搬送機構43によって造形物(造形層5の積層物)を造形部40から現出部70に搬送し、不要部除去手段によって液状結合剤8が付与されていない非造形部5bを除去することで造形物7(積層された造形断面層6)を現出させる。
次に、現出させた造形物7を脱脂焼結部80に移し、脱脂処理をする。具体的には、まず、搬送機構43によって現出部70から脱脂焼結炉81の内部に造形物7を搬送し、造形物7の脱脂を行う。脱脂は、バインダー材料3および付与し硬化した液状結合剤8(硬化剤8b)を加熱分解し除去することを目的として行う。脱脂工程では、バインダー材料3の脱脂が開始する温度範囲(好適例においては、ポリカプロラクトンジオールの熱分解開始温度(約200℃)を超える温度(300℃))で加熱処理をし、バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)の脱脂を進める。バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)が熱分解することによって発生した分解成分は、脱脂ガス供給設備83から供給される脱脂用ガスによって、排気設備84から排出される。
次に、脱脂された造形物7の焼結処理を行う。具体的には、脱脂処理を行った温度を更に超える温度に徐々に加熱していき、無機粒子2aが焼結される温度で加熱処理を行う。好適例として、例えば、無機粒子2aに、ステンレス合金粉末を用いた場合には、ステンレス合金が焼結される1300℃まで徐々に加熱温度を上昇させる。無機粒子2aおよび無機粒子8aの焼結が完了することで、所望の焼結造形物が得られる。
徐々に加熱する温度を上昇させる加熱工程では、無機粒子8aを、無機粒子2aが焼結を開始する焼結開始温度(無機粒子2aのみで焼結させた場合の焼結開始温度)より低い温度において無機粒子2aに融着)させることができる。これは、無機粒子8aがナノ粒子レベルの大きさの無機粒子であるため、無機粒子8aを付与することによって焼結開始温度を降下させることができるサイズ効果(融点降下)によるものである。
図5は、脱脂、焼結の熱処理工程を従来技術(液状結合剤8が無機粒子8aを含まない場合)と比較する概念図である。熱処理温度の推移に応じて焼結造形物を構成する主材(無機粒子)の結び付き方が変化する様子を示している。
主材(無機粒子2a)は、バインダー材料および付与し硬化した液状結合剤によって支えられているが、脱脂工程(図5に示すAのゾーン)では、バインダー材料および付与し硬化した液状結合剤が徐々に加熱分解されるため、主材(無機粒子2a)を結び付ける力は徐々に弱くなる。これは、従来技術においても、本実施例においても同様である。
脱脂を完了し、徐々に加熱温度を上昇させて、焼結が完了する状態まで熱処理を継続する間(図5に示すBおよびCのゾーン)では、主材(無機粒子)を支える状態が、従来技術と異なっている。
従来技術では、脱脂が完了し、無機粒子同士の焼結が開始するまでの範囲(図5に示すBのゾーン)では、主材(無機粒子2a)を結び付ける力が極小となる。そのため、無機粒子の体積充填率が本実施形態と比較して低い(無機粒子2aのみのため)ことの影響も合わせて、造形物7の寸法変化が起こりやすい。
これに対し、本実施形態では、同様のBのゾーンにおいて無機粒子8aと無機粒子2aとの融着が開始するため、また無機粒子の体積充填率が従来技術と比較して高いため(無機粒子2aの空隙に無機粒子8aが入り込んでいるため)、造形物7の寸法変化が起こりにくい。
また、脱脂工程中に無機粒子8aと無機粒子2aとの融着が開始してもよい(この場合、融着開始温度は、バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)の熱分解開始温度が低い)。このようにすることで、バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)が脱脂されて主材(無機粒子2a)を結び付ける力が極小となる前に無機粒子8aと無機粒子2aとの融着が開始するため、造形物7の寸法変化が起こりにくい。また、脱脂工程が完了した後に無機粒子2aとの融着が開始してもよい。(この場合、融着開始温度は、バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)の熱分解開始温度が低い)。このようにすることで、主材(無機粒子2a)と主材(無機粒子2a)の空隙には、無機粒子2aが入り混んでいるので、バインダー材料3および液状結合剤8(硬化剤8b)が脱脂されても主材(無機粒子2a)が動きにくく、造形物7の寸法変化が起こりにくい。
