以下図面を用いて、発明を実施するための最良の形態(以下、これを実施の形態とも呼ぶ)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
(1)第1の実施の形態
(2)第2の実施の形態
(3)他の実施の形態
(1)第1の実施の形態
(1−1)カラープリンタの内部構成
図1において、1は全体として本発明による2次転写型のカラープリンタを示す。係るカラープリンタ1は、例えば、図中の右端面が正面2Aとなる略箱型の筐体(以下、これをプリンタ筐体とも呼ぶ)2を有している。因みに、以下の説明では、カラープリンタ1を、プリンタ筐体2の正面2Aと対峙して見た場合の図中に矢印a1で示す当該カラープリンタ1の上の方向を、プリンタ上方向とも呼び、当該プリンタ上方向とは逆の方向を、プリンタ下方向とも呼び、これらを特に区別する必要がない場合や、その両方を示す場合は、まとめてプリンタ上下方向とも呼ぶ。また、以下の説明では、カラープリンタ1を、プリンタ筐体2の正面2Aと対峙して見た場合の図中に矢印b1で示す当該カラープリンタ1の前の方向を、プリンタ前方向とも呼び、当該プリンタ前方向とは逆の方向を、プリンタ後方向とも呼び、これらを特に区別する必要がない場合や、その両方を示す場合は、まとめてプリンタ前後方向とも呼ぶ。さらに、以下の説明では、カラープリンタ1を、プリンタ筐体2の正面2Aと対峙して見た場合の図中に矢印c1で示す当該カラープリンタ1の左の方向を、プリンタ左方向とも呼び、当該プリンタ左方向とは逆の方向を、プリンタ右方向とも呼び、これらを特に区別する必要がない場合や、その両方を示す場合は、まとめてプリンタ左右方向とも呼ぶ。
プリンタ筐体2は、例えば、正面2Aの上端部の所定位置に、各種操作キーや液晶パネルを有するオペレーションパネル(図示せず)が配置されている。またプリンタ筐体2は、例えば、背面2Bの下端部の所定位置に、USB(Universal Serial Bus)又はIEEE802(The Institute of Electrical and Electronics Engineers 802)等の有線通信規格又は無線通信規格に準じて外部のパーソナルコンピュータのような上位装置と有線接続又は無線接続するためのインタフェース部3が設けられている。さらにプリンタ筐体2は、上面2Cの後端部に、表面に印刷画像が形成された長方形の印刷媒体5を載上してユーザに受け渡すための凹部(以下、これを媒体受渡部とも呼ぶ)2CXが形成されている。そしてプリンタ筐体2は、媒体受渡部2CXの後内壁の所定位置に、プリンタ筐体2内から印刷画像が形成された印刷媒体5を当該媒体受渡部2CXへ排出するための媒体排出口2CYが形成されている。さらにプリンタ筐体2は、例えば、左端部に図示しない扉が開閉可能に設けられている。
一方、プリンタ筐体2内には、中央部から上端部に亘り、印刷媒体5の表面にカラーの印刷画像を形成(すなわち、印刷対象のカラー画像を印刷)するための画像形成部7が配置されている。またプリンタ筐体2内には、下端部に、画像形成部7へ印刷媒体5を印刷画像の形成用に供給するための媒体供給部8が配置されている。画像形成部7は、例えば、印刷画像形成用の基本色としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、及び当該印刷画像形成用の特別色としてのクリア(CL)の計5色の現像剤としてのトナーを互いに重複しないように1色分用いて現像剤画像としてのトナー画像を形成する5個の第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14を有している。また画像形成部7は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14によって形成された5色のトナー画像を印刷媒体5の表面に転写する転写ユニット15を有すると共に、当該印刷媒体5の表面に5色のトナー画像を定着させる定着ユニット16も有している。
第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、プリンタ筐体2内の上端部に扉を介して抜差可能に設けられ、当該プリンタ筐体2内の上端部に装填された場合、前側から後側へ所定の等間隔で例えば、クリア(CL)、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に対応するものの順で並べて配置されている。ここで、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、トナー画像の形成に、互いに異なる単色のトナーを用いることを除いて同様に構成されている。実際に第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれプリンタ左右方向に長い第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24を有し、これら第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24の上面後端部に、対応する色のトナーを収容する第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29が着脱可能に装着されている。また第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれトナー画像を担持する像担持体としての第1乃至第5感光ドラム30乃至34と、これら第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面を帯電させる帯電部としての第1乃至第5帯電ローラ35乃至39と、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面を露光して、トナー画像のもとになる静電潜像を形成する露光部としての第1乃至第5LED(Light Emitting Diode)ヘッド40乃至44とを有している。さらに第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ外周面にトナーを担持して第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の静電潜像を現像する現像剤担持体としての第1乃至第5現像ローラ45乃至49と、これら第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面にトナーを供給する現像剤供給部としての第1乃至第5供給ローラ50乃至54とを有している。さらにまた第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面に担持されるトナーの膜厚を規制する現像剤膜厚規制部としての第1乃至第5トナーブレード55乃至59と、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面に残留したトナーを除去する残留現像剤除去部としての第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64も有している。
この場合、第1乃至第5感光ドラム30乃至34は、それぞれ例えば、ドラム状(すなわち、円筒状)のアルミニウムのような導電性基体の表面に所定の膜厚の感光層が設けられた有機感光体として形成され、両端部に導電性金属のシャフトが突設されている。因みに、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の感光層は、導電性基体の表面から外側へブロッキング層、電荷発生層及び電荷輸送層を順に積層するようにして形成されており、これらのうちの例えば、電荷輸送層の膜厚は18[μm]程度に選定されている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内のほぼ中央部に第1乃至第5感光ドラム30乃至34を、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心として図中に矢印d1で示す一回転方向(すなわち、左側から見て反時計回り方向となる回転方向)へ回転可能に支持している。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の下側の部分を第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24の下面から僅かに下側へ突出させている。また第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれプリンタ筐体2内に装填された場合、第1乃至第5感光ドラム30乃至34のシャフトが、その第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14駆動用の図示しないモータ(以下、これを画像形成ユニット駆動モータとも呼ぶ)の出力軸に連結される。よって第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、画像形成ユニット駆動モータの動作に応じて第1乃至第5感光ドラム30乃至34を一回転方向へ回転させることができる。
第1乃至第5帯電ローラ35乃至39は、それぞれ導電性金属のシャフトの中央部に例えば、半導電性ヒドリンゴムのような円柱状の弾性体であるローラ本体が設けられている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内の上前端部に第1乃至第5帯電ローラ35乃至39を、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心として一回転方向とは逆の他回転方向(すなわち、左側から見て時計回り方向となる回転方向)へ回転可能に支持している。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5帯電ローラ35乃至39の外周面(すなわち、ローラ本体の外周面)の後斜め下側の部分を第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の前斜め上側の部分に所定の圧力で押し付けている。よって第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、画像形成ユニット駆動モータの動作に応じて第1乃至第5感光ドラム30乃至34が一回転方向に回転した場合、その回転に連動させて第1乃至第5帯電ローラ35乃至39を第1乃至第5感光ドラム30乃至34に押し付けたまま他回転方向へ回転させることができる。
第1乃至第5LEDヘッド40乃至44は、それぞれ例えば、細長いヘッドケースを有し、そのヘッドケース内に複数のLED素子が、当該ヘッドケースの長手方向(以下、これをヘッド長手方向とも呼ぶ)に沿って並べて配置されている。また第1乃至第5LEDヘッド40乃至44は、ヘッドケースにレンズアレイが、その入射面を複数のLED素子の発光面と対向させ、かつ射出面を露出させて配置されている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24の上面のほぼ中央部に第1乃至第5LEDヘッド40乃至44が、ヘッド長手方向をプリンタ左右方向と平行にし、レンズアレイの射出面を第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の上側の部分と対向させて配置されている。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面において第1乃至第5帯電ローラ35乃至39により帯電された部分を、第1乃至第5LEDヘッド40乃至44の複数のLED素子の発光面から出力する照射光によって静電潜像の形成用に露光することができる。
第1乃至第5現像ローラ45乃至49は、それぞれ導電性金属のシャフトの中央部に、例えば、硬度が70°(アスカーC)の半導電性ウレタンゴムのような円柱状の弾性体であるローラ本体が設けられている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内の後端部に第1乃至第5現像ローラ45乃至49を、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心として他回転方向へ回転可能に支持している。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面(すなわち、ローラ本体の外周面)の前斜め下側の部分を第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の後斜め上側の部分に所定の圧力で押し付けている。また第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれプリンタ筐体2内に装填された場合、第1乃至第5現像ローラ45乃至49のシャフトが、画像形成ユニット駆動モータの出力軸に連結される。よって第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、画像形成ユニット駆動モータの動作に応じて第1乃至第5現像ローラ45乃至49を、一回転方向へ回転している第1乃至第5感光ドラム30乃至34に押し付けたまま静電潜像の現像用に他回転方向へ回転させることができる。
第1乃至第5供給ローラ50乃至54は、それぞれ導電性金属のシャフトの中央部に、例えば、硬度が50°(アスカーF)のシリコンスポンジのような円柱状の発泡体であるローラ本体が設けられて形成されている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内の後上端部に第1乃至第5供給ローラ50乃至54を、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心として他回転方向へ回転可能に支持している。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5供給ローラ50乃至54の外周面(すなわち、ローラ本体の外周面)の前斜め下側の部分を第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面の後斜め上側の部分に所定の圧力で押し付けている。また第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれプリンタ筐体2内に装填された場合、第1乃至第5供給ローラ50乃至54のシャフトが、画像形成ユニット駆動モータの出力軸に連結される。よって第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、画像形成ユニット駆動モータの動作に応じて第1乃至第5供給ローラ50乃至54を、他回転方向へ回転している第1乃至第5現像ローラ45乃至49に押し付けたまま他回転方向へ回転させることができる。このようにして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29から第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内に供給されるトナーを第1乃至第5供給ローラ50乃至54により第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面に供給することができる。
第1乃至第5トナーブレード55乃至59は、それぞれステンレスやリン青銅等の導電性金属により略短冊状に形成されている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5トナーブレード55乃至59の長手方向をプリンタ左右方向と平行にして、これら第1乃至第5トナーブレード55乃至59の一方の縁部が第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内の所定位置に固着されている。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5トナーブレード55乃至59の他方の縁部を前斜め下側に向けた状態で、第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面の前斜め上側の部分に圧接させている。よって第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、第1乃至第5供給ローラ50乃至54から第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面へ所定の膜厚以上のトナーを供給しても、これら第1乃至第5現像ローラ45乃至49が他回転方向へ回転することで、その外周面から所定の膜厚以上の余分なトナーを第1乃至第5トナーブレード55乃至59で取り除くことができる。このようにして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、第1乃至第5トナーブレード55乃至59により、第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面に担持させるトナーの膜厚を規制することができる。
