JP5757394B2 - 希土類永久磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類永久磁石の製造方法に関する。
高性能永久磁石として代表的なR−T−B系永久磁石(RはNdおよび/またはPrを含む希土類元素、TはFeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したもの、Bはホウ素)は、三元系正方晶化合物であるR14B相(NdFe14B型化合物相)を主相として含み、優れた磁気特性を発揮する。
R−T−B系永久磁石の製造方法のひとつとして、HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)処理法が知られている。HDDR処理法は水素化(Hydrogenation)および不均化(Disproportionation)と、脱水素(Desorption)および再結合(Recombination)とを順次実行するプロセスを意味しており、主に異方性ボンド磁石用の磁石粉末の製造方法として採用されている。公知のHDDR処理によれば、まず、R−T−B系合金のインゴットまたは粉末を、Hガス雰囲気、またはHガスと不活性ガスとの混合雰囲気中で温度500℃〜1000℃に保持し、上記のインゴットまたは粉末に水素を吸蔵させる。その後、例えばH圧力が13Pa以下の真空雰囲気、またはH分圧が13Pa以下の不活性雰囲気で温度500℃〜1000℃で脱水素処理し、次いで冷却する。
上記処理において、典型的には以下の反応が進行する。
まず、所定温度で水素を吸蔵させる熱処理により、水素化および不均化反応が進行して微細組織が形成される。水素化および不均化反応の両方をあわせて「HD反応」と呼ぶ。典型的なHD反応では、NdFe14B+2H→2NdH+12Fe+FeBの反応が進行する。
HD反応に続いて、脱水素ならびに再結合反応が進行する。脱水素ならびに再結合反応をあわせて「DR反応」と呼ぶ。典型的なDR反応では、例えば2NdH+12Fe+FeB→NdFe14B+2Hの反応が進行する。こうして、微細なR14B結晶相を含む合金が得られる。
なお、本明細書ではHD反応を起こすための熱処理を「HD処理」、DR反応を起こすための熱処理を「DR処理」と称する。また、HD処理およびDR処理の両方を行うことを「HDDR処理」と称する。
HDDR処理を施して製造されたR−T−B系永久磁石粉末は、粉末ながら大きな保磁力を有し、磁気的な異方性を示している。このような性質を有する理由は、HDDR処理後における金属組織を構成している結晶粒(crystal grains)のサイズが0.1μm〜1μmと非常に微細であり、反応条件や組成を適切に選択することにより、磁化容易軸が一方向にそろった前記結晶粒の集合体が形成されるためである。前記結晶粒のサイズが正方晶R14B系化合物の単磁区臨界粒径に近いと、粉末状態でも高い保磁力を発揮することができる。HDDR処理によって得られる正方晶R14B系化合物の非常に微細な結晶粒の集合体を「再結晶集合組織」と呼ぶ。
HDDR処理によって作製されたR−T−B系永久磁石粉末(以下、「HDDR磁粉」と称する場合がある)は、通常、結合樹脂(バインダ)と混合され、混合物(コンパウンド)にされる。その後、磁界中で圧縮成形や射出成形を行うことにより、異方性ボンド磁石が作製される。また、熱間圧縮成形などによってHDDR磁粉を緻密化し、バルク磁石(高密度磁石)として用いることもできる。
しかし、HDDR磁粉を用いて作製したボンド磁石やバルク磁石は、耐熱性が十分に高くはないという課題がある。例えば自動車のように高温にさらされる用途では磁石の耐熱性が低いと不可逆減磁が生じる可能性が高い。したがって、HDDR磁粉は、耐熱性を十分に改善しない限り、自動車用途に用いることが困難である。耐熱性を改善するためには、HDDR磁粉の保磁力そのものを向上させる必要がある。これまで、HDDR磁粉の保磁力を向上させる方法がいくつか提案されている。
特許文献1には、Nd、Dy、Tb、もしくはPr、またはそれらを含有する合金によるコーティング層を異方性希土類磁石粉末(HDDR磁粉)の表面に形成することが記載されている。具体的には、これらの元素と融点Tが500℃≦T≦T+100℃(TはHDDR処理温度)の元素の合金の粉末を用意し、異方性希土類磁石粉末と混合して熱処理することが記載されている。上記の元素が異方性希土類磁石粉末表面に拡散されると、保磁力が向上する。熱処理温度Tは、400℃≦T≦T+50℃の条件を満足するように設定される。特許文献1の実施例では、上記合金の例として、NdCo合金やDyCo合金が使用されている。
特許文献2には、RFeB系材料の水素化物粉末に、Dy、Tb、Nd、Prなどの単体、合金、化合物、またはそれらの水素化物の粉末を混合して拡散熱処理を行った後、脱水素工程(DR処理工程)を行う方法が記載されている。上記の合金、化合物、水素化物が3d遷移元素および4d遷移元素の1種以上を含むことが好適であると記載されている。特に、Fe、Co、Niが磁気特性の向上を図る上で有効であることが開示されている。実施例では、上記合金の例としてNdCo合金やDyCo合金が開示されている。
特許文献3では、Dy、Tb、Ho、Er、Tm、Gd、Nd、Sm、Pr、Ce、La、Y、Zr、Cr、Mo、V、Ga、Zn、Cu、Mg、Li、Al、Mn、Nb、Tiの中から選択される少なくとも一種の金属蒸気を、磁粉に付着させて熱処理・拡散を行うことにより、磁気特性、耐食性および耐候性が向上することが開示されている。Dy、Tb等が磁粉の粒界に拡散することにより、磁気特性の優れた磁石が得られると記載されている。
特許文献4は、HDDR磁粉をアルミニウム膜で被覆した後、450℃〜600℃で熱処理を行うことを開示している。
特許文献5は、HDDR磁粉と10〜500μmのAl粉末を混合してホットプレスすることでHDDR磁粉とAl粉末の境界部分に希土類元素およびAlを含む酸化物が形成され、着磁による体積変化を低減させるとともに優れた磁気特性が維持されることを開示している。
一方、HDDR磁粉の粒界組成に関する研究が進められてきた。非特許文献1には、従来のHDDR磁粉においては、硬磁性相であるNdFe14B型結晶相間の粒界に存在するNdリッチ相内で、強磁性元素(Fe、Co、Ni)の存在比率が高いことが開示されている。また、非特許文献2では、HDDR磁粉の保磁力が粒界Ndリッチ相における磁壁のピニングによって発現することが開示されている。
特開2000−96102号公報 特開2002−93610号公報 特開2008−69415号公報 特開2005−15918号公報 特開2010−109098号公報
従来、HDDR磁粉に対して種々の添加元素を種々のタイミングで添加することにより、保磁力を向上させることが検討されてきた。その多くは、添加元素として用いられるDyまたはTbに保磁力向上の主たる役割を担わせたものである。DyおよびTbは高い保磁力向上効果を有するが、これらの元素は、希少資源であり高価な元素である。このため、DyおよびTbの使用量を最小限に抑えつつ、HDDR磁粉の保磁力を向上させることが強く望まれている。
特許文献1では、DyやTbを用いずに保磁力を高める手法として、Nd68Co32組成の合金や、Pr67Co33組成の合金を用いることが実施例において開示されている。また、特許文献2ではNd70Co30組成の合金を実施例で開示されている。しかし、後に示す実施例のとおり、例えばNdとCoの合金を用いた場合、特に粒度の粗い合金を使用した際に保磁力が十分高くならないという問題がある。
特許文献3では、保磁力の向上が大きく期待できるDy、Tbなどや希少元素であるHoやErを大量に含む混合金属蒸気を用いて保磁力を向上させているため、希少資源低減の観点から問題がある。
