以下、複数の実施形態による高圧ポンプを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
第1実施形態による高圧ポンプを図1、2に示す。
本実施形態の高圧ポンプ10は、図示しない車両の内燃機関(以下、「エンジン」という)1に燃料を供給する燃料噴射弁138を有する燃料供給システム9に適用される。高圧ポンプ10は、エンジン1のエンジンヘッド2もしくはクランクシャフトで駆動可能なハウジングに取り付けられる。
図1に示すように、車両に搭載された燃料タンク132には、燃料としてのガソリン等が貯留される。燃料ポンプ133は、燃料タンク132内の燃料を汲み上げ吐出する。供給燃料配管7は、燃料ポンプ133と高圧ポンプ10とを接続する。これにより、燃料ポンプ133で汲み上げられ吐出された燃料は、供給燃料配管7を経由して高圧ポンプ10に流入する。
エンジン1には高圧ポンプ10とともに燃料レール137が設けられる。エンジン1は、例えば4気筒のガソリンエンジンである。燃料レール137は、エンジン1のエンジンヘッド2に設けられる。燃料噴射弁138は、噴孔がエンジン1の燃焼室内に露出するよう設けられる。燃料噴射弁138は、エンジン1の気筒数に合わせて例えば4つ設けられる。燃料レール137には、4つの燃料噴射弁138が接続される。
高圧ポンプ10と燃料レール137とは、高圧燃料配管8により接続される。供給燃料配管7から高圧ポンプ10に流入した燃料は、高圧ポンプ10で加圧され、高圧燃料配管8を経由して燃料レール137に供給される。これにより、燃料レール137内の燃料は比較的高圧に保たれる。燃料噴射弁138は、図示しない制御装置としてのECUからの指令により開閉弁し、燃料レール137内の燃料をエンジン1の燃焼室内に噴射する。このように、燃料噴射弁138は、所謂直噴式(DI)の燃料噴射弁である。
供給燃料配管7の高圧ポンプ10に対し燃料タンク132側には、センサ130が設けられる。センサ130は、供給燃料配管7内の燃料の圧力、すなわち、燃圧、および、燃料の温度、すなわち、燃温を検出し、対応する信号をECUに送信可能である。ECUは、センサ130により検出した供給燃料配管7内の燃圧および燃温に基づき、燃料ポンプ133から吐出する燃料の目標圧力を決定し、目標圧力の燃料が燃料ポンプ133から吐出されるよう、燃料ポンプ133のモータの作動を制御する。
図2に示すように、高圧ポンプ10は、上ハウジング21、下ハウジング22、被固定部25、シリンダ23、ホルダ支持部24、カバー26、プランジャ11、吸入弁部300、電磁駆動部500、吐出通路部700等を備えている。
上ハウジング21、下ハウジング22、被固定部25、シリンダ23、ホルダ支持部24は、例えばステンレス等の金属により形成されている。ここで、上ハウジング21および下ハウジング22は、「ハウジング」に対応している。
上ハウジング21は、略八角柱状に形成されている。上ハウジング21は、八角筒状のハウジング外周壁270を有している。ハウジング外周壁270は、平面状の平面部271を有している。平面部271は、ハウジング外周壁270の周方向に8つ形成されている(図4参照)。
上ハウジング21は、穴部211、吸入穴部212、吸入穴部213、吐出穴部214、吐出穴部215を有している。穴部211は、上ハウジング21の中央を上ハウジング21の軸に沿って円筒状に貫くよう形成されている。
吸入穴部212は、上ハウジング21のハウジング外周壁270の1つの平面部271から穴部211に向かって延びるよう略円筒状に形成されている。吸入穴部213は、吸入穴部212と穴部211とを接続するよう略円筒状に形成されている。吸入穴部212と吸入穴部213とは同軸に形成されている。また、吸入穴部212および吸入穴部213の軸は、穴部211の軸と直交する。吸入穴部213の内径は、吸入穴部212の内径より小さい(図5参照)。上ハウジング21の吸入穴部212および吸入穴部213の内側には、吸入通路216が形成されている。ここで、上ハウジング21は、「吸入通路形成部」に対応している。
吐出穴部214は、上ハウジング21のハウジング外周壁270の吸入穴部212が形成された平面部271とは反対側の平面部271から穴部211に向かって延びるよう略円筒状に形成されている。吐出穴部215は、吐出穴部214と穴部211とを接続するよう略円筒状に形成されている。吐出穴部214と吐出穴部215とは同軸に形成されている。また、吐出穴部214および吐出穴部215の軸は、穴部211の軸と直交する。吐出穴部215の内径は、吐出穴部214の内径より小さい(図6参照)。吐出穴部214および吐出穴部215の内側には、吐出通路217が形成されている。ここで、上ハウジング21の吐出穴部214および吐出穴部215は、「吐出通路形成部」に対応している。また、吐出穴部215は、吐出穴233より小さく、吐出穴部215の中心軸は、吐出穴233の中心軸に対し鉛直方向下側に配置される。
また、吸入穴部212と吸入穴部213と吐出穴部214と吐出穴部215とは同軸に形成されている。すなわち、吸入穴部212、吸入穴部213、吐出穴部214、吐出穴部215は、同一平面上に軸がある(図2〜4参照)。
上ハウジング21の下方には、ハウジング凹部210が形成されている。ハウジング凹部210は、上ハウジング21の軸方向の一方の端面から略円筒状に凹むよう形成されている。
下ハウジング22は、略円板状に形成されている。下ハウジング22は、穴部221、穴部222を有している。下ハウジング22の上方には、ハウジング凸部220が形成されている。ハウジング凸部220は、下ハウジング22の一方の面の中央から略円柱状に突出するよう形成されている。
穴部221は、下ハウジング22およびハウジング凸部220の中央を板厚方向に略円筒状に貫くよう形成されている。なお、穴部221の内径は、穴部211の内径よりやや大きい。穴部222は、下ハウジング22の一方の面のハウジング凸部220の径方向外側の部位と他方の面とを接続するよう穴部221の径方向外側に1つ形成されている。
下ハウジング22は、ハウジング凸部220がハウジング凹部210に嵌合するよう上ハウジング21と一体に設けられている。ハウジング凸部220の外径は、ハウジング凹部210の内径より大きい。そのため、上ハウジング21と下ハウジング22とは、ハウジング凸部220がハウジング凹部210に圧入されることにより固定されている。ここで、上ハウジング21と下ハウジング22とは、上ハウジング21の下ハウジング22側の面と下ハウジング22の上ハウジング21側の面(図2に示す当接部203)において軸方向で当接している。
上ハウジング21の下ハウジング22側の面の外縁部には、穴部222の上ハウジング21側の開口を塞がないよう、逃がし部218がテーパ面で形成され、当接部203と逃がし部218を両立させている。
被固定部25は、下ハウジング22の外縁部から径方向外側へ板状に延びるようにして下ハウジング22と一体に形成されている。つまり、被固定部25は、下ハウジング22および上ハウジング21に接続している。本実施形態では、被固定部25は、下ハウジング22の周方向に等間隔で2つ形成されている。2つの被固定部25は、それぞれ、1つのボルト孔250を有している。ボルト孔250は、被固定部25を板厚方向に貫くよう略円筒状に形成されている。
高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられるとき、被固定部25は、ボルト孔250に対応して設けられるボルト100によりエンジン1のエンジンヘッド2に固定される(図2参照)。ボルト100は、軸部101、頭部102を有している。軸部101は、略円柱状に形成されている。軸部101の外径は、ボルト孔250の内径よりやや小さい。
頭部102は、軸部101の一方の端部に接続するよう軸部101と一体に形成されている。頭部102の外径は、軸部101の外径より大きい。高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられるとき、ボルト100は、軸部101が被固定部25のボルト孔250に挿通され、エンジンヘッド2の固定穴部120にねじ結合される。このとき、ボルト100の頭部102から被固定部25に対しエンジンヘッド2側への軸力が作用する。なお、ボルト100を締め付けた際に、下ハウジング22をエンジンヘッド2に確実に密着させるため、少なくともボルト100の頭部102周辺の平面度が適切に確保されている。
シリンダ23は、シリンダ穴部231を有している。シリンダ穴部231は、円柱状の部材の一方の端面から他方の端面側へ延びるよう略円筒状に形成されている。すなわち、シリンダ23は、筒部、および、筒部の一端を塞ぐ底部を有する有底筒状に形成されている。シリンダ穴部231の内周壁である筒状内周壁230は、略円筒状に形成されている。筒状内周壁230は、摺動面230a、拡径面230b等を有している。摺動面230aは、筒状内周壁230の開口側において円筒状に形成されている。拡径面230bは、摺動面230aに対し筒状内周壁230の開口とは反対側において円筒状に形成されている。摺動面230aと拡径面230bとは同軸に形成されている。拡径面230bの径は、摺動面230aの径より大きい。
シリンダ23の外径は、上ハウジング21の穴部211の内径よりやや大きい。シリンダ23は、下ハウジング22の穴部221を通り、上ハウジング21の穴部211に底部側の外周壁が嵌合するよう上ハウジング21および下ハウジング22と一体に設けられている。シリンダ23は、吸入穴232、吐出穴233を有している。吸入穴232は、シリンダ穴部231の底部側の端部の拡径面230bと上ハウジング21の吸入穴部213とを接続するよう形成されている。吐出穴233は、シリンダ穴部231の底部側の端部の拡径面230bと上ハウジング21の吐出穴部215とを接続するよう形成されている。すなわち、吸入穴232と吐出穴233とは、シリンダ穴部231の筒状内周壁230の軸Ax1を挟んで対向するよう形成されている。つまり、吸入穴232と吐出穴233とは、同一平面上に配置されている(図2〜4参照)。
ホルダ支持部24は、下ハウジング22の穴部221の径方向外側の部位から上ハウジング21とは反対側に略円筒状に延びるようにして形成されている。本実施形態では、ホルダ支持部24は、下ハウジング22と一体に形成されている。ホルダ支持部24は、シリンダ23の一端の径方向外側においてシリンダ23と同軸になるよう形成されている。高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられるとき、ホルダ支持部24は、エンジンヘッド2に形成された取付穴部3に挿入される(図2参照)。
プランジャ11は、例えばステンレス等の金属により略円柱状に形成されている。プランジャ11は、大径部111、小径部112を有している。小径部112は、外径が大径部111の外径より小さい。プランジャ11は、大径部111側がシリンダ23のシリンダ穴部231に挿入されるようにして設けられている。シリンダ穴部231の底壁および筒状内周壁230の拡径面230bとプランジャ11の大径部111側の端部との間に加圧室200が形成されている。すなわち、シリンダ23は、加圧室200を形成している。また、シリンダ23は、加圧室200を形成する筒状の筒状内周壁230を有している。ここで、シリンダ23は、「加圧室形成部」に対応している。加圧室200は、吸入穴232および吐出穴233に接続している。
プランジャ11の外径は、シリンダ23の内径、すなわち、シリンダ穴部231の内径よりやや小さく形成されている。そのため、プランジャ11は、大径部111の外周壁がシリンダ穴部231の筒状内周壁230の摺動面230aと摺動しつつ、シリンダ穴部231内を軸方向に往復移動可能である。プランジャ11がシリンダ穴部231内を往復移動するとき、加圧室200の容積が増減する。このように、プランジャ11は、一端が加圧室200に位置するよう筒状内周壁230の内側において軸方向に往復移動可能に設けられている。
本実施形態では、ホルダ支持部24の内側にシールホルダ14が設けられている。シールホルダ14は、例えばステンレス等の金属により筒状に形成されている。シールホルダ14は、外壁がホルダ支持部24の内壁に嵌合するよう設けられている。シリンダ23とシールホルダ14との間に中間筒部材241が設けられている。中間筒部材241は、略円筒状に形成され、シリンダ23と同軸に設けられている。中間筒部材241の内径は、シリンダ穴部231の内径より大きい。また、中間筒部材241には、内周壁と外周壁とを接続する穴部242が形成されている。穴部242は、中間筒部材241の周方向に複数形成されている。
シールホルダ14は、内壁と中間筒部材241のシリンダ23とは反対側の端面とプランジャ11の小径部112の外周壁との間に略円筒状の空間を形成するよう設けられている。当該空間には、環状のシール141が設けられている。シール141は、径内側のフッ素樹脂製のリングと径外側のゴム製のリングとからなる。シール141により、プランジャ11の小径部112周囲の燃料油膜の厚さが調整され、エンジン1への燃料のリークが抑制される。また、シールホルダ14のシリンダ23とは反対側の端部には、オイルシール142が設けられている。オイルシール142により、プランジャ11の小径部112の周囲のオイル油膜の厚さが調整され、オイルのリークが抑制される。なお、プランジャ11の大径部111と小径部112との間の段差面と中間筒部材241およびシール141との間には、プランジャ11の往復移動時に容積が変化する可変容積室201が形成されている。
ここで、下ハウジング22とシリンダ23の外周壁とホルダ支持部24の内周壁とシールホルダ14との間に環状の空間である環状空間202が形成されている。環状空間202は、下ハウジング22の穴部222に接続している。また、環状空間202は、シールホルダ14の内周壁とシリンダ23の外周壁および中間筒部材241の外周壁との間の円筒状の空間、ならびに、穴部242を経由して可変容積室201に接続している。
プランジャ11の小径部112の大径部111とは反対側の端部には、略円板状のスプリングシート12が設けられている。シールホルダ14とスプリングシート12との間には、スプリング13が設けられている。スプリング13は、例えばコイルスプリングであり、一端がスプリングシート12に当接し、他端がスペーサ140を介してシールホルダ14に当接するよう設けられている。シールホルダ14は溶接可能な材料であるため硬度が比較的低く、比較的硬度の高いスペーサ140を介することで、シールホルダ14の摩耗を抑制する。スプリング13は、スプリングシート12を経由してプランジャ11を加圧室200とは反対側に付勢している。高圧ポンプ10は、エンジン1のエンジンヘッド2に取り付けられるとき、プランジャ11の小径部112の大径部111とは反対側の端部にリフタ5が取り付けられる。
高圧ポンプ10がエンジン1に取り付けられたとき、リフタ5は、エンジン1の駆動軸に連動して回転するカム軸のカム4に当接する。これにより、エンジン1が回転しているとき、カム4の回転により、プランジャ11が軸方向に往復移動する。このとき、加圧室200および可変容積室201の容積は、それぞれ周期的に変化する。
図2に示すように、プランジャ11が下死点にあるとき、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112とは反対側の端部は、摺動面230aの拡径面230b側の端部に対し拡径面230b側に位置している。また、このとき、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112側の端部は、摺動面230aの拡径面230bとは反対側の端部に対し拡径面230bとは反対側に位置している。
図3に示すように、プランジャ11が上死点にあるとき、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112とは反対側の端部は、摺動面230aの拡径面230b側の端部に対し拡径面230b側に位置している。また、このとき、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112側の端部は、摺動面230aの拡径面230bとは反対側の端部に対し拡径面230bとは反対側に位置している。
上述のように、プランジャ11が下死点から上死点までのどの位置にあっても、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112とは反対側の端部は、摺動面230aの拡径面230b側の端部に対し拡径面230b側に位置し、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112側の端部は、摺動面230aの拡径面230bとは反対側の端部に対し拡径面230bとは反対側に位置している。
カバー26は、例えばステンレス等の金属により形成されている。カバー26は、カバー筒部261、カバー底部262等を有している。カバー筒部261は、略八角筒状に形成されている。カバー筒部261は、八角筒状のカバー外周壁280を有している。カバー外周壁280は、平面状の平面部281を有している。平面部281は、カバー外周壁280の周方向に8つ形成されている。
カバー底部262は、カバー筒部261の一端を塞ぐようカバー筒部261と一体に形成されている。すなわち、カバー26は、有底筒状に形成されている。なお、本実施形態では、カバー26は、例えば板状の部材をプレス加工することにより形成されている。そのため、カバー26は、肉厚が比較的小さい。なお、カバー26は、高圧室を形成しないため、肉厚を小さくできる。
カバー26は、カバー穴部265、カバー穴部266、カバー穴部267を有している。カバー穴部265は、カバー底部262の中央を板厚方向に貫くよう略円筒状に形成されている。カバー穴部266、カバー穴部267は、それぞれ、カバー筒部261の内周壁と外周壁すなわちカバー外周壁280の平面部281とを接続するよう略円筒状に形成されている。カバー穴部266とカバー穴部267とは、カバー筒部261の軸を挟んで対向するよう略同軸に形成されている。
カバー26は、内側に上ハウジング21を収容し、カバー筒部261のカバー底部262とは反対側の端部が、下ハウジング22の上ハウジング21側の面に当接するよう設けられている。カバー26は、上ハウジング21、下ハウジング22、シリンダ23との間に燃料室260を形成している。ここで、カバー筒部261の端部と下ハウジング22とは、例えば溶接により周方向の全域に亘り接合されている。これにより、カバー筒部261と下ハウジング22との間は、液密に保たれている。また、カバー26は、カバー穴部266と上ハウジング21の吸入穴部212とが対応し、カバー穴部267と上ハウジング21の吐出穴部214とが対応するよう設けられている。カバー26の頭頂部、すなわち、カバー底部262から作動音が放射されるため、カバー底部262の剛性を高くすることが望ましい。本実施形態では、カバー底部262の形状をドーム形状とすることにより、カバー底部262の剛性を高くしているが、カバー底部262を平面状に形成し、リブ等を設けることにより剛性を高くしてもよい。
このように、カバー26は、シリンダ23、上ハウジング21および下ハウジング22の少なくとも一部を覆い、シリンダ23、上ハウジング21および下ハウジング22との間に燃料室260を形成している。なお、燃料室260は、カバー筒部261の内周壁とハウジング外周壁270との間において略八角筒状に形成されている。
カバー26には、供給通路部29が設けられている。供給通路部29は、筒状に形成され、一端がカバー底部262のカバー穴部265の周囲の外壁に接続するよう設けられている。供給通路部29は、内側の空間が、カバー穴部265を経由して燃料室260に連通するよう設けられている。ここで、供給通路部29とカバー底部262とは、供給通路部29の周方向の全域に亘り溶接されている。供給通路部29の他端には、供給燃料配管7が接続される。これにより、燃料ポンプ133から吐出される燃料は、供給燃料配管7、供給通路部29を経由して燃料室260に流入する。
図5に示すように、吸入弁部300は、上ハウジング21の吸入穴部212、吸入穴部213の内側、すなわち、吸入通路216に設けられている。吸入弁部300は、シート部材31、ストッパ35、弁部材40、スプリング39等を有している。
シート部材31は、例えばステンレス等の金属により略円板状に形成されている。シート部材31は、吸入穴部212の内側において吸入穴部212と略同軸となるよう吸入通路216に設けられている。ここで、シート部材31の外周壁は、吸入穴部212の内周壁に圧入されている。
シート部材31は、連通路32、連通路33、弁座310を有している。連通路32は、シート部材31の中央においてシート部材31の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。ここで、連通路32は、シート部材31と略同軸となるよう形成されている。
連通路33は、連通路32の径方向外側においてシート部材31の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。連通路33は、シート部材31の周方向に複数形成されている。本実施形態では、連通路33は、例えば12個が等間隔に形成されている。連通路33が等間隔に形成されているため、燃料流れが均一になり、後述する弁部材40の挙動が安定する。なお、連通路33は、シート部材31の軸を中心とする仮想円上に配置されている。
弁座310は、シート部材31の加圧室200側の面において、連通路32、および、複数の連通路33それぞれの周囲に環状に形成されている。すなわち、弁座310は、シート部材31の加圧室200側の面において、複数形成されている。
ストッパ35は、例えばステンレス等の金属により形成されている。ストッパ35は、吸入通路216においてシート部材31に対し加圧室200側に設けられている。ストッパ35は、ストッパ小径部36、ストッパ大径部37、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、ストッパ凸部353、連通穴38等を有している。
ストッパ小径部36は、略円柱状に形成されている。ストッパ小径部36の外径は、吸入穴部213の内径よりやや小さい。ストッパ大径部37は、略円柱状に形成されている。ストッパ大径部37の外径は、ストッパ小径部36の外径より大きく、吸入穴部212の内径よりやや小さい。ストッパ大径部37は、ストッパ小径部36の加圧室200とは反対側においてストッパ小径部36と同軸となるようストッパ小径部36と一体に形成されている。
ストッパ35は、ストッパ小径部36が吸入穴部213の内側に位置し、ストッパ大径部37が吸入穴部212の内側に位置するよう吸入通路216に設けられている。すなわち、ストッパ35は、吸入穴部212および吸入穴部213の内側において吸入穴部212および吸入穴部213と略同軸となるよう吸入通路216に設けられている。
ここで、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の環状の段差面は、吸入穴部212と吸入穴部213との間の環状の段差面に当接している。これにより、ストッパ35は、加圧室200側への移動が規制されている。
また、ストッパ35のストッパ大径部37の加圧室200とは反対側の面は、シート部材31の加圧室200側の面に当接している。これにより、ストッパ35は、加圧室200とは反対側への移動が規制されている。
ストッパ凹部351は、ストッパ大径部37のシート部材31側の面から加圧室200側へ略円筒状に凹むよう形成されている。ここで、ストッパ凹部351は、ストッパ大径部37と略同軸となるよう形成されている。ストッパ凹部351の内径は、ストッパ大径部37の外径より小さく、ストッパ小径部36の外径より大きい。
ストッパ凹部352は、ストッパ凹部351の底面から加圧室200側へ略円筒状に凹むよう形成されている。ここで、ストッパ凹部352は、ストッパ凹部351と略同軸となるよう形成されている。ストッパ凹部352の内径は、ストッパ凹部351の内径およびストッパ小径部36の外径より小さい。
ストッパ凸部353は、ストッパ凹部352の底面の中央からシート部材31側へ略円柱状に突出するよう形成されている。ここで、ストッパ凸部353は、ストッパ凹部352と略同軸となるよう形成されている。また、ストッパ凸部353のシート部材31側の端面は、ストッパ凹部351の底面よりもシート部材31側に位置している。
連通穴38は、ストッパ凸部353の径方向外側においてストッパ凹部352の底面とストッパ小径部36の加圧室200側の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。連通穴38は、ストッパ小径部36の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、連通穴38は、例えば4個形成されている。なお、連通穴38は、ストッパ小径部36の軸を中心とする仮想円上に配置されている。
シート部材31の連通路32、連通路33、ストッパ35のストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38には吸入通路216が形成されている。そのため、燃料室260の燃料は、連通路32、連通路33、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38に形成された吸入通路216、および、吸入穴232を経由して加圧室200に流入可能である。
弁部材40は、ストッパ凹部351の内側、すなわち、シート部材31の加圧室200側に設けられている。弁部材40は、バルブ本体41、テーパ部42、ガイド部43、連通孔44を有している。バルブ本体41、テーパ部42、ガイド部43は、例えばステンレス等の金属により一体に形成されている。バルブ本体41は、略円板状に形成されている。
テーパ部42は、バルブ本体41の径方向外側においてバルブ本体41と一体に略円環状に形成されている。テーパ部42は、加圧室200側の面がシート部材31側から加圧室200側へ向かうに従いバルブ本体41の軸Ax2に近づくようテーパ状に形成されている。
ガイド部43は、テーパ部42を周方向において複数に分断するようバルブ本体41から径方向外側に突出し、バルブ本体41およびテーパ部42と一体に形成されている。本実施形態では、ガイド部43は、テーパ部42を周方向において、例えば3つに分断するようバルブ本体41の周方向に等間隔で3つ形成されている。ここで、ガイド部43のバルブ本体41とは反対側の端部は、テーパ部42の外縁部よりも径方向外側に位置している。ガイド部43は、バルブ本体41とは反対側の端部がストッパ凹部351の内周壁と摺動することで弁部材40の軸方向の移動を案内可能である。
連通孔44は、バルブ本体41の一方の面と他方の面とを連通するよう形成されている。連通孔44は、バルブ本体41の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、連通孔44は、例えば9個形成されている。連通孔44は、バルブ本体41の軸Ax2を中心とする仮想円上に配置されている。
弁部材40のバルブ本体41およびガイド部43における板厚は、シート部材31の加圧室200側の面とストッパ凸部353のシート部材31側の端面との距離より小さい。
弁部材40は、シート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に当接可能であり、ストッパ35側の面の中央がストッパ凸部353のシート部材31側の端面に当接可能である。
弁部材40は、バルブ本体41およびガイド部43における板厚と、シート部材31の加圧室200側の面とストッパ凸部353のシート部材31側の端面との距離との差分の範囲で軸方向に往復移動可能である。
弁部材40は、シート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310から離間すると開弁し連通路32、連通路33における燃料の流れを許容し、シート部材31側の面が複数の弁座310に当接すると閉弁し連通路33における燃料の流れを規制可能である。このように、弁部材40は、複数の弁座310に当接するマルチシートタイプの弁体である。
弁部材40が開弁すると、連通路32および連通路33と連通孔44およびストッパ凹部351との間の燃料の流れが許容され、燃料室260側の燃料は、連通路32、連通路33、連通孔44、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることができる。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通穴38、ストッパ凹部352、ストッパ凹部351、連通孔44、連通路33、連通路32を経由して燃料室260側に流れることができる。このとき、燃料は、弁部材40の連通孔44、および、弁部材40の周囲を流れる。
弁部材40が閉弁すると、連通路32および連通路33と連通孔44およびストッパ凹部351との間の燃料の流れが規制され、燃料室260側の燃料は、連通路32、連通路33、連通孔44、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることが規制される。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通穴38、ストッパ凹部352、ストッパ凹部351、連通孔44、連通路33、連通路32を経由して燃料室260側に流れることが規制される。
スプリング39は、例えばコイルスプリングであり、ストッパ凸部353の径方向外側に設けられている。スプリング39は、一端がストッパ凹部352の底面に当接し、他端が弁部材40の加圧室200側の面に当接している。スプリング39は、弁部材40をシート部材31側に付勢している。
図5に示すように、電磁駆動部500は、上ハウジング21の吸入穴部212からカバー26のカバー穴部266を経由してカバー外周壁280の径方向外側へ突出するよう設けられている。
電磁駆動部500は、筒部材51、ガイド部材52、ニードル53、付勢部材としてのスプリング54、可動コア55、磁気絞り部56、固定コア57、コイル60、ヨーク641、ヨーク645、コネクタ65等を有している。
筒部材51は、第1筒部511、第2筒部512、第3筒部513を有している。第1筒部511、第2筒部512、第3筒部513は、例えば磁性材料により形成されている。第1筒部511は、略円筒状に形成されている。
第2筒部512は、筒状に形成されている。第2筒部512は、端部が第1筒部511の端部に接続するよう第1筒部511と略同軸かつ一体に形成されている。第2筒部512の最大外径は、第1筒部511の第2筒部512側の端部の外径より小さい。
第3筒部513は、略円筒状に形成されている。第3筒部513は、端部が第2筒部512の第1筒部511とは反対側の端部に接続するよう第2筒部512と略同軸かつ一体に形成されている。第3筒部513の外径は、第2筒部512の最大外径より小さい。
第1筒部511の第2筒部512とは反対側の端部の外周壁には、ねじ山が形成されている。上ハウジング21の吸入穴部212の吸入穴部213とは反対側の端部の内周壁には、第1筒部511のねじ山に対応するねじ溝が形成されている。
筒部材51は、第1筒部511のねじ山が上ハウジング21のねじ溝にねじ結合するよう設けられている。ここで、筒部材51の第1筒部511の加圧室200側の端面は、シート部材31およびストッパ35を加圧室200側へ付勢している。そのため、シート部材31とストッパ35とは互いに当接しており、軸方向の移動が規制されている。また、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面は、吸入穴部213と吸入穴部212との間の段差面に押し付けられている。そのため、吸入穴部213と吸入穴部212との間の段差面には、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面から加圧室200側へ向かう軸力が作用している。
なお、第2筒部512の外周壁は、例えば六角筒状のように平面を有した筒状に形成されている。そのため、筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合するとき、第2筒部512の外周壁に対応する工具を用いれば、筒部材51を吸入穴部212に比較的容易にねじ結合することができる。
筒部材51は、第1筒部511がカバー26のカバー穴部266の内側に位置している。そのため、第1筒部511の加圧室200側の端部がカバー筒部261の内側に位置し、第1筒部511の加圧室200とは反対側の端部、第2筒部512、第3筒部513がカバー筒部261の外側に位置している。なお、筒部材51は、軸がシリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1に直交するよう設けられている。
筒部材51の加圧室200側の部位の内径は、加圧室200とは反対側の部位の内径より大きい。筒部材51の内側には、加圧室200側を向く略円環状の段差面514が形成されている。段差面514は、肉厚確保のため、筒部材51の軸方向において第1筒部511と第2筒部512との接続部に対しやや加圧室200側に位置している。
第1筒部511には、内周壁と外周壁とを連通する穴部515が形成されている。穴部515は、第1筒部511の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、穴部515は、6つ形成されている。穴部515は、第1筒部511の軸方向において概ねハウジング外周壁270とカバー外周壁280との間に位置している。そのため、燃料室260の燃料は、穴部515を経由して第1筒部511の内側に流入し、吸入通路216を経由して加圧室200側へ流れることができる。
