JP5483793B2 - ビニルピロリドン系重合体溶液、及び、その製造方法 - Google Patents

ビニルピロリドン系重合体溶液、及び、その製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ビニルピロリドン系重合体溶液及びその製造方法に関する。より詳しくは、染料移行防止剤、化粧品等として好適に用いられるビニルピロリドン系重合体溶液及びその製造方法に関する。
ビニルピロリドン系重合体は、そのN−ビニル環状ラクタム構造に起因して、種々の特性を有することが知られており、洗濯用洗剤組成物、化粧品等の有用工業製品として注目されている。ビニルピロリドン系重合体を各種用途に用いる場合には、溶液として用いられることが多い。従来は、容積面での有利性から、一旦粉体としてから貯蔵や輸送を行い、使用時に溶媒に溶解させて溶液として使用していた。しかしながら、50重量%以上の高濃度溶液であれば、粉体と同等以上の容積面での有利性が得られる。この場合は、一旦粉体とする必要がないため、効率の点において望ましい。
一方、染料移行防止剤として用いることができるビニルピロリドン系重合体は、低分子量が好ましいことが知られている。このような低分子量のビニルピロリドン系重合体をはじめから溶液として用いる場合は、高濃度の低分子量ビニルピロリドン系重合体溶液を得る必要がある。一般に、ビニルピロリドン系重合体溶液を製造する方法としては、単量体であるN−ビニルピロリドンの重合開始剤として、過酸化水素が用いられているが、この場合、得られたポリビニルピロリドン(ビニルピロリドン系重合体)は、着色が生じたものとなっていた。
低分子量のビニルピロリドンの溶液を得る方法としては、例えば、ビニルピロリドンの水溶液に、水溶性有機過酸化物と亜硫酸塩とを添加して、ビニルピロリドンを重合させてビニルピロリドン重合体を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によると、残存するN−ビニルピロリドンを低減するためには、多くの開始剤と時間が必要であった。更に、この方法は、モノマーの一括重合であり、高濃度での重合を行った場合、反応による発熱の制御が難しく、安全性の問題がある。また、K値の低い(低分子量)タイプは還元剤として亜硫酸アンモニウムを数%用いており、残存したアンモニアによる臭気が大きいという問題もある。更に、粉末洗剤等の塩基性条件下で使用した場合には、その臭気がより顕著となる傾向がある。
また、HとC〜C−アルカノール、ヒドロキシルアミン塩及び硫黄を結合形で含有する水溶性化合物から選択された重合調節剤の存在下に重合し、N−ビニルピロリドンの低分子量ホモポリマーの高濃度水溶液を製造する方法が開示されている(特許文献2参照。)。しかしながら、Hを用いるため、着色が大きく、副生成物である2−ピロリドンの生成も多い。また全ての実施例の重合において、アンモニアを使用しており、粉末洗剤等の塩基性条件下で使用した場合には、残存したアンモニアによる臭気が大きくなることがある。
更に、ハイドロパーオキシドとロンガリット系化合物とからなるレドックス系開始剤を用いて重合を行い、高分子量のn−ビニルラクタムの重合方法も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、ロンガットを使用することにより、製品中にアルデヒドが残存するため、臭気・安全性の面で洗剤や化粧品には不適である。
このように、ビニルピロリドン系重合体の着色及び臭気を低減し、かつ、不純物である残存N−ビニルピロリドン及び副生成物である2−ピロリドンの濃度を低減した高濃度のビニルピロリドン系重合体を製造する点において、未だ改善の余地があった。
特開2002−69115号公報(第1−2頁) 特開平11−71414号公報(第1−2頁) 特開昭59−215302号公報(第1−2頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、不純物であるN−ビニルピロリドン及び2−ピロリドンの含有量を低減し、着色が少なく、塩基性条件下で使用しても臭気が少なく、染料移行防止効果の高い高濃度のビニルピロリドン系重合体溶液を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、N−ビニルピロリドンから得られ、ビニルピロリドン系重合体の濃度40〜60質量%の溶液について種々検討したところ、貯蔵や輸送の際に容積面において有利性を有することに着目し、ビニルピロリドン系重合体に対して、重合反応における未反応物であるN−ビニルピロリドンの濃度を100ppm以下とし、副生成物である2−ビニルピロリドンの濃度を1.0質量%以下とし、アンモニアの濃度を0.3質量%以下とし、ビニルピロリドン系重合体溶液の濃度40質量%水溶液としたときの色相は、100以下とすると、安全性が高く、低臭気、低着色、高濃度のビニルピロリドン系重合体が得られることから、洗剤添加物やヘアジェル等の化粧品として用いることができることを見いだした。更に、K値を28以下とするビニルピロリドン系重合体を染料移行防止剤として用いると、洗浄中における染料移行防止効果を発揮することも見いだした。このようなビニルピロリドン系重合体は、有機又は無機過酸化物及び亜硫酸塩と、N−ビニルピロリドンとを必須成分とする単量体成分を水系溶媒中に逐次添加して重合する工程を含むことにより製造することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、N−ビニルピロリドンから得られ、ビニルピロリドン系重合体の濃度40〜60質量%の溶液であって、上記ビニルピロリドン系重合体溶液は、亜硫酸塩を含有し、ビニルピロリドン系重合体に対して、未反応物であるN−ビニルピロリドンの濃度は100ppm以下であり、副生成物である2−ピロリドンの濃度は1.0質量%以下であり、アンモニアの濃度は0.3質量%以下であり、上記ビニルピロリドン系重合体溶液の濃度40質量%水溶液としたときの色相は、100以下であるビニルピロリドン系重合体溶液である。