特許文献4では、HDDR磁粉に対しAlを被覆した後、熱処理することで保磁力が向上させることができることが開示されている。しかし、保磁力の向上効果は最大で100kA/m程度にとどまっており、さらに、特許文献4に開示されているAlのコーティング方法は大量処理が困難であり生産性に問題がある。
特許文献5ではHDDR磁粉とAl粉末を混合してホットプレスする方法が検討されているが、本手法による保磁力向上効果についての記載は見られない。
本発明は、HDDR処理によって作製されるR−T−B系永久磁石粉末に対し、Dy、Tbなどの資源的に希少で高価な元素を使用することなく、R−T−B系永久磁石粉末の保磁力を大きく向上させる希土類永久磁石の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の希土類永久磁石の製造方法は、HDDR処理によって作製され、平均結晶粒径が0.1μm以上1μm以下の再結晶集合組織を有するR−T−B系永久磁石粉末(RはNdおよび/またはPrをR全体に対して80原子%以上含む希土類元素、TはFeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したものであり、Feを50原子%以上含む遷移金属元素)を準備する工程Aと、R’(R’はNdおよび/またはPrをR’全体に対して90原子%以上含み、DyおよびTbを含まない希土類元素)とAlからなり、かつ、Alが2原子%以上65原子%以下であるR’−Al系合金粉末を準備する工程Bと、前記R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末とを混合し、混合粉末を作製する工程Cと、前記混合粉末を不活性雰囲気または真空中において、550℃以上900℃以下の温度で熱処理を行う工程Dとを含む。
好ましい実施形態において、前記R−T−B系永久磁石粉末がDyおよびTbを含有していない。
好ましい実施形態において、前記R−T−B系永久磁石粉末の保磁力が1200kA/m以上である。
好ましい実施形態において、前記工程Bは、急冷法によってR’−Al系合金を作製する工程b1と、R’−Al系合金を粉砕する工程b2とを含む。
好ましい実施形態において、前記工程Dでは、前記混合粉末を550℃以上900℃以下の温度で、1分以上240分以下の時間、保持する。
好ましい実施形態において、前記工程Dの前、前記混合粉末に対し、500℃以上900℃以下の温度、20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程Eを包含する。
好ましい実施形態において、前記工程Dの後、前記混合粉末に対し、500℃以上900℃以下の温度、20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程Eを包含する。
好ましい実施形態において、前記工程Dは、前記熱処理中において20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程を包含する。
本発明によれば、Dy、Tbなどの高価な希少資源の使用を抑制しつつ、保磁力が処理前よりも大幅に向上した高特性なR−T−B系永久磁石を提供することができる。
本発明の製造方法を説明するためのフローチャートである。 本発明の実施形態で用いることのできる急冷装置の一例を示す図である。 (a)はR−T−B系永久磁石粉末の走査電子顕微鏡による反射電子像、(b)はR−T−B系永久磁石粉末とR’−Al合金粉末を混合して熱処理した試料の走査電子顕微鏡による反射電子像である。 (a)はR−T−B系永久磁石粉末の透過電子顕微鏡による明視野像、(b)はR−T−B系永久磁石粉末とR’−Al合金粉末を混合して熱処理した試料の透過電子顕微鏡による明視野像、(c)は(b)における2粒子粒界の部分を拡大した高分解像である。 本発明の実施形態で用いることのできるホットプレス装置の一例を示す図である。
発明者らは、R−T−B系永久磁石粉末の保磁力を向上させる手段として、希土類元素として従来から用いられているDyやTbではなく、NdやPrに着目した。検討の結果、後述する実験例に示すように、R−T−B系永久磁石粉末とNdを混合して熱処理することにより、0.2MA/m程度保磁力を向上させられることが確認されたため、さらなる検討を行った結果、Ndおよび/またはPrの希土類金属とAlとの合金粉末をR−T−B系永久磁石粉末に混合して適切な条件の熱処理を行うと、保磁力を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、R−T−B系永久磁石粉末にR’−Al系合金粉末を混合して熱処理するという簡易的な手法であり、生産性にも優れている。
このように保磁力が向上する主な理由としては、R−T−B系永久磁石粉末の主相(RFe14B相)粒界部にNdやAlが導入されることで、R−T−B系永久磁石粉末の再結晶集合組織における粒界相が非磁性化され、その結果、微細な結晶粒間の磁気的な結合が分断されたことで、単磁区粒子径に近い結晶粒径の効果が顕在化したものと考えられる。
本発明の希土類永久磁石の製造方法は、図1に示すように、まず、HDDR処理によって作製されたR−T−B系永久磁石粉末(HDDR磁粉)を準備する工程Aを行う。ここで、RはNdおよび/またはPrをR全体の95原子%以上含む希土類元素である。TはFeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したものであり、Feを50原子%以上含む遷移金属元素である。このR−T−B系永久磁石粉末を構成する個々の粉末粒子は、平均結晶粒径が0.1μm〜1μmの微細結晶粒の集合体である。微細結晶粒のアスペクト比(長軸/短軸の比)は2以下である。
一方、R’−Al系合金粉末を準備する工程Bを行う。ここで、R’は、DyおよびTbを含まない希土類元素であり、R’全体の90原子%以上はNdおよび/またはPrである。R’−Al系合金は、R’およびAlからなり、不可避の不純物を含みうる。このR’−Al系合金粉末におけるAlは2原子%以上65原子%以下である。
上記の工程Aおよび工程Bの順序は任意であり、同時期に別々の場所で実行されていてもよい。なお、本明細書において「準備する」とは、自社で製造することのみならず、他社が製造したものを購入することをも含むものとする。
次に、上記のR−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金粉末を混合する工程Cを行う。そして、この混合粉末を不活性雰囲気または真空中において、550℃以上900℃以下の温度で熱処理を行う工程Dを行う。
本発明によれば、R−T−B系永久磁石粉末と混合されるR’−Al系合金粉末からR’やAlがR−T−B系永久磁石粉末に効率的に供給される。なお、Al供給源として単にAl粉末を使用し、上記工程CおよびDを行った場合、後述の実験例1に記載するように、本発明のような保磁力の向上効果は得られなかった。先述したとおり、従来のR−T−B系永久磁石粉末においては、硬磁性相であるNdFe14B型結晶相間の粒界に存在するNdリッチ相内では、強磁性元素(Fe、Co、Ni)の存在比率が高いことが示唆されている(非特許文献2)。このような強磁性元素がRリッチ相内に高い濃度で存在する従来のR−T−B系永久磁石粉末では、結晶粒間の磁気的な結合が十分に分断されておらず、これにより、充分な保磁力が達成されていなかった可能性がある。しかし、本発明によれば、R’−Al系合金粉末からR−T−B系永久磁石粉末に供給されたR’やAlがR−T−B系永久磁石粉末の粒界相を拡散する。その結果、非磁性元素であるR’やAlの濃度が上昇し、これが保磁力改善に寄与していると考えられる。
なお、Alを含有する組成の原料合金にHDDR処理を行った場合にもAlを含有しない組成の原料合金の場合よりも高い保磁力を有するR−T−B系永久磁石粉末が得られることが、文献[R. Nakayama and T.
