JP5645440B2 - 構造物の補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化シートを使用して、土木建築構造物であるコンクリート構造物或いは鋼構造物、更には、木製構造物、プラスチック製構造物、或いは、これらの複合構造物(本願明細書では、コンクリート構造物、鋼構造物、木製構造物、プラスチック製構造物、及び、これらの複合構造物を含めて単に「構造物」という。)を補強する構造物の補強方法に関するものである。
近年、既存或いは新設の構造物の補強方法として、特許文献1に記載されるような、構造物の表面に、炭素繊維シートやアラミド繊維シートなどの連続強化繊維シートを貼り付けたり、巻き付けたりする炭素繊維シート接着工法やアラミド繊維シート接着工法などの連続繊維シート接着工法、或いは、未硬化のマトリクス樹脂を連続繊維束に含浸させたシートを接着後硬化させる工法、がある。
更には、現場樹脂含浸を省略するため工場生産した板厚1〜2mm、幅5cm程度のFRP板をコンクリート表面にパテ状接着樹脂を用いて接着するFRP板接着補強工法も開発されている。
しかしながら、上記連続繊維シート接着工法は、マトリクス樹脂(含浸接着剤)を連続繊維シートに工事現場で含浸させながら補強構造物に接着するために、マトリクス樹脂の強化繊維束への含浸に手間を要し、マトリクス樹脂の含浸不良、連続繊維シートの膨れ、浮きの発生など現地施工による品質不良が生じ易いという欠点があった。
また、繊維シートの連続繊維に施工現場で樹脂を含浸させるため、繊維シートの繊維目付量を大きくすると、繊維束内部まで含浸接着剤が含浸しないといった問題、また、含浸用の低粘度のマトリクス樹脂を構造物との接着樹脂として兼用するため、繊維シートの重量が重くなり過ぎると接着樹脂の硬化前に連続繊維シートが剥離、脱落する恐れがあった。
このため、連続繊維シートの繊維目付量を大きくすることが難しく炭素繊維シートの場合で600g/m2程度が限界であった。
このため、必要補強量が多い場合には多層積層する必要があり、工期が長くなる、コスト高となる、などの欠点があった。
また、例えば、下地処理後のコンクリート構造物の表面にはコンクリートに内在する気泡が表面に巣穴状に露出していたり、型枠段差などの凹凸もある。このようなコンクリート表面に連続繊維シートの繊維束に含浸させるための低粘度樹脂(粘度40,000mPa・sec以下)の含浸接着剤を用いて直接シートを接着すると、シートを段差形状に追従させて固定することができず、浮きが発生したり、巣穴状気泡内の空気の膨張によりシートに膨れが発生する、などの施工不良が生じる。
このため、コンクリート表面にエポキシ樹脂パテなどの不陸修正材を塗布してコテ仕上により平滑化し、不陸修正材が硬化した後、改めてシート接着用の含浸接着剤を塗布する必要があり、長工期、コスト高となる、といった問題があった。
又、上記未硬化のマトリクス樹脂を連続繊維束に含浸させたシートを接着後硬化させる工法は、樹脂含浸された連続繊維シートが通気性がないため接着面のシート間の空気が抜けにくく連続繊維シートの膨れ、浮きの発生など現地施工による品質不良が生じやすいという欠点があった。
更に、板厚1〜2mm、幅5cm程度のFRP板をコンクリート表面にパテ状接着樹脂を用いて接着するFRP板接着補強工法は、板幅が小さく構造物全面を覆って接着することが困難であり、床版などの面部材に適用することが困難であった。
また、連続繊維シートの厚さ0.1mm〜0.5mm程度に比べ板厚が厚いFRP板を帯状に部分的に接着するため、連続繊維シート接着工法に比べて接着面積が極端に小さく接着界面に作用する付着せん断応力の集中のため端部から剥離が発生し易い、という欠点があった。
更には、板厚が厚いため接着剤による重ね継手ではFRP板の引張強度に達する前に継手部の剥離が発生するために、重ね継手が使用できず補強範囲全長に渡って1本のFRP板を接着する必要があり、長尺構造物では施工性に問題があった。
そこで、特許文献2には、強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法が提案されている。
この構造物の補強方法は、繊維強化シートを構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高い構造物の補強方法を提供することができる。
特に、結合材として無機材料のセメント系材料を使用した場合には、セメント部材が火に強く、燃えないことから、補強に有効な繊維強化シートを火災などから守り、不燃材料として扱える、といった大きな優位性を持っている。
特開平3−224901号公報 特開2008−63758号公報
しかしながら、本発明者らの研究実験の結果、上記特許文献2に記載の補強方法では、使用する繊維強化シートは、ストランドに含浸させた樹脂が硬化してしまっている有機材料であり、従って、特に結合材として無機材料のセメント系材料を使用した場合には、結合材との接着が困難であることが分かった。場合によっては、繊維強化シートが破断強度に至る前にセメント材料から剥がれてしまうことが生じた。
そこで、本発明の目的は、繊維強化シートを使用したときの特長を有すると共に、結合材としてセメント系材料とされる無機系結合材料を使用した場合において、結合材との接着を極めて強固とすることができ、繊維強化シートが破断強度に至る前にセメント材料から剥がれることを回避することのできる構造物の補強方法を提供することである。
