本発明は、光透過性電磁波シールドフィルムの基材としてポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムは、コストが低く、透明性が高く、耐熱性、耐薬品性、及び強度に優れており、本発明の光透過性電磁波シールドフィルムの基材として好適である。しかしながら、ポリエステルフィルムは、気相成膜法で形成された金属層やそれから加工された金属パターン層との密着性に劣るという課題があり、特に、金属層をメッシュ状などの金属パターン層に加工するときのフォトリソグラフィー工程、エッチング工程、あるいは黒化処理工程等のウェットプロセス(処理液を用いた湿式処理工程)において、金属層が剥離するという問題が生じた。
そこで、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、側鎖にカルボン酸基を有するポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤を主たる構成成分とする積層膜をポリエステルフィルムに予め設けておくことによって、上記課題が解決すること見いだした。
(ポリエステルフィルム)
本発明において、基材として用いられるポリエステルフィルムのポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称である。係るポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4−ジカルボキシレート等が挙げられる。これらの中でも、品質、経済性など総合的に判断するとエチレンテレフタレートを含むポリエステルが特に好ましい。
本発明に係るポリエステルフィルムは、更に、公知の各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などが本発明の効果を阻害しない程度に含有することができる。
特に、本発明の光透過性電磁波シールドフィルムをプラズマディスプレイ等のディスプレイ用フィルターに適用する場合には、色調調整のための可視光吸収剤(例えば有機色素)や近赤外線遮蔽のための近赤外線吸収剤(例えば有機色素や有機顔料)を紫外線から保護するために、ポリエステルフィルムに紫外線遮蔽機能を付与するのが好ましく、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmでの紫外線カット性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は、ポリエステルフィルム中に0.5〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましく、1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
上述したポリエステルの極限粘度(25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、更に好ましくは0.5〜0.8dl/gの範囲にあるものが本発明の内容に好適である。
上記ポリエステルを使用したポリエステルフイルムは、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向及び幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後熱処理を施し、結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
ポリエステルフィルムの厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であるが、コスト及び光透過性電磁波シールドフィルムの剛性を確保するという観点から70〜250μmの範囲が好ましく、特に80〜200μmの範囲が好ましい。
(積層膜)
本発明において、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられる積層膜は、側鎖にカルボン酸基を有するポリエステル樹脂(以降、本発明のポリエステル樹脂と称す)とメラミン系架橋剤を主たる構成成分とする。ここで、本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤を主たる構成成分とするとは、本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤の合計量が、積層膜を構成する全成分100質量%に対して50質量%以上であることを意味する。本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤の合計量は、積層膜の全成分100質量%に対して、80質量%以上が好ましく、更に90質量%以上が好ましい。上記合計量の上限は、100質量%である。
本発明のポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するものであり、かつ、側鎖にカルボン酸基(カルボン酸塩基を含む)を有するものである。このような本発明のポリエステル樹脂は、例えば、公知のカルボン酸成分とグリコール成分から重縮合して得られるポリエステル樹脂に、3価以上の多価カルボン酸を共重合することによって得ることができる。
上記のカルボン酸成分とグリコール成分から重縮合して得られる本発明のポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。これらの芳香族ジカルボン酸は、積層膜の強度や耐熱性の点で、全カルボン酸成分の30モル%以上、好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上が望ましい。上限は100モル%である。
脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸など及びそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
上記本発明のポリエステル樹脂のグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどを挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂を得るために用いられる3価以上の多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4−メチルシクロヘキセン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のポリエステル樹脂において、上記の3価以上の多価カルボン酸を含む全カルボン酸成分100モル%に対して、上記3価以上の多価カルボン酸は5〜60モル%の範囲が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂としては、カルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールから選ばれる共重合体が挙げられる。
また、本発明のポリエステル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。
本発明に係るポリエステル樹脂は、そのガラス転移点は、0〜40℃が好ましく、5〜35℃がより好ましく、更に10〜30℃が好ましい。ガラス転移点が0〜40℃のポリエステル樹脂を用いることによって、ポリエステルフィルム及び金属層との密着性が更に向上する。
本発明のポリエステル樹脂は、実質的にスルホン酸基(スルホン酸塩基を含む)は含有しないことが好ましい。スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は親水性が強くなり、本発明が目的とする密着性改良には寄与せず、むしろ密着性を低下させる方向に作用する。上記のスルホン酸基のポリエステル樹脂への導入は、例えば、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等のスルホン酸基を有するカルボン酸をカルボン酸成分として用いることによって可能であるが、本発明のポリエステル樹脂は、上記スルホン酸基を有するカルボン酸を全く含まないことが好ましく、また、上記スルホン酸基を有するカルボン酸を含む場合であっても、本発明のポリエステル樹脂のカルボン酸成分100モル%に対して5モル%以下がより好ましく、特に2モル%以下が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は、従来から公知の製造技術によって製造することができる。例えば、特開昭54−46294号公報、特開昭60−209073号公報、特開昭62−240318号公報、特開昭53−26828号公報、特開昭53−26829号公報、特開昭53−98336号公報、特開昭56−116718号公報、特開昭61−124684号公報、特開昭62−240318号公報などに記載の方法で製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
本発明の積層膜の構成成分であるメラミン系架橋剤は、従来から公知のものを用いることができるが、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、またはこれらの混合物等が挙げられる。また、メラミン系架橋剤としては、単量体、2量体以上の多量体からなる縮合物、あるいはこれらの混合物などを用いることができる。ここで、上記のエーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
メラミン系架橋剤中の官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するものであり、官能基を有するメラミン樹脂としては、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などがある。これらの中でも、イミノ基型メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂が好ましく用いられる。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するために、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。
