JP5541023B2 - 対物レンズ、光学ピックアップ、光学ドライブ装置 - Google Patents

対物レンズ、光学ピックアップ、光学ドライブ装置 Download PDF

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Description

本発明は、対物レンズ、光学ピックアップ、及び光学ドライブ装置に関する。
特開2008−135144号公報 特開2008−176902号公報 特開2008−262702号公報 特開2008−97681号公報
光の照射により信号の記録/再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスクが普及している。
これらCD、DVD、BDなど現状において普及している光記録媒体の次世代を担うべき光記録媒体に関して、先に本出願人は、上記特許文献1や上記特許文献2に記載されるようないわゆるバルク記録型の光記録媒体を提案している。
ここで、バルク記録とは、例えば図10に示すようにして少なくともカバー層101とバルク層(記録層)102とを有する光記録媒体(バルク型記録媒体100)に対し、逐次焦点位置を変えてレーザ光照射を行ってバルク層102内に多層記録を行うことで、大記録容量化を図る技術である。
このようなバルク記録に関して、上記特許文献1には、いわゆるマイクロホログラム方式と呼ばれる記録技術が開示されている。
マイクロホログラム方式では、バルク層102の記録材料として、いわゆるホログラム記録材料が用いられる。ホログラム記録材料としては、例えば光重合型フォトポリマ等が広く知られている。
マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とネガ型マイクロホログラム方式とに大別される。
ポジ型マイクロホログラム方式は、対向する2つの光束を同位置に集光して微細な干渉縞(ホログラム)を形成し、これを記録マークとする手法である。
また、ネガ型マイクロホログラム方式は、ポジ型マイクロホログラム方式とは逆の発想で、予め形成しておいた干渉縞をレーザ光照射により消去して、当該消去部分を記録マークとする手法である。具体的に、ネガ型マイクロホログラム方式では、記録動作を行う前に、予めバルク層102に対して干渉縞を形成するための初期化処理を行う。初期化処理は、平行光による2つの光束を対向して照射し、それらの干渉縞をバルク層102の全体に形成することで行う。そして、記録時には、上記のように干渉縞が形成されたバルク層102における任意の層位置にフォーカスを合わせた状態で記録情報に応じたレーザ光照射を行うことで、消去マークによる情報記録を行う。
また、本出願人は、マイクロホログラム方式とは異なるバルク記録の手法として、例えば特許文献2に開示されるようなボイド(空孔)を記録マークとして形成する記録手法も提案している。
ボイド記録方式は、例えば光重合型フォトポリマなどの記録材料で構成されたバルク層102に対して、比較的高パワーでレーザ光照射を行い、バルク層102内に空孔(ボイド)を記録する手法である。特許文献2に記載されるように、このように形成された空孔部分は、バルク層102内における他の部分と屈折率が異なる部分となり、それらの境界部分で光の反射率が高められることになる。従って上記空孔部分は記録マークとして機能し、これによって空孔マークの形成による情報記録が実現される。
このようなボイド記録方式は、ホログラムを形成するものではないので、記録にあたっては片側からの光照射を行えば済むものとできる。すなわち、ポジ型マイクロホログラム方式の場合のように2つの光束を同位置に集光して記録マークを形成する必要は無いものとできる。
また、ネガ型マイクロホログラム方式との比較では、初期化処理を不要にできるというメリットがある。
なお、特許文献2には、ボイド記録を行うにあたり記録前のプリキュア光の照射を行う例が示されているが、このようなプリキュア光の照射は省略してもボイドの記録は可能である。
ところで、上記のような各種の記録手法が提案されているバルク記録型(単にバルク型とも称する)の光ディスク記録媒体であるが、このようなバルク型の光ディスク記録媒体の記録層(バルク層)は、例えば反射膜が複数形成されるという意味での明示的な多層構造を有するものではない。すなわち、バルク層102においては、通常の多層ディスクが備えているような記録層ごとの反射膜、及び案内溝は設けられていない。
従って、先の図10に示したバルク型記録媒体100の構造のままでは、マークが未形成である記録時において、フォーカスサーボやトラッキングサーボを行うことができないことになる。
このため実際において、バルク型記録媒体100に対しては、図11に示すような案内溝を有する基準となる反射面(基準面)を設けるようにされている。
具体的には、カバー層101の下面側に例えばピットやグルーブの形成による案内溝(位置案内子)がスパイラル状又は同心円状に形成され、そこに選択反射膜103が成膜される。そして、このように選択反射膜103が成膜されたカバー層101の下層側に対し、図中の中間層104としての、例えばUV硬化樹脂などの接着材料を介してバルク層102が積層される。
ここで、上記のようなピットやグルーブ等による案内溝の形成により、例えば半径位置情報や回転角度情報などの絶対位置情報(アドレス情報)の記録が行われている。以下の説明では、このような案内溝が形成され絶対位置情報の記録が行われた面(この場合は上記選択反射膜103の形成面)のことを、「基準面Ref」と称する。なお、この「基準面」については、「サーボ信号面」と換言することもできる。
また、上記のような媒体構造とした上で、バルク型記録媒体100に対しては、図12に示されるようにマークの記録(又は再生)のためのレーザ光(以下、録再用レーザ光、或いは単に録再光とも称する)とは別途に、位置制御用のレーザ光としてのサーボ用レーザ光(単にサーボ光とも称する)を照射するようにされる。
図示するようにこれら録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とは、共通の対物レンズを介してバルク型記録媒体100に照射される。
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層102に到達してしまうと、当該バルク層102内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、従来よりバルク記録方式では、上記サーボ用レーザ光として、録再用レーザ光とは波長帯の異なるレーザ光を用いるものとした上で、基準面Refに形成される反射膜としては、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという波長選択性を有する選択反射膜103を設けるものとしている。
以上の前提を踏まえた上で、図12を参照し、バルク型記録媒体100に対するマーク記録時の動作について説明する。
先ず、案内溝や反射膜の形成されていないバルク層102に対して多層記録を行うとしたときには、バルク層102内の深さ方向においてマークを記録する層位置を何れの位置とするかを予め定めておくことになる。図中では、バルク層102内においてマークを形成する層位置(マーク形成層位置:情報記録層位置とも呼ぶ)として、第1情報記録層位置L1〜第5情報記録層位置L5の計5つの情報記録層位置Lが設定された場合を例示している。図示するように第1情報記録層位置L1が最上部に設定された情報記録層位置Lであり、以降、L2→L3→L4→L5の順で下層側に設定された情報記録層位置Lとなる。
ここで、情報記録層位置Lは、「情報記録深さ」と表現することもできる。
なお、ここでは図示の都合上、情報記録層位置Lの数を5とする場合を例示しているが、実際において情報記録層位置Lの数は例えば数十程度とすることが予定されている。
ここで、マークが未だ形成されていない記録時においては、録再用レーザ光の反射光に基づいてバルク層102内の各層位置を対象としたフォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うことはできない。従って、記録時における対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御は、サーボ用レーザ光の反射光に基づき、当該サーボ用レーザ光のスポット位置が基準面Refにおいて案内溝に追従するようにして行うことになる。
但し、上記録再用レーザ光は、マーク記録のために基準面Refよりも下層側に形成されたバルク層102に到達させ、なお且つバルク層102内において合焦位置の選択が可能とされる必要がある。このため、この場合の光学系には、対物レンズのフォーカス機構とは別途に、録再用レーザ光のフォーカス状態を独立して調整するためのフォーカス機構(録再光用独立フォーカス機構)が設けられることになる。
ここで、このような録再光用のフォーカス機構を含めた、バルク型記録媒体100の記録再生を行うための光学系の概要を図13に示しておく。
図13において、図12にも示した対物レンズは、図示するように2軸アクチュエータによりバルク型記録媒体100の半径方向(トラッキング方向)、及びバルク型記録媒体100に接離する方向(フォーカス方向)に変位可能とされている。
この図13において、この場合の録再光用独立フォーカス機構は、いわゆるエキスパンダと呼ばれるタイプのもので、図のように固定レンズと、レンズ駆動部により録再用レーザ光の光軸に平行な方向に変位可能に保持された可動レンズとを備えて構成されている。この録再光用独立フォーカス機構は、上記レンズ駆動部により上記可動レンズが駆動されることで、図中の対物レンズに入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、それにより録再用レーザ光の焦点位置がサーボ用レーザ光とは独立して調整されるようになっている。
