JP5078744B2 - 車両用空調装置およびその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、暖房用の熱源としてエンジン冷却水を利用することができない、例えば電気自動車等に適用して好適な車両用空調装置およびその制御方法に関するものである。
例えば、電気自動車は、エンジン(内燃機関)を搭載していないため、エンジン冷却水を利用した暖房を行うことができない。そこで、電気自動車用の空調装置として、従来から電動圧縮機を用いたヒートポンプサイクルが提案されている。一般に、ヒートポンプサイクルによる暖房運転では、室内熱交換器を凝縮器、室外熱交換器を蒸発器として運転するため、外気温度が0℃以下になると、蒸発器に着霜するおそれがあり、その都度、デフロスト運転が必要となることから、安定した暖房能力の確保が困難とされている。
一方、電気ヒータを用いることにより、外気温度が0℃以下のときでも、安定した暖房能力を確保することができるが、電気ヒータを用いた場合は、暖房負荷が小さい外気温度が0℃以上の低負荷条件下でも、COP(成績係数)が最高1までしか得られないという問題がある。特に、電気自動車では、暖房効率が車両の航続距離に影響するため、暖房効率は重要な課題となる。そこで、電動圧縮機を用いたヒートポンプサイクルと、電気ヒータや車両の走行用モータ/インバータの排熱、あるいは燃焼式ヒータ等とを併用した車両用空調装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3477868号公報
しかしながら、特許文献1に示された車両用空調装置は、冷凍サイクルにおいて、冷媒圧縮機と、冷媒/熱媒熱交換器と、空気熱交換器と、ダクト中に設けられた冷媒蒸発器とが直列に接続されているとともに、熱媒サイクルにおいて、ダクト中に設けられた熱媒ヒータと、電気ヒータと、上記冷媒/熱媒熱交換器と、熱媒ポンプと、走行用モータ/インバータの排熱冷却器とが直列に接続された構成とされている。
このため、冷房時であって熱媒ポンプが停止中でも、冷媒/熱媒熱交換器で冷媒からの放熱により加熱された熱媒サイクル中の熱媒が、自然対流によって熱媒ヒータで放熱を生じる。従って、冷房時において、熱媒ヒータからの放熱量を零にすることはできず、再熱ロスにより冷房能力が低下されるという問題があった。また、走行用モータ/インバータの排熱冷却器やラジエータおよびバイパス回路が熱媒サイクル中に直列に接続されているため、熱媒サイクルが複雑でかつ長サイクルとなり、高能力の熱媒ポンプが必要となる等の問題もあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷房時の再熱ロスによる能力低下を解消し、暖房時は低外気温下でも安定した暖房が可能でかつ排熱による暖房やCOP>1以上の高効率暖房により年間を通じて消費動力の低減が可能な車両用空調装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用空調装置およびその制御方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている冷媒蒸発器、エアミックスダンパ、および熱媒ヒータにより温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替る冷媒循環切替手段、冷媒と外気とを熱交換する空気熱交換器、冷媒膨張手段、および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記冷媒蒸発器に対して冷媒と熱媒とを熱交換する冷媒/熱媒熱交換器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、熱媒循環ポンプ、前記冷媒/熱媒熱交換器、熱媒加熱用の電気ヒータ、および前記熱媒ヒータがこの順に接続されている熱媒サイクルと、を備え、前記熱媒サイクルに走行用モータの冷却回路が電磁弁を介して並列に接続され、前記熱媒ヒータに前記冷却回路中の熱媒が熱媒ポンプを介して循環可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、冷房時には、ヒートポンプサイクルを冷却運転し、HVACユニットの冷媒蒸発器において冷却された空気を車室内に吹き出すことにより冷房を行うことができる。このとき、冷媒蒸発器に並列に接続されている冷媒/熱媒熱交換器に冷媒が流通されることはなく、冷却回路の熱媒サイクル側への電磁弁を閉じておくことにより、熱媒ヒータでの再熱ロスを零にすることができる。また、暖房時には、(1)ヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、冷媒/熱媒熱交換器において高温高圧ガス冷媒により加熱された熱媒サイクルの熱媒をHVACユニットの熱媒ヒータに循環する。(2)電気ヒータへの通電により加熱された熱媒サイクルの熱媒をHVACユニットの熱媒ヒータに循環する。(3)走行用モータの冷却回路から電磁弁を介して熱媒をHVACユニットの熱媒ヒータに循環する。のいずれかまたはその組み合わせによりHVACユニットの熱媒ヒータで空気を加熱し、その空気を車室内に吹き出すことにより暖房を行うことができる。さらに、除湿時には、ヒートポンプサイクルを冷却運転し、冷媒蒸発器で空気を冷却するとともに、この冷却空気の一部を走行用モータの冷却回路から循環される熱媒または電気ヒータで加熱された熱媒を熱源とする熱媒ヒータで再熱することにより除湿することができる。これによって、冷房時は、再熱ロスを零にして冷房能力の低下を防止することができる。また、暖房時は、走行用モータからの排熱で暖房が可能な場合は、排熱による暖房で消費動力を削減し、また低外気温時には、電気ヒータを使用して安定した暖房能力を確保し、更に低暖房負荷条件下では、ヒートポンプ暖房によりCOP>1以上の高効率暖房を行うことができる。従って、−20℃以下の低温雰囲気でも安定した暖房が実現可能となるとともに、排熱による暖房やCOP>1以上の高効率暖房により年間を通じて空調装置の消費動力を低減することが可能となる。さらに、熱媒サイクルと走行用モータの冷却回路とが並列に接続されているため、熱媒サイクルの構成を簡素化し、熱媒循環ポンプの低容量化を図って低コスト化を実現することができる。