本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤は任意の比率で混合してもよいが、本発明の効果をより顕著に発現させるには以下の比率で混合するのが好ましい。本発明のポリエステル樹脂100質量%に対して、メラミン系架橋剤を0.5〜40質量%用いるのが好ましく、メラミン架橋剤を1〜30質量%用いるのがより好ましく、更にメラミン架橋剤を2〜20質量%用いるのが好ましい。上記の本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤の混合比率を採用することによって、ポリエステルフィルムと金属層(金属パターン層)の密着性が更に改良され、特にウェットプロセス(処理液による湿式処理)における密着性に寄与する。
また、積層膜中には本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の樹脂、例えば本発明以外のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などを配合してもよい。
更に、積層膜中には本発明の効果を阻害しない範囲内で公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などを配合してもよい。
特に本発明の塗剤中に無機粒子を添加配合し二軸延伸したものは、易滑性が向上するので更に好ましい。
添加する無機粒子の代表例としては、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を挙げることができる。無機粒子は平均粒径0.01μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.08〜2μmであり、塗剤中の固形分に対する配合比は特に限定されないが、重量比で0.05〜8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部である。
本発明の積層膜を設けるのに好ましい方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程中に本発明のポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤を含有する積層膜形成用塗剤を塗布し、基材フィルムと共に延伸する方法が最も好適である。例えば溶融押し出しされた結晶配向前のポリエステルフイルムを長手方向に2.5〜5倍程度延伸し、塗布する面にコロナ放電処理を施し、連続的にその処理面に塗剤を塗布する。塗布されたフィルムは段階的に加熱されたゾーンを通過しつつ乾燥され、幅方向に2.5〜5倍程度延伸される。さらに連続的に150〜250℃の加熱ゾーンに導かれ結晶配向を完了させる方法によって得られる。この場合に用いる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
このような方法によって設けられた積層膜は、その上に形成される金属層との密着性に優れると同時に、基材であるポリエステルフィルムとの密着性に優れる。
本発明に係る積層膜の厚みは、高い密着性を得るという観点から、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.02〜0.5μmの範囲がより好ましく、特に0.03〜0.3μmの範囲が好ましい。
積層膜のポリエステルフィルムへの塗布の方法は公知の塗布方法、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
次に、本発明の積層膜を有するポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称す)を基材フィルムとした例について説明するが、これに限定されるものではない。
PETペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出し、冷却固化せしめて未延伸PETシートを作製する。このシートを70〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5倍に延伸して一軸配向PETフィルムを得る。このフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、その処理面に所定の濃度に調製された本発明の積層膜用水系塗剤を塗布する。塗布後、フィルム端部をクリップで把持して70〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥した後、幅方向に2.5〜5倍に延伸する。引き続き160〜250℃の熱処理ゾーンに導き、1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。この場合、用いる塗布液は環境汚染や防爆性の点で水系が好ましい。
尚、上記例において、積層膜が設けられるポリエステルフィルムにも、本発明の積層膜の主構成成分であるメラミン系架橋剤及びポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有せしめることができ、これによって、積層膜とポリエステルフィルとの接着性や積層ポリエステルフィルムの易滑性が向上するという効果がある。ポリエステルフィルムに、上記メラミン系樹脂やポリエステル樹脂を含有させる場合の添加量は、易接着性や易滑性の観点から、5ppm以上20質量%未満が好ましい。上記のポリエステルフィルムにメラミン系架橋剤やポリエステル樹脂を含有させる方法の1つとして、ポリエステルフィルムに本発明の積層膜が形成された積層ポリエステルフィルムを再生ペレットとして使用する方法を用いてもよい。
(金属パターン層)
本発明に係る金属パターン層は、高い導電性を有し、本発明に係る光透過性電磁波シールドフィルムをプラズマディスプレイ等の電磁波を発生する表示装置に適用するときは、電磁波を遮蔽する役目をする。金属パターン層は、電磁波を有効に遮蔽するという観点から、その表面抵抗値は、1Ω/□以下が好ましく、0.5Ω/□以下が好ましく、0.3Ω/□以下が特に好ましい。表面抵抗値としては小さな値程好ましいものの、下限の表面抵抗値は0.01Ω/□程度である。ここで、表面抵抗値は、JISK 7194に準拠した測定装置を用いて測定することができる。測定装置としては、例えば、三菱化学(株)製のLoresta-EP(MCP−T360)を用いることができる。
金属パターン層のパターン形状は、通常はメッシュパターンである。メッシュパターンとしては、例えば、正方形、長方形、菱形等からなる格子状メッシュパターン、三角形、5角形以上の多角形からなるメッシュパターン、円形、楕円形からなるメッシュパターン、前記の複合形状からなるメッシュパターン、及びランダムメッシュパターンが挙げられる。これらの中でも、パターン形状の生産性や製品管理の容易性から格子状メッシュパターンが好ましく、特に正方形からなる格子状メッシュパターンが好ましい。
本発明の金属パターン層は、気相製膜法で形成された、比較的厚みの小さい(1〜4μm)金属層が、フォトリソグラフィー法、エッチング法等を利用して、パターン形状に加工されたものであり、従来から一般的に知られている、厚みが10μm程度の銅箔を用いてパターン形状に加工したものに比べて、パターンの線幅や線ピッチが小さい、高精細なメッシュパターンが精度よく製造することができるという利点がある。本発明に係る金属パターン層の厚みは、ポリエステルフィルム上に気相製膜法で形成された金属層、即ち、パターン形状に加工する前の金属層の厚みと同程度であり、従って、金属パターン層の厚みとしては、1〜4μmの範囲が好ましく、1〜3.5μmの範囲がより好ましく、特に1.5〜3μmの範囲が好ましい。
上記したような高精細なメッシュパターンを採用することによって、ディスプレイパネルに装着したときに発生するモアレを効果的に抑制し、また光透過性電磁波シールドフィルムの透過率の低下を抑制することができる。上記観点から、本発明に係る金属パターン層の線幅(W)は、10μm未満が好ましく、8μm以下がより好ましく、特に7μm以下が好ましい。線幅の下限は、生産工程における断線を回避するという観点や低い表面抵抗値を確保するという観点から、3μm以上が好ましい。
線ピッチ(P)は、モアレ抑制の観点から、160μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、特に130μm以下が好ましい。線ピッチの下限は、光透過性電磁波シールドフィルムの高い透過率を確保するという観点から、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましい。
金属パターン層の開口率は、電磁波シールド性、および光透過性を両立する点から、以下の開口率であることが好ましい。ここで開口率とは、「少なくとも片面に積層膜を有するポリエステルフィルムの積層膜上において、金属パターン層が形成されている部分の面積と金属パターン層が形成されていない部分の面積の合計」に対する、「金属パターン層が形成されていない部分の面積」の割合のことである。この開口率が75%〜95%であることが好ましい。開口率が75%以上であると、十分な光透過性が得られる。その結果、光透過性電磁波シールドフィルムをディスプレイの前面に設置しても、ディスプレイの輝度低下が少ない。一方、開口率が95%以下であれば、良好な光透過性が得られるとともに導電性部分の割合も不足なく、十分な電磁波シールド性を得ることができる。
(金属層)
本発明において、金属パターン層を得るための金属層は、ポリエステルフィルムの積層膜上に、気相製膜法によって形成される。上記の気相製膜法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等が挙げられ、これらの1つの方法あるいは2以上の方法を組み合わせて用いることができる。本発明では、スパッタリング、イオンプレーティング、及び真空蒸着が好ましく、特にスパッタリング及び真空蒸着が好ましい。