Takeshita, J. Alloys Compd. 193, 259(1993)]により従来から知られているが、Alなどの添加物を原料合金の段階で添加した場合、HDDR反応の反応速度の制御に制約が生じ、結晶方位を揃えることが困難になる等の問題が起こる。本発明はすでにHDDR反応が完了したR−T−B系永久磁石粉末に対しNdなどのR’やAlを導入するため、結晶方位を維持したまま保磁力を向上させることができる。また、原料合金に含まれるAlは粒界だけでなく主相であるR14B相内部にも存在し、R14B相の磁化を低下させることが知られているが、前述の通り本発明による導入方法ではAlは粒界により濃縮されることから、溶解時にAlを添加するよりも本発明の方法によってR’−Al系合金粉末からAlを粒界に導入する方が、磁化の低下を抑えつつ、さらに同じ導入量でも効率的に保磁力を向上させることができる。
本発明で使用するR’−Al系合金の構成元素であるNd(またはPr)およびAlは、DyおよびTbに比べて格段に安価で入手しやすい元素である。
以下、本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
<R−T−B系永久磁石粉末>
本発明で用いるR−T−B系永久磁石粉末(HDDR磁粉)は、原料合金を公知の方法で粉砕して作製した原料粉末に対し、HDDR処理を施すことによって作製される。以下、R−T−B系永久磁石粉末を作製するための各工程を詳細に説明する。
〈原料合金〉
まず、硬磁性相としてR14B相(NdFe14B型化合物相)を有する原料合金を用意する。ここで、「R」は、希土類元素であり、Ndおよび/またはPrを80原子%以上含む。本明細書における希土類元素Rはイットリウム(Y)を含んでいてもよい。「T」は、FeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したものであり、Feを50原子%以上含む遷移金属元素である。「B」はホウ素でありその一部をC(炭素)で置換してもよい。原料合金は、R14B相を50体積%以上含むことが好ましい。より高い残留磁束密度Bを得るためには、R14B相を80体積%以上含むことが好ましい。
原料合金に含まれる希土類元素Rの大部分は、R14B相を構成しているが、一部は、Rリッチ相やR相や、その他の相を構成している。出発合金に占める希土類元素Rの組成比率は、11原子%以上18原子%以下であることが好ましい。希土類元素Rが11原子%未満の場合は、HDDR処理によって微細結晶粒を得ることが困難となり、本発明の効果が得られない。一方、希土類元素Rの組成比率が18原子%を超えると磁化の低下を招来し、例えば、R’−Al系合金を拡散した後の磁石の磁化が、Dyの添加によって得られる従来の高保磁力磁石よりも小さくなってしまう。希土類元素Rの組成比率のより好ましい範囲は、12原子%以上16原子%以下である。
原料合金に含まれる希土類元素Rの一部(R全体の5原子%程度)をDyおよび/またはTbとすることにより、R−T−B系永久磁石粉末の保磁力を更に高めることもできる。したがって、本発明では、希土類元素Rの一部としてDyおよび/またはTbを添加することを必ずしも排除しない。しかしながら、高価で希少な資源であるDy、Tbの使用量を極力抑えるという観点からは、Dyおよび/またはTbを添加する場合でも、その添加量をR全体の5原子%未満で制限することが好ましく、Ndおよび/またはPrがR全体の95原子%以上を占めていることが好ましい。希少元素の消費量低減という観点から、希土類元素Rは、DyやTbを不可避の不純物レベル以上に含まないことがより好ましい。前述したように、本発明によれば、R’−Al系合金を用いてR−T−B系永久磁石粉末の粒界相を改質し、それによって保磁力を向上させることが可能になるため、DyおよびTbの添加量を低減しても高保磁力化を達成することができる。
原料合金に含まれるBの組成比率が低すぎると保磁力を低下させるR17相等が析出し、高すぎると非磁性相であるBリッチ相等が増加して残留磁束密度Bが低下する。このため、原料合金に含まれるBの組成比率は5原子%以上10原子%以下であることが好ましい。Bの組成比率は、5.8原子%以上8原子%以下であることがより好ましく、6原子%以上7.5原子%以下であることがさらに好ましい。
Tは残余を占める。前述したとおり、Tは、FeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したものであり、Feを50原子%以上含む遷移金属元素である。キュリー点を高めること、耐食性を高めることなどを目的としてTの一部をCoおよび/またはNiとすることがある。R14B相の飽和磁化を高めるという観点から、NiよりもCoを選定することが望ましい。また、合金全体に対するCoの総量は、コストなどの観点から、20原子%以下であることが好ましく、8原子%以下であることがさらに好ましい。Coを全く含有しない場合でも高い磁気特性は得られるが、1原子%以上のCoを含有すると、より安定した磁気特性を得ることができる。
磁気特性向上などの効果を得るため、原料合金にAl、Ti、V、Cr、Ga、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、W、Cu、Si、Zrなどの元素を適宜添加してもよい。ただし、添加量の増加は、特に飽和磁化の低下を招くため、総量が10原子%以下とすることが好ましい。特に、V、Ga、In、Hf、Taは高価なため、コストなどの観点からこれらの原料合金中の含有量は1原子%以下とすることが好ましい。
原料合金はブックモールド法や遠心鋳造法、ストリップキャスト法など公知の方法によって作製され得る。ただし、HDDR処理後にR−T−B系永久磁石粉末の各粒子が優れた磁気的異方性を示すためには、HDDR処理前の原料粉末粒子中に存在する結晶粒の磁化容易軸が一方向にそろっている必要がある。理想的には一つの原料粉末粒子中に存在するR14B結晶粒は一つである。このため、粉砕する前の段階において、多結晶状態にある原料合金中で主相(R14B相)の結晶サイズが、粉砕後の原料粉末粒子の粒子径よりも大きな組織になっていることが好ましい。
ブックモールド法や遠心鋳造法によって主相(R14B相)を粗大化させた原料合金を作製した場合、鋳造の初晶であるα−Feを完全除去することが困難である。このため、原料合金における組織均質化などを目的として、粉砕前の原料合金に対して熱処理を施すことが好ましい。このような熱処理は、真空または不活性雰囲気において、典型的には1000℃以上の温度で実行され得る。
〈原料粉末〉
次に、原料合金を公知の方法で粉砕することにより原料粉末を作製する。本実施形態では、まず、ジョークラッシャなどの機械的粉砕法や公知の水素粉砕法などを用いて原料合金を粉砕し、大きさ50μm〜1000μm程度の原料粉末を作製する。
<HDDR処理>
次に、上記粉砕工程によって得られた原料粉末に対し、HDDR処理を施す。HD反応のための昇温工程は、水素分圧10kPa以上500kPa以下の水素ガス雰囲気または水素ガスと不活性ガス(ArやHeなど)の混合雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空中のいずれかで行う。昇温工程を不活性ガス雰囲気または真空中で行うと、昇温時の反応速度制御の困難性に起因する磁気特性低下を抑制することができる。