さらに、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記冷媒蒸発器には、冷媒入口側に電磁弁、冷媒出口側に逆止弁が設けられているとともに、前記冷媒/熱媒熱交換器には、高温高圧ガス冷媒の入口側に電磁弁、冷媒出口側に逆止弁が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、冷媒蒸発器を用いてヒートポンプサイクルを冷却運転する場合、冷媒/熱媒熱交換器の冷媒入口側の電磁弁を閉じることで冷媒出口側の逆止弁との相乗作用により冷媒/熱媒熱交換器への冷媒の溜まり込みを防止し、また、冷媒/熱媒熱交換器を用いてヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転する場合、冷媒蒸発器の冷媒入口側の電磁弁を閉じることで冷媒出口側の逆止弁との相乗作用により冷媒蒸発器への冷媒の溜まり込みを防止することができる。従って、冷房時、暖房時のいずれにおいても冷媒不足に陥ることなく、それぞれ高能力で運転することができる。
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記冷却回路には、放熱用のラジエータおよびバイパス回路がそれぞれ電磁弁を介して並列に接続され、前記ラジエータおよび前記熱媒ヒータのいずれか一方または双方に選択的に熱媒が流通可能とされていることを特徴とする。
本発明によれば、冷房時には、冷却回路側の熱媒をラジエータに流通させ、暖房時および除湿時には、冷却回路側の熱媒温度に応じてバイパス回路、ラジエータまたは熱媒ヒータ、あるいはラジエータおよび熱媒ヒータの双方のいずれかに熱媒を流通させることができる。従って、走行用モータからの排熱を空調装置側において最大限有効利用し、省動力化を図ることができる。
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、暖房時、前記冷却回路の熱媒温度および外気温度に応じて、前記走行用モータからの排熱、前記ヒートポンプサイクル、および前記電気ヒータの少なくとも1つを熱源として前記熱媒サイクルを循環する熱媒を加熱し、暖房を行うことを特徴とする。
本発明によれば、冷却回路の熱媒温度が高く、走行用モータからの排熱量が十分ある場合には、排熱のみで暖房を行い、排熱量が不足気味で外気温が0℃以上のときには、ヒートポンプによる加熱で排熱量の不足分を補い、排熱量が不足気味で外気温が0℃以下のときには、電気ヒータによる加熱で排熱量の不足分を補い、さらに、低外気温雰囲気下(例えば、−20℃程度)では、電気ヒータによる加熱のみにより暖房を行うことができる。従って、走行用モータからの排熱、ヒートポンプサイクル、および電気ヒータの3つの熱源を駆使して安定的でかつ消費動力の少ない暖房を実現することができる。
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、冷房時、前記電気ヒータをオフとするとともに、前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を閉じることにより、前記熱媒ヒータからの放熱量を零にして冷房を行うことを特徴とする。
本発明によれば、冷媒蒸発器と冷媒/熱媒熱交換器とが並列に接続されているため、冷房時、電気ヒータをオフとするとともに、冷却回路の熱媒サイクル側への電磁弁を閉じることにより、熱媒ヒータからの放熱量を実質零にすることができる。従って、自然対流等によって再熱ロスが生じることのない効率のよい冷房運転が可能となる。
さらに、本発明にかかる車両用空調装置の制御方法は、上述のいずれかの車両用空調装置をオート制御して暖房を行う車両用空調装置の制御方法において、前記熱媒ヒータ入口の熱媒目標温度を決定し、前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも高い場合には、排熱のみで暖房が可能と判断して前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を開き、前記冷却回路の熱媒を前記熱媒サイクル側に循環させて暖房を行うことを特徴とする。
本発明によれば、熱媒ヒータ入口の熱媒目標温度を決定し、この熱媒目標温度よりも冷却回路における走行用モータ出口の熱媒温度が高い場合には、排熱のみで暖房が可能と判断し、冷却回路の熱媒を熱媒サイクルに循環させて暖房を行うようにしているため、走行用モータからの排熱量を熱媒温度等で確認し、排熱量が十分に確保されているときは、優先的に排熱のみでの暖房を行うことができる。従って、空調装置側での消費動力を最小限に抑制することができる。
さらに、本発明の車両用空調装置の制御方法は、上記の車両用空調装置の制御方法において、前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも低く、前記熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも高い場合には、前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を開き、前記冷却回路の熱媒を前記熱媒サイクル側に循環させるとともに、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、前記ヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、前記冷媒/熱媒熱交換器で前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して排熱量の不足分を補い、外気温が0℃以下のときは、前記電気ヒータに通電し、前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して排熱量の不足分を補うことを特徴とする。
本発明によれば、走行用モータ出口の熱媒温度が、熱媒目標温度よりも低く、熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも高い場合には、排熱のみで暖房することが困難なため、排熱量の不足分を補うことにより排熱を利用しての暖房を行う。この際、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、空気熱交換器に着霜の心配がないことからヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転して排熱量の不足分を補い、外気温が0℃以下で空気熱交換器に着霜の心配があるときは、電気ヒータに通電して排熱量の不足分を補うことによって、排熱を利用した暖房を継続することができる。従って、走行用モータからの排熱を最大限暖房に利用して消費動力を抑制することができるとともに、不足分の熱量を外気温に応じ最適な熱源を選択して補うことにより、安定した暖房を実現することができる。
