JP6037768B2 - 止水材組成物およびそれらを用いた止水方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、鋼矢板連壁の施工を効率的に行うための鋼矢板ジョイント部には、どうしても数mm〜1、2cm程度の隙間が空いてしまうため、このジョイント部より水、液漏れが生じてしまうという欠点があった。
そのため、上記鋼矢板ジョイント部の止水を目的とした技術が、下記のように、これまでにも提案されてきた。
特許文献1には、上記塗布剤は、矢板に塗布後、大気で湿気硬化させることのより優れた水膨潤性を発揮すること、塗布そして硬化された塗布剤は水に浸漬することにより自重の5〜20倍程度まで膨張し、しかも矢板の爪部間隙にあっては十分な耐圧性を示すことが開示されている。
しかしながら、膨潤倍率の低い止水材を使用する場合には、鋼矢板に厚めに塗る必要があるが、その場合、鋼矢板を地盤に圧入打設する際に、地盤および二つの鋼矢板同士の継手の摩擦(引っ掻き)により剥がれてしまい、止水効果が低下する課題があった。
すなわち本発明は、吸水倍率25倍未満の膨潤材料と、吸水倍率25倍以上の膨潤材料とを含む、止水材組成物である。
(吸水倍率測定方法)
吸水倍率の測定方法は、以下のとおりである。
(1)テフロンシート上に乾燥塗布量200g/m2になるように塗膜を作成し、24時間常温乾燥後、基材から剥がし、5mm×5mm程度に細かくして、浸透性の袋(ティーバッグ)の中に0.1g仕込む。
(2)次に、脱イオン水100gが注入された容器の中に(1)の袋を浸漬して20分間放置する。
(3)1時間浸漬後に袋を引き上げ5秒間水切り後、10秒間トイレットペーパー(32枚重ね)の上に置き余分な水を除去した後、袋の重量を測定し、下記式より吸水倍率を計算する。
吸水倍率(g/g)=
(吸水膨潤後の袋の重量−袋のみの重量)/袋に仕込んだ塗膜の重量
本発明の止水材組成物は、吸水倍率25倍以上の膨潤材料を必須としている。吸水倍率が25倍以上の膨潤材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体、高倍率の吸水性繊維等が挙げられる(これらを以下、「膨潤成分B」ということがある)。これら吸水性樹脂は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
吸水倍率が25倍未満の膨潤材料と吸水倍率が25倍以上の膨潤材料の合計の使用量は、400〜5000g/m2であることが好ましく、90〜2500g/m2であることがより好ましい。なお、止水材組成物が後述する溶剤を含む場合であっても、溶剤の質量は、膨潤材料の質量には含まれない。
上記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等のカルボン酸(塩)基を有する単量体;(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等のスルホン酸(塩)基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が例示される。これらエチレン性不飽和単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
上記バインダー樹脂は、水不溶性または親水性であることが好ましい。上記バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニルの部分加水分解物、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体;クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレンポリブタジエンブロックコポリマー等の熱可塑性エラストマー;などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
親水性バインダー樹脂は、親水性が低すぎると、上記膨潤成分の膨潤を阻害してしまい、土中水分の吸収が低下し、十分に膨潤しないため、止水剤組成物の止水性能が低下する傾向にある。一方、バインダー樹脂の親水性が高すぎると、土中水分の吸水時のバインダーの基材に対する密着力が低下しすぎ、塗膜全体が剥がれやすくなり、止水剤としての耐久性が低下する傾向にある。以上のような理由より、バインダー樹脂は、適度な親水性を有すことが好ましい。
バインダー樹脂の酸価は、適度な親水性を有するためには40mgKOH/g以上である事が好ましく、50mgKOH/g以上である事がより好ましく、70mgKOH/g以上である事がさらに好ましい。上記範囲であれば、親水性が適度であり、止水性能が良好となる傾向にある。また、鋼矢板との密着性を良好にするためには、バインダー樹脂の酸価は、500mgKOH/g以下である事が好ましく、300mgKOH/g以下である事がより好ましく、200mgKOH /g以下である事がさらに好ましい。