また、上述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯が異なるものとされているので、これに対応しこの場合の光学系では、図中のダイクロイックプリズムにより、録再用レーザ光、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体100からの反射光がそれぞれの系に分離されるように(つまりそれぞれの反射光検出を独立して行えるように)している。
また、往路光で考えた場合、上記ダイクロイックプリズムは、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とを同一軸上に合成して対物レンズに入射させる機能を有する。具体的にこの場合、録再用レーザ光は、図示するように上記録再光用独立フォーカス機構を介しミラーで反射された後、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面で反射されて対物レンズに対して入射する。一方、サーボ用レーザ光は、上記ダイクロイックプリズムの選択反射面を透過して対物レンズに対して入射する。
図14は、バルク型記録媒体100の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。
マーク記録が既に行われたバルク型記録媒体100について再生を行う際は、記録時のように対物レンズの位置をサーボ用レーザ光の反射光に基づいて制御する必要性はない。すなわち、再生時においては、再生対象とする情報記録層位置L(再生時については情報記録層L、マーク形成層Lとも称する)に形成されたマーク列を対象として、録再用レーザ光の反射光に基づいて対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行えばよい。
上記のようにしてバルク記録方式においては、バルク型記録媒体100に対し、マークの記録/再生を行うための録再用レーザ光と位置制御用光としてのサーボ光とを共通の対物レンズを介して(同一光軸上に合成して)照射するようにした上で、記録時においては、サーボ用レーザ光が基準面Refの位置案内子に追従するように対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行い且つ、球面収差補正機構により録再用レーザ光のフォーカス状態を別途調整することによって、バルク層102内に案内溝が形成されていなくとも、バルク層102内の所要の位置(深さ方向及びトラッキング方向)に対してマーク記録ができるように図られている。
また、再生時には、既に記録されたマーク列に録再用レーザ光の焦点位置が追従するようにして当該録再用レーザ光の反射光に基づく対物レンズのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を行うことで、バルク層102内に記録されたマークの再生を行うことができる。
ところで、先の図11に示したバルク型記録媒体100の構造によると、バルク層102は、所要の厚さによるカバー層101を介して設けられているため、当該バルク層102内の各層位置Lにマーク記録・再生を行う場合は、球面収差の補正が行われるべきものとなる。つまり、この場合は各層位置Lごとにカバー厚が異なることになるため、球面収差の補正は、その補正量を各層位置Lごとに調整するようにして行うべきものとなる。
図13に示した光学系において、このような球面収差の補正は、録再光用独立フォーカス機構が焦点位置の調整と併せて行うことになる。具体的に、この場合の球面収差の補正は、録再用レーザ光の焦点位置を記録・再生対象とする層位置Lから所定量オフセット(デフォーカス)させることで行うことになる。
ここで、このようにバルク型記録媒体100のドライブ装置では、カバー厚の差(つまり情報記録層位置Lの違い)に応じた球面収差補正を行うようにされるが、このような層位置Lごとの球面収差補正を行うにあたっては、どの層位置Lを球面収差補正の基準の層位置とするかが重要となる。
例えば仮に、最上層となる情報記録層位置L1において球面収差が最小となるように光学系を設計した場合、最下層としての情報記録層位置L5を対象とした記録時には球面収差の補正量が過大となってしまう。特に、バルク記録方式では、多層化による大記録容量化のために、バルク層102の厚さとして例えば200μm〜300μm程度とすることが検討されており、この場合には最大で300μm程度の厚さに対応して大きく球面収差補正を行わなければならないことになる。
そこで、バルク層102内の中間となる層位置Lで、球面収差が最小となるように光学系を設計する。これによれば、同じ情報記録層位置L1〜L5の範囲で記録再生を行うとしたときに必要な最大の球面収差補正量は、上記の情報記録層位置L1を基準に光学系を設計する場合の半分に抑えることができる。
なお以下、このように球面収差補正を行うにあたって光学系の設計で基準とする層位置L(球面収差が最小となる層位置L)のことを、基準層位置と称する。
上記の説明からも理解されるように、バルク型記録媒体100のドライブ装置としては、記録再生の対象とする層位置Lの、基準層位置(この場合はL3)との誤差に応じて生じるものとされる球面収差を補正するように構成されていることになる。
また、図示による説明は省略するが、この一方で実際のドライブ装置では、ディスクチルトに対応すべく、対物レンズを傾ける(いわゆるレンズチルト)によってチルト補正を行うように構成されている。
具体的には、チルト検出として、例えばバルク型記録媒体100の傾きを検出し、その検出結果に応じて、対物レンズをチルトさせるチルト機構を駆動することによって、チルト補正(コマ収差補正)を行うものである。
しかしながら、上記のように球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正を行うバルク型記録媒体100のドライブ装置では、現状において、全ての情報記録層位置Lにおいて安定した記録再生性能を維持することが困難とされる。
これは、上記のようにバルク型記録媒体100のドライブ装置では、例えば最大で150μm(300μm/2)などという誤差に対応した比較的大きな球面収差補正を行うことが強いられていることに起因する。
この点について、図15を参照して説明する。
先ず前提として、上述のようにレンズチルトによるチルト補正を行うということは、その分、対物レンズを介して照射されるレーザ光のスポット位置は対物レンズの光軸上から外れて像高が変化するということになる。図15では、この前提を踏まえて、基準層位置からの誤差=−100μmに対応する球面収差補正を行った場合の像高特性(図15(a))、同誤差=0μmに対応する球面収差補正を行った場合(つまり補正量=0)の像高特性(図15(b))、同誤差=+100μmに対応する球面収差補正を行った場合の像高特性(図15(c))をそれぞれ示している。
また図15ではこれらの対比として、上記の3条件での球面収差補正をそれぞれ行った場合におけるレンズチルト特性(図15(d)(e)(f))も併せて示している。このレンズチルト特性は、バルク型記録媒体100が傾いておらず対物レンズのみが傾いたときのレーザ光の収差特性を意味するもので、つまりは、チルト補正無しのときの収差特性と等価なものである。
ここで、図15において、像高特性及びレンズチルト特性としては、球面収差特性(四角印によるプロット)、コマ収差特性(三角印によるプロット)、非点収差特性(×印によるプロット)をそれぞれ示す。
先ず図15において、コマ収差について着目すると、図15(a)〜(c)と図15(d)〜(f)との対比より、チルト補正を行うことで、コマ収差が補正されるということが分かる。
しかしながら、図15(a)〜(c)のチルト補正を行う場合であっても、図15(b)に示す誤差0μの場合と比較すると、図15(a),(c)に示す誤差±100μmの場合では、コマ収差が増大する傾向となることが分かる。
このようにして、球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正を行うバルク型記録媒体100のドライブ装置では、バルク層102内の最上部や最下部に対応して大きく球面収差補正を行う状況において、特にコマ収差が大きく発生してしまうという問題があった。
そこで本発明では、上記のように球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正とを行うバルク型の光記録媒体のドライブ装置において、より像高特性が良好な対物レンズを提供することで、レーザ光の結像性能の向上、ひいては記録再生性能の向上が図られるようにすることをその課題とする。
上記課題の解決のため、本発明では対物レンズとして以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の対物レンズは、深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体の上記記録層に対し上記対物レンズを介して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備えた光学ピックアップに設けられるものであって、以下のように設計されたものである。
つまり、上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