さらに、本発明の車両用空調装置の制御方法は、上述のいずれかの車両用空調装置の制御方法において、前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも低く、前記熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも低い場合には、前記冷却回路から前記熱媒サイクル側への熱媒の循環を停止するとともに、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、前記ヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、前記冷媒/熱媒熱交換器で前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して暖房を行い、外気温が0℃以下のときは、前記電気ヒータに通電し、前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して暖房を行うことを特徴とする。
本発明によれば、走行用モータ出口の熱媒温度が、熱媒目標温度よりも低く、熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも低い場合には、排熱利用による暖房が困難なため、冷却回路から熱媒サイクル側への熱媒の循環を停止する。そして、外気温が0℃以上のときは、空気熱交換器に着霜の心配がないことからヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、冷媒/熱媒熱交換器で熱媒サイクルの熱媒を加熱することによりCOP>1以上の高効率で暖房を行い、外気温が0℃以下の低外気温時には、電気ヒータに通電し、電気ヒータで熱媒サイクルの熱媒を加熱することにより安定した暖房能力を確保することができる。従って、−20℃以下の低温雰囲気でも安定した暖房を実現することができるとともに、低暖房負荷条件下では、COP>1以上の高効率暖房が可能なため、年間を通じて空調装置の消費動力を低減することができる。
本発明の車両用空調装置によると、冷房時、再熱ロスを零にして冷房能力の低下を防止することができる。また、暖房時、走行用モータからの排熱で暖房が可能な場合は、排熱による暖房により消費動力を削減し、また低外気温時には、電気ヒータを使用して安定した暖房能力を確保し、さらに低暖房負荷条件下では、ヒートポンプ暖房によりCOP>1以上の高効率暖房を行うことができる。従って、−20℃以下の低温雰囲気でも安定した暖房が実現可能となるとともに、排熱による暖房やCOP>1以上の高効率暖房により年間を通じて空調装置の消費動力を低減することが可能となる。更に、熱媒サイクルと走行用モータの冷却回路とが並列に接続されているため、熱媒サイクルの構成を簡素化し、熱媒循環ポンプの低容量化を図って低コスト化を実現することができる。
また、本発明の車両用空調装置の制御方法によると、走行用モータからの排熱量を熱媒温度等で確認し、排熱量が十分に確保されているときは、優先的に排熱のみによる暖房を行うことができるため、空調装置側での消費動力を最小限に抑制することができる。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の電気ヒータをオンとした動作状態でのシステム構成図が示され、図2ないし図8には、それぞれ別の動作状態でのシステム構成図が示されている。
車両用空調装置1は、車室内に配設され、車室内空気(内気)または車外空気(外気)を取り込んで温調し、それを車室内に吹き出すHVACユニット(Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)2と、車室外に配設され、HVACユニット2に対して冷房時は冷媒、暖房時は熱媒サイクル4を介して熱媒を供給可能な蒸気圧縮式のヒートポンプサイクル3と、車室外に配設され、HVACユニット2に対して暖房時に熱媒を供給可能な上記熱媒サイクル4と、車室外に配設され、車両の走行用モータを冷却するとともに、暖房時にその熱媒を熱媒サイクル4に循環可能とされた走行用モータの冷却回路5とから構成されている。
HVACユニット2は、空気流路11を形成するハウジング10と、空気流路11の上流側に接続され、内気または外気を取り込んで送風するブロア12と、空気流路11中に順次配設された冷媒蒸発器13、エアミックスダンパ14、および熱媒ヒータ15と、空気流路11の下流側に形成され、冷媒蒸発器13、エアミックスダンパ14、および熱媒ヒータ15により温調された空気を車室内に吹き出すデフ吹き出し口16、フェース吹き出し口17、およびフット吹き出し口18と、各吹き出し口16,17,18に設けられたデフダンパ19、フェースダンパ20、およびフットダンパ21と、を備えている。
ヒートポンプサイクル3は、HFC冷媒を圧縮する電動冷媒圧縮機30と、冷媒循環方向を切替る2個の3方切替弁31A,31Bを組み合わせた冷媒循環切替手段31と、外気と熱交換され、冷媒を蒸発または凝縮させる空気熱交換器32と、冷媒を断熱膨張させる膨張弁(冷媒膨張手段)33と、HVACユニット2に設けられている上記冷媒蒸発器13と、冷媒蒸発器13に対して並列に接続され、高温高圧ガス冷媒と熱媒とを熱交換させて熱媒を加熱する冷媒/熱媒熱交換器34と、アキュームレータ35と、を冷媒配管36により接続した閉サイクルの冷媒回路によって構成されている。
上記冷媒蒸発器13の冷媒入口側には、電磁弁37が設けられるとともに、冷媒出口側には、逆止弁38が設けられている。また、冷媒/熱媒熱交換器34の高温高圧ガス冷媒入口側には、電磁弁39が設けられ、冷媒出口側には、逆止弁40が設けられており、冷房時は、空気熱交換器32で凝縮され、膨張弁33で断熱膨張された冷媒が、電磁弁37を介して冷媒蒸発器13に供給され、暖房時は、冷媒圧縮機30から吐出された高温高圧のガス冷媒が、冷媒循環方向切替手段31、電磁弁39を介して冷媒/熱媒熱交換器34に供給可能とされている。なお、空気熱交換器32には、ファン41が付設されている。
熱媒サイクル4は、熱媒循環ポンプ50と、高温高圧ガス冷媒と熱媒とを熱交換させる上記冷媒/熱媒熱交換器34と、熱媒加熱用の電気ヒータ51と、HVACユニット2に設けられている上記熱媒ヒータ15と、をこの順に熱媒配管52により接続した閉サイクルの熱媒回路によって構成されている。この熱媒サイクル4において、熱媒ヒータ15の出口側には、逆止弁53が設けられている。
走行用モータの冷却回路5は、走行用モータ60に対して冷却用の熱媒を循環する熱媒ポンプ61と、走行用モータ60を冷却した後の熱媒が電磁弁62を介して循環される放熱用のラジエータ63と、ラジエータ63に対して電磁弁64を介して並列に接続されているバイパス回路65と、を熱媒配管66により接続した閉サイクルの熱媒回路によって構成されている。なお、ラジエータ63には、ファン67が付設されている。
また、上記冷却回路5は、電磁弁68および熱媒配管69を介して熱媒サイクル4における熱媒ヒータ15の入口と出口(逆止弁53の出口)間に並列に接続され、熱媒ポンプ61を介して熱媒ヒータ15に冷却回路5側から熱媒が循環可能とされている。
