JP5690372B2 - 酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物およびその製造方法 - Google Patents

酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化鉄とジルコニアとを含有する複合酸化物およびその製造方法に関する。
従来から、様々な金属酸化物を含有する複合酸化物が排ガス浄化用触媒の担体や助触媒等として利用されてきた。このような複合酸化物中の金属酸化物としては、雰囲気中の酸素分圧に応じて酸素を吸放出可能である(酸素貯蔵能を持つ)ため、セリアが好適に用いられてきた。そして、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究されている。
例えば、特開平10−216509号公報(特許文献1)には、CeとZrと希土類金属とを含有する複合酸化物にFeを担持せしめた酸素貯蔵性Fe担持複合酸化物が、特開2003−33669号公報(特許文献2)には、CeとZrとFeとの複合酸化物からなる排ガス浄化用触媒の助触媒が、特開2003−126694号公報(特許文献3)には、CeO−ZrO複合酸化物にFe酸化物粒子と貴金属とを担持せしめたFe酸化物担持複合酸化物からなる排ガス浄化用触媒が、特開2005−125317号公報(特許文献4)には、セリアを含む担体に酸化鉄を担持せしめた酸化鉄含有複合酸化物からなる酸素貯蔵放出材が、それぞれ開示されている。
これらの複合酸化物に含まれているセリウムは、高価であり、また、近年の調達環境の悪化により安定した入手が困難となるといった問題が発生したため、セリウムの使用量を抑えることが検討されている。
しかしながら、特許文献1〜4に記載されているように、セリウムと鉄とを含有する複合酸化物において、セリウムの含有量を少なくすると、酸素貯蔵能が低下するということが当業者の認識であり、また、特許文献2〜4に記載されているように、鉄の含有量が多くなると、複合酸化物の酸素貯蔵能が低下するということが当業者の認識であった。
一方、特開2008−93496号公報(特許文献5)には、排ガス浄化用触媒の助触媒である酸化鉄とジルコニア系固溶体とを含有する助触媒包接体が開示されている(実施例2など)。この助触媒包接体においては、ジルコニア系固溶体によって酸化鉄が覆われているため、酸化鉄のシンタリングが抑制され、その結果、この助触媒包接体を含有する排ガス浄化用触媒は触媒活性に優れたものとなる。
特開平10−216509号公報 特開2003−33669号公報 特開2003−126694号公報 特開2005−125317号公報 特開2008−93496号公報
しかしながら、特許文献5に記載の助触媒包接体においては、酸素貯蔵能は必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、セリウムを使用せずに、高い酸素貯蔵能を示す複合酸化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄とを混合して加熱濃縮し、得られたゲルを焼成することによって、酸素貯蔵能に優れた酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、鉄、ジルコニウムおよび希土類元素を含有する複合酸化物であり、FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量が90質量%以上であり、Fe換算の酸化鉄の含有量が10〜90質量%であり、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物の下記式(1)〜(3):
(式中、I(Fe)、I(Zr)およびI(X)は、複合酸化物について、加速電圧:15KV、試料電流:50nA、ビーム径:最小(1μm以下)、測定間隔:1μmの条件でEPMA(WDX:波長分散X線分光法)による線分析を行うことによって測定される、測定点i(i=1〜n)における鉄、ジルコニウムおよび希土類元素のX線強度の各元素の100%強度に対する比を表し、Rav(Fe)およびRav(Zr+X)は、それぞれR(Fe)およびR(Zr+X)の全測定点nについての平均値を表す。)
により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が30以下(好ましくは20以下)であることを特徴とするものである。
本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、イットリウムが含まれていることが好ましい。また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物において、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物中の酸化鉄としてはヘマタイトを含むものが好ましく、また、ランタンが含まれていることも好ましい。
ランタンを含有する本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、ランタン−鉄複合酸化物およびランタン−ジルコニウム複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種が含まれていることが好ましい。また、大気中、1100℃で10時間焼成した後の複合酸化物の前記式(1)〜(3)により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が20以下であることが好ましい。さらに、ランタンと鉄の原子比(La/Fe)が1.1以上2.1以下(より好ましくは、1.1以上2.0以下)であることが好ましい。
のような本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、排ガス浄化触媒用酸素貯蔵材料として使用することが好ましい。また、本発明の排ガス浄化触媒は、前記ランタンを含有する本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料と貴金属とを含有することを特徴とするものである。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法は、希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄とを、得られる複合酸化物中のFeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量が90質量%以上となり、Fe換算の酸化鉄の含有量が10〜90質量%となる割合で混合し、得られた混合液を加熱濃縮し、さらに得られたゲルを焼成することを特徴とするものである。
このような本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄との混合液に、酸化ランタンをさらに混合することが好ましい。
なお、前記式(1)〜(3)により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)とは、2つのデータグループR(Fe)およびR(Zr+X)の互いの関連性を示す指標であり、本発明においては、以下のように測定して評価する。すなわち、先ず、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)および希土類元素(X)を含有する複合酸化物について、加速電圧:15KV、試料電流:50nA、ビーム径:最小(1μm以下)、測定間隔:1μmの条件でEPMA(WDX:波長分散X線分光法)による線分析を行う。なお、この線分析における全測定点の個数をn個とする。次に、各測定点i(i=1〜n)において、鉄、ジルコニウムおよび希土類元素のX線強度の各元素の100%強度に対する比I(Fe)、I(Zr)およびI(X)を求める。すなわち、強度比I(Fe)、I(Zr)およびI(X)は、それぞれ下記式:
(Fe)=(複合酸化物上の測定点iにおける鉄のX線ピーク強度)/(鉄上で測定した鉄のX線ピーク強度)
(Zr)=(複合酸化物上の測定点iにおけるジルコニウムのX線ピーク強度)/(ジルコニウム上で測定したジルコニウムのX線ピーク強度)
(X)=(複合酸化物上の測定点iにおける希土類元素のX線ピーク強度)/(希土類金属上で測定した希土類元素のX線ピーク強度)
によって求められるものである。
そして、求めたI(Fe)、I(Zr)およびI(X)を用いて、前記式(1)〜(2)により、各測定点i(i=1〜n)におけるR(Fe)およびR(Zr+X)を算出し、さらに、これらの全測定点nについての平均値Rav(Fe)およびRav(Zr+X)を求める。このようにして求めた、R(Fe)、R(Zr+X)、Rav(Fe)およびRav(Zr+X)を用いて、前記式(3)により、共分散COV(Fe,Zr+X)を求める。
この共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が小さいほど、R(Fe)およびR(Zr+X)がそれぞれ一定の値に集中しており、酸化鉄と希土類元素を含有するジルコニア(以下、「希土類元素含有ジルコニア」という)とがそれぞれ均一に分散していること、すなわち、均一に共分散している(共分散性が高い)ことを意味している。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法によって、酸素貯蔵能に優れた複合酸化物が形成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法においては、先ず、有機酸鉄が溶解したジルコニアゾル水懸濁液を加熱濃縮することによってゲルを形成させ、次いで、このゲルを焼成する。このとき、ジルコニアゾルのゲル化とともに、有機酸鉄から生成した酸化鉄前駆体もゲル化させるため、ジルコニアと酸化鉄とがともにナノメートルスケールで均一に分散した状態(共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が小さい状態)となり、酸素貯蔵能に優れた複合酸化物が得られると推察される。
一方、従来のゾルゲル法や共沈法においては、鉄塩とジルコニウム塩が溶解した溶液を加熱して酸化鉄とジルコニアゾルとの混合物を形成させ、さらに、加熱してジルコニアゾルをゲル化させる。このとき、ジルコニアゾルのゲル化とともに酸化鉄が粒成長するため、ナノメートルスケールでの酸化鉄の分散性が低く、共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が大きくなり、得られる複合酸化物の酸素貯蔵能が低下すると推察される。
また、特許文献5に記載の助触媒包接体において、高い酸素貯蔵能が達成されない理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、この助触媒包接体は、酸化鉄の水懸濁液とジルコニア−イットリウム前駆体ケーキとを混合して調製される。このような調製方法では、酸化鉄粒子を覆うようにジルコニア層が成長していくため、得られる助触媒包接体においては、酸化鉄およびジルコニアの少なくとも一方のナノメートルスケールでの分散性が低く、共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が大きくなり、得られる複合酸化物の酸素貯蔵能が低下すると推察される。
本発明によれば、セリウムを使用しなくても、高い酸素貯蔵能を示す酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物を得ることが可能となる。