としたとき、
上記αの値が、

α=−6.32NA

(但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされているものである。
また、本発明では光学ピックアップとして以下のように構成することとした。
すなわち、深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体の上記記録層に対し対物レンズを介して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備える。
そして、上記対物レンズが、以下のように設計されているものである。
つまり、上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

としたとき、
上記αの値が、

α=−6.32NA

(但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされているものである。
また本発明では光学ドライブ装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明の光学ドライブ装置は、以下のような光学ピックアップを備えて、深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生を行うものである。
つまり、対物レンズを介して上記記録層に対して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備えると共に、
上記対物レンズが、
上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

としたとき、
上記αの値が、

α=−6.32NA

(但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされている光学ピックアップを備えるものである。
上記本発明の対物レンズによれば、レーザ光の集光対象位置の上記基準層位置からの誤差が最大で且つチルトが最大に生じているという最悪の条件下においても、レーザ光の結像性能として、マレシャル基準収差に基づく高い性能を維持することができる。
上記のように本発明によれば、レーザ光の集光対象位置が記録層内に設定された基準層位置から最大に離間した位置で且つチルトが最大に生じているという最悪の条件下においても、レーザ光の結像性能として、マレシャル基準収差に基づく高い性能を維持することができる
これにより、球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正とを行うバルク型記録媒体のドライブ装置について、その記録再生性能の向上を図ることができる。
また、本発明によれば、対物レンズの像高特性が改善する分、記録層の厚みを増しても対応可能であり、従って、さらなる大記録容量化を図ることができる。
実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体の断面構造図である。 実施の形態としての光学ドライブ装置が備える光学ピックアップの内部構成を示した図である。 実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成を示した図である。 録再光用フォーカス機構を用いた焦点位置の調整手法について説明するための図である。 レンズチルトによるチルト補正と像高との関係について説明するための図である。 実施例1としての対物レンズの構成を示した断面図である。 実施例1としての対物レンズについて、3次球面収差変動量(λrms)と3次コマ収差変動量(λrms)との関係を示した図である。 実施例2としての対物レンズの構成を示した断面図である。 実施例2としての対物レンズについて、3次球面収差変動量(λrms)と3次コマ収差変動量(λrms)との関係を示した図である。 バルク記録方式について説明するための図である。 基準面を備える実際のバルク型記録媒体の断面構造を例示した図である。 バルク型記録媒体に対するマーク記録時の動作について説明するための図である。 バルク型記録媒体の記録再生を行うための光学系の概要を示した図である。 バルク型記録媒体の再生時におけるサーボ制御について説明するための図である。 球面収差補正量が大となることに応じて像高特性が悪化する点について説明するための図である。
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。

<1.記録/再生対象とする光記録媒体>
<2.光学ドライブ装置の構成>
[2-1.光学ピックアップの内部構成]
[2-2.光学ドライブ装置の全体的な内部構成]
[2-3.録再光用レーザ光の焦点位置の調整について]
<3.対物レンズの設計>
[3-1.具体的な設計指針]
[3-2.実施例1:2群構成の設計例]
[3-3.実施例2:3群構成の設計例]
<4.変形例>
<1.実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体>

図1は、実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体の断面構造図を示している。
実施の形態で記録/再生対象とする光記録媒体は、いわゆるバルク記録型の光記録媒体とされ、以下、バルク型記録媒体1と称する。
バルク型記録媒体1は、ディスク状の光記録媒体とされ、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対するレーザ光照射が行われてマーク記録(情報記録)が行われる。また、記録情報の再生としても、回転駆動されるバルク型記録媒体1に対してレーザ光を照射して行われる。
なお光記録媒体とは、光の照射により情報の記録/再生が行われる記録媒体を総称したものである。
図1に示されるように、バルク型記録媒体1には、上層側から順にカバー層2、選択反射膜3、中間層4、バルク層5が形成されている。
ここで、本明細書において「上層側」とは、後述する実施の形態としての光学ドライブ装置(記録再生装置10)側からのレーザ光が入射する面を上面としたときの上層側を指す。
また、本明細書においては「深さ方向」という語を用いるが、この「深さ方向」とは、上記「上層側」の定義に従った上下方向と一致する方向(すなわち光学ドライブ装置側からのレーザ光の入射方向に平行な方向:フォーカス方向)を指すものである。
バルク型記録媒体1において、上記カバー層2は、例えばポリカーボネートやアクリルなどの樹脂で構成され、図示するようにその下面側には、記録/再生位置を案内するための位置案内子として案内溝が形成され、図のように凹凸の断面形状が与えられている。位置案内子は、スパイラル状又は同心円状に形成される。本例の場合において、上記位置案内子はスパイラル状に形成されているものとして以下の説明を続ける。
上記案内溝としては、連続溝(グルーブ)、又はピット列で形成される。例えば案内溝がピット列で形成される場合、ピットとランドの長さの組み合わせにより位置情報(絶対位置情報:ディスク上での回転角度位置を表す情報としての回転角度情報や、半径位置情報など)が記録される。或いは、案内溝がグルーブとされる場合、当該グルーブを周期的に蛇行(ウォブル)させて形成することで、該蛇行の周期情報により位置情報の記録が行われる。
カバー層2は、例えばこのような案内溝(凹凸形状)が形成されたスタンパを用いた射出成形などにより生成される。
また、上記案内溝が形成された上記カバー層2の下面側には、選択反射膜3が成膜される。
ここで、前述もした通りバルク記録方式では、記録層としてのバルク層5に対してマーク記録/再生を行うための光(録再用レーザ光)とは別に、上記のような案内溝に基づきトラッキングやフォーカスのエラー信号を得るための光(サーボ用レーザ光)を別途に照射するものとされている。
このとき、仮に、上記サーボ用レーザ光がバルク層5に到達してしまうと、当該バルク層5内におけるマーク記録に悪影響を与える虞がある。このため、サーボ用レーザ光は反射し、録再用レーザ光は透過するという選択性を有する反射膜が用いられる。
従来よりバルク記録方式では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いるようにされており、これに対応すべく、上記選択反射膜3としては、サーボ用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するという、波長選択性を有する選択反射膜が用いられる。
上記選択反射膜3の下層側には、例えばUV硬化樹脂などの接着材料で構成された中間層4を介して、記録層としてのバルク層5が積層(接着)されている。
バルク層5の形成材料(記録材料)としては、例えば先に説明したポジ型マイクロホログラム方式やネガ型マイクロホログラム方式、ボイド記録方式など、採用するバルク記録の方式に応じて適宜最適なものが採用されればよい。
なお、本発明で対象とする光記録媒体に対するマーク記録方式は特に限定されるべきものではなく、バルク記録方式の範疇において任意の方式が採用されればよい。以下の説明においては一例として、ボイド記録方式が採用される場合を例示する。
ここで、上記のような構成を有するバルク型記録媒体1において、上述の案内溝としての位置案内子が形成された選択反射膜3は、後述もするようにサーボ用レーザ光に基づく録再用レーザ光の位置制御を行うにあたっての基準となる反射面となる。この意味で、選択反射膜3が形成された面を以下、基準面Refと称する。なお、この「基準面」については、「サーボ信号面」と換言することもできる。
また、以下、バルク型記録媒体1の表面(最上面)については、表面Sfと表記する。
ところで、先の図12においても説明したように、バルク型の光記録媒体においては、バルク層内に多層記録を行うために、予め情報記録を行うべき各層位置(情報記録層位置L)が設定される。
ここで、「情報記録層位置」は、「情報記録深さ」と表現することもできる。
図1においては、先の図12の例と同様に、情報記録層位置Lとしては上層側から順に第1情報記録層位置L1、第2情報記録層位置L2、第3情報記録層位置L3、第4情報記録層位置L4、第5情報記録層位置L5の計5つが設定されたものとしている。
なお、先の図12で述べたように、このような情報記録層位置Lの設定数は図示の都合上のものであり、実際には、例えば20程度〜30程度などの数十程度の情報記録層位置Lが設定されることが想定されている。
ここで、バルク層5内に設定される各情報記録層位置Lを表す情報は、後述する記録再生装置10におけるコントローラ39に対して予め設定される。
<2.光学ドライブ装置の構成>