上記目的は本発明に係る構造物の補強方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によると、強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記下地処理した構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(c)前記(b)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布した前記繊維強化シートを該(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
(d)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
第2の本発明によると、強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記下地処理した構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
(c)前記(b)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布する工程、
(d)前記(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記繊維強化シートを押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
(e)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
第3の本発明によると、強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記下地処理した前記構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布した前記繊維強化シートを前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
(c)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
第4の本発明によると、強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
(a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
(b)前記下地処理した前記構造物の表面に塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布する工程、
(c)前記(b)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記繊維強化シートを押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
(d)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
を有することを特徴とする構造物の補強方法が提供される。
本発明の一実施態様によると、前記(a)工程にて下地処理した前記構造物の表面にプライマーを塗布し、前記プライマーが硬化した後に、前記(b)工程を行う。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化シートは、複数層にて前記構造物の表面に積層して接着され、前記構造物と一体化する。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化プラスチック線材の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用される。
本発明の他の実施態様によると、前記無機系結合材料は、繊維材が混入されている。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化プラスチック線材は、直径が0.5〜3mmの円形断面形状であるか、又は、幅が1〜10mm、厚みが0.1〜2mmとされる矩形断面形状である。
本発明の他の実施態様によると、前記各繊維強化プラスチック線材は、互いに0.05〜3.0mmだけ離間している。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維強化シートは、幅が100mm〜10mである。
本発明の構造物の補強方法によれば、繊維強化シートを構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高いといった繊維強化シートを使用したときの特長を有すると共に、結合材としてセメント系材料とされる無機系結合材料を使用した場合において、結合材との接着が極めて強固に結合させることができ、繊維強化シートが破断強度に至る前にセメント材料から剥がれることを回避することができる。
本発明の構造物の補強方法に使用し得る繊維強化シートの一実施例を示す斜視図である。 本発明の構造物の補強方法に使用し得る繊維強化シートを構成する繊維強化プラスチック線材の断面図である。 本発明の構造物の補強方法に使用し得る繊維強化シートの他の実施例を示す斜視図である。 本発明の構造物の補強方法に使用し得る繊維強化シートの他の実施例を示す図である。 本発明の構造物の補強方法に使用し得る繊維強化シートの他の実施例を示す図である。 本発明の構造物の補強方法の一実施例を説明する工程図である。 本発明の構造物の補強方法の他の実施例を説明する工程図である。 本発明の構造物の補強方法を実証するための曲げ強度試験に使用した試験片の構成を説明する図である。
