図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の製造装置500の構成を示す図である。吸水性樹脂は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合反応させて製造することができる。水溶性エチレン性不飽和単量体の重合方法は特に限定されず、代表的な重合方法である水溶液重合法、乳化重合法、逆相懸濁重合法などが用いられる。
水溶液重合法では、たとえば、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液、内部架橋剤および水溶性ラジカル重合開始剤を、必要に応じて撹拌しながら、加熱することにより重合が行われる。この水溶液重合法では、水が液媒体として扱われ、水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶液状態にして重合反応が行われる。
また、逆相懸濁重合法では、たとえば、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液、界面活性剤、疎水性高分子系分散剤、水溶性ラジカル重合開始剤および内部架橋剤を石油系炭化水素分散媒中、撹拌下で加熱することにより重合が行われる。この逆相懸濁重合法では、水と石油系炭化水素分散媒とが液媒体として扱われ、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液を、石油系炭化水素分散媒中に添加することで重合反応が行われる。
本実施形態においては、精密な重合反応制御と広範な粒子径の制御が可能な観点から、逆相懸濁重合法が好ましい。以下では、本発明の実施形態の一例として、逆相懸濁重合法によって吸水性樹脂を製造する製造装置500について説明する。
吸水性樹脂の製造装置500は、熱交換構造体100と、重合反応器200と、濃縮器300と、乾燥機400とを含んで構成される。重合反応器200では、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応が行われ、吸水性樹脂が生成される。重合反応器200を構成する材料としては、銅、チタン合金、およびSUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼などを挙げることができるが、生成される吸水性樹脂の付着が抑制されるという観点から、内壁面にフッ素樹脂加工などの表面加工が施されていることが好ましい。
吸水性樹脂の原料に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリル」とは「アクリル」および「メタクリル」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸等の酸基を有する単量体およびそれらの塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性不飽和単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体およびそれらの四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、酸基を有する単量体を中和して塩とする場合に用いられるアルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の化合物が挙げられる。より詳しくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
水溶性エチレン性不飽和単量体の中で、好ましいものとしては工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸およびその塩が挙げられる。
なお、酸基を有する単量体を中和する場合、その中和度は、水溶性エチレン性不飽和単量体の酸基の30〜90モル%であることが好ましい。中和度が30モル%より低い場合、酸基がイオン化されにくく、吸水能が低くなる可能性があるため好ましくない。中和度が90モル%を超えると、衛生材料として使用される場合、安全性等に問題が生じる可能性があるため好ましくない。
本実施形態において、水溶性エチレン性不飽和単量体は、水溶液として使用される。水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の単量体濃度は、20質量%〜飽和濃度であることが好ましい。
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液には、必要に応じて、連鎖移動剤、増粘剤等が含まれていてもよい。連鎖移動剤としては、たとえば、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸等の化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