図2及び図3は、図1に示したバルク型記録媒体1に対する記録/再生を行う実施の形態としての光学ドライブ装置(記録再生装置10と称する)の内部構成について説明するための図である。
図2は、実施の形態の記録再生装置10が備える光学ピックアップOPの内部構成を主に示し、図3は、記録再生装置10の全体的な内部構成を示している。
[2-1.光学ピックアップの内部構成]

先ずは図2により、光学ピックアップOPの内部構成について見ていく。
図中のバルク型記録媒体1は、記録再生装置10における所定位置においてそのセンターホールがクランプされるようにしてセットされ、図示は省略したスピンドルモータによる回転駆動が可能な状態に保持される。
光学ピックアップOPは、上記スピンドルモータにより回転駆動されるバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光、サーボ用レーザ光を照射するために設けられる。
光学ピックアップOP内には、マークによる情報記録、及びマークにより記録された情報の再生を行うための録再用レーザ光の光源である録再用レーザ11と、基準面Refに形成された案内溝を利用した位置制御を行うための光であるサーボ用レーザ光の光源であるサーボ用レーザ24とが設けられる。
ここで、前述のように録再用レーザ光とサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長が異なる。本例の場合、録再用レーザ光の波長はおよそ405nm程度(いわゆる青紫色レーザ光)、サーボ用レーザ光の波長はおよそ650nm程度(赤色レーザ光)とされる。
また、光学ピックアップOP内には、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1への出力端となる対物レンズ20が設けられる。
さらには、上記録再用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するための録再光用受光部23と、サーボ用レーザ光のバルク型記録媒体1からの反射光を受光するためのサーボ光用受光部29とが設けられる。
その上で、光学ピックアップOP内においては、録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光を対物レンズ20に導くと共に、対物レンズ20に入射した上記バルク型記録媒体1からの録再用レーザ光の反射光を録再光用受光部23に導くための光学系が形成される。
具体的に、上記録再用レーザ11より出射された録再用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ12に入射する。偏光ビームスプリッタ12は、このように録再用レーザ11より入射した録再用レーザ光を透過するように構成されている。
偏光ビームスプリッタ12を透過した録再用レーザ光は、1/4波長板13、及びコリメーションレンズ14を介して、録再光用フォーカス機構(エキスパンダ)15に入射する。
図示するように録再光用フォーカス機構15は、凹レンズ16、レンズ駆動部17、及び凸レンズ18を有して構成される。
1/4波長板13を介した録再用レーザ光は、コリメーションレンズ14を介して平行光となるように変換される。そして、当該コリメーションレンズ14を介した録再用レーザ光が、録再光用フォーカス機構15内の凹レンズ16に入射する。
録再光用フォーカス機構15においては、凹レンズ16がレンズ駆動部17によって録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動されることで、録再用レーザ光について独立したフォーカス制御を行う。
レンズ駆動部17には、後述するコントローラ39(図3)より駆動信号Dexが供給される。該駆動信号Dexに基づきレンズ駆動部17が凹レンズ16を駆動することで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光のコリメーションが変化し、これに伴って録再用レーザ光の焦点位置が調整されることになる。
なお、録再光用フォーカス機構15を用いた録再用レーザ光についての具体的なフォーカス制御手法(及び球面収差補正手法)については後に改めて説明する。
上記録再光用フォーカス機構15を介した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19に入射する。
ダイクロイックプリズム19は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム19を透過する。
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光は、図示するようにして対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に対して照射される。
対物レンズ20に対しては、当該対物レンズ20をフォーカス方向(バルク型記録媒体1に対して接離する方向)、及びトラッキング方向(上記フォーカス方向に直交する方向:バルク型記録媒体1の半径方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ21が設けられる。
2軸アクチュエータ21には、フォーカスコイル、トラッキングコイルが備えられ、それぞれに駆動信号(後述する駆動信号FD、TD)が与えられることで、対物レンズ20をフォーカス方向、トラッキング方向にそれぞれ変位させる。
なお、この図2においては対物レンズ20を1つのレンズ(単玉レンズ)として表しているが、これは図示の都合からであり、後述もするように対物レンズ20としては2群や3群の構成とすることができる。
ここで、再生時においては、上記のようにしてバルク型記録媒体1に対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、バルク型記録媒体1(バルク層5内の再生対象の情報記録層Lに記録されたマーク列)より録再用レーザ光の反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズ20を介してダイクロイックプリズム19に導かれ、当該ダイクロイックプリズム19を透過する。
ダイクロイックプリズム19を透過した録再用レーザ光の反射光は、録再光用フォーカス機構15(凸レンズ18→凹レンズ16)→コリメーションレンズ14→1/4波長板13を介した後、偏光ビームスプリッタ12に入射する。
ここで、このように偏光ビームスプリッタ12に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板13による作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、録再用レーザ光11側から偏光ビームスプリッタ12に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ12にて反射される。
このように偏光ビームスプリッタ12にて反射された録再用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ22を介して、録再光用受光部23の受光面上に集光する。
また、光学ピックアップOP内には、上記により説明した録再用レーザ光についての光学系の構成に加えて、サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光を対物レンズ20に導き且つ、上記対物レンズ20に入射したバルク型記録媒体1からのサーボ用レーザ光の反射光をサーボ光用受光部29に導くための光学系が形成される。
図示するように上記サーボ用レーザ24より出射されたサーボ用レーザ光は、発散光の状態で偏光ビームスプリッタ25に入射する。偏光ビームスプリッタ25は、このようにサーボ用レーザ24から入射したサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
偏光ビームスプリッタ25を透過したサーボ用レーザ光は、1/4波長板26を介し、コリメーションレンズ27で平行光となるようにされた後、ダイクロイックプリズム19に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム19は、録再用レーザ光と同波長帯の光は透過し、それ以外の波長による光は反射するように構成されているため、上記サーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム19にて反射され、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される。
また、このようにバルク型記録媒体1にサーボ用レーザ光が照射されたことに応じて得られる当該サーボ用レーザ光の反射光(基準面Refからの反射光)は、対物レンズ20を介した後ダイクロイックプリズム19にて反射され、コリメーションレンズ27→1/4波長板26を介して偏光ビームスプリッタ25に入射する。
先の録再用レーザ光の場合と同様に、このようにバルク型記録媒体1側から入射したサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板26の作用とバルク型記録媒体1での反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としてのサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ25にて反射される。
偏光ビームスプリッタ25にて反射されたサーボ用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ28を介してサーボ光用受光部29の受光面上に集光する。
また、光学ピックアップOPには、図中のチルト検出部30、及びチルト機構31が設けられる。
チルト検出部30は、バルク型記録媒体1の傾き(ディスクチルト角)を検出する。
この場合、チルト検出部30は、例えばバルク型記録媒体1に対して所定角度で光を照射する光照射部と、該光照射部により照射した光についてのバルク型記録媒体1からの反射光を受光する受光部とを備え、該受光部による上記反射光の受光位置のずれ量を検出することでバルク型記録媒体1の傾きを検出する。
チルト検出部30による検出信号tiltは、後述するチルト補正部40に供給される。
また、チルト機構31は、対物レンズ20をディスクチルトに応じて傾けるために設けられる。この場合のチルト機構31は、対物レンズ20を保持する2軸アクチュエータ21を保持し、当該2軸アクチュエータ21を傾けることで対物レンズ20を傾ける。
チルト機構31は、図3に示されるチルト補正部40からの駆動信号Dtに基づき駆動される。
なお以下、チルト機構31により行われる対物レンズ20のチルトのことを、レンズチルトとも称する。
ここで、図示による説明は省略するが、実際において記録再生装置10には、上記により説明した光学ピックアップOP全体をトラッキング方向にスライド駆動するスライド駆動部が設けられ、当該スライド駆動部による光学ピックアップOPの駆動により、レーザ光の照射位置を広範囲に変位させることができるようにされている。
[2-2.光学ドライブ装置の全体的な内部構成]