以下に本発明を詳述する。
本発明のビニルピロリドン系重合体溶液におけるビニルピロリドン系重合体は、N−ビニルピロリドンから得られるビニルピロリドン単位を有する重合体である。
上記ビニルピロリドン単位を有する重合体(以下、ビニルピロリドン系重合体ともいう)としては、例えば、ポリビニルピロリドン又はN−ビニルピロリドンを必須とし必要に応じてその他の単量体を共重合して得られるコポリマー(共重合体)等が好適である。なお、上記ビニルピロリドン単位を有する重合体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体において、例えば、N−ビニルピロリドンと共重合させる単量体成分としては、N−ビニルピロリドンと共重合可能なものであれば、特に限定されず、例えば、(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(2)(メタ)アクリル酸アミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;(3)(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体;(4)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニルアミド類;(5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体;(6)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;(7)プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;(8)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;(9)スチレン及びその誘導体;(10)ビニルスルホン酸及びその誘導体;(11)エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(12)エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;等の1種又は2種以上を使用することができる。これらの単量体のうち、N−ビニルピロリドンとの共重合性の点からは、(1)〜(7)が特に好適である。
本発明のビニルピロリドン系重合体は、未反応物であるN−ビニルピロリドンをビニルピロリドン系重合体に対して濃度100ppm以下含有するものである。好ましくは、50ppm以下である。より好ましくは、30ppm以下である。更に好ましくは、10ppm以下である。最も好ましくは、0ppmである。
本発明のビニルピロリドン系重合体は、副生成物である2−ピロリドンをビニルピロリドン系重合体に対して、1.0質量%以下含有するものである。2−ピロリドンの濃度が1.0質量%を超えると、臭気が大きくなるおそれがある。好ましくは、0.8質量%以下である。より好ましくは、0.6質量%以下である。更に好ましくは、0.3質量%以下である。
本発明のビニルピロリドン系重合体のアンモニア含有量は、重合体の固形分に対して0.3質量%以下である。0.3質量%を超えると、洗剤等の塩基性条件で使用した際に、アンモニア臭気が問題となることがある。好ましくは、0.2質量%以下である。より好ましくは0.1質量%以下である。より好ましくは、0.05質量%以下である。最も好ましくは、0質量%である。
上記亜硫酸塩としては、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。これらの1種、又は、2種以上を用いてもよい。好ましくは、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムである。
上記亜硫酸塩として亜硫酸アンモニウムを用いる場合は、ビニルピロリドン系重合体がアンモニアを含有することがある。この場合、重合後に蒸留又はイオン交換処理等によって、アンモニアを低減させることが好ましい。
本発明のビニルピロリドン系重合体は、アンモニア臭気を低減することができるため、洗剤やヘアジェル等の化粧品に好適に使用することができる。
本発明におけるビニルピロリドン系重合体は、K値60以下であるであることが好ましい。K値40以下がより好ましく、K値28以下が更に好ましく、K値18以下が最も好ましい。K値60を超えると、40〜60質量%という高濃度では、粘度が高すぎて取扱いが困難である。K値が40以下であると、流動性が高く取扱いが容易になる。好ましくは、28以下である。K値が28以下のビニルピロリドン系重合体を衣類等の洗濯時に用いると、優れた染料移行防止効果を発揮することが可能となる。K値が28を超えると、優れた染料移行防止効果を発揮することができないおそれがある。好ましくは、25以下であり、より好ましくは22以下であり、更に好ましくは18以下である。また、K値の下限としては、10以上が好ましい。K値が10未満であると、ビニルピロリドン系重合体と染料の相互作用が弱くなり、優れた染料移行防止効果を発揮することができないおそれがある。より好ましくは、12以上である。