実施例1で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例3で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例4で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例5で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例6で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例7で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 比較例5で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 比較例6で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 比較例7で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 比較例8で得られた複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 各種方法により製造した複合酸化物の500℃でOSC評価結果を示すグラフである。 種々のFe含有量の複合酸化物、イットリア含有ジルコニア、酸化鉄(III)の500℃でOSC評価結果を示すグラフである。 種々のFe含有量の複合酸化物、イットリア含有ジルコニア、酸化鉄(III)の900℃でOSC評価結果を示すグラフである。 500℃でのOSC評価結果(CO平均濃度)と共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値との関係を示すグラフである。 500℃でのOSC評価結果(CO平均濃度)とFe含有量との関係を示すグラフである。 900℃でのOSC評価結果(CO平均濃度)とFe含有量との関係を示すグラフである。 実施例3で得られた複合酸化物のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例5で得られた複合酸化物のXRDスペクトルを示すグラフである。 実施例7で得られた複合酸化物のXRDスペクトルを示すグラフである。 比較例5における加熱濃縮および仮焼成の間の温度履歴ならびに濃縮物および仮焼成物の質量の経時変化を示すグラフである。 実施例8で得られたランタン含有複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例9で得られたランタン含有複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例10で得られたランタン含有複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 参考例1で得られたランタン含有複合酸化物のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 比較例10で得られたランタン含有酸化鉄のR(Fe)値の頻度分布を示すグラフである。 実施例8で得られたランタン含有複合酸化物のエネルギー分散型X線分析結果とXRDスペクトルから推測される各部位(一次粒子)の化合物の種類を指し示す走査型電子顕微鏡による反射電子像の写真である。 実施例10で得られたランタン含有複合酸化物のエネルギー分散型X線分析結果とXRDスペクトルから推測される各部位(一次粒子)の化合物の種類を指し示す走査型電子顕微鏡による反射電子像の写真である。 参考例1で得られたランタン含有複合酸化物のエネルギー分散型X線分析結果とXRDスペクトルから推測される各部位(一次粒子)の化合物の種類を指し示す走査型電子顕微鏡写真による反射電子像の写真である。 実施例10で得られたランタン含有複合酸化物のX線回折パターンを示すグラフである。 参考例1で得られたランタン含有複合酸化物のX線回折パターンを示すグラフである。 各複合酸化物を含有する触媒のリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の酸素貯蔵能を示すグラフである。 各複合酸化物を含有する触媒のリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の触媒性能を示すグラフである。 複合酸化物中のランタンと鉄との原子比と、前記複合酸化物を含有する触媒のリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の触媒性能との関係を示すグラフである。 実施例1で得られた複合酸化物を含有する触媒と比較例11で得られたマンガン含有複合酸化物を含有する触媒のリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験前後の触媒性能を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物について説明する。本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、鉄、ジルコニウムおよび希土類元素を含有する複合酸化物である。また、本発明の複合酸化物においては、ランタン(La)が含まれていることが好ましい。これらの複合酸化物において、FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量は90質量%以上であり、Fe換算の酸化鉄の含有量は10〜90質量%である。また、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物の下記式(1)〜(3):
(前記式中、I(Fe)、I(Zr)およびI(X)は、複合酸化物について、加速電圧:15KV、試料電流:50nA、ビーム径:最小(1μm以下)、測定間隔:1μmの条件でEPMA(WDX:波長分散X線分光法)による線分析を行うことによって測定される、測定点i(i=1〜n)における鉄、ジルコニウムおよび希土類元素のX線強度の各元素の100%強度に対する比を表し、Rav(Fe)およびRav(Zr+X)は、それぞれR(Fe)およびR(Zr+X)の全測定点nについての平均値を表す。)
により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値は30以下である。
本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物において、FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量は90質量%以上である。FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量が前記下限未満になると、高い酸素貯蔵能(特に、大気中、高温での耐久試験(1000℃で5時間加熱)後)を達成することが困難となる。また、酸素貯蔵能(特に、大気中、高温での耐久試験(1000℃で5時間加熱)後における酸素貯蔵能)が更に高くなるという観点から、FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量としては、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。なお、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物において、FeやZrOが希土類元素と複合酸化物を形成している場合、Fe、ZrOおよび希土類元素酸化物の各含有量は、複合酸化物中のFe、Zrおよび希土類元素の含有量を大気中で安定な各酸化物の含有量に換算した値である。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物において、Fe換算の酸化鉄の含有量は10〜90質量%である。Fe換算の酸化鉄の含有量が前記範囲を逸脱すると、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)を達成することが困難となる。また、酸素貯蔵能(特に、大気中、高温での耐久試験後における酸素貯蔵能)が更に高くなるという観点から、Fe換算の酸化鉄の含有量としては、本発明の複合酸化物がLaを含まない場合には、20〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。また、Laを含む場合には、10〜45質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましい。
さらに、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物の共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が30以下である。例示する焼成条件は、900℃で5時間と1100℃で10時間であるが、これらに限定されるものではなく、800℃以上が好ましい。前記条件で焼成した後の複合酸化物の共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が前記上限を超えると、酸化鉄と希土類元素含有ジルコニアとの共分散性が低く、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)を達成することが困難となる。また、酸化鉄と希土類元素含有ジルコニアとの共分散性が更に高くなり、その結果、酸素貯蔵能(特に、大気中、高温での耐久試験後における酸素貯蔵能)が更に高くなるという観点から、前記条件で焼成した後の複合酸化物の共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値としては20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物としては、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物に含まれる酸化鉄として、Laを含まない場合には、ヘマタイト(α−Fe)を含むものが好ましい。焼成後の複合酸化物に含まれる酸化鉄がヘマタイトを含むものであると、還元雰囲気中および/または大気中、高温での耐久試験前後における酸素貯蔵能の変化が少なくなる傾向にある。そのため、ヘマタイトを含有する本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、触媒材料として用いた場合に、特性変化が少なく、使いやすいというメリットがある。このような観点から、すべての酸化鉄がヘマタイトであるものが特に好ましい。一方、本発明の複合酸化物がLaを含む場合には、酸化鉄としてLaFeOを含むものが好ましく、すべての酸化鉄がLaFeOであることが特に好ましい。
