JP5741454B2 - −196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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昨今の天然ガス需要増大を背景に、LNGタンクの大型化対応のため、タンク靭性のさらなる向上が求められている。前記特許文献1〜10の方法は、靭性の向上にはきわめて有効であるが、コストの増大や生産性の低下を招く。よって、このままではLNGタンクに使用するには制限が大きかった。
(1)鋼が、質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.02%以上0.15%以下、Mn:0.30%以上1.00%以下、P:0.0010%以上0.0100%以下、S:0.0001%以上0.0035%以下、Ni:7.5%超10.0%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.0001%以上0.0070%以下、T−O:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であり、鋼板表面から鋼板厚さ方向に鋼板厚さの1/4だけ入った部位のPの界面偏析濃度が質量%で、0.100%以下であることを特徴とする、−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板。
(2)さらに質量%で、Cr:0.01%以上1.5%以下、Mo:0.01%以上0.4%以下、Cu:0.01%以上1.0%以下、Nb:0.001%以上0.05%以下、Ti:0.001%以上0.05%以下、V:0.001%以上0.05%以下、B:0.0002%以上0.05%以下、Ca:0.0003%以上0.0040%以下、Mg:0.0003%以上0.0040%以下、REM:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であることを特徴とする前記(1)に記載の−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板。
(3)質量%で、C:0.04%以上0.10%以下、Si:0.02%以上0.15%以下、Mn:0.30%以上1.0%以下、P:0.0010%以上0.0100%以下、S:0.0001%以上0.0035%以下、Ni:7.5%超10.0%以下、Al:0.01%以上0.08%以下、N:0.0001%以上0.0070%以下、
T−O:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であり、連続鋳造後の鋼片を1250℃以上1380℃以下で10時間以上加熱したのち、圧下比を1.1以上10以下、圧延の最終1パス前温度を800℃以上1200℃以下とした第一の熱間圧延を行い、その後300℃以下まで冷却したのち、900℃以上1280℃以下に加熱した後に、圧下比を3.0以上50以下、圧延の最終1パス前温度を650℃以上950℃以下とした第二の熱間圧延を行い、引き続いて必要あれば加熱して750℃以上900℃以下とした後に水冷または空冷する焼き入れを行い、さらに引き続いて500℃以上650℃以下に加熱した後に水冷または空冷する焼き戻しを行うことを特徴とする、−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板の製造方法。
(4)さらに質量%で、Cr:0.01%以上1.5%以下、Mo:0.01%以上0.4%以下、Cu:0.01%以上1.0%以下、Nb:0.001%以上0.05%以下、Ti:0.001%以上0.05%以下、V:0.001%以上0.05%以下、B:0.0002%以上0.05%以下、Ca:0.0003%以上0.0040%以下、Mg:0.0003%以上0.0040%以下、REM:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であることを特徴とする前記(3)に記載の−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板の製造方法。
発明者は、9%Ni鋼の靭性を著しく向上して、かつ生産性も優れたものとする条件を鋭意検討した。その結果、生産性を著しく低下させる脱P工程を短時間化してP量が高くなった場合でも、Pの界面偏析濃度を低減させることが可能で、それにより靭性が向上することを見いだした。即ちPの界面偏析濃度の低減には、Si量の大幅な低減を行い、さらに鋳造後のスラブを2段階に熱間圧延する製造方法の適用が有効である。Pの界面偏析濃度と母材靭性の指標であるシャルピー衝撃吸収エネルギーの関係を図1に示す。このように、優れた靭性を得るためには、Pの界面偏析濃度を質量%で、0.100%以下とする必要があることから、鋼板表面から鋼板厚さ方向に鋼板厚さの1/4だけ入った部位のPの界面偏析濃度を0.100%以下と規定する。なお、Pの界面偏析濃度を測定する部位を鋼板表面から鋼板厚さ方向に鋼板厚さの1/4だけ入った部位としたのは、この部位が一般的に強度や靭性などの材質評価を実施する部位であること、つまり鋼材の材質代表部位として扱われることが多いためである。なお、Pの界面偏析量を0.05%以下とした場合には際だって靭性が向上することから、望ましくはPの界面偏析量を0.05%以下とする。
Pの界面偏析濃度は、透過型電子顕微鏡観察とEDS分析を行うことで測定することが可能である。本発明では、鋼板の板厚表面から板厚の1/4だけ内部に入った部位からサンプルを採取して薄膜を作製し、透過型電子顕微鏡で旧オーステナイト粒界、パケット粒界、ブロック粒界のいずれかの界面の観察を10万倍で50視野行い、測定した界面偏析P量の平均値をもって界面偏析P量とする。
以下に他の合金元素の範囲を規定する。
Sは、0.0001%未満では精錬負荷の増大により生産性が大幅に低下し、0.0035%を超えると靱性が低下する。よって、Sの添加量を0.0001%以上0.0035%以下と規定する。
なお、本発明では、さらに以下の元素を添加する。
