JP5489521B2 - ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ゴム組成物及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、補強充填材である繊維の分散性を高め、耐久性及び剛性に優れた補強ゴム及びそれを用いたタイヤ等のゴム製品を提供することのできるゴム組成物及びその製造方法に関するものである。
タイヤ製品等のゴムは一般に、カーボンブラック、シリカ等の粒状無機補強材を添加して、その強度及び剛性を高めている。しかし、このような粒状無機補強材はその形状に起因する理由でその補強性能に限界が見られる。そこで、ゴムの補強材として短繊維を選択して硬度やモジュラスなどを向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、0.5〜1000μmのアラミド短繊維を含むマスターバッチをタイヤゴムに利用することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。更に、ゴムにセルロース繊維を複合化させたゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
また、補強材としてナノオーダの微細な繊維を用いた場合、その補強性は粒状補強材をはるかに凌ぐ補強性能を有し、このような繊維状補強材をゴムとの界面を適切に設計し複合化することで、耐久性、剛性に優れた繊維補強ゴムが得られ、タイヤ製品等の耐久化、軽量化などの大きなメリットを示すことが知られている。
特開平10−7811号公報 特開2001−164052号公報 特開2006−206864号公報
ところで、繊維、例えばセルロース系繊維をゴム補強材とした場合、親水性のセルロースと疎水性のゴムを複合化させたものでは、補強材のゴムへの親和性、分散性が悪く十分な耐久性及び剛性を発揮できない。また繊維/ゴム界面の補強性も十分ではない。このため、ゴムが機械的応力を受けた場合に、繊維の離脱、或いは剥離が起こり、十分な強度及び耐久性が得られない。これは特にセルロースナノ繊維にも見られる。
従って、本発明は、セルロース繊維からなる補強材のゴム成分への親和性及び補強性を高めて十分な耐久性及び剛性を発揮するゴム組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、セルロース系繊維、好ましくは平均繊維径がナノオーダのセルロースナノ繊維を、ゴムの補強材とし、かかる補強材を変性させ、この変性繊維補強材をゴム成分であるジエン系ポリマーに架橋させることにより、セルロース繊維補強材のゴム成分自身への親和性及び分散性を高め、加硫反応の際に、これらがゴム成分と架橋し、補強効果の増大することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るゴム組成物及びその製造方法は、以下の(1)乃至(5)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1)ゴム成分中に、セルロース繊維を含むゴム組成物において、該セルロース繊維をイソシアネート基とビニル基と有する化合物で該セルロース繊維の水酸基に該イソシアネート基を反応結合させ変性させて、ゴム成分中に該変性セルロース繊維をゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲で混合することを特徴とするゴム組成物。
(2)上記セルロース繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲にあり、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲にあるセルロースナノ繊維である(1)に記載のゴム組成物。
(3)上記(1)又は(2)の何れかの項に記載のゴム組成物の製造方法において、上記セルロース繊維を変性セルロース繊維とし、ゴムラテックスと、水に分散させた該変性セルロース繊維のスラリーとを混合した後、混合液を乾燥して水を除去して得ることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
本発明のゴム組成物は、親水性であるセルロース繊維と疎水性であるゴム成分とにおいて、セルロース繊維を変性してビニル基を導入、ビニル基を介して両者の間に架橋関係を生じさせ、両者の親和性を高め、ゴム成分中での繊維の分散性を良好することができる。これにより、ゴム組成物は、十分な耐久性及び剛性を発揮する。
図1は、一般的なセルロース分子構造を示す図である。 図2はセルロース繊維、変性セルロース繊維、重合化の模式図である。
以下、本発明に係る好ましい実施をするための最良形態を詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分中に、セルロース繊維を含むゴム組成物において、該セルロース繊維を変性させて、ゴム成分中に該変性セルロース繊維を混合する。
本発明に係るゴム組成物のゴム成分は特に限定されないが、タイヤ製品等に使用することができるものとしては、例えば、以下のゴム成分を挙げることができる。
ゴム成分は大別して、天然ゴム、及び合成ゴムから選択され、両者を混合使用しても良い。合成ゴムは、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、ジエン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴム等がある。