本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、ジルコニアの耐熱性を向上させ、大気中、高温での耐久試験後においても高い酸素貯蔵能を達成させるために、希土類元素が含まれており、ジルコニアと希土類元素の酸化物とが固溶していることが好ましい。このような希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などが挙げられる。Ceを使用してもよいが、中でも、Ceの使用量の低減という観点から、Ce以外の希土類元素が好ましく、ジルコニアの安定性(特に、熱安定性)が高まるという観点では、La、Y、Nd、Pr、Srがより好ましく、La、Yがさらに好ましく、Laが特に好ましい。このような希土類元素は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。特に、LaとYとが共存していることが好ましい。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物がランタン(La)を含有するものである場合には、ジルコニアの耐熱性が向上するだけでなく、以下のように、酸化鉄の耐熱性も向上する傾向にある。すなわち、本発明のLaを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、アルミナとの共存下で酸化と還元を激しく繰り返すような高温(例えば、1000℃以上(さらに好ましくは1050℃以上)の高温)雰囲気に曝されても、鉄原子のアルミナ担体への拡散が抑制され、高い酸素貯蔵能を示す傾向にある。また、前記アルミナに貴金属が担持されている場合には、鉄原子による貴金属触媒の失活も抑制される傾向にある。さらに、(Ce,Zr)Oxと共存する場合には、(Ce,Zr)Oxの比表面積の低下を防止できる。
このようなLaを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物がランタン−鉄複合酸化物およびランタン−ジルコニウム複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。焼成後の複合酸化物がランタン−鉄複合酸化物およびランタン−ジルコニウム複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合、酸化と還元を激しく繰り返すような高温雰囲気に曝された後においても、その一次粒子の粒子径が小さくなり、大きな比表面積を有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物を得ることができる。このような酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)を示す傾向にある。また、焼成後の複合酸化物がランタン−鉄複合酸化物を含む場合には、アルミナとの共存下で高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されても、鉄原子のアルミナへの拡散が十分に抑制され、高い酸素貯蔵能を示す傾向にある。
さらに、Laを含有する本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、大気中、1100℃で10時間焼成した後の複合酸化物の前記式(1)〜(3)により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。前記条件で焼成した後の複合酸化物の共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が前記上限を超えると、酸化鉄と希土類元素含有ジルコニアとの共分散性が低く、高温(例えば、1000℃以上)での耐久試験後に高い酸素貯蔵能を達成することが困難となる傾向にある。
また、Laを含有する本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物において、ランタンと鉄の原子比(La/Fe)としては1.1以上(より好ましくは1.2以上)2.1以下(より好ましくは2.05以下、さらに好ましくは2.0以下)が好ましい。La/Fe原子比が前記下限未満になると、Laと複合化していない酸化鉄の含有量が多くなり、複合酸化物がアルミナとの共存下で高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されると、鉄原子のアルミナへの拡散が十分に抑制されず、高い酸素貯蔵能が達成されにくい傾向にある。他方、前記上限を超えると、Laが析出しやすい傾向にある。このLaが複合酸化物を含有するスラリーに溶解すると、スラリーの粘度が上昇し、ハニカムなどの支持体に塗工しにくくなる傾向にある。また、スラリー中に溶解したLaはRhなどの貴金属触媒の活性を低下させる傾向にある。さらに、スラリー中にLaが溶出すると、複合酸化物が微細化し、鉄がスラリー中に高分散するという観点においても、Laを含有する複合酸化物は好ましくない。
本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物中のLa以外の希土類元素の含有量としては、希土類元素酸化物として0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。La以外の希土類元素の含有量が前記下限未満になると、ジルコニアの耐熱性が低下し、高温での耐久試験後において高い酸素貯蔵能が達成されにくくなる傾向にある。また、La以外の希土類元素の含有量の上限としては、希土類元素酸化物として20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。La以外の希土類元素の含有量が前記上限を超えると、希土類元素がCe以外の場合には、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)が達成されにくくなる傾向にあり、希土類元素がCeの場合には、Ceの使用量を低減するという目的が達成されなくなる。
本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の形状としては特に制限はないが、粒子状(例えば、球状)、塊状などが挙げられる。前記複合酸化物が粒子である場合、その平均粒子径としては特に制限はないが、1〜200μmが好ましく、2〜100μmがより好ましい。平均粒子径が前記下限未満になると、他の材料とを混合した場合に、前記複合酸化物中の鉄と他の材料とが相互に拡散しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒化しにくくなる傾向にある。特に、他の材料への鉄の拡散を確実に抑制するためには、数μmの粒子を除去して、平均粒子径を8μm以上にすることがより好ましく、10μm以上にすることがさらに好ましく、15μm以上にすることが特に好ましく、20μm以上にすることが最も好ましい。また、支持体への塗工性の低下を抑制し、目詰まりを防止するためには、塗工しやすく、拡散を防止しやすい程度の平均粒子径(より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下)にすることが好ましい。また、必要に応じて、酢酸、シュウ酸、クエン酸、硝酸、アミン類、アンモニア水などを添加してpH調整を行なってもよい。
また、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の比表面積としては特に制限はないが、0.5〜100m/gが好ましく、1〜50m/gがより好ましい。比表面積が前記下限未満になると、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)が達成されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高温での耐久試験前後における状態変化が大きくなる傾向にある。
次に、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法(以下、「本発明の複合酸化物の製造方法」という。)について説明する。本発明の複合酸化物の製造方法は、希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄とを、得られる複合酸化物中のFeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量およびFe換算の酸化鉄の含有量が所定の範囲となる割合で混合し(混合工程)、得られた混合液を加熱濃縮し(加熱濃縮工程)、さらに得られたゲルを焼成する(焼成工程)方法である。
先ず、本発明の複合酸化物の製造方法に用いられる原料について説明する。本発明の複合酸化物の製造方法に用いられるジルコニアゾル水懸濁液は、上述した希土類元素の酸化物を含有するジルコニアゾルの水懸濁液である。ジルコニアゾルの水懸濁液を用いることによって、後述する加熱濃縮によりジルコニアゾルがゲル化すると同時に、有機酸鉄から生成した酸化鉄前駆体もゲル化するため、ジルコニアと酸化鉄とがともにナノメートルスケールで均一に分散した(共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が小さい状態)となり、高い酸素貯蔵能を有する複合酸化物が得られる。一方、ジルコニアゾルの代わりジルコニウム原子やジルコニウム塩をジルコニアの原料として使用すると、希土類元素の添加量(含有量)が少ない場合には、得られるジルコニアの耐熱性を向上させるために添加する希土類元素が鉄と反応して複合酸化物を形成するため、ジルコニアおよび酸化鉄の耐熱性が低下し、大気中、高温での耐久試験後において高い酸素貯蔵能を達成することが困難となる。
また、本発明の複合酸化物の製造方法に用いられるジルコニアゾルには希土類元素酸化物が含まれているため、得られる複合酸化物中のジルコニアの耐熱性が向上し、大気中、高温での耐久試験(1000℃で5時間加熱)後においても高い酸素貯蔵能を達成できる。また、ジルコニアの耐熱性が更に向上し、大気中、高温での耐久試験後において更に高い酸素貯蔵能を達成できるという観点から、ジルコニアと希土類元素酸化物は固溶していることが好ましい。なお、ジルコニアゾルに含まれる希土類元素酸化物は1種単独であっても2種以上であってもよい。
このような希土類元素酸化物の含有量としては、ジルコニアゾル100質量部に対して3〜30質量部が好ましく、5〜25質量%がより好ましく、10〜20質量部が特に好ましい。希土類元素酸化物の含有量が前記下限未満になると、ジルコニアの耐熱性が低下し、高温での耐久試験後において高い酸素貯蔵能が達成されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、希土類元素がY以外の場合には、高い酸素貯蔵能(特に、高温での耐久試験後)が達成されにくくなる傾向にあり、希土類元素がCeの場合には、Ceの使用量を低減するという目的が達成されなくなる。
本発明にかかるジルコニアゾルの粒子径としては、10〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましい。ジルコニアゾルの粒子径が前記下限未満になると、後述する加熱濃縮により粒子径が小さいゲルが生成するものの、焼成によりゲルが凝集する傾向にあり、他方、ジルコニアゾルの粒子径が前記上限を超えると、得られるジルコニアゲルの粒子径が大きくなる傾向にある。その結果、いずれの場合も、得られる複合酸化物において、ナノメートルスケールでのジルコニアの分散性が低く、共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が大きくなるため、酸素貯蔵能が低下する傾向にある。