石油系炭化水素分散媒としては、たとえば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の炭素数6〜8の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手が容易であることと、安全性の観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、n−オクタン等の炭素数6〜8の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、およびメチルシクロヘキサン等の炭素数6〜8の脂環族炭化水素がより好適に用いられる。これらの石油系炭化水素分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、これらの石油系炭化水素分散媒の中でも、逆相懸濁の状態が良好で、好適な粒子径が得られやすく、工業的に入手が容易かつ品質が安定している観点から、n−ヘプタン、シクロヘキサンが好適に用いられる。また、上記炭化水素の混合物の例として、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタンおよび異性体の炭化水素75〜85%含有)などを用いても好適な結果が得られる。
石油系炭化水素分散媒の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を均一に分散し、重合温度の制御を容易にする観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して、50〜600質量部が好ましく、50〜400質量部がより好ましく、50〜200質量部がさらに好ましい。
逆相懸濁重合においては、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒に分散させて、より安定した重合粒子を得るために、界面活性剤や要すれば疎水性高分子系分散剤を用いる。重合を異常なく安定的に完了させるという観点から、界面活性剤や疎水性高分子系分散剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を重合させる前に存在させて、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を石油系炭化水素分散媒中に充分に分散させ、その液滴を安定化させた後に重合を行うことができれば、それぞれ添加する時期は特に限定はされない。既存の技術を鑑みると一部例外はあるが、界面活性剤や疎水性高分子系分散剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加する前に、予め石油系炭化水素分散媒に溶解または分散させておくことが一般的である。
重合時の分散安定性を保つために用いる界面活性剤としては、たとえば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N−アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、およびポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン系界面活性剤、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸およびその塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの界面活性剤の中でも、単量体水溶液の分散安定性の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
使用される界面活性剤の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましい。界面活性剤の添加量が0.01質量部よりも少ない場合、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の分散安定性が低くなるため好ましくなく、5質量部よりも多い場合、経済的でないので好ましくない。
重合時の分散安定性をより高めるために、疎水性高分子系分散剤を界面活性剤と併用してもよい。疎水性高分子系分散剤は、使用する石油系炭化水素分散媒に対し、溶解または分散するものを、選択して使用することが好ましく、たとえば、粘度平均分子量として20000以下、好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下のものが挙げられる。具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、無水マレイン化ポリブタジエン、無水マレイン化EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体)等が挙げられる。
これらの中では無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレンおよび酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
疎水性高分子系分散剤の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.05〜2質量部がさらに好ましい。疎水性高分子系分散剤の添加量が5質量部よりも多い場合、経済的でないので好ましくない。
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を、重合反応器200内に予め充填された石油系炭化水素分散媒に添加して分散させる際、撹拌手段201によって分散させるが、この撹拌手段201による撹拌条件については、所望の分散液滴径により異なるので、一概に決定することはできない。分散液滴径は、撹拌手段201の撹拌翼の種類、翼径、回転数等により調節することができる。撹拌翼としては、たとえば、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック株式会社製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業株式会社製)、スーパーミックス(サタケ化学機械工業株式会社製)等を使用することが可能である。