なお、K値は、重合体の分子量を示す指標となるものであり、例えば、以下のように求めることができる。
<K値の求め方>
重合体を水に1質量%の濃度で溶解させ、その溶液の粘度を25℃において毛細管粘度計によって測定し、この測定値を用いて次のフィケンチャー式;
(logηrel)/C=〔(75Ko)/(1+1.5KoC)〕+Ko
K=1000Ko
(但し、Cは、溶液100ml中の重合体のg数を表す。ηrelは、溶媒に対する溶液の粘度を表す。)から計算した。なお、得られる数値が高いほど、分子量が高いことを示す。
上記重合体に含まれるアンモニアの濃度としては、重合体に対して0.3質量%以下であることが適当である。0.3質量%を超えると、例えば粉末洗剤やスティック糊へ配合する等、塩基性の条件で使用した場合、アンモニア臭が強くなるおそれがある。アンモニアの濃度は0.2質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、アンモニアが含まれていないことが最も好ましい。
上記重合体が含有するビニルピロリドン単位としては、重合体を構成する全単量体成分100質量%中、30質量%以上であることが適当である。これにより、本発明のビニルピロリドン系重合体溶液を染料移行防止剤として用いた場合、染料を分散させる能力の高いビニルピロリドン単位を有する重合体の作用効果を充分に発揮することができ、高い染料移行防止効果を発揮することができる。30質量%未満であると、染料移行防止効果が充分に発揮されず、用途上特にその有用性を更に高めることができないおそれがある。より好ましくは、50質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上であり、最も好ましくは、100質量%である。
上記ビニルピロリドン系重合体溶液の濃度40質量%水溶液としたときの色相は、100以下である。好ましくは50以下であり、より好ましくは、20以下である。これにより、本発明のビニルピロリドン系重合体を着色が少ないことが要求される洗剤、ヘアジェル等の化粧品、スティック糊等に好適に用いることができる。
上記色相(APHA)は、JIS−K3331に準じて測定することが好ましい。なお、得られる数値が低いほど、ビニルピロリドン系重合体溶液の着色が小さいことを示す。本発明のビニルピロリドン系重合体の濃度が40質量%であるときは、そのまま測定し、40質量%を超えるときは、40質量%となるように希釈してから、測定する。
本発明のビニルピロリドン系重合体溶液を洗濯における染料移行防止剤として用いた場合の白布への染料移行率は、25%以下であることが好適であり、これにより、優れた染料移行防止効果を発揮することが可能となる。染料移行率が25%より大きいと、染料移行防止効果が充分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、22%以下であり、更に好ましくは、20%以下であり、最も好ましくは、18%以下である。
なお、ここで、上記白布への染料移行率は、洗浄工程の際の染料移行防止効果を示す指標となるものであり、以下のように求めることができる。
<染料移行率の求め方>
(1)8cm×8cmの綿布(Testfabrics,Inc社 Style#423 Bleached,Mercerized Cotton Twill)のL、a、b値を色差計(日本電色社製 NR−3000)により測定する(L、a、bとする)。
(2)ターゴットメーターを25℃にセットし、塩化カルシウム2水和物4.8gをイオン交換水15kgに溶解させることにより作製した硬水800g、1質量%の直鎖アルキベンゼンスルホン酸Na水溶液30.8g、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液67.7g、ゼオライト1.23g、試料ポリマーの0.35質量%水溶液25.1g、0.1質量%染料(DirectBlue71)水溶液8.8gを、ポットに入れ、75rpmで1分間攪拌する。
(3)ついで綿布1枚を入れ、75rpmで30分間攪拌する。
(4)ピンセットで綿布を取りだし、3kgのイオン交換水で綿布をすすぎ、80℃の熱風乾燥機で30分間乾燥させる。
(5)得られた綿布のL、a、b値を色差計で測定する(L、a、bとする)。
(6)(1)と(5)において測定した綿布のL、a、b値から、JIS8730に準じて、以下の式でΔE値を算出する。
ΔE=〔(L−L+(a−a+(b−b1/2
(7)上記(1)〜(6)と同様にして、ポリマーを加えない空試験を実施し、ΔE値を測定する。
(8)以上のようにして得られるΔEから、次式;
染料移行率(%)=(ポリマー添加試験でのΔE値)/(空試験でのΔE値)*100
により、染料移行率を求める。なお、得られる数値が低いほど、染料移行防止効果が高いこと示す。
本発明のビニルピロリドン系共重合体は、重合体の固形分に対して0.01質量%以上の硫黄を含有することが好ましい。これは、亜硫酸塩による連鎖移動反応によって、重合体末端にスルホン酸基が存在することを示し、例えば、洗剤添加物として使用した場合に、洗剤に含まれる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとの相互作用によって、重合体が凝集することを低減する効果がある。硫黄含有量は、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上が最も好ましい。