HD処理は、水素分圧10kPa以上500kPa以下の水素ガス雰囲気または水素ガスと不活性ガス(ArやHeなど)の混合雰囲気で、650℃以上1000℃未満で行う。HD処理時の水素分圧は20kPa以上200kPa以下がより好ましい。処理温度は700℃以上900℃以下であることがより好ましい。HD処理に要する時間は、15分以上10時間以下であり、典型的には30分以上5時間以下の範囲に設定される。なお、R−T−B系合金中のTについて、Co量が合金全体の組成に対し、3原子%以下の場合は、昇温時の雰囲気を50kPa以下の水素分圧、もしくは、不活性ガスや真空中で行なうことが好ましく、より好ましくは昇温時の水素分圧を5kPa以上50kPa以下、更に好ましくは、10kPa以上50kPa以下とすることにより、HDDR処理後に優れた磁気特性(高い残留磁束密度)を得ることができる。
HD処理のあと、DR処理を行う。HD処理とDR処理は同一の装置内で連続的に行うこともできるが、別々の装置を用いて不連続に行うこともできる。
DR処理は、真空または不活性ガス雰囲気下において650℃以上1000℃未満で行う。処理時間は、通常、15分以上10時間以下であり、典型的には30分以上2時間以下の範囲に設定される。なお、雰囲気を段階的に制御する(例えば水素分圧を段階的に下げたり、雰囲気圧力を段階的に下げたりする)ことができることは言うまでもない。
前記の方法で作製するR−T−B系永久磁石粉末の保磁力(HcJ)は1200kA/m以上であることが好ましい。本発明の製造方法では、典型的には400kA/m程度の保磁力向上が望めることから、例えば1200kA/m以上の磁粉に適用することで、特に優れた耐熱性を有する磁石を容易に作製することができる。このようなR−T−B系永久磁石粉末は、例えば0.1〜1原子%程度の微量のGaを合金組成に添加することにより実現できる。
<R’−Al合金粉末>
本発明に用いられるR’−Al系合金粉末は、不可避の不純物以外はR’とAlからなり、Alが2原子%以上65原子%以下である合金の粉末である。
R’はNdおよびPrの少なくとも一方を主な元素として含む希土類元素である。具体的には、R’は、Ndおよび/またはPrをR’全体に対して90原子%以上含むとともに、不可避の不純物レベル以上のDyおよびTbを含まない。R’全体に占めるNdおよびPrの合計の割合は、97原子%以上であることがより好ましい。
R’−Al系合金粉末中のAlは2原子%以上65原子%以下である。R’−Al系合金粉末中のAlが2原子%より小さくても65原子%より大きくても、保磁力が十分に向上しない。R’−Al系合金粉末中のAlの範囲は10原子%以上60原子%以下が好ましい。さらに、後述する実験例に示すH(Hは磁化の値が残留磁束密度(B)の90%となる減磁界の値)の値の大きさ、R’−Al系合金の粉砕性や粉砕粉の化学的安定性、安全性を考慮すると、R’−Al系合金粉末中のAlは、35原子%以上55原子%以下であることがより好ましい。
R’−Al系合金粉末は公知の合金粉末作製方法を用いて作製することができる。R−T−B系永久磁石粉末と混合して熱処理したときの反応をより均一に進行させるためには、R’−Al系合金の組織を微細かつ均一にすることが好ましい。このような観点から、R’−Al系合金の作製方法としてメルトスピニング法や双ロール法などの急冷法で合金を作製し、得られた急冷合金を粉砕する方法を採用することが好ましい。
図2は、本発明の実施形態で好適に使用され得る急冷装置の一例を示している。以下、この装置を用いてR’−Al合金を製造する方法の例を説明する。
まず、不活性ガス雰囲気中において高周波溶解を行うことによって合金を溶融し、合金の溶湯1を形成する。溶湯1は、0.5〜2mmφのオリフィス径を有する出湯ノズル2から冷却ロール3に噴射される。冷却ロール3は高速度で回転しているため、冷却ロール3の表面に接触した溶湯1は、冷却ロールによって急速に熱を奪われ、急冷される。溶湯1は回転する冷却ロール3から飛ばされ、リボン状の急冷合金4となる。
冷却ロール3は,熱伝導性や耐久性に優れる炭素鋼、タングステン、鉄、銅、モリブデン、ベリリウムまたはそれらの合金から形成されていることが好ましい。急冷工程中の冷却ロール3の表面速度(ロール周速度)は1〜50m/秒とすることが好ましい。1m/秒未満になると冷却速度が十分速くないために急冷合金中の組織が粗大となり、所望の効果が得られにくくなる。また、急冷合金の厚さが増すことにより、粉砕性が悪化する。ロール周速度が50m/秒を超えると安定的な合金の作製を阻害する可能性が生じる。本実施形態の場合、合金溶湯の冷却速度は、1×10℃/秒以上1×10℃/秒以下の範囲となることが好ましい。例えばメルトスピニング法によって合金を作製する場合には、ロールにCuなどを用いた公知の単ロール急冷装置を用いる。
R’−Al系合金粉末を用いることで、粉末の粒度が比較的大きい、例えば、JIS Z8801のふるいで分級したとき25μm以上の粉末の割合が50質量%以上である場合にも、拡散処理による保磁力向上の効果が得られる。このような粉末は、R’−Al系合金が活性であることに起因する酸化の抑制や安全性の確保等の観点で有効である。無論、R−T−B系永久磁石粉末との均一混合を目的として、より微細な粉末を用いて拡散処理を行ってもよい。
R’−Al系合金の粉砕は、後述するR−T−B系永久磁石粉末との混合(工程C)と同時に行ってもよい。このようにすることにより、工程数の増加を避けることができる。また、R−T−B系永久磁石粉末の粉砕が更に進行するため、より均一にR’−Al系合金と混合される。このことは、R’−Al系合金からR−T−B系永久磁石粉末への元素拡散の効果を増大させることにも寄与する。
<混合>
R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al合金系粉末の混合は、ミキサー等の公知の技術を用いて行うか、もしくは、前記のとおり、R’−Al系合金を粉砕しながらR−T−B系永久磁石粉末との混合を同時に行う。R’−Al系合金のR−T−B系永久磁石粉末に対する混合割合が質量比で1:80から1:5の範囲であることが好ましい。1:80よりもR’−Al系合金の混合比が小さくなると保磁力向上効果が顕在化しない。また、1:5よりもR’−Al系合金の混合比が大きくなっても保磁力はそれ以上向上することがなく、磁化が低下するのみとなってしまう。より好ましい混合比の範囲は、1:30から1:5である。
R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末の混合粉末全体の組成に対する、希土類元素(R+R’)の割合は、12原子%以上25原子%以下であることが好ましい。希土類元素(R+R’)の組成比率が12原子%未満の場合は、主相(R14B相)の粒界にRリッチ相が十分に形成されないために、高い保磁力を得ることが困難である。一方、希土類元素(R+R’)の組成比率が25原子%を超えると磁化の低下を招来し、例えば、Dyの添加によって得られる従来の高保磁力磁石の磁化の値よりも小さくなってしまう。希土類元素(R+R’)の組成比率は、12.5原子%以上23原子%以下がより好ましい。
