JP4746328B2 - 非水電解液二次電池用負極 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム二次電池等の非水電解液二次電池に用いられる負極に関する。
金属リチウムを負極に用いたリチウム電池は、一次電池では実用化しているものの、二次電池の実用化は未だなされていない。この理由は、電池内に含まれる非水電解液が、充放電時にリチウムと反応することに起因して、金属リチウムのデンドライトが負極上に成長し、正極との内部短絡を引き起こす可能性がある為である。また、デンドライトの成長は、充放電容量低下の一因ともなっている。
デンドライト成長を抑制する手法の一つとして、負極を構成する金属リチウム層の表面を、シリコンを主成分とする被覆層で覆うことが提案されている(特許文献1参照)。この被覆層はプラズマCVD法によって成膜される均一な層である。この負極においては、金属リチウム層の表面が被覆層で均一に覆われていることから、リチウムイオンを含む非水電解液が金属リチウム層へ直接到達せず、リチウムイオンがシリコンに吸脱蔵されることで主として充放電が行われると考えられる。従って、リチウムの酸化還元が起こりづらく、負極に含まれている金属リチウムを有効に利用できない。
他の手法として、負極を構成する金属リチウム層の表面を、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質膜で被覆することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、非水電解液のリチウムイオン伝導度と同程度に高い伝導度を有する無機固体電解質膜を工業的規模で安価に作製することは容易でない。また、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質膜には、リチウムイオンが金属リチウムに還元されるときに分解されやすいタイプのものがあり、安定性に欠ける場合がある。
特開平11−73946号公報 特開2004−220906号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る非水電解液二次電池用負極を提供することにある。
本発明は、金属リチウム層及び該層の少なくとも一面に形成された被覆層を有し、該被覆層は、リチウム化合物の形成能の高い材料を含み、且つリチウムイオンの通過が可能であることを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明によれば、リチウムイオンの還元によって生成する金属リチウムのデンドライトの成長を抑制することができる。また、被覆層に含まれるリチウム化合物の形成能の高い材料が、リチウムの吸蔵放出を行い得ることから、リチウムの酸化還元に加えて、当該材料によるリチウムの吸蔵放出によって充放電容量が増加する。更に、本発明の負極は、電池の作製段階で既に充電が完了した状態になっているので、リチウムを含まない物質であるFeOOHやNiOOHなどを正極材料として用いることが可能となる。
本発明の負極は金属リチウム層を備えている。金属リチウム層の少なくとも一面には、被覆層が隣接して設けられている。被覆層の表面は、負極の少なくとも一方の表面をなしている。被覆層は、リチウム化合物の形成能の高い材料(以下、リチウム化合物形成材料ともいう)を含んでいる。また被覆層は、リチウムイオンの通過が可能になっている。
金属リチウム層は、本発明の負極における負極活物質として用いられる。本発明においては、リチウムの酸化還元を充放電に利用している。リチウムイオンの還元によって金属リチウムが生成するときにそのデンドライトが成長しやすいことは先に述べた通りであるが、本発明においては金属リチウム層の表面を被覆層で覆うことによってデンドライトの成長を抑えている。
被覆層は、先に述べた通りリチウムイオンの通過が可能なものである。従ってリチウムイオンは被覆層の表面では還元されにくく、金属リチウムは生成しにくい。その結果、被覆層の表面では金属リチウムのデンドライトが成長しにくい。本発明において「リチウムイオンの通過が可能」とは、(イ)被覆層が、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質となっていること、及び(ロ)被覆層が、該被覆層の厚み方向にわたって非水電解液の通過が可能な構造になっていることの双方を包含する。