以下、本発明に係る構造物の補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
(繊維強化シート)
図1及び図2に、本発明に係る構造物の補強方法に使用する繊維強化シート1の一実施例を示す。繊維強化シート1は、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材2を互いに線材固定材3にて固定される。
繊維強化プラスチック線材2は、一方向に配向された多数本の連続した強化繊維fにマトリクス樹脂Rが含浸され硬化された細長形状(細径)のものであり、弾性を有している。従って、斯かる弾性の繊維強化プラスチック線材2をスダレ状に、即ち、線材2が互いに近接離間して引き揃えられたシート形状とされる繊維強化シート1は、その長手方向に弾性を有している。そのために、例えば、長尺とされる繊維強化シート1は、搬送時には、所定半径にて巻き込んだ状態にて持ち運ぶことも可能であり、極めて可搬性に富んでいる。また、繊維強化シート1は、繊維強化プラスチック線材2にて構成されているために、搬送時に、従来の未含浸強化繊維シートのように、強化繊維の配向が乱れたり、糸切れを生じるといった心配は全くない。
更に説明すると、細径の繊維強化プラスチック線材2は、直径(d)が0.5〜3mmの略円形断面形状(図2(a))であるか、又は、幅(w)が1〜10mm、厚み(t)が0.1〜2mmとされる略矩形断面形状(図2(b))とし得る。勿論、必要に応じて、その他の種々の断面形状とすることができる。また、繊維強化プラスチック線材2は、使用時における接着力を向上させるために、その表面が、ショットブラストや、金ブラシなどを用いて目荒らしを行い粗面とするのが好ましい。
上述のように、一方向に引き揃えスダレ状とされた繊維強化シート1において、各線材2は、互いに空隙(g)=0.05〜3.0mmだけ近接離間して、線材固定材3にて固定される。また、このようにして形成された繊維強化シート1の長さ(L)及び幅(W)は、補強される構造物の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W)は、100〜1000mmとされる。又、長さ(L)は、1〜5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
また、繊維強化シート1の長さ(L)を1〜5m程度として、幅Wをこれより長く1〜10m程度として製造することも可能である。この場合、繊維強化プラスチック線材2を伸ばした状態で繊維強化プラスチック線材2に対して直角方向に巻き、スダレ状に巻き込んで搬送することもできる。
強化繊維fとしては、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
繊維強化プラスチック線材2に含浸されるマトリクス樹脂Rは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、樹脂含浸量は、30〜70重量%、好ましくは、40〜60重量%とされる。
又、各線材2を線材固定材3にて固定する方法としては、図1に示すように、例えば、線材固定材3として横糸を使用し、一方向にスダレ状に配列された複数本の線材2から成るシート形態とされる線材、即ち、連続した線材シートを、線材に対して直交して一定の間隔(P)にて打ち込み、編み付ける方法を採用し得る。横糸3の打ち込み間隔(P)は、特に制限されないが、作製された繊維強化シート1の取り扱い性を考慮して、通常10〜100mm間隔の範囲で選定される。
このとき、横糸3は、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維を複数本束ねた糸条とされる。又、有機繊維としては、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用される。
各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図3(a)に示すように、線材固定材3としてメッシュ状支持体シートを使用することができる。
つまり、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた複数本の線材2、即ち、線材シートの片側面、又は、両面を、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製したメッシュ状の支持体シート3により支持した構成とすることもできる。
この場合には、例えば、2軸構成とされるメッシュ状支持体シート3を構成する縦糸4及び横糸5の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3をスダレ状線材シートの両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸4及び横糸5の部分をスダレ状線材シートに溶着する。
メッシュ状支持体シート3は、2軸構成のほかに、ガラス繊維を3軸に配向して形成したり、或いは、ガラス繊維を線材2に対して直交する横糸5のみを配置した、所謂、1軸に配向して形成して前記シート状に引き揃えた複数本の線材2に接着することもできる。