重合反応器200内では、石油系炭化水素分散媒に所定の添加速度で添加された水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を、界面活性剤存在下、石油系炭化水素分散媒中で、撹拌手段201により充分撹拌して分散させ、液滴を安定化させる。そして、重合反応器200内を充分に窒素置換した後、必要により内部架橋剤の存在下にて、水溶性ラジカル重合開始剤により逆相懸濁重合を行い、含水ゲル状架橋重合体の懸濁液を得る。
本実施形態で使用される水溶性ラジカル重合開始剤としては、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンジアミン]四水塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]等のアゾ化合物等が挙げられる。
これらの中では、入手が容易で取り扱いやすいという観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩が好ましい。
なお、水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸塩、アスコルビン酸等の還元剤と併用してレドックス重合開始剤として用いてもよい。
水溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部あたり、0.01〜1質量部である。0.01質量部より少ない場合、重合率が低くなり、1質量部より多い場合、急激な重合反応が起こるため好ましくない。
水溶性ラジカル重合開始剤の添加時期は特に制限されないが、予め水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加しておくことが好ましい。
必要に応じて使用される内部架橋剤としては、たとえば、(ポリ)エチレングリコール〔「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合を意味する。以下同じ〕、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のポリオール類、ポリオール類とアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸とを反応させて得られる二個以上のビニル基を有するポリ不飽和エステル類、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等の二個以上のグリシジル基を含有するポリグリシジル化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
内部架橋剤の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0〜3質量部が好ましく、0〜1質量部がより好ましく、0.001〜0.1質量部がさらに好ましい。添加量が3質量部を超えると、架橋が過度になり、吸水性能が低くなりすぎるため好ましくない。内部架橋剤は、予め水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加しておくのが好ましい。
重合反応器200における逆相懸濁重合の際の反応温度は、使用する重合開始剤の種類や量によって異なるので一概には決定することができないが、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜90℃である。反応温度が30℃より低い場合、重合率が低くなる可能性があり、また、反応温度が100℃より高い場合は急激な重合反応が起こるため好ましくない。
このようにして得られた、含水ゲル状架橋重合体R2を含有する重合反応液R1(含水ゲル状架橋重合体R2の懸濁液)を1段目の重合とし、以降、幾度か水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加して重合を繰り返す「多段重合」を行ってもよい。特に衛生材用途での使用においては、得られる吸水性樹脂粒子の大きさと生産効率の観点から、2段重合を行うことが好ましい。
1段目の水溶性エチレン性不飽和単量体の重合で得られる粒子の大きさは、多段重合において、適度な凝集粒径を得る観点から、中位粒子径20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。なお、1段目の重合粒子の中位粒子径は、前記1段目の重合が終了した後、脱水、乾燥することで測定できる。
2段重合を行う場合、後述の方法に従うことで、1段目の重合にて得られた粒子を凝集し、衛生材料用途に適した比較的平均粒径の大きな吸水性樹脂を得ることができる。
このとき、2段目重合に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液が、独立した液滴を形成しないよう界面活性剤の作用を低下させる必要がある。たとえば、1段目の重合終了後に冷却し、界面活性剤が少なくとも一部析出する温度で2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を添加することにより、前記凝集した粒子を得ることができる。
なお、2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の添加により、凝集粒子が得られる方法であれば、前記方法に限定されるものでない。