上記硫黄含有量については、以下の方法により測定することが好ましい。
重合体中の硫黄含有量測定方法
重合により得られた重合体溶液を、透析膜(SPECTRUM LABORATORIES INC製 Spectra/Por Membrane MWCO:1000 分画分子量1000)40cm(長さ)の中に20g入れ密閉し、これを2Lビーカーに入った2000gの水に浸し、スターラーで攪拌した。12時間後、ビーカーの水を入れ替え、更に12時間攪拌する操作を2回繰り返した。その後、透析膜を取り出し、透析膜の外側を水でよく洗い流した後、透析膜の中身を取り出した。この透析液中の硫黄量を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって測定し、透析液の固形分から重合体中の硫黄含有量を定量した。
本発明のビニルピロリドン系重合体溶液は、40〜60質量%の高濃度溶液であることから、溶液としての使用時に再度溶解させる必要がなく、しかも貯蔵や輸送の際に容積面で粉体と同等かそれ以上の有利性を得ることができる。また、不純物であるN−ビニルピロリドン及び2−ピロリドンの含有量を低減し着色が少なく、アンモニア含有量も低減していることから、洗剤やヘアジェル等の化粧品やスティック糊に好適に用いることができる。
他の用途としては、各種無機物や有機物の分散剤、凝集剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋性組成物等が挙げられ、より具体的には、泥土分散剤、セメント材料分散剤、セメント材料用増粘剤、洗剤用ビルダー、重金属補足剤、金属表面処理剤、染色助剤、染料定着剤、泡安定剤、乳化安定剤、インク染料分散剤、水性インク安定剤、塗料用顔料分散剤、塗料用シックナー、感圧接着剤、紙用接着剤、医療用接着剤、貼付剤用粘着剤、化粧パック用粘着剤、樹脂用フィラー分散剤、記録紙用コーティング剤、インクジェット紙用表面処理剤、感光性樹脂用分散剤、帯電防止剤、保湿剤、吸水性樹脂用原料、肥料用バインダー、高分子架橋剤、樹脂相溶化剤、写真薬添加剤、化粧用調剤添加剤、整髪料助剤、ヘアスプレー添加剤、サンスクリーン組成物添加剤等が挙げられる。
本発明はまた、ビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法であって、上記製造方法は、有機又は無機過酸化物及び亜硫酸塩と、N−ビニルピロリドンとを必須成分とする単量体成分を水系溶媒中に逐次添加して重合する工程を含むビニルピロリドン系重合体の製造方法でもある。
本発明の製造方法により製造したビニルピロリドン系重合体溶液は、上記ビニルピロリドン系重合体溶液でもある。
以下に詳述する。
上記単量体成分としては、N−ビニルピロリドンを必須とするものであれば、特に限定されず、他の単量体成分を含有するものであってもよい。
上記他の単量体成分としては、上述したN−ビニルピロリドンと共重合させる単量体成分等が挙げられる。
上記単量体成分に占めるN−ビニルピロリドンの割合は、特に限定されないが、単量体成分に対して30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%が更に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。単量体成分に占めるN−ビニルピロリドンの割合が30質量%未満であると、得られる重合体溶液がN−ビニルピロリドンに由来する種々の特性を充分に発揮し得えないものとなるおそれがある。
上記単量体成分としては、上述した単量体成分の例示物質等が挙げられる。
上記単量体成分の使用量は、重合反応によって生じるビニルピロリドン系重合体の濃度が40〜60質量%となるように、適宜設定すればよい。
上記過酸化物及び亜硫酸塩は、本発明の製造方法における重合の開始剤として用いられることが好ましい。
上記有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルバーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。好ましくは、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイドであり、より好ましくは、t−ブチルハイドロパーオキサイドである。
上記有機過酸化物の量は、単量体成分に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。0.1〜3質量%が更に好ましい。
上記無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
上記無機過酸化物の量は、単量体成分に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。0.1〜3質量%が更に好ましい。
上記亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記亜硫酸塩の量は、単量体成分に対して、0.1〜12質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。1〜8質量%が更に好ましい。
本発明のビニルピロリドン系重合体の製造方法において、重合反応は、触媒として、重金属化合物を用いることができる。