本発明に係る金属層は、ポリエステルフィルムの積層膜上に直接に形成するのが好ましい。従来から一般的に知られている、銅箔等の金属箔を、接着剤層を介してポリエステルフィルムにラミネートする方法は、金属パターン層の形成後に露出した接着剤層の表面は銅箔の粗化面が転写されており、その接着剤層の粗面形状により光透過性が低下するという問題があるが、上記した本発明の金属層の形成方法によって上記の問題は解消される。
本発明にかかる金属層は、高い導電性を有する層であり、後述する方法で、ポリエステルフィルムの積層膜上の金属層をパターン状の金属パターン層に加工することにより、電磁波シールド性とディスプレイに設置した際に必要な光透過性を両立することができる。
金属層を形成するための金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタンなどの金属の内、1種または2種以上を組み合わせた合金あるいは多層のものを使用できる。これらの中でも、良好な電磁波シールド性が得られ、メッシュパターン加工が容易で、かつ低価格であるなどの点から、銅が好ましく用いられる。
金属層として銅を用いる場合は、ポリエステルフィルムの積層膜上に、ニッケル、クロム、ニクロム等の金属を下地層として形成した後に、主層として銅層を形成することが好ましい。上記の下地層は、本発明に係る金属層の一部であり、その下地層の厚みとしては、5〜100nmの範囲が好ましく、10〜50nmの範囲がより好ましい。上記の下地層を設けることによって、ポリエステルフィルムの積層膜と銅層との密着性が更に向上し、特に、後述する金属パターン層の形成工程及び黒化処工程における金属層の剥離が一段と改善される。
本発明に係る金属層の厚みは、生産性の観点、良好な電磁波シールド性を確保するという観点、高精細なメッシュパターンを得るという観点、及び後加工の観点から、1〜4μmの範囲が好ましく、1〜3.5μmの範囲がより好ましく、特に1.5〜3μmの範囲が好ましい。
金属層の厚みが1μmより小さい場合、電磁波シールド性が不十分となる場合がある。特に、金属層もしくは金属パターン層に、後述する黒化処理(アルカリ溶液浸せきによる金属層の表面酸化処理)を施す場合は、黒化層の形成により金属層自体の体積が減少することにより電磁波シールド性が低下するので、金属層の厚みが1μmより小さい場合は不利となる。また、金属層の厚みが1μmより小さいと、パターン加工時や黒化処理時におけるアルカリ溶液への浸漬により、金属層とポリエステルフィルムとの密着性が悪化し、剥離が生じやすくなる。
一方、金属層の厚みが4μmより大きくなると、金属層の形成速度の低下やパターン加工時のエッチング処理時間の増大により生産性が低下し、また、高精細のメッシュパターンの形成に不利となる。また、金属層の厚みが4μmより大きくなると、光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層面に他の機能材料、例えば反射防止フィルム等を、粘着剤等を介して貼り合わせするときに気泡が混入して透明性が低下したり、あるいは光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層上に直接機能層を塗工形成するときに塗工性が低下し、平滑な塗工面が得られない、等の不都合が生じる場合がある。
(パターン形状の加工)
本発明において、金属パターン層を形成するための、金属層をパターン形状に加工する方法としては、フォトリソグラフィー法や印刷法を利用してエッチングレジストパターンを金属層上に形成した後、金属層をエッチングする方法が挙げられる。
上記フォトリソグラフィー法は、金属層上にフォトレジスト層を積層し、所望のパターンのフォトマスクを介して露光、あるいはレーザーで直接に走査露光し、現像してエッチングレジストパターンを形成する方法である。金属層上にフォトレジスト層を積層する方法としては、例えば、金属層にレジストフィルムを貼り付ける方法、あるいは液状レジストを塗布する方法が用いられる。
フォトレジスト層としては、露光部分が硬化し未露光部分が現像によって溶解するネガレジスト、あるいは逆に露光部分が現像によって溶解するポジレジストを用いることができる。フォトレジスト層の現像処理における環境問題を考慮すると、アルカリ現像型フォトレジストが好ましい。
フォトレジスト層の現像に用いられる現像液としては、アルカリ現像液が好ましい。係るアルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができ、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物を、0.5〜5質量%含有するアルカリ性水溶液を用いることができる。一般的には、上記炭酸塩を0.1〜3質量%程度含有する弱アルカリ性水溶液が用いられている。現像温度は、10〜50℃程度が適当であり、一般的には20〜40℃の範囲である。
上記印刷法は、スクリーン印刷法やオフセット印刷法により所望のエッチングレジストパターンを、金属層上に形成する方法である。
上記のようにして、金属層上にエッチングレジストパターンを形成した後、金属層をエッチングすることによって金属パターン層が形成される。最後に、金属パターン層上に残るエッチングレジストパターンが剥離除去される。エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法がある。ケミカルエッチングとは、レジスト層で保護された金属部分以外の金属をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
最後に、形成された金属パターン層上に残ったフォトレジスト(エッチングレジストパターン)が除去される。係るエッチングレジストパターンの除去には、通常、1〜4質量%程度の水酸化ナトリウムを含有するアルカリ水溶液が用いられる。
上記したエッチングレジストパターンを金属層上に形成する方法の中でも、フォトリソグラフィー法が、より高精細のメッシュパターンが得られるという観点から好ましい。
上述のようにして形成された金属パターン層は金属光沢があり、この金属パターン層を有する光透過性電磁波シールドフィルムをディスプレイに装着した際、金属パターン層の金属光沢によって表示画像の視認性(コントラスト)が低下することから、金属パターン層の表面は黒化処理されているのが好ましい。
黒化処理は、金属層をパターン形状に加工する前の金属層に施してもよいし、あるいはパターン形状に加工された金属パターン層に施してもよい。金属層あるいは金属パターン層を黒化処理する方法としては、酸化処理や硫化処理を用いることができる。
上記酸化処理としては、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を用いることができるが、経済性の点から、次亜塩素酸塩又は亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を用いることが好ましい。
上記硫化処理としては、硫酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム等の水溶液を使用することができるが、好ましくは、硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。
上記の黒化処理の中でも、環境等の観点から酸化処理が好ましく用いられる。
上述したように、本発明に係る金属パターン層は、ウェットプロセス、即ち、各処理液による処理工程を経て形成される。特に、フォトリソグラフィー法におけるエッチングレジストパターンを形成するための現像処理、金属パターン層上に残るレジスト層を除去するための処理、及び黒化処理(酸化処理)は、アルカリ溶液中で行われ、このアルカリ溶液の処理工程でポリエステフィルムと金属層との剥離が一段と起こりやすくなる。本発明に係る積層膜は、上記のアルカリ溶液処理工程での金属層の剥離防止に大きな効果を発揮する。
(光透過性電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明の光透過性電磁波シールドフィルムの製造方法は、側鎖にカルボン酸基を有するポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤を主たる構成成分とする積層膜を有するポリエステルフィルムの前記積層膜上に、気相製膜法により金属層を形成する工程、前記金属層をパターン形状に加工して金属パターン層を形成する工程を有する。
上記積層膜の構成成分及び積層膜を有するポリエステルフィルムの製造方法については、前述した通りである。積層膜に用いられる本発明のポリエステル樹脂としては、ガラス転移点が0〜40℃のポリエステル樹脂が好ましく、また、実質的にスルホン酸基を含有しないポリエステル樹脂であることが好ましい。上記積層膜における、ポリエステル樹脂とメラミン系架橋剤の含有比率は、ポリエステル樹脂100質量%に対してメラミン系架橋剤を0.5〜40質量%含有することが好ましい。
上記金属層を形成する工程における気相製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレート法の中のいずれかの方法を用いるのが好ましい。上記金属層の厚みとしては1〜4μmであることが好ましい。
上記の光透過性電磁波シールドフィルムの製造方法において、金属層をパターン形状に加工する工程は、フォトリソグラフィー法によるエッチングレジストパターンの形成工程、エッチング工程、エッチングレジストパターンの剥離工程を含むことが好ましい。また、本発明の光透過性電磁波シールドフィルムの製造方法は、更に、パターン形状に加工する前の金属層、あるいはパターン形状に加工された金属パターン層を黒化処理する工程を有することが好ましい。
(ディスプレイ用フィルター)
本発明の光透過性電磁波シールドフィルムは、電磁波を発生するプラズマディスプレイ等のディスプレイパネルの前面に配置されるディスプレイ用フィルターに適用することによって大きな効果を発揮する。本発明の光透過性電磁波シールドフィルムを構成する金属パターン層は、前述したようにメッシュパターンの線幅及び線ピッチの小さい、高精細なメッシュパターンとすることができるので、モアレを効果的に抑制し、高い透過率及び高い電磁波シールド性を確保することができる。