第1筒部511の内側の穴部515に対応する位置には、筒状のフィルタ510が設けられている。フィルタ510は、燃料室260から加圧室200側へ流れる燃料に含まれる異物を捕集可能である。フィルタ510は、加圧室200側の端部の外周部が第1筒部511の内周壁に圧入され、加圧室200とは反対側の端部がガイド部材52に当接している。そのため、燃料室260側の燃料は、フィルタ510を通過してのみ吸入通路216に流入する。フィルタ510は、ガイド部材52に確実に当接させるため、若干潰して組み付けられている。
カバー26の外側において筒部材51の第1筒部511の径方向外側には、溶接リング519が設けられている。溶接リング519は、例えば金属により略円筒状に形成されている。溶接リング519は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、カバー外周壁280の平面部281のカバー穴部266の周囲に当接している。溶接リング519は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りカバー外周壁280の平面部281に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り第1筒部511の外周壁に溶接されている。これにより、燃料室260の燃料がカバー穴部266と第1筒部511の外周壁との間の隙間を経由してカバー26の外部に漏れることが抑制されている。なお、高圧作用時の荷重は、筒部材51のねじで受けるため、溶接リング519には応力が作用しない。
ガイド部材52は、第1筒部511の内側に設けられている。ガイド部材52は、例えば金属等により略円柱状に形成されている。ガイド部材52は、外周壁が第1筒部511の内周壁に嵌合し、一方の端面の外縁部が筒部材51の段差面514に当接するよう第1筒部511の内側に固定されている。ここで、第1筒部511の内周壁のうちガイド部材52に対応する部位には、縮径部516が形成されている。縮径部516は、第1筒部511の内周壁において径方向内側へ突出するよう形成されている。そのため、第1筒部511の内周壁は、縮径部516において内径が小さくなっている。これにより、ガイド部材52は、縮径部516に圧入される。
ガイド部材52は、軸穴521、連通穴522を有している。軸穴521は、ガイド部材52の中央を軸方向に貫くよう形成されている。ここで、軸穴521は、ガイド部材52と略同軸となるよう形成されている。
連通穴522は、軸穴521の径方向外側において加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通するよう形成されている。連通穴522は、第1筒部511の内側の空間のうちガイド部材52に対し加圧室200側の空間とガイド部材52に対し加圧室200とは反対側の空間とを連通している。なお、ガイド部材52には、加圧室200側の端面の軸穴521の周囲から加圧室200側へ向かって略円筒状に突出する筒部523が形成されている。
ニードル53は、筒部材51の内側に設けられている。ニードル53は、例えば金属により形成されている。ニードル53は、ニードル本体531、係止部532を有している。ニードル本体531は、略円柱状に形成されている。係止部532は、ニードル本体531の外周壁から径方向外側へ略円環状に延びるようニードル本体531と一体に形成されている。
ニードル53は、ニードル本体531がガイド部材52の軸穴521に挿通され、係止部532がガイド部材52に対し加圧室200側に位置するよう設けられている。ニードル本体531の加圧室200側の端部は、シート部材31の連通路32の内側に位置し、弁部材40の加圧室200とは反対側の面に当接可能である。ニードル本体531の加圧室200とは反対側の端部は、第3筒部513の第2筒部512とは反対側の端面に対し加圧室200とは反対側に位置している。
ニードル本体531の軸穴521に対応する部位の外径は、軸穴521の内径よりやや小さい。係止部532の外径は、軸穴521の外径より大きい。ニードル53は、筒部材51の内側において軸方向に往復移動可能である。ニードル本体531の外周壁は、軸穴521と摺動可能である。そのため、ガイド部材52は、ニードル53の軸方向の移動を案内可能である。なお、ガイド部材52の軸穴521の端部が変形しないよう、ガイド部材52の外周端部には、圧入しない逃げ部が形成されている。
スプリング54は、例えばコイルスプリングであり、ニードル本体531の径方向外側に設けられている。スプリング54は、一端がガイド部材52の加圧室200側の面に当接し、他端が係止部532の加圧室200とは反対側の面に当接している。すなわち、係止部532は、スプリング54の他端を係止している。スプリング54は、ニードル53を加圧室200側に付勢している。また、スプリング54の付勢力は、スプリング39の付勢力より大きい。そのため、スプリング54は、ニードル53を経由して弁部材40を加圧室200側に付勢し、弁部材40の加圧室200側の面をストッパ凸部353に押し付けている。このとき、弁部材40は、シート部材31の弁座310から離間し開弁している。
可動コア55は、例えば磁性材料により略円柱状に形成されている。可動コア55は、軸穴553、連通穴554を有している。軸穴553は、可動コア55の中央を軸方向に貫くよう形成されている。ここで、軸穴553は、可動コア55と略同軸となるよう形成されている。軸穴553の内径は、ニードル本体531の加圧室200とは反対側の端部の外径より小さい。
可動コア55は、軸穴553の内周壁がニードル本体531の加圧室200とは反対側の端部の外周壁と嵌合するようニードル53と一体に設けられている。ここで、可動コア55は、ニードル53に圧入され、ニードル53に対し相対移動不能である。また、可動コア55の加圧室200とは反対側の端面551は、ニードル本体531の加圧室200とは反対側の端面と略同一平面上に位置している。
連通穴554は、軸穴553の径方向外側において加圧室200とは反対側の端面551と加圧室200側の端面552とを連通するよう形成されている。この連通穴554により、可動コア55の往復移動時の流体抵抗を低減させ、高応答による移動を可能としている。また、連通穴554により、可動コア55と固定コア57との間の空間に燃料を供給することができ、圧力の急激な変化を抑制することで、キャビテーションエロージョンの発生を抑制できる。なお、可動コア55には、加圧室200側の端面552の軸穴553の周囲から加圧室200側へ向かって略円筒状に突出する筒部が形成されている。
また、本実施形態では、一体に設けられたニードル53および可動コア55の重心は、開弁から閉弁まで常に、ニードル53の軸上、かつ、ガイド部材52の内側に位置している。そのため、一体に設けられたニードル53および可動コア55の軸方向の移動を安定させることができる。
磁気絞り部56は、例えば非磁性部材により略円筒状に形成されている。磁気絞り部56の内径および外径は、第3筒部513の内径および外径と略同じである。磁気絞り部56は、第3筒部513と略同軸となるよう筒部材51に対し加圧室200とは反対側に設けられている。磁気絞り部56と第3筒部513とは、例えば溶接により接合されている。ここで、可動コア55の加圧室200とは反対側の端面551は、磁気絞り部56の内側に位置している。
固定コア57は、例えば磁性材料により形成されている。固定コア57は、固定コア小径部573、固定コア大径部574を有している。固定コア小径部573は、略円柱状に形成されている。固定コア小径部573の外径は、磁気絞り部56の内径よりやや大きい。固定コア小径部573は、磁気絞り部56に圧入されている。
固定コア大径部574は、略円柱状に形成され、固定コア小径部573と同軸となるよう軸方向の端部が固定コア小径部573の端部に接続され、固定コア小径部573と一体に形成されている。固定コア大径部574の外径は、固定コア小径部573の外径より大きく、磁気絞り部56の外径と略同じである。
固定コア57は、固定コア小径部573が磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端部の内側に位置するよう筒部材51の加圧室200とは反対側に設けられている。固定コア57と磁気絞り部56とは、例えば溶接により接合されている。ここで、固定コア小径部573と固定コア大径部574との間の環状の段差面は、磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端面に当接している。また、固定コア57の加圧室200側の端面571は、磁気絞り部56の筒部材51とは反対側の端面に対し加圧室200側に位置している。また、固定コア57は、磁気絞り部56と略同軸となるよう設けられている。スプリング54がニードル53を加圧室200側に付勢し弁部材40が弁座310から離間した状態では、固定コア57の加圧室200側の端面571と可動コア55の加圧室200とは反対側の端面551との間に隙間が形成される。
本実施形態では、筒部材51、ガイド部材52、スプリング54、ニードル53、可動コア55、磁気絞り部56、固定コア57、フィルタ510は、予め一体に組み付けられて第1電磁駆動部501を構成するようサブアセンブリ化されている。
具体的には、まず、ガイド部材52にスプリング54、ニードル53を組み付け、可動コア55をニードル53に圧入する。続いて、磁気絞り部56を固定コア57の固定コア小径部573に圧入、溶接し、磁気絞り部56と筒部材51とを溶接する。続いて、上述のガイド部材52を上述の筒部材51に圧入する。このとき、フィルタ510の端部がガイド部材52の加圧室200側の端面に当接するまで、フィルタ510を第1筒部511の内側に圧入する。以上の工程により、第1電磁駆動部501のサブアセンブリ化が完了する。
コイル60は、スプール61、巻線部62を有している。スプール61は、例えば樹脂により略円筒状に形成されている。スプール61は、筒部材51の加圧室200とは反対側の端部、可動コア55、磁気絞り部56および固定コア57の加圧室200側の端部の径方向外側に位置するよう筒部材51と略同軸に設けられている。スプール61は、軸方向の少なくとも一部が可動コア55の径方向外側に位置するよう設けられている。
巻線部62は、巻線620により形成されている。巻線620は、例えば銅等の電気伝導材により線状に形成されている。巻線部62は、巻線620をスプール61の外周壁に巻き回すことで略円筒状に形成されている。コイル60は、巻線部62の外周面を通る仮想的な1つの外側筒状面600、および、巻線部62の内周面を通り互いに径の異なる仮想的な内側筒状面601、内側筒状面602を有している。ここで、スプール61は、「巻線形成部」に対応している。
外側筒状面600は、略円筒状に形成されている。内側筒状面601は、略円筒状に形成され、外側筒状面600の加圧室200とは反対側の部位の内側に位置している。内側筒状面602は、略円筒状に形成され、外側筒状面600の加圧室200側の部位の内側において内側筒状面601に対し加圧室200側に位置している。内側筒状面602の径は、内側筒状面601の径より大きい。内側筒状面601および内側筒状面602は、スプール61の外周壁に位置している。すなわち、スプール61は、軸方向の加圧室200側の部位と加圧室200とは反対側の部位とで外径が異なる。
コイル60は、内側筒状面601と内側筒状面602とを連結する仮想的な連結面605を有している。連結面605は、スプール61の外周壁に位置し、少なくとも一部がスプール61の軸に対し垂直となるよう形成されている。このように、巻線620は、スプール61の外周壁、すなわち、内側筒状面601、内側筒状面602、連結面605の径方向外側において巻き回され、筒状の巻線部62を形成している。
ヨーク641、ヨーク645は、例えば磁性材料により形成されている。ヨーク641は、有底筒状に形成されている。ヨーク641の底部の中央には、略円形のヨーク穴部642が形成されている。ヨーク641は、底部のヨーク穴部642における内周壁が第1筒部511の外周壁に当接、または、吸引力が低下しない程度の微小な隙間を第1筒部511の外周壁との間に形成し、筒部がコイル60の径方向外側に位置するよう設けられている。なお、ヨーク641とコイル60との間には、樹脂が充填されている。
ヨーク645は、板状に形成され、ヨーク641の筒部の底部とは反対側の端部を塞ぐよう設けられている。ここで、ヨーク645の加圧室200側の端面の外縁部は、ヨーク641の筒部に当接している。また、ヨーク645の加圧室200側の端面の中央は、固定コア57の加圧室200とは反対側の端面572に当接し、端面572に溶接されている。
コネクタ65は、ヨーク641の筒部の周方向の一部に形成された切欠きから径方向外側へ突出するよう形成されている(図2参照)。コネクタ65は、端子651を有している。端子651は、コイル60の巻線620に電気的に接続されている。コネクタ65には、ハーネス6が接続される。これにより、ハーネス6および端子651を経由してコイル60の巻線部62に電力が供給される。
本実施形態では、コイル60、ヨーク641、コネクタ65は、予め一体に組み付けられて第2電磁駆動部502を構成するようサブアセンブリ化されている。
具体的には、まず、スプール61に端子651を圧入する。続いて、スプール61に巻線620を巻き回し、端子651と巻線620とを溶接、すなわちヒュージングする。続いて、上述のように組み付けたスプール61等をヨーク641に挿入した状態で、樹脂を充填し、コネクタ65を形成する。続いて、ヨーク645の外縁部をヨーク641の筒部に溶接する。以上の工程により、第2電磁駆動部502のサブアセンブリ化が完了する。
なお、ヨーク641の内側の樹脂部の加圧室200とは反対側の端面とヨーク645の加圧室200側の端面との間には、隙間が形成される。そのため、ヨーク641とヨーク645との組み付け性が向上する。また、当該隙間は、水等が通過不能な程度に小さく形成される。これにより、ヨーク641内への水等の侵入を抑制し、固定コア57および筒部材51等の腐食を抑制できる。
コイル60は、ECUからの指令によりハーネス6および端子651を経由して通電されると、電磁力を生じる。これにより、磁気絞り部56を避けて、ヨーク641、ヨーク645、固定コア57、可動コア55、筒部材51に磁気回路が形成される。これにより、固定コア57と可動コア55との間に吸引力が生じ、可動コア55は、ニードル53とともに固定コア57側に吸引される。そのため、弁部材40は、スプリング39の付勢力によりシート部材31の弁座310側に移動する。その結果、弁部材40は、弁座310に当接し、閉弁する。このように、電磁駆動部500は、コイル60に通電されると電磁力を生じ、固定コア57と可動コア55との間に吸引力を生じさせ、可動コア55およびニードル53を弁部材40の閉弁方向へ移動させ、弁部材40を閉弁可能である。
このように、コイル60は、巻線部62への通電により固定コア57と可動コア55との間に吸引力を生じさせ、可動コア55およびニードル53を閉弁方向へ移動させることが可能である。なお、可動コア55およびニードル53が閉弁方向に移動すると、ガイド部材52の筒部523がニードル53の係止部532に当接する。これにより、可動コア55およびニードル53は、閉弁方向の移動が規制される。筒部523が係止部532に当接し、可動コア55およびニードル53の閉弁方向の移動が規制されているとき、可動コア55と固定コア57とは離間している。すなわち、本実施形態では、可動コア55およびニードル53が固定コア57側に吸引されても、可動コア55と固定コア57とは当接しない。
ガイド部材52の加圧室200とは反対側にダンパ作用を生じさせるため、連通穴522にオリフィスを設けている。ダンパ作用と反対側の負圧により、筒部523と係止部532との衝突時の速度を低減し、NVを低減可能である。
コイル60に通電されていないとき、弁部材40は開弁しており、燃料室260は、加圧室200に連通した状態である。このとき、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、加圧室200の容積が増大し、燃料室260内の燃料は、穴部515を経由して第1筒部511の内側へ流れ、燃料が吸入穴232を経由して加圧室200に吸入される。さらに、弁部材40が開弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側に移動すると、加圧室200の容積が減少し、加圧室200内の燃料は、吸入穴232を経由して弁部材40側に流れる。
プランジャ11が加圧室200側に移動しているとき、コイル60に通電されると、弁部材40が閉弁し、燃料室260と加圧室200との間の燃料の流れが遮断される。弁部材40が閉弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側にさらに移動すると、加圧室200の容積がさらに減少し、加圧室200内の燃料が加圧される。
このように、プランジャ11が加圧室200側に移動している任意のタイミングで、電磁駆動部500により弁部材40を閉弁することにより、加圧室200で加圧する燃料の量が調整される。本実施形態では、吸入弁部300と電磁駆動部500とは、ノーマリーオープンタイプの弁装置を構成している。
本実施形態では、ストッパ35の連通穴38の中心に対しストッパ35の径方向内側において弁部材40に連通孔44が形成されている。これにより、加圧室200からの戻し燃料を弁部材40の内外に分岐させて自閉させないようにしている。なお、弁部材40のシート部材31側のエッジは、面取りされている。これにより、燃料の流れが円滑になり、自閉限界を向上できる。
また、本実施形態では、燃料噴射弁138が燃料を噴射しないとき、すなわち燃料カット時には、コイル60に通電せず、高圧ポンプ10からの燃料の吐出は0である。この場合において自閉により弁部材40が閉弁しないようスプリング54の荷重を設定している。
図5に示すように、コイル60に通電されていないとき、すなわち、コイル60への非通電時、可動コア55の加圧室200とは反対側すなわち固定コア57側の端面551は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601の軸方向の中心Ci1と外側筒状面600の軸方向の中心Co1との間に位置している。また、可動コア55の加圧室200側の端面552は、巻線部62の加圧室200側の端面621に対し固定コア57側に位置している。
なお、本実施形態では、コイル60に通電されて可動コア55が固定コア57に最接近しているときにおいても、可動コア55の固定コア57側の端面551は、中心Ci1と中心Co1との間に位置している。つまり、可動コア55の固定コア57側の端面551は、コイル60への通電状態にかかわらず、常に中心Ci1と中心Co1との間に位置している。
図6に示すように、吐出通路部700は、上ハウジング21の吐出穴部214からカバー26のカバー穴部267を経由してカバー外周壁280の径方向外側へ突出するよう設けられている。
吐出通路部700は、吐出ジョイント70、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、吐出弁付勢部材としてのスプリング79、リリーフ弁91、リリーフ弁付勢部材としてのスプリング99、係止部材95を有している。
吐出ジョイント70は、例えばステンレス等の金属により略円筒状に形成されている。吐出ジョイント70の一方の端部から他方の端部側へ所定距離離れた部位の外周壁には、ねじ山が形成されている。上ハウジング21の吐出穴部214の吐出穴部215とは反対側の端部の内周壁には、吐出ジョイント70の前記ねじ山に対応するねじ溝が形成されている。吐出ジョイント70は、前記ねじ山が上ハウジング21の前記ねじ溝にねじ結合するよう設けられている。
吐出ジョイント70は、カバー26のカバー穴部267の内側に設けられている。吐出ジョイント70は、加圧室200側の端部がカバー筒部261の内側において吐出穴部214の内側、すなわち、吐出通路217に位置し、加圧室200とは反対側の端部がカバー筒部261の外側に位置している。なお、吐出ジョイント70は、軸がシリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1に直交するよう設けられている。本実施形態では、吐出ジョイント70は筒部材51と略同軸に設けられている。
吐出ジョイント70の加圧室200側の部位の内径は、加圧室200とは反対側の部位の内径より大きい。そのため、吐出ジョイント70の内側には、加圧室200側を向く略円環状の段差面701が形成されている。段差面701は、カバー外周壁280に対し加圧室200とは反対側に位置している。
吐出ジョイント70は、内側に吐出通路705を形成している。吐出通路705には、加圧室200から吐出された燃料が流れる。ここで、吐出ジョイント70は、「吐出通路形成部」に対応している。
吐出ジョイント70には、内周壁と外周壁とを連通する横穴部702が形成されている。横穴部702は、吐出ジョイント70の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、横穴部702は、1つ形成されている。横穴部702は、吐出ジョイント70の軸方向においてハウジング外周壁270とカバー外周壁280との間に位置している。そのため、吐出通路705の燃料は、後述するリリーフ弁91、横穴部702を経由して燃料室260側へ流れることができる。
吐出シート部材71は、吐出部材本体72、吐出孔73、吐出弁座74を有している。吐出部材本体72は、例えば金属により略円板状に形成されている。吐出部材本体72の外径は、吐出ジョイント70の加圧室200側の端部の内径よりやや大きい。吐出部材本体72は、外周壁が吐出ジョイント70の加圧室200側の端部の内周壁に圧入されるようにして吐出通路705に設けられている。
吐出部材本体72には、吐出凹部721、内側突起722、外側突起723が形成されている。吐出凹部721は、吐出部材本体72の加圧室200とは反対側の端面の中央から加圧室200側へ略円筒状に凹むようにして形成されている。内側突起722は、吐出部材本体72の加圧室200側の端面から加圧室200側へ略円環状に突出するよう形成されている。外側突起723は、内側突起722の径方向外側において吐出部材本体72の加圧室200側の端面から加圧室200側へ略円環状に突出するよう形成されている。
吐出孔73は、内側突起722の径方向内側における吐出部材本体72の加圧室200側の端面と吐出凹部721の底面とを連通するよう略円筒状に形成されている。吐出弁座74は、吐出凹部721の底面において吐出孔73の周囲に略円環状に形成されている。
吐出凹部721、内側突起722、外側突起723、吐出孔73、吐出弁座74は、吐出部材本体72と略同軸となるよう形成されている。内側突起722および外側突起723は、上ハウジング21の吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲に当接している。
中間部材81は、中間部材本体82、第1流路83を有している。中間部材本体82は、例えば金属により略円板状に形成されている。中間部材本体82は、吐出通路705において吐出シート部材71の加圧室200とは反対側に設けられている。中間部材本体82の外径は、吐出ジョイント70の加圧室200側の端部の内径よりやや小さい。中間部材本体82は、加圧室200側の端面が吐出部材本体72の加圧室200とは反対側の端面に当接するよう、吐出部材本体72と略同軸に設けられている。
中間部材本体82には、中間凹部821が形成されている。中間凹部821は、中間部材本体82の加圧室200側の端面の中央から加圧室200とは反対側へ略円筒状に凹むようにして形成されている。中間凹部821は、中間部材本体82と略同軸となるよう形成されている。
第1流路83は、中間凹部821の径方向外側において中間部材本体82の加圧室200側の端面と加圧室200とは反対側の端面とを連通するよう略円筒状に形成されている。第1流路83は、中間部材本体82の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、第1流路83は、例えば5つ形成されている。第1流路83は、吐出凹部721、吐出孔73、吐出穴部215、吐出穴233を経由して加圧室200に連通している。
リリーフシート部材85は、リリーフ部材本体86、リリーフ孔87、リリーフ弁座88、第2流路89、リリーフ外周凹部851、逃がし横穴852、横穴853を有している。リリーフ部材本体86は、例えば金属により形成されている。リリーフ部材本体86は、リリーフ部材筒部861、リリーフ部材底部862を有している。
リリーフ部材筒部861は、略円筒状に形成されている。リリーフ部材底部862は、リリーフ部材筒部861の一方の端部を塞ぐようにしてリリーフ部材筒部861と一体に形成されている。すなわち、リリーフ部材本体86は、有底筒状に形成されている。
リリーフ部材本体86は、吐出通路705において中間部材81の加圧室200とは反対側に設けられている。リリーフ部材筒部861の外径は、吐出ジョイント70の段差面701に対し加圧室200側の部位の内径と比べてやや小さい。よって、リリーフ部材本体86は、隙間嵌めにて吐出ジョイント70の内側に設けられている。リリーフ部材本体86は、リリーフ部材筒部861の加圧室200側の端面が中間部材本体82の加圧室200とは反対側の端面の外縁部に当接し、リリーフ部材筒部861の加圧室200とは反対側の端面の外縁部が吐出ジョイント70の段差面701に当接するよう、中間部材本体82と略同軸に設けられている。
リリーフ孔87は、リリーフ部材底部862の中央の加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。リリーフ弁座88は、リリーフ部材底部862の加圧室200側の面においてリリーフ孔87の周囲に環状に形成されている。ここで、リリーフ弁座88は、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いリリーフ部材筒部861の軸に近づくようテーパ状に形成されている。リリーフ孔87およびリリーフ弁座88は、リリーフ部材本体86と略同軸となるよう形成されている。
第2流路89は、リリーフ部材筒部861の加圧室200側の端面と加圧室200とは反対側の端面とを連通するよう略円筒状に形成されている。第2流路89は、リリーフ部材筒部861の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、第2流路89は、例えば4つ形成されている。本実施形態では、中間部材本体82の軸方向の長さは、リリーフ部材筒部861の軸方向の長さより短い。そのため、第1流路83の長さは、第2流路89の長さより短い。
リリーフ外周凹部851は、リリーフ部材筒部861の外周壁から径方向内側へ凹むよう略円筒状に形成されている。ここで、リリーフ外周凹部851は、吐出ジョイント70の横穴部702を経由して燃料室260に連通している。逃がし横穴852は、リリーフ外周凹部851とリリーフ部材筒部861の内周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。
横穴853は、逃がし横穴852の加圧室200側においてリリーフ外周凹部851とリリーフ部材筒部861の内周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。これにより、吐出通路705のうちリリーフ部材底部862に対し加圧室200とは反対側の空間は、リリーフ孔87、逃がし横穴852、リリーフ外周凹部851、横穴部702を経由して燃料室260に連通している。
本実施形態では、中間部材81に環状溝800が形成されている。環状溝800は、中間部材本体82の加圧室200とは反対側の端面、すなわち、中間部材本体82のリリーフシート部材85と対向する面から加圧室200側へ凹むよう略円環状に形成されている。環状溝800は、中間部材本体82と略同軸に形成されている。また、環状溝800は、全ての第1流路83の加圧室200とは反対側の端部と全ての第2流路89の加圧室200側の端部とを接続している。すなわち、第1流路83と第2流路89とは、環状溝800を経由して互いに連通している。なお、中間部材81とリリーフシート部材85とが軸回りにどのように相対回転したとしても、第1流路83と第2流路89とは、環状溝800を経由して互いに連通可能である。
これにより、加圧室200は、吐出穴233、吐出穴部215、吐出孔73、吐出凹部721、第1流路83、環状溝800、第2流路89を経由して、吐出通路705のうちリリーフ部材筒部861に対し加圧室200とは反対側の空間に連通している。
環状溝800を経由して第1流路83と第2流路89との間を燃料が流れるとき、燃料は、環状溝800を径方向に流れる。ここで、流路面積を確保するため、環状溝800の深さは、第1流路83の径以上となるよう設定されている。
上述したように、吐出ジョイント70は、外周壁に形成されたねじ山が上ハウジング21のねじ溝にねじ結合するよう設けられている。吐出ジョイント70の加圧室200側の端部と吐出穴部214の底面との間には隙間が形成されている。ここで、吐出ジョイント70の段差面701は、リリーフシート部材85、中間部材81、吐出シート部材71を加圧室200側へ付勢している。そのため、リリーフシート部材85と中間部材81と吐出シート部材71とは互いに当接しており、軸方向の移動が規制されている。また、吐出シート部材71の内側突起722および外側突起723は、吐出穴部214と吐出穴部215との間の段差面、すなわち、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲に押し付けられている。そのため、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲には、内側突起722および外側突起723から加圧室200側へ向かう軸力が作用している。
吐出ジョイント70には、多角筒面703が形成されている。多角筒面703は、略六角筒状に形成されている。多角筒面703は、吐出ジョイント70の外周壁の軸方向において概ね段差面701の径方向外側の位置に形成されている。吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合するとき、吐出ジョイント70の多角筒面703に対応する工具を用いれば、吐出ジョイント70を吐出穴部214に比較的容易にねじ結合することができる。
カバー26の外側において吐出ジョイント70の径方向外側には、溶接リング709が設けられている。溶接リング709は、例えば金属により略円筒状に形成されている。溶接リング709は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、カバー外周壁280の平面部281のカバー穴部267の周囲に当接している。溶接リング709は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りカバー外周壁280の平面部281に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り吐出ジョイント70の外周壁に溶接されている。これにより、燃料室260の燃料がカバー穴部267と吐出ジョイント70の外周壁との間の隙間を経由してカバー26の外部に漏れることが抑制されている。
吐出ジョイント70の加圧室200とは反対側の端部には、高圧燃料配管8が接続される。これにより、供給燃料配管7から高圧ポンプ10の供給通路部29を経由して燃料室260に流入した燃料は、加圧室200で加圧され、吐出ジョイント70の内側の吐出通路705を経由して高圧燃料配管8に吐出される。高圧燃料配管8に吐出された高圧の燃料は、高圧燃料配管8を経由して燃料レール137に供給される。
吐出弁75は、吐出シート部材71と中間部材81との間に設けられている。吐出弁75は、例えば金属により形成されている。吐出弁75は、吐出弁当接部76、吐出弁摺動部77を有している。
吐出弁当接部76は、略円板状に形成されている。吐出弁当接部76の外径は、吐出凹部721の内径より小さく、中間凹部821の内径より大きい。吐出弁当接部76は、一方の面の外縁部が吐出弁座74に当接、または、吐出弁座74から離間可能なよう吐出凹部721の内側に設けられている。
吐出弁75は、吐出弁当接部76が吐出弁座74から離間すると開弁し吐出孔73における燃料の流れを許容し、吐出弁座74に当接すると閉弁し吐出孔73における燃料の流れを規制可能である。
吐出弁摺動部77は、吐出弁当接部76の他方の面から略円筒状に突出するよう吐出弁当接部76と一体に形成されている。吐出弁摺動部77は、吐出弁当接部76と略同軸に形成されている。吐出弁摺動部77の外径は、中間凹部821の内径よりやや小さい。
吐出弁75は、吐出弁摺動部77の外周壁が中間凹部821の内周壁と摺動しつつ軸方向に往復移動可能に設けられている。吐出弁摺動部77の吐出弁当接部76とは反対側の端部は、中間凹部821の底面の外縁部に当接、または、中間凹部821の底面の外縁部から離間可能である。中間部材81は、吐出弁75の吐出弁摺動部77が中間凹部821の底面に当接したとき、吐出弁75の開弁方向への移動を規制可能である。