さらに、上記車両用空調装置1において、ヒートポンプサイクル3を構成する空気熱交換器32の空気吸い込み側には、外気温度を検出する温度センサ70が設けられ、熱媒サイクル4を構成する熱媒ヒータ15の入口側と出口側には、それぞれ熱媒の温度を検出する温度センサ71,72が設けられ、冷却回路5を構成する走行用モータ60の出口側には、熱媒の温度を検出する温度センサ73が設けられている。
以下に、上記の構成を有する車両用空調装置1の動作について説明する。
(外気温度が0℃以下の暖房)
外気温度が0℃以下の場合、ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転すると、空気熱交換器32に着霜することから、安定した暖房能力の確保が難しい。このため、ヒートポンプサイクル3を熱源として暖房運転を行うことは実質的に無理である。そこで、走行用モータ60からの排熱を利用できないときは、電気ヒータ51を用いて暖房を行うことになる。この場合、図1に示されるように、電気ヒータ51に通電して熱媒サイクル4中の熱媒を加熱し、この熱媒を熱媒循環ポンプ50により、破線矢印で示すように、HVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環させることによって暖房を行う。
HVACユニット2では、ブロア12により取り込まれた内気または外気が、冷媒蒸発器13を通過した後、熱媒ヒータ15に流通され、ここで熱媒との熱交換により加熱されて温風となる。この温風は、デフダンパ19、フェースダンパ20、およびフットダンパ21の開閉により選択されたデフ吹き出し口16、フェース吹き出し口17、およびフット吹き出し口18の少なくとも1つから車室内へと吹き出され、車室内の暖房あるいはフロントガラスのデフロストに供される。
このように、外気温度が0℃以下の低外気温時には、電気ヒータ51を用いることにより安定した暖房能力が確保できるため、例えば、−20℃以下の低温雰囲気下でも安定した暖房が可能となる。なお、温風の温度は、エアミックスダンパ14の開度により熱媒ヒータ15側に流通される空気流量と、熱媒ヒータ15をバイパスする空気流量との割合を調節することによって、コントロールすることができる。
(外気温度が0℃以上の暖房)
外気温度が0℃以上の場合、空気熱交換器32に着霜の心配がないことから、ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転して暖房することができる。このため、走行用モータ60からの排熱を利用できないときは、図2に示されるように、ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転して暖房を行うことになる。この場合、冷媒圧縮機30で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、実線矢印で示されるように、冷媒循環切替手段31、電磁弁39を介して冷媒/熱媒熱交換器34へと循環される。
冷媒/熱媒熱交換器34では、高温高圧ガス冷媒と熱媒循環ポンプ50により熱媒サイクル4を循環される熱媒とが熱交換される。ここで高温高圧ガス冷媒により加熱された熱媒は、破線矢印で示されるように、HVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環され、上述の如く暖房に供される。一方、冷媒/熱媒熱交換器34で熱媒との熱交換により冷却された冷媒は、凝縮液化され、逆止弁40を経て膨張弁33に至り、断熱膨張された後、気液二相冷媒となって空気熱交換器32に流入する。この気液二相冷媒は、空気熱交換器32においてファン41により流通される外気と熱交換され、外気から吸熱して蒸発ガス化された後、冷媒循環切替手段31、アキュームレータ35を経て冷媒圧縮機30へと吸入され、再び圧縮される。
以下、同様の動作を繰り返すことによって、ヒートポンプサイクル3によるヒートポンプ暖房が行われる。このヒートポンプによる暖房は、電気ヒータ51による暖房に比較して効率がよく、電気ヒータ51による暖房の場合、COP(成績係数)が最高で1までしか得られないが、ヒートポンプによる暖房では、COP>1以上の高効率暖房を期待することができる。従って、ヒートポンプ暖房と電気ヒータ51による暖房とを併用することにより、外気温度が0℃以下では、電気ヒータ51により安定的な暖房を実現し、外気温度が0℃以上では、ヒートポンプによって高効率暖房を実現し、車両の航続距離延長に貢献することができる。
(外気温度が0℃以上の暖房(ヒートポンプの不足分を電気ヒータで補う))
外気温度が0℃以上の場合は、上記のようにヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転して暖房を行うのが基本であるが、外気温が0℃近辺のときは、ヒートポンプサイクル3のみでは暖房能力が不足することがある。この場合は、図3に示されるように、ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転して行う上述の暖房に加えて、電気ヒータ51にも通電する。これにより、冷媒/熱媒熱交換器34および電気ヒータ51の双方で熱媒を加熱することができ、ヒートポンプによる能力不足分を電気ヒータ51によって補うことが可能となる。
なお、上記の場合において、ヒートポンプサイクル3の冷媒および熱媒サイクル4の熱媒は、それぞれ図3に示されるように、実線矢印方向および破線矢印方向に循環される。
従って、ヒートポンプの暖房能力が不足するときでも、その能力不足を補うことにより快適な暖房を実現することができる。なお、かかる場合でも、主熱源はヒートポンプサイクル3であり、電気ヒータ51を補助熱源とすることによって、高COPを維持することができる。
(外気温度が概ね10℃以上の暖房(排熱量が十分なとき))
外気温度が概ね10℃以上で、走行用モータ60から十分な排熱量(排熱温度が高い)が排出されている場合は、図4に示されるように、排熱を利用して暖房を行うことができるため、ヒートポンプサイクル3、熱媒循環ポンプ50、および電気ヒータ51は共にオフとされる。このとき、電磁弁68が開かれ、熱媒サイクル4と冷却回路5とが連通状態とされる。これにより、熱媒ポンプ61を介して走行用モータ60に循環され、走行用モータ60を冷却することによって加熱された熱媒の一部が、破線矢印で示されるように、電磁弁68、熱媒配管69を介して熱媒サイクル4側に循環される。