また、本発明に係る金属パターン層は、厚みを小さくしても高い電磁波シールド性が得られるので、機能性表面層を厚みの小さい金属パターン層上に直接に塗工して、均一で平滑な塗工面を得ることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、コストダウンを図るために、基材として1枚のみのプラスチックフィルムを用いた構成にするのが好ましく、この場合、本発明の光透過性電磁波シールドフィルムのポリエステルフィルムが唯一の基材となる。係るディスプレイ用フィルターの好ましい1つの構成は、本発明の光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層上に機能性表面層が直接に配置された構成である。ここで、機能性表面層は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイの前面に装着したときに視認側(鑑賞者側)の最表面となる機能層である。
上記機能性表面層(以降、機能層と言う)は、ハードコート機能、反射防止機能、防眩機能、及び防汚機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有する層であり、好ましくは、ハードコート機能、反射防止機能、及び防眩機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有する層であり、更に好ましくは、少なくともハードコート機能を有する層である。
本発明に係る機能層は、単一層であっても複数層で構成されていてもよく、また複数の機能を併せ持った層であってもよい。以下に機能層を構成する、反射防止機能、防眩機能、ハードコート機能及び防汚機能を有する層について具体的に説明する。
反射防止機能を有する層(反射防止層)は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
高屈折率層を形成する材料としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを重合硬化させたもの、あるいはシリコーン系、メラミン系、エポキシ系の架橋性樹脂原料を架橋硬化させたもの等の有機系材料、酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 O3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。これらの中でも、有機系材料が好ましく用いられる。以下に本発明の高屈折率層の好ましい態様を説明する。
本発明において、高屈折率層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂、含リン系樹脂、含スルフィド樹脂、含ハロゲン樹脂などの樹脂成分を単体または混合系で用いることが出来るが、特に、硬度と耐久性などの点から、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂を用いるのが好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点から、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリレート系樹脂は、活性エネルギー線照射によって容易にラジカル重合が起こり、形成される膜の耐溶剤性や硬度が向上するので好ましい。
かかる(メタ)アクリレート系樹脂として、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
高屈折率層には、更にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(モノマー)を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
高屈折率層には、塗布した樹脂成分の硬化を進めるために開始剤を含有させてもよい。該開始剤としては、塗布した樹脂成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤が使用可能である。
かかる光重合開始剤としては、具体的には、ソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイド等のサルファイド類や、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体や、ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、ベンゼンジアゾニウム塩等のジアゾ化合物や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン等の芳香族カルボニル化合物や、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピル等のジアルキルアミノ安息香酸エステルや、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジン等のアクリジン誘導体や、9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジン等のフェナジン誘導体や、6,4’,4”−トリメトキシ−2、3−ジフェニルキノキサリン等のキノキサリン誘導体や、2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム四弗化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
また、高屈折率層には、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物や、芳香族アミン化合物等の不揮発性のものであれば、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が好ましい。
また、高屈折率層には、金属酸化物微粒子を含有してもよい。これによって帯電防止効果が得られる。金属酸化物微粒子としては錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が好ましく、より好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
かかる金属酸化物粒子は、平均粒子径(BET法により測定される非表面積(JIS R1626:1996年)に基づく球相当径分布から計算される算術平均粒子径(JIS Z8819−1:1999年およびZ8819−2:2001年)が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは、0.001〜0.3μm、更に好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、0.5μmを超えると高屈折率層の透明性を低下させることがあり、0.001μm未満では、該粒子が凝集し易くヘイズ値が増大する場合がある。高屈折率層中の金属酸化物粒子の含有量は、樹脂成分100質量%に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
更に、高屈折率層には、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有することができる。
高屈折率層の厚みは、ハードコート層を設けない場合は、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましい。
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素ポリマー、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 、SiO2 等の無機系材料で構成することができる。以下に低屈折率層の好ましい態様を例示する。
低屈折率層の1つの好ましい態様として、MgF2やSiO2等の薄膜を真空蒸着法やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法、或いはSiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成する方法等が挙げられる。
低屈折率層の他の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物を含むことが低屈折率化、防汚性の点から好ましく、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、より好ましい。
多官能性シラン化合物として多官能性フッ素非含有シラン化合物を用いることができる。かかる多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、より好ましい。
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。さらに、かかるシリカ系微粒子の中でも、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく使用される。
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような例としては例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、微粒子内部の空洞の占める体積、すなわち微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。空隙率は、例えば、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。また、該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
低屈折率層の厚みは、0.01〜0.4μmの範囲が好ましく、0.02〜0.2μmの範囲がより好ましい。