重金属化合物としては、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム等が挙げられる。重金属化合物は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。重金属化合物は、重合装置を簡便にするため初期に水と混合しておいて特に問題ないが、銅触媒をその他の原料と同時に滴下してもかまわない。重金属化合物をその他の原料と同時に滴下しても得られる物の物性に差はない。使用量は重金属イオンとして、単量体成分に対して0.01〜10ppmが好ましく、0.03〜1ppmがより好ましく、0.05〜0.5ppmが更に好ましい。
本発明のビニルピロリドン系重合体の製造方法において、無機過酸化物及び重金属化合物を用いる場合には、アンモニアを用いることが好ましい。アンモニアの使用量は、単量体成分に対して0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましく、0.05〜0.3質量%であることが最も好ましい。アンモニアは、上記無機過酸化物、亜硫酸塩又は重金属化合物のアンモニウム塩の形で使用されることが好ましい。アンモニアを多く使用した場合は、重合後の蒸留又はイオン交換処理等でアンモニアを低減させることが好ましい。
上記水系溶媒としては、水を単独で用いることが好ましいが、水のほかに、適宜有機溶媒を含有させることもできる。水と含有させることのできる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;グリコールエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエーテル類;ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピリジン、モルホリン、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等のアミン類;等が挙げられる。これら有機溶媒は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。なお、これら有機溶媒をも含有させる場合には、これら有機溶媒の含有量が水系溶媒中の30質量%以下となるようにすることが好ましい。
上記水系溶媒の使用量は、重合反応によって生じるビニルピロリドン系重合体の濃度が40〜60質量%となるように、適宜設定すればよい。
本発明は、前述したようにビニルピロリドン系重合体の濃度が40〜60質量%である高濃度溶液を得ようとするものであるので、各原料を一括して添加するようにすると、反応により多大な発熱が生じ、安全性を損なうこととなるが、本発明の製造方法においては、逐次添加して反応を進行させることにより、反応により生じる発熱の問題を回避し、安全な製造を可能とするのである。また、逐次添加では、重合反応中の単量体に対する開始剤量を適切な範囲に保つことができるため、残存単量体の低減が容易となる。具体的には、逐次添加とは、連続的な添加(例えば、一定時間をかけて滴下する態様)であってもよいし、断続的な添加(例えば、各原料(単量体成分、有機過酸化物、亜硫酸塩)を複数回に分けて投入する態様)であってもよいし、両者を組み合わせた添加であってもよい。なお、単量体成分と有機過酸化物及び亜硫酸塩は、各々別々に逐次添加することが望ましい。また単量体成分の逐次添加終了後も過酸化物及び亜硫酸塩の逐次添加を続けることが、残存単量体を低減させる上で望ましい。
本発明のビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法においては、重合液のpHを5〜11に制御して行うことが重要である。pHが低すぎると、N−ビニルピロリドンの分解がおこり、2−ピロリドンが多量に生成する傾向があり、一方、pHが高すぎると、開始剤効率が悪くなり、残存N−ビニルピロリドン量が多くなる、分子量が増大する等の問題が生じる傾向がある。pHは、6〜10がより好ましい。この重合液のpHの制御は、例えば、上記亜硫酸ナトリウムと、亜硫酸水素ナトリウムを併用することで達成できる。
上記重合反応においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、連鎖移動剤、助触媒、pH調節剤、緩衝剤等を用いることもできる。また、上記重合反応において、もしくは上記重合反応ののちに、例えば、酸化防止剤、加工安定剤、可塑剤、分散剤、充填剤、老化防止剤、顔料、硬化剤等の得られた重合溶液の物性や性能を向上させるための各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有させることもできる。
本発明の製造方法により製造したビニルピロリドン系重合体のK値は、60以下であることが好ましい。より好ましくは、40以下である。更に好ましくは、28以下である。このように、K値を28以下とすることにより、ビニルピロリドン系重合体を洗浄剤組成物として用いた場合に、優れた染料移行防止効果を発揮することができる。K値が28を超えると、優れた染料移行防止効果を発揮することができないおそれがある。好ましくは、25以下であり、より好ましくは22以下であり、更に好ましくは18以下である。また、K値の下限としては、10以上が好ましい。K値が10未満であると、ビニルラクタム重合体と染料の相互作用が弱くなり、優れた染料移行防止効果を発揮することができないおそれがある。より好ましくは、12以上である。また、本発明の製造方法によりビニルピロリドン系重合体を製造すると、不純物の含有量を低減し、安全性が高く、着色が少なく、アンモニア量の少ない40〜60質量%のビニルピロリドン系重合体溶液を従来の重合開始剤を用いて製造するよりも重合時間を短縮して、製造することができる。