吐出弁摺動部77には、孔部771が形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の内周壁と外周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の周方向に等間隔で複数形成されている。本実施形態では、孔部771は、例えば4つ形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の内側の空間と外側の空間とを連通している。そのため、吐出弁75は、軸方向に円滑に往復移動することができる。また、孔部771は、吐出弁75が中間部材81の中間凹部821の底面に当接している状態であっても、少なくとも一部が中間部材81の加圧室200側の端面よりも加圧室200側にある。すなわち、往復移動可能な吐出弁75が吐出シート部材71と中間部材81との間のいかなる位置にある場合においても、孔部771は必ず少なくとも一部が中間部材81の加圧室200側の端面よりも加圧室200側にあり、吐出弁摺動部77の内側の空間と外側の空間とを連通している。
スプリング79は、例えばコイルスプリングであり、吐出弁摺動部77の内側に設けられている。スプリング79は、一端が中間凹部821の底面の中央に形成された凹状のばね座に当接し、他端が吐出弁当接部76の吐出弁摺動部77側の端面に当接している。スプリング79は、吐出弁75を吐出弁座74側に付勢している。
加圧室200内の燃料の圧力が所定値以上に高まると、吐出弁75は、スプリング79の付勢力に抗して、高圧燃料配管8側に移動する。これにより、吐出弁75が吐出弁座74から離間し、開弁する。そのため、吐出シート部材71に対し加圧室200側の燃料は、吐出孔73、吐出弁座74、吐出凹部721、第1流路83、環状溝800、第2流路89を経由して高圧燃料配管8側に吐出される。
リリーフ弁91は、リリーフ部材筒部861の内側に設けられている。リリーフ弁91は、例えば金属により形成されている。リリーフ弁91は、リリーフ弁当接部92、リリーフ弁摺動部93、リリーフ弁突出部94を有している。
リリーフ弁当接部92は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁当接部92は、一方の端部の外周壁が、他方から一方に向かうに従い軸に近づくようテーパ状に形成されている。リリーフ弁当接部92は、一方の端部がリリーフ弁座88に当接、または、リリーフ弁座88から離間可能なよう設けられている。
リリーフ弁91は、リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88から離間すると開弁しリリーフ孔87における燃料の流れを許容し、リリーフ弁座88に当接すると閉弁しリリーフ孔87における燃料の流れを規制可能である。
リリーフ弁摺動部93は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁摺動部93は、一端がリリーフ弁当接部92の他端に接続するようリリーフ弁当接部92と一体に形成されている。リリーフ弁摺動部93は、リリーフ弁当接部92と略同軸に形成されている。リリーフ弁摺動部93の外径は、リリーフ部材筒部861の内径よりやや小さい。リリーフ弁摺動部93は、外周壁がリリーフ部材筒部861の内周壁と摺動可能である。
リリーフ弁摺動部93の外周壁とリリーフ部材筒部861の内周壁との間のクリアランスが大き過ぎると、当該クリアランスを通じて燃圧が抜けてリリーフ弁91が閉じてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、当該クリアランスの大きさを、当該クリアランスを通じて燃圧が抜けない程度に設定している。
リリーフ弁摺動部93は、リリーフ弁当接部92側の端部の外周壁が、リリーフ弁当接部92とは反対側からリリーフ弁当接部92側へ向かうに従い軸に近づくようテーパ状に形成されている。なお、リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフシート部材85の逃がし横穴852は、リリーフ弁摺動部93の外周壁により閉塞されている(図6参照)。
リリーフ弁突出部94は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁突出部94は、一端がリリーフ弁摺動部93のリリーフ弁当接部92とは反対側の端面の中央に接続するようリリーフ弁摺動部93と一体に形成されている。リリーフ弁突出部94は、リリーフ弁摺動部93と略同軸に形成されている。リリーフ弁突出部94の外径は、リリーフ弁摺動部93の外径より小さい。なお、リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフ弁突出部94の加圧室200側の端面は、リリーフ部材筒部861の加圧室200側の端面よりもリリーフ部材底部862側に位置している(図6参照)。
係止部材95は、例えば金属により略円筒状に形成されている。係止部材95の外径は、リリーフ部材筒部861の内径よりやや大きい。係止部材95は、外周壁がリリーフ部材筒部861の内周壁に嵌合するようリリーフ部材筒部861の内側に設けられている。すなわち、係止部材95は、リリーフ部材筒部861と略同軸に設けられている。係止部材95は、リリーフ部材筒部861の軸方向においてリリーフ部材筒部861の加圧室200側の端部の近傍に位置している。ここで、係止部材95は、中間部材81との間に隙間を形成している。
係止部材95の内径は、リリーフ弁突出部94の外径より大きい。リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフ弁突出部94の加圧室200側の端面は、係止部材95の内側に位置している(図6参照)。ここで、係止部材95の内周壁とリリーフ弁突出部94の外周壁との間には、略円筒状の隙間が形成されている。つまり、係止部材95の内周壁とリリーフ弁突出部94の外周壁とは摺動しない。
リリーフ弁91は、リリーフ弁摺動部93の外周壁がリリーフ部材筒部861の内周壁と摺動しつつ軸方向に往復移動可能に設けられている。リリーフ弁突出部94のリリーフ弁摺動部93とは反対側の端部は、中間部材81のリリーフシート部材85側の端面に当接、または、中間部材81のリリーフシート部材85側の端面から離間可能である。中間部材81は、リリーフ弁突出部94が中間部材81に当接したとき、リリーフ弁91の開弁方向への移動を規制可能である。
リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88から所定距離離間すると、リリーフ弁摺動部93の外周壁による逃がし横穴852の閉塞が解除される。これにより、リリーフ孔87は、逃がし横穴852、リリーフ外周凹部851、横穴部702を経由して燃料室260に連通する。
また、リリーフ弁91がリリーフ部材筒部861の内側で軸方向に往復移動するとき、リリーフ部材筒部861の内側の燃料は、横穴853を経由してリリーフ外周凹部851との間を行き来可能である。そのため、リリーフ弁91は、軸方向に円滑に往復移動することができる。
スプリング99は、例えばコイルスプリングであり、リリーフ弁突出部94の径方向外側に設けられている。スプリング99は、一端がリリーフ弁摺動部93の加圧室200側の端面の外縁部に当接し、他端が係止部材95の加圧室200とは反対側の端面に当接している。すなわち、係止部材95は、スプリング99の他端を係止している。スプリング99は、リリーフ弁91をリリーフ弁座88側に付勢している。
本実施形態では、スプリング99の一端の内周部は、リリーフ弁突出部94のリリーフ弁摺動部93側の端部の外周壁によりガイドされる。また、リリーフ部材筒部861の内周壁は、リリーフ弁摺動部93との摺動部位の内径より、前記摺動部位に対し加圧室200側の部位の内径が大きくなるよう形成されている(図6参照)。これにより、スプリング99の外周部がリリーフ部材筒部861の内周壁に接触するのを抑制し、スプリング99およびリリーフ弁91の挙動を安定させることができる。
吐出通路705のうちリリーフ部材底部862に対し高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値にまで上昇すると、リリーフ弁91は、スプリング99の付勢力に抗して、加圧室200側に移動する。これにより、リリーフ弁91がリリーフ弁座88から離間し、開弁する。そのため、吐出通路705のうちリリーフ部材底部862に対し高圧燃料配管8側の燃料は、リリーフ孔87、逃がし横穴852、リリーフ外周凹部851、横穴部702を経由して燃料室260側に戻される。このようなリリーフ弁91の作動により、高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値になるのを抑制することができる。
上述のように、本実施形態では、吐出通路705のうちリリーフ部材底部862に対し高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値になると、当該燃料を、高圧となる加圧室200側ではなく、低圧の燃料室260側へ逃がす。
本実施形態では、横穴部702の流路面積は、リリーフ弁91全開時のリリーフ孔87の流路面積よりも大きい。また、逃がし横穴852の流路面積は、逃がし横穴852に対するリリーフ弁摺動部93の位置により変動する。つまり、逃がし横穴852は、可変オリフィスとして機能する。本実施形態では、可変オリフィスとして機能する逃がし横穴852に対し下流側の横穴部702の流路面積は、逃がし横穴852に対し上流側のリリーフ孔87の流路面積より大きい。そのため、高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値になったとき、高圧燃料配管8側の燃料の圧力を速やかに低下させることができるとともに、より低い圧力となる値に安定させることができる。
本実施形態では、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85が、この順で加圧室200から外部へ向かって並ぶよう配置されている(図6参照)。そのため、吐出弁75がリリーフ弁91に対し加圧室200側に配置されている。これにより、加圧室200に連通するデッドボリュームを小さくできる。
本実施形態では、吐出ジョイント70、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、スプリング79、リリーフ弁91、スプリング99、係止部材95は、予め一体に組み付けられて吐出通路部700を構成するようサブアセンブリ化されている。
吐出通路部700の組み付けの工程は、以下の通りである。
まず、リリーフ弁91およびスプリング99をリリーフシート部材85の内側に挿入する。続いて、係止部材95をリリーフシート部材85の内周壁に嵌合または圧入し、開弁圧を調整する。
続いて、リリーフ弁91、スプリング99、係止部材95を組み付けた上記リリーフシート部材85を吐出ジョイント70の内側に挿入する。続いて、中間部材81を吐出ジョイント70の内側に挿入する。
続いて、スプリング79および吐出弁75を中間部材81の中間凹部821に設ける。続いて、吐出シート部材71を吐出ジョイント70の内周壁に嵌合または圧入させる。
以上により、吐出通路部700の組み付け、すなわち、サブアセンブリ化が完了する。サブアセンブリ化後の吐出通路部700において、吐出ジョイント70は、内側に吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、スプリング79、リリーフ弁91、スプリング99、係止部材95を収容している。また、吐出ジョイント70の段差面701とリリーフシート部材85と中間部材81と吐出シート部材71とは互いに当接している。
図2〜4に示すように、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とは、同一平面上に位置している。そのため、高圧ポンプ10がシリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1方向に大型化するのを抑制することができる。ここで、電磁駆動部500の中心軸Axc1は、筒部材51の軸に一致する。また、吐出通路部700の中心軸Axc2は、吐出ジョイント70の軸に一致する。
本実施形態では、高圧ポンプ10は、パルセーションダンパ15、支持部材16、上支持体171、下支持体172をさらに備えている。パルセーションダンパ15は、例えば円形皿状の金属薄板を2枚合わせ、外縁部を溶接により接合することによって形成されている。パルセーションダンパ15の内側には、窒素またはアルゴン等、所定圧の気体が封入されている。
支持部材16は、例えば金属により有底筒状に形成されている。支持部材16は、底部の外縁部がカバー底部262の外縁部に当接し、筒部の外周壁がカバー筒部261の内周壁に当接するよう燃料室260に設けられている。支持部材16の底部の中央には、底部を板厚方向に貫く穴部が形成されている。
上支持体171、下支持体172は、それぞれ、例えば金属により環状に形成されている。上支持体171および下支持体172は、それぞれの外縁部がパルセーションダンパ15の外縁部に当接するようパルセーションダンパ15を挟み込んでいる。上支持体171および下支持体172は、外縁部が互いに溶接されている。これにより、パルセーションダンパ15、上支持体171および下支持体172は、予め一体に組み付けられてダンパユニット170を構成するようサブアッセンブリ化されている。
ダンパユニット170は、上支持体171が支持部材16の底部に当接し、下支持体172が上ハウジング21のカバー底部262側の面に当接するようにして、上ハウジング21と支持部材16との間に設けられている。ここで、支持部材16、上支持体171および下支持体172は、燃料室260においてパルセーションダンパ15を支持している。なお、下支持体172は、上ハウジング21の下ハウジング22とは反対側の端面に形成された凹部に配置されている。また、支持部材16は、カバー26の剛性を高め、NVの低減に寄与する。また、下支持体172には、周方向に複数の穴が形成されており、当該穴を経由してパルセーションダンパ15の上下に燃料が行き渡る。
なお、本実施形態では、加圧室200を形成するシリンダ23と上ハウジング21との接合部、上ハウジング21と筒部材51との接合部、および、上ハウジング21と吐出ジョイント70との接合部が燃料室260内に位置するよう、カバー26が各接合部を覆っているため、加圧室200から高圧の燃料が漏れたとしても燃料室260に留めておくことができる。
プランジャ11の摺動により加圧される、弁部材40から吐出弁75までの「高圧室」がシリンダ23、上ハウジング21、ストッパ35、弁部材40、吐出シート部材71によって形成されている。また、上記「高圧室」を覆うようにして、下ハウジング22、カバー26、溶接リング519、709、吐出ジョイント70の外周面、シールホルダ14、シール141によって「低圧室」が形成されている。したがって、「高圧室」の燃料がリークしたとしても、「低圧室」へ繋がり、外部への燃料漏れに至らない。また、「低圧室」と外部とは、溶接によりシールされている。よって、外部への燃料漏れに至らない。また、「高圧室」は、筒部材51および吐出ジョイント70のねじによる締め付け力にてシールされている。したがって、「低圧室」と外部とをシールする溶接部に、高圧による過大な外力が作用することはない。
次に、本実施形態のシリンダ23について、より具体的に説明する。
図7〜9に示すように、シリンダ23は、テーパ面234、外周凹部235、外周凹部236を有している。
テーパ面234は、吸入穴232の加圧室200とは反対側の端部に形成されている。テーパ面234は、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従い吸入穴232の軸から離れるようテーパ状に形成されている。
シリンダ穴部231の内周壁である筒状内周壁230は、摺動面230a、拡径面230bの他に、内側テーパ面230c、230dを有している。内側テーパ面230cは、摺動面230aと拡径面230bとを接続するよう形成されている。内側テーパ面230cは、摺動面230a側から拡径面230b側へ向かうに従い軸Ax1から離れるようテーパ状に形成されている。
内側テーパ面230dは、摺動面230aと筒状内周壁230の開口部とを接続するよう形成されている。内側テーパ面230dは、摺動面230a側から筒状内周壁230の開口部側へ向かうに従い軸Ax1から離れるようテーパ状に形成されている。
図9に示すように、プランジャ11が下死点から上死点までのどの位置にあっても、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112とは反対側の端部は、摺動面230aの拡径面230b側の端部に対し拡径面230b側に位置し、プランジャ11の大径部111の外周壁の小径部112側の端部は、摺動面230aの拡径面230bとは反対側の端部に対し拡径面230bとは反対側に位置している。すなわち、摺動面230aは、プランジャ11の位置にかかわらず、軸方向の全ての範囲において大径部111の外周壁と摺動可能である。
筒状内周壁230内にプランジャ11が設けられた状態において、プランジャ11の大径部111の外周壁と内側テーパ面230cおよび内側テーパ面230dとの間には、環状の隙間が形成される。そのため、筒状内周壁230の内側においてプランジャ11が往復移動するとき、当該隙間内の燃料は、大径部111の外周壁と摺動面230aとの間に導かれる。これにより、大径部111の外周壁と摺動面230aとの間に油膜が形成され易くなり、大径部111の外周壁と摺動面230aとの偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
ここで、軸Ax1および大径部111の外周壁に対する内側テーパ面230c、230dの角度は、例えば10度以下に設定されている。なお、プランジャ11の大径部111の軸方向両端部の角部は、面取りされている。
外周凹部235、外周凹部236は、それぞれ、シリンダ23の外周壁から径方向内側へ所定の深さで凹むよう形成されている。外周凹部235は、シリンダ23の周方向において、吸入穴232すなわちテーパ面234を全て含む範囲に形成されている。また、外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吸入穴232の軸に対しややシリンダ23の底部側の位置から、テーパ面234の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている。外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、略矩形状となるよう形成されている。なお、外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図7参照)。
外周凹部236は、シリンダ23の周方向において、吐出穴233を全て含む範囲に形成されている。また、外周凹部236は、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吐出穴233の軸に対しややシリンダ23の底部側の位置から、吐出穴233の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている。外周凹部236は、吐出穴233の軸方向から見たとき、略矩形状となるよう形成されている。なお、外周凹部236は、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図8参照)。
また、外周凹部235、236は、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の上方部において、上ハウジング21との嵌合部すなわち焼き嵌め部を残すような範囲に形成されている(図7、8参照)。
上述したように、電磁駆動部500の筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合すると、吸入穴部213と吸入穴部212との間の段差面には、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面から加圧室200側へ向かう軸力が作用する。そのため、吸入穴部213の周囲において上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ僅かに変形するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、シリンダ23の外周壁の吸入穴部213に対応する位置に外周凹部235が形成されているため、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。これにより、シリンダ穴部231の筒状内周壁230が径方向内側へ変形するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
さらに、上述の軸力の作用として、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形することにより、シリンダ23の外周凹部235の境界の面圧が上昇し、加圧室200の高圧化にも対応し易くなる。
また、吐出通路部700の吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合すると、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲には、内側突起722および外側突起723から加圧室200側へ向かう軸力が作用する。そのため、吐出穴部215の周囲において上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ僅かに変形するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、シリンダ23の外周壁の吐出穴部215に対応する位置に外周凹部236が形成されているため、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。これにより、シリンダ穴部231の筒状内周壁230が径方向内側へ変形するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
さらに、上述の軸力の作用として、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形することにより、シリンダ23の外周凹部236の境界の面圧が上昇し、加圧室200の高圧化にも対応し易くなる。
次に、高圧ポンプ10の組み付けについて説明する。
高圧ポンプ10は、例えば以下の工程で組み付けられる。
まず、シリンダ23を下ハウジング22の穴部221に挿入する。
続いて、吸入穴232が吸入穴部213に対応し、吐出穴233が吐出穴部215に対応するよう、シリンダ23を下ハウジング22と一緒に上ハウジング21の穴部211に挿入する。ここで、上ハウジング21を予め加熱し穴部211の内径が拡大した状態でシリンダ23を穴部211に挿入する。上ハウジング21が冷えると、穴部211の内径が縮小し、上ハウジング21とシリンダ23とが固定される。また、同様に、下ハウジング22の上方側の外径部は、上ハウジング21の下方側の内径部が縮小し、上ハウジング21と固定される。すなわち、シリンダ23と下ハウジング22は、上ハウジング21に焼き嵌めまたは冷やし嵌めにより固定される。このとき、シリンダ23の最外径の上方側の端部と上ハウジング21の最下方の端部との間に下ハウジング22が係止されることで、上ハウジング21、下ハウジング22、シリンダ23の鉛直方向の位置が規定され、上ハウジング21と一体に組み付けられる。
続いて、ストッパ35を吸入穴部213、吸入穴部212に挿入する。続いて、スプリング39をストッパ凹部352に配置し、弁部材40をストッパ凹部351に配置する。続いて、シート部材31を吸入穴部212のストッパ35に対し加圧室200とは反対側に圧入し、ストッパ35の両端面を上ハウジング21の凹部とシート部材31に当接させる。ここで、弁部材40の摺動部430は、スプリング39が自然長の状態において、ストッパ凹部351の内周壁とラップしている。そのため、組み付け性を向上できる。
続いて、パルセーションダンパ15、上支持体171、下支持体172からなるダンパユニット170を上ハウジング21の凹部、すなわち下ハウジング22とは反対側に配置する。
続いて、予め支持部材16を設けたカバー26を上ハウジング21に被せる。ここで、カバー26は、カバー穴部266が吸入穴部212に対応し、カバー穴部267が吐出穴部214に対応するよう配置する。
続いて、サブアセンブリ化された第1電磁駆動部501をカバー穴部266に挿入し、筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合する。このとき、筒部材51の第2筒部512に対応する図示しない工具を用いて筒部材51と吸入穴部212とをねじ結合する。これにより、シート部材31、ストッパ35、上ハウジング21の吸入穴部212と吸入穴部213との間の段差面には、筒部材51から加圧室200側への軸力が作用する。
続いて、サブアセンブリ化された吐出通路部700をカバー穴部267に挿入し、吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合する。このとき、吐出ジョイント70の多角筒面703に対応する図示しない工具を用いて吐出ジョイント70と吐出穴部214とをねじ結合する。これにより、リリーフシート部材85、中間部材81、吐出シート部材71、上ハウジング21の吐出穴部214と吐出穴部215との間の段差面には、吐出ジョイント70の段差面701から加圧室200側への軸力が作用する。
続いて、カバー筒部261のカバー底部262とは反対側の端部と下ハウジング22とをカバー筒部261の周方向の全域に亘り溶接する。続いて、溶接リング709を吐出ジョイント70の径方向外側に配置し、溶接リング709とカバー外周壁280および吐出ジョイント70の外周壁とを溶接リング709の周方向の全域に亘り溶接する。続いて、溶接リング519を筒部材51の第1筒部511の径方向外側に配置し、溶接リング519とカバー外周壁280および第1筒部511の外周壁とを溶接リング519の周方向の全域に亘り溶接する。
続いて、シール141、中間筒部材241、プランジャ11を、この順でシールホルダ14に挿入し、シールホルダ14をホルダ支持部24の内側に組み付けた後、周方向の全域に亘り溶接する。続いて、オイルシール142をシールホルダ14に組み付ける。
続いて、ホルダ支持部24にシール部材240を組み付ける。続いて、スペーサ140をシールホルダ14に配置し、スプリング13をシールホルダ14の上ハウジング21とは反対側に配置し、スプリングシート12をプランジャ11に組み付ける。
続いて、供給通路部29の一端がカバー底部262のカバー穴部265の外周部に当接するよう配置し、供給通路部29とカバー底部262とを供給通路部29の周方向の全域に亘り溶接する。
続いて、コイル60の内側に磁気絞り部56および固定コア57が位置するよう、サブアセンブリ化された第2電磁駆動部502を第1電磁駆動部501の加圧室200とは反対側の端部に設ける。ここで、第2電磁駆動部502は、コネクタ65が被固定部25とは反対側を向き、シリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1に対し略平行となるよう配置する。
続いて、ヨーク645の中央を固定コア57の加圧室200とは反対側の端面572に溶接する。以上により、高圧ポンプ10の組み付けが完了する。
次に、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付けについて説明する。
本実施形態では、高圧ポンプ10は、ホルダ支持部24がエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入されるようにしてエンジン1に取り付けられる(図2参照)。高圧ポンプ10は、被固定部25がボルト100によりエンジンヘッド2に固定されることにより、エンジン1に固定される。ここで、高圧ポンプ10は、シリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1が鉛直方向に沿うような姿勢でエンジン1に取り付けられる。
高圧ポンプ10は、例えば以下の工程でエンジン1に取り付けられる。まず、リフタ5をエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入する。続いて、高圧ポンプ10のホルダ支持部24をエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入する。ここで、被固定部25のボルト孔250の位置とエンジンヘッド2の固定穴部120の位置とを対応させる。
続いて、ボルト100をボルト孔250に挿通し、固定穴部120にねじ結合する。このとき、ボルト100の頭部102に対応する図示しない工具を用いてボルト100と固定穴部120とをねじ結合する。これにより、被固定部25がエンジンヘッド2に固定される。以上により、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付けが完了する。
次に、本実施形態の高圧ポンプ10の作動について、図2〜6に基づき説明する。
「吸入工程」
電磁駆動部500のコイル60への電力の供給が停止されているとき、弁部材40は、スプリング54およびニードル53により加圧室200側へ付勢されている。よって、弁部材40は、弁座310から離間、すなわち、開弁している。この状態で、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、加圧室200の容積が増大し、弁座310に対し加圧室200とは反対側すなわち燃料室260側の燃料は、連通路33を経由して加圧室200側に吸入される。
「調量工程」
弁部材40が開弁した状態で、プランジャ11が加圧室200側に移動すると、加圧室200の容積が減少し、弁座310に対し加圧室200側の燃料は、弁座310に対し燃料室260側に戻される。調量工程の途中、コイル60に電力を供給すると、可動コア55がニードル53とともに固定コア57側に吸引され、弁部材40がスプリング39に付勢され弁座310に当接し閉弁する。プランジャ11が加圧室200側に移動するとき、弁部材40を閉弁することにより、加圧室200側から燃料室260側に戻される燃料の量が調整される。その結果、加圧室200で加圧される燃料の量が決定される。弁部材40が閉弁することにより、燃料を加圧室200から燃料室260側に戻す調量工程は終了する。
なお、燃料噴射弁138が燃料を噴射しないとき、すなわち燃料カット時には、コイル60に通電せず、高圧ポンプ10からの燃料の吐出は0である。このとき、弁部材40は開弁した状態のため、加圧室200の燃料は、プランジャ11の往復移動に伴い、加圧室200と燃料室260側との間を行き来する。
「加圧工程」
弁部材40が閉弁した状態でプランジャ11が加圧室200側にさらに移動すると、加圧室200の容積が減少し、加圧室200内の燃料は、圧縮され加圧される。加圧室200内の燃料の圧力が吐出弁75の開弁圧以上になると、吐出弁75が開弁し、燃料が加圧室200から高圧燃料配管8側、すなわち、燃料レール137側に吐出される。
コイル60への電力の供給が停止され、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動すると、弁部材40は再び開弁する。これにより、燃料を加圧する加圧工程が終了し、燃料室260側から加圧室200側に燃料が吸入される吸入工程が再開する。
上記の「吸入工程」、「調量工程」、「加圧工程」を繰り返すことにより、高圧ポンプ10は、加圧室200に吸入した燃料室260内の燃料を加圧、吐出し、燃料レール137に供給する。高圧ポンプ10から燃料レール137への燃料の供給量は、電磁駆動部500のコイル60への電力の供給タイミング等を制御することにより調節される。
なお、上述の「吸入工程」、「調量工程」等、弁部材40が開弁しているときにプランジャ11が往復移動すると、燃料室260内の燃料に、加圧室200の容積の増減に起因する圧力脈動が生じることがある。燃料室260に設けられたパルセーションダンパ15は、燃料室260内の燃圧の変化に応じて弾性変形することで、燃料室260内の燃料の圧力脈動を低減可能である。
また、プランジャ11が往復移動しているとき、可変容積室201の容積の増減に起因する圧力脈動が生じることがある。この場合も、パルセーションダンパ15は、燃料室260内の燃圧の変化に応じて弾性変形することで、燃料室260内の燃料の圧力脈動を低減可能である。
なお、プランジャ11が下降するときには、プランジャ11の下降速度に追随して可変容積室201の容積が減少し、燃料室260側に燃料が押し出される。その結果、プランジャ11が下降するときに燃料室260の燃料が加圧室200に容易に導入される。また、プランジャ11が上昇するときには、上述した可変容積室201の容積が増大するので、調量時、加圧室200から戻された燃料が可変容積室201に容易に排出される。上記の働きのため、燃料室260の脈動が低減される。
また、プランジャ11が往復移動すると可変容積室201の容積が増減するため、燃料室260と穴部222、環状空間202、可変容積室201との間で燃料が行き来する。これにより、プランジャ11とシリンダ23との摺動による熱、および、加圧室200での燃料の加圧による熱で高温になったシリンダ23およびプランジャ11を、低温の燃料により冷却することができる。これにより、プランジャ11およびシリンダ23の焼き付きを抑制することができる。