図1は一般的なセルロース繊維の分子構造の状態を示す図である。本発明に係るゴム組成物に配合されるセルロース繊維はセルロースナノ繊維であることが好ましい。セルロースナノ繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲で、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲であることが好ましい。特に、セルロースナノ繊維の平均繊維径が1〜500nmの範囲で、平均繊維長さが5〜50μmの範囲であることが更に好ましい。平均繊維粒径が上記範囲未満の場合はその分散性が低下し、また上記範囲を超えると補強性能が低下する。
ここで、平均繊維径及び平均繊維長さは、繊維をエチレングリコール溶液中に分散させ、細孔電気抵抗法(コールター原理法)により計測する。
また、上記セルロースナノ繊維等はゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲、特に、3〜20質量部の範囲で含まれることが好ましい。繊維の量が少ないと補強効果が十分でなく、逆に多いとゴムの加工性が悪くなってくる。
本発明の変性セルロース繊維は、セルロースの分子内に多数存在する水酸基が変性されたものである。また、変性物は水酸基と反応しやすいイソシアネート基(−NCO)を含むものが好ましい。また、変性物はセルロース繊維と反応した後、ジエン系ゴム成分と容易に架橋結合できるビニル基を含むことが好ましい。
このようなことから、本発明の変性セルロース繊維に使用する変性物はイソシアネート基とビニル基を含む化合物であることが好ましい。
このようなイソシアネート系化合物としてはイソシアナトアルキルアクリレート等が好ましく、アルキルの炭素数nが1乃至6の範囲の低級アルキルが好ましい。具体的には、2−イソシアナトエチルアクリレート、3−イソシアナトプロピルアクリレートなどを挙げることができる。尚、ビニル基を形成するものとして、その作用効果を発揮する範囲の化合物である限り、アクリレートに限る必要はない。
このような変性化合物は、セルロースの1単位(水酸基6個)当たり、平均で2〜6個の範囲、特に3〜6個の範囲で化合物が水酸基に結合したものであることが好ましい。このような範囲にある変性セルロース繊維あれば、変性化合物がセルロースとゴム成分との間に十分な結合を形成して補強性を向上する。
本発明の上記変性セルロース繊維と結合するゴム成分としてはモノマー及びオリゴマーを含むジエン系ポリマーであることが好ましい。このようなポリマーとしては、イソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、クロロプレン等のジエン系モノマー、又はスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、及びポリブチル等のゴム系のジエン系ポリマー等を挙げることができる。更に、一般的な塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、アクリルアミド等のモノマーやポリ塩化ビニル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン等のポリマーを挙げることができる。
上記変性セルロース繊維をジエン系ポリマーとビニル基を介して架橋することができる。架橋剤としては、特に制限はなく、一般に使用する硫黄の他、種々の過酸化物を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。また、リビングラジカル重合における重合開始剤は、過酸化ベンゾイルおよびその誘導体、ジスルフィド、ハロゲン化アルキルや2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxy(TEMPO)などの安定ラジカル種が好適に用いられる。これらの安定ラジカル種は、炭素中心ラジカルとカップリング反応し安定な生成物を得る。また、この生成物は熱を加えることで可逆的にもとのラジカルを生成することが可能である。
また、重合触媒を適宜用いることができる。重合触媒としては、CuCl/2,2−ビピリジン、CuBr/2,2−ビピリジン、CuCl/4、4−ジ−n−へプチル−2,2−ビピリジン、CuBr/4,4−ジ−n−へプチル−2,2−ビピリジンなどが、ATRP法の重合触媒として好適に用いられる。
なお、重合を制御、又は重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合間始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。
上記変性セルロース繊維は、その変性物のビニル基から架橋が開始される。即ち、図2に示すように、重合開始剤を付与した後、上記モノマー及びポリマーの重合架橋を行う。
次に、本発明においてゴム組成物を製造するには、先ず、上記セルロース繊維を水に分散させた後に、叩解させ、オリフィスを通過させ、適宜機械的せん断を加えて、高圧ホモジナイザーなどで分散させてスラリー化する。実際には各種繊維径の繊維が市販されている。かかる場合のスラリーにおける上記繊維の濃度は製造操作上、溶媒100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲であることが好ましい。次に、スラリーを脱水処理し、極性溶媒中でスラリーとした後に変性物を添加して加熱処理等により変性する。また本発明では分散剤等を添加することができ、これは上記スラリー状態で添加し、ラテックス状のゴムとウェットブレンドするか、あるいはスラリーを固化させた後にインテグラルドライブレンド法によりゴム混練時に直接添加して効果を発現させることが好ましい。
本発明に従ってゴムラテックス及び変性繊維、分散剤のスラリーを混合する方法には特に限定はなく、例えばホモジナイザー、ロータリー撹拌装置、電磁撹拌装置、プロペラ式撹拌装置等の一般的方法によることができる。
本発明において、混合液から水を除去するのには、例えば、オーブン乾燥、凍結乾燥、噴露乾燥などの一般的方法によることができる。