被覆層は、金属リチウムのデンドライトが成長することを抑える働きに加えて、電池の充放電容量を高める働きも有する。このことは、被覆層に、リチウム化合物形成材料が含まれていることに起因している。本発明の負極における充放電反応は、リチウムの酸化還元が主たるものであるが、これに加えて、リチウム化合物形成がリチウムを吸蔵放出することによっても充放電反応が生じる。その結果、リチウムの酸化還元のみを利用した負極や、負極活物質としてグラファイト等を用いリチウムの吸蔵放出のみを利用した負極に比べて、本発明の負極を用いると、電池の充放電容量が高まる。要するに被覆層は、リチウムイオンの通過が可能であるという機能(例えば、先に述べたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質としての機能)に加えて、活物質としての機能も有する。
充放電反応が、リチウムの酸化還元に主として依存するか、或いはリチウムの吸蔵放出に主として依存するかは、負極におけるリチウムの量と、リチウム化合物形成材料の量との比率に依存する。本発明においては、リチウムの酸化還元を主たる充放電反応として利用することに鑑みると、負極中に金属リチウムが、リチウム化合物形成材料の飽和可逆容量に対して100%超含まれていることが好適である。尤も、負極中における金属リチウムの量が多すぎるとエネルギー密度が低下する傾向にあることから、金属リチウムは、リチウム化合物形成材料の飽和可逆容量に対して、101〜500%、特に101〜250%含まれていることが更に好適である。
リチウム化合物形成材料の飽和可逆容量とは、該材料についてのリチウムの吸蔵放出の飽和可逆容量のことであり、材料に応じて理論値が決まっている。リチウム化合物形成材料としては、シリコン系材料、スズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料、アンチモン系材料、インジウム系材料又はグラファイト系材料等が挙げられるが、例えばグラファイト系材料の場合、リチウムを吸蔵してLiC6が生成することが飽和可逆容量の理論値となる。シリコン系材料の場合には、リチウムを吸蔵してLi4.4Siが生成することが飽和可逆容量の理論値となる。
被覆層は、金属リチウム層の一面にのみ形成されていてもよく、或いは両面に形成されていてもよい。本発明の負極を例えばコイン型電池に適用する場合には、金属リチウム層の一面にのみ被覆層を形成した構造とすることができる。また、ジェリーロールタイプの電池に適用する場合には、金属リチウム層の両面に被覆層を形成した構造とすることができる。本発明の負極を、公知の導電性集電体と組み合わせて構成することもできる。具体的には、導電性集電体の一面に金属リチウム層を形成し、その上に被覆層を形成して本発明の負極を構成することができる。或いは、導電性集電体の両面に金属リチウム層を形成し、各金属リチウム層の上に被覆層をそれぞれ形成してもよい。導電性集電体としては、電解銅箔、圧延銅合金箔、ニッケル箔等が一般に用いられる。
次に本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の負極を用いたコイン型電池の断面が示されている。また図2には、図1における負極の要部が拡大して示されている。図1に示す電池1は、リチウム二次電池からなるコイン型電池である。電池1において、符号2は、負極端子を兼ねるケースであり、ステンレス鋼板などの金属板を深絞り加工して形成されている。符号3は本発明の一実施形態の負極を表している。負極3は、負極ケース2に接着され、また電気的に接続されている。符号4は、ステンレス鋼板などの金属板を深絞り加工して形成された正極ケースである。正極ケース4は正極端子を兼ねている。符号5は、正極ケース5に接着され、また電気的に接続された正極である。符号6はセパレータであり、非水電解液が浸漬されている。符号7はガスケットを表す。ガスケット7は、負極ケース2と正極ケース4との間に介在し、負極3と正極5との間の電気的絶縁性を保っている。また、正極ケース4の開口縁が内側に折り曲げられてかしめられることで、電池内容物を密封している。
図2に示すように、負極3は、金属リチウム層10及びその一面に形成された被覆層11を備えている。金属リチウム層10は、負極ケース(図1参照)に対向しており、被覆層11はセパレータ(図1参照)に対向している。金属リチウム層10は、金属リチウムからなる所定の厚みを有する層である。その厚みは、被覆層11に含まれるリチウム化合物形成材料の量にも関係するが、5〜500μm、特に10〜100μmであることが、充放電容量及びエネルギー密度を高める点から好適である。
