JP4756303B2 - 変速操作装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載された変速機の変速操作を行うための変速操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
変速機の変速操作を行う変速操作装置は、シフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとからなっている。
このようなセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータとしては、一般に空気圧や油圧等の流体圧を作動源とした流体圧シリンダが用いられている。
この流体圧シリンダを用いたセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータは、流体圧源と各アクチュエータとを接続する配管が必要であるとともに、作動流体の流路を切り換えるための電磁切り換え弁を配設する必要があり、これらを配置するためのスペースを要するとともに、装置全体の重量が重くなるという問題がある。
また近年、圧縮空気源や油圧源を具備していない車両に搭載する変速機の変速操作装置として、電動モータによって構成したセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータが提案されている。電動モータによって構成したセレクトアクチュエータおよびシフトアクチュエータは、流体圧シリンダを用いたアクチュエータのように流体圧源と接続する配管や電磁切り換え弁を用いる必要がないので、装置全体をコンパクトで且つ軽量に構成することができる。しかるに、電動モータを用いたアクチュエータにおいては、所定の作動力を得るために減速機構が必要となる。この減速機構としては、ボールネジ機構を用いたものと、歯車機構を用いたものが提案されている。これらボールネジ機構および歯車機構を用いたアクチュエータは、ボールネジ機構および歯車機構の耐久性および電動モータの耐久性、作動速度において必ずしも満足し得るものではない。
【0003】
そこで、本出願人は、耐久性に優れ、かつ、作動速度が速いセレクトアクチュエータを備えた変速操作装置を、特願2001−013162として提案した。
この変速操作装置は、セレクトアクチュエータがケーシングと、該ケーシング内に回転可能に配設され該シフトアクチュエータによってシフト方向に回動せしめられるコントロールシャフトと、該コントロールシャフトに軸方向に摺動可能に配設され該シフトレバーと一体的に構成されたシフトレバー支持部材としての筒状のシフトスリーブと、該シフトスリーブの外周面に配設された磁石可動体と、該磁石可動体を包囲して配設された筒状の固定ヨークと、該固定ヨークの内側に配設された一対のコイルとによって構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
而して、セレクトアクチュエータはシフトレバーを所定のセレクト位置に確実に位置付ける必要があり、上記変速操作装置におけるセレクトアクチュエータにおいては上記一対のコイルに供給する電力量に対応して上記シフトレバー支持部材としてのシフトスリーブに発生する推力に応じてシフトスリーブの作動位置を規制するセレクト位置規制手段を具備している。しかるに、セレクト位置規制手段はばね力を利用するため、このばね力がセレクト方向への移動に従って増大する。このため、セレクトストロークエンド付近ではセレクトアクチュエータの余裕駆動力が無くなり、作動不能となる場合が生ずる。これを回避するためには、上記一対のコイルに供給する電力量を増大しなければならず、電力の損失となる。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その主たる技術的課題は、セレクトストロークエンド付近で駆動力を付加することができるセレクトアクチュエータを備えた変速操作装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するために、
「変速機のシフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとを有する変速操作装置であって、該セレクトアクチュエータは、ケーシングと、該ケーシング内に軸方向に摺動可能に配設され該シフトレバーを支持するシフトレバー支持部材と、該シフトレバー支持部材の外周面に配設された磁石可動体と、該磁石可動体を包囲して該ケーシングの内周面に配設された筒状の固定ヨークと、該固定ヨークの内側に配設された一対のコイルと、該一対のコイルに供給する電力量に対応して該シフトレバー支持部材に発生する推力に応じて該シフトレバー支持部材の作動位置を規制するセレクト位置規制手段とを具備しており、
該一対のコイルの両側に磁性体が配設されている」
ことを特徴とする変速操作装置が提供される。
【0007】
上記磁性体は、上記一対のコイルが捲回されたボビン内に配設されているとともに、上記磁石可動体が上記シフトレバー支持部材の段部により位置決めされていることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に従って構成された変速操作装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明に従って構成された変速操作装置を示す断面図、図2は図1におけるA−A線断面図である。
