JP5988840B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents

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Description

本発明は回転電機の固定子に関する。
昨今の地球温暖化に対し、回転電機は小型高出力が求められている。このような回転電機として、例えば内周側に開口する多数のスロットを備えた固定子鉄心を有し、各スロットに複数の略U字形状のセグメント導体を挿入する事で占積率を向上させて冷却性能を向上させることにより高出力化を図ったものが知られている。
そして、絶縁性能向上のため、スロットライナの破れ防止のためにスロットライナにスリットを設けた車輌用交流発電機の固定子がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−178057号公報
特許文献1の技術は主に空冷で低電圧(12Vdc)の車輌用交流発電機を対象としているためスロットライナにスリットを設けることが出来るが、電気自動車やハイブリッド電気自動車に用いられる回転電機においては、電圧が150〜300Vdc(昇圧により600Vdcの物もある)と高く、冷却も空冷でなく、直接液体(例えば油)冷却となっているものも多い。その様な回転電機は電圧が高いため、スロットライナにスリットを設けるとスリット部分の絶縁性が低下するといった課題があった。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数のスロットが設けられた固定子鉄心と、前記スロットに設けられた固定子コイルとを有し、各々の前記スロットにN本(ただし、Nは正の偶数)のセグメント導体が設けられ、前記固定子コイルは、各々のセグメント導体の導体端部に設けられた溶接部を介して、複数の前記セグメント導体が接続されて構成され、前記導体端部は、軸方向一方のコイルエンドで周方向に環状に配列され、N列の環状列を構成し、前記軸方向一方のコイルエンドで、少なくとも一対の前記環状列の間に、絶縁部材が環状に介在する回転電機の固定子において、スロットライナの固定子端面からの飛び出し量をHmm(例えば3mm)、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離をLmm(例えば1.5mm)としたとき、HとLに
H≧L≧H/2
の関係があることを特徴とする。
本発明によれば、絶縁性の優れた回転電機の固定子を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
本発明の実施例による固定子を含む回転電機装置の全体構成を示す断面図。 本発明が適用される固定子の構成を示す斜視図。 固定子コイルのセグメント導体を説明する図であり、(a)は一つのセグメント導体を示す図、(b)はセグメント導体によるコイル形成を説明する図、(c)はスロット内のセグメント導体の配置を説明する図。 U相の固定子コイルを示す斜視図。 固定子コイルの溶接側コイルエンド部を示す断面斜視図。 固定子コイルの反溶接側コイルエンド部を示す断面斜視図。 固定子コイルの溶接側コイルエンド部の平面図(実施例1)。 固定子コイルの溶接側コイルエンド部の平面図(実施例2)。 固定子コイルの溶接側コイルエンド部の平面図(実施例3)。 固定子コイルの反溶接側コイルエンド部の平面図。 本発明による回転電機を搭載する車両の構成を示すブロック図。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
なお、以下の説明では、回転電機の一例として、ハイブリット自動車に用いられる電動機を用いる。また、以下の説明において、「軸方向」は回転電機の回転軸に沿った方向を指す。周方向は回転電機の回転方向に沿った方向を指す。「径方向」は回転電機の回転軸を中心としたときの動径方向(半径方向)を指す。「内周側」は径方向内側(内径側)を指し、「外周側」はその逆方向、すなわち径方向外側(外径側)を指す。
図1は本発明による固定子を備える回転電機を示す断面図である。回転電機10は、ハウジング50、固定子20、固定子鉄心21と、固定子コイル60と、回転子11とから構成される。
ハウジング50の内周側には、固定子20が固定されている。固定子20の内周側には、回転子11が回転可能に支持されている。ハウジング50は、炭素鋼など鉄系材料の切削により、または、鋳鋼やアルミニウム合金の鋳造により、または、プレス加工によって円筒状に成形した、電動機の外被を構成している。ハウジング50は、枠体或いはフレームとも称されている。