又、上記線材固定材3の糸条としては、例えばガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維も又好ましく用いられる。
更に、各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図3(b)に示すように、線材固定材3として、例えば、粘着テープ又は接着テープなどとされる可撓性帯材を使用することができる。可撓性帯材3は、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に、複数本の繊維強化プラスチック線材2の片側面、又は、両面を貼り付けて固定する。
つまり、可撓性帯材3として、幅(w1)2〜30mm程度の、塩化ビニルテープ、紙テープ、布テープ、不織布テープなどの粘着テープ又は接着テープが使用される。これらテープ3を、通常、10〜100mm間隔(P)で各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に貼り付ける。
更に、可撓性帯材3としては、ナイロン、EVA樹脂などの熱可塑性樹脂を帯状に、線材2の長手方向に対して垂直方向に片側面、又は、両面に熱融着させることによっても達成される。
更には、織機方式による織成繊維強化シートとすることもできる。
つまり、図4に示すように、
(a)縦糸として、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、互いに所定のg空隙を持たせて平行に配列し、且つ、補助縦糸5を、平行に配列された繊維強化プラスチック線材2の間に所定の間隔P0にて平行に配列し、
(b)平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2にて形成されるシート状の繊維強化プラスチック線材のいずれかの側に位置するように、繊維強化プラスチック線材2の長手方向に沿って所定間隔Pにて横糸3を配置し、且つ、横糸3は、縦糸2及び補助縦糸5に織り込まれることによって、平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2をシート状に固定する、
ことによって作製される。
更には、図5に示すように、
(a)縦糸として、連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、互いに所定の空隙gを持たせて平行に配列し、
(b)互いに平行に配列された複数本の繊維強化プラスチック線材2に対して、繊維強化プラスチック線材2の長手方向に沿って所定間隔にて横糸3を織り込み、シート状の織物を製織する、
ことによって作製される。
(補強方法)
次に、図6、図7を参照して、構造物の補強方法について説明する。本発明によれば、前述のようにして製造された繊維強化シート1を用いて、構造物100の補強が行われる。
つまり、本発明の構造物の補強方法によれば、強化繊維fにマトリクス樹脂Rが含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材2を互いに線材固定材3にて固定した繊維強化シート1を、構造物100の表面に結合材104にて接着して一体化する。
構造物の補強に際して、曲げモーメント及び軸力を主として受ける部材(構造物)に対しては、曲げモーメントにより生じる引張応力或いは圧縮応力の主応力方向に繊維強化プラスチック線材2の方向を概ね一致させて接着することで、繊維強化シート1が効果的に応力を負担し、効率的に構造物の耐荷力を向上させることが可能である。
また、2方向スラブのように直交する2方向に曲げモーメントが作用する場合、繊維強化プラスチック線材2の方向が曲げモーメントにより生じる主応力に概ね一致するように2層以上の繊維強化シート1を直交させて積層接着することで効率的に耐荷力の向上が図れる。
補強対象構造物が鉄筋コンクリート或いは無筋コンクリートなどのコンクリート構造物でせん断力を受ける棒部材であるときは、棒材の側面に繊維強化シート1を接着する。
以下の本実施例にて、構造物としては、コンクリート構造物を例に説明するが、本発明は、被補強物である構造物としては、コンクリート構造物に限ることなく、鋼製構造物、木製構造物、プラスチック製構造物、或いは、これらの複合構造物などにも好適に、適用可能である。
(第1工程)
図6(a)、(b)に示すように、コンクリート構造物100の被補強面(即ち、被接着面)101の脆弱部101aを、ディスクサンダー、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどの研削手段50により除去し、構造物100の被接着面101を適度な粗度を持つ面102となるように下地処理をする。
(第2工程)
下地処理した面102にエポキシ樹脂プライマー103等を塗布する(図6(c))。プライマー103としては、エポキシ樹脂系に限ることなくMMA系樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、SBRエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレンアクリル共重合エマルジョン、水性樹脂など、後述の結合材104、塗り継ぎ用接着剤105、被補強構造物100の材質に合わせて適宜選定される。