この熱媒は、HVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環され、空気流路11中を流れる空気を加熱することによって、上述の如く暖房に供される。熱媒ヒータ15で熱交換されて温度降下した熱媒は、逆止弁53を経て熱媒ポンプ61に吸引され、再び走行用モータ60へと循環される。なお、冷却回路5の熱媒は、通常は放熱量を調整するために、ラジエータ63とバイパス回路65とに分配されて循環されるようになっている。
このように、走行用モータ60から十分な排熱が排出されている場合には、ヒートポンプサイクル3、熱媒循環ポンプ50、および電気ヒータ51をオフとし、電磁弁68を介して冷却回路5側の熱媒を熱媒ヒータ15に循環することによって、排熱のみで暖房を行うことができる。従って、この場合は、車両用空調装置1側での消費動力を低減し、車両の航続距離延長に貢献することができる。
(外気温度が0℃以上の暖房(排熱量の不足分のみをヒートポンプで補う))
走行用モータ60から十分な量の排熱が出ていない場合でも、ある温度以上の排熱が出ておれば、排熱量の不足分を補うことによって、排熱利用による暖房を実現することができる。この場合、冷却回路5側の熱媒は、図5に破線矢印で示されているように、電磁弁68、熱媒配管69を介して全て熱媒ヒータ15側に循環され、上述の如く暖房に供される。一方、排熱量の不足分を補うために、外気温度が0℃以上であるときには、ヒートポンプサイクル3がヒートポンプ運転される。
ヒートポンプサイクル3では、冷媒が実線矢印方向に循環され、この間、冷媒/熱媒熱交換器34において熱媒サイクル4の熱媒を加熱する。この熱媒は、破線矢印方向に循環され、冷却回路5側からの熱媒と合流し、熱媒ヒータ15へと流入される。このため、冷却回路5側における排熱量の不足分をヒートポンプで補い、快適な暖房を実現することができる。従って、利用可能に排熱を最大限利用し、車両用空調装置1側での消費動力を低減することが可能となる。
(除湿暖房(排熱量が十分なとき))
暖房時に窓ガラスが曇るときは、除湿暖房が必要となる。この場合、冷却回路5側において十分な排熱量があるときは、図6に示されるように、電磁弁68が開かれ、冷却回路5側の熱媒の一部が、破線矢印で示すように、熱媒配管69を介して熱媒サイクル4側に循環され、熱媒ヒータ15へと供給される。一方、ヒートポンプサイクル3は、冷却運転され、冷媒圧縮機30で圧縮された冷媒は2点鎖線矢印方向に循環される。
つまり、冷媒圧縮機30で圧縮された冷媒は、冷媒循環切替手段31によって空気熱交換器32側に導かれ、ファン41を介して流通される外気と熱交換されることにより凝縮液化される。この冷媒は、膨張弁33で断熱膨張されて気液二相流となり、電磁弁37を経てHVACユニット2の冷媒蒸発器13に流入され、ブロア12から送風される外気または内気と熱交換される。冷媒蒸発器13で空気と熱交換され、空気を冷却することによって蒸発ガス化された冷媒は、逆止弁38、冷媒循環方向手段31、アキュームレータ35を経て再び冷媒圧縮機30に吸入される。以下、同様の動作を繰り返すことにより、ヒートポンプサイクル3は冷却運転される。
この間、HVACユニット2では、冷媒蒸発器13で冷却されることにより除湿された空気が、その下流側の熱媒ヒータ15で再熱されることによって、除湿された温風が生成される。この温風がデフ吹き出し口16またはフット吹き出し口18、あるいはデフ吹き出し口16およびフット吹き出し口18の双方から車室内へと吹き出され、除湿暖房が行われる。
(除湿暖房(排熱量が不足しているとき))
除湿暖房が必要であるが、冷却回路5側において排熱量が不足しているときは、図7に示されるように、電磁弁68が開かれ、冷却回路5側の熱媒の一部が、破線矢印で示されるように、熱媒配管69を介して熱媒サイクル4側に循環される。この熱媒は、熱媒ヒータ15に供給されるが、これだけでは熱量が不足する。そこで、熱媒循環ポンプ50および電気ヒータ51がオンとされる。これにより、電気ヒータ51で加熱された熱媒サイクル4の熱媒が、冷却回路5からの熱媒と合流して熱媒ヒータ15へと循環され、不足分の熱量が補充される。
このように、不足分の熱量が補われることによって、HVACユニット2では、冷媒蒸発器13により冷却除湿された空気を、熱媒ヒータ15により十分に再熱することが可能となる。従って、快適な除湿暖房を実現することができる。
(冷房(熱媒ヒータでの放熱なし))
冷房時、ヒートポンプサイクル3は、図8に示されるように、冷媒が2点鎖線矢印方向に循環され、冷却運転される。この場合、冷媒/熱媒熱交換器34への冷媒の流れは、電磁弁39および逆止弁40により止められる。一方において、熱媒循環ポンプ50および電気ヒータ51がオフとされるため、熱媒ヒータ15への熱媒循環が停止され、さらに、電磁弁68が閉鎖されることによって、冷却回路5から熱媒サイクル4への熱媒循環も停止される。
このため、HVACユニット2においては、熱媒ヒータ15からの放熱量を実質零とすることができる。これによって、冷媒蒸発器13で冷却された空気の熱媒ヒータ15での再熱ロスを零にし、自然対流等により再熱ロスが生じることのない効率のよい冷房を実現することができる。
しかして、本実施形態によれば、以下の作用効果が奏される。
冷房時には、ヒートポンプサイクル3を冷却運転し、HVACユニット2の冷媒蒸発器13において冷却された空気を車室内に吹き出すことにより冷房を行うことができる。このとき、冷媒蒸発器13に並列に接続されている冷媒/熱媒熱交換器34に冷媒が流通されることはなく、冷却回路5の熱媒サイクル4側への電磁弁68を閉じておくことによって、熱媒ヒータ15からの放熱量を実質的零にすることができる。従って、冷房時は、再熱ロスを零にして冷房能力の低下を防止し、自然対流等によって再熱ロスが生じることのない効率のよい冷房運転を行うことができる。
また、暖房時には、(1)ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転し、冷媒/熱媒熱交換器34で高温高圧ガス冷媒により加熱された熱媒サイクル4の熱媒をHVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環する。(2)電気ヒータ51への通電により加熱された熱媒サイクル4の熱媒をHVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環する。(3)走行用モータの冷却回路5から電磁弁68を介して熱媒をHVACユニット2の熱媒ヒータ15に循環する。のいずれかまたはその組み合わせによりHVACユニット2の熱媒ヒータ15で空気を加熱し、その空気を車室内に吹き出すことにより暖房を行うことができる。さらに、除湿時には、ヒートポンプサイクル3を冷却運転し、冷媒蒸発器13で空気を冷却するとともに、この冷却空気の一部を走行用モータの冷却回路5から循環される熱媒または電気ヒータ51で加熱された熱媒を熱源とする熱媒ヒータ15で再熱することにより除湿することができる。このように、暖房時(除湿時)は、3つの熱源を駆使することによって、走行用モータ60からの排熱で暖房が可能な場合は、排熱による暖房により消費動力を削減し、また低外気温時には、電気ヒータ51を使用して安定した暖房能力を確保し、更に低暖房負荷条件下では、ヒートポンプ暖房によりCOP>1以上の高効率暖房を行うことができる。このため、−20℃以下の低温雰囲気でも安定した暖房が実現可能となるとともに、排熱による暖房やCOP>1以上の高効率暖房により年間を通じて空調装置の消費動力を低減することが可能となる。
