JP5103759B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、溶融亜鉛めっき鋼板は、以下の方法にて製造される。まず、スラブを熱延、冷延あるいは熱処理した薄鋼板を用いて、母材鋼板表面を前処理工程にて脱脂および/または酸洗して洗浄するか、あるいは前処理工程を省略して予熱炉内で母材鋼板表面の油分を燃焼除去した後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で加熱することで再結晶焼鈍を行う。その後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却して、大気に触れることなく微量Al(0.1〜0.2%程度)を添加した溶融亜鉛浴中に浸漬する。
また合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき後、引き続き、鋼板を合金化炉内で熱処理することで製造される。
ところで、近年、素材鋼板の高性能化とともに軽量化が推進され、素材鋼板の高強度化が求められてきており、防錆性を兼ね備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の使用量が増加している。
鋼板の高強度化にはSi、Mn、P等の固溶強化元素の添加が行われる。中でもSiは鋼の延性を損なわずに高強度化できる利点があり、Si含有鋼板は高強度鋼板として有望である。しかし、Siを多量に含有する高強度鋼板を母材とし溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造しようとする場合、以下の問題がある。
前述のように溶融亜鉛めっき鋼板は還元雰囲気中で600〜900℃程度の温度で加熱焼鈍を行った後に、溶融亜鉛めっき処理を行う。しかし、鋼中のSiは易酸化性元素であり、一般的に用いられる還元雰囲気中でも選択表面酸化されて表面に濃化し、酸化物を形成する。このような酸化物はめっき処理時の溶融亜鉛との濡れ性を低下させて不めっきを生じさせるので、鋼中Si濃度の増加とともに濡れ性が急激に低下し不めっきが多発する。また、不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性に劣るという問題がある。
さらに鋼中のSiが選択表面酸化されて表面に濃化すると、溶融亜鉛めっき後の合金化過程において著しい合金化遅延が生じる。その結果、生産性を著しく阻害する。生産性を確保するために過剰に高温で合金化処理しようとすると、耐パウダリング性の劣化を招くという問題もあり、高い生産性と良好な耐パウダリング性を両立させることは困難である。
このような問題に対して、いくつかの技術が開示されている。
予め酸化性雰囲気中で鋼板を加熱して表面に酸化鉄を形成した後加熱し還元焼鈍を行うことで、還元焼鈍時におけるSiの表面濃化が抑制され、溶融亜鉛との濡れ性が改善する技術が特許文献1に開示されている。
溶融めっき処理に先立って、硫黄または硫黄化合物を鋼板表面にS量として0.1〜1000mg/m2付着させた後、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行い、その後、水素を含む非酸化性雰囲気中で焼鈍する方法が特許文献2に開示されている。
が進まず、不めっき改善のために必要な量の酸化鉄を得ることが困難である。従って、鋼
中Si濃度が高い鋼板の場合、何らかの方法で酸化を促進する手段が必要である。
このような問題について検討を行った結果、本発明者らは、予め鋼板表面にSを含有する
化合物を付着させることで鋼板の酸化が促進することを見出した。しかし、酸化を促進さ
せて充分な量の酸化鉄を形成したとしても溶融亜鉛との濡れ性を充分に改善することはで
きず、不めっきを完全に抑制できない場合があった。
そこで、本発明者らがさらに検討を重ねた結果、Sを含有する化合物中にアルカリ金属を
含有した場合、鋼板の酸化が促進するにも関わらず、Si表面濃化を抑制することができ
ず溶融亜鉛との濡れ性を充分に改善することができないことを見出し、本発明に至った。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]Si:0.1〜3mass%を含有する鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施すに先立ち、