第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64は、それぞれ例えば、硬度がJIS−A基準で68°のウレタンゴムのような弾性体により略短冊状に形成されている。そして第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、それぞれ第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64の長手方向をプリンタ左右方向と平行にして、これら第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64の一方の縁部が第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24内の所定位置に固着されている。これにより第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14は、これら第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64の他方の縁部を前斜め下側に向けた状態で、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の前側の部分に当接させている。よって第1乃至第5ユニットフレーム20乃至24は、第1乃至第5クリーニングブレード60乃至64により、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面に残留したトナーを除去することができる。
一方、転写ユニット15は、図示しないユニットフレームを有し、5個の第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14の下に近接させて配置されている。転写ユニット15は、ユニットフレームにより、最も後側に位置する第5画像形成ユニット14の後斜め下の所定位置に、ベルト駆動用の駆動ローラ70をプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして他回転方向へ回転可能に支持している。また転写ユニット15は、ユニットフレームにより、最も前側に位置する第1画像形成ユニット10の前斜め下の所定位置に、従動ローラ71をプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして他回転方向へ回転可能に支持している。さらに転写ユニット15は、ユニットフレームにより駆動ローラ70及び従動ローラ71よりも下側の所定位置に、バックアップローラ72をプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして他回転方向へ回転可能に支持している。そして転写ユニット15は、駆動ローラ70、従動ローラ71及びバックアップローラ72に亘り、トナー画像を転写するための無端状のベルト(以下、これを転写ベルトとも呼ぶ)73が略逆三角形を成すように張架されている。これにより転写ユニット15は、転写ベルト73において駆動ローラ70から従動ローラ71までの上側部分をほぼ平坦にして、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の下側の部分に当接させている。また転写ユニット15は、駆動ローラ70のシャフトが当該転写ユニット15駆動用の図示しないモータ(以下、これらを転写ユニット駆動モータとも呼ぶ)の出力軸に連結されている。これにより転写ユニット15は、転写ユニット駆動モータの動作に応じて駆動ローラ70を他回転方向へ回転させ、その回転に連動させて従動ローラ71及びバックアップローラ72と共に転写ベルト73を他回転方向へ回転させることができる。因みに、転写ベルト73は、無端状のプラスチックフィルムのような比較的高い電気抵抗を有する高抵抗層の裏面に、これよりも電気抵抗の低い低抵抗材料からなる導電層が積層された2層構造で形成され、その高抵抗層の表面を当該転写ベルト73の外周面として第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面に当接させている。なお、転写ベルト73の高抵抗層は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)にカーボンを混入させるようにして1011乃至1013[Ωcm]程度の体積抵抗率を有するように形成されている。また転写ベルト73の導電層は、例えば、1014[Ωcm]以下の体積抵抗率を有する導電性部材であるアルミニウム薄膜として形成され、高抵抗層の裏面に張着、又は蒸着されている。
これに加えて、転写ユニット15は、ユニットフレームにより、転写ベルト73のほぼ平坦な上側部分の内側に、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面のトナー画像を当該転写ベルト73の外周面に転写させるための5個の1次転写ローラ74乃至78を、前側から後側へ順に並べ、それぞれプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして他回転方向へ回転可能に支持している。これにより転写ユニット15は、これら5個の1次転写ローラ74乃至78の外周面の上側部分を、転写ベルト73の上側部分を介して、対応する第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の下側の部分に押し付けている。また転写ユニット15は、バックアップローラ72の下に、転写ベルト73が回転して搬送する外周面上の5色分のトナー画像を印刷媒体5の表面に転写するための2次転写ローラ79が、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして一回転方向へ回転可能に設けられている。これにより転写ユニット15は、2次転写ローラ79の外周面の上側部分を、転写ベルト73を介してバックアップローラ72の外周面の下側の部分に押し付けている。因みに、以下の説明では、転写ベルト73の外周面において、2次転写ローラ79によりバックアップローラ72との間に挟まれる位置を、2次転写位置とも呼ぶ。
定着ユニット16は、プリンタ筐体2内の中央後端部に扉を介して抜差可能に設けられ、当該プリンタ筐体2内の中央後端部に装填された場合、転写ユニット15の2次転写ローラ79の後側の所定位置に配置される。定着ユニット16は、印刷媒体5を前側から取り込み、後側へ排出可能なユニットフレーム85を有している。また定着ユニット16は、内部にハロゲンランプのような発熱体(図示せず)が設けられ、印刷媒体5と共に、その表面上のトナー(すなわち、トナー画像)を加熱するための加熱ローラ86を有すると共に、当該印刷媒体5と共に、その表面上のトナー(すなわち、トナー画像)を加圧するための加圧ローラ87を有している。そして定着ユニット16は、ユニットフレーム85内の上端部に加熱ローラ86をプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして他回転方向へ回転可能に支持すると共に、その加熱ローラ86の外周面の温度を非接触で検出するための温度センサ(図示せず)が配置されている。また定着ユニット16は、ユニットフレーム85内の下端部に加圧ローラ87をプリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして一回転方向へ回転可能に支持している。これにより定着ユニット16は、加圧ローラ87の外周面の上側の部分を、加熱ローラ86の外周面の下側の部分に所定の圧力で押し付けている。
また定着ユニット16は、プリンタ筐体2内に装填された場合、例えば、加熱ローラ86及び加圧ローラ87のシャフトがそれぞれ定着ユニット16駆動用の図示しないモータ(以下、これらを定着ユニット駆動モータとも呼ぶ)の出力軸に連結される。さらに定着ユニット16は、プリンタ筐体2内に装填された場合、加熱ローラ86内の発熱体を所定の発熱体電源に電気的に接続する。これにより定着ユニット16は、発熱体電源により発熱体を発熱させて加熱ローラ86の外周面を加熱しながら、定着ユニット駆動モータの動作に応じて当該加熱ローラ86を他回方向へ回転させると共に、加圧ローラ87を、その外周面を加熱ローラ86の外周面に押し付けながら一回転方向へ回転させることができる。よって定着ユニット16は、表面に5色分のトナー画像が転写された印刷媒体5を加熱ローラ86及び加圧ローラ87の間に挟み込むようにして搬送しながら加熱及び加圧して、当該印刷媒体5の表面に5色分のトナー画像を定着させることができる。なお、定着ユニット16は、例えば、プリンタ筐体2内から引き抜かれた状態で、ユニットフレーム85に対する加圧ローラ87の取付位置を調整し得るように形成されている。従って定着ユニット16は、そのユニットフレーム85に対する加圧ローラ87の取付位置の調整により、印刷媒体5を加熱ローラ86及び加圧ローラ87の間に挟み込むようにして搬送する際の当該印刷媒体5に加える圧力(すなわち、印刷媒体5に加熱ローラ86及び加圧ローラ87の間に挟み込むようにして加える圧力であり、以下、これをニップ圧とも呼ぶ)を可変することができる。
媒体供給部8は、複数の印刷媒体5が積層された状態で装填される媒体カセット90が設けられている。因みに、媒体カセット90は、例えば、A3サイズの複数の印刷媒体5を、その長手方向をプリンタ前後方向と平行にして揃えた状態で装填させ、またA4サイズの複数の印刷媒体5を、その長手方向をプリンタ左右方向と平行にして揃えた状態で装填させるような、種々のサイズの印刷媒体5が装填可能に形成されている。また媒体供給部8は、媒体カセット90から印刷媒体5を繰り出すための繰出ローラ91が、プリンタ左右方向と平行にしたシャフトを中心にして一回転方向へ回転可能に設けられ、そのシャフトが繰出モータの出力軸に連結されている。
これに加えて、プリンタ筐体2内には、媒体カセット90の前斜め上近傍から転写ユニット15の2次転写ローラ79及びバックアップローラ72の前近傍までに亘り、印刷媒体5を画像形成部7へ搬送する搬送部(以下、これを媒体供給用搬送部とも呼ぶ)93が配置されている。媒体供給用搬送部93は、複数対の搬送ローラや複数の搬送ガイド、媒体供給用搬送モータ、搬送制御用の各種センサ等の種々の搬送路形成部品により、媒体カセット90から繰り出される印刷媒体5を画像形成部7へ搬送するための搬送路(以下、これを媒体供給用搬送路とも呼ぶ)を形成している。またプリンタ筐体2内には、定着ユニット16の後近傍から媒体排出口2CY近傍までに亘り、表面に印刷画像が形成された印刷媒体5を当該媒体排出口2CYからの排出用に搬送する搬送部(以下、これを媒体排出用搬送部とも呼ぶ)94が配置されている。媒体排出用搬送部94は、複数対の搬送ローラや複数の搬送ガイド、媒体排出用搬送モータ、搬送制御用の各種センサ等の種々の搬送路形成部品により、定着ユニット16から繰り出される印刷媒体5を媒体排出口2CYへ搬送するための搬送路(以下、これを媒体排出用搬送路とも呼ぶ)を形成している。
さらにプリンタ筐体2内には、例えば、2次転写位置よりも前側の所定位置(すなわち、印刷媒体5の搬送方向において2次転写位置よりも上流側の所定位置)に、媒体供給用搬送路を介して搬送される印刷媒体5の先端(すなわち、搬送中の印刷媒体5において搬送方向の下流側及び上流側に位置する両端のうち当該下流側に位置する一端)が到達したか否かを検出するための位置検出センサ95が配置されている。因みに、位置検出センサ95は、2次転写ローラ79による印刷媒体5の表面へのトナー画像の転写位置を調整するために用いられるものである。なお、プリンタ筐体2内には、定着ユニット16の後側の所定位置に、印刷媒体5の排出と、2次転写ローラ79及びバックアップローラ72の間への再供給とを切り換えるためのセパレータ96が配置されている。またプリンタ筐体2内には、画像形成部7と、媒体供給部8との間に、定着ユニット16から繰り出される印刷媒体5を印刷画像の形成面を変えずに再び2次転写ローラ79及びバックアップローラ72の間へ再供給するように搬送するための媒体再供給搬送ユニット97が配置されている。因みに、媒体再供給搬送ユニット97は、例えば、印刷媒体5の表面に転写する5色分のトナー画像の重なりの順番を変更する(例えば、5色分のトナー画像のうちクリアのトナー画像を最も下側にするか、又は最も上側にするか等を変更する)ような場合に利用するものである。
(1−2)カラープリンタ1の回路構成
次いで、図2乃至図6を用いてカラープリンタ1の回路構成について説明する。カラープリンタ1は、印刷媒体5の表面に対する印刷画像の形成用に当該カラープリンタ1全体を制御する制御部(以下、これを印刷制御部とも呼ぶ)100を有している。そして印刷制御部100は、印刷媒体5の表面に対する印刷画像の形成用に当該カラープリンタ1全体を制御するための各種プログラムや各種パラメータが予め記憶されたROM(Read Only Memory)101と、当該印刷制御部100のワークエリアであるRAM(Random Access Memory)102とが接続されている。また印刷制御部100は、上述したインタフェース部3を介して上位装置103と接続されると共に、温度センサ(すなわち、上述した定着ユニット16の温度センサ)や位置検出センサ95、搬送制御用の各種センサを有するセンサ部104が接続され、さらに上述したオペレーションパネルの各種操作キーを有する操作入力部105が接続されている。
これに加えて、印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14での第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の静電潜像の現像を制御する現像制御部110として、それぞれ所定の電圧源を有する第1及び第2現像電圧制御部111及び112並びに第1及び第2ブレードローラ電圧制御部113及び114が接続されている。そして第1現像電圧制御部111には、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の静電潜像を現像するための現像部115として、第1乃至第4画像形成ユニット10乃至13の第1乃至第4現像ローラ45乃至48が電気的に接続されている。また第2現像電圧制御部112には、その現像部115として、第5画像形成ユニット14の第5現像ローラ49が電気的に接続されている。さらに第1ブレードローラ電圧制御部113には、その現像部115として、第1乃至第4画像形成ユニット10乃至13の第1乃至第4供給ローラ50乃至53並びに第1乃至第4トナーブレード55乃至58が電気的に接続されている。さらにまた第2ブレードローラ電圧制御部114には、その現像部115として、第5画像形成ユニット14の第5供給ローラ54及び第5トナーブレード59が電気的に接続されている。
また印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14での第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の帯電を制御する帯電制御部116として、それぞれ所定の電圧源を有する第1及び第2帯電電圧制御部117及び118が接続されている。そして第1帯電電圧制御部117には、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面を帯電させるための帯電部119として、第1乃至第4画像形成ユニット10乃至13の第1乃至第4帯電ローラ35乃至38が電気的に接続されている。また第2帯電電圧制御部118には、その帯電部119として、第5画像形成ユニット14の第5帯電ローラ39が電気的に接続されている。さらに印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14での第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面の露光(すなわち、静電潜像を形成するための露光)を制御する露光制御部120として、第1乃至第5ヘッド制御部121乃至125が接続されている。そして第1乃至第5ヘッド制御部121乃至125には、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面を露光して静電潜像を形成するための露光部126として、それぞれ対応する第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14の第1乃至第5LEDヘッド40乃至44が接続されている。
さらに印刷制御部100は、転写ユニット15での転写ベルト73の外周面や印刷媒体5の表面へのトナー画像の転写を制御する転写制御部127として、それぞれ所定の電圧源を有する第1及び第2転写電圧制御部128及び129が接続されている。そして第1転写電圧制御部128には、転写ユニット15において転写ベルト73の外周面や印刷媒体5の表面にトナー画像を転写する転写部130として、当該転写ユニット15の5個の1次転写ローラ74乃至78が電気的に接続されている。また第2転写電圧制御部129には、その転写部130として、転写ユニット15の2次転写ローラ79が電気的に接続されている。さらに印刷制御部100は、定着ユニット16を制御する定着制御部131が接続されている。そして定着制御部131には、その定着ユニット16の上述した発熱体132が接続されると共に、上述した定着ユニット駆動モータ133が接続されている。さらにまた印刷制御部100は、モータ制御部134が接続されている。そしてモータ制御部134には、モータ135として上述した画像形成ユニット駆動モータ、転写ユニット駆動モータ、繰出モータ、媒体供給用搬送モータ及び媒体排出用搬送モータが接続されている。