さらに、熱媒サイクル4と走行用モータ60の冷却回路5とが並列に接続されているため、熱媒サイクル4を簡素化するとともに、サイクル長を短くすることができる。これによって、熱媒循環ポンプ50の低容量化を図り、コストダウンを実現することができる。
また、冷媒蒸発器13を用いてヒートポンプサイクル3を冷却運転する場合、冷媒/熱媒熱交換器34の冷媒入口側の電磁弁39を閉じることで冷媒出口側の逆止弁40との相乗作用により冷媒/熱媒熱交換器34への冷媒の溜まり込みを防止し、冷媒/熱媒熱交換器34を用いてヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転する場合、冷媒蒸発器13の冷媒入口側の電磁開閉弁37を閉じることで冷媒出口側の逆止弁38との相乗作用により冷媒蒸発器13への冷媒の溜まり込みを防止することができる。従って、冷房時、暖房時のいずれにおいても冷媒不足に陥ることなく、それぞれ高能力で運転することができる。
さらに、本実施形態においては、冷房時には、走行用モータ60の冷却回路5側の熱媒をラジエータ63に流通させ、暖房時および除湿時には、冷却回路5側の熱媒温度に応じてバイパス回路65、ラジエータ63または熱媒ヒータ15、あるいはラジエータ63および熱媒ヒータ15の双方のいずれかに熱媒を流通させることができる。従って、走行用モータ60からの排熱を空調装置1側において最大限有効利用し、省動力化を図ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図9ないし図14を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に係る車両用空調装置1をオート制御して暖房を行う制御方法に係るものである。図9ないし図14には、その制御フローチャートが示されている。
制御が開始されると、図9に示されるように、ステップS1において、設定の読み込みが実行される。この設定読み込みS1では、図10に示されるように、ブロア風量設定S20(Read Blw Setting)、温度設定S21(Read T Setting)、内気/外気設定S22(Read Air Intake Setting)、吹き出しモード設定S23(Read Mode Setting)、マニアル/オート設定S24(Read Auto Man Selection)の設定が順次読み込まれる。
ステップS1での設定読み込みが終了とすると、ステップS2に移行し、センサ読み込みが実行される。このセンサ読み込みS2では、図11に示されるように、温度センサ70からの外気温度S30(Read T Amb)、走行用モータ60の出口に設けた温度センサ73からの熱媒温度S31(Read T Mtr Out)、熱媒ヒータ15の入口に設けた温度センサ71からの熱媒温度S32(Read T Htr In)、熱媒ヒータ15の出口に設けた温度センサ72からの熱媒温度S33(Read T Htr Out)、HVACユニット2に設けた温度センサからの吹き出し空気温度S34(Read T Disc)、冷媒蒸発器13に設けた温度センサからのフィン温度S35(Read T Evap Fin)、車室内に設けた温度センサからの室内温度S36(Read T Cabin)、および車室内に設けた湿度センサからの室内湿度S37(Read Humid Cabin)等、各センサからの検出値が順次読み込まれる。
ステップS2でのセンサ読み込みが終了とすると、ステップS3に移行し、オート制御か否かが判定され、「NO」と判定されると、ステップS4のHVAC設定制御(マニアル制御)に移行される。一方、「YES」と判定されると、オート制御するため、ステップS5のHVAC設定決定に移行される。HVAC設定決定S5では、ステップS2で読み込まれた各センサからの入力値に基づいて、図12に示されるように、内気/外気の設定S40(Set REC OSA Setting)、設定温度の設定S41(Set Temp Setting)、吹き出しモードの設定S42(Set Mode Disc Setting)、HVACモード(冷房/除湿/暖房)の設定S43(Set Mode HVAC Setting)、ブロア風量の設定S44(Set Blw Spd Setting)等が順次実行される。
ステップS5でHVAC設定が実行されると、ステップS6に移行し、HVAC設定が暖房モードか否かが判定される。「NO」と判定されると、ステップS7に移行し、冷房制御が実行される。一方、「YES」と判定されると、ステップS8に移行し、熱媒ヒータ15の入口における熱媒目標温度(T Htr In Tgt)およびブロア風量設定(Set Blw Spd Setting)を決定する。この熱媒目標温度(T Htr In Tgt)およびブロア風量設定(Set Blw Spd Setting)は、図13に示されるように、ステップS50において、上記した設定温度(Temp Setting)、室内温度(T Cabin)、および外気温度(T Amb)から暖房要求度を算出し、図13中の表に基づいて決定される。
ステップS8において、熱媒目標温度およびブロア風量が決定されると、ステップS9の排熱利用制御に移行する。排熱利用制御S9では、図14に示されるように、まず、ステップS60において、熱媒ヒータ15の入口の熱媒目標温度(T Htr In Tgt)が、走行モータ60の出口の熱媒温度(T Mtr Out)以上か否かが判定される。ここで、熱媒温度(T Mtr Out)は、走行モータ60の出口から熱媒ヒータ15の入口までの放熱分(dT Mtr Loss)を引いた値を用い、T Mtr Out−dT Mtr Loss<T Htr In Tgtか否かを判定する。なお、放熱分(dT Mtr Loss)は、配管長、径、厚さ、材質、熱媒流量、外気温等から算出される。
その結果、「NO」であれば、走行用モータ60の出口側の熱媒温度が、熱媒ヒータ15の入口の熱媒目標温度よりも高く、排熱量が十分あると判断することができる。従って、この場合は、ステップS61に移行して電磁弁68を開き、熱媒配管69を介して熱媒サイクル4側の熱媒ヒータ15に冷却回路5側の熱媒を流通させ、排熱のみによる暖房を実行する。