被覆層11は、該層11の表面を構成する上層11a、及び該上層11aと金属リチウム層10との間に位置する下層11bの2層構造になっている。上層11aは、リチウム化合物の形成能の低い材料から構成されていることが好適である。本発明において「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。また「リチウム化合物の形成能が高い」とは、この反対のことを意味する。リチウム化合物の形成能の低い材料は電子伝導性を有していることが好適である。そのような材料としては、銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの合金等の金属材料が挙げられる。これらの材料のうち銅、ニッケル、それらの合金を用いることが特に好適である。負極3の強度を高める観点からはニッケルを用いることが好適である。特に、ニッケル−タングステン合金を用いると、上層11aを高強度となすことができるので好適である。
上層11aは、下層11bの表面を連続的に被覆している。上層11aは、後述する下層11bに含まれているリチウム化合物形成材料の粒子12が、リチウムを吸蔵放出することに起因する体積変化によって微粉化して脱落することを防止する働きを有している。この観点から、上層11aはその厚みが0.3〜10μm、特に1〜5μmであることが好適である。これによって、必要最小限の厚みで下層11bをほぼ満遍なく連続的に被覆することができる。その結果、下層11bに含まれる粒子12の脱落を防止することができる。前記範囲の上層11aは、後述するように電解めっきによって形成されることが好適である。
下層11bは、リチウム化合物形成材料の粒子12を含んでいる。リチウム化合物形成材料の具体例は先に述べた通りである。特に、リチウム化合物形成材料として、単位体積当たりの容量の高い材料であるシリコン系材料やスズ系材料を用いることが好ましい。シリコン系材料又はスズ系材料の粒子としては、例えばイ)シリコン単体又はスズ単体の粒子、ロ)少なくともシリコン又はスズと炭素との混合粒子、ハ)シリコン又はスズと金属との混合粒子、ニ)シリコン又はスズと金属との化合物粒子、ホ)シリコン又はスズと金属との化合物粒子と、金属の粒子との混合粒子、ヘ)シリコン単体又はスズ単体の粒子の表面に金属が被覆されてなる粒子などが挙げられる。
粒子12はその最大粒径が50μm以下、特に20μm以下であることが好適である。また粒子12の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に1〜5μmであることが好適である。最大粒径が50μm超であると、粒子12の脱落が起こりやすくなる場合がある。粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。粒子12の製造方法に鑑みると、下限値は0.01μm程度である。粒子12の粒径は、レーザー回折散乱法、電子顕微鏡観察によって測定される。
負極全体に対する粒子12の量が少なすぎると充放電容量を十分に向上させにくい。逆に多すぎても、リチウムの酸化還元が主たる充放電反応とならないことから、やはり充放電容量を十分に向上させにくい。これらを勘案すると、粒子12の量は、該粒子12の量と金属リチウム層10の量の合計量に対して好適には10〜80重量%であり、更に好適には25〜60重量%、一層好適には30〜50重量%である。
本実施形態の負極は電池に組み込まれると、図3(a)〜(d)に示すように、電解液中のリチウムイオンが、被覆層11に含まれているリチウム化合物形成材料の粒子12内に取り込まれてLiXM(Mはリチウム化合物形成材料を示す)が形成される。リチウムイオンは粒子12内を次第に拡散していき、最後は金属リチウム層10へと至る。つまり、被覆層11(特に下層11b)が、リチウムイオン導電性を有する固体電解質となっている。また、本実施形態においては被覆層11(特に下層11b)は活物質としても機能している。
下層11bの厚みは、負極全体に対するリチウム化合物形成材料の量の割合や、リチウム化合物形成材料の粒径に応じて適宜調節することができ、本実施形態においては特に臨界的なものではない。一般には1〜100μm、特に3〜40μmである。下層11bは、後述するように、活物質の粒子2を含むスラリーを塗布することによって形成されることが好適である。