印刷制御部100は、係る構成のもと例えば、上位装置103からインタフェース部3を介して印刷対象のカラー画像を表す画像データが与えられると共に、そのカラー画像の印刷が指示されると、印刷媒体5の表面に印刷画像を形成(すなわち、カラー画像を印刷)する印刷画像形成処理を実行する。印刷制御部100は、印刷画像形成処理を実行した場合、定着制御部131により定着ユニット駆動モータ133を動作させて定着ユニット16において加熱ローラ86を上述したように他回転方向へ回転させると共に、加圧ローラ87を一回転方向へ回転させる。また印刷制御部100は、センサ部104としての温度センサから与えられる加熱ローラ86の外周面の温度の検出結果をもとに定着制御部131により発熱体132を発熱させて、当該加熱ローラ86の外周面を所望の温度まで加熱する。さらに印刷制御部100は、モータ制御部134により画像形成ユニット駆動モータを動作させて第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14の第1乃至第5感光ドラム30乃至34や第1乃至第5現像ローラ45乃至49、第1乃至第5供給ローラ50乃至54を上述したように一回転方向や他回転方向へ回転させる。これにより印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5感光ドラム30乃至34を一回転方向へ回転させながら、その回転に連動させて第1乃至第5帯電ローラ35乃至39を他回転方向へ回転させる。
これに加えて印刷制御部100は、第1及び第2帯電電圧制御部117及び118により第1乃至第5帯電ローラ35乃至39に所定の電圧値の直流電圧を印加する。また印刷制御部100は、第1及び第2現像電圧制御部111及び112により第1乃至第5現像ローラ45乃至49に所定の電圧値の直流電圧を印加する。これにより印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5帯電ローラ35乃至39により第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面を静電潜像が形成可能な状態に帯電させる。また印刷制御部100は、第1及び第2ブレードローラ電圧制御部113及び114により第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5供給ローラ50乃至54及び第1乃至第5トナーブレード55乃至59に所定の電圧値の直流電圧を印加する。これにより印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14において第1乃至第5供給ローラ50乃至54により第1乃至第5現像ローラ45乃至49にトナーを供給し、第1乃至第5トナーブレード55乃至59により当該第1乃至第5現像ローラ45乃至49の外周面に静電潜像の現像に適量なトナーを担持させる。
さらに印刷制御部100は、モータ制御部134により転写ユニット駆動モータを動作させて転写ユニット15において駆動ローラ70を上述したように他回転方向へ回転させると共に、その回転に連動させて従動ローラ71及びバックアップローラ72と共に転写ベルト73も他回転方向へ回転させる。これに加えて、印刷制御部100は、第1及び第2転写電圧制御部128及び129により転写ユニット15の5個の1次転写ローラ74乃至78及び2次転写ローラ79に所定の電圧値の直流電圧を印加する。これにより印刷制御部100は、第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14の第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面からトナー画像を転写ベルト73へ転写可能な状態にすると共に、その転写ベルト73からトナー画像を印刷媒体5の表面へ転写可能な状態にする。
そして印刷制御部100は、モータ制御部134により媒体供給用搬送モータ及び媒体排出用搬送モータを動作させて媒体供給用搬送部93及び媒体排出用搬送部94を駆動したうえで、そのモータ制御部134により繰出モータを動作させる。これにより印刷制御部100は、繰出ローラ91により、媒体カセット90から印刷媒体5を1枚ずつ繰り出し、当該繰り出した印刷媒体5を、媒体供給用搬送路を介して搬送姿勢を適宜矯正しながら画像形成部7へ搬送する。この際、印刷制御部100は、例えば、画像データに基づき、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、クリアの色成分を表す5種類の印刷色データを生成すると共に、当該生成した5種類の印刷色データを、対応する第1乃至第5ヘッド制御部121乃至125に送出する。また第1乃至第5ヘッド制御部121乃至125は、それぞれ印刷制御部100から与えられた1色分の印刷色データを、対応する第1乃至第5LEDヘッド40乃至44を個別に制御するためのヘッド制御データに変換する。そして第1乃至第5ヘッド制御部121乃至125は、それぞれヘッド制御データを互いに異なるタイミングで、対応する第1乃至第5LEDヘッド40乃至44に送出して、当該ヘッド制御データに基づき、対応する第1乃至第5LEDヘッド40乃至44を制御する。
これにより印刷制御部100は、第5画像形成ユニット14、第4画像形成ユニット13、第3画像形成ユニット12、第2画像形成ユニット11、第1画像形成ユニット10の順で、第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面に、第1乃至第5LEDヘッド40乃至44により静電潜像を形成しながら、第1乃至第5現像ローラ45乃至49により当該静電潜像を、対応する1色のトナーによって現像してトナー画像を形成し始める。よって印刷制御部100は、転写ユニット15において転写ベルト73の外周面に、これら第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14により第1乃至第5感光ドラム30乃至34の外周面に形成されたトナー画像を、イエローのトナー画像、マゼンタのトナー画像、シアンのトナー画像、ブラックのトナー画像、クリアのトナー画像の順で重ねるように転写する。この際、印刷制御部100は、転写ベルト73の他回転方向への回転により当該転写ベルト73の外周面の5色のトナー画像を2次転写位置まで搬送すると共に、媒体供給用搬送路を介して印刷媒体5を2次転写位置まで搬送することで、引き続き印刷媒体5を転写ベルト73と2次転写ローラ79の間に挟み込むようにして搬送しながら、当該転写ベルト73の外周面の5色のトナー画像を印刷媒体5の表面に転写して、そのトナー画像を転写した印刷媒体5を定着ユニット16に引き渡す。そして印刷制御部100は、定着ユニット16において、その印刷媒体5を加熱ローラ86及び加圧ローラ87の間に挟み込むようにして搬送しながら加熱及び加圧することにより、当該印刷媒体5の表面に5色のトナー画像を一旦溶融させるようにして定着させてカラーの印刷画像を形成した後、その印刷画像を形成した印刷媒体5を、媒体排出用搬送路を介して媒体排出口2CYまで搬送して媒体受渡部2CXへ排出する。このようにして印刷制御部100は、媒体受渡部2CXを介してユーザに、表面にカラーの印刷画像が形成された印刷媒体5を引き渡すことができる。
(1−3)トナーの構成
カラープリンタ1では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びクリアの5色のトナーのうちイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナーを、印刷画像形成用の基準色として、その印刷画像のイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色や、これら以外の色のように種々の色を表現するために用いている。またカラープリンタ1では、これらイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びクリアの5色のトナーのうちクリアのトナーを、印刷画像形成用の特別色として、その印刷画像の全体や特定の部分に光沢を持たせるために用いている。因みに、以下の説明では、印刷画像形成用の基準色となるイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナーを、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーとも呼び、これらを特に区別する必要がない場合は、これらを個別に又はまとめて基準色トナーとも呼ぶ。また、以下の説明では、そのイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色を、特に区別する必要がない場合、これらを個別に又はまとめて基準色とも呼ぶ。さらに、以下の説明では、クリアのトナーを、クリアトナー、又は特別色トナーとも呼び、そのクリアトナーと、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーとを特に区別する必要がない場合は、これらを個別に又はまとめてトナーとも呼ぶ。
よって基準色トナーについては、何れも印刷画像の種々の色を表現するために例えば、加熱され溶融した際、互いに混ざり合い易いように生成する必要がある。すなわち、基準色トナーは、定着ユニット16により印刷媒体5の表面上で加熱され溶融した際、他の基準色トナーと重ね合わされていない部分では、そのまま本来の色(すなわち、単色である基準色)を表現し、他の基準色トナーの少なくとも1以上と重ね合わされた部分では互いに混ざり合い基準色以外の色(すなわち、2以上の基準色を所定の割合で混合して得られる混色)を表現し得るように生成する必要がある。しかしながら、クリアトナーについては、加熱され溶融した際に基準色トナーと混ざり合い易いように生成されていると、定着ユニット16により印刷媒体5の表面上で基準色トナーと共に加熱され溶融した際、基準色トナーとの境界部分(すなわち、印刷媒体5の表面と平行な方向でクリアトナーと基準色トナーとが隣接する部分)で1又は複数の基準色トナーと混ざり合い、その境界部分に色の滲みを生じさせる可能性がある。このためクリアトナーについては、溶融した際、何れの基準色トナーとも混ざり難いように生成する必要がある。
ところで、トナーの特性を表す種々のパラメータの中には、トナーが加熱により溶融する際の溶解特性を表すものとして溶融度パラメータと呼ばれるものがある。この溶解度パラメータは、物質の分子間力を表す尺度として使用されるものであり、トナーの基本材料(以下、これを基材とも呼ぶ)である樹脂の種類に応じて異なる値になる。そしてトナーは、溶解度パラメータの値が比較的大きいと、溶融した際、水のような特性を示し、これに対して溶解度パラメータの値が比較的小さいと、溶融した際、油のような特性を示す。このため、異なるトナー同士では、互いの溶解度パラメータの値の差が小さいほど溶解度が大きくなり、互いが混ざり(相溶し)易くなる。また異なるトナー同士では、互いの溶解度パラメータの値の差がある程度以上大きいと、溶融した際には水と油のように互いが混ざり難くなる傾向にある。
よって第1の実施の形態では、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーと、クリアトナーとで溶解度パラメータの値が異なれば、印刷画像に色の滲み(すなわち、クリアトナーと基準色トナーとの境界部分にクリアと、基準色や2以上の基準色の混色との滲み)が生じることを防止し得ると考えられる。従って第1の実施の形態では、トナーの溶解度パラメータの値により、印刷画像に色の滲みが生じるか否かを確認するために、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを何れも同一の樹脂を基材として用いて生成した。また第1の実施の形態では、基準色トナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー)の基材である樹脂とは異なる種類の樹脂を基材とするクリアトナーと、当該基準色トナーの基材である樹脂と同一の樹脂を基材とするクリアトナーとを生成した。因みに、以下の説明では、2種類のクリアトナーのうち、基準色トナーの基材である樹脂とは異なる種類の樹脂を基材として用いて生成した一方を、第1クリアトナーとも呼び、基準色トナーの基材である樹脂と同一の樹脂を基材として用いて生成した他方を、第2クリアトナーとも呼び、これらを特に区別する必要がない場合は単にクリアトナーとも呼ぶ。
実際に第1の実施の形態では、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを何れもトナー生成手法としての例えば、以下に示す乳化重合法で生成した。係る乳化重合法では、例えば、イエロートナーを生成する場合、まずスチレン、アクリル酸及びメチルメタクリル酸からスチレンアクリル共重合により基材としてスチレンアクリル樹脂である一次粒子を生成した。次いで乳化重合法では、その一次粒子(すなわち、スチレンアクリル樹脂)を、着色剤としての例えば、PY(ピグミンイエロー)−74、及びワックスとしての例えば、ステアリン酸ステアリルと混合及び凝集することでベーストナーを生成した。続いて乳化重合法では、そのベーストナー100重量部に、外添剤としての例えば、疎水性シリカ微粉末「R−972」(日本アエロジル社製)1.0重量部と、疎水性シリカ微粉末「RY−50」(日本アエロジル社製)1.5重量部と、導電性微粉末である酸化チタンとを加えて混合機(例えば、三井鉱山株式会社製のヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、篩にかけてイエロートナーを生成した。
また第1の実施の形態では、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーについてもイエロートナーの基材と同様のスチレンアクリル樹脂を基材として、着色剤が異なるだけで当該イエロートナーを生成する場合と同様に生成した。因みに、マゼンタトナーの生成には、イエロートナー用の着色剤(すなわち、この場合はPY(ピグミンイエロー)−74)に換えてマゼンタトナー用の着色剤としての例えば、PR(ピグミンレッド)−122を用いた。またシアントナーの生成には、イエロートナー用の着色剤に換えてシアントナー用の着色剤としての例えば、PB(ピグミンブルー)−15:3を用いた。さらにブラックトナーの生成には、イエロートナー用の着色剤に換えてブラックトナー用の着色剤としての例えば、カーボンブラックを用いた。なお、第1の実施の形態では、第2クリアトナーも乳化重合法により、基準色トナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー)の基材と同様のスチレンアクリル樹脂を基材とし、着色剤を特には用いないだけで当該基準色トナーを生成する場合と同様に生成した。
また第1の実施の形態では、第1クリアトナーについては、トナー生成手法としての例えば、以下に示す粉砕法で生成した。係る粉砕法では、例えば、まず基材としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mn=3700、ガラス転移温度Tg=62[℃])100重量部を、帯電制御剤としての例えば、サリチル酸錯体1重量部、及び離型剤(ガラス転移温度Tg=100[℃])10重量部と混合機(例えば、三井三池化工機株式会社製のヘンシェルミキサー)を用いて十分に撹拌混合して混合物を生成した。次いで粉砕法では、その混合物をオープンロール型連続混連機(例えば、三井鉱山株式会社製のニーデックス)を用いて100[℃]の温度で約3時間加熱溶融混連した後、室温まで冷却し、得られた混連物を、ジェット気流を利用する衝突版粉砕機(例えば、日本ニューマチック工業株式会社製のディスパージョンセパレータ)を用いて粉砕し、引き続き遠心力を利用する風力ロータ回転型乾式気流分級機(例えば、ホソカワミクロン社製のミクロンセパレータ)を用いて分級を行ってベーストナーを生成した。続いて粉砕法では、そのベーストナー100重量部に、上述した基準色トナーを生成する場合と同様の外添剤を加えて混合機(例えば、三井鉱山株式会社製のヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、篩にかけて第1クリアトナーを生成した。
そして第1の実施の形態では、このようにして生成したイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー、第1クリアトナー及び第2クリアトナー各々の溶解度パラメータの値を、以下に示す濁点滴法と呼ばれる測定手法で求めた。係る測定手法は、良溶媒にトナーを溶解させ、これに貧溶媒を順次滴下するようにして白濁を生じるまでに要した貧溶媒の量(すなわち、体積)を測定する工程を、溶解度パラメータの比較的小さい第1の貧溶媒と、これよりも溶解度パラメータの比較的大きい第2の貧溶媒とを別々に用いて行い、その測定結果を基にトナーの溶解度パラメータを測定するものである。