また、加圧室200で高圧となった燃料の一部は、プランジャ11とシリンダ23とのクリアランスを経由して可変容積室201に流入する。これにより、プランジャ11とシリンダ23との間に油膜が形成され、プランジャ11およびシリンダ23の焼き付きを効果的に抑制することができる。なお、加圧室200から可変容積室201に流入した燃料は、環状空間202、穴部222を経由して燃料室260に戻る。
<A−1>次に、吸入弁部300について、詳細に説明する。
図10、11に示すように、シート部材31は、略円板状に形成されている。シート部材31は、吸入穴部212の内側において吸入穴部212と略同軸となるよう吸入通路216に設けられている。ここで、シート部材31の外周壁は、吸入穴部212の内周壁に圧入されている。
シート部材31は、連通路32、連通路33、弁座310を有している。連通路32は、シート部材31の中央においてシート部材31の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。ここで、連通路32は、シート部材31と略同軸となるよう形成されている。また、連通路32の内径は、ニードル本体531の加圧室200側の端部の外径より大きい。そのため、連通路32の内周壁とニードル本体531の外周壁との間には、略円筒状の隙間が形成され、当該隙間を燃料が流通可能である。
連通路33は、連通路32の径方向外側においてシート部材31の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。連通路33は、シート部材31の周方向に12個が等間隔に形成されている。連通路33が等間隔に形成されているため、燃料流れが均一になり、弁部材40の挙動が安定する。なお、連通路33は、シート部材31の軸を中心とする仮想円VC11上に配置されている(図11参照)。また、連通路33の内径は、連通路32の内径より小さい。
ここで、連通路32は「内側連通路」に対応し、連通路33は「外側連通路」に対応している。
弁座310は、シート部材31の加圧室200側の面において、連通路32、および、複数の連通路33それぞれの周囲に環状に形成されている。すなわち、弁座310は、シート部材31の加圧室200側の面において、複数形成されている。具体的には、弁座310は、連通路32と連通孔44との間に1つ、連通孔44と連通路33との間に1つ、連通路33の径方向外側に1つ、計3つ形成されている。ここで、3つの弁座310は、同心円状に形成されている。
シート部材31には、環状凹部311が形成されている。環状凹部311は、複数の連通路33に対しシート部材31の径方向外側においてシート部材31の加圧室200側の端面から筒部材51側へ凹むよう略円環状に形成されている。環状凹部311は、シート部材31と略同軸に形成されている(図10、11参照)。このように、環状凹部311が複数の連通路33に対しシート部材31の径方向外側に形成されているため、調量時の燃料の流れ性を向上させることができる。また、環状凹部311内の燃料の圧力は、弁部材40に対して開弁方向に作用する。そのため、動圧の影響で閉弁することを抑制できる。
図10、12に示すように、ストッパ35は、ストッパ小径部36、ストッパ大径部37、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、ストッパ凸部353、連通穴38等を有している。
ストッパ小径部36は、略円柱状に形成されている。ストッパ小径部36の外径は、吸入穴部213の内径よりやや小さい。ストッパ大径部37は、略円柱状に形成されている。ストッパ大径部37の外径は、ストッパ小径部36の外径より大きく、吸入穴部212の内径よりやや小さい。ストッパ大径部37は、ストッパ小径部36の加圧室200とは反対側においてストッパ小径部36と同軸となるようストッパ小径部36と一体に形成されている。
ストッパ35は、ストッパ小径部36が吸入穴部213の内側に位置し、ストッパ大径部37が吸入穴部212の内側に位置するよう吸入通路216に設けられている。ここで、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の環状の段差面は、吸入穴部212と吸入穴部213との間の環状の段差面に当接している。これにより、ストッパ35は、加圧室200側への移動が規制されている。
また、ストッパ35のストッパ大径部37の加圧室200とは反対側の面は、シート部材31の加圧室200側の面に当接している。これにより、ストッパ35は、加圧室200とは反対側への移動が規制されている。
ストッパ凹部351は、ストッパ大径部37のシート部材31側の面から加圧室200側へ略円筒状に凹むよう形成されている。ここで、ストッパ凹部351は、ストッパ大径部37と略同軸となるよう形成されている。ストッパ凹部351の内径は、ストッパ大径部37の外径より小さく、ストッパ小径部36の外径より大きい。
ストッパ凹部352は、ストッパ凹部351の底面から加圧室200側へ略円筒状に凹むよう形成されている。ここで、ストッパ凹部352は、ストッパ凹部351と略同軸となるよう形成されている。ストッパ凹部352の内径は、ストッパ凹部351の内径およびストッパ小径部36の外径より小さい。なお、ストッパ凹部352の底面は、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面よりも加圧室200側に位置している。
ストッパ凸部353は、ストッパ凹部352の底面の中央からシート部材31側へ略円柱状に突出するよう形成されている。ここで、ストッパ凸部353は、ストッパ凹部352と略同軸となるよう形成されている。また、ストッパ凸部353のシート部材31側の端面は、ストッパ凹部351の底面よりもシート部材31側に位置している。
連通穴38は、ストッパ凸部353の径方向外側においてストッパ凹部352の底面とストッパ小径部36の加圧室200側の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。連通穴38は、ストッパ小径部36の周方向に等間隔で4個形成されている。なお、連通穴38は、ストッパ小径部36の軸を中心とする仮想円VC12上に配置されている(図12参照)。ここで、仮想円VC12の径は、仮想円VC11の径より小さい。
シート部材31の連通路32、連通路33、ストッパ35のストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38には吸入通路216が形成されている。そのため、燃料室260の燃料は、連通路32、連通路33、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38に形成された吸入通路216、および、吸入穴232を経由して加圧室200に流入可能である。ここで、シート部材31およびストッパ35は、「吸入通路形成部」に対応している。
図10に示すように、弁部材40は、ストッパ凹部351の内側、すなわち、吸入通路216においてシート部材31の加圧室200側に設けられている。図10、13〜16に示すように、弁部材40は、バルブ本体41、テーパ部42、ガイド部43、連通孔44を有している。
バルブ本体41、テーパ部42、ガイド部43は、例えばステンレス等の金属により一体に形成されている。バルブ本体41は、略円板状に形成されている。
テーパ部42は、バルブ本体41の径方向外側においてバルブ本体41と一体に略円環状に形成されている。テーパ部42は、加圧室200側の面がシート部材31側から加圧室200側へ向かうに従いバルブ本体41の軸Ax2に近づくようテーパ状に形成されている(図10、15、16参照)。
ガイド部43は、テーパ部42を周方向において複数に分断するようバルブ本体41から径方向外側に突出し、バルブ本体41およびテーパ部42と一体に形成されている。本実施形態では、ガイド部43は、テーパ部42を周方向において3つに分断するようバルブ本体41の周方向に等間隔で3つ形成されている。ここで、ガイド部43のバルブ本体41とは反対側の端部は、テーパ部42の外縁部よりも径方向外側に位置している(図13、14参照)。ガイド部43は、バルブ本体41とは反対側の端部に形成された摺動部430が、吸入通路形成部としてのストッパ35のストッパ凹部351の内周壁と摺動することで、弁部材40の軸方向の移動を案内可能である。
連通孔44は、バルブ本体41の一方の面と他方の面とを連通するよう形成されている。連通孔44は、バルブ本体41の周方向に等間隔で9個形成されている。連通孔44は、バルブ本体41の軸Ax2を中心とする仮想円VC1上に配置されている(図13、14参照)。
図13に示すように、3つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、仮想円VC1に対する同心円CC1に沿うよう形成されている。
図13に示すように、連通孔44は、バルブ本体41のうちバルブ本体41の中心から延びてガイド部43の中心を通る3つの直線L11により区画された第1領域T1、第2領域T2、第3領域T3のそれぞれに3つずつ形成されている。
ここで、連通孔44の数をh=9、ガイド部43の数をg=3とすると、ガイド部43により複数に分断されたテーパ部42のうちの1つのテーパ部42の内縁部に対向する連通孔44の数は、h/g=9/3=3である。
また、第1領域T1、第2領域T2、第3領域T3のそれぞれに形成された3つの連通孔44を、仮想円VC1の周方向に向かって順番に連通孔441、連通孔442、連通孔443とすると、バルブ本体41の第1領域T1の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、第1領域T1の連通孔441の外縁、および、第1領域T1と第2領域T2との間の直線L11に対し第1領域T1の連通孔441と線対称となる位置に形成された第2領域T2の連通孔443の外縁を通る2つの接線のうち第3領域T3側の接線である接線LT11と、第1領域T1の連通孔443の外縁、および、第1領域T1と第3領域T3との間の直線L11に対し第1領域T1の連通孔443と線対称となる位置に形成された第3領域T3の連通孔441の外縁を通る2つの接線のうち第2領域T2側の接線である接線LT11と、の間の範囲に形成されている。
バルブ本体41の第2領域T2の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1、および、バルブ本体41の第3領域T3の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1についても、上記と同様に形成されている。
すなわち、本実施形態では、2つのガイド部43により挟まれた1つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、1つのテーパ部42の内縁部が対向する複数の連通孔44のうち両端の連通孔44である端部連通孔(441、443)の外縁、および、バルブ本体41の中心から延びてガイド部43の中心を通る直線L11に対し端部連通孔(441、443)と線対称となる位置に形成された連通孔44(443、441)の外縁を通る2つの接線LT11の間の範囲に形成されている。
図10に示すように、本実施形態では、弁部材40の一方の面401、すなわち、バルブ本体41の加圧室200とは反対側の面、ガイド部43の加圧室200とは反対側の面およびテーパ部42の加圧室200とは反対側の面は、同一平面上において平面状に形成されている。また、弁部材40の他方の面402、すなわち、バルブ本体41の加圧室200側の面およびガイド部43の加圧室200側の面は、同一平面上において平面状に形成されている。
また、図10に示すように、本実施形態では、弁部材40のバルブ本体41およびガイド部43における板厚、すなわち、弁部材40の一方の面401と他方の面402との距離は、シート部材31の加圧室200側の面とストッパ凸部353のシート部材31側の端面との距離より小さい。
弁部材40は、シート部材31側の面である一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に当接可能であり、ストッパ35側の面である他方の面402の中央がストッパ凸部353のシート部材31側の端面に当接可能である。
弁部材40は、バルブ本体41およびガイド部43における板厚、すなわち、一方の面401と他方の面402との距離と、シート部材31の加圧室200側の面とストッパ凸部353のシート部材31側の端面との距離と、の差分DD1の範囲で軸方向に往復移動可能である。
弁部材40は、シート部材31側の面である一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310から離間すると開弁し連通路32、連通路33における燃料の流れを許容し、シート部材31側の面である一方の面401が複数の弁座310に当接すると閉弁し連通路33における燃料の流れを規制可能である。
弁部材40が開弁すると、連通路32および連通路33とストッパ凹部351との間の燃料の流れが許容され、燃料室260側の燃料は、連通路32、連通路33、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることができる。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通穴38、ストッパ凹部352、ストッパ凹部351、連通路33、連通路32を経由して燃料室260側に流れることができる。このとき、燃料は、弁部材40の連通孔44、弁部材40の周囲、弁部材40の表面、および、テーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1を流れる。
弁部材40が閉弁すると、連通路32および連通路33とストッパ凹部351との間の燃料の流れが規制され、燃料室260側の燃料は、連通路32、連通路33、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、吸入穴232を経由して加圧室200側に流れることが規制される。また、加圧室200側の燃料は、吸入穴232、連通穴38、ストッパ凹部352、ストッパ凹部351、連通路33、連通路32を経由して燃料室260側に流れることが規制される。
図10に示すように、スプリング39は、ストッパ凸部353の径方向外側に設けられている。スプリング39は、一端がストッパ凹部352の底面に当接し、他端が弁部材40の加圧室200側の面である他方の面402に当接している。スプリング39は、弁部材40をシート部材31側に付勢している。
弁部材40には、シート部材31に形成された弁座310に対応する位置に複数のシール部410が形成されている。シール部410は、内側連通路としての連通路32と連通孔44との間をシールする環状の第1シール部411、外側連通路としての連通路33と連通孔44との間をシールする環状の第2シール部412、および、弁部材40のバルブ本体41の径外方向でありバルブ本体41とストッパ凹部351との間に形成される径外流路45と連通路33との間をシールする環状の第3シール部413を含む。
ここで、シート部材31に形成される連通路32、連通路33、および、弁部材40に形成される連通孔44の流路面積の関係について説明する。
弁部材40がストッパ35に当接しているとき、すなわちフルリフト時、図10、11に示すように、シート部材31の弁部材40側の壁面のうちシート部材31に形成された複数の連通路33の全てを囲う最小円により規定される壁面と、弁部材40の壁面(第3シール部413)との間に形成される環状流路の面積を第1流路面積S1とし、連通路33の総流路面積を第2流路面積S2とし、弁部材40のシート部材31側の壁面のうち弁部材40に形成された複数の連通孔44の全てを囲う最小円により規定される壁面(第2シール部412)と、シート部材31の壁面との間に形成される環状流路の面積を第3流路面積S3とすると、第2流路面積S2は、第1流路面積S1および第3流路面積S3の合計よりも大きい。
また、連通路32の弁部材40側開口の壁面と弁部材40の壁面(第1シール部411)との間に形成される環状流路の面積を第4流路面積S4とし、弁部材40に形成された連通孔44の総流路面積を第5流路面積S5とすると、第5流路面積S5は、第3流路面積S3および第4流路面積S4の合計よりも大きい。
さらに、シート部材31に形成された連通路32の流路面積を第6流路面積S6とすると、第6流路面積S6は、第4流路面積S4よりも大きい。
シート部材31に形成される連通路32、連通路33、および、弁部材40に形成される連通孔44の流路面積を上記のような関係とすることにより、弁部材40とシート部材31との間に形成される流路が絞りとなる。
次に、弁部材40の板厚について説明する。
図10に示すように、弁部材40のバルブ本体41の板厚は、シート部材31の板厚より小さい。これにより、バルブ本体41がシート部材31にならって変形するため、シール性を向上できる。なお、バルブ本体41の形状は、受圧時のシート部材31への面圧が均一になる形状が望ましい。
本実施形態では、燃料噴射弁138により噴射される燃料の最大噴射圧すなわち、燃料供給システム9のシステム燃圧は20MPa以上であり、加圧室200の圧力は、圧損によりピーク燃圧が約40MPaまで上昇することがある。このような高燃圧環境において弁部材40の強度とシール性を確保するためには、板厚比t/Dを下記式1のようにすることが望ましい。
0.06≦t/D≦0.13 ・・・式1
上記式1において、Dは、径外流路45と連通路33との間をシールする第3シール部413の直径である(図11、14参照)。また、tは、バルブ本体41の板厚である(図10参照)。本実施形態では、tは、例えば1(mm)である。
板厚比t/Dを上記式1のようにすることの意義を図17に基づき説明する。図17のグラフは、板厚比t/Dとシール面圧(二点鎖線)および限界圧力(材料強度、一点鎖線)との関係を示すものである。
図17に示すように、板厚比t/Dが0.06以上であれば、所望の材料強度、すなわち、加圧室200のピーク燃圧である約40MPaを確保できる。また、板厚比t/Dが1.13以下であれば、所望のシール面圧(40MPa以上)を確保できる。
高燃圧環境においてはバルブ本体41が変形し易いため、強度を高めるためにバルブ本体41の板厚tは大きくすることが望ましい。しかし、本実施形態のように、複数のシール部410を有する弁部材40の場合、複数の流路をシールする必要があるため、シール性を確保する必要もある。シール性を高めるには、板厚tを小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、弁部材40の強度を確保しつつ、シール性を高めるため、図17に示すグラフに基づき、板厚比t/Dを上記式1のとおりとしている。なお、シール性をより高めるため、例えばシール面圧を60MPa以上とするには、板厚比t/Dは下記式2のようにすることが望ましい。
0.06≦t/D≦0.12 ・・・式2
以上説明したように、(A1)本実施形態の高圧ポンプ10は、加圧室形成部としてのシリンダ23と吸入通路形成部としての上ハウジング21およびストッパ35とシート部材31と弁部材40とを備えている。
シリンダ23は、燃料が加圧される加圧室200を形成している。上ハウジング21およびストッパ35は、加圧室200に吸入される燃料が流れる吸入通路216を形成している。
シート部材31は、吸入通路216に設けられ、吸入通路216の径内方向に位置し一方の面と他方の面とを連通する連通路32と、連通路32よりも径外方向に位置し一方の面と他方の面とを連通する連通路33とが設けられている。弁部材40は、シート部材31の加圧室200側に設けられ、シート部材31から離間し開弁またはシート部材31に当接し閉弁することで連通路32および連通路33における燃料の流れを許容または規制可能である。
弁部材40は、板状のバルブ本体41、バルブ本体41の一方の面と他方の面とを連通し連通路33と連通路32との間に形成された複数の連通孔44、バルブ本体41の径方向外側に設けられ加圧室200側の面がシート部材31側から加圧室200側へ向かうに従いバルブ本体41の軸Ax2に近付くようテーパ状に形成されたテーパ部42、および、テーパ部42を周方向において複数に分断するようバルブ本体41から径方向外側に突出しストッパ35のストッパ凹部351と摺動することで弁部材40の移動を案内可能な複数のガイド部43を有している。複数の連通孔44は、バルブ本体41の軸Ax2を中心とする仮想円VC1上に配置されている。
本実施形態では、シート部材31は、シート部材31の径内側方向の連通路32、および、連通路32の径外側方向に設けられた連通路33を有する。弁部材40は、シート部材31に当接および離間可能であり、径方向で連通路32と連通路33との間に位置する連通孔44を有する。燃料は、弁部材40の径外側方向であり弁部材40とストッパ凹部351との間を通ってシート部材31の連通路33へ至る経路と、弁部材40の連通孔44を通ってシート部材31の連通路32に通る経路と、弁部材40の連通孔44を通ってシート部材31の連通路33を通る経路とを流れる。
そのため、弁部材40とストッパ凹部351との間の流路しか持たない構成のもと比較して、弁部材40のシート部材31からのリフト量を小さくしても、弁部材40とストッパ凹部351との間の流路しか持たない構成のもと同等の流路面積を確保することができる。したがって、弁部材40のシート部材31からのリフト量を小さくすることができ、弁部材40をシート部材31からリフトさせるための駆動力を小さく設定することができ、電磁駆動部500による最大出力を小さくすることができる。これにより、電磁駆動部500の小型化が実現する。さらには、リフト量を小さくすることにより、弁部材40とニードル本体531との衝突音を抑制することができる。また、リフト量を小さくすることにより、電磁駆動部500の応答性を高めることができる。これにより、調量時に過剰な燃料の逆流を抑制し、高速作動時の吐出効率を高くできる。
さらに、本実施形態では、テーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、仮想円VC1に対する同心円CC1に沿うよう形成されている。そのため、各境界線B1の両端と連通孔44との距離を小さくすることができる。これにより、各境界線B1の両端近傍の部位が、弁部材40の表面を流れる燃料の抵抗となるのを抑制することができる。したがって、加圧室200に吸入される燃料の流量を十分に確保することができる。また、加圧室200から燃料室260側へ戻される燃料の流量についても十分に確保することができる。
また、(A2)本実施形態では、連通孔44の数をh、ガイド部43の数をgとすると、ガイド部43により複数に分断されたテーパ部42のうちの1つのテーパ部42の内縁部に対向する連通孔44の数は等しく、h/gである。そのため、1つのテーパ部42に対応して連通孔44をバランスよく配置することができる。これにより、弁部材40を通過する燃料の流れを安定にすることができる。
また、(A3)本実施形態では、2つのガイド部43により挟まれた1つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、1つのテーパ部42の内縁部が対向する複数の連通孔44のうち両端の連通孔44である端部連通孔(441、443)の外縁、および、バルブ本体41の中心から延びてガイド部43の中心を通る直線L11に対し端部連通孔(441、443)と線対称となる位置に形成された連通孔44(443、441)の外縁を通る2つの接線LT1の間の範囲に形成されている。そのため、各境界線B1の長さを確保しつつ各境界線B1の両端と連通孔44との距離を小さくすることができ、各境界線B1の両端近傍の部位が燃料の流れの抵抗となるのを抑制することができる。
また、(A9)本実施形態の高圧ポンプ10は、エンジン1に燃料を供給する燃料噴射弁138を有する燃料供給システム9に適用される。燃料噴射弁138により噴射される燃料の最大噴射圧が20MPa以上の燃料供給システム9において、弁部材40は、弁部材40に対して径外方向に位置する径外流路45と連通路33との間をシールする環状の第3シール部413を有し、第3シール部413の直径をD、弁部材40の板厚をt、板厚比をt/Dとすると、0.06≦t/D≦0.13である。
そのため、高燃圧環境において、複数のシール部410を有する弁部材40の強度を確保しつつ、シール性を高めることができる。
<B−1>次に、電磁駆動部500について、詳細に説明する。
図18に示すように、筒部材51の第2筒部512の外周壁は、略六角筒状に形成されている。具体的には、第2筒部512の外周壁の周方向の6つの角部は、第2筒部512の軸を中心とする仮想円筒面上に位置するよう曲面状に形成されている。また、第2筒部512の外周壁の平面部とスプール61の内周壁との間には隙間が形成されている。
本実施形態では、筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合するとき、工具の壁面を第2筒部512の外周壁に当てて回転させることにより、筒部材51を吸入穴部212にねじ結合する。
図5、18に示すように、本実施形態では、筒部材51の第2筒部512は、コイル60の内側筒状面602の内側、すなわち、スプール61の加圧室200側の端部の内側に位置している。そのため、筒部材51を吸入穴部212にねじ結合するときに工具の壁面を当てる六角筒状の外周壁を、筒部材51の外周壁のうちスプール61に対し加圧室200側に形成する場合と比べ、筒部材51およびニードル53の軸方向の長さを短くすることができる。これにより、慣性マスを小さくすることができ、応答性の向上、および、NVの低減を図ることができる。
また、本実施形態では、コイル60が互いに径の異なる内側筒状面601および内側筒状面602を有し、当該内側筒状面601および内側筒状面602の径方向外側に巻線620が巻き回されている。また、上述のように、筒部材51の第2筒部512は、コイル60の内側筒状面602の内側に位置している。そのため、第2筒部512の径方向の厚みを大きくでき、第2筒部512が磁気絞りとなるのを抑制することができる。
一方、仮に、コイル60が内側筒状面601を有さず、内側筒状面602のみ有し、内側筒状面602の径方向外側に本実施形態と同じだけ巻線620を巻き回そうとすると、巻線部62の軸方向の長さが長くなるとともに、固定コア57およびニードル53の軸方向の長さが長くなる。そのため、NVが増大するとともに、巻線部62の抵抗が増大するためコイル60の消費電力が増大するおそれがある。
また、仮に、コイル60が内側筒状面602を有さず、内側筒状面601のみ有し、内側筒状面601の径方向外側に本実施形態と同じだけ巻線620を巻き回そうとすると、上記と同様の問題が生じる他、筒部材51の第2筒部512の径方向の厚みが小さくなり、第2筒部512が磁気絞りとなるおそれがある。この場合、固定コア57と可動コア55との間の吸引力が不十分となり、必要な応答性を確保することができなくなるおそれがある。
図19は、本実施形態のコイル60の一部を簡略化して模式的に示したものである。そのため、コイル60を構成する各部材および各部位間の相対的な長さや大きさ等は、実際と異なる。また、スプール61の外周壁に巻き回された巻線620の巻き数についても、実際のものよりも少なくし簡略化して表示している。
図19に示すように、コイル60は、内側筒状面601と内側筒状面602とを連結する仮想的な連結面605を有している。連結面605は、略円環状に形成されている。内側筒状面601、内側筒状面602および連結面605は、スプール61の外周壁に位置している。連結面605は、少なくとも一部が加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
より具体的には、連結面605は、内側筒状面601および内側筒状面602のうち最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601との接続部分がテーパ状に形成されており、それ以外の部分、すなわち、内側筒状面602側の部分は、スプール61の軸に対し垂直となるよう形成されている。連結面605のうち内側筒状面601との接続部分であるテーパ状の部分をテーパ面部691とし、それ以外の部分であるスプール61の軸に対し垂直となる平面状の部分を垂直面部692とする。
また、図19に示すように、スプール61の軸を含む仮想平面VP1による断面において、内側筒状面601と連結面605とのなす角、すなわち、内側筒状面601とテーパ面部691とのなす角のうち劣角θは、120度である。
なお、本実施形態では、巻線部62の加圧室200側の端面621は、内側筒状面602との接続部分がテーパ状に形成されている。当該接続部分と内側筒状面602とのなす角θは、120度である。
また、図19に示すように、巻線620は、内側筒状面601および内側筒状面602のうち最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601から径方向外側へ向かってN層巻き回されている。本実施形態では、Nは、偶数である。図19においては、N=10、すなわち、内側筒状面601から径方向外側へ向かって10層巻き回された巻線620を示している。
本実施形態では、スプール61の外周壁に巻線620を巻き回すとき、1層目において巻線620をスプール61の軸方向の加圧室200側へ向かって巻き回し、2層目において巻線620をスプール61の軸方向の加圧室200とは反対側へ向かって巻き回し、3層目において巻線620をスプール61の軸方向の加圧室200側へ向かって巻き回し、これをN層目まで繰り返す。上述のように、Nを偶数とすることにより、巻線620の巻き始めの位置と巻き終わりの位置とを、例えばスプール61の軸方向の端部のうち加圧室200とは反対側に設定することができる。よって、端子651への接続を容易にできる(図22、23参照)。
また、図19に示すように、巻線620は、内側筒状面601から径方向外側へ向かう1層目における軸方向の巻き回数と2層目における軸方向の巻き回数とが同じである。図19においては、実際のものより簡略化し、巻線620の1層目における軸方向の巻き回数、および、2層目における軸方向の巻き回数がいずれも5であることを示している。ここで、1層目において軸方向に隣り合う巻線620の間に2層目の巻線620が位置している。
なお、本実施形態では、テーパ面部691は、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620、および、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接している。また、垂直面部692のテーパ面部691との接続部分は、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接している。すなわち、テーパ面部691と垂直面部692との境界は、内側筒状面601から径方向外側へ向かって巻き回される巻線620の2層目に位置している。
また、図19に示すように、巻線620は、内側筒状面601および内側筒状面602のうち最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601と最も径の大きい内側筒状面である内側筒状面602との間TB1において、1層毎の巻線620の軸方向の巻き回数は、全ての層で同一である。図19においては、内側筒状面601と内側筒状面602との間TB1において、巻線620は径方向外側へ向かって4層巻き回され、巻線620の1層毎の軸方向の巻き回数が、全ての層(1〜4層目)で5であることを示している。ここで、m層目において軸方向に隣り合う巻線620の間にm+1層目の巻線620が位置している。
次に、本実施形態によるコイル60と比較形態によるコイル60とを比較し、比較形態に対する本実施形態の効果上の優位性を明らかにする。
図20に第1比較形態によるコイル60を示し、図21に第2比較形態によるコイル60を示す。
図20に示すように、第1比較形態によるコイル60は、連結面605の形状が、本実施形態によるコイル60と異なる。第1比較形態によるコイル60では、連結面605は、全ての部位がスプール61の軸に対し垂直となるよう平面状に形成されており、内側筒状面601と連結面605とのなす角のうち劣角θは、90度である。そのため、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620と連結面605との間に隙間Sp1が形成されている。これにより、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620が隙間Sp1側へ位置ずれするおそれがある。その結果、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に接触する2層目の巻線620がスプール61の径方向に位置ずれするおそれがある。したがって、スプール61に巻き回される巻線620の状態が不安定になるおそれがある。
一方、本実施形態によるコイル60は、図19に示すように、スプール61の軸を含む仮想平面VP1による断面において、内側筒状面601と連結面605とのなす角、すなわち、内側筒状面601とテーパ面部691とのなす角のうち劣角θは、120度である。そのため、テーパ面部691は、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620、および、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接している。よって、本実施形態によるコイル60では、第1比較形態によるコイル60において形成される隙間Sp1は形成されていない。また、垂直面部692のテーパ面部691との接続部分は、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接している。この構成により、本実施形態によるコイル60では、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620、および、当該巻線620に接触する2層目の巻線620の位置ずれを抑制し、スプール61に巻き回される巻線620の状態を安定にすることができる。