なお、プライマー103の塗布工程は、省略することも可能である。
(第3工程)
プライマー103を塗布した場合は、プライマー103が硬化した後に、塗り継ぎ用接着剤105を塗布する(図6(d))。次いで、好ましくは、塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、結合材104を所要の厚さ(T)にて打設する(図6(e))。打設厚さ(T)は、被接着面102の表面の凹凸、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2〜10mm程度とされる。
塗り継ぎ用接着剤105は、種々の樹脂、又は、樹脂エマルジョンを使用することができる。繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の樹脂が硬化している線材表面に有効に付着する塗り継ぎ用接着剤105としては、具体的には、
(1)常温硬化型エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、若しくは、スチレンブタジエン樹脂、又は、
(2)上記各樹脂のエマルジョン、又は、
(3)上記各樹脂又は樹脂エマルジョンの2種以上の混合物、
であることが好ましい。
塗り継ぎ用接着剤105は、通常、500〜4000g/m2塗布される。
結合材104としては、無機系結合材料であるセメント系材料、即ち、セメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートを用いる。
本実施例では、線材2の直径(d)が最大3mm、間隔(g)が最小0.05mmとされる繊維強化シート1を、構造物100の背面や鉛直面に保持して線材2、2間から結合材104が染み出して繊維強化シート1を固結する必要がある。従って、繊維強化シート1と構造物100の結合材104がコンクリート及び鋼板の表面に塗布(打設)され未硬化の状態で、構造物100の背面及び鉛直面に対して打設厚さ(T)が5mm以上であっても滴下、ダレ落ちをほとんど生じず、結合材104の塗布面に線材2、2の間隙(g)0.05mm、線材2の直径(d)3mmの繊維強化シート1を1MPa以下の圧力で加えた状態で線材2、2間を結合材104が通過し、且つ、ダレ落ちない性状であることが望ましい。
結合材104である無機系結合材料に増粘、増結効果を持たせるために、更には、曲げ靱性を加えるために、無機系結合材料に、繊維材、例えば、鋼繊維、或いは、ビニロン繊維等の有機繊維が混入されてもよい。
具体的には、例えば、鋼繊維の場合、直径0.6〜1.0mm、長さ30〜100mmの鋼繊維を、無機系結合材料に対して0.2〜0.5%(重量)の割合で加えるのがよい。ビニロン繊維の場合には、直径5〜20μm、長さ4〜6mmの繊維を、無機系結合材料に対して0.05〜2%(重量)の割合で加えるのがよい。
(第4工程)
図6(f)に示すように、構造物表面に接着する繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布する。
塗り継ぎ用接着剤105は、上述したものと同様のものであり、繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の表面にムラなく塗布されることが必要である。通常、繊維強化シート1に対して500〜4000g/m2塗布される。
また、必要補強量が多い場合には、構造物表面に複数層の繊維強化シート1を接着することが可能である。
(第5工程)
次いで、図6(g)に示すように、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した繊維強化シート1を、塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、構造物の表面、即ち、打設した結合材104の上に接着する。
(第6工程)
図6(h)に示すように、構造物100の表面102に接着した繊維強化シート1の上に更に結合材104を、即ち、上記第3工程にて使用したと同様の結合材104、即ち、無機系結合材料を、厚さTaにて塗布してゴムベラなどで平滑に仕上げる。これにより、繊維強化シート1は、より強固に構造物100に一体化される。
打設厚さ(Ta)は、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2〜10mm程度とされる。
この時、繊維強化シート1をローラーやゴムベラで押え付けて接着界面の空気層を強化繊維プラスチック線材2、2の隙間gから排気するようにすると良い。
(第7工程)
更に、複数層の繊維強化シート1を貼り付ける場合は、上記と同様に、結合材104の塗布(打設)、繊維強化シート1の貼り付け、必要に応じて結合材104の上塗り、を繰り返すことで複数層の繊維強化シート1をコンクリート構造物100と一体化することが可能である。
上記実施例の説明では、第4工程にて、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布し、第5工程にて結合材104を塗布した構造物表面に繊維強化シート1を押し付けて接着したが、第4工程にて塗り継ぎ用接着剤105を構造物表面に塗布し、第5工程にて、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した構造物表面に繊維強化シート1を押し付けることにより、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布すると同時に、塗り継ぎ用接着剤105が塗布された繊維強化シート1を構造物表面に接着することも可能である。