防眩機能を有する層(防眩層)は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JISK 7136;2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。
本発明の機能層として、反射防止機能と防眩機能を併せ持つ層を用いることは好ましい態様の1つである。
ハードコート機能を有する層(ハードコート層)は、傷防止のために設けられる。ハードコート層は硬度が高いことが好ましく、JIS K5600−5−4(1999年)で定義される鉛筆硬度が、1H以上が好ましく、2H以上がより好ましい。上限は9H程度である。
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いることができる。
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
ハードコート層形成組成物を構成するアクリル化合物の代表的なものを例示すると、1分子中に3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる混合物を主たる構成成分とし、活性エネルギー線硬化または熱硬化によって得られるハードコート層が、硬度、耐摩耗性および可撓性に優れている点で好ましく用いられる。(メタ)アクリロイルオキシ基が多すぎる場合には、単量体は高粘度となり取り扱いし難くなり、また、高分子量とならざるを得なくなって塗布液として用いることが困難となるので、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基は好ましくは10個以下である。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体およびプレポリマーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。特にこれらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物は、後述するイソシアネートとの併用により、ハードコート層と隣接層との接着性を向上させることができるので特に好ましい。
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは30〜70質量%である。
上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して20質量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で不十分な場合がある。また、上記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して90質量%を超える場合は、硬化による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招く場合がある。
また、これらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、ハードコート層とその隣接層との接着性を向上させる効果が小さい場合がある。少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して80質量%を超える場合は、ハードコート層内の架橋密度が低下して、ハードコート層の硬度が低下する傾向がある。
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
また、分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。
すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど;
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど;
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど;
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど;
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および;
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−およびi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して50質量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる場合がある。また、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合が、ハードコート層形成組成物総量に対して10質量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材フィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合がある。
本発明において、ハードコート形成組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性エネルギー線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成組成物総量に対して0.01〜10質量%が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また220度以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
本発明におけるハードコート層形成組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有していることが好ましい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、水添MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の少なくとも2量体以上のものが挙げられる。これらポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
これらのポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体は、前記したハードコート層形成組成物に混合されて塗布される。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量は、接着性、表面硬度、耐湿熱性および虹彩模様低減の点で、ハードコート層形成組成物総量に対し、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量が、ハードコート層形成組成物総量に対して0.5質量%未満の場合には、接着性向上効果が不足したり、虹彩模様の低減が不十分な場合があり、またポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量が、ハードコート層形成組成物総量に対して50質量%を超えると、表面硬度が低下する場合がある。
上記ポリイソシアネートを添加したハードコート層形成組成物は、その硬化効率を高める目的で有機金属系触媒を含有させることも好ましい。
有機金属系触媒は、特に限定されるものではなく、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機4A族元素(チタン、ジルコニウムまたはハフニウム)化合物などが挙げられるが、安全性を考慮した場合、非錫系金属触媒である有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および、有機チタン化合物から選ばれたものが好ましく適用される。有機錫化合物としては、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウリレートなどのジブチル錫脂肪酸塩、ジオクチル錫ジラウリレートなどのジオクチル錫脂肪酸塩が例示できる。
有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ハフニウム化合物、有機チタン化合物としては、これらの金属のオルトエステルとβ−ケトエステル(βジケトン)の反応生成物が例示され、具体的にはジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、アルミニウムテトラ−n−プロポキシド、アルミニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムテトラ−n−ブトキシドなどの金属オルトエステルと、アセチルアセトン、メチルアセテート、エチルアセトアセテート、n−プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどのβケトエステル(βジケトン)との反応生成物を挙げることができる。金属オルトエステルとβジケトエステル(βジケトン)の混合モル比率は4:1〜1:4程度が好ましく、より好ましくは2:1〜1:4である。4:1より金属オルトエステルが多い場合は触媒の反応性が高すぎてポットライフが短くなりやすく、1:4よりβジケトエステルが多い場合は触媒活性が低下するため好ましい態様では無い。上記有機金属系触媒の配合量は、ハードコート形成組成物総量に対して0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。上記有機金属系触媒の配合量が、ハードコート形成組成物総量に対して0.001質量%より少ない場合には触媒添加効果が低く、10質量%より多くすることは経済的見地から好ましくない。
上記したハードコート層形成組成物の好ましい態様としては、ハードコート層形成組成物総量に対して、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物10〜80質量%、イソシアネート化合物1〜30質量%および必要に応じて有機金属系触媒0.001から10質量%の範囲とするのが望ましい。さらに必要に応じて1〜2個のエチレン性不飽和結合を有する単量体を0質量%以上50質量%以下添加しても良い。
