JP4894958B2 - 水溶性薬物徐放化技術 - Google Patents
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Description
本発明は、とりわけ、ミセル形成薬物と反対電荷を有するポリマーを含有する経口徐放性製剤を提供する。ミセルの概念は、界面活性剤あるいは薬物キャリアーの分野でよく知られているけれども、ミセル形成薬物の徐放性組成物への応用は全く知られていない。さらに、とても驚くべきことに、本組成物は活性物質、特に水溶性薬物の徐放に非常に有効である。さらなる利点として、組成物が多量の薬物を含有する場合でさえ、本組成物は徐放を提供することができる。
"活性物質"という用語は、経口投与のための生理的に許容される錠剤中に含まれ得るあらゆる薬物を意味する。好ましい活性物質には、電気的に電荷を帯びたコロイド粒子を形成できるミセル形成活性物質を含む。
本発明は、とりわけ、ミセルを形成する活性物質(すなわち薬物)および反対電荷を有し、ハイドロゲルマトリックスを形成する高分子を含有する経口徐放性製剤を提供する。この組成物は、一般的に薬物と高分子賦形剤を直接打錠することにより製造される。
本発明における活性物質は、ミセルを形成する薬物であれば特に限定されない。ミセル形成は抗うつ薬、アドレナリンβ受容体拮抗剤、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン類、抗アセチルコリン薬、精神安定剤、抗菌剤、抗生物質において観察されている(Attwood et al., J. Pharm. Pharmac., 30, 176-180 (1978); Attwood etal., J. Pharm. Pharmac., 31, 392-395 (1979); Attwood et al., J. Pharm.Pharmac., 38, 494-498 (1986); Attwood J. Pharm. Pharmac., 24, 751-752 (1972);Attwood et al. J. Pharm. Sci.v.63, no. 6, 988993 (1974); Attwood, J. Phar.Pharmacol., 28, 407-409 (1976)参照)。ミセルを形成する代表的な抗うつ薬には、塩酸イミプラミン、塩酸オミプラモール、塩酸アミトリプチリンを含む。ミセルを形成する代表的なアドレナリンβ受容体拮抗剤には、塩酸オキプレノロール、塩酸アセブトロール、塩酸ソラトールを含む。ミセルを形成する代表的な麻酔薬には、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン、塩酸アメソカインを含む。ミセルを形成する代表的な抗ヒスタミン薬には、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸クロルシクリジン、ジフェニルピラリン、塩酸プロメタジン、塩酸ブロムジフェンヒドラミン、塩酸トリペレナミン、マレイン酸メピラミンを含む。ミセルを形成する代表的なフェノチアジン類は、塩酸クロルプロマジン、塩酸プロメタジンを含む。他のミセル形成薬物には、精神安定剤、抗菌剤、抗生物質を含む。
本発明の組成物には、また、ミセル形成薬物と反対の電荷を有する少なくとも一つの高分子賦形剤または高分子を含有する。好ましい態様として、電荷を有する賦形剤とミセル形成薬物との協力的相互作用が、本発明の徐放特性の基礎となる。
本発明の錠剤マトリックスからの薬物放出の改良は、例えば、種々のコーティング、例えば、アンバライトIRP-69とのイオン交換複合体のような、あらゆる既知の方法により達成することもできる。本発明の錠剤は、胃腸の運動性を減少させる薬物を含有すること、あるいは共投与することもできる。活性物質は、生物学的に活性な化合物を化学修飾したプロドラッグを生成するように改良することもでき、このプロドラッグはinvivoにおいて酵素、あるいは加水分解などにより活性化合物を遊離する。補助層やコーティングは、薬物放出の速度やタイミングを制御する付加的な手段を提供する拡散バリアーとして役割を果たすことができる。
必要に応じて、本発明の製剤は、適量の他の製薬的に許容される賦形剤(例えば、乳糖、マンニトール、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、米デンプン、トウモロコシデンプン及び結晶セルロース)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びアラビアガム)、膨潤剤(例えば、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースカルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、リン酸水素カルシウム、及び無水リン酸水素カルシウム)、流動化剤(例えば、含水シリカ、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル)、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄)、界面活性剤(例えば、硫酸ラウリルナトリウム、脂肪酸スクロースエステル)、コーティング剤(例えば、ゼイン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)、緩衝剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、酒石酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、アスコルビン酸)、芳香剤(例えば、1−メントール、ペパーミントオイル、及びウイキョウオイル)、保存剤(例えば、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、p-安息香酸メチル、及び安息香酸エチル)のような添加剤を含有してもよい。