図21に示すように、第2比較形態によるコイル60では、内側筒状面601と内側筒状面602との間TB1において、各層の巻線620の軸方向の巻き回数が、本実施形態によるコイル60と異なる。第2比較形態によるコイル60では、1層目および3層目の巻線620の軸方向の巻き回数は5、2層目および4層目の巻線620の軸方向の巻き回数は4である。そのため、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620と連結面605との間に隙間Sp2が形成されている。また、4層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620と連結面605との間に隙間Sp3が形成されている。これにより、3層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620が隙間Sp2側へ位置ずれするおそれがある。また、隙間Sp3に面する5層目の巻線620が隙間Sp3側へ位置ずれするおそれがある。したがって、スプール61に巻き回される巻線620の状態が不安定になるおそれがある。
一方、本実施形態によるコイル60では、図19に示すように、巻線620は、内側筒状面601と内側筒状面602との間TB1において、1層毎の巻線620の軸方向の巻き回数は、全ての層で同一である。そのため、本実施形態によるコイル60では、第2比較形態によるコイル60において形成される隙間Sp2、隙間Sp3は形成されていない。この構成により、本実施形態によるコイル60では、3層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620、および、5層目の巻線620の位置ずれを抑制し、スプール61に巻き回される巻線620の状態を安定にすることができる。
図24に示すように、スプール61の外周壁には、スプール溝部611、612が形成されている。図24の上段にはスプール61の外周壁の展開図を示し、図24の下段にはスプール61の断面図を示している。
スプール溝部611は、スプール61の外周壁のうち内側筒状面601に対応する部位から径方向内側へ凹みつつスプール61の周方向へ延びるよう形成されている。スプール溝部611は、スプール61の周方向において一部形成されていないものの、スプール61の周方向の略全範囲に形成されている。
スプール溝部612は、スプール61の外周壁のうち内側筒状面602に対応する部位から径方向内側へ凹みつつスプール61の周方向へ延びるよう形成されている。スプール溝部612は、スプール61の周方向において約90〜360度の範囲に形成されている。すなわち、スプール61の外周壁のうち内側筒状面602に対応する部位の周方向の一部(0〜約90度の範囲)には、スプール溝部612は形成されていない。
スプール61の外周壁のうち内側筒状面601に対応する部位の周方向の一部(0〜約90度の範囲)においては、スプール溝部611は、前記周方向の一部以外(約90〜360度の範囲)の部位におけるスプール溝部611に対し傾斜するよう形成されている。
巻線620は、一部がスプール溝部611、612に入り込むようにしてスプール61に巻き回される。これにより、スプール61に対し巻線620を安定させることができる。なお、スプール61の外周壁のうち内側筒状面601に対応する部位に巻き回された巻線620が内側筒状面602に対応する部位に巻き回される、切り替わりの時点では、スプール61に対する巻線620の位置がばらつくおそれがある。本実施形態では、上述のように、スプール61の外周壁のうち内側筒状面602に対応する部位の周方向の一部には、スプール溝部612は形成されていない。そのため、上記巻線620の位置のばらつきを、スプール61の外周壁のうちスプール溝部612が形成されていない部位で吸収することができる。
以上説明したように、(B1)本実施形態の高圧ポンプ10は、加圧室形成部としてのシリンダ23と吸入通路形成部としての上ハウジング21とシート部材31と弁部材40と筒部材51とニードル53と可動コア55と付勢部材としてのスプリング54と固定コア57とコイル60とを備えている。シリンダ23は、燃料が加圧される加圧室200を形成している。
上ハウジング21は、加圧室200に吸入される燃料が流れる吸入通路216を形成している。シート部材31は、吸入通路216に設けられ、一方の面と他方の面とを連通する連通路32および連通路33を有している。弁部材40は、シート部材31の加圧室200側に設けられ、シート部材31から離間し開弁またはシート部材31に当接し閉弁することで連通路32および連通路33における燃料の流れを許容または規制可能である。
筒部材51は、シート部材31の加圧室200とは反対側に設けられている。ニードル53は、筒部材51の内側において軸方向に往復移動可能に設けられ、一端が弁部材40の加圧室200とは反対側の面に当接可能である。可動コア55は、ニードル53の他端に設けられている。
スプリング54は、ニードル53を加圧室200側へ付勢可能である。固定コア57は、筒部材51の加圧室200とは反対側に設けられている。コイル60は、巻線620をスプール61に巻き回すことで筒状に形成された巻線部62を有し、巻線部62への通電により固定コア57と可動コア55との間に吸引力を生じさせ、可動コア55およびニードル53を閉弁方向へ移動させることが可能である。
コイル60は、巻線部62の外周面を通る1つの外側筒状面600、および、巻線部62の内周面を通り互いに径の異なる内側筒状面601および内側筒状面602を有している。内側筒状面601および内側筒状面602は、加圧室200側ほど径が大きい。
少なくともコイル60への非通電時、可動コア55の固定コア57側の端面551は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601の軸方向の中心Ci1と外側筒状面600の軸方向の中心Co1との間に位置している。そのため、コイル60への通電時、可動コア55に作用する吸引力を大きくすることができる。これにより、可動コア55の応答性を向上させることができる。また、可動コア55の応答性が高いため、可動コア55に作用する吸引力を低下させることなく、コイル60へ流す電流を低減することができる。したがって、コイル60を含む電磁駆動部の消費電力を低減することができる。
また、(B2)本実施形態では、可動コア55の加圧室200側の端面552は、巻線部62の加圧室200側の端面621に対し固定コア57側に位置している。そのため、可動コア55の軸方向の長さを短くでき、可動コア55を軽くすることができる。これにより、可動コア55の応答性を向上するとともに、NVを低減することができる。
また、(B3)本実施形態では、コイル60は、内側筒状面601と内側筒状面602とを連結する連結面605を有している。内側筒状面601、内側筒状面602および連結面605は、スプール61の外周壁に位置している。連結面605は、少なくとも一部、すなわち、垂直面部692がスプール61の軸に対し垂直となるよう形成されている。そのため、内側筒状面601の径方向外側に巻き回す巻線620の位置ずれを抑制することができる。これにより、コイル60を容易に製造することができる。
また、(B4)本実施形態では、連結面605は、少なくとも一部、すなわち、テーパ面部691が加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成されている。そのため、連結面605のテーパ面部691を、各層の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接させることができる。これにより、巻線620の位置ずれを抑制することができる。
また、(B5)本実施形態では、連結面605は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601との接続部分、すなわち、テーパ面部691がテーパ状に形成されている。スプール61の軸を含む仮想平面VP1による断面において、内側筒状面601と連結面605のテーパ面部691とのなす角は120度である。そのため、連結面605のテーパ面部691を、1層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620、および、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620に当接させることができる。これにより、特に内側筒状面601と連結面605との接続部分において、巻線620の位置ずれを抑制することができる。したがって、スプール61に巻き回される巻線620の状態を安定にすることができる。
また、(B7)本実施形態では、巻線620は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601から径方向外側へ向かってN層巻き回されている。Nは、偶数である。そのため、巻線620の巻き始めの位置と巻き終わりの位置とを、例えばスプール61の軸方向の端部のうち加圧室200とは反対側に設定することができる。これにより、巻線620をスプール61に沿わせて固定できる。したがって、スプール61が熱により変形しても、巻線620に過度のテンションが作用することを抑制し、巻線620が冷熱疲労により断線するのを抑制することができる。また、Nを偶数とすることにより、端子651と巻線620との接続が容易となる。
また、(B8)本実施形態では、巻線620は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601から径方向外側へ向かう1層目における軸方向の巻き回数と2層目における軸方向の巻き回数とが同じである。そのため、1層目において軸方向に隣り合う巻線620の間に2層目の巻線620を位置させることができる。また、2層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620と連結面605とを当接させることができる。これにより、特に3層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620の位置ずれを抑制することができる。したがって、スプール61に巻き回される巻線620の状態を安定にすることができる。
また、(B9)本実施形態では、巻線620は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601と最も径の大きい内側筒状面である内側筒状面602との間TB1において、巻線620の1層毎の軸方向の巻き回数は、全ての層で同一である。そのため、N層目において軸方向に隣り合う巻線620の間にN+1層目の巻線620を位置させることができる。また、偶数層目の巻線620のうちスプール61の軸方向の最も加圧室200側に位置する巻線620と連結面605とを当接させることができる。これにより、巻線620の位置ずれを抑制することができる。したがって、スプール61に巻き回される巻線620の状態を安定にすることができる。
<C−1>次に、吐出通路部700を構成する吐出ジョイント70、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、リリーフ弁91、スプリング79、スプリング99について、個別に説明する。
図25〜27に示すように、吐出ジョイント70は、略円筒状に形成されている。吐出ジョイント70の内側には、略円環状の段差面701が形成されている。吐出ジョイント70は、内側に吐出通路705を形成している。吐出ジョイント70には、内周壁と外周壁とを連通する横穴部702が形成されている。横穴部702は、吐出ジョイント70の周方向に1つ形成されている。吐出ジョイント70には、略六角筒状の多角筒面703が形成されている。多角筒面703は、吐出ジョイント70の外周壁の軸方向において概ね段差面701の径方向外側の位置に形成されている。
図28〜30に示すように、吐出シート部材71は、吐出部材本体72、吐出孔73、吐出弁座74を有している。吐出部材本体72は、略円板状に形成されている。吐出部材本体72の外径は、吐出ジョイント70の一方の端部の内径よりやや大きい。吐出部材本体72は、外周壁が吐出ジョイント70の一方の端部の内周壁に嵌合するようにして吐出ジョイント70の内側に設けられる。
吐出部材本体72には、吐出凹部721、内側突起722、外側突起723が形成されている。吐出凹部721は、吐出部材本体72の一方の端面の中央から他方の端面側へ略円筒状に凹むようにして形成されている。内側突起722は、吐出部材本体72の他方の端面から略円環状に突出するよう形成されている。外側突起723は、内側突起722の径方向外側において吐出部材本体72の他方の端面から略円環状に突出するよう形成されている。
吐出孔73は、内側突起722の径方向内側における吐出部材本体72の端面と吐出凹部721の底面とを連通するよう略円筒状に形成されている。吐出弁座74は、吐出凹部721の底面において吐出孔73の周囲に略円環状に形成されている。吐出凹部721、内側突起722、外側突起723、吐出孔73、吐出弁座74は、吐出部材本体72と略同軸となるよう形成されている。
図31〜33に示すように、中間部材81は、中間部材本体82、第1流路83を有している。中間部材本体82は、略円板状に形成されている。中間部材本体82は、吐出ジョイント70の一方の端部の内側において吐出シート部材71に当接するようにして設けられる。中間部材本体82の外径は、吐出ジョイント70の一方の端部の内径よりやや小さい。
中間部材本体82には、中間凹部821が形成されている。中間凹部821は、中間部材本体82の一方の端面の中央から他方の端面側へ略円筒状に凹むようにして形成されている。中間凹部821は、中間部材本体82と略同軸となるよう形成されている。
第1流路83は、中間凹部821の径方向外側において中間部材本体82の一方の端面と他方の端面とを連通するよう略円筒状に形成されている。第1流路83は、中間部材本体82の周方向に等間隔で5つ形成されている。
本実施形態では、中間部材81に環状溝800が形成されている。環状溝800は、中間部材本体82の他方の端面から一方の端面側へ凹むよう略円環状に形成されている。環状溝800は、中間部材本体82と略同軸に形成されている。また、環状溝800は、全ての第1流路83の端部に接続している。
図34〜36に示すように、リリーフシート部材85は、リリーフ部材本体86、リリーフ孔87、リリーフ弁座88、第2流路89、リリーフ外周凹部851、逃がし横穴852、横穴853を有している。リリーフ部材本体86は、リリーフ部材筒部861、リリーフ部材底部862を有している。リリーフ部材筒部861は、略円筒状に形成されている。リリーフ部材底部862は、リリーフ部材筒部861の一方の端部を塞ぐようにしてリリーフ部材筒部861と一体に形成されている。
リリーフ部材筒部861の内周壁は、リリーフ弁摺動部93との摺動部位805の内径より、摺動部位805に対し加圧室200側の部位806の内径が大きくなるよう形成されている。また、リリーフ部材筒部861の内周壁は、部位806の内径より、部位806に対し加圧室200側の部位807の内径が大きくなるよう形成されている(図34参照)。
リリーフ部材本体86は、吐出ジョイント70の内側において中間部材81の吐出シート部材71とは反対側に設けられる。リリーフ部材筒部861の外径は、吐出ジョイント70の段差面701に対し吐出シート部材71側の部位の内径と略同じである。リリーフ部材本体86は、リリーフ部材筒部861のリリーフ部材底部862とは反対側の端面が中間部材本体82の端面の外縁部に当接し、リリーフ部材筒部861のリリーフ部材底部862側の端面の外縁部が吐出ジョイント70の段差面701に当接するよう、吐出ジョイント70の内側に設けられる。
リリーフ孔87は、リリーフ部材底部862の中央の一方の面と他方の面とを連通するよう略円筒状に形成されている。リリーフ弁座88は、リリーフ部材底部862の一方の面においてリリーフ孔87の周囲に環状に形成されている。ここで、リリーフ弁座88は、リリーフ部材筒部861の軸方向の一方側から他方側へ向かうに従いリリーフ部材筒部861の軸に近づくようテーパ状に形成されている。リリーフ孔87およびリリーフ弁座88は、リリーフ部材本体86と略同軸となるよう形成されている。
第2流路89は、リリーフ部材筒部861の一方の端面と他方の端面とを連通するよう略円筒状に形成されている。第2流路89は、リリーフ部材筒部861の周方向に等間隔で4つ形成されている。
リリーフ外周凹部851は、リリーフ部材筒部861の外周壁から径方向内側へ凹むよう略円筒状に形成されている。逃がし横穴852は、リリーフ外周凹部851とリリーフ部材筒部861の内周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。逃がし横穴852は、リリーフ部材筒部861の周方向に90度の間隔で2つ形成されている(図35参照)。2つの逃がし横穴852を周方向に均等に配置しないことで、開弁作動時にリリーフ弁91を片側に寄せて流れを安定させることができる。なお、仮に、2つの逃がし横穴852を周方向に均等に配置した場合、負圧バランスのばらつきによって片寄る方向が一定にならないため、リリーフ弁91の挙動が不安定になるおそれがある。
横穴853は、逃がし横穴852のリリーフ部材底部862とは反対側においてリリーフ外周凹部851とリリーフ部材筒部861の内周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。横穴853は、リリーフ部材筒部861の周方向に1つ形成されている。横穴853の内径と逃がし横穴852の内径は、同じである。
なお、リリーフ部材本体86が、吐出ジョイント70の内側において中間部材81の吐出シート部材71とは反対側に設けられた状態では、環状溝800は、中間部材81の第1流路83とリリーフシート部材85の第2流路89とを接続する。また、本実施形態では、第2流路89が形成されたリリーフ部材筒部861の軸方向の長さは、第1流路83が形成された中間部材本体82の軸方向の長さより長い。
図37〜39に示すように、吐出弁75は、吐出弁当接部76、吐出弁摺動部77を有している。吐出弁当接部76は、略円板状に形成されている。吐出弁当接部76の外径は、吐出シート部材71の吐出凹部721の内径より小さく、中間部材81の中間凹部821の内径より大きい。吐出弁当接部76は、一方の面の外縁部が吐出弁座74に当接、または、吐出弁座74から離間可能なよう吐出凹部721の内側に設けられる。
吐出弁摺動部77は、吐出弁当接部76の他方の面から略円筒状に突出するよう吐出弁当接部76と一体に形成されている。吐出弁摺動部77は、吐出弁当接部76と略同軸に形成されている。吐出弁摺動部77の外径は、中間凹部821の内径よりやや小さい。吐出弁75は、吐出弁摺動部77の外周壁が中間凹部821の内周壁と摺動しつつ軸方向に往復移動可能に設けられる。
吐出弁摺動部77には、孔部771が形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の内周壁と外周壁とを連通するよう略円筒状に形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の周方向に等間隔で4つ形成されている。孔部771は、吐出弁摺動部77の内側の空間と外側の空間とを連通している。
本実施形態では、吐出弁摺動部77の内周壁は、吐出弁当接部76側から吐出弁当接部76とは反対側へ向かうに従い内径が大きくなるようテーパ状に形成されている(図37参照)。そのため、スプリング79の外周部が吐出弁摺動部77の内周壁に接触するのを抑制できる。また、吐出弁摺動部77の内周壁に段差が形成されていないため、バリ取りを簡素化できる。また、本実施形態では、加工性の観点から、吐出弁当接部76の端面と孔部771とを離間させている。
図40〜42に示すように、リリーフ弁91は、リリーフ弁当接部92、リリーフ弁摺動部93、リリーフ弁突出部94を有している。リリーフ弁当接部92は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁当接部92は、一方の端部の外周壁が、他方から一方に向かうに従い軸に近づくようテーパ状に形成されている。リリーフ弁当接部92は、一方の端部がリリーフ弁座88に当接、または、リリーフ弁座88から離間可能なようリリーフ部材筒部861の内側に設けられる。
リリーフ弁摺動部93は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁摺動部93は、一端がリリーフ弁当接部92の他端に接続するようリリーフ弁当接部92と一体に形成されている。リリーフ弁摺動部93は、リリーフ弁当接部92と略同軸に形成されている。リリーフ弁摺動部93の外径は、リリーフ部材筒部861の内径よりやや小さい。リリーフ弁摺動部93は、リリーフ部材筒部861の内側に設けられた状態では、外周壁がリリーフ部材筒部861の内周壁と摺動可能である。
リリーフ弁摺動部93は、リリーフ弁当接部92側の端部の外周壁が、リリーフ弁当接部92とは反対側からリリーフ弁当接部92側へ向かうに従い軸に近づくようテーパ状に形成されている。なお、リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフシート部材85の逃がし横穴852は、リリーフ弁摺動部93の外周壁により閉塞される(図6参照)。
リリーフ弁突出部94は、略円柱状に形成されている。リリーフ弁突出部94は、一端がリリーフ弁摺動部93のリリーフ弁当接部92とは反対側の端面の中央に接続するようリリーフ弁摺動部93と一体に形成されている。リリーフ弁突出部94は、リリーフ弁摺動部93と略同軸に形成されている。リリーフ弁突出部94の外径は、リリーフ弁摺動部93の外径より小さい。なお、リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフ弁突出部94のリリーフ弁摺動部93とは反対側の端面は、リリーフ部材筒部861のリリーフ部材底部862とは反対側の端面よりもリリーフ部材底部862側に位置する(図6参照)。
図6に示すように、係止部材95は、略円筒状に形成されている。係止部材95の外径は、リリーフ部材筒部861の内周壁の部位807の内径よりやや大きい。係止部材95は、外周壁がリリーフ部材筒部861の内周壁の部位807に嵌合するようリリーフ部材筒部861の内側に圧入されている。すなわち、係止部材95は、リリーフ部材筒部861と略同軸に設けられる。係止部材95は、リリーフ部材筒部861の軸方向においてリリーフ部材筒部861のリリーフ部材底部862とは反対側の端部の近傍に設けられる。
係止部材95の内径は、リリーフ弁突出部94の外径より大きい。リリーフ弁当接部92がリリーフ弁座88に当接しているとき、リリーフ弁突出部94のリリーフ弁摺動部93とは反対側の端面は、係止部材95の内側に位置する。ここで、係止部材95の内周壁とリリーフ弁突出部94の外周壁との間には、略円筒状の隙間Sq1が形成される。つまり、係止部材95の内周壁とリリーフ弁突出部94の外周壁とは摺動しない。
図43、44に示すように、スプリング79は、金属製の線材790を巻くことによりコイル状に形成されている。スプリング79は、スプリング端面791、スプリング端面792を有している。スプリング端面791は、スプリング79の軸方向の一方の端部において平面状に形成されている。スプリング端面792は、スプリング79の軸方向の他方の端部において平面状に形成されている。
スプリング79は、スプリング端面791が中間部材81の中間凹部821の底面に当接し、スプリング端面792が吐出弁75の吐出弁当接部76の吐出弁摺動部77側の端面に当接するよう吐出弁摺動部77の内側に設けられる。この状態で、スプリング79は、吐出弁75を中間部材81とは反対側へ付勢可能である。なお、線材790の線径は、リリーフシート部材85の横穴853の内径より小さい。
図45、46に示すように、スプリング99は、金属製の線材990を巻くことによりコイル状に形成されている。ここで、線材990の線径は、線材790の線径より大きい。スプリング99は、スプリング端面991、スプリング端面992を有している。スプリング端面991は、スプリング99の軸方向の一方の端部において平面状に形成されている。スプリング端面992は、スプリング99の軸方向の他方の端部において平面状に形成されている。
スプリング99は、スプリング端面991がリリーフ弁摺動部93のリリーフ弁突出部94側の端面に当接し、スプリング端面992が係止部材95のリリーフ部材底部862側の端面に当接するようリリーフ部材筒部861の内側に設けられる。この状態で、スプリング99は、リリーフ弁91をリリーフ部材底部862側へ付勢可能である。なお、リリーフ部材筒部861の内周壁の部位807に対する係止部材95の軸方向の位置を調整することにより、スプリング99の付勢力を調整することができる。
上述したように、本実施形態では、中間部材81には、第1流路83が周方向に等間隔で5つ、すなわち、奇数個形成されている。また、リリーフシート部材85には、第2流路89が周方向に等間隔で4つ、すなわち、偶数個形成されている。また、第1流路83の個数と第2流路89の個数とは、互いに素の関係である。そのため、中間部材81とリリーフシート部材85とが軸回りにどのように相対回転したとしても、中間部材81の軸方向から見たときの第1流路83と第2流路89との重なり面積の変動を小さくすることができる。これにより、中間部材81とリリーフシート部材85との相対的な回転方向の位置関係に応じて燃料の流れに変動が生じるのを抑制することができる。したがって、製品毎の吐出量のばらつきを抑制することができる。
また、本実施形態では、吐出弁75は、吐出弁座74に当接可能な吐出弁当接部76、および、吐出弁当接部76の中間部材81側に形成され中間部材81と摺動可能な吐出弁摺動部77を有している。吐出弁摺動部77の外径は、吐出弁当接部76の外径より小さい。
吐出弁75が開弁しているとき、プランジャ11が加圧室200とは反対側に移動し加圧室200の容積が増大すると、吐出凹部721の燃料は、吐出孔73側へ流れる。このときの燃料の流れが吐出弁当接部76の吐出弁摺動部77側の面の外縁部に当たることで、吐出弁75を速やかに閉弁することができる。
また、本実施形態では、吐出シート部材71は、吐出孔73の径方向外側において吐出部材本体72の加圧室200側の面から加圧室200側へ環状に突出し吐出通路形成部としての上ハウジング21の吐出穴部214の底面に当接する内側突起722、および、内側突起722の径方向外側において吐出部材本体72の加圧室200側の面から加圧室200側へ環状に突出し上ハウジング21の吐出穴部214の底面に当接する外側突起723を有している。
仮に、内側突起722が形成されず、外側突起723のみ形成されている場合、吐出部材本体72の加圧室200側の端面の内縁部と吐出穴部214の底面との間に隙間が形成される。この場合、吐出弁75が吐出弁座74に当接したとき、吐出部材本体72の内縁部が加圧室200側へ変形するように傾き、吐出シート部材71と吐出弁75との間に滑りが生じ、摩耗するおそれがある。
一方、本実施形態では、外側突起723の径方向内側に内側突起722が形成されているため、吐出弁75が吐出弁座74に当接したとき、吐出部材本体72の内縁部が加圧室200側へ変形するように傾くのを抑制することができる。したがって、吐出シート部材71と吐出弁75との摩耗を抑制することができる。
吐出弁75によるシール部の軸方向に重なる位置に内側突起722を配置することで、吐出シート部材71の変形を抑制できる(図6参照)。
また、吐出部材本体72の加圧室200側の端面を吐出穴部214の底面に当接させず、内側突起722および外側突起723が吐出穴部214の底面に当接する構成とすることにより、吐出穴部214の底面に対する吐出シート部材71の面圧を確保することができる。
本実施形態では、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85は、硬度が同じに設定されている。ここで、中間部材81の硬度を、吐出シート部材71およびリリーフシート部材85の硬度より低くしてもよい。この場合、シール性を向上できる。
また、本実施形態では、リリーフ弁91は、リリーフ弁座88に当接可能なリリーフ弁当接部92、および、リリーフ弁当接部92の中間部材81側に形成されリリーフ部材本体86と摺動可能なリリーフ弁摺動部93を有している。リリーフ弁91の重心は、リリーフ弁摺動部93に設定されている。そのため、リリーフ弁摺動部93のリリーフ部材本体86との摺動箇所を研削する際、リリーフ弁91が倒れにくいため、研削が容易である。また、リリーフ部材本体86と摺動する部位であるリリーフ弁摺動部93に重心が設定されていると、重心のある箇所に力が加わるため、リリーフ弁91の移動が安定する。
また、本実施形態では、リリーフ部材本体86は、筒状に形成されている。リリーフシート部材85は、リリーフ部材本体86の内周壁と外周壁とを接続する横穴853を有している。本実施形態は、リリーフ弁付勢部材としてのスプリング99をさらに備えている。スプリング99は、線材990を巻くことによりコイル状に形成され、リリーフ部材本体86の内側に設けられ、リリーフ弁91をリリーフ弁座88側に付勢する。線材990の線径は、横穴853の内径より小さい。そのため、スプリング99の線材990により横穴853が閉塞されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、リリーフ部材本体86は、筒状に形成されている。リリーフ弁91は、リリーフ弁座88に当接可能なリリーフ弁当接部92、リリーフ弁当接部92の中間部材81側に形成されリリーフ部材本体86の内周壁と摺動可能なリリーフ弁摺動部93、および、リリーフ弁摺動部93から中間部材81側へ突出するリリーフ弁突出部94を有している。本実施形態は、リリーフ弁付勢部材としてのスプリング99、係止部材95をさらに備えている。スプリング99は、リリーフ部材本体86の内側に設けられ、リリーフ弁91をリリーフ弁座88側に付勢する。係止部材95は、筒状に形成され、内側にリリーフ弁突出部94の一部が位置するようリリーフ部材本体86の内側に設けられ、スプリング99の端部を係止する。リリーフ弁突出部94の外周壁と係止部材95の内周壁との間には、筒状の隙間Sq1が形成されている。そのため、リリーフ弁91が開弁し加圧室200側へ移動するとき、係止部材95とリリーフ弁摺動部93との間の燃料は、隙間Sq1を経由して加圧室200側へ流れることができる。これにより、係止部材95とリリーフ弁摺動部93との間の空間の燃料にダンパ作用が生じリリーフ弁91の開弁方向の移動の抵抗となるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、中間部材81は、リリーフ弁91に当接したとき、リリーフ弁91の加圧室200側への移動を規制可能である。また、本実施形態では、加圧室200から燃料が吐出されるとき、吐出通路705のうち中間部材81に対し加圧室200側の空間の圧力は、吐出通路705のうち中間部材81に対しリリーフシート部材85側の空間の圧力より高くなる。そのため、中間部材81には、加圧室200側からリリーフシート部材85側へ向かって圧力が作用する。これにより、中間部材81のリリーフ弁91との当接面の応力が高くなる。したがって、リリーフ弁91が中間部材81に当接したとしても、中間部材81が加圧室200側へ移動するのを抑制することができる。
以上説明したように、(C1)本実施形態の高圧ポンプ10は、加圧室形成部としてのシリンダ23と吐出通路形成部としての上ハウジング21と吐出シート部材71と中間部材81とリリーフシート部材85と吐出弁75とリリーフ弁91とを備えている。
シリンダ23は、燃料が加圧される加圧室200を形成している。上ハウジング21は、加圧室200から吐出される燃料が流れる吐出通路217を形成している。吐出シート部材71は、吐出通路217に設けられた吐出部材本体72、吐出部材本体72の加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通する吐出孔73、および、吐出部材本体72の加圧室200とは反対側の面において吐出孔73の周囲に形成された吐出弁座74を有している。
中間部材81は、吐出シート部材71の加圧室200とは反対側に設けられた中間部材本体82、中間部材本体82の加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通する第1流路83を有している。リリーフシート部材85は、中間部材81の加圧室200とは反対側に設けられたリリーフ部材本体86、リリーフ部材本体86の加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通するリリーフ孔87、リリーフ部材本体86の加圧室200側の面においてリリーフ孔87の周囲に形成されたリリーフ弁座88、および、リリーフ部材本体86の加圧室200側の面と加圧室200とは反対側の面とを連通する第2流路89を有している。
吐出弁75は、吐出シート部材71の中間部材81側に設けられ、吐出弁座74から離間し開弁または吐出弁座74に当接し閉弁することで吐出孔73における燃料の流れを許容または規制可能である。リリーフ弁91は、リリーフシート部材85の中間部材81側に設けられ、リリーフ弁座88から離間し開弁またはリリーフ弁座88に当接し閉弁することでリリーフ孔87における燃料の流れを許容または規制可能である。