記録再生装置10の全体的な内部構成は、図3に示すものとなる。
なお、この図3において、光学ピックアップOPの内部構成については一部のみを抽出して示している。具体的には、録再用レーザ11、レンズ駆動部17、2軸アクチュエータ21、チルト検出部30、及びチルト機構31である。
図3において、記録再生装置10には、バルク層5を対象とした記録/再生や、マーク記録/再生時における対物レンズ20のフォーカス/トラッキング制御を行うための信号処理系の構成として、図中の記録処理部32、録再光用マトリクス回路33、再生処理部34、録再光用サーボ回路35、サーボ光用マトリクス回路36、位置情報検出部37、及びサーボ光用サーボ回路38が設けられている。
記録処理部32には、バルク型記録媒体1に対して記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部32は、入力された記録データに対してエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、バルク型記録媒体1に実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部32は、このように生成した記録変調データ列に基づく記録パルス信号RCPにより、光学ピックアップOP内の録再用レーザ11の発光駆動を行う。これによりバルク型記録媒体1に対する情報記録が実現される。
録再光用マトリクス回路33は、図2に示した録再光用受光部23としての複数の受光素子からの受光信号DT-rp(出力電流)に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、上述した記録変調データ列についての再生信号(読出信号)に相当する高周波信号(以降、再生信号RFと称する)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TE-rpを生成する。
録再光用マトリクス回路33にて生成された上記再生信号RFは、再生処理部34に供給される。
また、上記フォーカスエラー信号FE-rp、上記トラッキングエラー信号TE-rpは、録再光用サーボ回路35に対して供給される。
再生処理部34は、上記再生信号RFについて、2値化処理や記録変調符号の復号化・エラー訂正処理など、上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
また、録再光用サーボ回路35は、マトリクス回路33から供給されるフォーカスエラー信号FE-rp、トラッキングエラー信号TE-rpに基づきフォーカスサーボ信号FS-rp、トラッキングサーボ信号TS-rpをそれぞれ生成し、これらフォーカスサーボ信号FS-rp、トラッキングサーボ信号TS-rpに基づくフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpに基づき、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
なお先の図12〜図14の説明からも理解されるように、このような録再用レーザ光の反射光に基づく2軸アクチュエータ21(対物レンズ20)のサーボ制御は、再生時において行われるものである。
また、録再光用サーボ回路35は、再生時に対応してコントローラ39から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして上記トラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、フォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
また、サーボ用レーザ光の反射光についての信号処理系において、サーボ光用マトリクス回路36は、図2に示したサーボ光用受光部29における複数の受光素子からの受光信号DT-svに基づき、必要な信号を生成する。
具体的にサーボ光用マトリクス回路36は、フォーカス/トラッキングの各サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svを生成する。
また、基準面Refにおいて記録された絶対位置情報(アドレス情報)の検出を行うための位置情報検出用信号Dpsを生成する。例えば絶対位置情報がピット列により記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしては和信号を生成する。或いは、ウォブリンググルーブにより絶対位置情報が記録される場合、位置情報検出用信号Dpsとしてはプッシュプル信号を生成する。
上記位置情報検出用信号Dpsは、位置情報検出部37に供給される。位置情報検出部37は、上記位置情報検出用信号Dpsに基づき基準面Refに記録された絶対位置情報を検出する。検出された絶対位置情報はコントローラ39に対して供給される。
また、サーボ光用マトリクス回路36にて生成されたフォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svは、サーボ光用サーボ回路38に対して供給される。
サーボ光用サーボ回路38は、フォーカスエラー信号FE-sv、トラッキングエラー信号TE-svに基づきフォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svをそれぞれ生成する。
そして、記録時には、コントローラ39からの指示に応じて、上記フォーカスサーボ信号FS-sv、トラッキングサーボ信号TS-svに基づき生成したフォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svに基づいて、2軸アクチュエータ21のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することで、サーボ用レーザ光についてのフォーカスサーボ制御、トラッキングサーボ制御を実現する。
また、サーボ光用サーボ回路38は、記録時に対応してコントローラ39から為される指示に応じて、トラッキングサーボループをオフとして2軸アクチュエータ21のトラッキングコイルにジャンプパルスを与えることでトラックジャンプ動作を実現したり、トラッキングサーボの引き込み制御等も行う。また、基準面Refに対するフォーカスサーボの引き込み制御等も行う。
コントローラ39は、例えばCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリ(記憶装置)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等に記憶されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、記録再生装置10の全体制御を行う。
具体的にコントローラ39は、前述のようにして予め設定された各情報記録層位置Lの情報に基づき、録再光用フォーカス機構15におけるレンズ駆動部17を駆動制御することで、録再用レーザ光の焦点位置の調整を行う。
なお、このような焦点位置の設定に関する具体的な手法については後述する。
また、コントローラ39は、先の図12〜図14にて説明したような記録/再生時の対物レンズ20のサーボ制御切り替えを実現するための制御も行う。具体的にコントローラ39は、記録時には、サーボ光用サーボ回路38に対してフォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svの出力を指示し、また録再光用サーボ回路35にはフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpの出力を停止するように指示を行う。
一方、再生時には、録再光用サーボ回路35に対してフォーカス駆動信号FD-rp、トラッキング駆動信号TD-rpの出力を指示し、サーボ光用サーボ回路38に対しては、フォーカス駆動信号FD-sv、トラッキング駆動信号TD-svの出力を停止するように指示を行う。
またコントローラ39は、サーボ光用サーボ回路38に対するシーク動作制御を行う。すなわち、サーボ用レーザ光のスポット位置を基準面Ref上における所定のアドレスに移動させるようにサーボ回路38に対する指示を行う。
また、本例の記録再生装置10には、チルト補正部40が設けられる。チルト補正部40は、チルト検出部30による検出信号tiltに基づき、対物レンズ20をディスクチルトに応じた分だけ傾けるための駆動信号Dtを生成し、当該駆動信号Dtに基づきチルト機構31を駆動する。これにより、チルト補正が実現される。
[2-3.録再光用レーザ光の焦点位置の調整について]