R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末の混合粉末全体の組成に対する、Alの割合は、0.05原子%以上10原子%以下であることが好ましい。0.05原子%未満の場合は、主相(R14B相)の粒界のRリッチ相組成が適正化されないために、高い保磁力向上効果を得ることが困難である。一方、Alの割合が10原子%を超えると主相(R14B相)中のRがAlと反応する結果、α−Fe相など保磁力に悪影響を与える相が発現する可能性が生じる。Alの組成比率は0.1原子%以上9原子%以下であることがより好ましい。
<拡散熱処理>
次に、上記混合粉末を真空中、あるいは不活性ガス中にて550℃以上900℃以下の温度で熱処理する(工程D)。熱処理温度が550℃未満では、十分に拡散が進行しないために保磁力が十分向上しない。また、熱処理温度が900℃を超えると、R−T−B系永久磁石粉末が結晶粒成長してしまい、保磁力の低下を招来する。より好ましい熱処理温度の範囲は、600℃以上850℃以下である。熱処理中の酸化を抑制するため、雰囲気はアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気または真空が好ましい。また、熱処理時間は1分以上240分以下が好ましい。熱処理時間が1分未満では、十分に拡散が進行せず、また、240分以上では、生産性の低下を招くだけでなく、熱処理時に雰囲気中に存在する極微量の酸素や水分による酸化が起こって磁気特性が低下する可能性があるからである。
なお、550℃以上900℃以下の温度での熱処理(工程D)の後に、450℃以上600℃以下であって、工程Dにおける熱処理温度以下の温度で第2の熱処理を行うこともできる。第2の熱処理工程における熱処理時間は1分以上180分以下が好ましい。熱処理時間が1分未満では、第2の熱処理の効果が得られず、また、180分を超えると、生産性の低下を招くだけでなく、熱処理時に雰囲気中に存在する極微量の酸素や水分による酸化が起こって磁気特性が低下する可能性があるからである。
<熱間成形>
上記拡散熱処理後の磁石は、解砕または粉砕した後、樹脂と混合して成形を行いボンド磁石としても用いることができる。より高い特性の磁石を得るためには、熱間成形による緻密化(工程E)を行って密度7.0g/cm以上の高密度磁石とすることもできる。
熱間成形法としてはホットプレス法や放電プラズマ焼結(SPS)法など、公知の方法が採用されるが、生産性を考慮すると、金型を急速に加熱できる高周波ホットプレス法や、試料に直接通電して急速加熱ができるSPS法が好適に用いられる。
なお、磁界を付与して個々の磁石粉末の磁化容易方向をそろえてから熱間成形を行なうことにより、異方性高密度磁石が作製でき、高い残留磁束密度(B)を得ることができる。この場合には、室温の磁界中で圧縮成形することにより、仮成形体を作製し、これを熱間成形する方法がハンドリングなどの点で有効である。
熱間成形は、拡散熱処理を行なった後、すなわち、保磁力が向上した後のサンプルに対して行なってもよいし、R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金の粉末の混合粉末(以下、単に「混合粉末」と呼ぶ)を緻密化させながら同時に拡散熱処理を行なうこともできる。さらに、熱間成形によって混合粉末の緻密化を行い、その後さらに工程Dの熱処理を行なうことでR’−Al系合金の拡散を促進させて保磁力を向上させることもできる。
図3に、本発明における実施形態の希土類磁石の製造方法に用いられるホットプレス装置を模式的に示す。このホットプレス装置は、高周波加熱による高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)と、ヘリウムガスによる高速冷却(降温速度−5℃/秒以上)とが可能であり、R−T−B系永久磁石粉末を15分以内で熱間成形することができる。
図3のホットプレス装置は、一軸プレス装置であり、混合粉末やR’−Al合金の拡散処理を行なったサンプルの粉末、またはそれらの圧粉体を受容する開口部(キャビティ)を中央に有する金型(ダイ)12と、混合粉末やR’−Al合金の拡散処理を行なったサンプルの粉末、またはそれらの圧粉体を加圧するための上パンチ13aおよび下パンチ13bと、上パンチ13aを昇降させる加圧シリンダー15とを備えている。加圧シリンダー15には加圧機構17から圧力が与えられる。加圧シリンダー15は下パンチ13bを昇降させるように設けても良い。
金型12およびパンチ13a、13bは、チャンバ11内に配置されており、チャンバ11内は真空装置18で真空に引くことによって真空状態するか、またはヘリウムガス供給源(例えばボンベ)19から供給されるヘリウムガスによって充たされる。チャンバ11内をヘリウムガスで充たすことによって、粉末や圧粉体が酸化されることを防止することができる。また、ヘリウムガスを供給することによって、得られた熱間成形体の温度を高速(降温速度−5℃/秒以上)で低下させることもできる。
金型12の周囲には高周波コイル14が設けられており、高周波電源16から供給される高周波電力によって金型12および金型12内のR−T−B系永久磁石粉末の圧粉体を高速加熱(昇温速度5℃/秒以上)することが出来る。
金型12およびパンチ13a、13bは、使用する雰囲気ガス中で、最高到達温度(500℃〜900℃)および最高印加圧力(20MPa〜3000MPa)に耐えうる材料、例えばカーボンまたは超硬合金で形成されている。
本発明の実施形態では、HDDR処理によって作製されたR−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末の混合粉末を金型内に挿入し、図3に示すように、ホットプレス装置内に設置して、装置内を1×10−2Pa以下まで排気した後、その後昇温を行なう。なお、昇温時は加圧しても加圧しなくても構わない。
本実施形態に用いるホットプレス装置では、高周波加熱により、R−T−B系永久磁石粉末もしくは圧粉体を5℃/秒以上の昇温速度で550℃以上900℃以下の範囲内の所定の温度に加熱することができる。
その後、温度が550℃以上900℃以下の所定の温度に到達した後、20MPa以上3000MPa以下の所定の圧力を印加しながら1分以上240分以下の所定の時間保持し、その後冷却を行なう。本実施態様では、ヘリウムガスによって熱間成形体を−5℃/秒以上の降温速度で冷却することができる。
ホットプレス時の圧力は、20MPa以上3000MPa以下が好ましく、50MPa以上1000MPa以下がより好ましい。圧力が20MPaよりも小さいときは緻密化が十分に起こらない可能性があり、3000MPaを超えると、用いることのできる金型の材質などに制約が生じるだけでなく、ホットプレス温度で溶解する組成を有するR’−Al系合金を用いる場合には、液相となったR’−Al系合金の染み出しが顕在化して生産性が阻害されたりR−T−B系永久磁石粉末への拡散が十分に起こらない可能性があるからである。