図示の実施形態における変速操作装置2は、セレクトアクチュエータ3とシフトアクチュエータ5とから構成されている。セレクトアクチュエータ3は、円筒状に形成された3個のケーシング31a、31b、31cを具備している。この3個のケーシング31a、31b、31c内にはコントロールシャフト32が配設されており、該コントロールシャフト32の両端部が両側のケーシング31aおよび31cに軸受33aおよび33bを介して回転可能に支持されている。コントロールシャフト32の中間部にはスプライン321が形成されており、該スプライン321部にシフトレバー34と一体的に構成された筒状のシフトスリーブ35が軸方向に摺動可能にスプライン嵌合している。従って、シフトスリーブ35は、ケーシング内に軸方向に摺動可能に配設されシフトレバーを支持するシフトレバー支持部材として機能する。このシフトレバー34およびシフトスリーブ35はステンレス鋼等の非磁性材によって構成されており、シフトレバー34は中央のケーシング31bの下部に形成された開口311bを挿通して配設されている。シフトレバー34の先端部は、第1のセレクト位置SP1、第2のセレクト位置SP2、第3のセレクト位置SP3、第4のセレクト位置SP4に配設された図示しない変速機のシフト機構を構成する各シフトロッドにそれぞれ装着されたシフトブロック301、302、303、304と適宜係合するようになっている。
【0010】
上記シフトスリーブ35の外周面には、磁石可動体36が配設されている。この磁石可動体36は、シフトスリーブ35の外周面に装着され軸方向両端面に磁極を備えた環状の永久磁石361と、該永久磁石361の軸方向外側に配設された一対の可動ヨーク362、363とによって構成されている。図示の実施形態における永久磁石361は、図1および図2において右端面がN極に着磁され、図1および図2において左端面がS極に着磁されている。上記一対の可動ヨーク362、363は、磁性材によって環状に形成されている。このように構成された磁石可動体36は、一方(図1および図2において右側)の可動ヨーク362の図1および図2において右端がシフトスリーブ35に形成された段部351に位置決めされ、他方(図1および図2において左側)の可動ヨーク363の図1および図2において左端がシフトスリーブ35に装着されたスナップリング37によって位置決めされて、軸方向の移動が規制されている。磁石可動体36の外周側には、磁石可動体36を包囲して固定ヨーク39が配設されている。この固定ヨーク39は、磁性材によって筒状に形成されており、上記中央のケーシング31bの内周面に装着されている。固定ヨーク39の内側には、一対のコイル40、41が配設されている。この一対のコイル40、41は、合成樹脂等の非磁性材によって形成され上記固定ヨーク39の内周に沿って装着されたボビン42に捲回されている。図示の実施形態においては、ボビン42内には一対のコイル40、41の両側に磁性体491、492が配設されている。この磁性体491、492は、鉄等の磁性材によって環状に形成されている。なお、一対のコイル40、41は、図示しない電源回路に接続するようになっている。また、コイル40の軸方向長さは、上記第1のセレクト位置SP1から第4のセレクト位置SP4までのセレクト長さに略対応した長さに設定されている。上記固定ヨーク39の両側には、それぞれ非磁性材からなる端壁43、44が装着されている。この端壁43、44の内周部には、上記シフトスリーブ35の外周面に接触するシール部材45、46がそれぞれ装着されている。
【0011】
セレクトアクチュエータ3は以上のように構成されており、上記シフトスリーブ35に配設された磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理によって作動する。以下その作動について図3を参照して説明する。
第1の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3においては、図3の(a)および図3の(b)に示すように永久磁石361のN極、一方の可動ヨーク362、一方のコイル40、固定ヨーク39、他方のコイル41、他方の可動側ヨーク363、永久磁石361のS極を通る磁気回路368が形成される。このような状態において、一対のコイル40、41に図3の(a)で示す方向にそれぞれ反対方向の電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35には図3の(a)において矢印で示すように右方に推力が発生する。一方、一対のコイル40、41に図3の(b)で示すように図3の(a)と反対方向に電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35には図3の(b)において矢印で示すように左方に推力が発生する。上記磁石可動体36即ちシフトスリーブ35に発生する推力の大きさは、一対のコイル40、41に供給する電力量によって決まる。
【0012】
