JP5572578B2 - 精製rnaの単離試薬及び方法 - Google Patents
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Description
本発明は、DNAを実質的に含まず、それにより逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で使える状態のRNAを、生物サンプルから単離できる試薬及び方法を開示する。このようなRNAは、実質的に純粋なRNAと称され、臨床的、研究的、及び他の応用における遺伝子発現の適切な診断のために必要とされている。
生物サンプルから精製RNAを調製するための方法及び組成物を開示する。生物サンプルは、in vivoであろうと、in vitroであろうと、ex vivoであろうとも、生物源からの任意のサンプルである。サンプルは、ヒト、動物、植物、バクテリア、ウイルス、菌類、寄生動物、マイコプラズマなどに由来してよい。精製RNAは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により分析される際に、実質的に分解されておらず、かつDNA混入のないRNAである。
本発明の1つの実施態様は、pH4.0未満でRNA含有サンプルのフェノール抽出を行うことによる、単離されたRNAの純度を高める方法及び試薬を提供する。1つの実施態様では、pHの範囲は、約3.9〜約3.6である。pH4.0未満でのフェノール抽出は、pH4.0以上でのフェノール抽出よりも、DNAからRNAをより効率的に分離する。
本発明の1つの実施態様は、相分離を行わずに、酸性フェノール溶液を用いて実質的に純粋なRNAを単離する。特定濃度の酸性フェノールは、DNA(一本鎖DNA[ssDNA]及び二本鎖DNA[dsDNA]の両方とも)、タンパク質、及び他の細胞成分を選択的に沈殿させる一方で、RNAは可溶性形態のままである。この予期せぬ現象を用いて、水相、有機相及び中間相を分離することなくRNAを単離するための試薬及び方法を考え出した。
前述のとおり、本発明の相分離方法における水相から、及び本発明の酸性フェノール組成物からRNAを沈殿させてよい。いずれの場合にも、最終的な有機溶媒の濃度を約50重量%にするために約1倍量(体積)の有機溶媒を添加することにより、RNAを沈殿させる。しかし、ある種のサンプル調製物では、1倍量(体積)の有機溶媒が、多糖類及びタンパク質、例えばプロテオグリカンなどをRNAとともに共沈させる。以前は、混入物質の共沈を避けるために、シングルステップRNA精製方法を変形し、0.9Mのナトリウムイオンの存在下、25重量%のアルコールを用いてRNAを沈殿させた(Chomczynski, 1995)。別法では、13重量%〜23重量%の有機溶媒を有するフェノール非含有カオトロープ溶液を、溶液のpHが6〜7.5の範囲内になるようにして、RNAを沈殿させた。
DNAに加えて、実質的に純粋なRNAを、約3.3未満のpHでのpH依存性のRNA沈殿により、塩を含む水溶液から得てよい。酸性pHの塩溶液からRNAを沈殿させることは、米国特許第5973137号で報告された内容に反する。この米国特許第5973137号では、pH6未満の溶液において、非カオトロピック塩がDNAを沈殿させる一方で、RNAは可溶性形態のまま残ることが開示されている。
(ラット肝臓からの相分離によるRNAの単離)
1つの実施態様では、RNAの相分離のために以下の組成物を使用した:4Mのチオシアン酸グアニジン、0.2Mのチオシアン酸アンモニウム、5重量%のグリセロール、40重量%のフェノール、0.1重量%のサルコシン、10mMのクエン酸ナトリウム、及び0.1Mの酢酸ナトリウムバッファー(pH3.8)。
(ヒト血液からの相分離によるRNAの単離)
ヒト血液(0.5mL)を、75μLの氷酢酸及び5mLの実施例1に記載の組成物と混合した。その後、この混合物に0.5mLのブロモクロロプロパンを添加した。混合物を振り混ぜ、4℃、12,000×gで15分間沈降させた。沈降後、混合物は、水相、中間相、及び下部の有機相を形成した。RNAが水相に分離する一方で、DNA及びタンパク質は中間相及び有機相に分離した。
(相分離及び酸性化ブロモクロロプロパンによるRNAの単離)
ラット脾臓(21mg)を、3.5Mのチオシアン酸グアニジン、50mMの酢酸カリウム、43重量%のフェノール、0.1%のTriton X−100を含む1mLの水溶液(pH4.1)中でホモジナイズした。ホモジネートを12,000×gで10分間遠心分離してDNAと粒子状物質の大部分を除去した。透明なホモジネートを、14重量%の酢酸を含む0.1mLのブロモクロロプロパンと混合した。得られた混合物のpHは3.7であった。混合物を振り混ぜ、4℃、12,000×gで10分間沈降させた。沈降後、混合物は、水相、中間相、及び下部の有機相を形成した。RNAが水相に分離する一方で、DNA及びタンパク質は中間相及び有機相に分離した。
(相分離及びフェノール非含有カオトロープ溶液中でのホモジナイズによるRNAの単離)
ラット骨格筋(29mg)を、3Mのチオシアン酸グアニジン及び5mMの酢酸ナトリウムの0.5mLの水溶液中でホモジナイズした。ホモジネートを、0.5mLのフェノール及び0.1Mの酢酸ナトリウムバッファー(pH3.7)と混合した。得られた混合物を0.1mLのブロモクロロプロパンとともに振り混ぜ、4℃、12,000×gで15分間沈降させた。沈降後、混合物は、水相、中間相、及び下部の有機相を形成した。RNAが水相に分離する一方で、DNA及びタンパク質は中間相及び有機相に分離した。