本発明において、ハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加されたものが好ましく、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
またハードコート層上にさらに積層膜を設ける場合には、接着性を阻害しないアクリル系レベリング剤を適用するのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製)などを好ましく用いることができる。レベリング剤の添加量はハードコート形成組成物総量に対して、0.01〜5質量%の範囲とするのが望ましい。
本発明で用いられる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200度以上に加温された空気による熱が好ましく、さらに好ましくは200度以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
ハードコート層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜8μmである。ハードコート層の厚みが0.5μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために、表面硬度が十分でなく、傷が付きやすくなる傾向にある。一方、ハードコート層の厚みが10μmを超えると、硬化時の重合収縮により、カールが発生しやすくなる。
ハードコート層には、前述した反射防止層を構成する高屈折率層としての機能を付与することができる。ハードコート層の高屈折率化は、ハードコート層形成用樹脂組成物中に高屈折率の金属や金属酸化物の超微粒子を添加することにより、あるいは高屈折率成分の分子や原子を含んだ樹脂を用いることにより図られる。
前記高屈折率を有する超微粒子は、その粒径が5〜50nmで、屈折率が1.65〜2.7程度のものが好ましく、具体的には、例えば、ZnO(屈折率1.90)、TiO2(屈折率2.3〜2.7)、CeO2(屈折率1.95)、Sb2 O5(屈折率1.71)、SnO2、ITO(屈折率1.95)、Y2O3(屈折率1.87)、La2O3(屈折率1.95)、ZrO2(屈折率2.05)、Al2O3(屈折率1.63)等の微粉末が挙げられる。
前記屈折率を向上させる樹脂に含まれる分子及び原子としては、F以外のハロゲン原子、S、N、Pの原子、芳香族環等が挙げられる。
防汚機能を有する層(防汚層)は、ディスプレイ用フィルターに、人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。かかる防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
前述したように本発明の機能層は単一層であっても、複数層であってもよい。複数構成の機能層としては、a)ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、b)高屈折率ハードコート層/低屈折率層、c)ハードコート層/防眩層、d)ハードコート層/防眩性反射防止層、等が例示される。尚、上記a)〜d)の構成において、右側に記載の層が視認側に配置される。防汚層を設ける場合は、視認側の最表面に設けるのが好ましい。
また、機能層が単一層の場合は、複数の機能を併せ持つのが好ましい。かかる単一層の例としては、e)反射防止性ハードコート層(反射防止機能とハードコート機能を有する単一層)、f)防眩性ハードコート層(防眩機能とハードコート機能を有する単一層、g)防眩性反射防止ハードコート層(防眩機能と反射防止機能とハードコート機能を有する単一層)、h)防眩性反射防止層(防眩機能と反射防止機能を有する単一層)、i)防汚性ハードコート層(防汚機能とハードコート機能を有する単一層)等が例示される。
本発明において、上記機能層は光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層上に直接に塗工して配置するのが好ましい。
本発明に係る光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層は、ポリエステルフィルムとの間に接着剤や粘着剤を介在せずに形成されており、更に金属パターン層の厚みが、従来の一般的な金属パターン層(厚み10μm程度の銅箔エッチングメッシュ)に比べて大幅に小さく(1〜4μm)、機能層が塗工される金属パターン層表面の凹凸高さが小さいので、機能層が金属パターン層上に均一に塗工形成することができる。
本発明において、機能層は金属パターン層を完全に被覆するように塗工形成するのが好ましく、金属パターン層を構成する細線部と細線に囲まれた開口部を埋めて被覆するためには、機能層はある程度の厚みが必要である。しかし、本発明のように、金属パターン層の厚みを4μm以下に設計することによって、機能層の厚みを小さくしても金属パターン層上に均一かつ平滑に塗工形成することが可能となる。機能層の厚みを小さくすることによって、原材料コストの低減、及び機能層の塗工速度や乾燥速度の増大が図られ、生産コストが大幅に低減する。特に、機能層としてハードコート機能を含む層を単一層で塗工形成する場合、機能層の厚みを小さくすることは、ハードコート層の重合収縮によるディスプレイ用フィルターのカールを抑制できるという利点がある。
図1は、本発明に係るディスプレイ用フィルターの一例の模式断面図である。図1において、符号7は本発明の積層膜を有するポリエステルフィルム4の上に金属パターン層3が形成された光透過性電磁波シールドフィルムであり、金属パターン層3上に機能層2が積層されている。ここで、機能層2は、金属パターン層3を構成する細線部3aに囲まれた開口部3bを埋めて、かつ細線部3aを被覆するように塗工形成されている。
機能層が金属パターン層を完全に被覆するように機能層を塗工形成するためには、機能層の合計厚み(図1の符号N)は、金属パターン層の厚み(図1の符号A)に対して130%以上が好ましく、150%以上がより好ましい。ここで機能層の合計厚み(N)は、上記したように機能層は金属パターン層の開口部を埋めてかつ細線部を被覆するように塗工形成されるので、金属パターン層の細線部の厚み(A)と細線部上に形成された機能層の厚み(L)との和である。上記したように、金属パターン層の厚み(A)に対して機能層の合計厚み(N)を大きくすることによって金属パターン層の凹凸面を十分に埋めて均一化することができる。ここで、金属パターン層の細線部の厚み(金属パターン層の厚みと同じ)(A)は1〜4μmの範囲が好ましく、1〜3.5μmの範囲がより好ましく、特に1.5〜3μmの範囲が好ましい。
機能層の合計厚み(N)としては、2〜10μmの範囲が好ましく、特に3〜8μmの範囲が好ましい。また、金属パターン層の細線部上に形成された機能層の厚み(L)は、0.5〜4μmの範囲が好ましく、1〜4μmの範囲がより好ましい。
上記した金属パターン層や機能層の厚みは、走査型電子顕微鏡によるディスプレイ用フィルターの拡大断面写真から求めることができる。
金属パターン層上に形成される機能層は、前述したように塗工形成するのが好ましく、塗工方式としては、ディップコーティング法、スピンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、リーバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、スプレー法、ロールコーティング法等の公知のウェットコーティング法を用いることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターには、更に近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与するのが好ましい。
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近赤外線遮蔽機能は、ポリエステルフィルム、機能層、あるいは後述する接着層に近赤外線吸収剤を混錬、分散することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収剤を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収剤を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは機能層や接着層に上記近赤外線吸収剤を含有させる態様が好ましく用いられる。近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の有機系近赤外線吸収剤、あるいは酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、硫化亜鉛、セシウム含有酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収剤を用いることができる。
上記した近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合は、ポリエステルフィルムと金属パターン層との間、もしくはポリエステルフィルムに対して金属パターン層とは反対面に、ポリエステルフィルムに塗工形成して設けることができる。
近赤外線遮蔽機能をポリエステルフィルムより視認側に付与する場合は、耐光性に優れる無機系近赤外線吸収剤を用いるのが好ましい。
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層、機能層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、ポリエステルフィルム、近赤外線遮蔽層、機能層、あるいは接着層に付与してもよいし、新たに透過率調整層を設けてもよい。
上述した色調調整機能を有する層及び可視光透過率調整機能を有する層をそれぞれ新たに設ける場合、これらの層はポリエステルフィルムと金属パターン層との間、もしくはポリエステルフィルムに対して金属パターン層とは反対面に設けることができる。