また、上記のように界面活性剤の界面活性作用を低下させた上で、2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の添加を行うことにより、吸水性樹脂への石油系炭化水素分散媒の残存量は更に低減することができる。
2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体としては、1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体として例示したものと同様なものが使用できるが、単量体の種類、中和度、中和塩および単量体水溶液濃度は、1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体と同じであっても異なっていてもよい。
2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加される重合開始剤についても、1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体として例示したものから選択して使用することができる。
また、2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液にも、必要に応じて、内部架橋剤、連鎖移動剤等を添加してもよく、1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体として例示したものから選択して使用することができる。
1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対する2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体の添加量は、適度な凝集粒子を得る観点から、50〜300質量部が好ましく、100〜200質量部がより好ましく、120〜160質量部が最も好ましい。
2段目の逆相懸濁重合における、撹拌手段201による撹拌は、全体が均一に混合されていればよい。凝集粒子径は、界面活性剤の析出状態や1段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体に対する2段目重合の水溶性エチレン性不飽和単量体の量によって、変更できる。なお、衛生材料用途に好適な吸水性樹脂の凝集粒子径としては、200〜600μmが好ましく、250〜500μmがさらに好ましく、300〜450μmが最も好ましい。
2段目の逆相懸濁重合における反応温度についても、重合開始剤の種類や量によって異なるので一概には決定することができないが、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜90℃である。2段以上の多段重合を行う場合、以後2段目重合を3段目、4段目と読み換えて実行することができる。
本実施形態の吸水性樹脂の製造装置500において、重合反応器200には、第1配管202を介して熱交換構造体100が接続されている。第1配管202は、一端部が重合反応器200の気相部分に連通するように、重合反応器200の上部に接続され、他端部が熱交換構造体100の気体成分流入開口部51に接続されている。また、第1配管202には、配管内の流路を開閉する第1バルブ202Aが設けられている。第1バルブ202Aが開放された状態となると、重合反応器200の気相部分に存在する気体成分が、第1配管202内を流過し、気体成分流入開口部51を介して熱交換構造体100に流入する。
熱交換構造体100は、重合反応器200内の熱せられた気体成分と熱交換流体との間の熱交換によって前記気体成分を冷却し、その冷却された気体成分である冷却気体成分を、冷却気体成分放出開口部52から放出する。なお、冷却気体成分放出開口部52から放出される冷却気体成分には、重合反応器200から熱交換構造体100に流入してきた気体成分が、冷却されて凝縮(液化)された液体、および、冷却された気体が含まれる。
この冷却気体成分放出開口部52と重合反応器200との間には、第2配管203が接続されている。第2配管203には、配管内の流路を開閉する第2バルブ203Aが設けられている。第2バルブ203Aが開放された状態となると、熱交換構造体100から冷却気体成分放出開口部52を介して放出された冷却気体成分が、第2配管203内を流過して、重合反応器200内に流入する。本実施形態において、第2バルブ203Aが設けられた第2配管203が、冷却気体成分流入構造体として機能する。なお、熱交換構造体100の構成の詳細については、後述する。
吸水性樹脂の製造装置500では、熱交換構造体100において、重合反応器200内の熱せられた気体成分と熱交換流体との間の熱交換によって前記気体成分を冷却し、その冷却された冷却気体成分が、第2配管203を介して重合反応器200内に流入されるので、重合反応器200内の重合熱を除去することができ、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応の安定化を図ることができる。
重合反応器200の底部には、重合反応終了後の重合反応器200から、含水ゲル状架橋重合体R2を含有する重合反応液R1を放出するための重合反応液放出開口部204が設けられている。重合反応液放出開口部204を介して重合反応器200から放出された重合反応液R1は、濃縮器300に流入する。
重合反応液放出開口部204と濃縮器300との間には、第3配管205が接続されている。第3配管205には、配管内の流路を開閉する第3バルブ205Aが設けられている。第3バルブ205Aが開放された状態となると、重合反応器200から重合反応液放出開口部204を介して放出された、含水ゲル状架橋重合体R2を含有する重合反応液R1が、第3配管205内を流過して、濃縮器300内に流入する。