以上述べたように、本実施形態による焼結造形方法、焼結造形に用いる液状結合剤、および焼結造形物によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態の焼結造形方法は、無機粒子2aが含まれる焼結造形材料1を用いて造形層5を形成する造形層形成工程と、造形層5の所望の領域に無機粒子8aが含まれる液状結合剤8を付与する工程と、付与された液状結合剤8を硬化させて造形断面層6を形成する工程とを含む。これらの工程を含むことにより、造形断面層6には、無機粒子2aに加え、更に無機粒子8aを含ませることができる。また、造形層5の液状結合剤8が付与されていない領域を除去する工程と、積層された造形断面層6を加熱して焼結処理する工程と、を含む。これらの工程を含むことにより、積層された造形断面層6によって三次元造形物(焼結造形物)が造形され、また焼結処理をすることによって、その強度を高めることができる。
また、造形断面層6には、無機粒子2aに加え、更に無機粒子8aを含ませるため、より無機粒子の密度(体積充填率)が高い焼結造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、無機粒子8aを、無機粒子2aが焼結を開始する焼結開始温度より低い温度において無機粒子2aに融着させることにより、無機粒子8aを、無機粒子2a同士を結着させるバインダーとして機能させることができる。その結果、焼結処理を行った場合の焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、焼結造形材料1は、無機粒子2a同士を結着する熱可塑性のバインダー材料3を含んでおり、造形層形成工程は、焼結造形材料1をバインダー材料3の融点以上の温度に加熱して行う。焼結造形材料1をバインダー材料3の融点以上の温度に加熱することで焼結造形材料1の流動性が高まるため、焼結造形材料1をより容易に展延させることが可能となり、より寸法精度の高い造形層5を形成することが可能となる。また、焼結処理を進める加熱工程では、バインダー材料3が熱分解されるまでの間(脱脂が完了するまでの間)バインダー材料3が無機粒子2a同士の結着に寄与する。本実施形態によれば、これらの結果、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、造形断面層6に含まれる無機粒子2aの重量と無機粒子8aの重量との比率が400:1〜3:1の範囲であるため、無機粒子2aを主材として造形することができる。また、この主材に付与する無機粒子8aによって、より無機粒子の密度が高い焼結造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、無機粒子2aの平均粒子径と無機粒子8aの平均粒子径との比率が50000:1〜10:1の範囲であるため、無機粒子2aを主材として造形することができ、また、付与する無機粒子8aが、液状結合剤8と共に主材(無機粒子2a)の間に浸透しやすい。その結果、より均質に無機粒子の密度を高めた造形断面層6を形成することができ、より均質に無機粒子の密度を高めた焼結造形物を得ることができる。その結果、焼結処理を行った場合の焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、無機粒子8aの平均粒子径が0.001μm以上10μm以下である。つまり、無機粒子8aがナノ粒子レベル(1〜1万nm)の大きさの無機粒子であるため、無機粒子2aが含まれる焼結造形材料1の所望の領域に液状結合剤8を付与した場合に、無機粒子2aの空隙に容易に入り込ませることができる。つまり、より均質に無機粒子の密度を高めることができ、より均質に無機粒子の密度を高めた焼結造形物を得ることができる。また、無機粒子8aがナノ粒子レベルの大きさの無機粒子であるため、無機粒子8aを付与することによって焼結造形物の焼結開始温度を降下させることができる。つまり、無機粒子8aのサイズ効果により、無機粒子8aと無機粒子2aとの焼結がより低い温度で開始されるため、例えば、無機粒子2aと無機粒子8aとが同じ金属の場合には、無機粒子2aだけの場合の焼結開始温度に比較し、より低い温度で焼結を開始することができる。その結果、焼結処理のための加熱工程における寸法の変化(例えば、焼結造形材料1に含まれるバインダー材料3の熱分解(脱脂)による寸法の変化)を、より低い温度から抑制することができるため、焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物を造形することができる。