より具体的に説明すると、係る測定手法では、例えば、イエロートナーについて溶解度パラメータを測定する場合、まず、100[ml]のビーカに0.5[g]のイエロートナーを量り取りアセトン10[ml]で溶解させるようにして溶解液を生成し、その溶解液を生成したビーカを2個用意する。次いで、係る測定手法では、一方のビーカに、溶解液を撹拌しながら、ビュレットを用いて例えば、n−ヘキサンのような第1の貧溶媒を滴下していき、その溶解液が白濁するまでに要した第1の貧溶媒の体積を測定した。また係る測定手法では、他方のビーカに、溶解液を撹拌しながら、ビュレットを用いて例えば、脱イオン水のような第2の貧溶媒を滴下していき、その溶解液が白濁するまでに要した第2の貧溶媒の体積を測定した。因みに、第1の実施の形態では、その測定を何れも20[℃]の恒温室で行った。
続いて、第1の実施の形態では、イエロートナーの溶解度パラメータδy[(cal/cm3)1/2]を、この際に測定した第1の貧溶媒の体積Vml[ml]及び第2の貧溶媒の体積Vmh[ml]と共に、その第1の貧溶媒の溶解度パラメータδml[(cal/cm3)1/2]及び第2の貧溶媒の溶解度パラメータδmh[(cal/cm3)1/2]を用いて、(1)式
によって求めた。また第1の実施の形態では、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの溶解度パラメータと、第1クリアトナーの溶解度パラメータと、第2クリアトナーの溶解度パラメータとについても、イエロートナーの場合と同様に求めた。その結果、イエロートナーの溶解度パラメータδyは、16.4[(cal/cm3)1/2]であり、マゼンタトナーの溶解度パラメータδmは、16.5[(cal/cm3)1/2]であり、シアントナーの溶解度パラメータδcは、16.8[(cal/cm3)1/2]であり、ブラックトナーの溶解度パラメータδkは、16.2[(cal/cm3)1/2]であった。また第1クリアトナーの溶解度パラメータδcl1は、10.1[(cal/cm3)1/2]であり、第2クリアトナーの溶解度パラメータδcl2は、16.1[(cal/cm3)1/2]であった。
このようにして第1の実施の形態では、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーと、第2クリアトナーとを何れも基材として同一のスチレンアクリル樹脂を用いることで、溶解度パラメータδy、δm、δc、δk、δcl2がほぼ等しい値を有するように生成した。なお第1の実施の形態では、これらイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーと、第2クリアトナーとを、同一のスチレンアクリル樹脂を基材として用いて生成しているものの、互いの溶解度パラメータδy、δm、δc、δk、δcl2の値に僅かな差が生じたが、この差は測定誤差であり、実質的には溶解度パラメータδy、δm、δc、δk、δcl2の値が等しいものと考えられる。また第1の実施の形態では、第1クリアトナーを、基準色トナー及び第2クリアトナーの基材とは異なるポリエステル樹脂を基材として用いることで、溶解度パラメータδcl1の値が、これら基準色トナー及び第2クリアトナーの溶解度パラメータδy、δm、δc、δk、δcl2の値とは比較的大きな差を有するように生成した。
(1−4)評価試験
次いで、基準色トナーであるイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーと共に、その基準色トナーとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーや、当該基準色トナーと溶解度パラメータの値がほぼ等しい第2クリアトナーを用いて実施した、印刷画像に色の滲みが生じるか否かを評価するための評価試験について説明する。係る評価試験は、上述したカラープリンタ1を用いて、印刷媒体5に印刷画像を形成することで、その印刷画像に色の滲みが生じるか否かを評価することとした。ただし、係る評価試験では、クリアトナーと基準色トナーとの境界部分における色の滲みの有無を確認し易くするために、印刷媒体5として例えば、A4サイズの白色の普通紙(例えば、沖データ製のエクセレントホワイト紙(坪量=80[g/m2]、PPR−CA4NA、短辺210[mm]×長辺297[mm])を用いた。
また評価試験では、クリアトナーと基準色トナーとの境界部分における色の滲みの有無を確認し易くするために例えば、カラープリンタ1により、その普通紙を搬送方向の下流側に一方の長辺を向けた搬送姿勢で搬送しながら、当該普通紙の表面に印刷画像として、図7及び図8(A)乃至(D)に示すような評価パターン(以下、これを第1評価パターンとも呼ぶ)を形成(すなわち、印刷)することにした。この場合、第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、搬送方向の下流側の左隅を原点とし、長辺をX軸、短辺をY軸とすると、当該普通紙5Aの表面においてX軸方向の1.0[cm]の位置から14.0[cm]の位置までとY軸方向の1.0[cm]の位置から5.0[cm]の位置までとの長方形の第1領域を、ブラックトナーK1の付着領域(すなわち、ブラックトナーK1のみをべた塗りの状態で付着させる領域)としている。また第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の16.0[cm]の位置から29.0[cm]の位置までとY軸方向の1.0[cm]の位置から5.0[cm]の位置までとの長方形の第2領域を、イエロートナーY1の付着領域(すなわち、イエロートナーY1のみをべた塗りの状態で付着させる領域)としている。さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の1.0[cm]の位置から14.0[cm]の位置までとY軸方向の6.0[cm]の位置から10.0[cm]の位置までとの長方形の第3領域を、マゼンタトナーM1の付着領域(すなわち、マゼンタトナーM1のみをべた塗りの状態で付着させる領域)としている。さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の16.0[cm]の位置から29.0[cm]の位置までとY軸方向の6.0[cm]の位置から10.0[cm]の位置までとの長方形の第4領域を、シアントナーC1の付着領域(すなわち、シアントナーC1のみをべた塗りの状態で付着させる領域)としている。
さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の1.0[cm]の位置から14.0[cm]の位置までとY軸方向の11.0[cm]の位置から15.0[cm]の位置までとの長方形の第5領域を、シアントナーC1、マゼンタトナーM1及びイエロートナーY1の付着領域(すなわち、シアントナーC1、マゼンタトナーM1及びイエロートナーY1を順次べた塗りの状態で重ね合わせて付着させる領域)としている。さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の16.0[cm]の位置から29.0[cm]の位置までとY軸方向の11.0[cm]の位置から15.0[cm]の位置までとの長方形の第6領域を、マゼンタトナーM1及びイエロートナーY1の付着領域(すなわち、マゼンタトナーM1及びイエロートナーY1を順次べた塗りの状態で重ね合わせて付着させる領域)としている。さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の1.0[cm]の位置から14.0[cm]の位置までとY軸方向の16.0[cm]の位置から20.0[cm]の位置までとの長方形の第7領域を、シアントナーC1及びマゼンタトナーM1の付着領域(すなわち、シアントナーC1及びマゼンタトナーM1を順次べた塗りの状態で重ね合わせて付着させる領域)としている。さらに第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、X軸方向の16.0[cm]の位置から29.0[cm]の位置までとY軸方向の16.0[cm]の位置から20.0[cm]の位置までとの長方形の第8領域を、シアントナーC1及びイエロートナーY1の付着領域(すなわち、シアントナーC1及びイエロートナーY1を順次べた塗りの状態で重ね合わせて付着させる領域)としている。
さらにまた第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、上下左右のそれぞれ5[mm]幅の領域を余白としている。すなわち、第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において上下左右のそれぞれ5[mm]幅の領域を、トナーを全く付着させない領域としている。因みに、以下の説明では、普通紙5Aの表面において余白となる領域を、余白領域とも呼ぶ。そして第1評価パターンでは、普通紙5Aの表面において例えば、余白領域と共に第1領域乃至第8領域を除く残りの第9領域(すなわち、第1領域乃至第8領域の周囲で、これらと余白領域との間の領域)を、第1クリアトナーCL1、第2クリアトナーCL2の付着領域(すなわち、基準色トナーに隣接させて第1クリアトナーCL1及び第2クリアトナーCL2の何れか一方のみをべた塗りの状態で付着させる領域)としている。因みに、図7は、普通紙5Aの表面と共に、その表面上の第1評価パターンを示している。また図8(A)乃至(D)は、普通紙5Aと共に第1評価パターンを、図7に矢印A−A’で示す位置(例えば、Y軸方向へ4.0[cm]の位置)、矢印B−B’で示す位置(例えば、Y軸方向へ9.0[cm]の位置)、矢印C−C’で示す位置(例えば、Y軸方向へ14.0[cm]の位置)、及び矢印D−D’で示す位置(例えば、Y軸方向へ19.0[cm]の位置)でそれぞれX軸方向と平行な断面をとって示している。
ところで、上述した印刷画像に生じる色の滲みは、印刷媒体5の表面上で基準色トナー及びクリアトナーを加熱及び加圧して一旦溶融させることに起因するものである。このため、係る評価試験では、普通紙5Aの表面上で第1評価パターンとして基準色トナー及びクリアトナーを加熱及び加圧する際の加熱温度及びニップ圧を適宜選定した。実際に評価試験では、既存のカラープリンタにより印刷媒体の表面上で基準色トナーを加熱する際の170[℃]乃至180[℃]の範囲の加熱温度を参考にして、その範囲よりも広い例えば、150[℃]乃至210[℃]の範囲から10[℃]間隔の7種類の温度(すなわち、150[℃]、160[℃]、170[℃]、180[℃]、190[℃]、200[℃]、210[℃])を、普通紙5Aの表面上で第1評価パターンとして基準色トナー及びクリアトナーを加熱するための加熱温度として選定した。また係る評価試験では、既存のカラープリンタにより印刷媒体の表面上で基準色トナーを加圧する際の2.0[kg/cm2]乃至3.0[kg/cm2]の範囲のニップ圧を参考にして、その範囲よりも広い例えば、1.5[kg/cm2]乃至4.0[kg/cm2]の範囲から0.5[kg/cm2]間隔の6種類の圧力(すなわち、1.5[kg/cm2]、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]、4.0[kg/cm2])を、普通紙5Aの表面上で第1評価パターンとして基準色トナー及びクリアトナーを加圧するためのニップ圧として選定した。また評価試験では、その選定した7種類の加熱温度をそれぞれ、その選定した6種類のニップ圧と組み合わせて、定着ユニット16により基準色トナー及びクリアトナーを加熱及び加圧するための条件(以下、これを加熱加圧条件とも呼ぶ)とした。そして評価試験では、普通紙5Aの表面にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1や第2クリアトナーCL2により第1評価パターンを形成するためのパターン形成条件を、それぞれ複数種類の加熱加圧条件を含むものの、加熱温度で大別した7種類とした。因みに、以下の説明では、これら7種類のパターン形成条件を、第1乃至第7パターン形成条件とも呼ぶ。
ここで、図9乃至図11を用いて、第1乃至第7パターン形成条件について具体的に説明する。第1パターン形成条件では、第1評価パターンの形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1とを用いる場合、加熱加圧条件を150[℃]の加熱温度と、1.5[kg/cm2]、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]、4.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた6種類とした。ただし、第2クリアトナーCL2については、上述したように基準色トナーと溶解度パラメータの値がほぼ等しいため、定着ユニット16で加熱及び加圧した際に基準色トナーと混ざり合う可能性が著しく高いと考えられる。このため第1パターン形成条件では、第1評価パターンの形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第2クリアトナーCL2とを用いる場合、加熱加圧条件を150[℃]の加熱温度と2.5[kg/cm2]のニップ圧とを組み合わせた1種類のみとした。
また第2パターン形成条件では、第1評価パターンの形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1とを用いる場合、加熱加圧条件を160[℃]の加熱温度と、1.5[kg/cm2]、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]、4.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた6種類とした。ただし、第2パターン形成条件でも、第1評価パターンの形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第2クリアトナーCL2とを用いる場合、第1パターン形成条件で説明した理由と同様の理由から、加熱加圧条件を160[℃]の加熱温度と2.5[kg/cm2]のニップ圧と組み合わせた1種類のみとした。さらに第3乃至第7パターン形成条件は、第1及び第2パターン形成条件の場合と加熱加圧条件としての加熱温度が異なるだけで、それ以外は当該第1及び第2パターン形成条件と同様である。因みに、第3パターン形成条件では、加熱温度が170[℃]であり、第4パターン形成条件では、加熱温度が180[℃]であり、第5パターン形成条件では、加熱温度が190[℃]である。また第6パターン形成条件では、加熱温度が200[℃]であり、第7パターン形成条件では、加熱温度が210[℃]である。
また第1乃至第7パターン形成条件では、何れも、定着ユニット16でトナーを加熱及び加圧するときの普通紙5Aの送り速度(すなわち、加熱ローラ86及び加圧ローラ87により普通紙5Aを挟み込むようにして搬送しながらトナーを加熱及び加圧するときの当該加熱ローラ86及び加圧ローラ87による普通紙5Aの送り速度)を例えば、140[mm/sec]の線速度とした。因みに、140[mm/sec]の線速度は、例えば、1分間に第1評価パターンを形成可能なA4サイズの普通紙5Aの枚数に換算すると、37枚程度となる速度である。
実際に評価試験では、このような第1乃至第7パターン形成条件に従い普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成するにあたり、まずカラープリンタ1において第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14に、第1クリアトナーCL1、ブラックトナーK1、シアントナーC1、マゼンタトナーM1、イエロートナーY1を100[g]ずつ収容した対応する第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29を装着し、その第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14をトナー画像が形成可能な状態にした。そして評価試験では、そのカラープリンタ1を、普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成する際の例えば、温度が23[℃]で湿度が55[%]の環境(以下、これをパターン形成環境とも呼ぶ)で一晩(例えば、12時間以上)放置した。
そのうえで評価試験では、第1パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の上述した6種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。次いで、評価試験では、第2パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の上述した6種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。続いて、評価試験では、第3乃至第7パターン形成条件に順次従って同様に、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。