ホットプレスによる保持時間が短い場合には、ホットプレス中にR’−Al系合金の拡散が十分に起こらないことがある。このような場合にはホットプレスの後に拡散熱処理(工程D)を適用してR’−Al系合金を拡散させることが好ましい。この場合、工程Dの温度は550℃以上900℃以下が好ましい。
<磁石の微細組織>
本発明で得られる磁石は、HDDR処理で得られるR−T−B系永久磁石特有の再結晶集合組織、すなわち、平均結晶粒径が0.1μmから1μmであり、かつ、結晶粒のアスペクト比(長軸/短軸の比)が2以下の集合組織を有している。この再結晶集合組織を構成する結晶粒は、R14B型化合物相である。R−T−B系永久磁石粉末の個々の粉末粒子には多数の微細な結晶粒が含まれている。これらの結晶粒の平均粒径およびアスペクト比は、磁石の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察することによって計測される。具体的には、例えば集束イオンビーム(FIB)等で薄片に加工した磁石のサンプルを観察したTEM像の個々の結晶粒を画像解析することによって結晶粒の平均粒径およびアスペクト比を求めることができる。ここで、平均粒径は、個々の結晶粒のTEM像における円相当径を求め、これらを単純平均することで得ることができる。また、結晶粒の長軸は当該結晶粒の断面観察における最も長い直径であり、短軸は最も短い直径である。
また、上記のRFe14B型化合物相間には、R、Fe、Alを必ず含む、厚さ1nm以上3nm以下の粒界相が形成される。
以下に、本発明による実施例と比較例を説明する。
(実験例1)
<R−T−B系永久磁石粉末(HDDR磁粉)の作製(工程A)>
Nd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成の鋳造合金を作製し、1110℃の減圧アルゴン雰囲気で16時間均質化熱処理を行った後、粉砕して300μm以下の粉末を得た後、HDDR処理を行った。HDDR処理は、管状炉にてアルゴン雰囲気中で850℃まで昇温した後、大気圧水素流気に切り換えて、850℃で4時間保持して水素化−不均化(HD)処理を行い、その後、5.33kPaの減圧アルゴン流気に切り換えて、同じ温度で30分間保持することにより、脱水素−再結合(DR)処理を行った後冷却してR−T−B系永久磁石粉末を作製した。得られたR−T−B系永久磁石粉末の保磁力(HcJ)を振動試料型磁力計(VSM、東英工業社製VSM−5−20)で測定した結果、1321kA/mであった。また、得られた磁石粉末を集束イオンビーム(FIB)加工して薄片を作製し、透過電子顕微鏡(TEM)で観察した。このTEM像(1.8μm×1.8μmの領域)に存在する結晶粒に対して画像解析によって求めた円相当径の平均値(観察された33個全ての結晶粒における測定値の平均)は、0.29μmであった。また、個々の結晶粒は、HDDR処理で典型的に得られるアスペクト比が2以下のほぼ等軸的な形状を有していた。
<R’−Al系合金粉末の作製(工程B)>
表1に示す種々の組成のNd―Al急冷合金を、単ロール急冷法にてロール周速度20m/秒で作製した。アルゴンガスに置換したチャンバ−中でコーヒーミルを用いて前記急冷合金を粉砕した後、150μm以下の粉末を回収してR’−Al系合金粉末を作製した。また、同様の方法で、比較例に用いるNd粉末、Al粉末を作製した。
<R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末の混合(工程C)>
得られたR−T−B系永久磁石粉末とNd粉末、Nd−Al合金粉末、Al粉末を表1に示す混合比で混合した。なお、以下の表1〜表5、表7、表9〜11において、「Nd」、「Pr」、「Dy」および「Al」は、混合粉末全体におけるそれぞれの含有割合(原子%)を示している。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末をNb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表1に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定し、4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。結果を表1に示す。
表1に示すように、Nd−Al合金粉末をR−T−B系永久磁石粉末と混合して熱処理することで保磁力が大きく向上することがわかった。また、Nd−Al合金粉末として、Ndにわずか2原子%のAlを合金化した合金粉末を使用することで、金属Ndを用いたときよりも保磁力が向上し、Nd−Al合金粉末におけるAlが2原子%以上の場合に大きな保磁力向上効果が得られることが確認された。特にAlが35原子%から60原子%の範囲では、大きな保磁力と同時に高いHが得られた。なお、Alが40原子%〜65原子%の時には、Nd‐Al二元系状態図における融点(液相線温度)が1100℃を超えているが、このような合金でも800℃での熱処理で拡散が十分に進行して大幅に保磁力が向上するとともに、高いHが得られることが確認された。このように、本発明におけるR’−Al系合金は、広い組成範囲で拡散による保磁力向上効果が得られることがわかった。また、Nd−Al合金粉末におけるAlが70原子%以上になると、Alの含有量が増加するに従い保磁力が低下していくことが確認された。
(実験例2)
<R−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金粉末の作製、混合(工程A〜C)>
実験例1と同一の条件で作製したNd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末と実験例1と同一の条件で作製したNd90Al10組成のR’−Al系合金粉末とを表2に示す混合比で混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表2に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定した。4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。
表2に示すように、R’−Al系合金粉末とR−T−B系永久磁石粉末を混合し、550℃〜900℃の温度で1分〜240分の熱処理を行うことにより保磁力(HcJ)が大きく向上することが確認された。
(実験例3)
<R−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金粉末の作製、混合(工程A〜C)>
実験例1と同一の条件で作製したNd12.5FebalCo6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末と実験例1と同一の条件で作製したNd90Al10組成のR’−Al系合金粉末とを表3に示す混合比で混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末をNb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表2に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定し、4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。結果を表3に示す。