下層11bにおいては、該層中に含まれる粒子間に、リチウム化合物の形成能の低い材料が浸透していることが好適である。該材料は、下層11bの厚み方向全域に亘って浸透していることが好適である。そして浸透した該材料中に粒子12が存在していることが好ましい。つまり粒子12は被覆層11の表面に実質的に露出しておらず被覆層11の内部に包埋されていることが好ましい。これによって、上層11aと下層11bとの密着性が強固なものとなり、粒子12の脱落が一層防止される。下層11b中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い材料は、上層11aを構成するリチウム化合物の形成能の低い材料と同じでもよい。この場合には、各材料が同一であることから、後述する製造方法が複雑にならないという利点がある。或いは両材料は異なっていてもよい。この場合には、上層11a及び下層11bそれぞれに適切な材料を独立して選択できるという利点がある。
下層11b中には粒子12に加えて導電性炭素材料又は導電性金属材料の粒子13が含まれていることが好適である。これによって被覆層11に電子伝導性が一層付与される。この観点から下層11b中に含まれる導電性炭素材料又は導電性金属材料の粒子13の量は0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが好適である。導電性炭素材料としては例えばアセチレンブラックなどの粒子が用いられる。これらの粒子の粒径は40μm以下、特に20μm以下であることが、電子伝導性の一層付与の点から好ましい。該粒子の粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好適である。該粒子の製造方法に鑑みると、その下限値は0.01μm程度となる。
上層11a及び下層11bからなる被覆層11には、該被覆層11の表面において開孔し且つ金属リチウム層10と通ずる多数の微細空隙14が形成されている。微細空隙14は、被覆層11の厚み方向へ延びるように形成されている。微細空隙14は、非水電解液の流通が可能なものである。つまり、リチウムイオンの通過が可能なものである。微細空隙14は、被覆層11を断面観察した場合にその幅が0.1〜100μm程度であるが、粒子12の脱落を一層効果的に抑制するためには、0.1〜10μm程度の微細なものとすることが好ましい。微細であるものの、微細空隙14は非水電解液の浸透が可能な程度の幅を有している。尤も非水電解液は水系の電解液に比べて表面張力が小さいことから、微細空隙14の幅が小さくても十分に浸透が可能である。
被覆層11の表面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、微細空隙14の平均開孔面積は、好適には0.1〜50μm2であり、更に好適には0.1〜20μm2、一層好適には0.5〜10μm2程度である。この範囲の開孔面積とすることで、非水電解液の十分な通過を確保しつつ、下層11bに含まれる粒子12の脱落を効果的に防止することができる。粒子12の脱落を一層効果的に防止する観点から、前記の平均開孔面積は、粒子12の最大断面積の0.1〜50%、特に0.1〜20%であることが好適である。粒子12の最大断面積とは、粒子12の粒径(D50値)を測定し、該粒子12を、D50値の直径を有する球とみなしたときの最大断面積をいう。
被覆層11の表面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、観察視野の面積に対する微細空隙14の開孔面積の総和の割合(この割合を開孔率という)は、好適には0.1〜20%であり、更に好適には0.5〜10%である。この理由は微細空隙14の開孔面積を前記の範囲内とすることと同様の理由である。更に同様の理由により、被覆層11の表面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、どのような観察視野をとっても、1cm×1cmの正方形の視野範囲内に1個〜2万個、特に10個〜1000個、とりわけ30個〜500個の微細空隙14が存在していることが好ましい。
本実施形態の負極3は、被覆層11の表面において開孔し且つ金属リチウム層10及び被覆層11の厚み方向に延びる縦孔(図示せず)を多数有することが好適である。特に好適には、縦孔は、負極3の厚み方向に貫通している。被覆層11においては、縦孔の壁面において該被覆層11が露出している。この縦孔は、先に述べた微細空隙14よりも十分に大きなものであることによって、該微細空隙14と相違するものである。具体的には、被覆層11の表面において開孔している縦孔の開孔径は5〜500μm、特に20〜100μmであることが好適である。また、被覆層11の表面における任意の部分に着目したとき、1cm×1cmの正方形の観察視野内に平均して100〜250000個、特に1000〜40000個、とりわけ5000〜20000個の縦孔が開孔していることが好ましい。