ハウジング50の外周側には、液冷ジャケット130が固定されている。液冷ジャケット130の内周壁とハウジング50の外周壁とで、油などの液状の冷媒RFの冷媒通路153が構成され、この冷媒通路153は液漏れしないように形成されている。液冷ジャケット130は、軸受144,145を収納しており、軸受ブラケットとも称されている。
直接液体冷却の場合、冷媒RFは、冷媒通路153を通り、冷媒出口154,155から固定子20へ向けて流出し、固定子20を冷却する。
固定子20は、固定子鉄心21と、固定子コイル60とによって構成されている。固定子鉄心21は、珪素鋼板の薄板が積層されて作られている。固定子コイル60は、固定子鉄心21の内周部に多数個設けられているスロット15に巻回されている。固定子コイル60からの発熱は、固定子鉄心21を介して、液冷ジャケット130に伝熱され、液冷ジャケット130内を流通する冷媒RFにより、放熱される。
回転子11は、回転子鉄心12と、回転軸13とから構成されている。回転子鉄心12は、珪素鋼板の薄板が積層されて作られている。回転軸13は、回転子鉄心12の中心に固定されている。回転軸13は、液冷ジャケット130に取り付けられた軸受144,145により回転自在に保持されており、固定子20内の所定の位置で、固定子20に対向した位置で回転する。また、回転子11には、永久磁石18と、エンドリング(図示せず)が設けられている。
回転電機の組立は、予め、固定子20をハウジング50の内側に挿入してハウジング50の内周壁に取付けておき、その後、固定子20内に回転子11を挿入する。次に、回転軸13に軸受144,145が嵌合するようにして液冷ジャケット130に組み付ける。
図2を用いて、本実施例による回転電機10に用いる固定子20の要部の詳細構成について説明する。固定子20は、固定子鉄心21と、前記固定子鉄心の内周部に多数個設けられているスロット15に巻回された固定子コイル60とから構成されている。固定子コイル60は、断面が略矩形形状の導体(本実施例では銅線)を使用しスロット内の占積率を向上させ、回転電機の効率が向上する。
固定子鉄心21には、内径側に開口するスロット15が周方向に例えば72個形成されている。そして、スロットライナ302が各スロット15に配設され、固定子鉄心21と固定子コイル60との電気的絶縁を確実にしている。
前記スロットライナ302は、銅線を包装するようにB字形状や、S字形状に成形されている。
図3を用いて、固定子コイル60の巻線方法について簡単に説明する。断面が略矩形のエナメル等で絶縁された銅線を、図3(a)の様な、反溶接側コイルエンド頂点28Cを折り返し点とする様な、略U字形状のセグメント導体28に成型する。このとき、反溶接側コイルエンド頂点28Cは略U字形状において導体の向きを折り返す形状であればよい。すなわち、図3のような、径方向から見たときに反溶接側コイルエンド頂点28Cと反溶接側反溶接側コイルエンドの導体斜行部28Fとが略三角形をなすような形状に限らない。例えば、反溶接側コイルエンド頂点28Cの一部において、導体が固定子鉄心21の端面と略平行になるような形状(径方向から見たとき反溶接側コイルエンド頂点28Cと反溶接側コイルエンドの導体斜行部28Fとが略台形をなすような形状)であっても良い。
そのセグメント導体28を、軸方向からをステータスロットに差し込む。所定のスロット離れたところに差し込まれた別のセグメント導体28と導体端部28Eにおいて(例えば溶接等により)図3(b)の様に接続する。このとき、セグメント導体28には、スロットに挿入される部位である導体直線部28Sと、接続相手のセグメント導体の導体端部28Eへ向かって傾斜する部位である導体斜行部28Dとが形成される。スロット内には2、4、6・・・(2の倍数)本のセグメント導体が挿入される。図3(c)は1スロットに4本のセグメント導体が挿入された例であるが、断面が略矩形の導体のため、スロット内の占積率を向上させることが出来、回転電機の効率が向上する。
図4は、図3(b)の接続作業をセグメント導体が環状となるまで繰り返し、一相分(例としてU相)のコイル40を形成したときの図である。一相分のコイル40は導体端部28Eが軸方向一方に集まるように構成され、導体端部28Eの集まる溶接側コイルエンド62と、反溶接側コイルエンド61とを形成する。一相分のコイル40には、一端に各相のターミナル(図4の例ではU相のターミナル42U)、他端に中性線41が形成される。
図5を用いて、回転電機10に用いる固定子20の溶接部(溶接側コイルエンド62)の詳細構成について説明する。固定子20は、固定子鉄心21と、前記固定子鉄心の内周部に多数個設けられているスロット15に巻回された固定子コイル60とから構成されている。固定子コイル60は、断面が略矩形形状のコイルを使用しスロット内の占積率を向上させ、回転電機の効率が向上する。コイル間の絶縁のため、絶縁紙300が環状に配置される。溶接部間の絶縁のため、絶縁紙301が環状に配置される。