このようなジルコニアゾル水懸濁液中のジルコニアゾルの含有量としては、固形分濃度で5〜40質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、20〜35質量%がさらに好ましい。ジルコニアゾルの含有量が前記下限未満になると、後述する加熱濃縮におけるコストが高くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ジルコニアゾルが二次凝集しやすく、粒子径の大きいゲルが生成し、得られる複合酸化物において、ナノメートルスケールでのジルコニアの分散性が低く、共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が大きくなるため、酸素貯蔵能が低下する傾向にある。また、高い酸素貯蔵能を示す複合酸化物が得られるという観点から、ジルコニアゾル水懸濁液としてはアルカリ性のものが好ましく、pH8〜10のものがより好ましく、pH9〜10のものが更に好ましい。
本発明の複合酸化物の製造方法に用いられる有機酸鉄としては、有機酸(例えば、クエン酸、フマル酸などのカルボン酸)と鉄イオンとの塩(錯塩を含む)であれば特に制限はなく、例えば、クエン酸鉄(III)アンモニウムが挙げられる。これらの有機酸鉄は水に対する溶解度が高いため、そのまま、ジルコニアゾル水懸濁液に添加して溶解させることが可能であるが、必要に応じて、有機酸鉄の水溶液としてジルコニアゾル水懸濁液と混合することも可能である。
次に、本発明の複合酸化物の製造方法の各工程について説明する。本発明の複合酸化物の製造方法においては、先ず、希土類元素を含有するジルコニアゾルの水懸濁液と有機酸鉄とを混合する。これにより、有機酸鉄が溶解し、酸化鉄前駆体が生成する。このとき、有機酸鉄を十分に溶解させるために少量の水を添加してもよい。また、混合液中の酸化鉄前駆体とジルコニアゾルとを均一に分散させるために、プロペラ攪拌機や各種ホモジナイザーあるいは各種ミルを用いて撹拌することが好ましく、プロペラ攪拌機とホモジナイザー(例えば、超音波ホモジナイザー)および/またはボールミル、アトライターなどとを併用して撹拌することがより好ましい。
前記混合液中の希土類元素を含有するジルコニアゾルの濃度としては、固形分濃度で5〜40質量%が好ましい。混合液中のジルコニアゾルの濃度が前記下限未満になると、後述する加熱濃縮におけるコストが高くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ジルコニアゾルが二次凝集しやすく、粒子径の大きいゲルが生成し、得られる複合酸化物において、ナノメートルスケールでのジルコニアの分散性が低く、共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が大きくなるため、酸素貯蔵能が低下する傾向にある。
また、希土類元素を含有するジルコニアゾルと有機酸鉄の混合割合は、得られる複合酸化物中のFeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量およびFe換算の酸化鉄の含有量が所定の範囲となるように決定する。
また、本発明の複合酸化物の製造方法においては、希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄との混合液に酸化ランタン微粒子の懸濁液(分散液)を混合することが好ましい。これにより、得られる複合酸化物中の酸化鉄の耐熱性が向上し、アルミナとの共存下で高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されても、鉄原子のアルミナへの拡散が十分に抑制され、高い酸素貯蔵能を示す酸化鉄−ジルコニア複合酸化物を得ることが可能となる。
酸化ランタン微粒子の懸濁液(分散液)に用いられる懸濁媒体(分散媒)としては、水が挙げられる。酸化ランタン微粒子の混合割合は、得られる複合酸化物中のFeとZrOと希土類元素酸化物(酸化ランタンを含む)との合計含有量およびFe換算の酸化鉄の含有量が所定の範囲となるように決定する。混合方法としては特に制限はないが、均一性を高めるために、プロペラにより撹拌した後、ホモジナイザーや各種ミルを用いてさらに撹拌することが好ましい。
次に、このようにして得られた混合液を加熱濃縮する。これにより、ジルコニアゾルがゲル化するとともに、酸化鉄前駆体もゲル化される。例えば、混合液(水懸濁液)を攪拌しながら、容器の底部を設定温度150〜350℃程度で加熱して水を蒸発させることにより濃縮し、混合液(濃縮物)の粘度が高くなった時点(例えば、攪拌が困難となった時点)で、濃縮物を100〜200℃程度の温度で加熱して水を十分に蒸発させる。これにより、水が蒸発するだけでなく、ジルコニアゾルがゲル化するとともに酸化鉄前駆体のゲルが生成する。本発明の複合酸化物の製造方法においては、この加熱濃縮によりジルコニアゾルをゲル化させると同時に酸化鉄前駆体のゲルを形成させるため、希土類元素を含有するジルコニアと酸化鉄とがともにナノメートルスケールで均一に分散した状態(共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が小さい状態)となり、酸素貯蔵能に優れた複合酸化物が得られると推察される。なお、濃縮物を250℃以上の温度で加熱して乾燥粉末を初期に生成させると、前駆体の分解が始まるため、上記のように100〜200℃程度の温度で加熱して水を十分に蒸発させた後、前駆体を分解させることが好ましい。
次に、このようにして得られた希土類元素を含有するジルコニアのゲルと酸化鉄前駆体のゲルとを含む複合酸化物を完全に酸化させるために、大気中で仮焼成する。仮焼成の温度としては特に制限はなく、通常150〜600℃程度である。その後、得られた複合酸化物を700〜1300℃(好ましくは800〜1200℃、より好ましくは850〜1150℃)程度の温度で焼成することによって、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物が得られる。焼成温度は、前記温度範囲内であれば特に問題はないが、一次粒子径が拡大し、得られる複合酸化物の熱安定性が向上するという観点から、できる限り高いことが好ましい。また、酸化ランタンを混合した場合には、この焼成によって、ランタン−鉄複合酸化物やランタン−ジルコニウム複合酸化物が生成する傾向にある。
次に、本発明の酸素貯蔵材料および排ガス浄化触媒について説明する。本発明の酸素貯蔵材料は、前記本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなるものである。上述したように、前記本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は高い酸素貯蔵能を有するものであることから、この複合酸化物を酸素貯蔵材料として使用することによって、セリウムを使用しなくても、高い酸素貯蔵能を得ることが可能となる。特に、ランタンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料は、高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されても、優れた酸素貯蔵能を発現する。
また、本発明の排ガス浄化触媒は、前記本発明の酸素貯蔵材料と貴金属とを含有するものである。上述したように、本発明の酸素貯蔵材料が高い酸素貯蔵能を有するものであることから、本発明の排ガス浄化触媒は高い触媒活性を発現する。特に、ランタンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を含有する排ガス浄化触媒は、高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されても、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能が高く維持されるため、優れた触媒活性を発現する。
このような排ガス浄化触媒に用いられる貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀などが挙げられる。このような貴金属は、通常、アルミナなどの担体や(Ce,Zr)Ox担体に担持させて使用する。本発明の排ガス浄化触媒において、アルミナ担体に担持させた貴金属を使用する場合には、ランタンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を使用することが好ましい。ランタンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物においては、酸化鉄とランタンとが複合酸化物を形成しているため、この複合酸化物がアルミナ担体や(Ce,Zr)Ox担体との共存下で高温(例えば、1000℃以上)雰囲気に曝されても、鉄原子のアルミナ担体や(Ce,Zr)Ox担体への拡散が十分に抑制され、酸素貯蔵材料の高い酸素貯蔵能および排ガス浄化触媒の高い活性が維持される。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<混合焼成法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
クエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業(株)製、試薬、褐色、鉄含量:16〜19%)333.8g、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾル(日産化学工業(株)製「ナノユース ZR30−BS」、ゾル粒子径:30〜80nm、ZrO固形分濃度:30.8%、Zr:Y(原子比)=1:0.109、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を含有。)223.5g、および蒸留水179.1gを容量1Lのポリエチレン製ビーカーに仕込んだ。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。
この混合物をプロペラ攪拌機で十分に撹拌し、さらにホモジナイザー(IKA社製「T25」、シャフトジェネレータはIKA社製「S25N−25F」を使用)を用いて回転数20000rpmで1回あたり1分間の撹拌を3回行なった。その後、ろ紙(5種C、粒子保持能:2.5μm、直径:70mmφ)を用いて吸引ろ過を行い、不純物を除去し、クエン酸鉄(III)アンモニウムが溶解したイットリア含有ジルコニアゾル水懸濁液を容量1Lのガラス製ビーカーに回収した。
この水懸濁液をテフロン(登録商標)で被覆されたプロペラ攪拌機を用いて撹拌しながら、250℃に設定したホットスターラーで加熱することにより濃縮した。水懸濁液の粘度が高くなり撹拌が困難となる手前で撹拌を停止し、濃縮物をプロペラ翼とともに120℃の乾燥機に入れ、12時間以上乾燥させた。得られた粉末すべてを容量280mlのるつぼ3個に分けて入れ、粉末を完全に酸化させるために、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で鞘鉢に入れた。この鞘鉢を大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、大気中、150℃で3時間→250℃で2時間→400℃で2時間→500℃で5時間の条件で粉末を仮焼成した。仮焼成後の粉末の全量は約158gであった。
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉から鞘鉢を取り出し、3つのるつぼ内の粉末を1つにまとめ、100メッシュ(150μm sq.)以下の大きさになるまで乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物を容量280mlのるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、900℃で5時間焼成して約152gの複合酸化物粉末を得た。