また、無機粒子2aおよび無機粒子8aが、セラミック粒子または金属粒子であるため、これらが主材の焼結造形物に対して焼結処理を行うことができ、その結果、より強固な焼結造形物を得ることができる。
本実施形態の液状結合剤8は、焼結造形物の製造に用いる液状結合剤8であり、無機粒子2aが含まれる焼結造形材料1の所望の領域に付与され、付与された領域が硬化することで焼結造形物を構成する領域が形成される。また、この液状結合剤8には、無機粒子8aが含まれている。つまり、本実施形態の液状結合剤8によれば、焼結造形物を造形するための所望の領域には、無機粒子2aに加え、更に無機粒子8aを含ませることができる。その結果、より無機粒子の密度が高い焼結造形物を得ることができる。
また、液状結合剤8に含まれる無機粒子8aの平均粒子径が0.001μm以上10μm以下である。つまり、無機粒子8aは、ナノ粒子レベルの大きさの無機粒子であるため、無機粒子2aが含まれる焼結造形材料1の所望の領域に液状結合剤8を付与した場合に、無機粒子2aの空隙に容易に入り込ませることができる。つまり、より均質に無機粒子(無機粒子2aおよび無機粒子8a)の密度を高めることができ、より均質に無機粒子の密度を高めた焼結造形物を得ることができる。
また、例えば、焼結造形材料1に含まれる無機粒子2aが液状結合剤8に含まれる無機粒子8aと同様のセラミック粒子である場合、または、焼結造形材料1に含まれる無機粒子2aが液状結合剤8に含まれる無機粒子8aと同様の金属粒子である場合において、これらを主材とした焼結造形物の焼結処理を行うことができ、その結果、より強固な焼結造形物を得ることができる。
上述した焼結造形方法により造形された焼結造形物は、つまりは、液状結合剤8を用いて造形された焼結造形物は、更に言えば、積層する焼結造形材料1に予め含まれる無機粒子2aと、積層された焼結造形材料1に付与する液状結合剤8に含まれる無機粒子8aと、を含んで構成された焼結造形物は、焼結処理を行った場合の焼結造形物の寸法変化(収縮)がより抑制され、より寸法精度の高い焼結造形物として提供される。
1…焼結造形材料、2…粉末材料、2a…無機粒子、3…バインダー材料、3a…バインダーフレーク、4…流動性造形材料、5…造形層、5a…造形部、5b…非造形部、6…造形断面層、7…造形物、8…液状結合剤、8a…無機粒子、8b…硬化剤、9…液体部、10…材料供給部、11…ホッパー、12…材料吐出口、20…加熱部、21…ホットプレート、30…展延部、31…スクイージ、40…造形部、41…ステージ、42…ステージ昇降機構、43…搬送機構、50…描画部、51…吐出ヘッド、52…カートリッジ装填部、53…キャリッジ、54…キャリッジ移動機構、60…硬化部、61…液状結合剤硬化機構、70…現出部、80…脱脂焼結部、81…脱脂焼結炉、82…加熱ヒーター、83…脱脂ガス供給設備、84…排気設備、100…焼結造形装置。

Claims (3)

  1. ステージ上に第1の無機粒子を含む焼結造形材料を供給する材料供給部と、
    前記焼結造形材料を展延させ、造形層を形成する展延部と、
    前記造形層の所望の領域に第2の無機粒子を含む熱可塑性樹脂を付与する描画部と、
    前記造形層の前記熱可塑性樹脂が付与されていない領域を除去する現出部と、
    前記造形層から前記熱可塑性樹脂を脱脂し、前記造形層を加熱して焼結処理する脱脂焼結部と、
    前記脱脂焼結部を制御する制御部と、を備え、
    前記第2の無機粒子の焼結開始温度は、前記熱可塑性樹脂の加熱分解開始温度以上、前記第1の無機粒子の焼結開始温度以下であり、
    前記制御部は、前記脱脂焼結部が、前記第2の無機粒子の焼結開始温度以上、前記第1の無機粒子の焼結開始温度以下の温度で、前記造形層を加熱し、前記熱可塑性樹脂が脱脂されて前記第1の無機粒子を結び付ける力が極小となる前に前記第2の無機粒子を前記第1の無機粒子に融着させる第1制御と、
    前記脱脂焼結部が、前記第1の無機粒子の焼結開始温度以上の温度で、前記造形層を加熱する第2制御と、を実行することを特徴とする焼結造形装置。
  2. 前記脱脂焼結部は、脱脂焼結炉、加熱ヒーター、脱脂ガス供給設備および、排気設備を備え、
    前記排気設備は、前記熱可塑性樹脂が熱分解することによって発生した分解成分を、脱脂用ガスによって排出することを特徴とする請求項1に記載の焼結造形装置。
  3. 前記ステージを備える造形部、前記現出部および、前記脱脂焼結部は、前記造形部、前記現出部、前記脱脂焼結部の順に連続して設けられることを特徴とする請求項1に記載の焼結造形装置。
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