中間部材81またはリリーフシート部材85の少なくとも一方は、中間部材本体82とリリーフ部材本体86との互いに対向する面において環状に形成され第1流路83と第2流路89とを接続する環状溝800を有している。そのため、中間部材81とリリーフシート部材85とが軸回りにどのように相対回転したとしても、第1流路83と第2流路89とは、環状溝800を経由して互いに連通可能である。これにより、中間部材81とリリーフシート部材85との相対位置に関係なく、加圧室200からエンジン1側へ吐出される燃料の流路を確保することができる。
本実施形態では、吐出弁75を加圧室200の近傍に配置し、リリーフ弁91を吐出弁75に対し加圧室200とは反対側に配置している。そのため、加圧室200に連通し加圧時に高圧の空間となるデッドボリュームを低減することができる。これにより、高圧ポンプ10から高圧の燃料を吐出可能である。
また、本実施形態では、吐出弁75とリリーフ弁91とを同軸上に配置しつつ、所定の範囲に集約して一体に設けることが可能である。これにより、吐出弁75およびリリーフ弁91を含む部位である吐出通路部700を小型化し、結果的に高圧ポンプ10を小型化することができる。
また、(C2)本実施形態では、第1流路83は、中間部材本体82の周方向に複数形成されている。第2流路89は、リリーフ部材本体86の周方向に複数形成されている。そのため、加圧室200からエンジン1側へ吐出される燃料の流量を確保することができる。
なお、第1流路83と第2流路89とがそれぞれ複数形成されている場合、中間部材81とリリーフシート部材85との相対位置によっては、中間部材81の軸方向から見たときの第1流路83と第2流路89との重なり面積が極端に小さくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、中間部材81に、第1流路83と第2流路89とを接続する環状溝800が形成されているため、中間部材81とリリーフシート部材85との相対位置に関係なく、加圧室200からエンジン1側へ吐出される燃料の流量を確保することができる。
また、(C3)本実施形態では、第1流路83の数と第2流路89の数とは異なる。そのため、第1流路83の中心と第2流路89の中心とのずれ角を小さくすることができる。
また、(C4)本実施形態では、第1流路83の数は、第2流路89の数より多い。環状溝800は、中間部材本体82に形成されている。すなわち、中間部材81およびリリーフシート部材85のうち流路数の多い方の部材である中間部材81に環状溝800が形成されている。
一般に、部材を切削して溝を形成する歯具の先端は角部がR形状となっているため、歯具を用いて切削により部材に溝を形成する場合、溝の角部はR状に形成される。環状溝800のR状の角部に第1流路83が交差すると、当該交差部に鋭い角部が形成され、当該角部に応力が集中する。そのため、強度の関係上、第1流路83が環状溝800のR状の角部に交差しないよう、第1流路83の流路面積を小さくする必要がある。本実施形態では、第1流路83の流路面積を小さくしても、第1流路83を流れる燃料の流量を確保するため、第1流路83の数を、第2流路89の数より多くしている。
また、(C5)本実施形態では、第1流路83の数と、第2流路89の数とは、互いに素の関係である。そのため、中間部材81とリリーフシート部材85とが軸回りにどのように相対回転したとしても、中間部材81の軸方向から見たときの第1流路83と第2流路89との重なり面積の変動を小さくすることができる。これにより、中間部材81とリリーフシート部材85との相対的な回転方向の位置関係に応じて燃料の流れに変動が生じるのを抑制することができる。したがって、製品毎の吐出量のばらつきを抑制することができる。
また、(C6)本実施形態では、第1流路83の数は、第2流路89の数より多い。第1流路83の長さは、第2流路89の長さより短い。第1流路83の数が第2流路89の数より多いため、第1流路83の1つあたりの流路面積を小さくしても流量を確保できる。例えば第1流路83の流路面積を小さくすると、第1流路83を形成する孔の径が小さくなり、加工が困難となるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、第1流路83の長さは、第2流路89の長さより短い。そのため、第1流路83の流路面積を小さくしても、第1流路83の加工が容易である。
また、(C7)本実施形態では、吐出ジョイント70をさらに備えている。吐出ジョイント70は、筒状に形成され、内側に吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、および、リリーフ弁91を収容し、外周壁が上ハウジング21に結合されている。そのため、吐出ジョイント70、吐出シート部材71、中間部材81、リリーフシート部材85、吐出弁75、リリーフ弁91を、予め一体に組み付け、サブアセンブリ化することができる。これにより、高圧ポンプ10全体の組み付けが容易になり、高圧ポンプ10を容易に製造することができる。
(第2実施形態)
<A−2>第2実施形態による高圧ポンプの一部を図47、48に示す。第2実施形態は、弁部材40の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、バルブ本体41の第1領域T1の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、バルブ本体41の中心から延びて第1領域T1の連通孔441の中心を通る直線LC11と、バルブ本体41の中心から延びて第1領域T1の連通孔443の中心を通る直線LC11と、の間の範囲に形成されている。
バルブ本体41の第2領域T2の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1、および、バルブ本体41の第3領域T3の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1についても、上記と同様に形成されている。
すなわち、(A4)本実施形態では、2つのガイド部43により挟まれた1つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、バルブ本体41の中心から延びてテーパ部42の内縁部が対向する複数の連通孔44のうち両端の連通孔44である端部連通孔(441、443)の中心を通る2つの直線LC11の間の範囲に形成されている。そのため、各境界線B1の長さを確保しつつ各境界線B1の両端と連通孔44との距離を小さくすることができ、各境界線B1の両端近傍の部位が燃料の流れの抵抗となるのを抑制することができる。
(第3実施形態)
<A−3>第3実施形態による高圧ポンプの一部を図49、50に示す。第3実施形態は、弁部材40の構成が第2実施形態と異なる。
本実施形態では、第1領域T1と第2領域T2との間の直線L11が通るガイド部43は、吸入通路形成部としてのストッパ35のストッパ凹部351の内周壁と摺動する部位である摺動部430が、バルブ本体41の中心から延びて第1領域T1の連通孔443の外縁を通る2つの接線のうち第2領域T2の連通孔441側の接線である接線LT21と、バルブ本体41の中心から延びて第2領域T2の連通孔441の外縁を通る2つの接線のうち第1領域T1の連通孔443側の接線である接線LT21と、の間の範囲に形成されている。
第2領域T2と第3領域T3との間の直線L11が通るガイド部43、および、第3領域T3と第1領域T1との間の直線L11が通るガイド部43についても、上記と同様に形成されている。
すなわち、(A5)本実施形態では、ガイド部43は、ストッパ35のストッパ凹部351と摺動する部位である摺動部430が、バルブ本体41の中心から延びて隣り合う2つの連通孔44の互いに対向する外縁を通る2つの接線LT21の間の範囲に形成されている。そのため、隣り合う連通孔44の間の距離に応じてガイド部43の摺動部430の大きさを設定でき、摺動部430が燃料の流れの妨げとなるのを抑制することができる。
(第4実施形態)
<A−4>第4実施形態による高圧ポンプの一部を図51、52に示す。第4実施形態は、弁部材40の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、ガイド部43は、テーパ部42を周方向において4つに分断するようバルブ本体41の周方向に等間隔で4つ形成されている。また、連通孔44は、バルブ本体41の周方向に等間隔で8個形成されている。連通孔44は、バルブ本体41の軸Ax2を中心とする仮想円VC1上に配置されている(図51、52参照)。図51に示すように、4つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、仮想円VC1に対する同心円CC1に沿うよう形成されている。
図51に示すように、連通孔44は、バルブ本体41のうちバルブ本体41の中心から延びてガイド部43の中心を通る4つの直線L11により区画された第1領域T1、第2領域T2、第3領域T3、第4領域T4のそれぞれに2つずつ形成されている。
ここで、連通孔44の数をh=8、ガイド部43の数をg=4とすると、ガイド部43により複数に分断されたテーパ部42のうちの1つのテーパ部42の内縁部に対向する連通孔44の数は、h/g=8/4=2である。
また、第1領域T1、第2領域T2、第3領域T3、第4領域T4のそれぞれに形成された2つの連通孔44を、仮想円VC1の周方向に向かって順番に連通孔441、連通孔442とすると、バルブ本体41の第1領域T1の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、第1領域T1の連通孔441の外縁、および、第1領域T1と第2領域T2との間の直線L11に対し第1領域T1の連通孔441と線対称となる位置に形成された第2領域T2の連通孔442の外縁を通る2つの接線のうち第3領域T3および第4領域T4とは反対側の接線である接線LT31と、第1領域T1の連通孔442の外縁、および、第1領域T1と第4領域T4との間の直線L11に対し第1領域T1の連通孔442と線対称となる位置に形成された第4領域T4の連通孔441の外縁を通る2つの接線のうち第2領域T2および第3領域T3とは反対側の接線である接線LT31と、の間の範囲に形成されている。
バルブ本体41の第2領域T2の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1、バルブ本体41の第3領域T3の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1、および、バルブ本体41の第4領域T4の径方向外側のテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1についても、上記と同様に形成されている。
すなわち、(A3)本実施形態では、2つのガイド部43により挟まれた1つのテーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、1つのテーパ部42の内縁部が対向する複数の連通孔44のうち両端の連通孔44である端部連通孔(441、442)の外縁、および、バルブ本体41の中心から延びてガイド部43の中心を通る直線L11に対し端部連通孔(441、442)と線対称となる位置に形成された連通孔44(442、441)の外縁を通る2つの接線LT31の間の範囲に形成されている。そのため、各境界線B1の長さを確保しつつ各境界線B1の両端と連通孔44との距離を小さくすることができ、各境界線B1の両端近傍の部位が燃料の流れの抵抗となるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ガイド部43が弁部材40の周方向に4つ形成されている。そのため、ガイド部43が3つの第1実施形態と比べ、偏心が少なくなり、弁部材40の傾斜を抑制する効果を奏することができる。
(第5実施形態)
<A−5>第5実施形態による高圧ポンプの一部を図53に示す。第5実施形態は、吐出通路部700の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、吐出通路部700は、吐出シート部材71、中間部材81、吐出弁75、スプリング79に代えて、シート部材31、ストッパ35、弁部材40、スプリング39を有している。
本実施形態では、吐出ジョイント70は、加圧室200側の端面が、第1実施形態の吐出ジョイント70の加圧室200側の端面よりも加圧室200とは反対側に位置するよう形成されている。すなわち、本実施形態の吐出ジョイント70の軸方向の長さは、第1実施形態の吐出通路部700の軸方向の長さより短い。
シート部材31は、一方の面が吐出穴部214の底面に当接するよう吐出通路217に設けられている。ここで、シート部材31には、シート部材凹部312が形成されている。シート部材凹部312は、シート部材31の加圧室200側の面から加圧室200とは反対側へ凹むよう略円筒状に形成されている。シート部材凹部312は、シート部材31と略同軸に形成されている。連通路32および連通路33は、シート部材凹部312の底面とシート部材31の加圧室200とは反対側の面とを連通している。
吐出通路部700のストッパ35は、構成自体は吸入弁部300のストッパ35と同様である。ストッパ35は、シート部材31の加圧室200とは反対側に設けられている。ここで、ストッパ大径部37のストッパ小径部36とは反対側の面は、シート部材31の加圧室200とは反対側の面の外縁部に当接している。また、ストッパ小径部36は、吐出ジョイント70の加圧室200側の端部の内側に位置している。また、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面は、吐出ジョイント70の加圧室200側の端面に対向している。また、ストッパ小径部36のストッパ大径部37とは反対側の面の外縁部は、リリーフ部材筒部861の加圧室200側の端面に当接している。
ここで、吐出ジョイント70の段差面701は、リリーフシート部材85、ストッパ35、シート部材31を加圧室200側へ付勢している。そのため、リリーフシート部材85とストッパ35とシート部材31とは互いに当接しており、軸方向の移動が規制されている。また、シート部材31の加圧室200側の面は、吐出穴部214と吐出穴部215との間の段差面、すなわち、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲に押し付けられている。そのため、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲には、シート部材31から加圧室200側へ向かう軸力が作用している。これにより、簡素な構造で、高圧下でのシールを可能としている。
なお、ストッパ35は、連通穴38とリリーフシート部材85の第2流路89とが連通するよう設けられている。本実施形態では、加圧室200は、吐出穴233、吐出穴部215、シート部材凹部312、連通路32、連通路33、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、第2流路89を経由して高圧燃料配管8に連通可能である。
吐出通路部700の弁部材40およびスプリング39は、構成自体は吸入弁部300の弁部材40およびスプリング39と同様である。弁部材40は、吸入弁部300の弁部材40と同様、ストッパ凹部351の内側に設けられている。スプリング39も、吸入弁部300のスプリング39と同様、ストッパ凸部353の径方向外側に設けられている。
加圧室200内の燃料の圧力が所定値以上に高まると、弁部材40は、スプリング39の付勢力に抗して、高圧燃料配管8側に移動する。これにより、弁部材40が弁座310から離間し、開弁する。そのため、シート部材31に対し加圧室200側の燃料は、シート部材凹部312、連通路32、連通路33、弁座310、ストッパ凹部351、ストッパ凹部352、連通穴38、第2流路89を経由して高圧燃料配管8側に吐出される。
以上説明したように、本実施形態は、加圧室形成部としてのシリンダ23と吐出通路形成部としての上ハウジング21とシート部材31と弁部材40とを備えている。シリンダ23は、燃料が加圧される加圧室200を形成している。上ハウジング21は、加圧室200から吐出される燃料が流れる吐出通路217を形成している。
シート部材31は、吐出通路217に設けられ、一方の面と他方の面とを連通する連通路32および連通路33を有している。弁部材40は、シート部材31の加圧室200とは反対側に設けられ、シート部材31から離間すると開弁し連通路32および連通路33における燃料の流れを許容し、シート部材31に当接すると閉弁し連通路32および連通路33における燃料の流れを規制可能である。
弁部材40は、シート部材31から離間またはシート部材31に当接可能な板状のバルブ本体41、バルブ本体41の一方の面と他方の面とを連通する複数の連通孔44、バルブ本体41の径方向外側に設けられ加圧室200とは反対側の面が加圧室200とは反対側から加圧室200側へ向かうに従いバルブ本体41の軸Ax2に近付くようテーパ状に形成されたテーパ部42、および、テーパ部42を周方向において複数に分断するようバルブ本体41から径方向外側に突出しストッパ35のストッパ凹部351と摺動することで弁部材40の移動を案内可能な複数のガイド部43を有している。複数の連通孔44は、バルブ本体41の軸Ax2を中心とする仮想円VC1上に配置されている。
テーパ部42の内縁部とバルブ本体41の外縁部との境界線B1は、仮想円VC1に対する同心円CC1に沿うよう形成されている。そのため、各境界線B1の両端と連通孔44との距離を小さくすることができる。これにより、各境界線B1の両端近傍の部位が、弁部材40の表面を流れる燃料の抵抗となるのを抑制することができる。したがって、加圧室200から吐出される燃料の流量を十分に確保することができる。また、弁部材40のリフト量を小さくすることで、閉弁応答性が向上し、逆流量が小さくなり、高圧ポンプ10の吐出量を確保できる。
このように、本実施形態は、マルチシートタイプの弁部材40を吐出通路217における吐出弁として適用した例を示すものである。
(第6実施形態)
<A−6>第6実施形態による高圧ポンプの一部を図54に示す。第6実施形態は、弁部材40の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40は、バルブ本体41の軸Ax2を含む仮想平面VP1による断面において、軸方向の一方の面401すなわちシート部材31側の面、および、他方の面402すなわち加圧室200側の面が湾曲するよう形成されている。ここで、弁部材40の一方の面401および他方の面402は、シート部材31側に向かって凸となるよう形成されている。すなわち、弁部材40は、中央から径方向外側へ向かうに従い加圧室200側へ湾曲するよう形成されている。
弁部材40は、軸方向の一方の面401の湾曲量QC1、および、他方の面402の湾曲量QC2が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1より小さく設定されている。ここで、最小値DL1は、弁部材40の他方の面402がストッパ凸部353に当接しているときのバルブ本体41の軸Ax2における弁部材40の一方の面401とシート部材31の加圧室200側の面との距離に等しい(図54参照)。なお、本実施形態では、湾曲量QC1と湾曲量QC2とは同じである。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、弁部材40の他方の面402には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図54において破線で示すように、弁部材40の外縁部は、シート部材31側へ変形し、一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
上述のように、本実施形態では、弁部材40の一方の面401が湾曲しシート部材31側に向かって凸となるよう形成されている。そのため、前記最小値DL1を弁部材40のリフト量QL1とすると、弁部材40の外縁部において、弁部材40の見かけ上のリフト量がリフト量QL1より湾曲量QC1分大きくなる。これにより、加圧室200への燃料の吸入量、加圧室200から燃料室260側への燃料の戻し量、および、弁部材40の自閉限界を向上することができる。
以上説明したように、(A6)本実施形態では、弁部材40は、バルブ本体41の軸Ax2を含む仮想平面VP1による断面において、シート部材31側の面である一方の面401が湾曲するよう形成されている。そのため、弁部材40の一部において、弁部材40の見かけ上のリフト量が一方の面401の湾曲量分大きくなる。これにより、加圧室200への燃料の吸入量、加圧室200から燃料室260側への燃料の戻し量、および、弁部材40の自閉限界を向上することができる。したがって、同一の性能を確保するための弁部材40のリフト量を小さくすることができ、電磁駆動部500の消費電力の低減、および、NVの低減を図ることができる。
また、(A7)本実施形態では、弁部材40は、シート部材31側の面である一方の面401の湾曲量QC1が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1より小さく設定されている。
また、(A8)本実施形態では、弁部材40は、シート部材31側の面である一方の面401がシート部材31側に向かって凸となるよう形成されている。本実施形態は、弁部材40の具体的な構成の一例を示すものである。
(第7実施形態)
<A−7>第7実施形態による高圧ポンプの一部を図55に示す。第7実施形態は、弁部材40の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40は、バルブ本体41の軸Ax2を含む仮想平面VP1による断面において、軸方向の一方の面401すなわちシート部材31側の面、および、他方の面402すなわち加圧室200側の面が湾曲するよう形成されている。ここで、弁部材40の一方の面401および他方の面402は、加圧室200側に向かって凸となるよう形成されている。すなわち、弁部材40は、中央から径方向外側へ向かうに従いシート部材31側へ湾曲するよう形成されている。
弁部材40は、軸方向の一方の面401の湾曲量QC1、および、他方の面402の湾曲量QC2が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1より小さく設定されている。ここで、最小値DL1は、弁部材40の他方の面402がストッパ凸部353に当接しているときの弁部材40の一方の面401の外縁部とシート部材31の加圧室200側の面との距離に等しい(図55参照)。なお、本実施形態では、湾曲量QC1と湾曲量QC2とは同じである。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、弁部材40の他方の面402には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図55において破線で示すように、弁部材40の中央部は、シート部材31側へ変形し、一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
上述のように、本実施形態では、弁部材40の一方の面401が湾曲し加圧室200側に向かって凸となるよう形成されている。そのため、前記最小値DL1を弁部材40のリフト量QL1とすると、弁部材40の中央部において、弁部材40の見かけ上のリフト量がリフト量QL1より湾曲量QC1分大きくなる。これにより、加圧室200への燃料の吸入量、加圧室200から燃料室260側への燃料の戻し量、および、弁部材40の自閉限界を向上することができる。
(第8実施形態)
<A−8>第8実施形態による高圧ポンプの一部を図56に示す。第8実施形態は、弁部材40の構成が第6実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40の加圧室200側の面である他方の面402は、平面状に形成されている。すなわち、他方の面402の湾曲量は0である。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、弁部材40の他方の面402には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図56において破線で示すように、弁部材40の外縁部は、シート部材31側へ変形し、一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
本実施形態では、第6実施形態と同様、弁部材40の一方の面401が湾曲しシート部材31側に向かって凸となるよう形成されている。そのため、第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第9実施形態)
<A−9>第9実施形態による高圧ポンプの一部を図57に示す。第9実施形態は、弁部材40の構成が第7実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40の加圧室200側の面である他方の面402は、平面状に形成されている。すなわち、他方の面402の湾曲量は0である。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、弁部材40の他方の面402には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図57において破線で示すように、弁部材40の中央部は、シート部材31側へ変形し、一方の面401がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
本実施形態では、第7実施形態と同様、弁部材40の一方の面401が湾曲し加圧室200側に向かって凸となるよう形成されている。そのため、第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第10実施形態)
<A−10>第10実施形態による高圧ポンプの一部を図58に示す。第10実施形態は、弁部材40の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40のガイド部43は、バルブ本体41の軸Ax2を含む仮想平面VP1による断面において、シート部材31側の面および加圧室200側の面が、バルブ本体41から加圧室200側へ向かって湾曲するよう形成されている。すなわち、ガイド部43は、バルブ本体41から径方向外側へ向かうに従い加圧室200側へ湾曲するよう形成されている。
ガイド部43は、シート部材31側の面の湾曲量QC3、および、加圧室200側の面の湾曲量QC4が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1より小さく設定されている。ここで、最小値DL1は、弁部材40の他方の面402がストッパ凸部353に当接しているときのバルブ本体41の軸Ax2における弁部材40の一方の面401とシート部材31の加圧室200側の面との距離に等しい(図58参照)。なお、本実施形態では、湾曲量QC3と湾曲量QC4とは同じである。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、ガイド部43の加圧室200側の面には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図58において破線で示すように、弁部材40のガイド部43は、シート部材31側へ変形し、シート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
上述のように、本実施形態では、弁部材40のガイド部43のシート部材31側の面がバルブ本体41から加圧室200側へ向かって湾曲するよう形成されている。そのため、前記最小値DL1を弁部材40のリフト量QL1とすると、弁部材40のガイド部43において、弁部材40の見かけ上のリフト量がリフト量QL1より湾曲量QC3分大きくなる。これにより、加圧室200への燃料の吸入量、加圧室200から燃料室260側への燃料の戻し量、および、弁部材40の自閉限界を向上することができる。
(第11実施形態)
<A−11>第11実施形態による高圧ポンプの一部を図59に示す。第11実施形態は、弁部材40の構成が第10実施形態と異なる。
本実施形態では、弁部材40のガイド部43は、バルブ本体41の軸Ax2を含む仮想平面VP1による断面において、シート部材31側の面および加圧室200側の面が、バルブ本体41からシート部材31側へ向かって湾曲するよう形成されている。すなわち、ガイド部43は、バルブ本体41から径方向外側へ向かうに従いシート部材31側へ湾曲するよう形成されている。
ガイド部43は、シート部材31側の面の湾曲量QC3、および、加圧室200側の面の湾曲量QC4が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1より小さく設定されている。ここで、最小値DL1は、弁部材40の他方の面402がストッパ凸部353に当接しているときのガイド部43のシート部材31側の面のバルブ本体41とは反対側の端部とシート部材31の加圧室200側の面との距離に等しい(図59参照)。なお、本実施形態では、湾曲量QC3と湾曲量QC4とは同じである。
本実施形態では、プランジャ11が加圧室200側へ移動し、加圧室200の容積が減少しているとき、電磁駆動部500のコイル60に通電すると、ニードル53が加圧室200とは反対側へ移動し、弁部材40が閉弁方向へ移動する。このとき、ガイド部43の加圧室200側の面には、加圧室200内の燃料の圧力が作用する。そのため、図59において破線で示すように、弁部材40のガイド部43は、加圧室200側へ変形し、バルブ本体41のシート部材31側の面がシート部材31の加圧室200側の面、すなわち、複数の弁座310に密着する。これにより、弁部材40が閉弁する。
上述のように、本実施形態では、弁部材40のガイド部43のシート部材31側の面がバルブ本体41からシート部材31側へ向かって湾曲するよう形成されている。そのため、前記最小値DL1を弁部材40のリフト量QL1とすると、弁部材40のバルブ本体41において、弁部材40の見かけ上のリフト量がリフト量QL1より湾曲量QC3分大きくなる。これにより、加圧室200への燃料の吸入量、加圧室200から燃料室260側への燃料の戻し量、および、弁部材40の自閉限界を向上することができる。
(第12実施形態)
<A−12>第12実施形態による高圧ポンプの一部を図60、61に示す。第12実施形態は、シリンダ23の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、テーパ面234の上端に対しややシリンダ23の底部側の位置から、テーパ面234の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている。すなわち、本実施形態の外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、内側にテーパ面234の全てを含むよう形成され、シリンダ23の軸方向において第1実施形態の外周凹部235より大きい。なお、外周凹部235は、第1実施形態と同様、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図60参照)。
外周凹部236は、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吐出穴233の上端に対しややシリンダ23の底部側の位置から、吐出穴233の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている。すなわち、本実施形態の外周凹部236は、吐出穴233の軸方向から見たとき、内側に吐出穴233の全てを含むよう形成され、シリンダ23の軸方向において第1実施形態の外周凹部236より大きい。なお、外周凹部236は、第1実施形態と同様、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図61参照)。
また、外周凹部235、236は、第1実施形態と同様、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の上方部において、上ハウジング21との嵌合部すなわち焼き嵌め部を残すような範囲に形成されている(図60、61参照)。ただし、上ハウジング21との嵌合部の大きさは、第1実施形態と比べ、小さい。
本実施形態では、第1実施形態と同様、シリンダ23の外周壁に外周凹部235および外周凹部236が形成されているため、電磁駆動部500の筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合するとき、および、吐出通路部700の吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合するとき、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
なお、本実施形態の外周凹部235および外周凹部236は、第1実施形態の外周凹部235および外周凹部236より大きいため、本実施形態による「筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制する」効果はより高い。