表3に示すように、R’−Al系合金粉末とR−T−B系永久磁石粉末の混合量が1:5〜1:80において保磁力が向上することが確認され、特に1:5〜1:30において高い保磁力が得られた。また、1:3でも高い保磁力が得られたものの、1:5の場合と比べ保磁力の値は変わらずに、R−T−B系永久磁石粉末の体積割合の減少に伴ってBが顕著に低下する。
(実験例4)
<R−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金粉末の作製、混合(工程A〜C)>
実験例1と同一の条件で作製したNd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末と、実験例1と同一の条件で作製した表4に示す組成のR’−Al合金粉末(R’=Pr)とを表4に示す混合比で混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表4に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定した。4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。
表4に示すように、R’−Al系合金粉末としてPr−Al合金粉末を用いた場合にも、R−T−B系永久磁石粉末と混合し、熱処理を行うことにより保磁力(HcJ)が大きく向上することが確認された。
(実験例5)
<R−T−B系永久磁石粉末の作製(工程A)>
実験例1と同一の条件でNd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末を作製した。
<R’−M系合金粉末の作製(工程B)>
表5に示す種々の組成のNd―M系急冷合金(M=Al、Co、Ni、Mn、Ga)を、単ロール急冷法にてロール周速度20m/秒で作製した。アルゴンガスに置換したチャンバ−中でコーヒーミルを用いて急冷合金を粉砕した後、150μm以下の粉末を回収してR’−M系合金粉末を作製した。
得られた粉末のうち、Nd−Al合金粉末5gについて、JIS Z8801のふるいを用いて粒度分布を測定した結果を表6に示す。この粉末は、表6に示されるように、粒径25μm以上の粒子が全体の50質量%以上を占めていた。
<R−T−B系永久磁石粉末とR’−M系合金粉末の混合(工程C)>
得られたR−T−B系永久磁石粉末とR’−M系合金粉末を混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表5に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定した。4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。
表5および表6からわかるように、Nd−Al合金を用いた実施例では25μm以上の粗い粒子が主体の粉末を用いても大幅に保磁力が向上することを確認した。一方、Alに代えてCo、Ni、Mn、Gaを含むNd−M合金の粉末を用いた比較例では、充分な保磁力向上効果を得ることができなかった。
(実験例6)
<R−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金粉末の作製、混合(工程A〜C)>
実験例1と同一の条件で作製したNd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末と、実験例1と同一の条件で作製した表7に示す組成のNd−Al合金粉末、Dy−Al合金粉末を表7に示す混合比で混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表7に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定した。4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。
表7に示すように、Dy−Al合金粉末を用いた場合には、R−T−B系永久磁石粉末と混合し、熱処理を行っても、保磁力(HcJ)の向上効果はNd−Al合金粉末を用いた場合より小さく、また、Bの低下が大きいことが確認された。
(実験例7)
<R−T−B系永久磁石粉末の作製(工程A)>
表8に示す組成の鋳造合金を作製し、1110℃の減圧アルゴン雰囲気で16時間均質化熱処理を行った。これらの合金を粉砕して300μm以下の粉末を得た後、表8に示す条件でHDDR処理を行い、R−T−B系永久磁石粉末を作製した。
得られたR−T−B系永久磁石粉末の保磁力(HcJ)を振動試料型磁力計(VSM、東英工業社製VSM−5−20)で測定した結果を表8に示す。また、得られたR−T−B系永久磁石粉末の平均結晶粒径とアスペクト比を実験例1と同様の方法で求めたところ、それぞれ0.31μm、および2以下であった。
<R’−Al合金粉末の作製、混合(工程B、C)>
実験例1と同一の条件で作製したNd90Al10(原子%)組成のR’−Al系合金粉末を上記R−T−B系永久磁石粉末と混合した。
<熱処理(工程D)>
作製した混合粉末を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表9に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。
<評価>
得られたサンプルを300μm以下に解砕した後、磁界中で配向しながらパラフィンで固定し、4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、VSM(東英工業社製VSM−5−20)を用いて磁気特性を評価した。結果を表9に示す。
表8、表9に示すように、実験例1から6と異なる組成のR−T−B系永久磁石粉末に対してもR’−Al系合金の拡散による保磁力向上効果があることが確認された。
(実験例8)
実験例1と同一の条件で作製したNd12.5Febal.Co6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末と、実験例1と同一の条件で作製したNd60Al40組成のR’−Al合金粉末を、実験例1と同一の条件で混合、熱処理した試料について,走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製S−4300)と透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製HF−2100)とエネルギー分散型X線分光装置(Noran社製Vantage)を用いて微細組織の解析を行った。図3(a)はR−T−B系永久磁石粉末の研磨面の走査電子顕微鏡による反射電子像である。図3(b)はR−T−B系永久磁石粉末にNd60Al40組成のR’−Al合金粉末を混合して熱処理した試料の研磨面の走査電子顕微鏡による反射電子像である。図3(b)によって、Nd60Al40がR−T−B系永久磁石粉末の内部に拡散して明るいコントラストの領域(希土類リッチな粒界相)の割合が増加していることが確認できた。また、粒界相に囲まれた暗いコントラストの領域(R14B相)の大きさはそれぞれ0.3μm〜0.5μmであり、それらはR14B相の結晶粒1つ1つに相当すると考えられた。すなわち、R’−Al合金粉末を混合して熱処理することによって、熱処理前に比べてR14B相の結晶粒一つ一つがより明確に粒界相に囲まれている組織となっていることが確認できた。このことは、R’−Al合金粉末を混合して熱処理することによって保磁力が向上する要因の一つであると推測される。