図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3は、上記磁石可動体36即ちシフトスリーブ35に作用する推力の大きさと協働してシフトレバー34を上記第1のセレクト位置SP1、第2のセレクト位置SP2、第3のセレクト位置SP3、第4のセレクト位置SP4に位置規制するための第1のセレクト位置規制手段47および第2のセレクト位置規制手段48を具備している。第1のセレクト位置規制手段47は、中央のケーシング31bの図1および図2において右端部に所定の間隔を置いて装着されたスナップリング471、472と、該スナップリング471と472との間に配設された圧縮コイルばね473と、該圧縮コイルばね473と一方のスナップリング471との間に配設された移動リング474と、該移動リング474が図1および図2において右方に所定量移動したとき当接して移動リング474の移動を規制するストッパ475とからなっている。
【0013】
以上のように構成された第1のセレクト位置規制手段47は、図1および図2に示す状態から上記一対のコイル40、41に例えば2.4Vの電圧で図3の(a)に示すように電流を流すと、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35が図1および図2において右方に移動し、シフトスリーブ35の図1および図2において右端が移動リング474に当接して位置規制される。この状態においては、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35に作用する推力よりコイルばね473のばね力の方が大きくなるように設定されており、このため、移動リング474に当接したシフトスリーブ35は移動リング474が一方のスナップリング471に当接した位置に停止せしめられる。このとき、シフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34は、第2のセレクト位置SP2に位置付けされる。次に、上記一対のコイル40、41に例えば4.8Vの電圧で図3の(a)に示すように電流を流すと、ヨーク36即ちシフトスリーブ35に作用する推力がコイルばね473のばね力より大きくなるように設定されており、このため、シフトスリーブ35は移動リング474と当接した後にコイルばね473のばね力に抗して図1および図2において右方に移動し、移動リング474がストッパ475に当接した位置で停止される。このとき、シフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34は、第1のセレクト位置SP1に位置付けされる。
【0014】
次に、上記第2のセレクト位置規制手段48について説明する。
第2のセレクト位置規制手段48は、中央のケーシング31bの図1および図2において左端部に所定の間隔を置いて装着されたスナップリング481、482と、該スナップリング481と482との間に配設されたコイルばね483と、該コイルばね483と一方のスナップリング481との間に配設された移動リング484と、該移動リング484が図1および図2において左方に所定量移動したとき当接して移動リング484の移動を規制するストッパ485とからなっている。
【0015】
以上のように構成された第2のセレクト位置規制手段48は、図1および図2に示す状態から上記一対のコイル40、41に例えば2.4Vの電圧で図3の(b)に示すように電流を流すと、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35が図1および図2において左方に移動し、シフトスリーブ35の図1および図2において左端が移動リング484に当接して位置規制される。この状態においては、永久磁石361即ちシフトスリーブ35に作用する推力よりコイルばね483のばね力の方が大きくなるように設定されており、このため、移動リング484に当接したシフトスリーブ35は移動リング484が一方のスナップリング481に当接した位置に停止せしめられる。このとき、シフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34は、第3のセレクト位置SP3に位置付けされる。次に、上記一対のコイル40、41に例えば4.8Vの電圧で図3の(b)に示すように電流を流すと、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35に作用する推力がコイルばね483のばね力より大きくなるように設定されており、このため、シフトスリーブ35は移動リング484と当接した後にコイルばね483のばね力に抗して図1および図2において左方に移動し、移動リング484がストッパ485に当接した位置で停止される。このとき、シフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34は、第4のセレクト位置SP4に位置付けされる。
以上のように、図示の実施形態においては第1のセレクト位置規制手段47および第2のセレクト位置規制手段48を設けたので、一対のコイル40、41に供給する電力量を制御することにより、位置制御することなくシフトレバー34を所定のセレクト位置に位置付けることが可能となる。
【0016】
ここで、上記セレクトアクチュエータ3の駆動力について図4を参照して説明する。