このようにして評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を用いた第1評価パターンの形成が全て終了すると、カラープリンタ1において第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14を、対応する第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29を装着する前の状態に戻した。そして評価試験では、そのカラープリンタ1において第2乃至第5画像形成ユニット11乃至14に、再びブラックトナーK1、シアントナーC1、マゼンタトナーM1、イエロートナーY1を100[g]ずつ収容した対応する第2乃至第5トナーカートリッジ26乃至29を装着する。また評価試験では、この際、カラープリンタ1において第1画像形成ユニット10には、100[g]の第2クリアトナーCL2を収容した第1トナーカートリッジ25を装着する。このようにして評価試験では、カラープリンタ1において、これら第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14をトナー画像が形成可能な状態にし、そのカラープリンタ1を上述と同様にパターン形成環境で一晩(例えば、12時間以上)放置した。
そのうえで評価試験では、第1パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の上述した1種類の加熱加圧条件で、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。次いで、評価試験では、第2パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の上述した1種類の加熱加圧条件で、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。続いて、評価試験では、第3乃至第7パターン形成条件に順次従って同様に、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2により普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した。
そして評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第2クリアトナーCL2を用いた第1評価パターンの形成が全て終了すると、引き続き、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1や第2クリアトナーCL2を用いて形成した第1評価パターンの全てについて色の滲みの有無を確認した。また評価試験では、その確認結果をもとに、普通紙5Aの表面に対する第1評価パターンの形成状態を評価した。因みに、以下の説明では、色の滲みの有無の確認結果に基づいて行った普通紙5Aの表面に対する第1評価パターンの形成状態の評価を、第1評価とも呼ぶ。
実際に評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンにおいてクリアトナーの付着領域である第9領域と、基準色トナーの付着領域である第1領域乃至第8領域との境界部分に色の滲みが生じているか否かを例えば、目視により確認した。その結果、評価試験では、第1評価パターンにおいて第9領域と第1領域乃至第8領域との境界部分の何処にも色の滲みが生じていないことを確認し得た場合、その第1評価パターンの形成状態が良好であると評価した。また評価試験では、第1評価パターンにおいて第1領域乃至第8領域の基準色トナーが第9領域のクリアトナーへ広がるように混ざり込む等して、その第9領域と第1領域乃至第8領域との境界部分の少なくとも1箇所以上で色の滲みが生じて基準色や2以上の基準色の混色の輪郭がぼやけていることを確認した場合、その第1評価パターンの形成状態が不良であると評価した。因みに、図9乃至図11には、第1評価の欄に、第1評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの第1評価の結果を示している。
次いで、評価試験では、複数の普通紙5Aの表面に形成した第1評価パターン(すなわち、色の滲みの有無を確認した第1評価パターン)の全てについて、その表面に対するトナーの定着性を確認した。ここで、評価試験で実施したトナーの定着性の確認の仕方について具体的に説明する前に、普通紙5Aのような印刷媒体5の表面に対する基準色トナーやクリアトナーのようなトナーの定着について説明する。まず、印刷媒体5の表面に付着したトナーには、定着ユニット16で加熱及び加圧されて溶融した場合、そのトナーの分子間に互いに引き合うような第1の力が作用しつつ、印刷媒体5から引っ張られるような(すなわち、印刷媒体5の表面にしみ込もうとする)第2の力が作用し、また加熱ローラ86から引っ張られるような(すなわち、加熱ローラ86の表面に付着しようとする)第3の力も作用すると考えられる。そして印刷媒体5の表面に付着したトナーは、加熱及び加圧により適切な熱量が加えられて溶融すると、第1乃至第3の力が適切なバランスで作用することで、その印刷媒体5の表面にのみ、付着した際の形状をほぼ保ったまま浸潤して良好に定着した状態になる。
しかしながら、印刷媒体5の表面に付着したトナーは、例えば、加熱及び加圧により適切な熱量よりも比較的小さい熱量が加えられて溶融すると、これに作用する第2及び第3の力が比較的小さくなり、その印刷媒体5の表面にのみではあるが剥離し易い状態で付着するような定着不良が生じる。なお、このような定着不良が生じた場合、印刷媒体5の表面上のトナーは、手や他の印刷媒体5等で擦られると徐々に剥離する。その結果、印刷媒体5の表面上のトナーは、基準色や2以上の基準色の混色を表現しているような場合、その基準色や混色の濃度を低下させることになる。また印刷媒体5の表面に付着したトナーは、例えば、加熱及び加圧により適切な熱量よりも比較的大きい熱量が加えられて溶融すると、これに作用する第2及び第3の力が比較的大きくなるため、印刷媒体5の表面にある程度は浸潤して定着するものの、加熱ローラ86の表面にも付着する。そして加熱ローラ86の表面に付着したトナーは、この際、加熱ローラ86が回転しているため、その表面から印刷媒体5の表面の本来の付着領域とは異なる箇所に転移するようにして定着して印刷不良(以下、これをホットオフセットとも呼ぶ)を発生させることになる。
このため評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンの全てについて例えば、目視により基準色トナー及びクリアトナーのホットオフセットの発生の有無を確認した。また評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンの全てについて例えば、テープ剥離法と呼ばれる定着率測定手法により当該普通紙5Aの表面に対する基準色トナーの定着率を測定するようにして定着不良の有無を確認した。実際に定着率測定手法では、濃度測定機(例えば、X−Rite社製のX−rite528)を用いて、普通紙5Aの表面上の第1評価パターンにおいて基準色トナーの付着領域である第1領域乃至第8領域それぞれの例えば、一対の対角線の交点位置を濃度測定位置とし、これら第1領域乃至第8領域毎の濃度測定位置で基準色や2以上の基準色の混色の濃度(以下、これを第1濃度とも呼ぶ)を測定した。次いで定着率測定手法では、普通紙5Aの表面上の第1評価パターンにおいて第1領域乃至第8領域毎の濃度測定位置に粘着テープ(例えば、住友スリーエム株式会社製のスコッチテープ 型番810)を貼り付け、当該粘着テータ上で例えば、500[g]の重りを一往復させた後、その粘着テープを剥がし、再び同様の濃度測定機を用いて、これら第1領域乃至第8領域毎の濃度測定位置で基準色や混色の濃度(以下、これを第2濃度とも呼ぶ)を測定した。因みに、定着率測定手法では、普通紙5Aの表面上の第1評価パターンに貼り付けた粘着テープに重りを載せた際、その粘着テープに真上から重りの自重以外の外力は加えずに、当該粘着テープ上で重りを例えば、10[mm/sec]程度の移動速度で一往復させた。そして定着率測定手法では、第1領域乃至第8領域毎に濃度測定位置での基準色トナーの定着率FRを、第1濃度OD1と第2濃度OD2とを用いて、(2)式
で表されるように、粘着テープを貼り付ける前と剥がした後とでの基準色トナーの濃度の変化率として求めた。そして評価試験では、普通紙5Aの表面に形成した第1評価パターンの第1領域乃至第8領域の全てで定着率FRが90[%]であると、その普通紙5Aの表面上の第1評価パターンには基準色トナーの定着不良が生じていないと判別した。これに対し評価試験では、普通紙5Aの表面に形成した第1評価パターンの第1領域乃至第8領域の少なくとも1つ以上で定着率FRが90[%]未満であると、その普通紙5Aの表面上の第1評価パターンには基準色トナーの定着不良が生じていると判別した。このようにして評価試験では、ホットオフセットの発生の有無及び定着不良の有無を確認すると、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンのうち、基準色トナーの定着不良は生じていないと判別し、かつホットオフセットが発生していないことを確認し得た第1評価パターンについては形成状態が良好であると評価した。また評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンのうち、基準色トナーの定着不良が生じていると判別した第1評価パターンについては、ホットオフセットの発生の有無に関わらずに形成状態が不良であると評価した。さらに評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンのうち、ホットオフセットが発生していることを確認した第1評価パターンについては、基準色トナーの定着不良の有無に関わらずに形成状態が不良であると評価した。因みに、以下の説明では、定着不良の有無及びホットオフセットの発生の有無に基づいて行った普通紙5Aの表面に対する第1評価パターンの形成状態の評価を、第2評価とも呼ぶ。なお、図9乃至図11には、第2評価の欄に、第1評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの第2評価の結果を示している。
このようにして評価試験では、複数の普通紙5Aの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンについて第1評価及び第2評価を得ると、これらをもとにして、第1評価パターン毎に、その形成状態を総合評価した。すなわち、評価試験では、第1評価パターンに対する第1評価及び第2評価の双方が良好であった場合、その第1評価パターンの形成状態が総合的にも良好であると評価した。これに対し評価試験では、第1評価パターンに対する第1評価及び第2評価の少なくとも一方が不良であった場合、その第1評価パターンの形成状態が総合的には不良であると評価した。因みに、図9乃至図11には、総合評価の欄に、第1評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの総合評価の結果を示している。
ここで、評価試験による評価結果(図9乃至図11)について説明する。まず評価試験によれば、第1パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第1評価は何れも良好であったが、第2評価は何れも不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成に、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を150[℃]とした6種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
ところで、係る評価試験では、その6種類の加熱加圧条件それぞれで形成した第1評価パターンの第2評価は何れも不良であったが、これは加熱温度が150[℃]と比較的低いことに起因して、加熱及び加圧によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1に加えた熱量が比較的小さかったため、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1の溶融が不十分となり定着不良が生じたためである。このため評価試験では、その6種類の加熱加圧条件それぞれで形成した第1評価パターンの第1評価が何れも良好であったが、これはイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、第1クリアトナーCL1との溶解度パラメータの値が異なるために色の滲みが生じなかったのではなく、溶融が不十分であり互いが混ざり合わなかったことで、色の滲みが生じなかったためであると考えられる。
因みに、評価試験によれば、第1パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合も第1評価は良好であったが、第2評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、加熱温度を150[℃]とした加熱加圧条件では、印刷画像の形成に用いるトナーの組み合わせとして、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2は適さないことが分かった。
なお、係る評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第2クリアトナーCL2により第1評価パターンを形成した場合、第2評価が不良であったが、これは、第1クリアトナーCL1を用いた場合と同様に加熱温度が150[℃]と比較的低いために、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2の溶融が不十分となり定着不良が生じたためである。よって評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第2クリアトナーCL2により第1評価パターンを形成した場合、第1評価は良好であったが、これもイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2の溶融が単に不十分であり互いが混ざり合わなかったことで、色の滲みが生じなかったためであると考えられる。
また評価試験によれば、第2パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]のニップ圧では何れも第1評価が良好であり、第2評価も良好であったため、総合評価は良好とした。ただし、評価試験によれば、1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であっても、第2評価が不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を160[℃]としニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]とした4種類の加熱加圧条件は色の滲みを生じず印刷画像の形成に適するものの、加熱温度を160[℃]としニップ圧を1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]とした2種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験によれば、第2パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第1評価及び第2評価の何れもが不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を160[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
さらに評価試験によれば、第3パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合も、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であり、第2評価も良好であったため、総合評価は良好とした。また評価試験によれば、1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であったが、第2評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を170[℃]としニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]とした4種類の加熱加圧条件は色の滲みを生じず印刷画像の形成に適するものの、加熱温度を170[℃]としニップ圧を1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]とした2種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験によれば、第3パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第2評価は良好であったが、第1評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を170[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