本発明のディスプレイ用フィルターは、ディスプレイに直接、あるいはガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板等の公知の高剛性基板を介して装着することができる。本発明のディスプレイ用フィルターには、ディスプレイあるいは高剛性基板に貼り付けるための接着層を設けるのが好ましい。上記高剛性基板としては、厚みが1〜3mm程度のガラス板が好ましい。
接着層はポリエステルフィルムに対して金属パターン層とは反対面側の最表面に設けられる。接着層には、前述したように近赤外線遮蔽機能、色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を付与することができる。また、接着層に、ディスプレイを衝撃から保護するための衝撃緩和機能を付与することは好ましい態様である。接着層に衝撃緩和機能を付与するには、接着層の厚みを50μm以上にすることが好ましく、100μm以上がより好ましく、上限の厚みは、接着層のコーティング適性を考慮して500μm以下が好ましい。
接着層には、公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
本発明に係るディスプレイ用フィルターは、基材が1枚のみのプラスチックフィルムから構成されるのが好ましい。係るディスプレイ用フィルターの構成としては、粘着剤層/近赤外線遮蔽層/プラスチックフィルム/金属パターン層/機能層を順に有する構成が好ましい。近赤外線遮蔽層は、色調調整機能を併せ持つのが好ましい。上記のプラスチックフィルムは、本発明の積層膜が設けられたポリエステルフィルムであり、上記の(プラスチックフィルム/金属パターン層)は、本発明に係る光透過性電磁波シールドフィルムである。
図1は、上記構成のディスプレイ用フィルターの模式断面図である。図1において、ディスプレイ用フィルター1は、光透過性電磁波シールドフィルム7を構成する金属パターン層3上に機能層2が直接に積層されており、光透過性電磁波シールドフィルム7を構成するポリエステルフィルム4の他方の面には近赤外線遮蔽層5及び粘着剤層6が順次積層された構成になっている。
(ディスプレイ用フィルターの製造方法)
本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法は、前述した本発明の光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層の上に、機能性表面層を直接に塗工形成する工程を有する。ここで、機能性表面層としては、反射防止機能、防眩機能、及びハードコート機能の中から選ばれる少なくとも1つの機能を有する機能層であることが好ましい。
<物性の評価方法>
(1)積層膜の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、光透過性電磁波シールドフィルムの透明基材として用いた積層ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。各実施例・比較例について、測定視野内の30個について測定し、その平均値を積層膜の厚みとした。
(2)ガラス転移点(Tg)
光透過性電磁波シールドフィルムの透明基材として用いた積層ポリエステルフィルムの積層膜に用いたポリエステル樹脂についてセイコー電子工業(株)製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220にセイコー電子工業(株)製SSC5200ディスクステーションを接続して測定した。
DSCの測定条件は次のとおりである。即ち、積層膜に用いたポリエステル樹脂10mgをアルミニウムパンに調整後、DSC装置にセットし(リファレンス:試料を入れていない同タイプのアルミニウムパン)、300℃の温度で5分間加熱した後、液体窒素を用いて急冷処理する。この試料を20℃/分で昇温し、その発熱量に関するDSC曲線において(該Tg付近で吸熱挙動を示す)Tg付近に2本の各ベースラインの延長線を引き、延長線間の1/2曲線とDSC曲線の交点からTgを算出する。各実施例・比較例について、3回測定し、その平均値をガラス転移点(Tg)とした。
(3)金属層の厚み
ミクロトームにて、作製した光透過性電磁波シールドフィルムの断面を切り出し、その断面を電界放射型走査電子顕微鏡((株)日本電子製JSM−6700F、加速電圧10kV、観察倍率20000倍)にて観察し、金属パターン層の厚みを測定した。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の5箇所について測定し、その平均値を金属層の厚みとした。
(4)金属パターン層の線幅、および線ピッチ
(株)キーエンス製 デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率450倍で表面観察を行った。その測長機能を用いて、格子状の導電性金属パターンの線幅、および線ピッチを測定した。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から、任意の25箇所(各箇所につき、線幅4本と線幅間隔1ヶ所)、計100本の線幅、および25箇所のピッチについて測定し、その平均値をそれぞれの寸法とした。
(5)開口率
(株)キーエンス製 デジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率200倍で表面観察を行った。その輝度抽出機能(ヒストグラム抽出、輝度レンジ設定0−170)を用いて、導電性金属パターン層が形成されていない部分(開口部)と導電性金属パターン層が形成されている部分とに2値化した。次いで、面積計測機能を用いて、全体の面積、および開口部の面積を算出、開口部面積を全体の面積で除算することにより開口率を得た。
各実施例・比較例について、20cm×20cmサイズのサンプル1枚から任意の20箇所について開口率を算出、その平均値を開口率とした。
(6)ヘイズ
日本電色工業(株)製 濁度計(NDH2000)にて測定した。
各実施例・比較例について、10cm×10cmサイズのサンプル3枚を切り出し、測定、その平均値をヘイズとした。
(7)電磁波シールド性
アドバンテスト(株)製スペクトラムアナライザシステム、シールド評価機器(TR17031A)を用い、KEC(関西電子工業振興センター)法で、1MHz〜1GHzの周波数範囲の電界波減衰(dB)を測定し、以下の基準で評価した。
測定は、各実施例・比較例について3枚測定した。
周波数50MHzでの電界波減衰:40dB以上・・・○
周波数50MHzでの電界波減衰:40dB未満・・・×
電界波減衰(dB)は値が大きいほど電磁波シールド性に優れている。「○」であれば良好な電磁波シールド性を示す。
(8)機能層(ハードコート層)の塗工性
各実施例・比較例サンプルの金属パターン層側に、ハードコート剤(JSR製 デソライト(登録商標)Z7528)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で1分間乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させて形成されたハードコート層表面状態を観察して、以下の基準で評価した。
表面に塗工ムラがない。・・・○
表面に塗工ムラがある。・・・×
(実施例1)
以下の方法で、本発明の積層膜が設けられた積層ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム;PETフィルム)を作製した。
<積層PETフィルム>
外部粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、285℃の温度で溶融し、T字型口金からシート状に押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化させた。このようにして得られた未延伸フィルムを、88℃の温度に加熱して長手方向に3.3倍に延伸し、一軸延伸フィルムとした。
この一軸延伸フィルムを空気中でコロナ放電処理し、その処理面(両面)に下記の積層膜形成塗液を塗布した。
積層膜形成塗液が塗布された一軸延伸フィルムを、クリップで把持しながら予熱ゾーンに導き、95℃の温度で乾燥後、引き続き連続的に110℃の温度の加熱ゾーンで幅方向に3.4倍に延伸し、更に、235℃の温度の加熱ゾーンで熱処理を施し、結晶配向の完了した積層膜とPETからなる積層PETフィルムを得た。積層膜を除いたPETフィルムの厚みは100μmであり、積層膜の厚みは0.15μmであった。
<積層膜形成塗剤>
(A):ポリエステル樹脂
・カルボン酸成分
テレフタル酸 28モル%
イソフタル酸 9モル%
トリメリット酸 10モル%
セバシン酸 3モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 15モル%
ネオペンチルグリコール 18モル%
1,4−ブタンジオール 17モル%
上記カルボン酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:20℃)のアンモニウム塩型水分散体。
(B):メチロール化メラミン樹脂
(A)の固形分100質量部に対して、(B)を固形分比で5質量部混合し、積層膜形成塗剤とした。
<金属パターン層の形成>
上記の積層PETフィルムの片面に、誘導加熱による真空蒸着法(真空度3×10―3Pa)にて、厚さ3μmの銅を形成し、金属層とした。
次いで、金属層表面にアルカリ現像型ネガレジストフィルムを積層し、格子状パターンのフォトマスクを介して紫外線露光し、炭酸ナトリウムを1質量%含有する現像液を用いて30℃で60秒間現像処理を行った。次いで、40℃に温度調整した塩化第2鉄溶液により40秒間エッチング処理を行った後、50℃の3質量%水酸化ナトリウム水溶液で100秒間処理してレジスト層を剥離して、線幅7μm、線ピッチ130μm、開口率89.5%の金属パターン層を形成した。
<金属パターン層の黒化処理>
次いで金属パターン層が形成された積層PETフィルムを酸化処理剤(メルテックス(株)製 エンプレート MB―438A/B/純水=8/13/79の割合で調整)で、60℃、120秒間の浸せき処理を行った。