本発明の製剤は、ある形状の固形製剤であり、あらゆる通常の製法により製造することができる。代表的な製造法には、例えば、圧縮錠剤製造法を含む。これらの製造法は、混合及び、必要に応じて活性物質と電荷を有する高分子、及び必要に応じて別の添加剤との造粒、及びこれら成分/組成の圧縮成形を含む。別の製造法には、例えば、カプセル圧縮充填法、混合物を溶融させそれを流し込むことにより成形処理を施す押出成形法、射出成形法及びその他同様な方法を含む。また、例えば、糖コーティングのようなあらゆるコーティング処理を施してもよい。
この試験法は、本発明の基本的な製剤の製造法及び薬物放出の測定について説明する。
カーボポール971(BFGoodrich);ポリオックス303(ユニオンカーバイト);二種類のカラギーナン、ビスカリン(登録商標) 109及びゲルカリン(FMC);サンチュラルTM180 (Monsanto Pharmaceutical Ingredients)、キサンタンガムであるケルトン(登録商標) LVCR (MonsantoPharmaceutical Ingredients)、アルギン酸ナトリウムキトサン(M. W. International, Inc.);マクロゴール6000(日本油脂);メトセルK100M(ダウケミカル);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);ガムセルロース12M31P TP(ヘラクレス);カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム;及び硫酸デキストラン(シグマ)。
in vitro薬物放出はinvitro溶出試験により測定した。これらの実験はアメリカ薬局方第2法、パドル回転速度100rpm、1000mLの試験液を用い、実施例1から10を実施した。薬物放出は、アメリカ薬局方に従い調製した、いずれも酵素非添加でり、pH1.2の人工胃液(SGF)、またはpH7.5の人工腸液(SIF)を用いて評価した。シンカーは全ての実験で用いた。予め決められた間隔で、サンプルを容器より採取し、波長240nmの紫外−可視吸収分光計により定量した。
この実施例は、薬物放出速度は薬物溶解度と相関せず、特異的相互作用がその放出速度に影響を及ぼすことを説明している。
この実施例は、薬物のlog Pが本発明の組成物により徐放が達成されるかを予測するのに利用でき得ることを説明している。log Pの特性に基づき薬物放出挙動を予測でき得ることは、本発明の重要な利点の一つである。
この実施例は、PAA(ポリアクリル酸)/PEO(ポリエチレンオキサイド)の比率が1:1.5の添加剤混合物を用いることにより、恒久的な正電荷を有する分子の徐放が達成できることを説明している。
この実施例は、反対電荷を有する薬物と高分子添加剤が薬物徐放に重要であることを説明している。図5に示すように、易水溶性の負電荷薬物であるセファゾリンナトリウム及びセフメタゾールナトリウムは、負電荷を帯びているPAA(ポリアクリル酸)/PEO(ポリエチレンオキサイド)マトリックスから拡散により抜け、徐放を達成することなく、そのT50は約5時間である。
この実施例は、PAA(ポリアクリル酸)/PEO(ポリエチレンオキサイド)の比率が1:1.5のマトリックスからの薬物放出に及ぼす液環境の影響について説明している。実施例1-4に記載の初期実験は、ポリアクリル酸がイオン化する人工腸液(SIF)中にて行った。胃環境下における放出速度論を評価するために、各種の水溶性薬物の溶出を改変した人工胃液(SGF)中において実施した。表3は各種薬物のSGF及びSIF中におけるT50値について比較する。
この実施例は、SGF(人工胃液)及びSIF(人工腸液)の両条件において、徐放を提供する高分子添加剤の組み合わせについて説明している。
25重量%の塩酸ジルチアゼム(DI)を含有し、PAA(ポリアクリル酸)と組み合わせた七種類の多糖類(カラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム))について、薬物放出速度を試験した(図6)。PAA(ポリアクリル酸)とカラギーナンを組み合わせることにより、SGF(人工胃液中)において最も遅い薬物放出を提供する結果が示された。この効果はおそらく、低pHにおいても負電荷を有し、カラギーナンと薬物間の相互作用を可能にするカラギーナン官能基(-SO4-)の強酸性のためと思われる。
異なるタイプのカラギーナンと同様に硫酸デキストランについて、PAA(ポリアクリル酸)/PEO(ポリエチレンオキサイド)比率1:1及び塩酸ジルチアゼム(25重量%)と組み合わせて用い、その放出速度をSGF(人工胃液)及びSIF(人工腸液)中において測定した。硫酸系高分子を含有する全ての組み合わせについて徐放が観察された(図7)。