本実施形態では、外周凹部235および外周凹部236は、弁座310および吐出弁座74に対応する部位の上部および下部を含むよう形成されている。そのため、外周凹部235および外周凹部236が、弁座310および吐出弁座74に対応する部位の上部または下部の一方のみ含むよう形成される場合と比べ、弁座310および吐出弁座74の変形を均等化できる。これにより、弁座310および吐出弁座74の上下の変形の差を抑制し、弁部材40および吐出弁75の偏摩耗を抑制できる。
(第13実施形態)
<A−01>第13実施形態による高圧ポンプの一部を図62に示す。第13実施形態は、ストッパ35の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、ストッパ凹部351の内径は、ストッパ大径部37の外径およびストッパ小径部36の外径より小さい。これにより、ストッパ凹部351の底面に対し加圧室200側のストッパ35の肉厚を確保できる。
(第14実施形態)
<A−02>第14実施形態による高圧ポンプの一部を図63に示す。第14実施形態は、ストッパ35の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、連通穴38は、ストッパ35の周方向に等間隔で6個形成されている。そのため、組み付け時や作動時に生じるストッパ35と弁部材40およびシート部材31との相対角度差による燃料流れのばらつきが小さくなる。これにより、弁部材40の連通孔44への燃料の流れ込みが安定し、弁部材40の挙動が安定する。
(第15実施形態)
<B−2>第15実施形態による高圧ポンプの一部を図64に示す。第15実施形態は、コイル60の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、コイル60は、巻線部62の外周面を通る仮想的な1つの外側筒状面600、および、巻線部62の内周面を通り互いに径の異なる仮想的な内側筒状面601、内側筒状面602、内側筒状面603を有している。
外側筒状面600は、略円筒状に形成されている。内側筒状面601は、略円筒状に形成され、外側筒状面600の加圧室200とは反対側の部位の内側に位置している。内側筒状面602は、略円筒状に形成され、外側筒状面600の内側において内側筒状面601に対し加圧室200側に位置している。内側筒状面603は、略円筒状に形成され、外側筒状面600の加圧室200側の部位の内側において内側筒状面602に対し加圧室200側に位置している。
内側筒状面602の径は、内側筒状面601の径より大きい。また、内側筒状面603の径は、内側筒状面602の径より大きい。内側筒状面601、内側筒状面602および内側筒状面603は、スプール61の外周壁に位置している。すなわち、スプール61は、軸方向の加圧室200側の部位と加圧室200とは反対側の部位とで外径が異なる。
コイル60は、内側筒状面601と内側筒状面602とを連結する仮想的な連結面605、および、内側筒状面602と内側筒状面603とを連結する仮想的な連結面606を有している。連結面605および連結面606は、スプール61の外周壁に位置し、少なくとも一部がスプール61の軸に対し垂直となるよう形成されている。巻線620は、スプール61の外周壁、すなわち、内側筒状面601、内側筒状面602、内側筒状面603、連結面605、連結面606の径方向外側において巻き回され、筒状の巻線部62を形成している。
本実施形態では、コイル60への非通電時、可動コア55の加圧室200とは反対側すなわち固定コア57側の端面551は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601の軸方向の中心Ci1と外側筒状面600の軸方向の中心Co1との間に位置している。また、可動コア55の加圧室200側の端面552は、巻線部62の加圧室200側の端面621に対し固定コア57側に位置している。
また、本実施形態では、筒部材51の第1筒部511の第2筒部512側の端部は、内側筒状面603の内側に位置している。第2筒部512は、連結面606の内側に位置している。第3筒部513は、内側筒状面602の内側に位置している。
第15実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第15実施形態では、第1実施形態に対し、外側筒状面600の径を大きくすることなく、巻線620の巻き回数を増やすことができる。
(第16実施形態)
<B−3>第16実施形態による高圧ポンプの一部を図65に示す。第16実施形態は、コイル60の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、コイル60は、第1実施形態で示した連結面605を有していない。内側筒状面601の加圧室200側の端部と内側筒状面602の加圧室200とは反対側の端部とは連結している。
内側筒状面602は、全ての部位が、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成されている。すなわち、内側筒状面602は、加圧室200側ほど径が大きい。
内側筒状面601および内側筒状面602は、スプール61の外周壁に位置している。
巻線620は、スプール61の外周壁、すなわち、内側筒状面601、内側筒状面602の径方向外側において巻き回され、筒状の巻線部62を形成している。
本実施形態では、コイル60への非通電時、可動コア55の加圧室200とは反対側すなわち固定コア57側の端面551は、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601の軸方向の中心Ci1と外側筒状面600の軸方向の中心Co1との間に位置している。また、可動コア55の加圧室200側の端面552は、巻線部62の加圧室200側の端面621に対し固定コア57側に位置している。
また、本実施形態では、筒部材51の第2筒部512の第3筒部513側の部位は、内側筒状面602の内側に位置している。第3筒部513は、内側筒状面601と内側筒状面602との接続部分の内側に位置している。なお、第2筒部512の第3筒部513側の部位の外周壁は、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従い第2筒部512の軸に近付くようテーパ状に形成されている。
第16実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、第16実施形態では、第1実施形態および第15実施形態に対し、外側筒状面600の径を大きくすることなく、巻線620の巻き回数を増やすことができる。
(第17実施形態)
<B−4>第17実施形態による高圧ポンプの一部を図66に示す。第17実施形態は、固定コア57の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、固定コア57は、固定コア穴部575を有している。固定コア穴部575は、固定コア57の加圧室200側の端面571の中央から加圧室200とは反対側へ延びるよう略円筒状に形成されている。固定コア穴部575は、固定コア小径部573および固定コア大径部574と略同軸に形成されている。
ニードル53は、第1実施形態で示した係止部532を有していない。スプリング54は、固定コア穴部575に設けられている。スプリング54は、一端が固定コア穴部575の底面に当接し、他端がニードル本体531の加圧室200とは反対側の端面に当接している。すなわち、固定コア穴部575の底面は、スプリング54の一端を係止している。スプリング54は、ニードル53を加圧室200側に付勢している。本実施形態では、ニードル53においてスプリング54の端部を係止するための係止部532が不要なため、ニードル53を軽量化できる。これにより、NVを低減できる。
(第18実施形態)
<B−5>第18実施形態による高圧ポンプの一部を図67に示す。第18実施形態は、スプリング54の近傍の構成が第17実施形態と異なる。
本実施形態は、係止部材576をさらに備えている。係止部材576は、固定コア57より硬度の高い材料により、略円柱状に形成されている。係止部材576の硬度は、例えばHRc56〜64の範囲に設定されている。
係止部材576の外径は、固定コア穴部575の内径よりやや小さい。係止部材576は、一方の端面が固定コア穴部575の底面に当接するよう固定コア穴部575と略同軸に設けられている。スプリング54は、一端が係止部材576の他方の端面に当接している。すなわち、係止部材576は、スプリング54の一端を係止している。
可動コア55およびニードル53の往復移動等により、固定コア穴部575の加圧室200側に圧力変動が生じる。この圧力変動は、固定コア穴部575の加圧室200とは反対側の端部へ遅れて伝達する。そのため、固定コア穴部575の加圧室200とは反対側の端部には、キャビテーションが発生し易い。
本実施形態では、固定コア穴部575の底面に係止部材576が設けられている。そのため、固定コア穴部575の加圧室200とは反対側の端部でキャビテーションが発生しても、係止部材576により、固定コア穴部575の底面およびその周囲がキャビテーションエロージョンによって浸食されるのを抑制することができる。
(第19実施形態)
<C−01>第19実施形態による高圧ポンプの一部を図68に示す。第19実施形態は、吐出ジョイント70の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、横穴部702の流路面積は、リリーフ弁91全開時のリリーフ孔87の流路面積よりも小さい。つまり、本実施形態では、可変オリフィスとして機能する逃がし横穴852に対し下流側の横穴部702の流路面積は、逃がし横穴852に対し上流側のリリーフ孔87の流路面積より小さい。そのため、高圧燃料配管8側の燃料の圧力が異常な値になったとき、高圧燃料配管8側の燃料が燃料室260側へ流れ過ぎるのを抑制できる。これにより、低圧の燃料室260側に圧力スパイクが生じるのを抑制できる。また、これにより、リリーフ弁91の挙動が不安定になるのを抑制できる。
なお、可変オリフィスとして機能する逃がし横穴852に対し下流側の流路面積を小さくする手段としては、上記のように横穴部702の内径を小さくすることの他、リリーフ外周凹部851の深さを小さくしたり、逃がし横穴852にオリフィス部材を設けること等が考えられる。
(第20実施形態)
<D−1>第20実施形態による高圧ポンプを図69に示す。第20実施形態は、供給通路部29、電磁駆動部500、吐出通路部700の配置等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、吸入穴部212および吸入穴部213の軸と吐出穴部214および吐出穴部215の軸とは直交している(図72参照)。また、吸入穴232の軸および吐出穴233の軸は、シリンダ穴部231の筒状内周壁230の軸Ax1と直交している。また、吸入穴232の軸と吐出穴233の軸とは直交している。
カバー穴部265、カバー穴部266、カバー穴部267は、それぞれ、カバー筒部261の内周壁と外周壁すなわちカバー外周壁280の平面部281とを接続するよう略円筒状に形成されている。
ここで、カバー穴部265は、カバー穴部266が形成された平面部281と、カバー穴部267が形成された平面部281との間の平面部281に形成されている。すなわち、カバー穴部266、カバー穴部265、カバー穴部267は、この順でカバー外周壁280の周方向に並ぶようカバー26に形成されている(図72参照)。
本実施形態では、供給通路部29は、一端がカバー筒部261のカバー穴部265の周囲の外壁すなわちカバー外周壁280の平面部281に接続するよう設けられている。供給通路部29は、内側の空間が、カバー穴部265を経由して燃料室260に連通するよう設けられている。ここで、供給通路部29とカバー外周壁280の平面部281とは、供給通路部29の周方向の全域に亘り溶接されている。供給通路部29の他端には、供給燃料配管7が接続される。これにより、燃料ポンプから吐出される燃料は、供給燃料配管7、供給通路部29を経由して燃料室260に流入する。
次に、本実施形態のシリンダ23について、より具体的に説明する。
図70、71に示すように、シリンダ23は、テーパ面234、外周凹部235を有している。
テーパ面234は、吸入穴232の加圧室200とは反対側の端部に形成されている。テーパ面234は、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従い吸入穴232の軸から離れるようテーパ状に形成されている。
外周凹部235は、シリンダ23の外周壁から径方向内側へ所定の深さで凹むよう形成されている。外周凹部235は、シリンダ23の周方向において、吸入穴232すなわちテーパ面234および吐出穴233を全て含む範囲に形成されている(図70、71参照)。また、外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吸入穴232の軸に対しややシリンダ23の底部側の位置から、テーパ面234の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている(図70参照)。また、外周凹部235は、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吐出穴233の軸に対しややシリンダ23の底部側の位置から吐出穴233の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている(図71参照)。なお、外周凹部235は、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図70、71参照)。
また、外周凹部235は、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の上方部において、上ハウジング21との嵌合部すなわち焼き嵌め部を残すような範囲に形成されている(図70、71参照)。
上述したように、電磁駆動部500の筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合すると、吸入穴部213と吸入穴部212との間の段差面には、ストッパ小径部36とストッパ大径部37との間の段差面から加圧室200側へ向かう軸力が作用する。そのため、吸入穴部213の周囲において上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ僅かに変形するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、シリンダ23の外周壁の吸入穴部213に対応する位置に外周凹部235が形成されているため、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。これにより、シリンダ穴部231の筒状内周壁230が径方向内側へ変形するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
また、吐出通路部700の吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合すると、吐出穴部214の底面の吐出穴部215の周囲には、内側突起722および外側突起723から加圧室200側へ向かう軸力が作用する。そのため、吐出穴部215の周囲において上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ僅かに変形するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、シリンダ23の外周壁の吐出穴部215に対応する位置に外周凹部235が形成されているため、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。これにより、シリンダ穴部231の筒状内周壁230が径方向内側へ変形するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
さらに、上述の軸力の作用として、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形することにより、シリンダ23の外周凹部235の境界の面圧が上昇し、加圧室200の高圧化にも対応し易くなる。
次に、電磁駆動部500および吐出通路部700の配置等について説明する。
図72に示すように、ボルト孔250は、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ハウジング外周壁270の径方向外側において周方向に等間隔で2つ形成されている。すなわち、筒状内周壁230の軸Ax1と2つのボルト孔250のそれぞれの軸とを結ぶ2つの直線のなす角は、180度である。また、ボルト孔250は、軸がシリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1に対し略平行となるよう形成されている。
電磁駆動部500は、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられている。吐出通路部700は、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられている。供給通路部29は、カバー26からハウジング外周壁270の径方向外側へ向かって突出するよう設けられている。
隣り合う2つのボルト孔250の軸および筒状内周壁230の軸Ax1を含む仮想面VS0で高圧ポンプ10を第1領域T1と第2領域T2との2つの領域に分けたとき、電磁駆動部500、供給通路部29、吐出通路部700は、いずれも、第1領域T1に位置している。ここで、仮想面VS0は、平面状に形成されている。
本実施形態では、供給通路部29の軸は、仮想面VS0に直交する。電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とのなす角度は、約90度である。また、電磁駆動部500の中心軸Axc1および吐出通路部700の中心軸Axc2と仮想面VS0とのなす角は、約45度である。
また、供給通路部29は、ハウジング外周壁270の周方向において、電磁駆動部500から吐出通路部700側へ180度以内、または、吐出通路部700から電磁駆動部500側へ180度以内の範囲に位置している。
また、ハウジング外周壁270の平面部271は、第1領域T1において3つ形成されている。すなわち、第1領域T1に3つの平面部271が形成され、それぞれに対応するよう、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が配置されている。なお、平面部271は、第2領域T2において3つ形成されている。
本実施形態では、仮想面VS0と平行で2つのボルト孔250に接する面VS1を跨がない平面部271が、第1領域T1において、3つ形成されているということもできる。この3つの平面部271のそれぞれに対応するよう、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が配置されている(図72参照)。
本実施形態では、2つのボルト孔250のそれぞれに対向する2つの平面部271の間に、3つの平面部271が形成されているということもできる。この3つの平面部271のそれぞれに対応するよう、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が配置されている(図72参照)。
このように、本実施形態では、電磁駆動部500、吐出通路部700および供給通路部29を上ハウジング21の周方向の特定の箇所である第1領域T1に集約して配置している。ここで、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ボルト孔250と電磁駆動部500および吐出通路部700とは重なっていない。
図73に、比較形態による高圧ポンプ10を示す。比較形態による高圧ポンプ10は、電磁駆動部500の配置が第20実施形態と異なる。比較形態による高圧ポンプ10では、電磁駆動部500は、吐出通路部700と同軸となるよう上ハウジング21に設けられている。すなわち、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とは一致する。そのため、吐出通路部700は第1領域T1に位置し、電磁駆動部500は第2領域T2に位置している。
比較形態による高圧ポンプ10では、電磁駆動部500、吐出通路部700および供給通路部29は、上ハウジング21の周方向の特定の箇所に集約して配置されていない。そのため、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、比較形態による高圧ポンプ10の全体を包含する円C1は、第20実施形態による高圧ポンプ10の全体を包含する円C0より大きい(図72、73参照)。ここで、円C0の直径を1とすると、円C1の直径は約1.1である。よって、第20実施形態による高圧ポンプ10は、比較形態の高圧ポンプ10に対し小型であることがわかる。
次に、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付けについて説明する。
本実施形態では、高圧ポンプ10は、ホルダ支持部24がエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入されるようにしてエンジン1に取り付けられる(図69参照)。高圧ポンプ10は、被固定部25がボルト100によりエンジンヘッド2に固定されることにより、エンジン1に固定される。ここで、高圧ポンプ10は、シリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1が鉛直方向に沿うような姿勢でエンジン1に取り付けられる。
高圧ポンプ10は、例えば以下の工程でエンジン1に取り付けられる。まず、プランジャ11の小径部112の大径部111とは反対側の端部にリフタ5を取り付ける。続いて、高圧ポンプ10のホルダ支持部24をリフタ5とともにエンジンヘッド2の取付穴部3に挿入する。ここで、被固定部25のボルト孔250の位置とエンジンヘッド2の固定穴部120の位置とを対応させる。
続いて、ボルト100をボルト孔250に挿通し、固定穴部120にねじ結合する。このとき、ボルト100の頭部102に対応する図示しない工具を用いてボルト100と固定穴部120とをねじ結合する。これにより、被固定部25がエンジンヘッド2に固定される。以上により、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付けが完了する。
本実施形態では、電磁駆動部500、吐出通路部700および供給通路部29を上ハウジング21の周方向の特定の箇所である第1領域T1に集約して配置しているため、ボルト100により被固定部25をエンジン1のエンジンヘッド2に固定し高圧ポンプ10をエンジン1に取り付けるとき、ボルト100、および、ボルト100を固定穴部120にねじ結合するための工具が、電磁駆動部500、吐出通路部700および供給通路部29に干渉するのを抑制することができる。
以上説明したように、(D1)本実施形態は、エンジン1に取り付けられ、燃料を加圧しエンジン1に吐出供給する高圧ポンプ10であって、加圧室形成部としてのシリンダ23とプランジャ11とハウジングとしての上ハウジング21と弁部材40と電磁駆動部500と吐出通路部700と被固定部25とを備えている。シリンダ23は、燃料が加圧される加圧室200を形成する筒状内周壁230を有している。
プランジャ11は、一端が加圧室200に位置するよう筒状内周壁230の内側に設けられ、軸方向に移動することで加圧室200内の燃料を加圧可能である。上ハウジング21は、少なくとも一部が加圧室200の径方向外側に位置する筒状のハウジング外周壁270を有している。弁部材40は、開弁または閉弁することで加圧室200に吸入される燃料の流れを許容または規制可能である。
電磁駆動部500は、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられ、弁部材40の開弁および閉弁を制御可能である。吐出通路部700は、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられ、加圧室200で加圧されエンジン1に吐出される燃料が流れる。被固定部25は、上ハウジング21に接続するよう設けられ、ボルト孔250を有し、ボルト孔250に対応して設けられるボルト100によりエンジン1に固定される。
ボルト孔250は、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ハウジング外周壁270の径方向外側において周方向に2つ形成されている。隣り合う2つのボルト孔250の軸および筒状内周壁230の軸Ax1を含む仮想面VS0で高圧ポンプ10を第1領域T1と第2領域T2との2つの領域に分けたとき、電磁駆動部500および吐出通路部700は、いずれも、第1領域T1に位置している。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700をハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所に集約して配置することができる。これにより、高圧ポンプ10のエンジン1への取り付け位置の自由度を向上させることができる。
また、高圧ポンプ10の電磁駆動部500には配線としてのハーネス6が接続され、吐出通路部700には鋼管としての高圧燃料配管8が接続される。本実施形態では、電磁駆動部500および吐出通路部700をハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所に集約して配置することができるため、エンジン1のプーリー等の回転物がハーネス6や高圧燃料配管8に接触しないよう高圧ポンプ10をエンジン1に取り付けるのが容易である。したがって、高圧ポンプ10の搭載性を向上できる。
また、(D2)本実施形態では、ボルト孔250は、ハウジング外周壁270の周方向に等間隔で2つ形成されている。筒状内周壁230の軸Ax1と2つのボルト孔250のそれぞれの軸とを結ぶ2つの直線のなす角は、180度である。そのため、高圧ポンプ10を第1領域T1と第2領域T2とに均等に2分し、電磁駆動部500および吐出通路部700を第1領域T1に配置することができる。すなわち、電磁駆動部500および吐出通路部700を、高圧ポンプ10を均等に2分した領域の片側に集約して配置することができる。したがって、高圧ポンプ10の搭載性を向上できる。
また、(D3)本実施形態では、ハウジング外周壁270は、平面状の平面部271を複数有している。平面部271は、第1領域T1において、3つ形成されている。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700を設けるための穴部である吸入穴部212および吐出穴部214を平面状の平面部271のそれぞれに容易に形成するすることができる。
また、(D4)本実施形態では、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とは、同一平面上に位置している。そのため、高圧ポンプ10がシリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1方向に大型化するのを抑制することができる。
また、(D5)本実施形態は、供給通路部29をさらに備えている。供給通路部29は、ハウジング外周壁270の径方向外側へ向かって突出するよう設けられている。供給通路部29には、加圧室200に吸入される燃料が流れる。供給通路部29は、ハウジング外周壁270の周方向において、電磁駆動部500から吐出通路部700側へ180度以内、または、吐出通路部700から電磁駆動部500側へ180度以内の範囲に位置している。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700に加え供給通路部29を備える高圧ポンプ10において、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29を、ハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所、すなわち、高圧ポンプ10の片側に集約して配置することができる。
また、(D6)本実施形態では、仮想面VS0と平行で2つのボルト孔250に接する面VS1を跨がない平面部271が、第1領域T1において、3つ形成されている。そのため、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29を、ハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所である第1領域T1、すなわち、高圧ポンプ10の片側に容易に集約して配置することができる。
また、(D7)本実施形態では、平面部271は、2つのボルト孔250のそれぞれに対向する2つの平面部271の間に3つ形成されている。そのため、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29を、ハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所、すなわち、高圧ポンプ10の片側に容易に集約して配置することができる。
(第21実施形態)
<D−2>第21実施形態による高圧ポンプを図74に示す。第21実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、ハウジング外周壁270が九角筒状となるよう形成されている。また、カバー26は、カバー外周壁280がハウジング外周壁270に対応して九角筒状となるよう形成されている。
電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とのなす角度は、90度より小さい。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700をハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所においてより狭い範囲に集約して配置することができる。
また、ハウジング外周壁270の平面部271は、第1領域T1において3つ形成されている。すなわち、第1領域T1に3つの平面部271が形成され、それぞれに対応するよう、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が配置されている。なお、平面部271は、第2領域T2において4つ形成されている。第21実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第22実施形態)
<D−3>第22実施形態による高圧ポンプを図75に示す。第22実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、ハウジング外周壁270が十角筒状となるよう形成されている。また、カバー26は、カバー外周壁280がハウジング外周壁270に対応して十角筒状となるよう形成されている。
電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とのなす角度は、90度より小さい。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700をハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所においてより狭い範囲に集約して配置することができる。
また、ハウジング外周壁270の平面部271は、第1領域T1において5つ形成されている。すなわち、第1領域T1に5つの平面部271が形成され、そのうち3つの平面部271のそれぞれに対応するよう、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が配置されている。なお、平面部271は、第2領域T2において5つ形成されている。第22実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第23実施形態)
<D−4>第23実施形態による高圧ポンプを図76に示す。第23実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、ハウジング外周壁270が第2領域T2において略円筒状となるよう形成されている。上ハウジング21の第1領域T1における形状は、第20実施形態と同様である。
カバー26は、カバー外周壁280がハウジング外周壁270に対応して第2領域T2において略円筒状となるよう形成されている。カバー26の第1領域T1における形状は、第20実施形態と同様である。
第23実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第23実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第24実施形態)
<D−5>第24実施形態による高圧ポンプを図77に示す。第24実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、ハウジング外周壁270が略円筒状となるよう形成されている。
また、カバー26は、カバー穴部265、カバー穴部266、カバー穴部267が形成される箇所を除いてカバー外周壁280が略円筒状となるよう形成されている。なお、カバー外周壁280のカバー穴部265、カバー穴部266、カバー穴部267が形成される箇所は平面状に形成されている。
第24実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第24実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第25実施形態)