図4の(a)は磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を右方に作動させる際のセレクトアクチュエータ3の駆動力を示し、図4の(b)は磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を左方に作動させる際のセレクトアクチュエータ3の駆動力を示す。図4の(a)および図4の(b)おいて、破線(B)は磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理による推力特性、1点鎖線(C)は上記永久磁石361と磁性体491との吸引力、1点鎖線(D)は上記永久磁石361と磁性体492との吸引力、2点鎖線(E)は上記第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473の推力特性、2点鎖線(F)は上記第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力特性、実線(A)は一対のコイル40、41に通電したときのセレクトアクチュエータ3の駆動力である。即ち、実線(A)で示す一対のコイル40、41に通電したときのセレクトアクチュエータ3の駆動力は、破線(B)で示す磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理による推力と、1点鎖線(C)および(D)で示す永久磁石361と磁性体491および492との吸引力、および2点鎖線(E)および(F)で示すコイルばね473および483の推力とを合成したものとなる。図4の(a)および図4の(b)において、破線(B)で示す磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理による推力特性は、一対のコイル40、41に例えば4.8Vの電圧を印加したときの推力特性である。なお、一対のコイル40、41に例えば2.4Vの電圧を印加したときの推力は、第2のセレクト位置SP2および第3のセレクト位置SP3における第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473および第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力より小さく設定されている。
【0017】
図4の(a)で示すように磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を右方に作動させる際には、1点鎖線(D)で示す永久磁石361と磁性体492との吸引力がマイナス(−)として作用し、1点鎖線(C)で示す永久磁石361と磁性体491との吸引力がプラス(+)として作用する。一方、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を右方に作動させる際には、2点鎖線(F)で示す第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力がプラス(+)として作用し、2点鎖線(E)で示す第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473の推力がマイナス(−)として作用する。従って、第4のセレクト位置SP4から第3のセレクト位置SP3までは、第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力がプラス(+)として作用するので、セレクトアクチュエータ3の駆動力は十分であり、第4のセレクト位置SP4から第2のセレクト位置SP2までは一対のコイル40、41に印加する電圧が例えば2.4Vでも問題ない。一方、第2のセレクト位置SP2から第1のセレクト位置SP1に向かっては2点鎖線(E)で示す第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473の推力がマイナス(−)として作用するので、第1のセレクト位置SP1即ちセレクトストロークエンド付近では破線(B)で示す磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理による推力だけでは駆動力がでない。しかるに、図示の実施形態においては、第1のセレクト位置SP1即ちセレクトストロークエンド付近において1点鎖線(C)で示す永久磁石361と磁性体491との吸引力がプラス(+)として作用するので、図4の(a)に示すように磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を右方に作動させる際にはセレクトアクチュエータ3の駆動力(A)はセレクトストロークエンドである第1のセレクト位置SP1においても十分に余裕駆動力を有する。
【0018】
次に、図4の(b)に基づいて磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を左方に作動させる場合について説明する。
磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を左方に作動させる際には、1点鎖線(C)で示す永久磁石361と磁性体491との吸引力がマイナス(−)として作用し、1点鎖線(D)で示す永久磁石361と磁性体492との吸引力がプラス(+)として作用する。一方、磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を左方に作動させる際には、2点鎖線(E)で示すように第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473の推力がプラス(+)として作用し、2点鎖線(F)で示すように第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力がマイナス(−)として作用する。