(実施例2〜7)
<混合焼成法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
鉄、ジルコニウム、イットリウムの原子比が表1に示す比率となるように、クエン酸鉄(III)アンモニウム、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾルおよび蒸留水の量を変更した以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末を得た。なお、各原料の混合量は75〜150gの複合酸化物粉末が得られるように調整した。また、ホモジナイザーの撹拌時間(撹拌回数)は、混合物の量に応じて調整した。原料の仕込量から算出した複合酸化物のFe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。
(比較例1〜4)
<混合焼成法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
鉄、ジルコニウム、イットリウムの原子比が表1に示す比率となるように、クエン酸鉄(III)アンモニウム、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾルおよび蒸留水の量を変更した以外は実施例1と同様にしてイットリア含有ジルコニア粉末(比較例1)、複合酸化物粉末(比較例2〜3)、および酸化鉄(III)粉末(比較例4)を得た。なお、各原料の混合量は75〜150gの粉末が得られるように調整した。また、ホモジナイザーの撹拌時間(撹拌回数)は、混合物の量に応じて調整した。原料の仕込量から算出した複合酸化物のFe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。
(比較例5)
<ゾルゲル法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造(1)>
トリス(2−エチルヘキサン酸)鉄(III)・ミネラルスピリット溶液(和光純薬工業(株)製、試薬、鉄含量:6%)378.3g、85%ジルコニウム(IV)ブトキシドの1−ブタノール溶液(和光純薬工業(株)製、試薬)91.7g、およびナフテン酸イットリウムのトルエン溶液(和光純薬工業(株)製、試薬、イットリウム含量:5%)39.39gを容量1Lのガラス製ビーカーに仕込んだ。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。また、原料の仕込量から換算される複合酸化物の収量は約60gであった。
この混合物をプロペラ攪拌機を用いて撹拌しながら、ホットスターラー上で90℃に加熱した後、大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、随時攪拌しながら約150時間かけて大気中で250℃まで昇温し、その後、大気中、250℃で8時間加熱して濃縮した。得られた濃縮物は58.7gであった。その後、この濃縮物を大気中、10分間で300℃まで昇温した後、300℃で2時間加熱し、次いで10分間で400℃まで昇温した後、400℃で2時間加熱し、さらに30分間で500℃まで昇温した後、500℃で5時間加熱して仮焼成した。得られた粉末は約54gであった。なお、加熱濃縮および仮焼成の間の温度履歴ならびに濃縮物および仮焼成物の質量の経時変化を図20に示した。
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉から仮焼成後の粉末を取り出し、100メッシュ(150μm sq.)以下の大きさになるまで乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物を容量280mlのるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、900℃で5時間焼成して約55gの複合酸化物粉末を得た。
(比較例6)
<ゾルゲル法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造(2)>
鉄(III)アセチルアセトネート(和光純薬工業(株)製、試薬)132.9g、ジルコニウム(IV)アセチルアセトン(和光純薬工業(株)製、試薬)90.8g、イットリウム(III)2,4−ペンタンジオナート水和物(Alfa Aesar社製、試薬)7.85g、テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製、試薬、脱酸素、安定剤含有)300g、および無水エタノール(和光純薬工業(株)製、試薬)1500gを、サランラップ(登録商標)で蓋をした容量3Lのガラス製ビーカーに素早く仕込んだ。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。また、原料の仕込量から換算される複合酸化物の量は約55gであった。
この混合物を、200℃に設定したホットスターラーを用いて200rpmで撹拌しながら液温を45℃まで昇温し、さらに1時間撹拌を継続した。粉末状の原料が溶解したことを確認した後、蓋を取り外して、得られた溶液にジエタノールアミン(和光純薬工業(株)製、試薬)200gを添加した。その後、400℃に設定したホットスターラーを用いて200rpmで撹拌しながら溶液を77℃まで昇温し、さらに撹拌しながら加熱を継続してアルコールを蒸発させた。400℃設定での加熱を開始してから約3時間経過した時点で、溶液は約600mlまで濃縮されており、液温は86℃であった。
この溶液を容量1Lのガラス製ビーカーに移し、400℃に設定したホットスターラーを用いてさらに加熱濃縮を継続したところ、液温は90℃となった。その後、突沸を防ぐために、ホットスターラーの設定温度を150℃に変更し、突沸が起こらないように液温を確認しながら、ホットスターラーの設定温度を250℃まで徐々に上げ、溶液を200℃まで昇温した。400℃設定での加熱を開始してから約4時間経過した時点で、溶液は約500mlまで濃縮されていた。
得られた溶液を室温まで冷却して一晩静置した後、大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、随時攪拌しながら250℃で5.5時間加熱して275gまで濃縮した。得られた濃縮物を大気中、300℃で10時間→400℃で2時間→500℃で5時間の条件で仮焼成して粉末を得た。
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉から仮焼成後の粉末を取り出し、100メッシュ(150μm sq.)以下の大きさになるまで乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物を容量280mlのるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、900℃で5時間焼成して約54gの複合酸化物粉末を得た。
(比較例7)
<共沈法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
硝酸鉄(III)九水和物304.1g、硝酸ジルコニウム二水和物102.7g、硝酸イットリウム15.6g、および蒸留水245gを容量3Lのガラス製ビーカーに仕込んで、一昼夜静置した(これを「A液」とする。)。また、25%のアンモニア水溶液253.6gおよび蒸留水245gを容量1Lのガラス製ビーカーに仕込んだ(これを「B液」とする。)。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。
前記A液に前記B液を一気に添加し、プロペラ攪拌機を用いて混合し、さらにホモジナイザーを用いて回転数20000rpmで5分間撹拌した。得られたスラリーを容量1Lのガラス製ビーカー5個に分けて入れ、時計皿で蓋をした。このビーカーを大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、大気中、150℃で3時間→250℃で2時間→400℃で2時間の条件で加熱した。これにより、溶液が濃縮され、さらに濃縮物が仮焼成されて粉末を得た。この粉末をまとめて容量280mlのるつぼに入れ、さらに500℃で5時間仮焼成した。
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉からるつぼを取り出し、100メッシュ(150μm sq.)以下の大きさになるまで乳鉢を用いて粉末を粉砕した。得られた粉砕物を容量280mlのるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、900℃で5時間焼成して複合酸化物粉末を得た。
(比較例8)
<粉末混合法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
比較例1で得られたイットリア含有ジルコニア粉末と比較例4で得られた酸化鉄(III)粉末とを、得られる複合酸化物中の鉄、ジルコニウム、イットリウムの原子比が表1に示す比率となるように混合し、得られた混合物を100メッシュ(150μm sq.)の篩を用いて分級した。原料の仕込量から算出した複合酸化物のFe含有量、ZrO含有量およびY含有量を表1に示す。
(比較例9)
<ゾルゲル法による酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造(3)>
クエン酸鉄(III)アンモニウムの代わりに硝酸鉄(III)を用いた以外は実施例1と同様にして複合酸化物の調製を試みたが、硝酸鉄(III)が溶解したイットリア含有ジルコニアゾル水懸濁液を調製する際に、ジルコニアと鉄が分相し、均質な複合酸化物を調製することができなかった。これは、硝酸イオンによってジルコニアゾルの分散性が低下したためと推察される。また、液のpHを調整したり、粒子径の異なるイットリア含有ジルコニアゾルを用いたりして、複合酸化物の調製を試みたが、いずれの場合も均質な複合酸化物を得ることはできなかった。
<共分散COV値の算出>
得られた複合酸化物粉末(比較例1の場合はイットリア含有ジルコニア粉末、比較例4の場合は酸化鉄(III)粉末。以下、同じ。)約1gを薬包紙で包み、これをポリ袋に入れ、真空脱気した後、密閉し、静水圧プレス(2トン/cm)により3分間圧粉した。得られた圧粉体を破砕して0.5〜1mm sq.の粒度に調整した後、真空脱気しながら加熱し、電子顕微鏡用包埋樹脂に埋め込み、破砕した複合酸化物(複合酸化物ペレット)を包埋した。
樹脂に包埋した複合酸化物ペレットの断面に、鏡面研磨(粒度0.05μmのアルミナを用いたバフ研磨)を施し、研磨後の複合酸化物ペレット断面にはカーボン蒸着を施し、ペレット周囲の樹脂断面には銀ペーストを塗布して導通性を付与し、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)分析用試料を作製した。
得られたEPMA分析用試料中の複合酸化物ペレットを無作為に2粒選択し、その断面それぞれについて、電子プローブマイクロアナライザ(日本電子(株)製「JXA−8200」)を用いて、下記条件:

(測定条件)
測定元素:Fe、Zr、Y
加速電圧:15KV
試料電流:50nA
ビーム径:最小(1μm以下)
測定範囲:1000μm(500μm/粒×2粒)