上記のようにして得られた光透過性電磁波シールドフィルムから、20cm×20cmのサンプルを切り出し、特性評価を行った。その結果を表1に示す。
<ディスプレイ用フィルターの作製>
また、上記のようにして得られた光透過性電磁波シールドフィルムに、下記の機能層、近赤外線遮蔽層、及び接着層を積層してディスプレイ用フィルターを作製した。
<機能層の塗工>
光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層上に、市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、ハードコート層を設けた。
ハードコート層の厚みは、金属パターン層の細線部上の厚み(L)が3μmになるように調整した。
<近赤外線遮蔽層の積層>
次いで、光透過性電磁波シールドフィルムの金属パターン層とは反対面に、オレンジ光遮蔽機能を併せ持つ近赤外線遮蔽層(近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン系色素とジイモニウム系色素、およびオレンジ光吸収色素としてのテトラアザポルフィリン系色素をアクリル系樹脂に混合した塗料を、乾燥膜厚みが12μmになるように塗工した層)を設けた。
<接着層の積層>
セパレートフィルム上に紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(日立化成ポリマー(株)製のハイボン(登録商標))をスリットダイコーターで、厚みが100μmになるように塗布した後、UV照射装置を用いて塗布膜を硬化し、続いてセパレートフィルムを貼り付けて、セパレートフィルムにサンドウィッチされた接着層を得た。次に、上記で積層した近赤外線遮蔽層の上に、一方のセパレートフィルムを剥離しながら接着層を積層した。
(実施例2)
実施例1の積層膜形成塗剤で、メラミン系架橋剤の添加量をポリエステル樹脂100質量部に対し10質量部(固形分比)とした以外は、実施例1と同様にして積層膜形成塗剤を作製し、この塗剤を用いる以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
上記の積層PETフイルム上に、実施例1と同様にして厚みが1μmの銅を形成し金属層とした。次いで、実施例1と同様にして金属パターン層を形成して光透過性電磁波シールドフィルムを得た。
得られた光透過性電磁波シールドフィルムから、20cm×20cmのサンプルを切り出し、特性評価を行った。その結果を表1に示す。
また、上記光透過性電磁波シールドフィルムに、実施例1と同様にして、機能層、近赤外線遮蔽層、及び接着層を積層して、ディスプレイ用フィルターを作製した。
(実施例3)
実施例1の積層膜形成塗剤のポリエステル樹脂に代えて、下記のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして積層膜形成塗剤を作製し、この塗剤を用いて実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
(A):ポリエステル樹脂
・カルボン酸成分
テレフタル酸 23モル%
イソフタル酸 9モル%
トリメリット酸 15モル%
セバシン酸 3モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 15モル%
ネオペンチルグリコール 18モル%
1,4−ブタンジオール 17モル%
上記カルボン酸成分とグリコール成分からなるポリエステル樹脂(Tg:19℃)のアンモニウム塩型水分散体。
上記の積層PETフイルムを用いた以外は、実施例1と同様にして光透過性電磁波シールドフィルムを得た。
得られた光透過性電磁波シールドフィルムから、20cm×20cmのサンプルを切り出し、特性評価を行った。その結果を表1に示す。
また、上記光透過性電磁波シールドフィルムに、実施例1と同様にして、機能層、近赤外線遮蔽層、及び接着層を積層して、ディスプレイ用フィルターを作製した。
(比較例1)
積層膜を積層しない以外は、実施例1と同様にしてPETフィルムを作製した。このPETフィルムに実施例1と同様にして厚み3μmの銅層を形成し、次いで実施例1と同様の処理を施して金属パターン層を形成した。その結果、レジスト層剥離工程で金属パターン層の剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
(比較例2)
実施例1の積層膜形成塗剤のポリエステル樹脂の代わりに、下記のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして積層膜形成塗剤を作製し、この塗剤を用いて実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
(A):ポリエステル樹脂
・カルボン酸成分
テレフタル酸 42モル%
5−ナトリウムスルホイソフタル酸 8モル%
・グリコール成分
エチレングリコール 47モル%
ジエチレングリコール 3モル%
上記カルボン酸成分とグリコール成分からなる、側鎖にカルボン酸を有しないポリエステル樹脂(Tg:72℃)の水分散体。
この積層PETフィルムに実施例1と同様にして厚み3μmの銅層を形成し、次いで実施例1と同様の処理を施して金属パターン層を形成した。その結果、黒化処理の工程で金属パターン層の剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
(比較例3)
実施例1の積層膜形成塗剤で、メラミン系架橋剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして積層膜形成塗剤を作製し、この塗剤を用いて実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
この積層PETフィルムに実施例1と同様にして厚み3μmの銅層を形成し、次いで実施例1と同様の処理を施して金属パターン層を形成した。その結果、黒化処理の工程で金属パターン層の剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
(比較例4)
実施例1の積層膜形成塗剤で、メラミン系架橋剤に代えてエポキシ樹脂( N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシリレンジアミン)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層膜形成塗剤を作製し、この塗剤を用いて実施例1と同様にして積層PETフィルムを得た。
この積層PETフィルムに実施例1と同様にして厚み3μmの銅層を形成し、次いで実施例1と同様の処理を施して金属パターン層を形成した。その結果、黒化処理の工程で金属パターン層の剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
(比較例5)
下記の積層膜形成塗剤を用いる以外は、実施例1と同様にして積層PETフィルムを作製した。
<積層膜形成塗剤>
(A)アクリル樹脂
メチルメタクリレート55モル%/エチルアクリレート40モル%/N−メチロールアクリルアミド3モル%/2−ヒドロキシエチルメタクリレート2モル%で構成されるアクリル樹脂(Tg:27℃)
(B):メチロール化メラミン樹脂
(A)の固形分100質量部に対して、(B)を固形分比で5質量部混合し、積層膜形成塗剤とした。
上記で得られた積層PETフィルムに実施例1と同様にして厚み3μmの銅層を形成し、次いで実施例1と同様の処理を施して金属パターン層を形成した。その結果、黒化処理の工程で金属パターン層の剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
(比較例6)
比較例5と同様にして得られた積層PETフィルムに、金属層として厚さ10μmの銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)をドライラミネート用2液タイプ接着剤(東洋モートン(株)製 主剤AD−76P1/硬化剤CAT−10L)を用いてラミネートした。
次いで、金属層表面にアルカリ現像型ネガレジストフィルムを積層し、格子状パターンのフォトマスクを介して紫外線露光し、炭酸ナトリウムを1質量%含有する現像液を用いて30℃で60秒間現像処理を行った。次いで、40℃に温度調整した塩化第2鉄溶液により120秒間エッチング処理を行った後、50℃の3質量%水酸化ナトリウム水溶液で100秒間処理してレジスト層を剥離して、線幅12μm、線ピッチ300μm、開口率92%の金属パターン層を形成した。
次いで金属パターンが形成された積層PETフィルムを酸化処理剤(メルテックス(株)製 エンプレート MB―438A/B/純水=8/13/79の割合で調整)で、60℃、2分間浸せき処理を行った(金属層表面の黒化処理)。
得られた光透過性電磁波シールドフィルムから、20cm×20cmのサンプルを切り出し、特性評価を行った。その結果を表1に示す。
また、上記光透過性電磁波シールドフィルムに、実施例1と同様にして、機能層、近赤外線遮蔽層、及び接着層を積層して、ディスプレイ用フィルターを作製した。
本発明の実施例は、フォトリソグラフィー、エッチング及び黒化処理の工程において、金属パターン層の剥離もなく良好な密着性を示すとともに、電磁波シールド性も十分であった。また、金属パターン層側に機能層(ハードコート層)を直接塗工した際にも、表面に塗工ムラもなく良好なハードコート塗工性を示した
比較例1〜5は、フォトリソグラフィー、エッチング及び黒化処理の工程において、金属パターン層に剥離が見られ、光透過性電磁波シールドフィルムを得ることが出来なかった。
比較例6は、フォトリソグラフィー、エッチング及びおよび黒化処理の工程において、金属パターン層の剥離もなく良好な密着性を示すとともに、電磁波シールド性も十分であったが、ヘイズが高く光透過性が劣るとともに、金属パターン層側に機能層(ハードコート層)を直接塗工した際に、金属パターン層の厚みが厚く、かつ金属パターン層の開口部に表面粗さの大きい接着剤層が存在するために、塗工ムラが見られた。