従って、第1のセレクト位置SP1から第2のセレクト位置SP2までは、第1のセレクト位置規制手段47のコイルばね473の推力がプラス(+)として作用するので、セレクトアクチュエータ3の駆動力は十分であり、第1のセレクト位置SP1から第3のセレクト位置SP3までは一対のコイル40、41に印加する電圧が例えば2.4Vでも問題ない。一方、第3のセレクト位置SP3から第4のセレクト位置SP4に向かっては2点鎖線(F)で示すように第2のセレクト位置規制手段48のコイルばね483の推力がマイナス(−)として作用するので、第4のセレクト位置SP4即ちセレクトストロークエンド付近では破線(B)で示す磁石可動体36と固定ヨーク39および一対のコイル40、41とによって構成されるリニアモータの原理による推力だけでは駆動力がでない。しかるに、図示の実施形態においては、第4のセレクト位置SP4即ちセレクトストロークエンド付近において1点鎖線(D)で示す永久磁石361と磁性体491との吸引力がプラス(+)として作用するので、図4の(b)に示す磁石可動体36即ちシフトスリーブ35を左方に作動させる際にはセレクトアクチュエータ3の駆動力(A)はセレクトストロークエンドである第4のセレクト位置SP4においても十分に余裕駆動力を有する。
【0019】
図1および図2に戻って説明を続ける。図示の実施形態における変速操作装置は、上記シフトレバー34と一体に構成されたシフトスリーブ35の位置、即ちセレクト方向の位置を検出するためのセレクト位置検出センサ8を具備している。このセレクト位置検出センサ8はポテンショメータからなり、その回動軸81にレバー82の一端部が取り付けられており、このレバー82の他端部に取り付けられた係合ピン83が上記シフトスリーブ35に設けられた係合溝352に係合している。従って、シフトスリーブ35が図2において左右に移動すると、レバー82が回動軸81を中心として揺動するため、回動軸81が回動してシフトスリーブ35の作動位置、即ちセレクト方向位置を検出することができる。このセレクト位置検出センサ8からの信号に基づいて、図示しないコントローラにより上記セレクトアクチュエータ3のコイル40、41に印加する電圧および電流の方向を制御することによって、上記シフトレバー34を所望のセレクト位置に位置付けることができる。
【0020】
また、図示の実施形態における変速操作装置2は、上記シフトレバー34と一体に構成されたシフトスリーブ35を装着したコントロールシャフト32の回動位置、即ちシフトストローク位置を検出するシフトストローク位置検出センサ9を具備している。このシフトストローク位置検出センサ9はポテンショメータからなり、その回動軸91が上記コントロールシャフト32に連結されている。従って、コントロールシャフト32が回動すると回動軸91が回動してコントロールシャフト32の回動位置、即ちシフトストローク位置を検出することができる。
【0021】
上述した図示の実施形態におけるセレクトアクチュエータ3においては、シフトレバー34を支持するシフトレバー支持部材としてのシフトスリーブ35をコントロールシャフト32に軸方向に摺動可能に装着した例を示したが、シフトレバー34をコントロールシャフト32に直接取り付け、コントロールシャフト32を軸方向に摺動可能に配設してもよい。この場合は、コントロールシャフト32がケーシング内に軸方向に摺動可能に配設されシフトレバーを支持するシフトレバー支持部材として機能する。
【0022】
次に、本発明に従って構成されたシフトアクチュエータについて、主に図5を参照して説明する。図5は図1におけるB−B線断面図である。
図5に示すシフトアクチュエータ5は、ケーシング51と、該ケーシング51の中心部に配設され上記セレクトアクチュエータ3のケーシング31a、31b、31c内に配設されたコントロールシャフト32に装着された作動レバー50と係合する作動ロッド52と、該作動ロッド52の外周面に配設された磁石可動体53と、該磁石可動体53を包囲してケーシング51の内側に配設された筒状の固定ヨーク54と、該固定ヨーク54の内側に軸方向に併設された一対のコイル55、56とを具備している。なお、上記作動ロッド52と係合する作動レバー50は、その基部にコントロールシャフト32と嵌合する穴501を備えており、該穴501の内周面に形成されたキー溝502とコントロールシャフト32の外周面に形成されたキー溝322にキー503を嵌合することによりコントロールシャフト32と一体的に回動するように構成されている。この作動レバー50は、コントロールシャフト32および上記シフトスリーブ35を介してシフトレバー34に連結した作動部材として機能し、図1および図2において左側のケーシング31aの下部に形成された開口311aを挿通して配設されている。
【0023】
ケーシング51は、図示の実施形態においてはステンレス鋼やアルミニウム合金等の非磁性材によって円筒状に形成されている。作動ロッド52は、ステンレス鋼等の非磁性材によって構成され、その図5において左端部には切欠溝521が形成されており、この切欠溝521に作動レバー50先端部が係合するように構成されている。
【0024】