測定間隔:1μm
測定点数:1002点(501点/粒×2粒)
でEPMA(WDX:波長分散X線分光法)による線分析を行なった。
得られた線分析結果から、測定点i(i=1〜n(n=1002))におけるFe、Zr、Yに対応するX線強度(バックグランド強度を補正)を求め、各元素の100%強度に対するX線強度比(I(Fe)、I(Zr)、I(Y))を算出した。なお、測定結果に異常値が認められた場合には、その測定点の結果は採用しなかった。
次いで、希土類元素(X)=イットリウム(Y)として、下記式(1)〜(2)から、測定点iにおけるR(Fe)およびR(Zr+Y)を算出した。さらに、全測定点nについてのR(Fe)およびR(Zr+Y)の平均値Rav(Fe)およびRav(Zr+X)を求め、下記式(3)により、共分散COV(Fe,Zr+Y)を算出した。その結果を表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、本発明の混合焼成法により製造された複合酸化物粉末(実施例1、3〜7)は、共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値が10以下であり、FeおよびZrの均一分散性が非常に高いものであった。一方、ゾルゲル法(比較例5〜6)、共沈法(比較例7)および粉末混合法(比較例8)により製造した複合酸化物粉末は、共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値が大きく、FeおよびZrの均一分散性は低いものであった。
また、図1〜図10には、実施例1、3〜7および比較例5〜8で得られた複合酸化物粉末におけるR(Fe)値の頻度分布を示す。図1〜図10に示した結果から明らかなように、本発明の混合焼成法により製造した複合酸化物粉末においては、いずれもR(Fe)値の分布が単分散であった。これは、複合酸化物中にFeの含有量が等しい微小領域が多数存在することを示しており、複合酸化物全体においてFeが均一に微分散していることが確認された。一方、ゾルゲル法(比較例5〜6)および共沈法(比較例7)により製造した複合酸化物粉末においては、いずれもR(Fe)値の分布が広く、微小領域におけるFeの含有量にバラつきがあり、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物に比べて、Feの均一分散性が低いことがわかった。また、粉末混合法(比較例8)により製造した複合酸化物粉末においては、測定点の大部分がR(Fe)=0またはR(Fe)=100であった。これは、複合酸化物中にFeまたはZrのいずれか一方のみからなる微小領域が多く存在していることを示しており、粉末混合法により製造した複合酸化物粉末は、Feの均一分散性が低いものであることがわかった。
<耐熱試験(1)>
得られた複合酸化物粉末(比較例1の場合はイットリア含有ジルコニア粉末、比較例4の場合は酸化鉄(III)粉末。以下、同じ。)50g、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、針状のベーマイト系アルミナ水和物、pH:4〜6、固形分含量:Alとして10〜11質量%)43.48g、および蒸留水50g(ただし、50gを基準としてスラリー粘度に応じて添加量を調整した。)を容量300mlの蓋付きポリエチレン製容器に入れ、攪拌した。さらに、アトライターを用いて30分間撹拌し、混合しながら湿式粉砕を行った。得られたスラリーに蒸留水を添加して塗布可能な粘度に調整した。
次に、コージェライトハニカム(日本ガイシ(株)製外周コートテストピースハニカム、外径:30mm、長さ:50mm、四角セル、400セル/インチ、セル厚さ:3mm)に蒸留水を十分に吸水させた後、大気を吸引させて余分な水分を吹き飛ばした。このコージェライトハニカムの一方の端面に前記スラリーを乗せ、他方の端面から吸引してセルの壁面に複合酸化物をコーティングした後、250℃で5時間仮焼成した。焼成後の複合酸化物のコーティング量が所定量となるように、前記コーティング操作を数回繰り返して複合酸化物層を形成し、その後、500℃で5時間焼成した。その後、焼成後の複合酸化物のコーティング量を確認し、箱型電気炉を用いて大気中、1000℃で5時間加熱して耐熱試験を行なった。
<酸素貯蔵能(OSC)の評価(1)>
耐熱試験後の複合酸化物の酸素吸蔵能(OSC)を特許第4600715号に記載のガス分析試験装置を用いて測定した。前記複合酸化物層を備えるコージェライトハニカムの外周をセラミック繊維で固定し、これをインコネル製の反応管内に装着した。この反応管に、縦型管状炉(共和高熱工業(株)製)中で500℃または900℃に加熱しながら、ガス発生器((株)堀場エステック製)で発生させたリッチガス(CO(1.6容量%)+N(残量))またはリーンガス(O(0.8容量%)+N(残量))を流量25L/分で供給した。リッチガスとリーンガスは、インジェクターを用いて交互に1分間ずつ切り替えて反応管に供給した。また、ガスの供給は、各温度において2分間/周期で5周期実施した。
発生したCOの濃度をエンジン排ガス測定装置((株)堀場製作所製「MEXA−4300FT」)を用いて測定した。図11には、実施例1および比較例5〜8において各種方法により製造した複合酸化物について、500℃でOSC評価を行なったときのCO濃度の経時変化を示す。また、図12および図13には、実施例1〜7および比較例2〜3において混合焼成法により製造した種々のFe含有量の複合酸化物粉末、比較例1で得られたイットリア含有ジルコニア粉末、および比較例4で得られた酸化鉄(III)粉末について、それぞれ500℃および900℃でOSC評価を行なったときのCO濃度の経時変化を示す。なお、図11〜図13には、4周期目または5周期目の結果を示した。
次に、図11〜図13に示した結果に基づいて、4周期目または5周期目のガス供給開始時から10秒間に発生したCOの平均濃度を算出した。図14には、図11に示した結果に基づいて算出したCOの平均濃度と共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値との関係を示す。また、図15および図16には、それぞれ図12および図13に示した結果に基づいて算出したCOの平均濃度と複合酸化物中のFe濃度との関係を示す。
図14に示した結果から明らかなように、本発明の混合焼成法により製造した、共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値が小さい複合酸化物粉末(実施例1)は、発生したCOの平均濃度が高く、酸素吸蔵能に優れたものであることが確認された。一方、ゾルゲル法(比較例5〜6)、共沈法(比較例7)および粉末混合法(比較例8)により製造した、共分散COV(Fe,Zr+Y)の絶対値が大きい複合酸化物粉末は、発生したCOの平均濃度が低く、酸素吸蔵能が劣るものであった。
また、図15および図16に示した結果から明らかなように、混合焼成法により製造した複合酸化物のうち、Feの含有量が10〜90質量%(好ましくは20〜90質量%、より好ましくは20〜70質量%)の複合酸化物は、発生したCOの平均濃度が高く、酸素吸蔵能に優れたものであることが確認された。一方、Feの含有量が10質量%未満または90質量%超になると、発生したCOの平均濃度が急激に低くなることがわかった。
<X線回折測定>
得られた複合酸化物粉末をメノウ製乳鉢で粉砕し、粉末X線回折装置((株)リガク製「試料水平型強力X線回折装置RINT−TTR」)を用い、X線源:CuKα線(λ=0.15418nm)、加速電圧:50kV、加速電流:300mAの条件で粉末X線回折(XRD)測定を行なった。図17〜図19には、実施例3、5、7で得られた複合酸化物のXRDスペクトルを示す。
図17〜図19に示した結果から明らかなように、本発明の混合焼成法により製造した複合酸化物中の酸化鉄(III)はすべてヘマタイト(α−Fe)であることが確認された。
(実施例8)
<混合焼成法によるランタン含有酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
先ず、容量1Lのポリエチレン製ビーカーに、クエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業(株)製、試薬、褐色、鉄含量:16〜19%)277.9g、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾル(日産化学工業(株)製「ナノユース ZR30−BS」、ゾル粒子径:30〜80nm、ZrO固形分濃度:30.8%、Zr:Y(原子比)=1:0.109)378.4g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)9g、および蒸留水約140gを仕込み、クエン酸鉄(III)アンモニウムとジルコニアゾルとを含有する混合物を調製した。次に、酸化ランタン微粒子(キシダ化学(株)製試薬、粒子径:15μm以下)137.8gおよび蒸留水約140gを混合して酸化ランタン微粒子分散液を調製した。これらの仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量、ZrO含有量、La含有量およびY含有量を表2に示す。
前記混合物に酸化ランタン微粒子分散液を混合した後、プロペラ攪拌機で十分に撹拌し、さらにホモジナイザー(IKA社製「T50ベーシック」、シャフトジェネレータはIKA社製「S50N−G45F」を使用)を用いて回転数6000〜7000rpmで1回あたり1分間の撹拌を3回行い、クエン酸鉄(III)アンモニウムが溶解した、イットリア含有ジルコニアゾルと酸化ランタン微粒子とを含有する水懸濁液を得た。この水懸濁液を容量1Lのガラス製ビーカーに回収した。
この水懸濁液をテフロン(登録商標)で被覆されたプロペラ攪拌機を用いて撹拌しながら、250℃に設定したホットスターラーで室温から加熱することにより濃縮した。水懸濁液の粘度が高くなり撹拌が困難となる手前で撹拌を停止し、濃縮物をプロペラ翼とともに120℃の乾燥機に入れ、12時間以上乾燥させた。得られた粉末すべてを容量280mlのるつぼ3個に分けて入れ、粉末を完全に酸化させるために、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で鞘鉢に入れた。この鞘鉢を大気の流通が可能な脱脂炉に入れ、大気中、150℃で3時間→250℃で2時間→400℃で2時間→500℃で5時間の条件で粉末を仮焼成した。仮焼成後の粉末の全量は約320gであった。
その後、脱脂炉の温度が150℃以下になった時点で脱脂炉から鞘鉢を取り出し、3つのるつぼ内の粉末を1つにまとめ、100メッシュ(150μm sq.)以下の大きさになるまで乳鉢を用いて粉砕した。得られた粉砕物を容量280mlのるつぼに入れ、るつぼの蓋を1/10〜1/5程度開けた状態で箱型電気炉に入れ、大気中、1100℃で10時間焼成して約320gの複合酸化物(1.0LFZ)粉末を得た。
(実施例9〜10)
<混合焼成法によるランタン含有酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
鉄、ジルコニウム、ランタン、イットリウムの原子比が表2に示す比率となるように、酸化ランタン微粒子、クエン酸鉄(III)アンモニウム、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾルおよび蒸留水の量を変更した以外は実施例8と同様にして複合酸化物(1.2LFZおよび2.0LFZ)粉末を得た。なお、各原料の混合量は150〜400gの複合酸化物粉末が得られるように調整した。また、ホモジナイザーの撹拌時間(撹拌回数)は、混合物の量に応じて調整した。原料の仕込量から算出した複合酸化物のFe含有量、ZrO含有量、La含有量およびY含有量を表2に示す。