さらに評価試験によれば、第4パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合も、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であり、第2評価も良好であったため、総合評価は良好とした。また評価試験によれば、1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価は良好であったが、第2評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を180[℃]としニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]及び3.5[kg/cm2]とした4種類の加熱加圧条件は色の滲みを生じず印刷画像の形成に適するものの、加熱温度を180[℃]としニップ圧を1.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]とした2種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験によれば、第4パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第2評価は良好であったが、第1評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を180[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
さらに評価試験によれば、第5パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]及び3.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であり、第2評価も良好であったため、総合評価は良好とした。また評価試験によれば、1.5[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価は良好であったが、第2評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を190[℃]としニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]及び3.0[kg/cm2]とした3種類の加熱加圧条件は色の滲みを生じず印刷画像の形成に適するものの、加熱温度を190[℃]としニップ圧を1.5[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]とした3種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験によれば、第5パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第2評価は良好であったが、第1評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を190[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
さらに評価試験によれば、第6パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]及び3.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価が良好であり、第2評価も良好であったため、総合評価は良好とした。また評価試験によれば、1.5[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]のニップ圧では第1評価は良好であったが、第2評価は不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を200[℃]としニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]及び3.0[kg/cm2]とした3種類の加熱加圧条件は色の滲みを生じず印刷画像の形成に適するものの、加熱温度を200[℃]としニップ圧を1.5[kg/cm2]、3.5[kg/cm2]及び4.0[kg/cm2]とした3種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験によれば、第6パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第1評価及び第2評価の何れも不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を200[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
さらにまた評価試験によれば、第7パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の6種類の加熱加圧条件それぞれで普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第1評価は何れも良好であったが、第2評価は何れも不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1を用いる場合、加熱温度を210[℃]とした6種類の加熱加圧条件は印刷画像の形成に適さないことが分かった。
因みに、評価試験では、その6種類の加熱加圧条件それぞれで形成した第1評価パターンの第2評価は何れも不良であったが、これは加熱温度が200[℃]と比較的高いことに起因して、加熱及び加圧によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1に加えた熱量が比較的大きかったため、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1の溶融が進みすぎホットオフセットが発生したためである。このため評価試験では、その6種類の加熱加圧条件それぞれで形成した第1評価パターンには何れも色の滲みが生じず第1評価は良好であったが、これはイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、第1クリアトナーCL1との溶解度パラメータの値が異なることに起因したものであると考えられる。
なお、評価試験によれば、第7パターン形成条件に従い、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2用の1種類の加熱加圧条件で普通紙5Aの表面に第1評価パターンを形成した場合、第1評価及び第2評価の何れも不良であったため、総合評価は不良とした。よって係る評価試験によれば、印刷画像の形成にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第2クリアトナーCL2を用いる場合、加熱温度を210[℃]とした加熱加圧条件でも、その印刷画像に色の滲みが生じることが分かった。
以上のことから、係る評価試験によれば、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と共に、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1を用いても、印刷画像を形成し得ることが分かった。そして係る評価試験によれば、その基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の溶解度パラメータδst(すなわち、溶解度パラメータδy、δm、δc、δk)の値と、第1クリアトナーCL1の溶解度パラメータδcl1の値とが、(3)式
で表されるように、6.1[(cal/cm3)1/2]以上の差を有していると、印刷画像において第1クリアトナーCL1の付着領域と基準色トナーの付着領域との境界部分に色の滲みが生じることを防止し得ることも分かった。さらに係る評価試験によれば、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と共に第1クリアトナーCL1により印刷画像を形成する場合、定着ユニット16による基準色トナー及び第1クリアトナーCL1の加熱温度Ftを(4)式
で表されるように、160[℃]乃至200[℃]の範囲内の温度に設定し、かつ当該定着ユニット16による基準色トナー及び第1クリアトナーCL1のニップ圧Fpを(5)式
で表されるように、2.0[kg/cm2]乃至3.0[kg/cm2]の範囲内の圧力に設定すると、印刷媒体5の表面に基準色トナーと第1クリアトナーCL1とを良好に定着させた状態(すなわち、十分な定着性を有する状態)で印刷画像を形成し得ることも分かった。
なお、係る評価試験では、定着ユニット16での加熱温度やニップ圧が比較的高いと、基準色トナー及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧した際に、これらに加わる熱量が比較的大きくなるために、当該基準色トナー及び第1クリアトナーCL1が溶融し易くなり、ホットオフセットが発生し易くなったと考えられる。これに対し評価試験では、定着ユニット16での加熱温度やニップ圧が比較的低いと、基準色トナー及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧した際に、これらに加わる熱量が比較的小さくなるために、当該基準色トナー及び第1クリアトナーCL1が溶融し難くなり、定着不良が発生し易くなった(すなわち、定着性が低下した)と考えられる。そして評価試験では、溶解度パラメータ、加熱温度及びニップ圧が上述した(3)式乃至(5)式の条件を満たす場合、基準色トナー及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧した際に、これらに加わる熱量が最適となるため、基準色トナーが第1クリアトナーCL1に混ざり込む等して生じる色の滲みを抑制することと、当該基準色トナー及び第1クリアトナーCL1の良好な定着性とを両立させ得たと考えられる。
(1−5)第1の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、カラープリンタ1では、それぞれ溶解度パラメータの値がほぼ等しいイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が例えば、6.1[(cal/cm3)1/2]の差を有するように異なる第1クリアトナーCL1とにより印刷媒体5の表面に印刷画像を形成した。従ってカラープリンタ1では、印刷媒体5の表面に付着したイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧して溶融させた際、その印刷媒体5の表面で第1クリアトナーCL1が、これに隣接するイエロートナーY1やマゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1と混ざり合うことを防止して、当該第1クリアトナーCL1とイエロートナーY1やマゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1との境界部分に色の滲みが生じることを防止することができる。
以上の構成によれば、カラープリンタ1は、それぞれ溶解度パラメータの値がほぼ等しいイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1とにより印刷媒体5の表面に印刷画像を形成するようにした。これによりカラープリンタ1は、印刷媒体5の表面に付着したイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧して溶融させた際、第1クリアトナーCL1とイエロートナーY1やマゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1との境界部分に互いが混ざり合って色の滲みが生じることを防止することができる。従ってカラープリンタ1は、印刷画像の画質の劣化を防止することができる。
ところで、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1や第1クリアトナーCL1の溶解度パラメータの値は、これらの基材としての樹脂の種類によりほぼ一意に決まるものである。そしてカラープリンタ1では、スチレンアクリル樹脂を基材として生成したイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、ポリエステル樹脂を基材として生成した第1クリアトナーCL1とを印刷画像の形成に用いるようにした。従ってカラープリンタ1では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1とを、これらの溶解度パラメータの値をほとんど変化させずに印刷画像の形成に用いることができる。よってカラープリンタ1では、例えば、第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29内のイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を印刷画像の形成に使い切る前に、印刷画像に色の滲みが生じて画質が劣化しだすことを防止することができる。
またカラープリンタ1では、定着ユニット16による加熱温度及びニップ圧を、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1を印刷画像の形成に用いる場合に最適である160[℃]乃至200[℃]の範囲内の温度、及び2.0[kg/cm2]乃至3.0[kg/cm2]の範囲内の圧力に設定するようにした。従ってカラープリンタ1では、印刷媒体5の表面にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1とを良好に定着させた状態で印刷画像を形成することができる。よってカラープリンタ1では、印刷媒体5の表面に形成した印刷画像が他の印刷媒体5との擦れ等によって劣化することも防止することができる。
(2)第2の実施の形態
(2−1)カラープリンタの内部構成及び回路構成
次いで、本発明による第2の実施の形態について説明する。係る第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態によるカラープリンタ1を用いている。よって、ここでは、カラープリンタ1の内部構成及び回路構成については、図1乃至図6を用いて上述した当該カラープリンタ1の内部構成及び回路構成を参照することとして、ここでの説明は省略する。
(2−2)トナーの構成
次いで、カラープリンタ1により印刷画像の形成に用いるトナーについて説明する。第2の実施の形態では、印刷画像の形成に基準色トナーとして、上述した第1の実施の形態で用いたイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1を用いている。また第2の実施の形態では、印刷画像の形成にクリアトナーとして、上述した第1の実施の形態で用いた第1クリアトナーCL1のみを用いている。すなわち、第2の実施の形態では、第1の実施の形態で上述したように第2クリアトナーCL2が、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に印刷画像の形成に用いるクリアトナーとしては適さないことが分かったため、その第2クリアトナーCL2は用いずに第1クリアトナーCL1のみを用いることとした。なお、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1については、既に第1の実施の形態で具体的に説明したため、ここでの説明は省略する。
(2−3)評価試験
近年、印刷媒体5としてTシャツプリント用の転写紙が一般に販売され、これに伴い、市販のカラープリンタを用いて、その転写紙に印刷画像を形成するような機会が増えつつある。この転写紙は、例えば、紙の一面に一様な所定の厚みの樹脂層であるコート層が積層されて形成されており、そのコート層の表面が印刷画像の形成面になっている。ただし、市販のカラープリンタにより転写紙の表面(すなわち、コート層の表面)に印刷画像を形成する場合は、転写紙の表面に付着させた例えば、基準色トナーであるイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーを加熱及び加圧すると、転写紙のコート層に、溶融した基準色トナーが混ざり込み、当該コート層と基準色トナーとの境界部分に色の滲みが生じる場合があった。このため、以下には、カラープリンタ1により、基準色トナーであるイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1を用いて印刷媒体5としての転写紙の表面に印刷画像を形成し、その印刷画像に色の滲みが生じるか否かを評価するための評価試験について説明する。まず、評価試験では、印刷媒体5として例えば、A4サイズの転写紙(例えば、株式会社クイックアート製、EA−CR)を用いた。係る転写紙は、紙の一面に積層されたポリウレタン樹脂層であるコート層の表面が印刷画像の形成面になっており、そのコート層の溶解度パラメータの値は20.5[(cal/cm3)1/2]であった。