図4は、録再光用フォーカス機構15を用いた焦点位置の調整手法について説明するための図である。
先ず、バルク型記録媒体1の所要の層位置Lを対象として記録再生を行うにあたっては、予め基準層位置Lprを設定しておくことになる。この基準層位置Lprは、録再用レーザ光の焦点位置の調整にあたって基準とすべき層位置Lであり、具体的に本例の場合は、情報記録層位置L1〜L5のうちの中間に位置する情報記録層位置L3を基準層位置Lprとして設定するものとしている。
この場合の録再光用フォーカス機構15は、このような基準層位置Lprへの合焦状態を基準として、球面収差補正を含めた録再用レーザ光についての焦点位置の調整を行うようにされる。
具体的に、この場合における録再用レーザ光についての光学系は、図4(b)に示すように録再用レーザ光が基準層位置Lprに合焦する状態で、レンズ駆動部17による凹レンズ16の駆動位置が、基準位置にあるように設計されている。具体的にこの場合、凹レンズ16の基準位置とは、レンズ駆動部17への駆動信号Dexのレベルがゼロレベルである状態を指すものとする。
なお且つ、この場合の光学系は、このように凹レンズ16が基準位置にある状態において、該凹レンズ16から凸レンズ18を介して出射される(つまり対物レンズ20に入射する)録再用レーザ光が、図のように平行光となるように設計されている。
そして、このように録再用レーザ光が対物レンズ20に平行光で入射し基準層位置Lprに合焦する状態において、録再用レーザ光の球面収差が最小となるように光学系が設計されている。これは、換言すれば、基準層位置Lprへの合焦状態では、球面収差の補正が不要であるということを意味する。この意味で基準層位置Lprは、球面収差補正にあたっての基準層位置ともされていることになる。
この図4(b)に示す状態を基準として、基準層位置Lpr(この場合は情報記録層位置L3)よりも下層側の情報記録層位置Lを対象とした記録を行うとしたときは、図4(a)に示されるように、凹レンズ16を対物レンズ20に近づく方向に駆動する(例えば駆動信号Dexとして正極性による信号を与える)。これにより、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光は発散光となり、その結果、録再用レーザ光の合焦位置は基準層位置Lprよりも下層側に調整されることになる。
このとき、凹レンズ16の上記基準位置からの駆動量に比例して、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の発散角が大となり、録再用レーザ光の合焦位置が基準層位置Lprのより下層側に調整されることになる。
一方、基準層位置Lprより上層側の情報記録層位置Lを対象として記録を行うとしたときは、図4(c)のように、凹レンズ16を対物レンズ20から離れる方向(光源側の方向)に駆動する(例えば駆動信号Dexとして負極性による信号を与える)ことで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光を収束光に変化させる。これにより、録再用レーザ光の焦点位置を基準層位置Lprよりも上層側に調整できる。このとき、凹レンズ16の上記基準位置からの駆動量をより大とすることで、対物レンズ20に入射する録再用レーザ光の収束角をより大とでき、録再用レーザ光の合焦位置をより上層側に調整できる。
この前提を踏まえた上で、先の図3に示したコントローラ39には、各情報記録層位置Lを表す情報として、情報記録層位置Lごとの駆動信号Dexのレベルの情報が記憶されている。またこれと共に、コントローラ39には、基準層位置Lpr以外の各情報記録層Lごとに、基準層位置Lprからの誤差(距離)に応じた球面収差補正量の情報が記憶されている。
コントローラ39は、このように情報記録層位置Lごとに予め設定された駆動信号Dexのレベルの情報と球面収差補正量の情報とに応じて、レンズ駆動部17を駆動制御する。これにより、記録の対象とすべき情報記録層位置に応じた位置に録再用レーザ光を合焦させつつ、その情報記録層位置に応じた球面収差補正(デフォーカス)を行うようにされている。
またコントローラ39は、再生時に対応しては、録再光用フォーカス機構15を利用した球面収差補正を行う。具体的には、上記のように予め各層位置Lごとに記憶された基準層位置Lprからの誤差(距離)に応じた球面収差補正量の情報に基づきレンズ駆動部17を駆動制御することで、再生時における球面収差補正を行う。
<3.対物レンズの設計>
[3-1.具体的な設計指針]

ここで、上記による説明からも理解されるように、本実施の形態の記録再生装置10としても、球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正とを行うように構成されている。
前述もしたように、このような構成を採る場合において、大記録容量化のためにバルク層5の厚さが大とされてその分球面収差補正としてもその補正量が大となる場合には、補正端側でのコマ収差が大きく悪化し(先の図15を参照)、その結果、全ての情報記録層位置Lにおいて安定した記録再生性能を維持することが困難となってしまう。
図5は、レンズチルトによるチルト補正と像高との関係について説明するための図である。
この図5に示されるように、対物レンズ20を傾けてレンズチルトによるチルト補正を行った場合には、対物レンズ20の光軸axs_Lが、光学系の光軸axs_Oに対して傾くことで、レーザ光の焦点位置に図中のYと示すようなずれが生じる。
このYが像高と呼ばれるものであり、図のように光軸の傾き角をθとし、対物レンズ20の焦点距離をfとしたとき、

Y=f×tanθ

で表される。
このようにレンズチルトによるチルト補正を行うことによっては、像高Yが変化する。従って、記録再生装置10において、良好な結像性能が得られるようにするためには、対物レンズ20として、その像高特性(像高Yに対する収差特性)を改善すればよいということが分かる。
そこで本実施の形態では、対物レンズ20を以下のように設計する。
先ず、記録(又は再生)にあたっての集光対象位置と基準層位置Lprとの誤差に応じた3次の球面収差の変動量(以下、3次球面収差変動量と称する)W40は、以下のように表される。

40=dt/8×(n2-1)/n3×NA4 ・・・[式1]

これをλrms単位とすると、

40×{1/6/sqrt(5)}/λ ・・・[式2]

また、集光対象位置と基準層位置Lprとの誤差に応じた3次のコマ収差の変動量(3次コマ収差変動量)W31は、以下のように表される。

31=dt/2×(n2-1)×n2×sinθ×cosθ/(n2-sin2θ)5/2×NA3 ・・・[式3]

これをλrms単位とすると、

31×{1/2/3/sqrt(2)}/λ ・・・[式4]

ただし[式1]〜[式4]において、dtは集光対象位置と基準層位置Lprとの誤差、nはバルク型記録媒体1の屈折率、NAは対物レンズ20の実効的開口数、θはディスクチルト角度(ラジアン)、λは録再用レーザ光の波長である。
ここで、チルト補正が無しの条件において、これら3次球面収差変動量と3次コマ収差変動量との関係は、

3次コマ収差変動量=a*3次球面収差変動量

と表すことができる。
これに対し、対物レンズ20をディスクチルト角度θと同角度チルトさせてチルト補正(コマ収差補正)を行う条件は、上記[式4]をレンズチルト角で除算し且つ[式4]の極性を反転させることに相当する。つまり、

(-1)×3次コマ収差変動量/レンズチルト角

である。
従って、チルト補正有りの場合における3次球面収差変動量と3次コマ収差変動量との関係は、

(-1)×3次コマ収差変動量/レンズチルト角=α*3次球面収差変動量

と表すことができる。これを表記し直すと、

(-1)×[式4]/θ=α×[式2] ・・・[式5]

である。
ここで、上記[式5]において、ディスクチルト角度θが十分に小さい範囲(±0.5°以下)と考え、sinθ≒θ、cosθ≒1とすると、

α=-6.32×n5/NA/(n22)5/2 ・・・[式6]

このとき、n>>θとおけば、

(n22)=n2

である。
従って上記[式6]は、

α=-6.32/NA ・・・[式7]
この[式7]により求まったαの値は、カバー厚の差dtや、記録媒体の屈折率n、レーザ光の波長λとは無相関な値であり、αの理想値(中間値)となる。
本例の場合、対物レンズ20のNAは0.85程度であり、従って本例におけるαの理想値は、

α≒-7.44 ・・・[式8]

である。
ここで、本例の場合、記録媒体の屈折率n=1.6であり、最大チルト角(θの最大値)は0.5°(±0.5°)である。
このとき、例えばバルク層5の厚さがおよそ300μm程度とされ、基準層位置Lprからの誤差dtの最大値がおよそ±150μmであるとすると、この場合における3次球面収差変動量W40(λrms)の最大値は、先の[式2]より、±0.68λrms程度となる。従って、同じく誤差dtが最大のときで、且つ最大チルト角が上記0.5°のときの3次コマ収差変動量W31(λrms)は、上記の0.68λrmsと[式8]のαの理想値とから、[式5]より0.0445λrms程度となる。
本実施の形態では、このような基準層位置Lprからの誤差dtが最大でチルト角θが最大という条件でのα=理想値のときの3次コマ収差変動量の値が、マレシャル基準収差(マレシャルのクライテリオン:Marechal Criterion)に基づく許容相違範囲内に収めることのできる、αの値の範囲を設定する。
一例として、許容相違範囲をマレシャル基準収差(=0.07λrms)自体としたときは、上記の3次コマ収差変動量≒0.0445λrmsからの許容相違の割合は、約157%(0.07/0.0445)である。従って、αに許される精度は157%(α×2.57<α<α/2.57)であり、