Sを含有し、かつ、アルカリ金属を含有しない化合物であって、前記Sの含有量は該化合物中に元素量換算で0.1〜1000mg/m 2 であり、該化合物を前記鋼板表面に付着させた後、鋼板の最高到達温度:500℃超で酸化処理を行い、次いで、還元性雰囲気中にて50秒以上の保持時間で還元処理を行い、次いで、溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]Si:0.1〜3mass%を含有する鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施すに先立ち、
Sを含有し、かつ、アルカリ金属を含有しない化合物であって、前記Sの含有量は該化合物中に元素量換算で0.1〜1000mg/m 2 であり、該化合物を前記鋼板表面に付着させた後、鋼板の最高到達温度:500℃超で酸化処理を行い、次いで、還元性雰囲気中にて50秒以上保持時間で還元処理を行い、次いで、溶融亜鉛めっき処理、合金化処理を行うことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
まず、本発明に使用される鋼板について説明する。本発明が対象とする鋼板は、Siを0.1〜3%含有する鋼板である。その他の添加元素については特に限定せず、本発明の効果を妨げない範囲で従来から公知の成分系を利用することができる。以下に、代表的な組成の一例について記載する。
Siは鋼の延性を確保しつつ高強度化が可能な元素である。0.1%未満では、還元処理時のSi表面濃化はそれほど顕著ではなく、従って不めっきが多発したり、著しい合金化遅延がない。一方、3%超えでは、鋼板自体が硬くなり機械的特性が劣化する。よって、Siは0.1%以上3%以下とする。
Cは鋼中に含有される元素であり、0.0001〜0.5%の範囲で一般的に含有される。本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でCが含有されていよい。また、Cは、高強度化に対して有用なだけでなく、強度−延性バランスを向上させるために残留オーステナイトを生成させる等、組織制御を行う場合に有用な元素である。これらの作用を発現させるには、0.05%以上含有されていることが好ましい。しかしながら、含有量が0.25%を超えると、溶接性が劣化する。以上より、Cは0.5%以下が好ましく、さらに好ましくは0.05%以上0.25%以下である。
Mnは、鋼の高強度化に有用な元素であり、5%以下の範囲で通常鋼中に含有される元素であり、本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でMnが含有されていてよい。特に、0.1%以上、好ましくは0.5mass%以上含有させることによって上記効果を発揮することができる。しかしながら、Mnも、Siと同様に、焼鈍時に酸化膜を形成する元素であり、その含有量が3.0%を超えて多量に含有されると上述したようにめっき層直下に特定元素の濃化層およびSiを含有する酸化物を形成させたとしても、めっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。以上より、Mnは5%以下が好ましく、下限については0.1%が好ましく、更に好ましくは0.5%以上である。上限は、さらに好ましくは3.0%以下である。
Alは、Siと補完的に添加される元素であり、0.01%以上含有させることが好ましい。しかしながら、Al量が5.0%を超えると上述したようにめっき層直下に特定元素の濃化層およびSiを含有する酸化物を形成させたとしても、めっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。従って、Alは5.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01%以上3.0%以下である。
前述したように、高Si含有鋼板を母材とした場合には、鋼中のSi濃度の増加に伴い鋼板表面における酸化速度が大きく低下するため、従来技術による酸化手段のみでは酸化が進まず、Si表面濃化を抑制するために必要な量の酸化鉄を得ることが困難であった。これは高Si含有鋼板の場合、酸化過程で酸化鉄/地鉄界面にSi酸化物が層状に形成し、これがバリヤー層となって地鉄からのFe外方拡散を抑制するため酸化が進まないためと考えられる。一方、鋼板表面にSを含有する化合物を付着させて酸化させた場合、前記酸化鉄/地鉄界面での層状のSi酸化物が抑制され、その結果Fe外方拡散が促進されて酸化が促進するものと考えられる。