また、「YES」のときは、ステップS62に移行し、続いて熱媒ヒータ15の出口の熱媒温度(T Htr Out)が、走行用モータ60の出口の熱媒温度(T Mtr Out)よりも低いか否かが判定される(T Htr Out<T Mtr Out)。この結果、「YES」であれば、ステップS61に移行し、上述の如く電磁弁68を開き、排熱を利用した暖房を実行する。この場合、排熱だけでは熱量が不足するが、走行モータ60の出口の熱媒温度(T Mtr Out)が熱媒ヒータ15出口の熱媒温度(T Htr Out)よりも高いことから、排熱を利用した暖房を実行し、熱媒ヒータ15の入口の熱媒目標温度までの不足分をヒートポンプサイクル3のヒートポンプ運転または電気ヒータ51のいずれかにより補う。
不足熱量の補充は、図9に示されるように、ステップS10において、先ず、外気温度(T amb)が所定外気温(T amb1;例えば、0℃)より低いか否かが判定される。この結果、0℃以下であれば(YESであれば)、ステップS11に移行し、電気ヒータ51に通電されるとともに、熱媒循環ポンプ50が運転され、電気ヒータ51で加熱された熱媒が不足分の熱量として熱媒ヒータ15に補充される。また、0℃以上であれば(NOであれば)、ステップS12に移行し、ヒートポンプサイクル3がヒートポンプ運転され、冷媒/熱媒熱交換器34で加熱された熱媒が不足分の熱量として熱媒ヒータ15に補充される。
また、上記した排熱利用制御のステップS62において、「NO」、すなわち走行モータ60の出口の熱媒温度(T Mtr Out)が、熱媒ヒータ15の出口の熱媒温度(T Htr Out)よりも低い(T Htr Out>T Mtr Out)と判定されると、排熱利用制御が終了され、上記のステップS10に移行する。この場合は、排熱の温度が低く、排熱を利用した暖房が困難とされたときであり、電磁弁68は閉状態に維持され、冷却回路5側から熱媒ヒータ15に熱媒が循環されることはない。
ステップS10においては、外気温度(T amb)が所定外気温(T amb1;例えば、0℃)より低いか否かが判定される。この結果、外気温が0℃以下であれば(YESであれば)、ステップS11に移行し、電気ヒータ51に通電されるとともに、熱媒循環ポンプ50が運転され、電気ヒータ51を使用した暖房運転が実行される。また、外気温が0℃以上であれば(NOであれば)、ステップS12に移行し、ヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転した暖房運転が実行される。
しかして、本実施形態によれば、以下の作用効果が奏される。
熱媒ヒータ15の入口での熱媒目標温度を決定し、この熱媒目標温度よりも冷却回路5における走行用モータ60の出口の熱媒温度が高い場合には、排熱のみで暖房が可能と判断し、冷却回路5の熱媒を熱媒サイクル4に循環して暖房を行うようにしているため、走行用モータ60からの排熱量を熱媒温度等で確認し、排熱量が十分に確保されているときは、優先的に排熱のみによる暖房を行うことができる。従って、車両用空調装置1側での消費動力を最小限に抑制し、省動力化を図ることができる。
また、走行用モータ60の出口の熱媒温度が、熱媒ヒータ15の入口での熱媒目標温度よりも低く、熱媒ヒータ15の出口の熱媒温度よりも高い場合には、排熱のみで暖房することが困難なため、排熱量の不足分を補うことにより排熱を利用しての暖房を行う。この際、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、空気熱交換器32に着霜の心配がないことからヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転して排熱量の不足分を補い、外気温が0℃以下で空気熱交換器32に着霜の心配があるときは、電気ヒータ51に通電して排熱量の不足分を補うことにより、排熱を利用した暖房を継続することができる。従って、走行用モータ60からの排熱を最大限暖房に利用して消費動力を抑制することができるとともに、不足分の熱量を外気温に応じ最適な熱源を選択して補うことにより、安定した暖房を実現することができる。
さらに、走行用モータ60の出口の熱媒温度が、熱媒ヒータ15の入口での熱媒目標温度よりも低く、熱媒ヒータ15の出口の熱媒温度よりも低い場合には、排熱利用による暖房が困難であるため、冷却回路5から熱媒サイクル4側への熱媒の循環を停止する。そして、外気温が0℃以上のときは、空気熱交換器32に着霜の心配がないことからヒートポンプサイクル3をヒートポンプ運転し、冷媒/熱媒熱交換器34で熱媒サイクル4の熱媒を加熱することによりCOP>1以上の高効率で暖房を行い、外気温が0℃以下の低外気温時には、電気ヒータ51に通電し、電気ヒータ51で熱媒サイクル4の熱媒を加熱することにより安定した暖房能力を確保することができる。従って、−20℃以下の低温雰囲気でも安定した暖房を実現することができるとともに、低暖房負荷条件下では、COP>1以上の高効率暖房が可能なため、年間を通じて空調装置1の消費動力を低減することができる。
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態において、車両の走行用モータ60には、モータ駆動用のインバータが含まれてもよく、この場合、冷却回路5は、インバータ冷却回路を含むものとされる。これによれば、発熱部品が含まれるインバータからの排熱をも有効利用できるようになる。
また、上記した実施形態では、冷媒循環切替手段31について、2個の3方切替弁31A,31Bを組み合わせた構成としているが、1個の4方切替弁により代替してもよいことはもちろんである。さらに、空気熱交換器32用のファン41とラジエータ63用のファン67は、空気熱交換器32とラジエータ63とを一体的に組み付けた構成とすることにより、1つのファンにて共用化することが可能である。