−19.1<α<−2.9 ・・・[式9]

となる。
つまりこの場合、対物レンズ20としては、

3次コマ収差変動量/レンズチルト角=α*3次球面収差変動量

におけるαが、[式9]の許容相違範囲内の値となるように設計すればよいものである。
或いは、光学系における他の光学部品の有する収差も考慮に入れた十分なマージンをとるとして、許容相違範囲をマレシャル基準収差の半値=0.035λrmsとした場合には、上記の3次コマ収差変動量≒0.0445λrmsからの許容相違の割合は約80%であり、従って、αに許される精度は80%(α×1.8<α<α/1.8)となる。つまりは、

−13.4<α<−4.1 ・・・[式10]

である。
従ってこの場合には、対物レンズ20としては、

3次コマ収差変動量/レンズチルト角=α*3次球面収差変動量

におけるαが[式10]の許容相違範囲内の値となるように設計すればよい。
上記のように本実施の形態では、「3次コマ収差変動量/レンズチルト角=α*3次球面収差変動量」におけるαの値が、当該αの理想値を基準とする許容相違範囲であって、基準層位置Lprからレーザ光の集光対象位置までの誤差が最大で且つチルト角θが最大のときの3次コマ収差変動量とマレシャル基準収差とに基づき設定した上記許容相違範囲内の値となるように、対物レンズ20を設計するものとしている。
これにより、録再用レーザ光の集光対象位置が基準層位置Lprから最大に離間した位置で且つチルトが最大に生じているという最悪の条件下においても、録再用レーザ光の結像性能として、マレシャル基準収差に基づく高い性能を維持することができる
この結果、本実施の形態によれば、球面収差補正とレンズチルトによるチルト補正とを行うバルク型記録媒体1のドライブ装置について、その記録再生性能の向上を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、対物レンズ20の像高特性が改善する分、よりバルク層5の厚みを増しても対応可能であり、従って、さらなる大記録容量化が図られるようにできる。
[3-2.実施例1:2群構成の設計例]

以下、上記の[式9]及び[式10]の双方のαの条件を満たす対物レンズ20の具体的な設計例について説明する。
先ずは図6により、2群構成とした場合の設計例(実施例1とする)について説明する。
図6は、実施例1としての対物レンズ20の構成を示した断面図である。
なおこの図ではバルク型記録媒体1の表面Sf及び基準層位置Lprも併せて示している。
またこの図では、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される録再用レーザ光の光線も併せて示している。
さらに、光学系の光軸axs_O及び対物レンズ20の光軸axs_Lも示している。
図示するように、この場合の対物レンズ20は、後玉レンズ20Aと先玉レンズ20Bとを有する2群構成とされる。後玉レンズ20Aの発光点側(光源側)の面に対しては、絞りapが設けられ、これによって入射光の径が所定の径に絞られる。
この図では、後玉レンズ20Aに対して録再用レーザ光が平行光入射し、それに伴い録再光用レーザ光が基準層位置Lprに合焦している様子を示している。
下記の[表1]は、実施例1の対物レンズ20の設計例を示している。
Figure 0005541023
ここで本例の場合、バルク型記録媒体1の屈折率n=1.6である。また、録再用レーザ光の波長λ=405nmである。また、対物レンズ20の入射瞳径は2.5mm、焦点距離は1.47mmである。
なお上記[表1]において、面番号S1〜S8は、それぞれ図6中に示した面番号S1〜S8に対応する。ここで、面番号S0は、録再用レーザ光の発光点を表す。
また、面番号S5及びS6は共に先玉レンズ20Bのバルク型記録媒体1側の面を指すものである。
また、面番号S8は、集光対象位置としての情報記録層位置Lの面を表すもので、対物レンズ20に録再用レーザ光が平行光入射するとき、当該面番号S8の面は図6に示すように基準層位置Lprに一致する。
また、[表1]において、面番号S6と対応づけられた面間隔の値(0.17mm)は、S6とS7との間の面間隔、すなわち対物レンズ20の端面とバルク型記録媒体1の表面Sfとの間の空気の層の厚さを意味する。
また、[表1]において、A〜H及びJは非球面係数であり、Kは円錐係数である。
ここで、非球面式は下記の[式11]で定義されるものである。
Figure 0005541023

なお[式11]において、zは、z軸(光軸に平行な軸)に対する平行面のサグ、cは面頂点での曲率(CUY)、kは円錐係数(K)である。またhは、光軸からの高さ(光軸と直交する方向における光軸からの距離)を意味する。
なお[表1]において、「ポジションデータ」は、1)集光対象位置の深さ(集光対象位置と基準層位置Lprとの誤差)に従って、2)発光点の位置(S0)を動かすこと、3)バルク型記録媒体1と対物レンズ20端面との間の距離を動かすこと、の3点を最適にして決まる設計解のことである。
[表1]の「ポジションデータ」において、面番号S7に対応づけられた各ポジションの値は、S7−S8間の面間隔(表面Sf−集光対象位置間の間隔)を表すものである。また面番号S6に対応づけられた各ポジションの値は、S6−S7間の面間隔(対物レンズ20端面−表面Sf間の間隔)を表すものである。
また、発光点の各ポジションの値について、「INFINITY」は録再用レーザ光が対物レンズ20に平行光入射することを意味する。また、発光点のポジションの値が正であることは、対物レンズ20に録再用レーザ光が発散光で入射すること(図4(a))を意味し、また負であることは収束光で入射すること(図4(c))を意味する。
図7は、[表1]による設計を行った実施例1の対物レンズ20についての、3次球面収差変動量(λrms)と3次コマ収差変動量(λrms)との関係を示した図である。
この図7のように横軸(x軸)を3次球面収差変動量、縦軸(y軸)を3次コマ収差変動量としたときの、実施例1の対物レンズ20におけるこれら2つの変動量の関係式は、

y=-0.0509x+0.0061

となる。
ここで、αの値は、このような3次球面収差変動量と3次コマ収差変動量との関係式(先に挙げた「3次コマ収差変動量=a*3次球面収差変動量」に相当)における傾きの値を、レンズチルト角(ラジアン)で除算したものに相当する。
従って、実施例1の対物レンズ20のαの値は、

α=-0.0509÷0.00873(=0.5°)=-5.83

である。
この結果より、実施例1の対物レンズ20によれば、先の[式9]及び[式10]の双方の条件を満たすことが分かる。
[3-3.実施例2:3群構成の設計例]

続いて、実施例2は、対物レンズ20を3群構成とした場合の設計例である。
図8は、実施例2としての対物レンズ20の構成を示した断面図である。
なおこの図においても先の図6と同様に、バルク型記録媒体1の表面Sf及び基準層位置Lpr、対物レンズ20を介してバルク型記録媒体1に照射される録再用レーザ光の光線、光学系の光軸axs_O及び対物レンズ20の光軸axs_Lも併せて示している。
図示するように、この場合の対物レンズ20は、後玉レンズ20Aと先玉レンズ20Bとの間に中玉レンズ20Cが挿入された3群構成となる。この場合も後玉レンズ20Aの発光点側(光源側)の面に対しては絞りapが設けられている。
この図8においても、先の図6に場合と同様に、後玉レンズ20Aに対して録再用レーザ光が平行光入射し、録再光用レーザ光が基準層位置Lprに合焦している様子を示している。
下記[表2]は、実施例2の対物レンズ20の設計例を示している。
Figure 0005541023
なお、この場合も先の実施例の場合と同様、バルク型記録媒体1の屈折率n=1.6、録再用レーザ光の波長λ=405nm、対物レンズ20の入射瞳径=2.5mm、焦点距離=1.47mmである。
また、面番号S1〜S10は、それぞれ図8中に示した面番号S1〜S10に対応し、この場合も面番号S0は録再用レーザ光の発光点を表す。
この場合、面番号S7及びS8は共に先玉レンズ20Bのバルク型記録媒体1側の面を指す。また、面番号S10は、集光対象位置としての情報記録層位置Lの面を表すもので、対物レンズ20に録再用レーザ光が平行光入射するとき、面番号S10の面は図8に示すように基準層位置Lprに一致する。
また、[表2]の場合、面番号S8と対応づけられた面間隔の値(0.17mm)の値が、対物レンズ20の端面とバルク型記録媒体1の表面Sfとの間の空気の層の厚さを表すものとなる。
ここで、その他、表の見方については先の[表1]の場合と同様である。
図9は、実施例2の対物レンズ20についての、3次球面収差変動量(λrms)と3次コマ収差変動量(λrms)との関係を示した図である。
実施例2の対物レンズ20における3次球面収差変動量(x軸)と3次コマ収差変動量(y軸)との関係式は、