縦孔の役割は大別して次の2つである。一つは、縦孔の壁面において露出した被覆層11を通じて非水電解液をこれらの層内に供給する役割である。この場合、縦孔の壁面において粒子12が露出している場合があるが、リチウム化合物の形成能の低い材料が粒子12間に浸透しているので、該粒子12が脱落することが防止されている。
もう一つは、充放電に起因して粒子12がリチウムを吸蔵放出して体積変化した場合、その体積変化による応力を緩和する役割である。体積変化による応力の緩和は、主として負極3の平面方向に生ずる。即ち、充電によって体積が増加した粒子12の体積の増加分が、空間となっている縦孔に吸収される。その結果、負極3の著しい変形が効果的に防止される。
被覆層11内に非水電解液を十分に供給する観点及び粒子12の体積変化を効果的に緩和する観点から、負極3の表面において開孔している縦孔の開孔率、即ち縦孔の面積の総和を、負極3の表面の見掛けの面積で除して100を乗じた値は0.3〜30%、特に2〜15%であることが好適である。
なお、縦孔においては、被覆層11に加えて金属リチウム層10も露出しているので、充放電に起因して金属リチウム層10を起点として金属リチウムのデンドライトが成長することが懸念されるかもしれない。しかし、金属リチウム層10を起点として金属リチウムのデンドライトが発生したとしても、該金属リチウム層10に隣接する被覆層11に含まれるリチウム化合物形成材料によって消費されて消失する。従って、セパレータを突き破るほどにデンドライトが成長することは起こりにくい。また、負極3の厚みの厚み方向でみたときに、金属リチウム層10は、負極3の表面から深い部分に存在しているので、デンドライトが成長したとしても、負極3の表面を越えるほどには成長しにくい。
以上の通り、本実施形態の負極では、被覆層11(特に下層11b)が、リチウムイオン導電性を有する固体電解質となっていることに加え、微細空隙14及び縦孔(図示せず)によって、被覆層11の厚み方向にわたって非水電解液の通過が可能な構造になっている。
次に、図2に示す負極3の好適な製造方法を、図4(a)〜(f)を参照しながら説明する。先ず図4(a)に示すようにキャリア箔21を用意する。キャリア箔21の材質に特に制限はない。キャリア箔21は導電性であることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔21は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔21を用いることで、負極3の製造後にキャリア箔21を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。リサイクルの容易性を考慮すると、キャリア箔21の材質は、後述する電解めっきによって形成される上層11aの材質と同じであることが好ましい。キャリア箔21は、負極3を製造するための支持体として用いられるものであることから、製造工程においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔21は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。先に述べた通り、キャリア箔21の重要な役割は負極3を製造するための支持体である。従って上層11aの強度が十分である場合は必ずしもキャリア箔を用いて負極3を製造することを要しない。
キャリア箔21は例えば電解や圧延で製造することができる。キャリア箔21の表面は、或る程度凹凸形状になっていることが好適である。圧延箔は、その製造方法に起因して各面が平滑になっている。これに対して電解箔は一面が粗面であり、他面が平滑面になっている。粗面は、電解箔を製造する際の析出面である。そこで、電解箔からなるキャリア箔21における粗面を電析面として利用すれば、別途キャリア箔に粗化処理をする手間が省けるので簡便である。粗面を用いる利点については後述する。かかる粗面を電析面として利用する場合、その表面粗さRa(JIS B 0601)は0.05〜5μm、特に0.2〜0.8μmであることが、所望の径及び存在密度を有する微細空隙を容易に形成し得る点から好適である。
次にキャリア箔21の一面に剥離剤を施して剥離層(図示せず)を形成する。剥離剤はキャリア箔21における粗面に施すことが好適である。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程において、キャリア箔11から負極3を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても被覆層11に微細空隙を形成することができる。