(参考例1)
<混合焼成法によるランタン含有酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造>
鉄、ジルコニウム、ランタン、イットリウムの原子比が表2に示す比率となるように、酸化ランタン微粒子、クエン酸鉄(III)アンモニウム、水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾルおよび蒸留水の量を変更した以外は実施例8と同様にして複合酸化物(4.0LFZ)粉末700gを得た。原料の仕込量から算出した複合酸化物のFe含有量、ZrO含有量、La含有量およびY含有量を表2に示す。
(比較例10)
<混合焼成法によるランタン含有酸化鉄の製造>
水分散型のイットリア含有アルカリ性ジルコニアゾルを用いなかった以外は実施例10と同様にしてランタン含有酸化鉄(2.0LF)粉末400gを得た。原料の仕込量から算出した複合酸化物の原子比、Fe含有量およびLa含有量を表2に示す。
<共分散COV値の算出>
Fe、Zr、La、Yについて測定し、希土類元素(X)をランタン(La)+イットリウム(Y)とした以外は前記<共分散COV値の算出>に記載の方法に従って、得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末(比較例10の場合はランタン含有酸化鉄(LF)粉末。以下、同じ。)についてEPMAによる線分析を行い、共分散COV(Fe,Zr+La+Y)を算出した。その結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、混合焼成法により製造されたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末(実施例8〜10および参考例1)は、共分散COV(Fe,Zr+La+Y)の絶対値が10以下であり、FeおよびZr+La+Yの均一分散性が非常に高いものであった。ただし、参考例1で得られた4.0LFZ粉末は、Feの含有量が少ないものであった。一方、混合焼成法により製造されたランタン含有酸化鉄(LF)粉末(比較例10)は、共分散COV(Fe,La)の絶対値が大きく、FeおよびLaの均一分散性は低いものであった。
また、図21〜図25には、実施例8〜10および参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末ならびに比較例10で得られたランタン含有酸化鉄(LF)粉末におけるR(Fe)値の頻度分布を示す。図21〜図25に示した結果から明らかなように、混合焼成法により製造したランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末においては、いずれもR(Fe)値の分布が単分散であった。これは、ランタン含有複合酸化物(LFZ)中にFeの含有量が等しい微小領域が多数存在することを示しており、複合酸化物全体においてFeが均一に微分散していることが確認された。一方、混合焼成法により製造したランタン含有酸化鉄(LF)粉末においては、R(Fe)値の分布が広く、微小領域におけるFeの含有量にバラつきがあり、本発明のランタン含有酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物に比べて、Feの均一分散性が低いことがわかった。
<エネルギー分散型X線分析およびX線回折測定>
エネルギー分散型X線分析装置を備える走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製「S−5500」)を用いて、得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末のエネルギー分散型X線分析(EDX分析)を行なった。その結果の例を図26〜図28に示す。なお、図26〜図28は、実施例8、10、および参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末のEDX分析結果を示すSEM写真である。
また、得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末をメノウ製乳鉢で粉砕した後、前記<X線回折測定>に記載の方法に従って粉末X線回折(XRD)測定を行なった。その結果の例を図29〜図30に示す。なお、図29〜図30は、実施例10および参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)のXRDスペクトルを示すグラフである。
得られたEDX分析結果およびXRD測定結果から、実施例8で得られたランタン含有複合酸化物(1.0LFZ)においては、LaFeOおよびZrOが生成していることが確認された。また、実施例10で得られたランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)においては、LaFeOおよびLaZrが生成していることが確認され、La、FeおよびZrOは含まれていないことが確認された。さらに、他の不純物についても検出されなかった。一方、参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(4.0LFZ)においては、LaFeO、LaZrおよびLaが生成していることが確認された。また、他の不純物については検出されなかった。
<粒子径測定>
前記SEM観察結果および前記XRD測定結果に基づいて、得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末を構成する各種酸化物粒子の一次粒子を観察した。表3には、実施例8、10および参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(LFZ)粉末ならびに比較例10で得られたランタン含有酸化鉄(LF)粉末を構成する各種酸化物微粒子の一次粒子径を示す。
表3に示した結果から明らかなように、Laの含有量が多くなると、LaFeOの一次粒子径が小さくなる傾向にあり、また、ZrOより一次粒子径の小さいLaZrが生成する傾向にあった。従って、Laの添加により酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物を構成する一次粒子の粒子径が小さくなることがわかった。
(実施例11)
<触媒調製>
実施例10で得られたランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末(Fe:Zr:La:Y(原子比)=1.0:1.0:2.0:0.109)7.57g、セリア−ジルコニアを含有する担体に担持されたロジウム触媒(Rh担持量:0.02g)13.02g、ランタン安定化アルミナ粉末5g、酢酸安定化アルミナゾル(日産化学工業(株)製「AS200」、針状のベーマイト系アルミナ水和物、pH:4〜6、固形分含量:Alとして10〜11質量%)26.43g、および蒸留水18.87gを容量300mlの蓋付きポリエチレン製容器に入れ、攪拌・混合した。得られたスラリーを蒸発乾固させてスラリーペレット(固体)を調製した。
次に、このスラリーペレット(固体)を脱脂炉に入れ、150℃で2時間仮焼成した後、500℃で3時間焼成した。得られたペレットの粒度を0.5〜1mmに調整した後、さらに、このペレットを900℃で5時間焼成して、ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)を含有するペレット触媒を得た。
(実施例12)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末7.57gの代わりに実施例8で得られたランタン含有複合酸化物(1.0LFZ)粉末(Fe:Zr:La:Y(原子比)=1.0:1.0:1.0:0.109)5.29gを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタン含有複合酸化物(1.0LFZ)を含有するペレット触媒を調製した。
(実施例13)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末7.57gの代わりに実施例9で得られたランタン含有複合酸化物(1.2LFZ)粉末(Fe:Zr:La:Y(原子比)=1.0:1.0:1.2:0.109)5.75gを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタン含有複合酸化物(1.2LFZ)を含有するペレット触媒を調製した。
(参考例2)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末7.57gの代わりに参考例1で得られたランタン含有複合酸化物(4.0LFZ)粉末(Fe:Zr:La:Y(原子比)=1.0:1.0:4.0:0.109)12.13gを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタン含有複合酸化物(4.0LFZ)を含有するペレット触媒を調製した。
(参考例3)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末7.57gの代わりに実施例1で得られたランタンを含有しない複合酸化物(FZ)粉末2.06gを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有するペレット触媒を調製した。
(比較例11)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末7.57gの代わりに比較例10で得られたランタン含有酸化鉄(2.0LF)粉末5.68gを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタン含有酸化鉄(2.0LF)を含有するペレット触媒を調製した。
(比較例12)
ランタン含有複合酸化物(2.0LFZ)粉末を用いなかった以外は実施例11と同様にしてペレット触媒を調製した。
<耐熱試験(2)>
実施例11〜13、参考例2〜3および比較例11〜12で得られたペレット触媒を、ロジウム触媒およびアルミナ触媒の含有量が等しくなるように、それぞれ石英反応管に充填し、ペレット触媒に全量ガスが流通する条件でリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験を行なった。すなわち、各ペレット触媒を充填した前記石英反応管に、横型管状炉(共和高熱工業(株)製)中で1050℃に加熱しながら、ガス発生器で発生させたリッチガス(CO(5容量%)+N(残量))またはリーンガス(O(5容量%)+N(残量))を流量0.5L/分で供給し、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験を5時間行なった。なお、リッチガスとリーンガスは、電磁弁を用いて交互に各10分間ずつ切り替えて反応管に供給した。
<酸素貯蔵能(OSC)の評価(2)>