磁石可動体53は、作動ロッド52の外周面に装着され軸方向両端面に磁極を備えた環状の永久磁石531と、該永久磁石531の軸方向外側に配設された一対の可動ヨーク532、533とによって構成されている。図示の実施形態における永久磁石531は、図5において右端面がN極に着磁され、図5において左端面がS極に着磁されている。上記一対の可動ヨーク532、533は、磁性材によって環状に形成されている。このように構成された磁石可動体53は、その両側においてそれぞれ作動ロッド52に装着されたスナップリング534、535によって位置決めされて、軸方向の移動が規制されている。
【0025】
上記固定ヨーク54は、磁性材によって筒状に形成されており、上記ケーシング51の内周面に装着されている。固定ヨーク54の内側には、一対のコイル55、56が配設されている。この一対のコイル55、56は、合成樹脂等の非磁性材によって形成され上記固定ヨーク54の内周に沿って装着されたボビン57に捲回されている。一対のコイル55、56は、図示しない電源回路に接続するようになっている。図示の実施形態においては、ボビン57内には一対のコイル55、56の両側に磁性体581、582が配設されている。この磁性体581、582は、鉄等の磁性材によって環状に形成されている。なお、一対のコイル55、56の軸方向長さは、シフトアクチュエータ5の作動ストロークによって適宜設定される。
【0026】
上記ケーシング51の両側には、それぞれ端壁61、62が装着されている。この端壁61、62は、ステンレス鋼やアルミニウム合金或いは適宜の合成樹脂等の非磁性材によって形成されており、それぞれ中心部に上記シフトプランジャ52が挿通する穴611、621が設けられている。この穴611、621を挿通して配設される作動ロッド52は、穴611、621の内周面によって軸方向に摺動可能に支持される。なお、端壁61、62のそれぞれ外側内周部には切欠部612、622が形成されており、この切欠部612、622にそれぞれシール部材63、64が装着されている。
【0027】
図示の実施形態におけるシフトアクチュエータ5は以上のように構成されており、以下その作動について図6を参照して説明する。
【0028】
シフトアクチュエータ5は以上のように構成されており、上記作動ロッド52に配設された磁石可動体53と固定ヨーク54および一対のコイル55、56とによって構成されるリニアモータの原理によって作動する。以下その作動について図5を参照して説明する。
シフトアクチュエータ5においては、図6の(a)乃至図6の(d)に示すように永久磁石531のN極、一方の可動ヨーク532、一方のコイル55、固定ヨーク54、他方のコイル56、他方の可動側ヨーク533、永久磁石531のS極を通る磁気回路530が形成される。
【0029】
作動ロッド52の作動位置が図6の(a)に示すニュートラル位置(中立位置)にある状態で、一対のコイル55、56に図6の(a)で示す方向にそれぞれ反対方向の電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って、磁石可動体53即ち作動ロッド52には図6の(a)において矢印で示すように左方に推力が発生する。この結果、作動ロッド52が図4において左方に移動し、作動ロッド52に先端部が係合している作動レバー50を介してコントロールシャフト32が図5において時計方向に回動する。これにより、コントロールシャフト32に装着されたシフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34が一方向にシフト作動せしめられる。そして、磁石可動体53即ち作動ロッド52が図6の(b)で示す位置に達すると、上記シフトストローク位置検出センサ9からの信号に基づいて図示しないコントローラが一方のシフトストロークエンド即ちギヤイン位置まで作動せしめられたと判断して、一対のコイル55、56への通電を遮断する。
【0030】
次に、シフトプランジャ52の作動位置がニュートラル位置(中立位置)にある状態で、一対のコイル55、56に図6の(c)で示す方向(図6の(a)と反対方向)にそれぞれ反対方向の電流を流すと、フレミングの左手の法則に従って、磁石可動体53即ち作動ロッド52には図6の(c)において矢印で示すように右方に推力が発生する。この結果、作動ロッド52が図5において右方に移動し、作動ロッド52に先端部が係合している作動レバー50を介してコントロールシャフト32が図5において反時計方向に回動する。これにより、コントロールシャフト32に装着されたシフトスリーブ35と一体に構成されたシフトレバー34が他方向にシフト作動せしめられる。そして、磁石可動体53即ち作動ロッド52が図6の(d)で示す位置に達すると、上記シフトストローク位置検出センサ9からの信号に基づいて図示しないコントローラが他方のシフトストロークエンド即ちギヤイン位置まで作動せしめられたと判断して、一対のコイル55、56への通電を遮断する。
【0031】
ここで、上記シフトアクチュエータ5の駆動力について図7を参照して説明する。