本発明における上記混合液の固形分濃度には特に限定はないが、40質量%以下であるのが好ましく、更に5〜15質量部の範囲にあるのが好ましい。この固形分濃度が40質量%を超えると、混合液の粘度が高くなり過ぎ、変性繊維の分散性が低下する。
本発明のゴム組成物は、上記の配合成分の他に、ゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、種々の成分として、充填剤(例えば、シリカ等の補強性充填剤;並びに炭酸カリウム及び炭酸カルシウムなどの無機充填剤);加硫促進剤;老化防止剤;酸化亜鉛;ステアリン酸;軟化剤;及びオゾン劣化防止剤等の添加剤を挙げることができる。なお、加硫促進剤として、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤;TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤;並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
具体的には、ゴム組成物はゴム成分100質量部に対して硫黄を7.0質量部以下に配合することができる。特に、3.0〜7.0質量部の範囲、更に好ましくは4.0〜6.0質量部の範囲である。ゴム組成物はゴム成分100質量部に対して有機酸コバルト塩を1.0質量部以下に配合することができる。特に、0.05〜1.0質量部の範囲、更に好ましくは0.3〜0.8質量部の範囲である。上記コバルト有機酸塩としては、ナフテン酸コバルト、ロジン酸コバルト、或いは炭素数が5乃至20程度の直鎖状或いは分岐鎖のモノカルボン酸コバルト塩等を挙げることができる。
またゴム組成物に、上記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックが40質量部以上、更には40乃至100質量部、特に、50乃至100質量部配合させることが好ましい。カーボンブラックは、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができ、例えば、SRF、GPF、FER、HAF、ISAF等を挙げることができるが、中でもGPF、HAFが物性とコストのバランスの面から好ましい。
以上の如く構成されるゴム組成物にあっては、セルロース繊維の配合により、スラリーでの分散性が均一となり、分散剤の配合によって、ゴムへの親和性及び分散性が高まる。特にビニル基を含む変性セルロースナノ繊維の配合は分散性及びゴムへの親和性、補強性が高まり、補強性が一層向上することができる。
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
(実施例)
<セルロース繊維の変性処理および繊維複合ゴムの製造方法>
セルロース繊維のスラリー(平均繊維径100nm、平均繊維長45μm、固形分濃度:5質量%のものを使用)繊維1500gを、溶媒アセトン中で分散させ、イソシアネート−ビニル化合物としてカレンズMOI(昭和電工社製)を50g添加して、高速混合ホモジナイザー中で毎秒3000回転で10分間混合し、セルロース−イソシアネート混合物を得た。これを温度60℃で攪拌しながら反応させ、イソシアネート変性セルロースを得た。
天然ゴムラテックス(固形分濃度:60質量%)500gを混合し、高速混合ホモジナイザー中で毎秒3000回転で5分間混合した後、これをバットに展開し、温度100℃オーブン中にて乾燥固化させ、セルロース繊維複合天然ゴムを得た(繊維複合ゴム)。
繊維複合ゴムのゴム成分100質量部に対して、下記の表1に示す構成により、ラボ混練機により通常の混練を行い、得られた混合物を加圧プレス加硫し、厚さ2mmのゴムシートを得た。
<評価試験>
評価試験
ゴムシートを所定のダンベルを打ち抜いき、ASTM D412に準じた加硫ゴムの張り試験を行い、破断応力(300%モジュラス)と破断歪み(破壊強度)を測定した。測定値は、比較例1の値を100として、それぞれの実施例の値をそのインデックス表示としたものである。指数値が大きい程、弾性率及び破壊強度が大きいことを示す。
Figure 0005489521
表中の注1;旭カーボン社製のファーネスブラックHAF、注2;大内新興化学社製のノクセラーDM、注3;大内新興化学社製のノクセラーNS。
本発明のゴム組成物は、セルロース繊維からなる補強材により、その補強材のゴム成分への親和性、分散性及び補強性が高まり十分な耐久性及び剛性を発揮できる産業上の利用可能性の高いものである。

Claims (3)

  1. ゴム成分中に、セルロース繊維を含むゴム組成物において、該セルロース繊維をイソシアネート基とビニル基と有する化合物で該セルロース繊維の水酸基に該イソシアネート基を反応結合させ変性させて、ゴム成分中に該変性セルロース繊維をゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲で混合することを特徴とするゴム組成物。
  2. 上記セルロース繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲にあり、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲にあるセルロースナノ繊維である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 上記請求項1又は2の何れかの項に記載のゴム組成物の製造方法において、上記セルロース繊維を変性セルロース繊維とし、ゴムラテックスと、水に分散させた該変性セルロース繊維のスラリーとを混合した後、混合液を乾燥して水を除去して得ることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
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