なお、本発明鋼を溶製する上で、添加合金を含めた使用原料または溶製中に炉材等から溶出する不可避的不純物として混入しうる、Zn、Sn、Sb、Zr等も0.002%未満の混入であれば何ら本発明の効果を損なうものではない。
鋳造後のスラブを高温で長時間加熱した後に熱間圧延を行う第一の熱間圧延もPの界面偏析濃度を低減するのに重要となる。発明者は、第一の熱間圧延における加熱保持温度と保持時間がPの界面偏析濃度に及ぼす影響を調査した結果、Pの界面偏析濃度を0.100%以下とするためには、図2に示すように加熱保持温度を1250℃以上、保持時間を10時間以上とする必要があることを知見した。高温での加熱によってPの界面偏析が低減し、その結果最終的なPの粒界偏析濃度が低下する。一方、加熱保持温度が1380℃超、保持時間が50時間超では生産性が大幅に低下することから、加熱保持温度を1250℃以上1380℃以下、保持時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。なお、加熱保持温度を1300℃以上でかつ保持時間を20時間以上とすると一層Pの粒界偏析濃度低減が著しいことから、望ましくは第一の熱間圧延における加熱保持温度を1300℃以上1380℃以下、保持時間を20時間以上50時間以下とする。加熱保持のあとは熱間圧延を行うことが重要になる。熱間圧延によって加工歪が導入されると、Pの拡散が容易になって最終的なPの粒界偏析濃度が低下する。熱間圧延の仕上げ1パス前に表面で測定された温度が1200℃超となると、加工歪みの回復によりPの粒界偏析量低減の効果が小さく、800℃を下回ると生産性が大幅に低下することから、第一の熱間圧延における仕上1パス前温度を800℃以上1200℃以下とする。また、圧下比も重要である。圧下比が1.1を下回ると加工歪みが小さくPの粒界偏析濃度低減の効果が小さく、10を上回ると生産性が大幅に低下する。よって、第一の熱間圧延における圧下比を1.1以上10以下とする。なお、ここで1パス前温度とは、第一の熱間圧延の最終パスの直前に鋼片表面で測定された温度をいい、放射温度計などで測定が可能である。また、ここで圧下率とは、第一の熱間圧延の圧延開始前の鋼片厚さを圧延終了後の鋼片厚さで除した値である。
以上の実施例から、本発明により製造された厚鋼板である発明例1〜21の鋼板は、耐破壊性能に優れる鋼板であることは明白である。
Claims (4)
- 鋼が、質量%で、
C:0.04%以上0.10%以下、
Si:0.02%以上0.15%以下、
Mn:0.30%以上1.00%以下、
P:0.0010%以上0.0100%以下、
S:0.0001%以上0.0035%以下、
Ni:7.5%超10.0%以下、
Al:0.01%以上0.08%以下、
N:0.0001%以上0.0070%以下、
T−O:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であり、鋼板表面から鋼板厚さ方向に鋼板厚さの1/4だけ入った部位のPの界面偏析濃度が質量%で、0.100%以下であることを特徴とする、−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板。 - さらに質量%で、
Cr:0.01%以上1.5%以下、
Mo:0.01%以上0.4%以下、
Cu:0.01%以上1.0%以下、
Nb:0.001%以上0.05%以下、
Ti:0.001%以上0.05%以下、
V:0.001%以上0.05%以下、
B:0.0002%以上0.05%以下、
Ca:0.0003%以上0.0040%以下、
Mg:0.0003%以上0.0040%以下、
REM:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であることを特徴とする請求項1に記載の−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板。 - 質量%で、
C:0.04%以上0.10%以下、
Si:0.02%以上0.15%以下、
Mn:0.30%以上1.00%以下、
P:0.0010%以上0.0100%以下、
S:0.0001%以上0.0035%以下、
Ni:7.5%超10.0%以下、
Al:0.01%以上0.08%以下、
N:0.0001%以上0.0070%以下、
T−O:0.0001%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成である、連続鋳造後の鋼片を、1250℃以上1380℃以下で10時間以上加熱したのち、圧下比を1.1以上10以下、圧延の最終1パス前温度を800℃以上1200℃以下とした第一の熱間圧延を行い、その後300℃以下まで冷却したのち、900℃以上1280℃以下に加熱した後に、圧下比を3.0以上50以下、圧延の最終1パス前温度を650℃以上950℃以下とした第二の熱間圧延を行い、引き続いて必要あれば加熱して750℃以上900℃以下とした後に水冷または空冷する焼き入れを行い、さらに引き続いて500℃以上650℃以下に加熱した後に水冷または空冷する焼き戻しを行うことを特徴とする、−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板の製造方法。 - さらに質量%で、
Cr:0.01%以上1.5%以下、
Mo:0.01%以上0.4%以下、
Cu:0.01%以上1.0%以下、
Nb:0.001%以上0.05%以下、
Ti:0.001%以上0.05%以下、
V:0.001%以上0.05%以下、
B:0.0002%以上0.05%以下、
Ca:0.0003%以上0.0040%以下、
Mg:0.0003%以上0.0040%以下、
REM:0.0003%以上0.0040%以下のいずれか1種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼組成であることを特徴とする請求項3に記載の−196℃におけるシャルピー試験値が母材、溶接継手共に100J以上である靭性と生産性に優れたNi添加鋼板の製造方法。
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