図7の(a)は磁石可動体53即ち作動ロッド52を左方に作動させる際のシフトアクチュエータ5の駆動力を示し、図7の(b)は磁石可動体53即ち作動ロッド52を右方に作動させる際のシフトアクチュエータ5の駆動力を示す。図7の(a)および図7の(b)おいて、破線(B)は磁石可動体53と固定ヨーク54および一対のコイル55、56とによって構成されるリニアモータの原理による推力特性、1点鎖線(C)は上記永久磁石531と磁性体581との吸引力、1点鎖線(D)は永久磁石531と磁性体582との吸引力、実線(A)は一対のコイル55、56に通電したときのシフトアクチュエータ5の駆動力である。即ち、実線(A)で示す一対のコイル55、56に通電したときのシフトアクチュエータ5の駆動力は、破線(B)で示す磁石可動体53と固定ヨーク54および一対のコイル55、56とによって構成されるリニアモータの原理による推力と1点鎖線(C)および(D)で示す永久磁石531と磁性体581および582との吸引力とを合成したものとなる。一方、図示の実施形態におけるシフトアクチュエータ5は、一対のコイル55、56の両側に一対の磁性体581、582が配設されているので、一対のコイル55、56への非通電時でも1点鎖線(C)および(D)で示す永久磁石531と磁性体581および582との吸引力が働いている。この吸引力は、永久磁石531および可動ヨーク532、533と磁性体581または582が接近するに従って大きくなり、シフトストロークエンドで最も大きい。図7の(a)に示す磁石可動体53即ち作動ロッド52を左方に作動させる際には、1点鎖線(C)で示す永久磁石531と磁性体581との吸引力が図6の(d)で示すギヤイン位置におけるニュートラル位置側への移動、即ち変速機のギヤ抜けを阻止する力、即ち自己保持機能として働く。一方、図7の(b)に示す磁石可動体53即ち作動ロッド52を右方に作動させる際には、1点鎖線(D)で示す永久磁石531と磁性体582との吸引力が図6の(b)で示すギヤイン位置におけるニュートラル位置側への移動、即ち変速機のギヤ抜けを阻止する力、即ち自己保持機能として働く。一般に、変速機のシフト機構はギヤ抜けを防止するために、シフトストロークエンド即ちギヤイン位置に作動された状態を保持するためのディテント機構を備えているが、図示の実施形態におけるシフトストロークエンド付近での永久磁石531と磁性体581または582との吸引力はディテント機能として働くことになる。
【0032】
【発明の効果】
本発明による変速操作装置は以上のように構成されているので、以下に述べる作用効果を奏する。
【0033】
即ち、本発明によれば、変速操作装置を構成するセレクトアクチュエータがケーシングと、該ケーシング内に軸方向に摺動可能に配設されシフトレバーを支持するシフトレバー支持部材と、該シフトレバー支持部材の外周に配設された磁石可動体と、該磁石可動体を包囲して配設された筒状の固定ヨークと、該固定ヨークの内側に配設された一対のコイルと、該一対のコイルに供給する電力量に対応してシフトレバー支持部材に発生する推力に応じてシフトレバー支持部材の作動位置を規制するセレクト位置規制手段とを具備しており、該一対のコイルの両側に磁性体が配設されているので、セレクトストロークエンド付近で磁石可動体と磁性体との吸引力が作用するため、セレクトストロークエンド付近でも十分に余裕駆動力を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従って構成された変速操作装置を示す断面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】図1に示す変速操作装置を構成するセレクトアクチュエータの作動状態を示す説明図。
【図4】図1に示す変速操作装置を構成するセレクトアクチュエータの駆動力を示す説明図。
【図5】図1におけるB−B線断面図。
【図6】図4に示すシフトアクチュエータの作動状態を示す説明図。
【図7】図1に示すシフトアクチュエータの駆動力を示す説明図。
【符号の説明】
2:変速操作装置
3:セレクトアクチュエータ
31a、31b、31c:ケーシング
32:コントロールシャフト
33a、33b:軸受
34:シフトレバー
35:シフトスリーブ
36:磁石可動体
361:永久磁石
362、363:可動ヨーク
39:固定ヨーク
40、41:コイル
42:ボビン
47:第1のセレクト位置規制手段
48:第2のセレクト位置規制手段
491、492:磁性体
5:シフトアクチュエータ
50:作動レバー
51:ケーシング
52:作動ロッド
53:磁石可動体
531:永久磁石
532、533:可動ヨーク
54:固定ヨーク
55、56:コイル
57:ボビン
581、582:磁性体
8:セレクト位置検出センサ
9:シフトストローク位置検出センサ

Claims (2)

  1. 変速機のシフトレバーをセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該シフトレバーをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとを有する変速操作装置であって、
    該セレクトアクチュエータは、ケーシングと、該ケーシング内に軸方向に摺動可能に配設され該シフトレバーを支持するシフトレバー支持部材と、該シフトレバー支持部材の外周面に配設された磁石可動体と、該磁石可動体を包囲して該ケーシングの内周面に配設された筒状の固定ヨークと、該固定ヨークの内側に配設された一対のコイルと、該一対のコイルに供給する電力量に対応して該シフトレバー支持部材に発生する推力に応じて該シフトレバー支持部材の作動位置を規制するセレクト位置規制手段とを具備しており、
    該一対のコイルの両側に磁性体が配設されている、ことを特徴とする変速操作装置。
  2. 該磁性体は、該一対のコイルが捲回されたボビン内に配設されているとともに、該磁石可動体が該シフトレバー支持部材の段部により位置決めされている、請求項1記載の変速操作装置。
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