図4は(a)はR−T−B系永久磁石粉末の透過電子顕微鏡による明視野像である。図4(b)はR−T−B系永久磁石粉末にNd60Al40組成のR’−Al合金粉末を混合して熱処理した試料の透過電子顕微鏡による明視野像である。図4(b)から熱処理後も主相(R14B相)の結晶粒は粗大化していないことが確認できた。図4(c)は図4(b)の主相(R14B相)と主相(R14B相)に挟まれた2粒子粒界の部分を拡大した高分解像である。図4(c)から、主相(R14B相)同士の間に約1nmの粒界相が存在していることが確認できた。
表10はR−T−B系永久磁石粉末とNd60Al40組成のR’−Al合金粉末を混合して熱処理した試料の主相(R14B相)中央部と粒界相(粒界3重点)についてエネルギー分散型X線分光装置(EDX)で組成分析した結果である。混合熱処理後の試料においては、主相中央部からもAlが検出されており、R’−Al合金粉末の混合熱処理によってAlは粒界相だけでなく主相内部にも拡散していることが確認できた。なお、少なくとも主相にはBを含むはずであるが、EDXではBを検知できないため、表10にはBを除外した組成を示した。
<実験例9>
<R−T−B系永久磁石粉末およびR’−Al系合金の作製、混合(工程A〜C)>
実験例1と同一の条件で作製した表11に示す組成のR’−Al系合金粉末と実験例1と同一の条件で作製したNd12.5FebalCo6.5Ga0.2(原子%)組成のR−T−B系永久磁石粉末とを表11に示す混合比で混合した。
<ホットプレス(工程E)>
作製した混合粉末3.85gを内径8.3mmの非磁性超硬合金製のダイスに挿入し、図5に示す高周波ホットプレス装置を用いてホットプレスを行い、円柱状の熱間成形体を得た。具体的には1×10−2Pa以下の真空中で表11に示す圧力を印加しながら、金型を高周波加熱により11℃/secの昇温速度で表11に示す温度まで加熱した後、2分間保持し、その後直ちにチャンバ内にヘリウムガスを導入し冷却した。得られた熱間成形体は、密度が7.0g/cm以上に緻密化されていた。
<熱処理(工程D)>
得られた熱間成形体を、Nb箔で包んだのち、加熱源にタングステンヒータを用いた高真空熱処理装置内に挿入した。6×10−3Pa未満まで真空引きをした後、表11に示す熱処理条件で熱処理し、アルゴンガスを導入して冷却した。(サンプルNo.1および2)
なお、比較例として、R’−Al系合金粉末と混合していないこと以外はサンプルNo.1および2と同じR−T−B系永久磁石粉末に対し、サンプルNo.1および2と同じ条件でホットプレスを行い、さらに熱履歴を同じくするためにサンプルNo.1および2と同じ条件で熱処理を行なった。(サンプルNo.3)
<評価>
得られた円柱状のサンプルNo.1〜3の上下面を表面研削盤で加工するとともに、サンプル側面の酸化相を除去し、4.8MA/mのパルス磁界で着磁した後、BHトレーサ(装置名:MTR−1412(メトロン技研社製))を用いて磁気特性を評価した。評価結果を表12に示す。
表12に示すように、Nd−Al合金を混合した後、ホットプレスで緻密化し、その後熱処理を行なった実施例のサンプルNo.1および2は、比較例のサンプルNo.3よりも保磁力が高く、さらに出発磁粉よりも保磁力が向上しており、本発明の製造方法により、保磁力が向上した高密度磁石を作製できることがわかった。
本発明によれば、Dy、Tbなどの希少資源の使用量を低減しつつ高性能な永久磁石が製造できる。
1 合金の溶湯
2 出湯ノズル
3 冷却ロール3
4 リボン状の急冷合金
11 チャンバ
12 金型
13a 上パンチ
13b 下パンチと、
14 高周波コイル
15 加圧シリンダー
16 高周波電源
17 加圧機構
18 真空装置
19 ヘリウムガス供給源

Claims (8)

  1. HDDR処理によって作製され、平均結晶粒径が0.1μm以上1μm以下の再結晶集合組織を有するR−T−B系永久磁石粉末(RはNdおよび/またはPrをR全体に対して80原子%以上含む希土類元素、TはFeまたはFeの一部をCoおよび/またはNiで置換したものであり、Feを50原子%以上含む遷移金属元素)を準備する工程Aと、
    R’(R’はNdおよび/またはPrをR’全体に対して90原子%以上含み、DyおよびTbを含まない希土類元素)とAlからなり、かつ、Alが2原子%以上65原子%以下であるR’−Al系合金粉末を準備する工程Bと、
    前記R−T−B系永久磁石粉末とR’−Al系合金粉末とを混合し、混合粉末を作製する工程Cと、
    前記混合粉末を不活性雰囲気または真空中において、550℃以上900℃以下の温度で熱処理を行う工程Dと、
    を含む希土類永久磁石の製造方法。
  2. 前記R−T−B系永久磁石粉末がDyおよびTbを含有していない請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記R−T−B系永久磁石粉末の保磁力が1200kA/m以上である請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。
  4. 前記工程Bは、
    急冷法によってR’−Al系合金を作製する工程b1と、
    R’−Al系合金を粉砕する工程b2と
    を含む請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。
  5. 前記工程Dにおいて、前記混合粉末を550℃以上900℃以下の温度で、1分以上240分以下の時間、保持する請求項1に記載の希土類永久磁石の製造方法。
  6. 前記工程Dの前、前記混合粉末に対し、500℃以上900℃以下の温度、20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程Eを包含する、請求項1から5のいずれかに記載の希土類永久磁石の製造方法。 。
  7. 前記工程Dの後、前記混合粉末に対し、500℃以上900℃以下の温度、20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程Eを包含する、請求項1から5のいずれかに記載の希土類永久磁石の製造方法。
  8. 前記工程Dは、前記熱処理中において20MPa以上3000MPa以下の圧力で熱間成形による緻密化を行なう工程を包含する、請求項1から5のいずれかに記載の希土類永久磁石の製造方法。
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