<D−6>第25実施形態による高圧ポンプを図78に示す。第25実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、ハウジング外周壁270が第2領域T2において矩形筒の一部となるよう形成されている。上ハウジング21の第1領域T1における形状は、第20実施形態と同様である。
カバー26は、カバー外周壁280がハウジング外周壁270に対応して第2領域T2において矩形筒の一部となるよう形成されている。カバー26の第1領域T1における形状は、第20実施形態と同様である。
第25実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第25実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第26実施形態)
<D−7>第26実施形態による高圧ポンプを図79に示す。第26実施形態は、電磁駆動部500および吐出通路部700とボルト孔250との位置関係等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、第20実施形態と比較し、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が設けられた上ハウジング21およびカバー26が、被固定部25に対し、シリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1周りに所定角度回転するよう配置されている。
ここで、電磁駆動部500とボルト孔250の軸との距離は、吐出通路部700とボルト孔250の軸との距離より小さい。しかしながら、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ボルト孔250およびボルト100と電磁駆動部500とは重なっていない。そのため、高圧ポンプ10をエンジン1に取り付けるとき、ボルト100、および、ボルト100を固定穴部120にねじ結合するための工具が、電磁駆動部500に干渉するのを抑制することができる。
第26実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第26実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第27実施形態)
<D−8>第27実施形態による高圧ポンプを図80に示す。第27実施形態は、電磁駆動部500および吐出通路部700とボルト孔250との位置関係等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、第20実施形態と比較し、電磁駆動部500、吐出通路部700、供給通路部29が設けられた上ハウジング21およびカバー26が、被固定部25に対し、シリンダ23の筒状内周壁230の軸Ax1周りに所定角度回転するよう配置されている。
ここで、吐出通路部700とボルト孔250の軸との距離は、電磁駆動部500とボルト孔250の軸との距離より小さい。しかしながら、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ボルト孔250およびボルト100と吐出通路部700とは重なっていない。そのため、高圧ポンプ10をエンジン1に取り付けるとき、ボルト100、および、ボルト100を固定穴部120にねじ結合するための工具が、吐出通路部700に干渉するのを抑制することができる。
第27実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第27実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第28実施形態)
<D−9>第28実施形態による高圧ポンプを図81、82に示す。第28実施形態は、電磁駆動部500と吐出通路部700と供給通路部29との位置関係等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とのなす角度は、90度より小さく、例えば約45度である。そのため、電磁駆動部500および吐出通路部700をハウジング外周壁270の周方向の特定の箇所においてより狭い範囲に集約して配置することができる。
また、供給通路部29は、カバー外周壁280のカバー底部262側の端部に設けられている。ここで、カバー穴部265は、カバー筒部261のカバー底部262側の端部に形成されている(図82参照)。
なお、供給通路部29のカバー外周壁280の周方向における位置は、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2との間である。また、供給通路部29と電磁駆動部500とは、互いに接触しないよう設けられている。
第28実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第28実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第29実施形態)
<D−10>第29実施形態による高圧ポンプを図83に示す。第29実施形態は、供給通路部29の配置等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、カバー穴部265は、カバー底部262の中央を板厚方向に貫くよう略円筒状に形成されている。供給通路部29は、一端がカバー底部262のカバー穴部265の周囲の外壁に接続するよう設けられている。すなわち、供給通路部29は、上ハウジング21側から筒状内周壁230の軸Ax1方向の鉛直方向上側へ向かって突出するよう設けられている。
第29実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第29実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第30実施形態)
<D−11>第30実施形態による高圧ポンプを図84に示す。第30実施形態は、カバー底部262の近傍の構成が第20実施形態と異なる。
本実施形態は、上ケース181、下ケース182をさらに備えている。上ケース181および下ケース182は、それぞれ、例えば金属により有底筒状に形成されている。上ケース181および下ケース182の内径および外径は同じである。上ケース181および下ケース182は、それぞれの開口端部同士が接合するよう一体に設けられている。
上ケース181と下ケース182とは、内側にケース内燃料室180を形成している。本実施形態では、パルセーションダンパ15、上支持体171、下支持体172は、ケース内燃料室180に設けられている。すなわち、パルセーションダンパ15、上支持体171、下支持体172は、カバー26の内側の燃料室260には設けられていない。ここで、上ケース181、下ケース182、パルセーションダンパ15、上支持体171、下支持体172は、パルセーションダンパ部19を構成している。
下ケース182には、底部の中央を貫くケース穴部183が形成されている。また、カバー26には、カバー底部262の中央を貫くカバー穴部268が形成されている。パルセーションダンパ部19は、ケース穴部183とカバー穴部268とが連通するようカバー底部262のカバー筒部261とは反対側に設けられている。ここで、下ケース182とカバー底部262とは、例えば溶接により接合されている。
ケース内燃料室180は、ケース穴部183、カバー穴部268を経由して燃料室260に連通している。そのため、燃料室260内の燃料に圧力脈動が生じても、ケース内燃料室180のパルセーションダンパ15により当該圧力脈動を低減することができる。
このように、本実施形態では、燃料室260内の燃料、すなわち、加圧室200に吸入される燃料の圧力の脈動を低減可能なパルセーションダンパ部19をさらに備えている。パルセーションダンパ部19は、上ハウジング21側から筒状内周壁230の軸Ax1方向の鉛直方向上側へ向かって突出するよう設けられている。
第30実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第30実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第31実施形態)
<D−12>第31実施形態による高圧ポンプの一部を図85、86に示す。第31実施形態は、シリンダ23の構成が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、テーパ面234の上端に対しややシリンダ23の底部側の位置から、テーパ面234の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている(図85参照)。また、外周凹部235は、吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向において、吐出穴233の上端に対しややシリンダ23の底部側の位置から吐出穴233の下端に対しシリンダ23の底部とは反対側へ所定距離離れた位置までの範囲に形成されている(図86参照)。
すなわち、本実施形態の外周凹部235は、吸入穴232の軸方向から見たとき、内側にテーパ面234の全てを含むよう形成され、吐出穴233の軸方向から見たとき、内側に吐出穴233の全てを含むよう形成されており、シリンダ23の軸方向において第20実施形態の外周凹部235より大きい。なお、外周凹部235は、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の下方部において、摺動面230aとかかる範囲に少なくとも一部が形成されている(図85、86参照)。
また、外周凹部235は、第20実施形態と同様、吸入穴232または吐出穴233の軸方向から見たとき、シリンダ23の軸方向の上方部において、上ハウジング21との嵌合部すなわち焼き嵌め部を残すような範囲に形成されている(図85、86参照)。ただし、上ハウジング21との嵌合部の大きさは、第20実施形態と比べ、小さい。
本実施形態では、第20実施形態と同様、シリンダ23の外周壁に外周凹部235が形成されているため、電磁駆動部500の筒部材51を上ハウジング21の吸入穴部212にねじ結合するとき、および、吐出通路部700の吐出ジョイント70を上ハウジング21の吐出穴部214にねじ結合するとき、上ハウジング21の穴部211の内周壁が径方向内側へ変形したとしても、当該変形に伴う面圧がシリンダ23の外周壁に作用するのを抑制することができる。したがって、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との間のクリアランスを一定に保ち、筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制することができる。
なお、本実施形態の外周凹部235は、第20実施形態の外周凹部235より大きいため、本実施形態による「筒状内周壁230とプランジャ11の外周壁との偏摩耗および焼き付きを抑制する」効果はより高い。
(第32実施形態)
<D−01>第32実施形態による高圧ポンプの一部を図87に示す。第32実施形態は、吐出通路部700の配置等が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、吐出穴233、吐出穴部214、215、カバー穴部267は、第20実施形態と比べ、ハウジング外周壁270の周方向において、軸Ax1を中心として吸入穴232、吸入穴部212、213、カバー穴部266とは反対側へ45度回転した位置に形成されている。そのため、吸入穴部212および吸入穴部213の軸と吐出穴部214および吐出穴部215の軸とのなす角は、135度である。
また、吸入穴部212に設けられた電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出穴部214に設けられた吐出通路部700の中心軸Axc2とのなす角度は、約135度である。
被固定部25は、第20実施形態と比べ、ハウジング外周壁270の周方向において、軸Ax1を中心として電磁駆動部500側へ所定角度回転した位置に形成されている。被固定部25に形成されたボルト孔250の内径は、第20実施形態と比べ、小さい。また、ボルト孔250に挿通されるボルト100の軸部101の外径は、第20実施形態と比べ、小さい。
本実施形態では、電磁駆動部500および吐出通路部700の一部が第2領域T2に位置するものの、供給通路部29、電磁駆動部500および吐出通路部700の大部分は第1領域T1に位置している。特にカバー外周壁280の径方向外側においては、供給通路部29、電磁駆動部500、吐出通路部700の略全ての部位が第1領域T1に位置している。
また、本実施形態では、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ボルト孔250と電磁駆動部500および吐出通路部700とは重なっていない。
第32実施形態は、上述した点以外は、第20実施形態の構成と同様である。第32実施形態においても、第20実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第33実施形態)
<D−02>第33実施形態による高圧ポンプの一部を図88に示す。第33実施形態は、上ハウジング21およびカバー26の構成等が第29実施形態と異なる。
本実施形態では、上ハウジング21は、第29実施形態と比べ、ハウジング外周壁270が径方向外側へ拡大するよう形成されている。また、カバー筒部261は、第20実施形態と比べ、軸方向の長さが短く、カバー底部262とは反対側の端部が上ハウジング21の下ハウジング22とは反対側の端面に当接している。ここで、カバー筒部261の端部と上ハウジング21とは、例えば溶接により周方向の全域に亘り接合されている。
このように、本実施形態では、カバー筒部261は上ハウジング21の径方向外側に位置せず、上ハウジング21の下ハウジング22とは反対側の端面との間に燃料室260を形成している。
溶接リング519は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、ハウジング外周壁270の平面部271の吸入穴部212の周囲に当接している。溶接リング519は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りハウジング外周壁270の平面部271に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り第1筒部511の外周壁に溶接されている。これにより、吸入穴部212の内側の燃料が吸入穴部212の内周壁と第1筒部511の外周壁との間の隙間を経由して上ハウジング21の外部に漏れることが抑制されている。
溶接リング709は、加圧室200側の端部が径方向外側に拡がるよう形成され、ハウジング外周壁270の平面部271の吐出穴部214の周囲に当接している。溶接リング709は、加圧室200側の端部が周方向の全範囲に亘りハウジング外周壁270の平面部271に溶接され、加圧室200とは反対側の部位が周方向の全範囲に亘り吐出ジョイント70の外周壁に溶接されている。これにより、吐出穴部214の内側の燃料が吐出穴部214の内周壁と吐出ジョイント70の外周壁との間の隙間を経由して上ハウジング21の外部に漏れることが抑制されている。
本実施形態では、上ハウジング21に通路204、205が形成されている。通路204は、燃料室260と加圧室200とを連通するよう上ハウジング21に形成されている。通路205は、燃料室260と横穴部702とを連通するよう上ハウジング21に形成されている。また、穴部222は、燃料室260と環状空間202とを連通するよう上ハウジング21および下ハウジング22に形成されている。
第33実施形態は、上述した点以外は、第29実施形態の構成と同様である。第33実施形態においても、第29実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第34実施形態)
<D−03>第34実施形態による高圧ポンプの一部を図89、90に示す。第34実施形態は、供給通路部29の構成が第20実施形態と異なる。
本実施形態では、供給通路部29は、供給筒部291、突出部292、拡大部293、フランジ部294を有している。供給筒部291は、略円筒状に形成されている。供給筒部291の一方の端部の内径は、他方の端部側の内径より大きい。
突出部292は、供給筒部291の外周壁から径方向外側へ突出するよう供給筒部291と一体に形成されている。突出部292は、環状に形成されている。
拡大部293は、供給筒部291の一方の端部の外周壁から径方向外側へ突出するよう供給筒部291と一体に形成されている。拡大部293は、略円筒状に形成されている。フランジ部294は、拡大部293の一方の端部の外周壁から径方向外側へ突出するよう拡大部293と一体に形成されている。フランジ部294は、環状に形成されている。
本実施形態では、供給通路部29は、内側の空間が、カバー穴部265を経由して燃料室260に連通するよう、一端がカバー筒部261のカバー穴部265の周囲の外壁すなわちカバー外周壁280の平面部281に接続するよう設けられている。ここで、フランジ部294とカバー外周壁280の平面部281とは、供給通路部29の周方向の全域に亘り溶接されている。
供給筒部291のフランジ部294とは反対側には、供給燃料配管7が接続される。突出部292は、供給燃料配管7の端部を係止可能である。
(他の実施形態)
<A>上述の実施形態では、連通孔44の数をh、ガイド部43の数をgとすると、ガイド部43により複数に分断されたテーパ部42のうちの1つのテーパ部42の内縁部に対向する連通孔44の数が、h/gである例を示した。これに対し、他の実施形態では、上記連通孔44の数は、h/gでなくてもよい。また、ガイド部43により複数に分断されたテーパ部42のうちの1つのテーパ部42の内縁部に対向する連通孔44の数が、1であってもよい。
また、他の実施形態では、弁部材40は、シート部材31側の面である一方の面401の湾曲量QC1が、弁部材40がシート部材31から離間したときの弁部材40とシート部材31との距離の最小値DL1と同じに設定されていてもよい。
また、他の実施形態では、弁部材40あるいはシート部材31を中凸形状とすることや、弁部材40の中心側の板厚を外縁部よりも厚くすること等により、部材の剛性を変えて、弁部材40がシート部材31にならって変形するよう、シール性を高めてもよい。
<B>上述の第16実施形態では、内側筒状面602が、加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成された例を示した。ここで、他の実施形態では、スプール61の軸を含む仮想平面による断面において、最も径の小さい内側筒状面である内側筒状面601と内側筒状面602とのなす角のうち劣角が120度であってもよい。この場合、特に内側筒状面601と内側筒状面602との接続部分において、巻線620の位置ずれを抑制することができる。
上述の第18実施形態では、固定コア57より硬度の高い係止部材576を固定コア穴部575に設け、スプリング54を係止する例を示した。これに対し、他の実施形態では、例えば、係止部材576の硬度を固定コア57と同等または固定コア57より低く設定しつつ、係止部材576の表面にCrめっき層またはDLC層等を設けてもよい。もちろん、固定コア57より硬度の高い係止部材576の表面にCrめっき層またはDLC層等を設けてもよい。
また、他の実施形態では、可動コア55の加圧室200側の端面552は、巻線部62の加圧室200側の端面621に対し固定コア57とは反対側に位置していてもよい。
また、他の実施形態では、連結面605、606は、全ての部位がスプール61の軸に対し垂直となるよう形成されていてもよい。また、連結面605、606は、全ての部位が加圧室200側から加圧室200とは反対側へ向かうに従いスプール61の軸に近付くようテーパ状に形成されていてもよい。また、連結面605、606は、テーパ状ではなく、巻線620と同じ高さとなる段差の組み合わせで構成してもよい。
また、他の実施形態では、スプール61の軸を含む仮想平面VP1による断面において、内側筒状面601と連結面605とのなす角が120度以外に設定されていてもよい。
また、他の実施形態では、巻線620は、最も径の小さい内側筒状面から径方向外側へ向かう1層目における軸方向の巻き回数と2層目における軸方向の巻き回数とが異なっていてもよい。また、最も径の小さい内側筒状面と最も径の大きい内側筒状面との間において、巻線の1層毎の軸方向の巻き回数は、全ての層で同一でなくてもよい。
また、上述の実施形態では、巻線620を巻線形成部としてのスプール61に巻き回すことで巻線部62を形成する例を示した。これに対し、他の実施形態では、コネクタ65を形成する樹脂部材の一部を巻線形成部とし、当該巻線形成部に巻線620を巻き回すことで巻線部62を形成してもよい。
<C>上述の実施形態では、第1流路83と第2流路89とを接続する環状溝800は、中間部材本体82とリリーフ部材本体86との互いに対向する面において、中間部材81に形成されている。これに対し、他の実施形態では、環状溝800は、中間部材81のみに限らず、リリーフシート部材85のみ、または、中間部材81とリリーフシート部材85との両方に形成されていてもよい。
また、他の実施形態では、第2流路89の数が第1流路83の数より多く、環状溝800がリリーフ部材本体86に形成されていてもよい。また、この場合、例えば、第1流路83の数が4、第2流路89の数が5であってもよい。
また、他の実施形態では、第2流路89の数が第1流路83の数より多く、第2流路89の長さが第1流路83の長さより短くてもよい。すなわち、リリーフ部材本体86の軸方向の長さは、中間部材本体82の軸方向の長さより短くてもよい。
また、他の実施形態では、第1流路83は中間部材本体82に1つ形成されていることとしてもよい。また、第2流路89は、リリーフ部材本体86に1つ形成されていることとしてもよい。また、第1流路83と第2流路89とは、複数、かつ、同数形成されていてもよい。また、他の実施形態では、第1流路83の個数と第2流路89の個数とは、互いに素の関係に限らず、どのような関係であってもよい。
また、他の実施形態では、吐出ジョイント70を備えず、例えば、吐出シート部材71、中間部材81を吐出穴部214に設け、リリーフシート部材85を吐出穴部214にねじ結合することにより吐出通路部700を構成することとしてもよい。
また、他の実施形態では、係止部材95を備えなくてもよい。この場合、スプリング99の端部は、中間部材81で係止することが考えられる。
<D>上述の実施形態では、ボルト孔250が、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ハウジング外周壁270の径方向外側において周方向に等間隔で2つ形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、ボルト孔250は、ハウジング外周壁270の周方向に等間隔で形成されていなくてもよい。
また、他の実施形態では、ボルト孔250は、筒状内周壁230の軸Ax1方向から見たとき、ハウジング外周壁270の径方向外側において周方向に3つ以上形成されていてもよい。この場合、ボルト孔250は、ハウジング外周壁270の周方向に等間隔で形成されていることが望ましい。
また、他の実施形態では、ハウジング外周壁270は、平面状の平面部271を有していなくてもよい。また、他の実施形態では、電磁駆動部500の中心軸Axc1と吐出通路部700の中心軸Axc2とは、同一平面上に位置していなくてもよい。
また、他の実施形態では、加圧室200に吸入される燃料の圧力を検出可能な圧力センサ、加圧室200に吸入される燃料の温度を検出可能な温度センサ、上ハウジング21またはカバー26の振動を検出可能な振動センサ、カバー26の内側の空間と外側の空間とを連通する分岐通路部の少なくとも1つをさらに備えていてもよい。ここで、分岐通路部には、低圧の燃料を内燃機関に噴射供給するインジェクタに連通する低圧燃料配管が接続される。
圧力センサ、温度センサ、振動センサ、分岐通路部は、それぞれ、例えば、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられ、ハウジング外周壁270の周方向において、電磁駆動部500から吐出通路部700側へ180度以内、または、吐出通路部700から電磁駆動部500側へ180度以内の範囲に位置していることとしてもよい。
また、圧力センサ、温度センサ、振動センサ、分岐通路部は、それぞれ、例えば、上ハウジング21側から筒状内周壁230の軸Ax1方向の鉛直方向上側へ向かって突出するようカバー底部262に設けられていてもよい。
また、上述の第11実施形態では、パルセーションダンパ部19が、上ハウジング21側から筒状内周壁230の軸Ax1方向の鉛直方向上側へ向かって突出するようカバー底部262に設けられる例を示した。これに対し、他の実施形態では、パルセーションダンパ部19は、例えば、ハウジング外周壁270から径方向外側へ突出するよう設けられ、ハウジング外周壁270の周方向において、電磁駆動部500から吐出通路部700側へ180度以内、または、吐出通路部700から電磁駆動部500側へ180度以内の範囲に位置していることとしてもよい。
また、他の実施形態では、カバー26を備えていなくてもよい。この場合、例えば、供給通路部29の内側と吸入通路216とが連通するよう、供給通路部29を上ハウジング21に設ければよい。
また、上述の実施形態では、カバー筒部261が正八角筒状に形成される例を示した。これに対し、他の実施形態では、カバー筒部261は、各辺の長さが交互に異なる等、異形八角筒状に形成されていてもよい。これにより、固有値を変えて共振を抑制し、NVを低減できる。
また、他の実施形態では、シリンダ23、上ハウジング21、下ハウジング22のうち少なくとも2つを一体に形成してもよい。また、他の実施形態では、上ハウジング21、シート部材31、ストッパ35のうち少なくとも2つを一体に形成してもよい。
また、他の実施形態では、高圧ポンプを、ディーゼルエンジン等、ガソリンエンジン以外の内燃機関に適用してもよい。また、高圧ポンプを、車両のエンジン以外の装置等へ向けて燃料を吐出する燃料ポンプとして用いてもよい。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
以下、上述した発明の第1の技術思想について説明する。
<A>従来、燃料を加圧し内燃機関に供給する高圧ポンプが知られている。一般に、高圧ポンプは、加圧室の低圧側に弁部材を備えている。弁部材は、弁座から離間すると開弁し、加圧室に吸入される燃料の流れを許容し、弁座に当接すると閉弁し、加圧室から低圧側への燃料の流れを規制する。例えば特許文献(特開2016−133010号公報)の高圧ポンプでは、加圧室の容積が増大するようプランジャが下降するとき、弁部材が開弁し加圧室に燃料が吸入される。また、弁部材が開弁した状態で、加圧室の容積が低減するようプランジャが上昇すると、加圧室から低圧側へ燃料が戻され、加圧室で加圧される燃料が調量される。さらに、弁部材が閉弁した状態で、加圧室の容積が低減するようプランジャが上昇すると、加圧室内の燃料が加圧される。
特許文献(特開2016−133010号公報)の高圧ポンプでは、弁部材は、軸を中心とする仮想円上に複数の連通孔を有している。また、特許文献(特開2016−133010号公報)には、吸入通路を形成する部材に摺動することで弁部材の軸方向の移動を案内可能なガイド部を有する弁部材が開示されている。この弁部材では、ガイド部は、弁部材の周方向に3つ形成されている。また、弁部材の加圧室側の面の外縁部には、弁部材の軸に対し傾斜する傾斜面が周方向に3つ形成されている。この傾斜面は、ガイド部の間に形成されている。
特許文献(特開2016−133010号公報)の高圧ポンプでは、傾斜面は、弁部材の軸側の縁部が直線状に形成されている。そのため、当該縁部の両端と連通孔との距離が大きく、当該縁部の両端が、弁部材の表面を流れる燃料の抵抗となるおそれがある。これにより、加圧室に吸入される燃料、または、加圧室から低圧側へ戻される燃料の流量を十分に確保できないおそれがある。
本発明の目的は、加圧室に吸入される燃料の流量を十分に確保可能な高圧ポンプを提供することにある。
以下、上述した発明の第2の技術思想について説明する。
<B>従来、燃料を加圧し内燃機関に供給する高圧ポンプが知られている。一般に、高圧ポンプは、加圧室の低圧側に弁部材を備えている。弁部材は、弁座から離間すると開弁し、加圧室に吸入される燃料の流れを許容し、弁座に当接すると閉弁し、加圧室から低圧側への燃料の流れを規制する。例えば特許文献(米国特許第8925525号明細書)の高圧ポンプでは、弁部材に対し加圧室とは反対側に電磁駆動部を備え、弁部材の開弁および閉弁を制御し、加圧室で加圧される燃料の量、および、高圧ポンプから吐出される燃料の量を制御している。
一般に、電磁駆動部のコイルの軸方向の中心は磁束密度が最大となる。また、全ての磁束方向は、コイルの軸に対し平行、かつ、加圧室から固定コア側へ向かう方向となる。そのため、可動コアの固定コア側の端面がコイルの軸方向の中心に近い位置に配置されている場合ほど、コイルに通電したときに可動コアに作用する吸引力が大きくなる。
しかしながら、特許文献(米国特許第8925525号明細書)の高圧ポンプでは、可動コアの固定コア側の端面は、コイルの軸方向の中心に対し加圧室側に位置し、かつ、可動コアの加圧室側の端面は、コイルの加圧室側の端面に対し加圧室側に位置している。そのため、コイルへの通電時、可動コアに作用する吸引力が小さくなるおそれがある。これにより、可動コアの応答性が低下するおそれがある。ここで、可動コアの応答性を確保するためにコイルへ流す電流を増大させると、電磁駆動部の消費電力が増大するおそれがある。
本発明の目的は、電磁駆動部の応答性が高い高圧ポンプを提供することにある。
以下、上述した発明の第3の技術思想について説明する。
<C>従来、燃料を加圧し内燃機関に供給する高圧ポンプにおいて、加圧室から吐出した燃料の圧力が所定値以上になったときに燃料を加圧室または低圧室へ逃がすリリーフ弁を備えた高圧ポンプが知られている。例えば特許文献(特開2004−197834号公報)の高圧ポンプでは、リリーフ弁は、燃料を低圧室へ逃がすよう構成されている。
近年、エンジンシステムの要求燃圧の高圧化により、内燃機関への供給燃料の高圧化が求められている。高圧ポンプから内燃機関に吐出供給する燃料の高圧化を図るには、加圧室に連通し加圧時に高圧の空間となるデッドボリュームを低減することが有効である。特許文献1の高圧ポンプでは、吐出弁を加圧室の近傍に配置し、リリーフ弁を吐出弁に対し加圧室とは反対側に配置している。これにより、デッドボリュームの低減を図ることが可能である。
しかしながら、特許文献(特開2004−197834号公報)の高圧ポンプでは、リリーフ弁を吐出弁の軸から径方向にずれた位置に配置し、吐出弁とリリーフ弁との間に圧力脈動低減機を設けている。さらに、吐出弁を通過した吐出燃料が流れる流路を、リリーフ弁および圧力脈動低減機の径方向外側に形成している。そのため、吐出弁およびリリーフ弁を含む部位が大型化するおそれがある。
本発明の目的は、小型の高圧ポンプを提供することにある。
以下、上述した発明の第4の技術思想について説明する。
<D>従来、燃料を加圧し内燃機関に供給する高圧ポンプが知られている。一般に、高圧ポンプは、加圧室の低圧側に弁部材を備えている。弁部材は、弁座から離間すると開弁し、加圧室に吸入される燃料の流れを許容し、弁座に当接すると閉弁し、加圧室から低圧側への燃料の流れを規制する。例えば特許文献(欧州特許第1479903号明細書)の高圧ポンプでは、弁部材に対し加圧室とは反対側に電磁駆動部を備え、弁部材の開弁および閉弁を制御し、加圧室で加圧される燃料の量、および、高圧ポンプから吐出される燃料の量を制御している。
特許文献(欧州特許第1479903号明細書)の高圧ポンプでは、電磁駆動部は、加圧室を形成するハウジングの外周壁から径方向外側へ突出するよう設けられている。また、加圧室から吐出された燃料が流れる吐出通路部が、ハウジングの外周壁から径方向外側へ突出するよう設けられている。
高圧ポンプは内燃機関に取り付けられるため、高圧ポンプが取り付けられる位置によっては、高圧ポンプの近傍にプーリー等の回転物が位置することがある。高圧ポンプの電磁駆動部には配線が接続され、吐出通路部には鋼管が接続される。そのため、高圧ポンプが取り付けられる位置によっては、回転物が配線や鋼管に接触し、配線や鋼管が損傷するおそれがある。
また、特許文献(欧州特許第1479903号明細書)の高圧ポンプは、複数のボルト孔を有し内燃機関に固定される被固定部を備えている。ボルト孔は、加圧室を形成する筒状の内周壁の軸方向から見たとき、ハウジングの外周壁の径方向外側において周方向に等間隔で3つ形成されている。ここで、電磁駆動部、吐出通路部、および、加圧室に供給される燃料が流れる供給通路部は、それぞれ、3つのボルト孔のそれぞれの間に配置されている。被固定部を内燃機関に固定し高圧ポンプを内燃機関に取り付けるとき、ボルト孔にボルトが挿通される。このとき、ボルト、および、ボルトを締結する工具が電磁駆動部、吐出通路部または供給通路部に干渉するのを避ける必要があるため、電磁駆動部、吐出通路部および供給通路部をボルト孔の軸上に配置することはできない。したがって、電磁駆動部、吐出通路部および供給通路部をハウジングの周方向の特定の箇所に集約して配置することができない。よって、高圧ポンプの内燃機関への取り付け位置の自由度が低下するおそれがある。
本発明の目的は、内燃機関への取り付け位置の自由度が高い高圧ポンプを提供することにある。