また評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分における色の滲みの有無を確認し易くするために例えば、カラープリンタ1により、その転写紙を搬送方向の下流側に一方の長辺を向けた搬送姿勢で搬送しながら、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により転写紙の表面に印刷画像として、図12及び図13(A)乃至(D)に示すような第1評価パターンを形成(すなわち、印刷)することにした。なお、転写紙5Bの表面(すなわち、紙5BX上のコート層5BYの表面)に印刷画像として形成する第1評価パターンは、上述した第1の実施の形態の場合と同様のパターンであるため、ここでは具体的な説明を省略する。また評価試験では、転写紙5Bの表面にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に第1クリアトナーCL1により第1評価パターンを形成する場合の比較用として、カラープリンタ1により、その転写紙5Bを同様の搬送姿勢で搬送しながら、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1のみにより転写紙5Bの表面に印刷画像として、図14及び図15(A)乃至(D)に示すような第2評価パターンも形成(すなわち、印刷)することにした。因みに、第2評価パターンは、そのイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1とコート層5BYとの境界部分における色の滲みの有無を確認し易くするためのものであり、例えば、第1評価パターンにおける第1クリアトナーCL1の付着領域である第9領域が、その第1クリアトナーCL1を何ら付着させない領域となり、それ以外は第1評価パターンと同様である。このため第2評価パターンについては、具体的な説明を省略する。
ところで、上述した第1の実施の形態では、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1とを用いて印刷媒体5の表面に印刷画像を形成する際、定着ユニット16による加熱温度を160[℃]乃至200[℃]の範囲の温度とし、ニップ圧を2.0[kg/cm2]乃至3.0[kg/cm2]の範囲の圧力にすれば、当該印刷媒体5の表面にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1を良好に定着させ得ることが分かった。このため評価試験では、定着ユニット16によりトナーを加熱するための加熱温度を160[℃]、170[℃]、180[℃]、190[℃]、200[℃]の5種類とした。また評価試験では、定着ユニット16によりトナーを加圧するためのニップ圧を2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]の3種類とした。
さらに評価試験では、その選定した5種類の加熱温度をそれぞれ、その選定した3種類のニップ圧と組み合わせて、定着ユニット16の加熱加圧条件とした。そして評価試験では、転写紙5Bの表面に第1評価パターン及び第2評価パターンを形成するためのパターン形成条件を、それぞれ複数種類の加熱加圧条件を含むものの、加熱温度で大別した5種類とした。因みに、以下の説明では、これら5種類のパターン形成条件を、第10乃至第14パターン形成条件とも呼ぶ。
ここで、図16及び図17を用いて、第10乃至第14パターン形成条件について具体的に説明する。第10パターン形成条件では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1とにより第1評価パターンを形成する場合の加熱加圧条件を、160[℃]の加熱温度と、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた3種類とした。また第10パターン形成条件では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1のみにより第2評価パターンを形成する場合の加熱加圧条件も、160[℃]の加熱温度と、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた3種類とした。
第11パターン形成条件では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により第1評価パターンを形成する場合の加熱加圧条件を、170[℃]の加熱温度と、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた3種類とした。また第11パターン形成条件では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1のみにより第2評価パターンを形成する場合の加熱加圧条件も、170[℃]の加熱温度と、2.0[kg/cm2]、2.5[kg/cm2]、3.0[kg/cm2]のニップ圧とをそれぞれ組み合わせた3種類とした。さらに第12乃至第14パターン形成条件では、第10及び第11パターン形成条件の場合と加熱加圧条件としての加熱温度が異なるだけで、それ以外は当該第10及び第11パターン形成条件の場合と同様である。因みに、第12パターン形成条件では、加熱温度が180[℃]であり、第13パターン形成条件では、加熱温度が190[℃]であり、第14パターン形成条件では、加熱温度が200[℃]である。また第10乃至第14パターン形成条件では、何れも上述した第1の実施の形態の場合と同様に、定着ユニット16でトナーを加熱及び加圧するときの転写紙5Bの送り速度を140[mm/sec]の線速度とした。
そして評価試験では、このような第10乃至第14パターン形成条件に従い転写紙5Bの表面に第1評価パターンを形成する際も、上述した第1の実施の形態の場合と同様に、まずカラープリンタ1において第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14に、第1クリアトナーCL1、ブラックトナーK1、シアントナーC1、マゼンタトナーM1、イエロートナーY1を100[g]ずつ収容した対応する第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29を装着し、パターン形成環境で一晩(例えば、12時間以上)放置した。そのうえで評価試験では、第10パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の上述した3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により転写紙5Bの表面に第1評価パターンを形成した。すなわち、この評価試験では、転写紙5Bの表面(すなわち、コート層5BY)にイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1を付着させるものの、第1クリアトナーCL1を、当該表面(すなわち、コート層5BY)を覆うように付着させてイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1がコート層5BYと直接は隣接しないように第1評価パターンを形成した。
次いで、評価試験では、第11パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の上述した3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により転写紙5Bの表面に第1評価パターンを形成した。続いて、評価試験では、第12乃至第14パターン形成条件に順次従って同様に、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1用の3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1により転写紙5Bの表面に第1評価パターンを形成した。
このようにして評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を用いた第1評価パターンの形成が全て終了すると、カラープリンタ1において第1乃至第5画像形成ユニット10乃至14を、対応する第1乃至第5トナーカートリッジ25乃至29を装着する前の状態に戻した。そして評価試験では、そのカラープリンタ1において第2乃至第5画像形成ユニット11乃至14に、再びブラックトナーK1、シアントナーC1、マゼンタトナーM1、イエロートナーY1を100[g]ずつ収容した対応する第2乃至第5トナーカートリッジ26乃至29を装着して、当該第2乃至第5画像形成ユニット11乃至14のみをトナー画像が形成可能な状態にして、そのカラープリンタ1を上述と同様にパターン形成環境で一晩(例えば、12時間以上)放置した。
そのうえで評価試験では、第10パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1用の上述した3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1により転写紙5Bの表面に第2評価パターンを形成した。次いで、評価試験では、第11パターン形成条件に従い、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1用の上述した3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1により転写紙5Bの表面に第2評価パターンを形成した。続いて、評価試験では、第12乃至第14パターン形成条件に順次従って同様に、カラープリンタ1によりイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1用の3種類の加熱加圧条件それぞれで、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1により転写紙5Bの表面に第2評価パターンを形成した。
そして評価試験では、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1を用いた第2評価パターンの形成が全て終了すると、引き続き、この際に形成した第1評価パターン及び第2評価パターンの全てについて例えば、目視により基準色トナーの付着領域である第1領域乃至第8領域と、転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分に対する色の滲みの有無を確認した。また評価試験では、その確認結果をもとに、転写紙5Bの表面に対する第1評価パターン及び第2評価パターンの形成状態を評価した。すなわち、評価試験では、第1評価パターンや第2評価パターンにおいて第1領域乃至第8領域と転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分の何処にも色の滲みが生じていないことを確認し得た場合、その第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が良好であると評価した。また評価試験では、第1評価パターンや第2評価パターンにおいて第1領域乃至第8領域の基準色トナーが転写紙5Bのコート層5BYへ広がるように混ざり込む等して、その第1領域乃至第8領域と転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分の少なくとも1箇所以上で色の滲みが生じて基準色や混色の輪郭がぼやけていることを確認した場合、その第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が不良であると評価した。因みに、図16及び図17には、第1評価の欄に、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの第1評価の結果を示している。
次いで、評価試験では、色の滲みの有無を確認した全ての第1評価パターン及び第2評価パターンについて、上述した第1の実施の形態の場合と同様に定着不良の有無及びホットオフセットの発生の有無を確認した。そして評価試験では、ホットオフセットの発生の有無及び定着不良の有無を確認すると、複数の転写紙5Bの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンや第2評価パターンのうち、基準色トナーの定着不良は生じていないと判別し、かつホットオフセットが発生していないことを確認し得た第1評価パターンや第2評価パターンについては形成状態が良好であると評価した。また評価試験では、複数の転写紙5Bの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンや第2評価パターンのうち、基準色トナーの定着不良が生じていると判別した第1評価パターンや第2評価パターンについては、ホットオフセットの発生の有無に関わらずに形成状態が不良であると評価した。さらに評価試験では、複数の転写紙5Bの表面にそれぞれ形成した第1評価パターンや第2評価パターンのうち、ホットオフセットが発生していることを確認した第1評価パターンや第2評価パターンについては、基準色トナーの定着不良の有無に関わらずに形成状態が不良であると評価した。因みに、図16及び図17には、第2評価の欄に、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの第2評価の結果を示している。
このようにして評価試験では、複数の転写紙5Bの表面にそれぞれ形成した第1評価パターン及び第2評価パターンについて第1評価及び第2評価を得ると、これらをもとにして、第1評価パターンや第2評価パターン毎に、その形成状態を上述した第1の実施の形態の場合と同様に総合評価した。因みに、図16及び図17には、総合評価の欄に、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が良好であると評価した場合には「〇」を記し、第1評価パターンや第2評価パターンの形成状態が不良であると評価した場合には「×」を記して、このときの総合評価の結果を示している。
ここで、評価試験による評価結果(図16乃至図17)について説明する。まず評価試験によれば、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1により転写紙5Bの表面に第1評価パターンを形成した場合、何れの加熱加圧条件であっても第1評価及び第2評価が共に良好であったため、総合評価を良好とした。因みに、評価試験によれば、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1のみにより転写紙5Bの表面に第2評価パターンを形成した場合、何れの加熱加圧条件であっても第2評価は良好であったが、第1評価は不良であったため、総合評価は不良とした。
以上のことから、係る評価試験によれば、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)のみにより転写紙5Bの表面(すなわち、コート層5BYの表面)に印刷画像を形成した場合、当該転写紙5Bの表面において基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の付着領域とコート層5BYとの境界部分に色の滲みが生じることが分かった。これは、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)が転写紙5Bのコート層5BYと隣接し、また基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の溶解度パラメータδst(すなわち、溶解度パラメータδy、δm、δc、δk)の値と、転写紙5Bのコート層5BYの溶解度パラメータδpaの値とが、(6)式
で表されるように、4.3[(cal/cm3)1/2]以下の差しか有していないため、転写紙5Bの表面において基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)が溶融した際、隣接するコート層5BYに混ざり込んだためであると考えられる。