(1重量%のドデシル硫酸ナトリウム中でのホモジナイズを用いた相分離によるRNAの単離)
25cm2のプラスチックボトルで増殖させた初代培養ヒト線維芽細胞(Clonetics, San Diego CA)を、50μg/mlのプロテナーゼKを追加した、1重量%のドデシル硫酸ナトリウム及び10mMのクエン酸ナトリウムを含む1.5mLの溶液(pH7.0)で覆った(overlay)。得られた細胞溶液を室温(約20℃)で1時間インキュベートし、遠心分離用チューブに移し、12重量%の水及び100mMの酢酸ナトリウムを含む1.5mLの酸性フェノール(pH3.7)と混合した。4℃で15分間遠心分離した後、混合物は、水相、中間相、及び有機相を形成した。相分離後、それぞれ、RNAは水相に分離する一方、DNA及びタンパク質は中間相及び有機相に分離した。
(酸性フェノール沈殿によるRNAの単離)
1つの実施態様では、RNAの酸性フェノール沈殿のために以下の組成物を用いた:20重量%のフェノール、2Mのチオシアン酸グアニジン、15mMのクエン酸ナトリウム、0.1Mの塩化リチウム、0.05重量%のサルコシン、1.5重量%のグリセロール、及び酢酸ナトリウムバッファー(pH4.2)。ラット肝臓(52mg)を、1mLのこの組成物中でホモジナイズした。ホモジネートを、室温(約20℃)、10,000×gで5分間遠心分離して、沈殿したDNA、タンパク質、及び他の細胞成分を除去した。
(2倍濃縮試薬を用いた酸性フェノール沈殿によるRNAの単離)
ラット肝臓(47mg)を、実施例6に示した濃度の2倍濃度の、実施例6に記載の試薬1mL中でホモジナイズした。濃縮試薬には、さらに1重量%のフェニルエタノールを含めた。沈殿試薬を形成するために、ホモジネートを1mLの水と混合した。
(本発明の2段階手順によるRNAの単離)
ラット脳(61mg)を、実施例7に記載の2倍濃縮試薬1mL中でホモジナイズした。ホモジネートを1mLの水と混合し、得られた混合物を、室温(約20℃)、10,000×gで5分間遠心分離して、沈殿したDNA、タンパク質、及び他の細胞成分を除去した。上清をクリーンチューブに移し、0.05mLのブロモクロロプロパンと混合した。混合物を遠心分離し、最上部の水相、中間相、及び有機相に分離させた。
Claims (7)
- 生物サンプルに添加される際の最終濃度が3重量%〜30重量%未満の範囲であるフェノールと、最終混合物のpHを3.9〜5.5の範囲に維持し、酸性化するのに十分なバッファーとを含む、RNA単離試薬と生物サンプルとを含む、精製RNAを単離するための混合物。
- a)生物サンプルを含む得られた混合物中の最終濃度が3重量%〜30重量%未満の範囲であるフェノールと、生物サンプルを含む混合物のpHを3.6〜5.5の範囲に維持するのに十分なバッファーとを含む単一相の試薬で生物サンプルを処理する工程、
b)DNA、タンパク質、及び細胞成分を除去して精製生物サンプルを得るために、前記生物サンプルを含む混合物を沈降又は濾過する工程、
c)精製RNAを沈殿させるために、前記精製生物サンプルに同体積の水溶性有機溶媒を添加する工程、
d)前記の沈殿したRNAを沈降又は濾過する工程、及び
e)前記の沈殿したRNAを洗浄し、溶解する工程、
を含む、生物サンプルから精製RNAを単離するための酸性フェノール沈殿方法。 - a)生物サンプルを含む得られた混合物中の最終濃度が3重量%〜30重量%未満の範囲であるフェノールと、少なくとも1種のカオトロープと、生物サンプルを含む混合物のpHを3.6〜5.5の範囲に維持するのに十分なバッファーとを含む単一相の試薬で生物サンプルを処理する工程、
b)DNA、タンパク質、及び細胞成分を除去して精製サンプルを得るために、前記生物サンプルを含む混合物を沈降又は濾過する工程、
c)少なくとも1種の疎水性有機溶媒と、前記精製生物サンプルのpHを3.6〜4.0未満の範囲に維持するのに十分なバッファーとを前記精製生物サンプルに添加する工程、
d)精製RNAを沈殿させるために同体積の水溶性有機溶媒が添加されている水相から前記精製RNAを回収する工程、
e)前記の沈殿したRNAを沈降又は濾過する工程、及び
f)前記の沈殿したRNAを洗浄し、溶解する工程、
を含む、生物サンプルから精製RNAを単離するための2段階方法。 - 前記疎水性有機溶媒が、相分離の間に前記有機相を分離させるために十分に密度が高い、請求項3記載の方法。
- 前記疎水性有機溶媒が、カプロラクトン、エチレングリコールジアセテート、ポリエチレングリコールジベンゾアート、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモクロロプロパン、ブロモナフタレン及びブロモアニソールの少なくとも1種、又はこれらの混合物から選択される、請求項2又は3記載の方法。
- 前記サンプルが、1.5×〜2.5×濃度の前記工程a)の単一相の試薬で処理され、得られた生物サンプルを含む混合物が、濃縮されていない溶液にするために希釈される、請求項2又は3記載の方法。
- RNAを沈殿させるために添加される前記溶媒が、低級アルコール、ポリアルコール、アセトン、エチレングリコールジアセテート及びメチルスルホキシドの少なくとも1種、又はこれらの混合物である、請求項2又は3のいずれか一項記載の方法。
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