0℃〜20℃の間と、20℃〜100℃の間のそれぞれにガラス転移温度を有すると柔軟化成分と形状保持成分とのバランスが良くさらに好ましい。
バインダー樹脂としては、酸価調節などにより、容易に親水性を調節できるので、アルカリ水可溶性樹脂あるいは酸価が40mgKOH/g〜500mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。
なお、上記止水材としては、膨潤材料と後述する溶剤(または上記膨潤成分と上記バインダー樹脂を含む溶剤)を別々に保管しておいて、使用前に混合することにより製造しても良い。
ン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール誘導品、プロピレグリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導品等が例示される。これらの溶媒は2種類以上を併用してもよい。
溶剤の選定方法としては、基材へ塗布するのに適した沸点、安全性等を有する溶媒を選定する事が好ましい。低沸点の溶媒を選定すれば速乾性があり、短時間で塗膜が形成できるために厚塗り等が容易となり、高沸点の溶媒を選定すれば作業時間を長くすることができる。媒体として有機溶剤を使用することにより、水を含む媒体を用いた場合に生じる膨潤材料の吸水による膨潤はなく、ゲル状にならないために塗布作業が容易になる。また、メチルエチルケトンやメタノール等の揮発性の大きな溶媒を用いると10分程度で乾燥し、水を媒体として用いる場合よりも非常に早く乾燥するために次の作業あるいは工程に迅速に移行する事ができ、工期あるいは、基材への塗布に要する時間を著しく短縮することができる。
なお、上記の通り、上記止水材としては、膨潤材料と溶剤(または上記膨潤成分と上記バインダー樹脂を含む溶剤)を別々に保管しておいて、使用前に混合することにより製造しても良い。
以下に具体的な実施形式により発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。
吸水倍率25倍未満の膨潤材料の例として、例えば日本化学塗料株式会社製「パイルロック」(上記評価方法による吸水倍率は17(g/g)倍であった)、吸水倍率25倍以上の膨潤材料の例としては、例えば株式会社日本触媒製の「フリクションカッター・機能塗布剤」(上記評価方法による吸水倍率は45(g/g)倍であった)を使用する。鋼矢板の継ぎ手部に、まず、「フリクションカッター・機能塗布剤」を塗布し、乾燥後に「パイルロック」をその上から塗布する。「フリクションカッター・機能塗布剤」を400〜1000g/m2使用し(有姿)、「パイルロック」を500〜1500g/m3使用すると(有姿)良好な漏水の低減効果を発現する。「フリクションカッター・機能塗布剤」と「パイルロック」の使用比率は、乾燥固形分で10:90〜90:10で使用することが好ましい。
Claims (5)
- 吸水倍率25倍未満の鋼矢板に塗布する膨潤材料と、吸水倍率25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料とを含む、鋼矢板用止水材組成物。
- 鋼矢板継手部表面部に、吸水倍率25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料を設け、さらに該膨潤材料の外側に吸水倍率25倍未満の鋼矢板に塗布する膨潤材料を塗布した鋼矢板を使用する、土止め壁の止水方法。
- 吸水倍率が25倍未満の鋼矢板に塗布する膨潤材料と吸水倍率が25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料の配合比率(本発明の止水方法における吸水倍率が25倍未満の鋼矢板に塗布する膨潤材料と吸水倍率が25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料の使用比率)が、質量比で5:95〜95:5である請求項2に記載の土止め壁の止水方法。
- 前記吸水倍率25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料が、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体、高倍率の吸水性繊維から選ばれる1種以上である請求項1に記載の鋼矢板用止水材組成物。
- 前記吸水倍率25倍以上の鋼矢板に塗布する膨潤材料が、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体、高倍率の吸水性繊維から選ばれる1種以上である請求項2または請求項3に記載の土止め壁の止水方法。
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