これに対し係る評価試験によれば、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と共に第1クリアトナーCL1により転写紙5Bの表面(すなわち、コート層5BYの表面)に、その基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)に第1クリアトナーCL1を隣接させるようにして印刷画像を形成した場合は、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分に色の滲みは生じないことが分かった。この場合、まず転写紙5Bの表面(すなわち、コート層5BYの表面)において基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の付着領域の周囲に第1クリアトナーCL1を付着させているため、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)とは第1クリアトナーCL1が隣接するものの、転写紙5Bのコート層5BYは隣接しなくなる。
そして第1クリアトナーCL1の溶解度パラメータδcl1の値は、上述した(3)式に示したように、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の溶解度パラメータδst(すなわち、溶解度パラメータδy、δm、δc、δk)の値と6.1[(cal/cm3)1/2]以上の差を有している。また第1クリアトナーCL1の溶解度パラメータδcl1の値は、これに接触する転写紙5Bのコート層5BYの溶解度パラメータδpaの値との差が、(7)式
で表されるように、10.4[(cal/cm3)1/2]である。すなわち、第1クリアトナーCL1の溶解度パラメータδcl1の値は、コート層5BYの溶解度パラメータδpaの値とでも、基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)の溶解度パラメータδst(すなわち、溶解度パラメータδy、δm、δc、δk)の値との場合と同様に、(8)式
で表されるように、6.1[(cal/cm3)1/2]以上の差を有している。このため係る評価試験によれば、転写紙5Bの表面において基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と共に第1クリアトナーCL1が溶融した際、その第1クリアトナーCL1が基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分に仕切のように介在して、当該基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)が第1クリアトナーCL1のみならず、コート層5BYへも混ざり込まないように作用したためであると考えられる。また係る評価試験によれば、第1クリアトナーCL1と転写紙5Bのコート層5BYとの溶解度パラメータδcl1、δpaの値の差により、当該第1クリアトナーCL1と、そのコート層5BYの境界部分(すなわち、第1評価パターンであれば、余白領域付近の第1クリアトナーCL1と、そのコート層5BYとの境界部分)でも、互いが混ざり合っていないことが確認できた。
さらに係る評価試験によれば、定着ユニット16に対し加熱温度Ftを上述した(4)式に示す範囲の温度とし、またニップ圧を上述した(5)式に示す範囲の圧力とすることで、転写紙5Bの表面に対しても基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と第1クリアトナーCL1とを良好に定着させた状態(すなわち、十分な定着性を有する状態)で印刷画像を形成し得ることも分かった。
(2−4)第2の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、カラープリンタ1では、それぞれ溶解度パラメータの値がほぼ等しいイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が例えば、6.1[(cal/cm3)1/2]の差を有するように異なる第1クリアトナーCL1とにより転写紙5Bの表面(すなわち、コート層5BYの表面)に当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1に第1クリアトナーCL1を隣接させるようにして印刷画像を形成した。従ってカラープリンタ1では、転写紙5Bの表面に付着させたイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧して溶融させた際、その転写紙5Bの表面で溶融した第1クリアトナーCL1により、同様に溶融させたイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1が、これに隣接するコート層5BYに混ざり込むことを防止して、当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1とコート層5BYとの境界部分に色の滲みが生じることを防止することができる。
以上の構成によれば、カラープリンタ1は、それぞれ溶解度パラメータの値がほぼ等しいイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、これらとは溶解度パラメータの値が異なる第1クリアトナーCL1とにより転写紙5Bの表面に当該イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1に第1クリアトナーCL1を隣接させるようにして印刷画像を形成するようにした。これによりカラープリンタ1は、印刷媒体5の表面に付着させたイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1を加熱及び加圧して溶融させた際、第1クリアトナーCL1により、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と転写紙5Bのコート層5BYの境界部分に互いが混ざり合って色の滲みが生じることを防止することができる。従ってカラープリンタ1は、コート層5BYを有する転写紙5Bの表面に形成する印刷画像についても画質の劣化を防止することができる。
(3)他の実施の形態
(3−1)他の実施の形態1
なお上述した第1及び第2の実施の形態においては、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1を乳化重合法で生成し、第1クリアトナーCL1を粉砕法で生成するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1を粉砕法や溶解懸濁法等で生成し、第1クリアトナーを乳化重合法や溶解懸濁法等で生成するように、これらイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1をこの他、種々のトナー生成手法で生成するようにしても良い。
(3−2)他の実施の形態2
また上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷画像の形成に対しイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と共に、特別色トナーとして第1クリアトナーCL1を用いるようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、第1クリアトナーCL1に換え特別色トナーとして例えば、ポリエステル樹脂を基材とし、着色剤としてチタンホワイトを用いて生成したホワイトトナーを用いるようにしても良い。本発明は、係る構成によれば、印刷媒体5の表面上で基準色トナー(すなわち、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1)と共にホワイトトナーを加熱及び加圧して溶融させた際、そのホワイトトナーと基準色トナーとの境界部分で互いが混ざり合うことを防止し、その結果、その境界部分に色の滲みが生じることを防止することができる。また本発明は、特別色トナーとしてはクリアトナーやホワイトトナーに限らず、2以上の基準色の混色や、基準色からは生成し得ない色を特別色として、その特別色トナーを用いるようにしても良い。
(3−3)他の実施の形態3
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と、第1クリアトナーCL1とを互いに異なる樹脂(すなわち、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂)を基材として用いて、溶解度パラメータの値が異なるように生成することで、これらイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1と第1クリアトナーCL1との境界部分に溶融による色の滲みが生じることを防止するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、例えば、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1の何れか1色の基準色トナー及び他の3色の基準色トナーや、何れか2色の基準色トナー及び他の2色の基準色トナーを互いに異なる樹脂(すなわち、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂や、これら以外の樹脂)を基材として用いて、溶解度パラメータの値が異なるように生成するようにしても良い。要は、基準色トナーとクリアトナーとに関わらずに、溶融した際に互いが混ざり合うことを防止したい所望の1又は複数の色のトナー同士を、互いの境界部分に色の滲みが生じることを防止するように生成し得れば、この他種々の組み合わせの色のトナーを、スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂、これら以外の種々の樹脂を基材として用いて、溶解度パラメータの値が異なるように生成するようにしても良い。
また本発明では、2色以上のトナーを、互いの境界部分に色の滲みが生じることを防止するために溶解度パラメータの値が異なるように生成するのみならず、これら2色以上のトナーを、基材としての樹脂の種類と共に他の材料としてのワックスの種類とを換えて、これらトナーの溶解特性としての融点が異なるように生成するようにしても良い。本発明は、係る構成によれば、印刷媒体5の表面上で融点の異なる2色以上のトナーを加熱及び加圧して溶融させた際、これら2色以上のトナーにおいて溶融の程度に差を生じさせ互いが混ざり合うことを防止することができる。よって本発明は、係る構成によっても、上述した第1及び第2の実施の形態の場合と同様に印刷媒体5の表面上で、これら2色以上のトナーの境界部分に色の滲みが生じることを防止することができ、かくして印刷画像の画質が劣化することを防止することができる。
そして本発明は、印刷画像の形成に、イエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1及び第1クリアトナーCL1の計5色のトナーを用いるようにしたが、印刷画像の形成に用いるトナーの種類は、5色には限らない。すなわち、本発明は、印刷媒体5として例えば、普通紙5Aの表面に印刷画像を形成する場合は、その印刷画像において異なる所望の色のトナー(すなわち、基準色トナーや特別色トナー)の境界部分に色の滲みが生じることを防止し得れば、2色のトナーのみを用いて印刷画像を形成するように、少なくとも2色以上のトナー(すなわち、基準色トナーや特別色トナー)を種々の組み合わせで用いることができる。
また本発明は、印刷媒体5として例えば、転写紙5Bの表面に印刷画像を形成する場合、1又は複数の基準色トナーを、その溶解度パラメータの値が転写紙5Bのコート層5BYの溶解度パラメータの値と6.1[(cal/cm3)1/2]以上の差を有するように生成するようにしても良い。本発明は、係る構成によれば、特に第1クリアトナーCL1を用いずに基準色トナーのみを用いて転写紙5Bの表面に印刷画像を形成しても、その基準色トナーと転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分に色の滲みが生じることを防止することができる。よって本発明は、このように印刷媒体5としての転写紙5Bの表面に印刷画像を形成する場合は、その印刷画像において基準色トナーや特別色トナーと当該転写紙5Bのコート層5BYとの境界部分に色の滲みが生じることを防止し得れば、1色のトナー(すなわち、基準色トナー又は特別色トナー)のみを用いて印刷画像を形成するように、その印刷画像の形成に少なくとも1色以上のトナーを用いることができる。
(3−4)他の実施の形態4
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、本発明による画像形成装置を、図1乃至図17について上述したカラープリンタ1に適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、複数の画像形成ユニットにより形成したトナー画像を印刷媒体5の表面に直接転写する1次転写型のカラープリンタや、モノクロ用電子写真式プリンタ、マルチファンクションプリンタ、ファクシミリ、複合機等のように、この他種々の構成の画像形成装置に広く適用することができる。
(3−5)他の実施の形態5
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、第1位置に第1材料が転写される印刷媒体として、図1乃至図17について上述した普通紙5Aや転写紙5Bのような印刷媒体5を適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、写真印画紙や葉書、ディスク状記録媒体等のように、この他種々の印刷媒体を広く適用することができる。
(3−6)他の実施の形態6
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷媒体の第1位置の第1材料として、図1乃至図17について上述したイエロートナーY1、マゼンタトナーM1、シアントナーC1及びブラックトナーK1や、転写紙5Bのポリエステル樹脂のコート層5BYを適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等の種々の樹脂を基材として用いて生成され、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックとは異なるクリアやホワイト等の色のトナーや、転写紙5Bに設けられた、少なくとも樹脂を用いて生成されたコート層5BY等のように、この他種々の第1材料を広く適用することができる。
(3−7)他の実施の形態7
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷媒体の第1位置の第1材料と接する第2位置に転写され、第1材料と溶解特性の異なる第2材料として、図1乃至図17について上述した第1クリアトナーCL1を適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、スチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂等の種々の樹脂を基材として用いて生成されたイエロートナーY1やマゼンタトナーM1、シアントナーC1、ブラックトナーK1等の種々の色のトナーのように、この他種々の第2材料を広く適用することができる。
(3−8)他の実施の形態8
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷媒体の第1位置の第1材料と接する第2位置に、当該第1材料と溶解特性の異なる第2材料を転写する転写部として、図1乃至図17について上述したカラープリンタ1の転写ユニット15を適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、印刷媒体の表面に画像形成ユニットからトナー画像を直接転写する1次転写形の転写ユニットのように、この他種々の構成の転写部を広く適用することができる。
(3−9)他の実施の形態9
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷媒体の第2位置に転写された第2材料を溶融させて印刷媒体に定着させる定着部として、図1乃至図17について上述した定着ユニット16を適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、内部に発熱体が設けられた加圧ローラ87を有する定着ユニットや、加熱ローラ86及び加圧ローラ87の少なくとも一方に換えて無端状のベルトが回転可能に設けられた定着ユニット等のように、この他種々の構成の定着部を広く適用することができる。
(3−10)他の実施の形態10
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、印刷媒体に設けられたコート層として、図1乃至図17について上述した転写紙5Bのポリウレタン樹脂層であるコート層5BYを適用するようにした場合について述べた。しかしながら本発明は、これに限らず、転写紙5B等の印刷媒体に設けられ、基材としてポリエステル樹脂やスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の種々の樹脂と共に、他の材料としてワックス等が用いられ、トナーとは融点が異なるように生成されたコート層のように、この他種々の構成のコート層を広く適用することができる。