上述にて理解されるように、塗り継ぎ用接着剤105は、繊維強化シート1或いは構造物表面に塗布されるが、施工現場の勾配にかかわらず良好な塗付を可能とするためには、その粘度が23℃において100〜200,000mPa・secの範囲にあり、チクソトロピックインデックス(TI値)(B型粘度計による異なる回転数による粘度の測定値の比(2rpmでの粘度)÷(20rpmでの粘度))が1〜8の範囲に入るものであることが好ましい。
すなわち、粘度が100mPa・secより小さくTI値が1より小さいとダレ等により厚み確保が困難となり、好ましくない。また逆に、粘度が200,000mPa・secより大きくTI値が8より大きいと、作業性の低下及び繊維強化シート間への充填不良となり、好ましくない。
上記実施例で説明した本発明の補強方法の変更実施例について、図7を参照して説明する。
(変更実施例)
(第1工程)
図7(a)、(b)に示すように、コンクリート構造物100の被補強面(即ち、被接着面)101の脆弱部101aを、ディスクサンダー、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ウォータージェットなどの研削手段50により除去し、構造物100の被接着面101を適度な粗度を持つ面102となるように下地処理をする。
(第2工程)
下地処理した面102にエポキシ樹脂プライマー103を塗布する(図7(c))。プライマー103としては、エポキシ樹脂系に限ることなくMMA系樹脂、酢酸ビニルエマルジョン、SBRエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレンアクリル共重合エマルジョン、水性樹脂など、無機系結合材料とされる結合材104、塗り継ぎ用接着剤105、及び、被補強構造物100の材質に合わせて適宜選定される。
なお、プライマー103の塗布工程は、省略することも可能である。
(第3工程)
図7(d)に示すように、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布する。
(第4工程)
プライマー103を塗布した場合には、プライマー103が硬化した後に、図7(e)に示すように、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した繊維強化シートを、塗り継ぎ用接着剤105が硬化する前に、下地処理した面102に押し付けて構造物の表面に接着する。
塗り継ぎ用接着剤105は、上記実施例にて説明したと同様のものを使用する。
塗り継ぎ用接着剤105は、繊維強化シート1を構成する繊維強化プラスチック線材2の表面にムラなく塗布されることが必要であり、通常、繊維強化シート1に対して500〜4000g/m2塗布される。
(第5工程)
繊維強化シート1に塗布した塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、繊維強化シート1を接着した構造物表面に結合材104を所要の厚さ(T)にて打設する(図7(f))。打設厚さ(T)は、被接着面102の表面の凹凸、繊維強化シート1の厚さに応じて適宜設定されるが、一般に2〜10mm程度とされる。
この時、繊維強化シート1をローラーやゴムベラで押え付けて接着界面の空気層を強化繊維プラスチック線材2、2の隙間gから排気するようにすると良い。
結合材104としては、上記実施例で説明したと同様の無機系結合材料であるセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートを用いる。
上記実施例で説明したように、結合材104である無機系結合材料には、増粘、増結効果を持たせるために、更には、曲げ靱性を加えるために、無機系結合材料に、繊維材、例えば、鋼繊維、或いは、ビニロン繊維等の有機繊維を加えることが好ましい。
また、本実施例によれば、繊維強化シート1を使用した場合には、各線材2の間には0.05〜3mm程度の適度の間隔(g)を設けることができるので、通気性が良好であり、補強対象構造物100と繊維強化シート1との間の空気が、又は、後述するように、繊維強化シート1を複数枚積層した場合においては、繊維強化シート1、1相互の層間の空気が容易に排出され、浮きや膨れの発生が生じにくい。
更に、高粘度のパテ状結合材104を用いるので、結合材104は、コンクリート表面の不陸修正材としても機能することができる。従って、通常の連続繊維シート接着工法のように予め不陸修正材を用いて平滑化した後に接着用樹脂を塗布する必要がなく、不陸修正と繊維強化シート1との接着が一度の結合材塗布で同時に行えるため極めて効率的である。
従来の連続繊維シート接着工法と同様に100〜1000mm程度の幅広のシート状補強材、即ち、繊維強化シート1を用いるので、補強構造物100の補強面全面を覆って接着することが容易である。また、従来の50mm程度の幅狭のFRPプレートを接着する工法に比べて接着面積を広くとることが可能であり接着面の剥離が生じにくく、高い補強効果を得ることができる。
(第6工程)
更に、複数層の繊維強化シート1を貼り付ける場合は、上記と同様に、繊維強化シート1の貼り付け、結合材104の塗布(打設)、を必要に応じて繰り返すことで複数層の繊維強化シート1をコンクリート構造物100と一体化することが可能である。