濃縮器300は、重合反応液R1から液体成分を留去する。濃縮器300を構成する材料としては、銅、チタン合金、およびSUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼などを挙げることができるが、含水ゲル状架橋重合体R2の付着が抑制されるという観点から、内壁面にフッ素樹脂加工などの表面加工が施されていることが好ましい。
濃縮器300における重合反応液R1からの液体成分の留去処理は、常圧下でも減圧下でも行ってよく、液体成分の留去効率を高めるために、窒素等の気流下で行ってもよい。また、本実施形態では、濃縮器300には撹拌手段301が配置されており、この撹拌手段301によって重合反応液R1を撹拌しながら液体成分の留去処理が行われる。
濃縮器300による留去処理を常圧下で行う場合、濃縮器300の設定温度は70〜250℃が好ましく、80〜180℃がより好ましく、80〜140℃がさらに好ましく、90〜130℃が最も好ましい。また、濃縮器300による留去処理を減圧下で行う場合、濃縮器300の設定温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。
また、たとえば濃縮器300における重合反応液R1からの液体成分の留去処理中に、水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応性を有する官能基を2個以上含有する後架橋剤を添加することが好ましい。重合後に架橋剤を添加し反応させることにより、吸水性樹脂粒子の表面層の架橋密度が高まり、加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができ、衛生材料用途として好適な性能が付与される。
前記架橋反応に用いられる後架橋剤としては、重合に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体由来の官能基と反応しうるものであれば特に限定されない。
使用される後架橋剤としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物、1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、反応性に優れている観点から(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。
前記後架橋剤の添加量は、重合に付された水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.02〜3質量部である。後架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合、得られる吸水性樹脂の加圧下吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能を高めることができず、5質量部を超える場合、吸水能が低くなりすぎるため好ましくない。
さらに、後架橋剤の添加方法は、後架橋剤をそのまま添加しても水溶液として添加してもよいが、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いた溶液として添加してもよい。この親水性有機溶媒としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびプロピレングリコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、およびテトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びに、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記後架橋剤の添加時期は、重合終了後であればよく、特に限定されない。後架橋反応は、濃縮器300における重合反応液R1からの液体成分の留去処理中において、吸水性樹脂100質量部に対して、1〜200質量部の範囲の水分存在下に実施されるのが好ましく、5〜100質量部の範囲の水分存在下に実施されるのがさらに好ましく、10〜50質量部の水分存在下に実施されるのがよりさらに好ましい。このように、後架橋剤添加時の水分量を調整することによって、より好適に吸水性樹脂の粒子表面層における後架橋を施すことができ、優れた吸水性能を発現することができる。
後架橋反応における温度は、50〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、60〜140℃がさらに好ましく、70〜120℃が最も好ましい。
また、濃縮器300による留去処理を常圧下で行う場合、共沸により系外に留出した液体成分のうち、石油系炭化水素分散媒だけを還流させることにより、脱水を進めることができる。このような、濃縮器300における石油系炭化水素分散媒の還流を実現するための構成として、本実施形態では、濃縮器300には、第4配管302を介して熱交換構造体100が接続されている。第4配管302は、一端部が濃縮器300の気相部分に連通するように、濃縮器300の上部に接続され、他端部が熱交換構造体100の気体成分流入開口部51に接続されている。また、第4配管302には、配管内の流路を開閉する第4バルブ302Aが設けられている。第4バルブ302Aが開放された状態となると、濃縮器300の気相部分に存在する気体成分(重合反応液R1中の液体成分の蒸気)が、第4配管302内を流過し、気体成分流入開口部51を介して熱交換構造体100に流入する。