例えば、硫酸(H2SO4)、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸セリウム(Ce2(SO4)3)、硫酸鉄(FeSO4、Fe2(SO4)3)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、チオ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O3)、硫化アンモニウム((NH4)2S)、硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)、硫酸アンモニウム鉄(Fe(NH4)2(SO4)2、FeNH4(SO4)2)、硫化アンチモン(Sb2S3)、硫化鉄(FeS)、チオ尿素(H2NCSNH2)、二酸化チオ尿素((NH2)2CSO2)、SCH基のチオフェン酸塩類、SCN基を有するチオシアン酸塩類等のS含有化合物である。
なお、上記は代表的な例を示したのであって、上記以外の化合物を使用しても本発明の効果を好適に得られることは言うまでもない。
いずれにしても、本発明においては鋼板を酸化させる際に前記した化合物が鋼板表面に付着していれば良い。
鋼板の最高到達温度を500℃超、好ましくは550℃以上、さらに好ましくは600℃以上とすることで、容易に本発明の効果を達成することができる。500℃以下の場合、酸化鉄量の不足に起因してSi表面濃化を抑制することができず、溶融亜鉛との濡れ性が低下する。一方、上限は特に制限するものではないが、続く還元処理で必要とされる鋼板温度以下であれば実用上経済的なので好ましい。
鋼板を酸化させる手段としては、例えば、酸化性雰囲気中で鋼板を加熱することで容易に達成することができる。なお、酸化手段の違いが本発明の効果を妨げるものではなく、鋼板を酸化することができる手段であれば特に限定するものではない。
鋼板を加熱する手段としては、バーナー加熱、誘導加熱、放射加熱、通電加熱等の従来から使用されている加熱方式でよく、特に限定するものではない。
例えば、バーナー加熱方式としては従来から用いられている酸化炉や無酸化炉等の加熱炉を使用することができる。無酸化炉の場合、例えば、直火バーナーの空燃比を1.0超えとすることで容易に鋼板を酸化することができる。
また、誘導加熱方式、放射加熱方式、通電加熱方式の場合は、加熱する鋼板近傍の雰囲気を酸化性雰囲気とすることで容易に鋼板を酸化することができる。酸化性雰囲気としては、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の酸化性ガスを1種または2種以上含有する雰囲気が一般的であるが、鋼板を酸化することができれば特に限定するものではない。
なお、上記は代表的な例を示したのであって、いずれにしても鋼板を酸化させることができれば良く、その手段は特に限定するものではない。
前記の酸化処理により得られた酸化皮膜は、酸素量として0.01〜5g/m2の酸化鉄であることが好適である。この酸素量が0.01g/m2未満の場合、酸化鉄量が不足してSiの表面濃化を抑制することが難しくなる場合がある。一方、酸素量が5g/m2を超えると、Si表面濃化抑制効果が飽和する一方で、焼鈍時の還元を充分行うことができないために、未還元酸化皮膜として残存する結果、めっき後の合金化処理過程で著しい合金化遅延を引き起こすおそれがある。
酸化皮膜中の酸素量の定量方法としては一般的な鋼中酸素分析による方法で下地鋼板を含んだ全酸素量から下地鋼板中(バルク)の酸素量を差し引くことで容易に定量することができる。事前に検量線を作成しておけば蛍光X線やGDS等による簡易定量方法も可能である。
一般的に、還元性雰囲気中で50秒以上保持することで前述の問題は解決する。しかし、Sを含有する化合物中にアルカリ金属を含有した場合、鋼板の酸化が促進するにも関わらず、Si表面濃化を抑制することできないという問題がある。その結果、溶融亜鉛との濡れ性が低下して不めっきを発生したり、合金化遅延を引き起こす。この理由については明確ではないが、鋼板に付着したアルカリ金属が還元焼鈍工程でSi表面濃化を促進する働きをしていると考えられる。しかし、本発明においては、Sを含有する化合物中にアルカリ金属を含有しないため、保持時間50秒以上の還元処理を行うことによる効果に加え、Si表面濃化も抑制され上記問題も解決される。
還元処理方法は従来から使用されている方法に準じて行えばよく、特に限定するものではない。例えば、放射加熱方式の焼鈍炉で水素を含む還元性雰囲気中で600〜900℃程度の温度で還元処理するのが一般的ではあるが、特に限定するものではなく、鋼板表面の酸化皮膜を還元することができる方法であれば本発明の効果を妨げるものではない。例えば、ラジアントチューブ方式の焼鈍炉内で水素を含んだ非酸化性雰囲気中で600〜900℃で行うことができる。