絶縁紙が配置された後、前記固定子コイルの全体を樹脂部材で覆って絶縁を強化する。もしくは、固定子コイルの全体又は一部に第1の樹脂部材(例えばポリエステルやエポキシ液体ワニス)を滴下し、硬化させる。溶接部の絶縁の強化のため、溶接部近傍には第2の樹脂部材(例えばエポキシ系粉体ワニス)で覆っても良い。
図6を用いて、固定子20の反溶接部(反溶接側コイルエンド61)の詳細構成について説明する。固定子20は、固定子鉄心21と、前記固定子鉄心の内周部に多数個設けられているスロット15に巻回された固定子コイル60とから構成されている。固定子コイル60は、断面が略矩形形状のコイルを使用することでスロット内の占積率を向上させ、回転電機の効率が向上させている。コイル間の絶縁のため、絶縁紙301が環状に配置される。
図7は溶接側コイルエンド62のスロットライナ302の固定子端面からの飛び出し量Hとコイル曲げ始め部の固定子端面からの距離Lについて示している。固定子端面と固定子コイル60との間の絶縁のため、スロットライナ302は固定子端面からある程度飛び出させることが望ましい。図において、距離Lが短いほどコイルエンドを短く出来、固定子を小型化できるが、Lが短いと、スロットライナ端部が変形し、大きく広がる部位302Wが形成される。この部位の変形量が、絶縁紙の延び量の範囲内であれば、絶縁は維持されるが、許容値を超えると絶縁紙が破ける。
発明者らは、スロットライナの固定子端面からの飛び出し量をHmm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離をLmmとしたとき、HとLに
H≧L≧H/2、好ましくはH≧L≧H×(2/3)
の関係があれば、コイルエンドの高さを小さくしつつ、絶縁紙の破れを防止できることを見出した。
図7はHが3mm、Lが1.5mmでの例であるが、この値が絶縁紙に破れが生じない限界値であり、例えば、Lが1.0mmでは、破れが生じることを確認している。本構成であれば、コイルをスロットのほぼ中央に配置できるので、コイルがスロットの片方に寄る事により発生するスロットエッジによる絶縁破壊の懸念も軽減できる。
図8は溶接側コイルエンド62のスロットライナ302の固定子端面からの飛び出し量Hが3mm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離Lが2mmでの実施例について示している。コイル、絶縁紙の製作誤差や、コイルの組み立て誤差等を考慮すると、1.5mmでは破れが生じる可能性があるので、この値が実際の製造上は理想的な値である。
図9は溶接側コイルエンド62のスロットライナ302の固定子端面からの飛び出し量Hが3mm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離Lが3mmでの実施例について示している。この値以上であれば、絶縁紙に破れが発生する可能性は無いが、コイルエンドが大きくなるので、Lを3mmより長くする絶縁性能上の必要は無い。
図10は反溶接側コイルエンド61のスロットライナ302の固定子端面からの飛び出し量Hとコイル曲げ始め部の固定子端面からの距離Lについて示している。反溶接側においても溶接側と同様の関係が有り、距離Lが短いほどコイルエンドを短く出来、固定子を小型化できるが、Lが短いと、スロットライナ端部が変形し、大きく広がる部位302Wが形成される。この部位の変形量が、絶縁紙の延び量の範囲内であれば、絶縁は維持されるが、許容値を超えると絶縁紙が破ける。図10はHが3mm、Lが2mmでの例である。
図10を用いて説明した如く、HとLとの関係を
H≧L≧H×(2/3)
となるように設定すると、H≧L≧H/2の場合に比べてさらにコイルエンドの高さを小さくすることができる。
本構成により、前記スロットライナに破れが生じないため、電気自動車やハイブリッド電気自動車に求められる絶縁性を満足した回転電機を得られるものとなる。
以上においては、永久磁石式の回転電機において説明を行ったが、本発明の特徴は固定子のコイルエンド溶接部に関するものであるため、回転子は永久磁石式でなく、インダクション式や、シンクロナスリラクタンス、爪磁極式等にも適用可能である。また、巻線方式においては波巻方式であるが、同様の特徴を持つ巻線方式であれば、適用可能である。次に、内転型で説明を行っているが、外転型でも同様に適用可能である。
図11を用いて、本実施例による回転電機10を搭載する車両の構成について説明する。図11は、四輪駆動を前提としたハイブリッド自動車のパワートレインである。前輪側の主動力として、エンジンと回転電機10を有する。エンジンと回転電機10の発生する動力は、変速機により変速され、前輪側駆動輪に動力を伝えられる。また、後輪の駆動においては、後輪側に配置された回転電機10と後輪側駆動輪を機械的に接続され、動力が伝達される。