熱交換構造体100は、濃縮器300内の熱せられた気体成分と熱交換流体との間の熱交換によって前記気体成分を冷却し、その冷却された冷却気体成分を、冷却気体成分放出開口部52から放出する。この冷却気体成分放出開口部52と濃縮器300との間には、第5配管303が接続されている。第5配管303には、油水分離装置307と、配管内の流路を開閉する第5バルブ303Aとが設けられている。第5バルブ303Aが開放された状態となると、油水分離装置307にて冷却気体成分から分離された石油系炭化水素分散媒が、第5配管303内を流過して、濃縮器300内に流入する。また、油水分離装置307から分岐する第6配管304が設けられており、油水分離装置307にて冷却気体成分から分離された水溶液は、分離回収器401に回収される。
なお、本実施形態では、第5配管303に配置される第5バルブ303Aを閉鎖状態にし、油水分離装置307を稼動させないことによって、熱交換構造体100の冷却気体成分放出開口部52から放出された冷却気体成分を、分離回収器401に回収することもできる。また、回収した石油系炭化水素分散媒に代えて、新しい石油系炭化水素分散媒を濃縮器300に添加してもよい。
濃縮器300の底部には、濃縮終了後の濃縮器300から、所定量の液体成分が留去されて濃縮された重合反応液R1の濃縮液を放出するための、濃縮液放出開口部305が設けられている。濃縮液放出開口部305を介して濃縮器300から放出された濃縮液は、乾燥機400に流入する。
濃縮液放出開口部305と乾燥機400との間には、第7配管306が接続されている。第7配管306には、配管内の流路を開閉する第7バルブ306Aが設けられている。第7バルブ306Aが開放された状態となると、濃縮器300から濃縮液放出開口部305を介して放出された濃縮液が、第7配管306内を流過して、乾燥機400内に流入する。
乾燥機400は、水分率が好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように濃縮液を加熱し、乾燥された吸水性樹脂を得る。乾燥機400により得られた吸水性樹脂は、その流動性等の種々の特性を向上させるために、非晶質シリカ粉末等の種々の添加物が添加されてもよい。なお、前記留去処理は、直接乾燥機400にて濃縮および乾燥を行ってもよく、留去処理の代わりにデカンテーション、ろ過、遠心分離機により、生成粒子を分離し、次いで洗浄、乾燥してもよい。
次に、図面を参照しながら本発明の熱交換構造体100について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る熱交換構造体100の構成を示す図である。図3は、熱交換構造体100に備えられる板状部材7の構成を示す図である。なお、図3は、板状部材7を厚み方向から見た図である。
熱交換構造体100は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合体である吸水性樹脂を含有する重合反応液R1が収容された重合反応器200および濃縮器300とそれぞれ接続され、重合反応器200および濃縮器300内の気体成分を冷却する。以下では、重合反応液R1が収容された重合反応器200と濃縮器300とを、「収容器」と総称する。
熱交換構造体100は、収容器から放出された気体成分が流過する流路となる複数の内部配管11と外殻2とを含む。外殻2は、複数の内部配管11を外方から覆うように筒状(本実施形態では円筒状)に形成される胴部21と、該胴部21の軸線S方向一端部に連なる第1蓋部22と、胴部21の軸線S方向他端部に連なる第2蓋部23とを含んで構成される。
胴部21内には、複数の内部配管11が管束1になって設けられている。また胴部21には、内部配管11内を流過する気体成分との間の熱交換によって気体成分を冷却する熱交換流体を胴部21内に供給するための開口を形成する熱交換流体供給開口部61と、熱交換流体を外部に放出するための開口を形成する熱交換流体放出開口部62とが形成されている。なお、本実施形態では、熱交換流体供給開口部61は、胴部21における軸線S方向他端部側(第2蓋部23が設けられる側)に設けられ、熱交換流体放出開口部62は、胴部21における軸線S方向一端部側(第1蓋部22が設けられる側)に設けられている。胴部21内には、熱交換流体が、熱交換流体供給開口部61から熱交換流体放出開口部62に向けて流過するようになっている。
また、胴部21内には、複数の邪魔板3が設けられている。邪魔板3は、胴部21内を流過する熱交換流体の流れ方向を規則的に変化させるように構成されている。複数の邪魔板3は、軸線S方向に一定間隔をあけて軸線Sに直交して設けられている。邪魔板3には、挿通孔が形成されており、この挿通孔に内部配管11が挿通されている。このような邪魔板3が胴部21内に設けられることによって、熱交換流体が、邪魔板3に案内されて、蛇行するように流れ方向Bを変化させながら胴部21内を流過するので、胴部21に囲繞された内部配管11内を流過する気体成分と熱交換流体との間の熱交換効率を上げることができる。
第1蓋部22は、胴部21の軸線S方向一端部に連なる筒状(本実施形態では円筒状)の第1周壁部22aと、該第1周壁部22aの一端部を塞ぐ天板22bとを含んで構成される。第1蓋部22には、収容器から放出された気体成分を、第1蓋部22を介して内部配管11内に流入させるための流入開口を形成する気体成分流入開口部51が形成されている。本実施形態では、気体成分流入開口部51は、第1蓋部22の第1周壁部22aに設けられている。