本発明の製造方法によりビニルピロリドン系重合体を製造すると、残存NVP及び2−ピロリドンの含有量を低減することにより、安全性が高く、着色が少なく、臭気がなく、染料移行防止効果が高い40〜60質量%のビニルピロリドン系重合体溶液を製造することができる。本発明の製造方法により得られたビニルラクタム重合体は、ヘアジェル等の化粧品や染料移行防止剤として好適に用いることができる。
上記製造方法により製造したビニルピロリドン系重合体も、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
本発明のビニルピロリドン系重合体溶液は、上述の構成よりなり、着色が少なく、塩基性条件下で使用しても臭気が少なく、高い染料移行防止効果を得ることができるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例1
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水82.5部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を80℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン135部と0.016質量%硫酸銅水溶液0.43部からなるモノマー溶液、3質量%過硫酸アンモニウム水溶液36部、及び亜硫酸ナトリウム3.0部と亜硫酸水素ナトリウム3.0部を水23.8部に溶解させた水溶液をそれぞれ連続的に3時間かけて滴下した(逐次添加)。更に3質量%過硫酸アンモニウム水溶液9部、及び亜硫酸ナトリウム0.7部と亜硫酸水素ナトリウム0.7部を水5.9部に溶解させた水溶液をそれぞれ1時間滴下した(逐次添加)。更に30分間加熱攪拌を行い、ポリマー溶液を得た。
実施例2
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水84.4部、硫酸鉄(III)0.0002部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を80℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン135部、6質量%過硫酸アンモニウム水溶液32.4部、及び亜硫酸ナトリウム3.2部と亜硫酸水素ナトリウム3.2部を水25.9部に溶解させた水溶液をそれぞれ連続的に3時間かけて滴下した(逐次添加)。更に6質量%過硫酸アンモニウム水溶液8.1部、及び亜硫酸ナトリウム0.81部と亜硫酸水素ナトリウム0.81部を水6.5部に溶解させた水溶液をそれぞれ1時間滴下した(逐次添加)。更に30分間加熱攪拌を行い、ポリマー溶液を得た。
実施例3
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水89部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を80℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン150部、3質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(日本油脂社製「パーブチルH−69」を水に溶解させて調製)20部、亜硫酸ナトリウム1.9部と亜硫酸水素ナトリウム5.6部とをイオン交換水22.5部に溶解させた溶液をそれぞれ連続的に3時間かけて滴下した(逐次添加)。更に3質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド6.5部、及び亜硫酸ナトリウム0.49部と亜硫酸水素ナトリウム1.47部とをイオン交換水46.4部に溶解させた溶液をそれぞれ連続的に1.5時間かけて滴下した(逐次添加)。更に30分間加熱攪拌を続け、ポリマー溶液を得た。
参考例
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水111部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を80℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン90部、2質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド溶液(日本油脂社製「パーブチルH−69」を水に溶解させて調製)22.5部、亜硫酸ナトリウム1.13部と亜硫酸水素ナトリウム3.38部とをイオン交換水40.5部に溶解させた溶液をそれぞれ連続的に1時間かけて滴下した(逐次添加)。更に、2質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド22.5部、及び、亜硫酸ナトリウム0.23部と亜硫酸水素ナトリウム0.68部とをイオン交換水8.1部に溶解させた溶液をそれぞれ1時間滴下し(逐次添加)、ポリマー溶液を得た。
比較例1