あるいは、製品の使用用途によってはめっき温度、めっき浴組成等の上記めっき条件を変更する場合があるが、めっき条件の違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。例えば、めっき浴中にAl以外にPb、Sb、Fe、Mg、Mn、Ni、Ca、Ti、V、Cr、Co、Sn等の元素が混入していても本発明の効果は何ら変わらない。
さらに、めっき後のめっき層の厚さを調整する方法についても、特に限定するものではない。一般的にはガスワイピングが使用され、ガスワイピングのガス圧、ワイピングノズル/鋼板間距離等を調節することによって、めっき層の厚さを調整する。この時、めっき層の厚さは特に限定されないが、3〜15μm程度とするのが好ましい。3μm未満では十分な防錆性が得られない場合がある。一方、15μm超えでは防錆性が飽和するだけでなく、加工性や経済性が損なわれる場合がある。但し、めっき層の厚さの違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。
次いで、通電加熱炉にて保持時間:10秒の合金化処理(昇温速度:40℃/秒)を行った。この時、めっき層中Fe含有率が10%±0.5%が得られる合金化温度により合金化速度を比較した。また、めっき層中Fe含有率が10%±0.5%となるサンプルを用いて90°曲げ試験を行い耐パウダリング性を評価した。
以下に、めっき外観、合金化速度、耐パウダリング性、機械的特性およびめっき密着性の測定方法および品質の各評価基準を示す。
<めっき外観>
目視および光学顕微鏡にて外観観察を行い、不めっきが全くない場合を不めっきなしとし、微小の不めっきがある場合を微小不めっきありとし、目視にて不めっきが観察できる場合を不めっきありとした。
:不めっきなし
△:微小不めっきあり
×:不めっきあり
<合金化速度>
合金化完了温度を測定し、下記の基準により評価した。
○:合金化温度:500℃以下で合金化完了
×:合金化温度:500℃超で合金化完了
<耐パウダリング性>
合金化溶融亜鉛めっき鋼板から幅:25mm、長さ:40mmの試験片を切出し、セロハンテープ(商標登録)(ニチバン製、幅:24mm)を長さ:20mmの位置に貼り、テープ面を90°内側に曲げた後、曲げ戻しを行ってセロハンテープ(商標登録)(ニチバン製、幅:24mm)を剥がした時に付着したZn量を蛍光X線によりカウント数として測定した。測定したZnカウント数を試験片幅:単位長さ(1m)当りのカウント数に補正して、下記の基準に応じて評価した。
○:良好(カウント数:0〜5000)
×:不良(カウント数:5000以上)
<機械的特性>
冷延鋼板マニュアル(日本鉄鋼協会編、1996年、p.86)に記載の方法にてr値を測定し、焼鈍時の保持時間:60秒での測定値に対する変化率(当該r値/焼鈍時間60秒でのr値)を求めた。
△:0.95≦変化率<1.0
×:変化率<0.95
<めっき密着性>
180°曲げ(0−T曲げ)試験を行い、テープ剥離した際のめっき剥離状態を評価した。
:めっき剥離・亀裂なし
△:亀裂あり
×:めっき剥離あり
以上により得られた結果を、条件と併せて表2に示す。
一方、アルカリ金属を含有する化合物を下地鋼板の表面に付着させた比較例では、不めっきが発生している。また、Sの付着量、酸化処理および還元処理のいずれかが本発明範囲外の比較例では、めっき品質、機械的特性のいずれか一つ以上が劣っている。
Claims (2)
- Si:0.1〜3mass%を含有する鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施すに先立ち、
元素量換算で0.1〜1000mg/m2のSを含有し、かつ、アルカリ金属を含有しない化合物を前記鋼板表面に付着させた後、
鋼板の最高到達温度:500℃超650℃以下で酸化処理を行い、次いで、還元性雰囲気中にて50秒以上60秒以下の保持時間で還元処理を行い、
次いで、溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - Si:0.1〜3mass%を含有する鋼板の表面に溶融亜鉛めっきを施すに先立ち、
元素量換算で0.1〜1000mg/m2のSを含有し、かつ、アルカリ金属を含有しない化合物を前記鋼板表面に付着させた後、
鋼板の最高到達温度:500℃超650℃以下で酸化処理を行い、次いで、還元性雰囲気中にて50秒以上60秒以下の保持時間で還元処理を行い、
次いで、溶融亜鉛めっき処理、合金化処理を行うことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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