剥離層は、例えばクロムめっき、ニッケルめっき、鉛めっき、クロメート処理等によって形成されることが好適である。この理由は、これらの処理等によって剥離層の表面に酸化物あるいは酸塩の層が形成され、この層は、キャリア箔21と上層11aとの密着性を低下させ剥離性を向上させる機能を有するからである。また剥離剤として有機化合物を用いることもできる。特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)及び2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。これらの有機化合物はアルコール、水、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などに溶解して用いられる。例えばCBTAを用いた場合、その濃度は2〜5g/1とするのが好ましい。有機化合物からなる剥離層の形成には、塗工法の他、浸漬法も採用できる。剥離層の厚みは0.05〜3μmであることが、首尾良く剥離を行い得る点から好ましい。剥離層が形成された後の該剥離層の表面粗さRaは、0.01〜3μm、特に0.01〜1μm、とりわけ0.01〜0.2μmであることが好適である。
次に図4(b)に示すように、剥離剤(図示せず)を施した上に、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜22を形成する。塗工液はキャリア箔21の粗面に塗工されるので、該粗面における凹部に溜まりやすくなる。この状態で溶媒が揮発すると、塗膜22の厚みは不均一になる。つまり粗面の凹部に対応する塗膜の厚みは大きく、凸部に対応する塗膜の厚みは小さくなる。本製造方法においては、塗膜22の厚みの不均一性を利用して、被覆層11に多数の微細空隙を形成する。
導電性ポリマーとしては、その種類に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。特にリチウムイオン伝導性ポリマーを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーはフッ素含有の導電性ポリマーであることが好ましい。フッ素含有ポリマーは、熱的及び化学的安定性が高く、機械的強度に優れているからである。これらのことを考慮すると、リチウムイオン伝導性を有するフッ素含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。
導電性ポリマーを含む塗工液は、導電性ポリマーが揮発性の有機溶媒に溶解してなるものである。有機溶媒としては、導電性ポリマーとして例えばポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
本製造方法において、被覆層11に多数の微細空隙が形成されるメカニズムは次のように考えられる。塗膜22が形成されたキャリア箔21は電解めっき処理に付されて、図4(c)に示すように塗膜22上に被覆層11における上層11aが形成される。この状態を図4(c)の要部拡大図である図5に示す。塗膜22を構成する導電性ポリマーは、金属ほどではないが電子伝導性を有する。従って塗膜22はその厚みに応じて電子伝導性が異なる。その結果、導電性ポリマーを含む塗膜22の上に電解めっきによって金属を析出させると、電子伝導性に応じて電析速度に差が生じ、その電析速度の差によって上層11aに微細空隙14が形成される。つまり、電析速度の小さい部分、換言すれば塗膜22の厚い部分が微細空隙14になりやすい。
キャリア箔21の粗面の表面粗さRaによって微細空隙14の孔径や存在密度をコントロールできる。これに加えて塗工液に含まれる導電性ポリマーの濃度によっても微細空隙14の孔径や存在密度をコントロールできる。例えば導電性ポリマーの濃度が薄い場合には孔径は小さくなる傾向にあり、存在密度も小さくなる傾向にある。逆に、導電性ポリマーの濃度が濃い場合には孔径は大きくなる傾向にある。この観点から、塗工液における導電性ポリマーの濃度は0.05〜5重量%、特に1〜3重量%であることが好ましい。なお、導電性ポリマーは、塗工法の他、浸漬法によってもキャリア箔21上に施すことができる。