PAA(ポリアクリル酸)/カラギーナン(1:1)組成物中のPAA(ポリアクリル酸)を高分子量のPEO(ポリエチレンオキサイド)にて置換する時、PAA(ポリアクリル酸)/カラギーナン(1:1)とPEO(ポリエチレンオキサイド)/カラギーナン(1:1)組成物のSGF(人工胃液)中における放出挙動は、約6時間にわたり重なる(図8,a)。この後、PEO(ポリエチレンオキサイド)/カラギーナンマトリックスの速い浸食により、速やかな薬物放出がおこる。これに対して、SIF(人工腸液)中においては、PAA(ポリアクリル酸)/カラギーナン組成物がPEO(ポリエチレンオキサイド)/カラギーナン組成物よりも全時間にわたり遅い薬物放出を示す(図8,b)。従い、PAA(ポリアクリル酸)とカラギーナンの組み合わせは、SGF(人工胃液)及びSIF(人工腸液)の両方において最も良好なin vitro薬物放出特性を提供することができる。
図9は、PAA(ポリアクリル酸)/カラギーナン(1:1)マトリックスからの塩酸ジルチアゼム(25重量%)の放出は、SGF(人工胃液)及びSIF(人工腸液)の両方において直線的であること、及び両液における放出速度が一致することを説明している。試験液を2時間後に取り替えた試料の溶出試験は、図9の挙動に非常に近似した直線的な放出挙動であった。
この実施例は、最適な高分子添加剤組成が試験液依存性であることを説明している(図10)。
この実施例は、薬物含量を60重量%まで増大させる範囲において、薬物含量はSIF(人工腸液)中における放出速度にほとんど影響を及ぼさないことを説明している。薬物含量を50重量%まで増大させる範囲において、SGF(人工胃液)中における放出速度の増大は比較的小さい(図12)。
この実施例は、本発明の組成物が薬物徐放に優れていることを説明している。
この実施例は、最初の組成物(PAA(ポリアクリル酸)/PEO(ポリエチレンオキサイド))及びPAA(ポリアクリル酸)/カラギーナンからなる新規組成物からの各種薬物の放出速度を比較している。
(溶出試験)
in vitro薬物放出はinvitro溶出試験により測定した。これらの実験は日本薬局方第14改正(以降、日局とする)溶出試験第2法(パドル法)、パドル回転速度200rpm、900mLの試験液を用いて実施した。薬物放出は、pH1.2の日局崩壊試験第1液(以降、日局第1液とする)、あるいは、pH6.8の日局崩壊試験第2液(以降、日局第2液とする)を用いて評価した。シンカーは全ての実験で使用しなかった。予め決められた間隔で、サンプルを容器より採取し、波長250nmの紫外−可視吸収分光計を用いて定量した。
日局第1液及び日局第2液を用いて、以下のようにゲル化試験を行った。試験錠剤を37℃の試験液に二時間浸漬させ、ゲル層を取り除き、ゲルを形成していないコア部分を取り出し、その後乾燥機にて5日間40℃で乾燥し、乾燥したコアの重量を測定した(Wobs)。組成物のゲル化率は式1より算出する。初期の錠剤重量(Winitial)からコア重量を減じた値を初期錠剤重量で除し、ゲル化率(G)を算出するために100倍した。
Wobs: 試験開始後のゲル化していない部分の重量
Winitial:試験開始前の製剤重量 (実施例11)
この実施例は、薬物放出挙動に及ぼすミセル形成薬物と反対電荷を有するポリマー添加量の影響について説明している。
この実施例は、本発明の組成物がゲル化に優れていることを説明している。
(ビーグル犬における薬物動態試験)
体重9.3から13.4kgの9頭の雄性ビーグル犬を投与前18時間絶食させた。塩酸ジルチアゼム200mgを含有する試験錠剤を水30mLと共に経口投与後、水は自由摂取としたが、最終採血終了までは食事を与えなかった。投与後0.5、1、2、3、4、6、8、10、12及び24時間に血液を採取した。その後、遠心により血漿を分離し、紫外検出による高速液体クロマトグラフィーでの定量分析に用いた。
この実施例は、invivoにおける薬物徐放に及ぼす製剤のゲル化率の影響について説明している。
Claims (5)
- (I)生理的pHにおいて正電荷を有する水溶性ミセル形成薬物、
(II)ポリアクリル酸である、反対電荷を有する少なくとも一つの高分子、及び
(III)カラギーナン、または硫酸デキストラン、
を含有することを特徴とする、経口徐放性医薬組成物。 - 前記ミセル形成薬物が塩基性薬物である、請求項1に記載の経口徐放性医薬組成物。
- 前記ミセル形成薬物が抗うつ薬、アドレナリンβ 受容体拮抗剤、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、フェノチアジン類、精神安定剤、抗菌剤、抗生物質、抗炎症薬、鎮痛剤、解熱薬及び利尿薬からなるグループより選択される、請求項1に記載の経口徐放性医薬組成物。
- 前記薬物が10重量%から75重量%、ポリアクリル酸が5から50重量%である、請求項1から3のいずれかに記載の経口徐放性医薬組成物。
- 前記薬物が10重量%から75重量%、ポリアクリル酸が5から50重量%、及びカラギーナンまたは硫酸デキストランが5重量%から50重量%である、請求項1から4のいずれかに記載の経口徐放性医薬組成物。
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