第2蓋部23は、胴部21の軸線S方向他端部に連なる筒状(本実施形態では円筒状)の第2周壁部23aと、該第2周壁部23aの一端部を塞ぐ底板23bとを含んで構成される。第2蓋部23には、内部配管11内を流過する気体成分が冷却されて生成された冷却気体成分を、第2蓋部23を介して外部に放出させるための放出開口を形成する冷却気体成分放出開口部52が形成されている。本実施形態では、冷却気体成分放出開口部52は、第2蓋部23の底板23bに設けられている。
また、外殻2内には、第1隔壁41と、第2隔壁42と、板状部材7とが配置されている。第1隔壁41は、第1蓋部22と胴部21とを仕切るものである。第1隔壁41は、胴部21の軸線S方向一端部に周縁部が固定されている。具体的には、第1隔壁41は、胴部21の軸線S方向一端部の内周面に周縁部の外周面が接合されて固定されている。また、第1隔壁41は、胴部21の軸線S方向一端部の端面に周縁部の底面が接合されて固定されていてもよい。この第1隔壁41には、内部配管11の一端部が挿通される挿通孔が形成されている。
第2隔壁42は、第2蓋部23と胴部21とを仕切るものである。第2隔壁42は、胴部21の軸線S方向他端部に周縁部が固定されている。具体的には、第2隔壁42は、胴部21の軸線S方向他端部の内周面に周縁部の外周面が接合されて固定されている。また、第2隔壁42は、胴部21の軸線S方向他端部の端面に周縁部の上面が接合されて固定されていてもよい。この第2隔壁42には、内部配管11の他端部が挿通される挿通孔が形成されている。
本実施形態の熱交換構造体100では、収容器から放出された気体成分は、第1蓋部22に形成された気体成分流入開口部51を介して、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間に流入する。このように、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間に流入した気体成分は、筒状の胴部21で囲繞された複数の内部配管11内を流過する。内部配管11内を流過する気体成分は、胴部21内を流過する熱交換流体との間で熱交換が行われて冷却される。このようにして冷却された冷却気体成分は、第2蓋部23と第2隔壁42とで囲まれた空間に流入する。第2蓋部23と第2隔壁42とで囲まれた空間に流入した冷却気体成分は、第2蓋部23に形成された冷却気体成分放出開口部52を介して外部に放出される。このようにして、熱交換構造体100は、収容器から放出された気体成分を冷却することができる。
そして、本実施形態の熱交換構造体100は、収容器から放出された気体成分が流入する、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間に、厚み方向に貫通する複数の貫通孔71が形成された板状部材7が設けられている。板状部材7は、第1蓋部22の側壁部の内周面における、気体成分流入開口部51に対して軸線S方向下方側(胴部21が配置される側)の位置から内方に延びて形成される。
本実施形態では、板状部材7は、その外縁端部が第1蓋部22の側壁部の内周面の全周にわたって接触して設けられている。ただし、板状部材7は、必ずしも、外縁端部が第1蓋部22の側壁部の内周面の全周にわたって接触して設けられる必要はなく、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間に配置されていればよい。すなわち、板状部材7は、第1隔壁41への投影面が、必ずしも、第1隔壁41の全面となる必要はない。
熱交換構造体100には、上記のような板状部材7が設けられているので、気体成分に同伴して流入してきた重合体が核となって成長した、第1蓋部22の内周面に付着した塊状物81が、気体成分の流路となる内部配管11が配置される胴部21の部分に落下してきたとしても、塊状物81によって内部配管11が閉塞されることを防止することができる。すなわち、板状部材7は、第1蓋部22の内周面から剥離して落下してくる塊状物81を受け止めて、塊状物81によって内部配管11が閉塞されることを防止する。
また、熱交換構造体100が、収容器として重合反応器200と接続されている場合、この重合反応器200から熱交換構造体100内に流入される気体成分には、モノマー(水溶性エチレン性不飽和単量体)が含まれている場合がある。この場合には、モノマーによる重合反応により、第1蓋部22の内周面に付着した重合体の、内周面に対する固着強度が一層大きくなり、これによってより大きな塊状物81へと成長することになる。このようにして、より大きく成長した塊状物81が、第1蓋部22の内周面から剥離して落下したとしても、その塊状物81を板状部材7によって受け止めることができるので、塊状物81によって内部配管11が閉塞されることを防止することができる。
また、吸水性樹脂の製造装置500は、重合反応器200から放出された気体成分の流路となる内部配管11が配置される胴部21に向けて塊状物81が落下してきたとしても、内部配管11の閉塞を防止する板状部材7を含む熱交換構造体100が備えられているので、塊状物81の断片が、冷却気体成分に同伴して重合反応器200内に流入することを防止することができるので、重合反応器200内における重合反応により生成される吸水性樹脂の均質性の低下を防止することができる。たとえば、重合反応器200内に塊状物81の断片が流入した場合、吸水性樹脂の製品特性に影響を及ぼす、あるいは、凝集粒子径の制御が困難になるなどのおそれがあるが、本実施形態では、重合反応器200内に塊状物81の断片が流入することを、板状部材7によって防止するので、凝集粒子径の制御性が良好であり、これによって吸水性樹脂の均質性の低下を防止することができる。