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水384部、硫酸銅0.00023部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を60℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン450部、25%アンモニア水3.6部、35%過酸化水素水57部を、別々にそれぞれ3時間かけて滴下した(逐次添加)。滴下終了後、80℃で5時間保持した後、35%過酸化水素水4.5部を5回に均等に分けて1時間間隔で添加し、5回目の添加後、更に80℃で1時間保持してポリマー水溶液を得た。
比較例2
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、水79部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を100℃とした後、攪拌しながら、N−ビニルピロリドン150部と2−メルカプトエタノール3部と水7.9部からなるモノマー溶液、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬社製「V−601」)3部と2−プロパノール57部からなる開始剤溶液を、別々にそれぞれ3時間かけて滴下した(逐次添加)。滴下終了後、85℃で1時間保持した後、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.6部と2−プロパノール11.4部を2回に均等に分けて1時間間隔で添加し、2回目の添加後、更に85℃で1時間保持してポリマー水溶液を得た。
比較例3
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、イオン交換水179.5部とN−ビニルピロリドン90部を加え(単量体一括投入)、窒素を導入して窒素雰囲気とした。攪拌しながら、室温下で、20%亜硫酸アンモニウム水溶液26部、10質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液4.5部を投入し(一括添加)、攪拌を3時間続けた。その後、80℃まで昇温し、更に、加熱攪拌を4.5時間続ける間に、20%亜硫酸アンモニウム水溶液5.2部と10質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液9部を2回に分けて投入し、ポリマー溶液を得た。
比較例4
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、イオン交換水183部とN−ビニルピロリドン90部を加え(単量体一括投入)、窒素を導入して窒素雰囲気とした。攪拌しながら35℃とし、亜硫酸ナトリウム1.13部と亜硫酸水素ナトリウム3.38部とをイオン交換水18部に溶解させた溶液と、10質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液4.5部を投入した(一括添加)。その後、昇温を開始し80℃で加熱攪拌を1時間続けた。更に、亜硫酸ナトリウム0.23部と亜硫酸水素ナトリウム0.68部とをイオン交換水3.6部に溶解させた溶液と、10質量%t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液4.5部を投入し、1時間加熱攪拌を行い、ポリマー溶液を得た。
結果を表1及び表2に示す。
Figure 0005483793
Figure 0005483793
表2の結果により、一括添加重合では、残存NVPを充分減らすことは困難であるが、逐次添加することによって、非常に効率的に減らすことができることがわかった。

Claims (5)

  1. ビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法であって、
    該製造方法は、有機又は無機過酸化物及び亜硫酸塩と、N−ビニルピロリドンとを必須成分とする単量体成分を水系溶媒中に逐次添加して重合する工程を含み、
    該ビニルピロリドン系重合体溶液における、重合反応によって生じるビニルピロリドン系重合体の濃度は、40〜60質量%であり、
    該有機過酸化物は、ハイドロパーオキサイドであることを特徴とするビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法。
  2. 前記有機又は無機過酸化物及び亜硫酸塩は、重合の開始剤として用いられることを特徴とする請求項に記載のビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法。
  3. 前記亜硫酸塩は、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムであることを特徴とする請求項又はに記載のビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法。
  4. 前記重合工程は、触媒として重金属化合物が用いられることを特徴とする請求項のいずれかに記載のビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法。
  5. 前記製造方法は、無機過酸化物及びアンモニアが用いられることを特徴とする請求項に記載のビニルピロリドン系重合体溶液の製造方法。
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