続いて、この耐熱試験後のペレット触媒を充填した石英反応管に、特許第4600715号き記載の縦型管状炉中で900℃一定に加熱しながら、ガス発生器で発生させたリッチガス(CO(1.6容量%)+N(残量))またはリーンガス(O(0.8容量%)+N(残量))を流量25L/分で供給した。リッチガスとリーンガスは、インジェクターを用いて交互に1分間ずつ切り替えて反応管に供給した。また、ガスの供給は、各温度において2分間/周期で5周期実施した。このとき発生したCOの濃度をエンジン排ガス測定装置((株)堀場製作所製「MEXA−4300FT」)を用いて測定した。
得られたCO濃度の経時変化に基づいて、4周期目または5周期目のガス供給開始時から10秒間に発生したCOの平均濃度を算出した。各複合酸化物を含有する触媒および複合酸化物を含有しない触媒のCOの平均濃度を図31に示す。図31に示した結果から明らかなように、ランタン含有複合酸化物(LFZ)を含有する触媒(実施例11〜13および参考例2)は、複合酸化物(FZ)およびランタン含有複合酸化物(LFZ)を含有しない触媒(比較例12)に比べて、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の酸素貯蔵能が高くなることが確認された。また、La/Fe原子比が1.2のランタン含有複合酸化物(1.2LFZ)を含有する触媒(実施例13)においては、ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有する触媒(参考例3)に比べて、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の酸素貯蔵能が高くなり、耐熱性に優れていることが確認された。
<触媒性能の評価>
前記耐熱試験(2)後の触媒を装着した反応管に、CO(1000ppm)、C(1000ppmC)、O(0.4容量%)、CO(10容量%)、HO(10容量%)およびN(残部)からなるモデルガスを25L/minのガス流量で供給して接触させた。このようなガスの供給に際して、触媒に接触させるガス(触媒入りガス)の温度を150℃(初期温度)から700℃まで24℃/minの昇温速度で昇温した。そして、触媒に接触した後のガス(触媒出ガス)中に含まれるC濃度を測定し、かかる測定値(触媒出ガス中のC濃度)と触媒入りガス中のC濃度に基づいて、Cの浄化率が50%に到達する温度(HC50%浄化温度T50)を求めた。各複合酸化物を含有する触媒および複合酸化物を含有しない触媒のHC50%浄化温度T50を図32に示す。また、図33には、各複合酸化物中のランタンと鉄との原子比(La/Fe)とHC50%浄化温度T50との関係を示す。
図32に示した結果から明らかなように、ランタン含有複合酸化物(LFZ)を含有する触媒(実施例11〜13および参考例2)は、ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有する触媒(参考例3)に比べて、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後のHC50%浄化温度が低く、耐熱性に優れていることが確認された。特に、図33に示した結果から明らかなように、La/Fe原子比が1.2のランタン含有複合酸化物(1.2LFZ)を含有する触媒(実施例13)は、HC50%浄化温度が最も低く、最も耐熱性に優れたものであることがわかった。
(実施例14)
実施例1で得られたランタンを含有しない複合酸化物(FZ)粉末2.0g、ランタン安定化アルミナ担体に担持されたパラジウム触媒(Pd担持量:0.1g)10g、蒸留水15g、およびアルミナゾル1.2gを容量300mlの蓋付きポリエチレン製容器に入れ、攪拌・混合した。得られたスラリーを蒸発乾固させてペーストを調製した。このペーストを用いた以外は実施例11と同様にして、ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有するペレット触媒を調製した。
(比較例13)
酢酸マンガン(II)四水和物およびアンモニア水をさらに添加した以外は実施例1と同様にして、マンガンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物(FMZ)粉末を得た。原料の仕込量から算出した複合酸化物の原子比はFe:Mn:Zr:Y=0.5:0.25:1:0.109であった。
ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)粉末の代わりにマンガンを含有する複合酸化物(FMZ)粉末5.23gを用い、アルミナゾルの量を1.52gに変更した以外は実施例14と同様にして、マンガンを含有する複合酸化物(FMZ)を含有するペレット触媒を調製した。
<酸素貯蔵能(OSC)の評価(3)>
実施例14で得られたランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有するペレット触媒および比較例13で得られたマンガンを含有する複合酸化物(FMZ)を含有するペレット触媒について、耐熱試験を実施しなかった以外は前記<酸素貯蔵能(OSC)の評価(2)>に記載の方法と同様にして、各ペレット触媒の酸素貯蔵能の評価試験を行なった。また、加熱温度を1000℃に変更した以外は前記<耐熱試験(2)>に記載の方法と同様にしてリッチ/リーン雰囲気での耐熱試験を行い、その後、前記<酸素貯蔵能(OSC)の評価(2)>に記載の方法と同様にして、耐熱試験後の各ペレット触媒の酸素貯蔵能の評価試験を行なった。これらの結果を図34に示す。
図34に示した結果から明らかなように、ランタンを含有しない複合酸化物(FZ)を含有する触媒(実施例14)においては、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験の前後で、酸素貯蔵能の低下は見られなかった。一方、マンガンを含有する複合酸化物(FMZ)を含有する触媒(比較例13)においては、リッチ/リーン雰囲気での耐熱試験後の酸素貯蔵能が、耐熱試験前の酸素貯蔵能に比べて著しく低下することがわかった。すなわち、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、マンガンを含有する酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物に比べて、耐熱性に優れていることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、高い酸素貯蔵能を示す酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物を得ることが可能となる。
したがって、本発明の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物は、大気中、高温環境下に曝露された後においても高い酸素貯蔵能を示すことから、300℃以上の比較的高温において用いられる排ガス浄化用触媒の担体、例えば、排ガス浄化用触媒の酸素貯蔵材料などとして有用である。

Claims (13)

  1. 鉄、ジルコニウムおよび希土類元素を含有する複合酸化物であり、
    FeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量が90質量%以上であり、
    Fe換算の酸化鉄の含有量が10〜90質量%であり、
    大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物の下記式(1)〜(3):
    (式中、I(Fe)、I(Zr)およびI(X)は、複合酸化物について、加速電圧:15KV、試料電流:50nA、ビーム径:最小(1μm以下)、測定間隔:1μmの条件でEPMA(WDX:波長分散X線分光法)による線分析を行うことによって測定される、測定点i(i=1〜n)における鉄、ジルコニウムおよび希土類元素のX線強度の各元素の100%強度に対する比を表し、Rav(Fe)およびRav(Zr+X)は、それぞれR(Fe)およびR(Zr+X)の全測定点nについての平均値を表す。)
    により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が30以下であることを特徴とする酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  2. 大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物の前記式(1)〜(3)により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が20以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  3. 前記複合酸化物がイットリウムを含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  4. 大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物中の酸化鉄がヘマタイトを含むものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  5. 前記複合酸化物がランタンを含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  6. 大気中、900℃以上の温度で5時間以上焼成した後の複合酸化物がランタン−鉄複合酸化物およびランタン−ジルコニウム複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  7. 大気中、1100℃で10時間焼成した後の複合酸化物の前記式(1)〜(3)により求められる共分散COV(Fe,Zr+X)の絶対値が20以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  8. ランタンと鉄の原子比(La/Fe)が1.1以上2.1以下であることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  9. ランタンと鉄の原子比(La/Fe)が1.1以上2.0以下であることを特徴とする請求項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物。
  10. 請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなることを特徴とする排ガス浄化触媒用酸素貯蔵材料。
  11. 請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物からなる酸素貯蔵材料と貴金属とを含有することを特徴とする排ガス浄化触媒。
  12. 希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄とを、得られる複合酸化物中のFeとZrOと希土類元素酸化物との合計含有量が90質量%以上となり、Fe換算の酸化鉄の含有量が10〜90質量%となる割合で混合し、得られた混合液を加熱濃縮し、さらに得られたゲルを焼成することを特徴とする酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
  13. 希土類元素を含有するジルコニアゾル水懸濁液と有機酸鉄との混合液に、酸化ランタンをさらに混合することを特徴とする請求項12に記載の酸化鉄−ジルコニア系複合酸化物の製造方法。
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