上記実施例の説明では、第3工程にて、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布し、第4工程にて結合材104を塗布した構造物表面に繊維強化シート1を押し付けて接着したが、第3工程にて塗り継ぎ用接着剤105を構造物表面に塗布し、第4工程にて、塗り継ぎ用接着剤105を塗布した構造物表面に繊維強化シート1を押し付けることにより、繊維強化シート1に塗り継ぎ用接着剤105を塗布すると同時に、塗り継ぎ用接着剤105が塗布された繊維強化シート1を構造物表面に接着することも可能である。
以上説明したように、本発明の構造物の補強方法によれば、繊維強化シートを構成する繊維束内への樹脂の現場含浸が不要で含浸不良の恐れがなく、また、作業効率が高いといった繊維強化シートを使用したときの特長を有すると共に、結合材としてセメント系材料とされる無機系結合材料を使用した場合において、結合材との接着が極めて強固に結合させることができ、繊維強化シートが破断強度に至る前にセメント材料から剥がれることを回避することができる。
次に、本発明に係る構造物の補強方法の作用効果を実証するために以下の実験を行った。
・試験方法
実験は、JIS A 1106(コンクリートの曲げ強度試験法)に準拠して行った。試験温度は、23℃であった。試験は、中央点載荷法によるコンクリート曲げ試験方法にて行った。
・試験片
試験片は、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すタイプA〜Dの4種類とした。図8(d)に示すタイプDは、比較のためのブランク試験体であり、長さ(Lo)160mm×厚さ(To)40mm×幅(図8の紙面に直角方向の長さ)40mmJIS標準モルタル(無筋)、即ち、JIS R5201に基づく基準モルタルである。
図8(a)に示すタイプAは、実施例1にて説明した本発明に従って補強された構成の試験体であり、本発明に従って構成される補強層の厚さTFは10mmとされ、モルタル試験体を含む試験片の厚み合計(TTOTAL)は、タイプDのブランク試験体の厚さToと同じ40mmとした。長さ及び幅はブランク試験体と同じとした。
図8(b)に示すタイプBは、変更実施例にて説明した本発明に従って補強された構成の試験体であり、本発明に従って構成される補強層の厚さTFは10mmとされ、モルタル試験体を含む試験片の厚み合計(TTOTAL)は40mmとした。長さ及び幅はブランク試験体と同じとした。
図8(c)に示すタイプCは、実施例1で使用した炭素繊維強化シート1をエポキシ樹脂にてタイプDのモルタル試験体(図8(d))に接着した構成、即ち、従来工法による補強がなされた試験体であり、モルタル試験体を含む試験片の厚み合計(TTOTAL)は40mmとした。長さ及び幅はブランク試験体と同じとした。
本実施例に従ったタイプA、Bにて使用した材料は、次の通りであった。
本試験で使用した繊維強化シート1は、図1を参照して説明した構成の繊維強化シート1であった。
繊維強化シート1における繊維強化プラスチック線材2は、強化繊維fとして平均径7μm、収束本数12000本のPAN系炭素繊維ストランドを用い、マトリクス樹脂Rとして常温硬化型のエポキシ樹脂を含浸し、硬化して作製した。樹脂含浸量は、50重量%であり、硬化後の繊維強化プラスチック線材2は、直径(d)1.1mmの円形断面を有していた。
このようにして得た繊維強化プラスチック線材2を、一方向に引き揃えてスダレ状に配置した後、ポリエステル繊維を横糸3として平織りによりシート状に保持した。横糸3の間隔(P)は50mmであった。また、各線材2、2間の間隙(g)は、0.1〜0.3mmであった。
結合材104としてはポリマーセメントモルタル(日鉄コンポジット(株)製「アタックSD」(商品名))を使用し、塗り継ぎ用接着剤105としては常温硬化型エポキシ樹脂(日鉄コンポジット(株)製「FJ−Cプライマー」(商品名))を使用し、3.0kg/m2にて塗布した。
コンクリート曲げ試験の結果を、表1に示す。
Figure 0005645440
表1にて理解されるように、無補強モルタル(タイプD)の曲げ強度9.96Nと比較し、在来工法に従った補強によるタイプCは、1.57倍の曲げ強度を示した。
これに対して本発明に従ったタイプA、Bでは、それぞれ、無補強モルタル(タイプD)と比較し、1.7倍及び1.75倍の曲げ強度を示した。
また、破壊点変位量としても、無補強モルタル(タイプD)では、0.25mmと小さな変位量で破壊に至ったが、各補強した試験体は、倍以上の辺にまで破壊せずに、持ちこたえることが確認できた。
更に、本発明に従ったタイプA、Bの試験片では、シート・ポリマーセメントモルタルと下地との剥離などは発生せず、接着性のとしても有効であることを確認した。
このように、本発明に従った構造物の補強方法によれば、鉄筋コンクリート梁を有効に補強できることが明らかとなった。
上記実施例1、変更実施例では、コンクリート構造物100の補強に関して説明したが、本発明の繊維強化シート1を使用した補強方法は、鋼構造物、木造構造物、及び、プラスチック構造物、更には、これらの組み合わせた構造物の補強に際しても同様に適用することでき、同様の作用効果を達成し得る。
1 繊維強化シート
2 繊維強化プラスチック線材
3 線材固定材(横糸、メッシュ支持体シート、可撓性帯材)
10 一方向炭素繊維シート(連続繊維シート)
100 構造物
103 プライマー