y=-0.0849x+0.0117

となる。
従って、この場合のαの値は、

α=-0.0849÷0.00873=-9.73

である。
このことから、実施例2の対物レンズ20としても、先の[式9]及び[式10]の双方の条件を満たすことが分かる。
<4.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、対物レンズ20の具体的な設計例については上記の実施例1や実施例2に限定されるべきものでないことは言うまでもない。
また、対物レンズ20の群数(レンズの玉数)についても実施例1や実施例2に限定されるべきものではない。
また、これまでの説明では、球面収差の補正をエキスパンダを用いて行うものとしたが、例えば液晶素子を用いる手法など、他の手法により球面収差補正を行うように構成することもできる。
またこれまでの説明では、基準層位置Lprをバルク層5内の中間位置に設定するものとしたが、基準層位置Lprの設定位置は必ずしもバルク層5の中間位置に限定されるべきものではない。
また、これまでの説明では、再生時における録再用レーザ光のフォーカス制御は、該録再用レーザ光の記録済みマーク列からの反射光に基づき、対物レンズ20を制御することで行うものとしたが、再生時においても、記録時と同様に、対物レンズ20のフォーカス制御をサーボ用レーザの基準面Refからの反射光に基づき行い、録再用レーザ光のフォーカス制御を録再光用フォーカス機構15を用いて行うようにすることもできる。
またこれまでの説明では、反射膜が形成された基準面Refが、バルク層5としての記録層よりも上層側に形成される場合を例示したが、基準面Refが記録層よりも下層側に形成される場合にも本発明は好適に適用できる。
また、これまでの説明では、録再用レーザ光とサーボ用レーザ光のそれぞれの反射光を装置側で独立して受光するにあたり、ダイクロイックプリズム19を設けて、それぞれの光の波長の違いを利用して分光を行う手法を例示したが、これに代えて、例えばp偏光/s偏光などの偏光方向の違いを利用した分光を行う構成を採るなど、他の手法により分光を行うようにすることもできる。
このように本発明の光学ピックアップ(光学ドライブ装置)が有する光学系の構成については適宜の変更が可能である。
また、本発明は、バルク状の記録層を有するバルク型の光記録媒体を対象とする場合のみならず、深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体に広く好適に適用可能なものである。
例えば、反射層と記録材料層とを具備する記録膜の複数を深さ方向において所定間隔で形成した記録層構造を有する光記録媒体に対しても、本発明は好適に適用できる。
また、これまでの説明では、本発明が記録層に対するマーク記録と記録マークの再生の双方を行う記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明としては、記録層に対するマーク記録のみを行う記録装置(記録専用装置)や、或いは記録されたマークの再生のみを行う再生装置(再生専用装置)に対しても好適に適用できる。
1 バルク型記録媒体、2 カバー層、3 選択反射膜、Ref 基準面、4 中間層、5 バルク層、L 情報記録層位置、Lpr 基準層位置、10 記録再生装置、11 録再用レーザ、12,25 偏光ビームスプリッタ、13,26 1/4波長板、14,27 コリメーションレンズ、15 録再光用フォーカス機構、16 凹レンズ、17 レンズ駆動部、18 凸レンズ、19 ダイクロイックプリズム、20 対物レンズ、20A 後玉レンズ、20B 先玉レンズ、20C 中玉レンズ、ap 絞り、21 2軸アクチュエータ、22,28 シリンドリカルレンズ、23 録再光用受光部、24 サーボ用レーザ、29 サーボ光用受光部、30 チルト検出部、31 チルト機構、32 記録処理部、33 録再光用マトリクス回路、34 再生処理部、35 録再光用サーボ回路、36 サーボ光用マトリクス回路、37 位置情報検出部、38 サーボ光用サーボ回路、39 コントローラ、40 チルト補正部

Claims (8)

  1. 深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体の上記記録層に対し対物レンズを介して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備えた光学ピックアップに設けられる上記対物レンズであって、
    上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

    ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

    としたとき、
    上記αの値が、

    α=−6.32NA

    (但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
    上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされている
    対物レンズ。
  2. 上記NAの値が0.85であり、上記αの理想値が−7.44とされる請求項1に記載の対物レンズ。
  3. 上記レーザ光の波長が405nm、上記基準層位置と上記集光対象位置との誤差量が±150μm以下、上記レンズチルト角(上記光記録媒体のチルト角)が±0.5°以下、上記光記録媒体の屈折率が概ね1.6とされ、上記αの値が、上記マレシャル基準収差の値自体に基づき設定した

    −19.1<α<−2.9

    による許容相違範囲内の値となるように設計されている
    請求項2に記載の対物レンズ。
  4. 上記レーザ光の波長が405nm、上記基準層位置と上記集光対象位置との誤差量が±150μm以下、上記レンズチルト角(上記光記録媒体のチルト角)が±0.5°以下、上記光記録媒体の屈折率が概ね1.6とされ、上記αの値が、上記マレシャル基準収差の半値に基づき設定した

    −13.4<α<−4.1

    による許容相違範囲内の値となるように設計されている
    請求項2に記載の対物レンズ。
  5. 2群構成とされる請求項1に記載の対物レンズ。
  6. 3群構成とされる請求項1に記載の対物レンズ。
  7. 深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体の上記記録層に対し対物レンズを介して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、
    上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備えると共に、
    上記対物レンズが、
    上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

    ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

    としたとき、
    上記αの値が、

    α=−6.32NA

    (但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
    上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされている
    光学ピックアップ。
  8. 深さ方向の所定複数位置に情報記録が可能とされた記録層を有する光記録媒体の上記記録層に対し対物レンズを介して照射されるレーザ光についての球面収差補正を行う球面収差補正機構と、
    上記対物レンズのチルト角度としてのレンズチルト角を変化させてチルト補正を行うチルト補正部とを備えると共に、
    上記対物レンズが、
    上記記録層内に設定された所定の基準層位置に対する上記レーザ光の集光対象位置の最大の誤差が100μm以上とされる下で、当該誤差に応じた3次球面収差の変動量(λrms)をΔSA、上記レンズチルト角(ラジアン)をLtilt、上記レンズチルト角Ltiltにより発生する3次コマ収差の変動量(λrms)をΔCAとおき、これらの関係を

    ΔCA/Ltilt=α*ΔSA

    としたとき、
    上記αの値が、

    α=−6.32NA

    (但しNAは上記対物レンズの実効的開口数)により表されるその理想値を基準とする許容相違範囲であって、
    上記3次球面収差変動量ΔSAが最大値で且つ上記レンズチルト角が最大であるときの上記3次コマ収差変動量ΔCAマレシャル基準収差の値以下となるように設定した上記許容相違範囲内の値となるようにその設計がされている光学ピックアップ
    を備えて上記光記録媒体に対する情報の記録及び/又は再生を行う
    光学ドライブ装置。
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