なお、板状部材7には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔71が形成されているので、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間から、胴部21に囲繞された内部配管11までの、気体成分の流路は、確保されている。
また、板状部材7は、第1蓋部22に対してフランジを介して着脱自在に固定されて設けられている。長期間の使用により、多くの塊状物81が板状部材7に付着した場合には、板状部材7を第1蓋部22から取り外して、付着した塊状物81を洗浄除去するようにすればよい。また、塊状物81が付着した板状部材7を第1蓋部22から取り外して、新しい板状部材7と交換するようにしてもよい。このように、新しい板状部材7と交換するようにした場合には、装置稼働率を飛躍的に向上させることができる。
また、板状部材7は、胴部21の軸線Sに対して傾斜していることが好ましい。このように、板状部材7を傾斜させて設ける場合には、板状部材7の傾斜方向下端部が、第1蓋部22の側壁部の内周面における、気体成分流入開口部51に対して軸線S方向下方側に位置するようにすればよい。板状部材7を軸線Sに対して傾斜して設けることによって、第1蓋部22の内周面から剥離して、板状部材7上に落下してきた塊状物81を、傾斜方向下方側に集めることができるので、板状部材7に形成される貫通孔71の全てが塊状物81によって閉塞されることを長期間にわたって防止することができ、そのため、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間から、胴部21に囲繞された内部配管11までの、気体成分の流路を、長期間にわたって確保することができる。
なお、軸線Sに垂直な第1隔壁41に対する、板状部材7の傾斜角度θは、5〜80°が好ましく、10〜60°がより好ましく、20〜50°がさらに好ましい。傾斜角度θを5°以上に設定することによって、板状部材7上に落下してきた塊状物81を、傾斜方向下方側に集めるという効果がより確実に発揮される。傾斜角度θを80°以下に設定することによって、板状部材7が収容される第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間が大きくなりすぎることを防止することができる。
また、板状部材7の開口率(板状部材7の表面における貫通孔7全体の占める面積割合)は、20〜95面積%が好ましく、30〜95面積%がより好ましく、40〜90面積%がさらに好ましい。板状部材7の開口率を前記範囲に設定することによって、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間から、胴部21に囲繞された内部配管11までの、気体成分の流路を充分に確保することができる。
また、板状部材7は、第1蓋部22と第1隔壁41とで囲まれた空間に、複数配置するようにしてもよい。
また、熱交換構造体100を構成する材料としては、銅、チタン合金、およびSUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼などを挙げることができるが、傾斜配置される板状部材7上に落下してきた塊状物81の、傾斜方向上方側から下方側に向けての滑り性を考慮すると、板状部材7には、フッ素樹脂加工などの表面加工が施されていることが好ましい。
また、板状部材7を傾斜させて設ける場合には、板状部材7の傾斜方向下端部の位置が、軸線S方向に関して気体成分流入開口部51が設けられる位置に一致しないようにすることが好ましい。これによって、板状部材7上に落下してきた塊状物81の、傾斜方向下方側に集められる位置が、気体成分流入開口部51が設けられる位置に対してずれた位置となるので、塊状物81によって気体成分流入開口部51が閉塞されることを抑制することができる。
また、板状部材7は、第1蓋部22の側壁部に設けられる気体成分流入開口部51の流入開口を正面視するような方向から板状部材7を見たときに、流入開口を中心に外方側が下がった湾曲形状に形成されるようにしてもよい。これによって、板状部材7上に落下してきた塊状物81の、傾斜方向下方側に集められる位置が、気体成分流入開口部51が設けられる位置に対してずれた位置となるので、塊状物81によって気体成分流入開口部51が閉塞されることを抑制することができる。
また、板状部材7は、複数の貫通孔71が形成されたものであれば、その形状は特に限定されないが、図3(a)に示すような、矩形状の貫通孔71が網目状に形成されたものを例示することができる。また、図3(b)に示すような、円形状の貫通孔71Aが複数形成された板状部材7Aも例示することができる。
さらに、図3(c)に示すような板状部材7Bも例示することができる。板状部材7Bは、矩形状の貫通孔71Bが網目状に形成されたものであり、さらにその表面にV字帯状の塊状物案内片72Bが設けられている。この板状部材7Bを傾斜させて設ける場合には、板状部材7Bの傾斜方向下端部がV字状の塊状物案内片72Bの広がり部分となり、かつ、塊状物案内片72Bの広がり部分の位置が、軸線S方向に関して気体成分流入開口部51が設けられる位置に略一致するように、板状部材7Bを第1蓋部22内に配置する。これによって、板状部材7B上に落下してきた塊状物81の、塊状物案内片72Bによって案内されて、傾斜方向下方側に集められる位置が、気体成分流入開口部51が設けられる位置に対してずれた位置となるので、塊状物81によって気体成分流入開口部51が閉塞されることを抑制することができる。