104 結合材
105 塗り継ぎ用接着剤

Claims (12)

  1. 強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記下地処理した構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    (c)前記(b)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布した前記繊維強化シートを該(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
    (d)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とする構造物の補強方法。
  2. 強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記下地処理した構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布し、次いで、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    (c)前記(b)工程にて打設した前記無機系結合材料の上に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布する工程、
    (d)前記(c)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記繊維強化シートを押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
    (e)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とする構造物の補強方法。
  3. 強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記下地処理した前記構造物の表面に、塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布した前記繊維強化シートを前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
    (c)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とする構造物の補強方法。
  4. 強化繊維にマトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維強化シートを、構造物の表面に結合材にて接着して一体化する構造物の補強方法において、
    (a)前記構造物の表面を下地処理する工程、
    (b)前記下地処理した前記構造物の表面に塗り継ぎ用接着剤として常温硬化型エポキシ樹脂を塗布する工程、
    (c)前記(b)工程にて塗布した前記塗り継ぎ用接着剤が硬化する前に、前記繊維強化シートを押し付けて前記構造物の表面に接着する工程、
    (d)前記繊維強化シートが接着された前記構造物の表面に、結合材としてセメントモルタル、ポリマーセメントモルタル、セメントペースト、ポリマーセメントペースト、又は、コンクリートとされる無機系結合材料を打設する工程、
    を有することを特徴とする構造物の補強方法。
  5. 前記(a)工程にて下地処理した前記構造物の表面にプライマーを塗布し、前記プライマーが硬化した後に、前記(b)工程を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  6. 前記繊維強化シートは、複数層にて前記構造物の表面に積層して接着され、前記構造物と一体化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  7. 前記繊維強化プラスチック線材の強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  8. 前記塗り継ぎ用接着剤は、その粘度が23℃において100〜200,000mPa・secの範囲にあり、チクソトロピックインデックスが1〜8の範囲に入るものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  9. 前記無機系結合材料は、繊維材が混入されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  10. 前記繊維強化プラスチック線材は、直径が0.5〜3mmの円形断面形状であるか、又は、幅が1〜10mm、厚みが0.1〜2mmとされる矩形断面形状であることを特徴とする請求項1〜のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  11. 前記各繊維強化プラスチック線材は、互いに0.05〜3.0mmだけ離間していることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
  12. 前記繊維強化シートは、幅が100mm〜10mであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記載の構造物の補強方法。
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