本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の外気温度が0℃以下の暖房状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の外気温度が0℃以上の暖房状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の外気温度が0℃以上の暖房(ヒートポンプの不足分を電気ヒータで補う)状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の外気温度が概ね10℃以上の暖房(排熱量が十分なとき)状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の外気温度が0℃以上の暖房(排熱量の不足分のみをヒートポンプで補う)状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の除湿暖房(排熱量が十分なとき)状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の除湿暖房(排熱量が不足しているとき)状態でのシステム構成図である。 図1に示す車両用空調装置の冷房(熱媒ヒータでの放熱なし)状態でのシステム構成図である。 本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の制御方法のフローチャート図である。 図9に示す制御フローチャートにおける設定読み込みのサブルーチン図である。 図9に示す制御フローチャートにおけるセンサ読み込みのサブルーチン図である。 図9に示す制御フローチャートにおけるHVAC設定決定のサブルーチン図である。 図9に示す制御フローチャートにおける熱媒目標温度決定(T Htr In Tgt)設定決定のサブルーチン図である。 図9に示す制御フローチャートにおける排熱利用制御のサブルーチン図である。
符号の説明
1 車両用空調装置
2 HVACユニット
3 ヒートポンプサイクル
4 熱媒サイクル
5 冷却回路
11 空気流路
13 冷媒蒸発器
14 エアミックスダンパ
15 熱媒ヒータ
30 冷媒圧縮機
31 冷媒循環切替手段
32 空気熱交換器
33 膨張弁(冷媒膨張手段)
34 冷媒/熱媒熱交換器
37,39 電磁弁
38,40 逆止弁
50 熱媒循環ポンプ
51 電気ヒータ
60 走行用モータ
61 熱媒ポンプ
62,64,68 電磁弁
63 ラジエータ
65 バイパス回路
70,71,72,73 温度センサ

Claims (8)

  1. 空気流路中に配設されている冷媒蒸発器、エアミックスダンパ、および熱媒ヒータにより温調された空気を車室内に吹き出すHVACユニットと、
    冷媒圧縮機、冷媒の循環方向を切替る冷媒循環切替手段、冷媒と外気とを熱交換する空気熱交換器、冷媒膨張手段、および前記冷媒蒸発器がこの順に接続されるとともに、前記冷媒蒸発器に対して冷媒と熱媒とを熱交換する冷媒/熱媒熱交換器が並列に接続されているヒートポンプサイクルと、
    熱媒循環ポンプ、前記冷媒/熱媒熱交換器、熱媒加熱用の電気ヒータ、および前記熱媒ヒータがこの順に接続されている熱媒サイクルと、を備え、
    前記熱媒サイクルに走行用モータの冷却回路が電磁弁を介して並列に接続され、前記熱媒ヒータに前記冷却回路中の熱媒が熱媒ポンプを介して循環可能とされていることを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記冷媒蒸発器には、冷媒入口側に電磁弁、冷媒出口側に逆止弁が設けられているとともに、前記冷媒/熱媒熱交換器には、高温高圧ガス冷媒の入口側に電磁弁、冷媒出口側に逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 前記冷却回路には、放熱用のラジエータおよびバイパス回路がそれぞれ電磁弁を介して並列に接続され、前記ラジエータおよび前記熱媒ヒータのいずれか一方または双方に選択的に熱媒が流通可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
  4. 暖房時、前記冷却回路の熱媒温度および外気温度に応じて、前記走行用モータからの排熱、前記ヒートポンプサイクル、および前記電気ヒータの少なくとも1つを熱源として前記熱媒サイクルを循環する熱媒を加熱し、暖房を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用空調装置。
  5. 冷房時、前記電気ヒータをオフとするとともに、前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を閉じることにより、前記熱媒ヒータからの放熱量を零にして冷房を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用空調装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された車両用空調装置をオート制御して暖房を行う車両用空調装置の制御方法において、
    前記熱媒ヒータ入口の熱媒目標温度を決定し、前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも高い場合には、排熱のみで暖房が可能と判断して前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を開き、前記冷却回路の熱媒を前記熱媒サイクル側に循環させて暖房を行うことを特徴とする車両用空調装置の制御方法。
  7. 前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも低く、前記熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも高い場合には、前記冷却回路の前記熱媒サイクル側への前記電磁弁を開き、前記冷却回路の熱媒を前記熱媒サイクル側に循環させるとともに、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、前記ヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、前記冷媒/熱媒熱交換器で前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して排熱量の不足分を補い、外気温が0℃以下のときは、前記電気ヒータに通電し、前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して排熱量の不足分を補うことを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置の制御方法。
  8. 前記冷却回路の前記走行用モータ出口の熱媒温度が、前記熱媒目標温度よりも低く、前記熱媒ヒータ出口の熱媒温度よりも低い場合には、前記冷却回路から前記熱媒サイクル側への熱媒の循環を停止するとともに、外気温が0℃以上か否かを判断し、外気温が0℃以上のときは、前記ヒートポンプサイクルをヒートポンプ運転し、前記冷媒/熱媒熱交換器で前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して暖房を行い、外気温が0℃以下のときは、前記電気ヒータに通電し、前記熱媒サイクルの熱媒を加熱して暖房を行うことを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調装置の制御方法。
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