回転電機10は、エンジンの始動を行い、また、車両の走行状態に応じて、駆動力の発生と、車両減速時のエネルギーを電気エネルギーとして回収する発電力の発生を切り換える。回転電機10の駆動,発電動作は、車両の運転状況に合わせ、トルクおよび回転数が最適になるように電力変換装置により制御される。回転電機10の駆動に必要な電力は、電力変換装置を介してバッテリから供給される。また、回転電機10が発電動作のときは、電力変換装置を介してバッテリに電気エネルギーが充電される。
ここで、前輪側の動力源である回転電機10は、エンジンと変速機の間に配置されており、図1〜図10にて説明した構成を有するものである。後輪側の駆動力源である回転電機10としては、同様のものを用いることもできるし、他の一般的な構成の回転電機を用いることもできる。なお、四輪駆動式以外のハイブリッド方式においても勿論適用可能である。
以上で説明したように、本発明によれば、小型高出力であるにも関わらず、絶縁性が優れた回転電機の固定子を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
10 回転電機
11 回転子
12 回転子鉄心
13 回転軸
15 スロット
18 永久磁石
20 固定子
21 固定子鉄心
28A セグメント導体
28B セグメント導体
28C 反溶接側コイルエンド頂点
28D 導体斜行部
28E 導体端部
28F 導体斜行部
28S 導体直線部
50 ハウジング
60 固定子コイル
61 反溶接側コイルエンド
62 溶接側コイルエンド
130 液冷ジャケット
144 軸受
145 軸受
150 冷媒(油)貯蔵空間
153 冷媒通路
154 冷媒出口
155 冷媒出口
300 環状絶縁紙
301 環状絶縁紙
302 スロットライナ
302W スロットライナ変形部位
400 冷却液通路
401 冷却液溜まり
RF 冷媒
H スロットライナの固定子端面からの飛び出し量
L コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離

Claims (5)

  1. 複数のスロットが設けられた固定子鉄心と、
    前記スロットに設けられた固定子コイルとを有し、
    各々の前記スロットにN本(ただし、Nは正の偶数)のセグメント導体が設けられ、
    前記固定子コイルは、各々のセグメント導体の導体端部に設けられた溶接部を介して、複数の前記セグメント導体が接続されて構成され、
    前記導体端部は、軸方向一方のコイルエンドで周方向に環状に配列され、N列の環状列を構成し、
    前記軸方向一方のコイルエンドで、少なくとも一対の前記環状列の間に、絶縁部材が環状に介在する回転電機の固定子において、
    スロットライナの固定子端面からの飛び出し量をHmm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離をLmmとしたとき、HとLに
    H≧L≧H/2
    の関係があることを特徴とする回転電機の固定子。
  2. 請求項1に記載の回転電機の固定子において、
    溶接側のコイルエンドもしくは反溶接側のコイルエンドにおいて、
    スロットライナの固定子端面からの飛び出し量をHmm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離をLmmとしたとき、HとLに
    H≧L≧H/2
    の関係があることを特徴とする回転電機の固定子。
  3. 請求項2に記載の回転電機の固定子において、
    溶接側のコイルエンドもしくは反溶接側のコイルエンドにおいて、
    スロットライナの固定子端面からの飛び出し量をHmm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離をLmmとしたとき、HとLに
    H≧L≧H×(2/3)
    の関係があることを特徴とする回転電機の固定子。
  4. 請求項2又は3に記載の回転電機の固定子において、
    溶接側のコイルエンドもしくは反溶接側のコイルエンドにおいて、
    スロットライナの固定子端面からの飛び出し量を約3mm、コイル曲げ始め部の固定子端面からの距離を約2mmとしたことを特徴とする回転電機の固定子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の回転電機の固定子を備えた回転電機。
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