上層11aを形成するためのめっき浴やめっき条件は、上層11aの構成材料に応じて適切に選択される。上層11aを例えばCuから構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有する硫酸銅浴やピロリン酸銅浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜50A/dm2程度であることが好ましい。
・CuSO4・5H2O 150〜350g/l
・H2SO4 50〜250g/l
多数の微細空隙14が形成された上層11aが形成されたら、その上にリチウム化合物形成材料の粒子を含むスラリーを塗布する。スラリーは、リチウム化合物形成材料の粒子、導電性炭素材料又は導電性金属材料の粒子、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。これらの成分のうち、結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としては水、エタノールなどが用いられる。スラリー中におけるリチウム化合物形成材料の粒子の量は40〜90重量%程度とすることが好適である。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好適である。これらの成分に希釈溶媒を加えてスラリーを調製する。
前記スラリーの塗布によって形成された塗膜は、リチウム化合物形成材料の粒子間に多数の微小空間を有する。塗膜が形成されたキャリア箔21を、リチウム化合物の形成能の低い材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う。めっき浴への浸漬によって、めっき液が塗膜内の前記微小空間に浸入して、塗膜と上層11aとの界面にまで達する。その状態下に電解めっきが行われる。その結果、(a)塗膜の内部、及び(b)塗膜の内面側(即ち上層11aと対向している面側)において、前記材料が析出して、該材料が塗膜の厚み方向全域に亘って浸透し(以下、この電解めっきを浸透めっきともいう)、図4(d)に示すように下層11bが形成される。
浸透めっきの条件の条件は、リチウム化合物の形成能の低い材料を塗膜中に析出させて下層11bを形成するために重要である。また、下層11b中に多数の微細空隙14を形成するために重要である。例えば金属材料として例えば銅を用いる場合、硫酸銅系溶液を用いるときには、銅の濃度を30〜100g/l、硫酸の濃度を50〜200g/l、塩素の濃度を30ppm以下とし、液温を30〜80℃、電流密度を1〜100A/dm2とすればよい。ピロ燐酸銅系溶液を用いる場合には、銅の濃度2〜50g/l、ピロ燐酸カリウムの濃度100〜700g/lとし、液温を30〜60℃、pHを8〜12、電流密度を1〜10A/dm2とすればよい。また、ニッケルを電解めっきする場合にはワット浴を用いることができる。ワット浴の組成は例えば硫酸ニッケルが150〜350g/l、塩化ニッケルが20〜70g/l、ホウ酸が10〜50g/lである。ワット浴の浴温は30〜80℃、電解時の電流密度は0.5〜100A/dm2とすることができる。これらの電解条件を適宜調節することで、リチウム化合物の形成能の低い材料を塗膜中に析出させて下層11bを首尾良く形成することができる。更に、下層11b中に多数の微細空隙14が容易に形成される。電流密度が高すぎると、塗膜の内部での析出が起こらず、塗膜の表面のみで析出が起こってしまう。なお、下層11bに形成された微細空隙14は、先に上層11aに形成された微細空隙14と連通するものもあれば、連通しないものもある。
このようにして上層11a及び下層11bがこの順で形成されたら、図4(e)に示すように、下層11b上に金属リチウム層10を形成する。形成手段に特に制限はない。例えばスパッタリング等の各種薄膜形成手段によって金属リチウム層10を形成することができる。或いは、予め用意された金属リチウム箔を下層11b上に貼り合わせて圧着することによっても金属リチウム層10を形成することができる。
次に所定の孔あけ加工によって、被覆層11及び金属リチウム層10を貫通する縦孔を形成する(図示せず)。縦孔の形成方法に特に制限はない。例えばレーザー加工によって縦孔を形成することができる。或いは針やポンチによって機械的に穿孔を行うこともできる。縦孔は、実質的に等間隔に存在するように形成されることが好ましい。そうすることによって、負極全体が均一に反応を起こすことが可能となるからである。なお、この孔あけ加工と、先に述べた金属リチウム層10の形成とは、その順序を逆にしてもよい。
最後に、図4(f)に示すようにキャリア箔21を被覆層11から剥離分離する。これによって負極3が得られる。なお、図4(f)においては導電性ポリマーの塗膜22が被覆層11側に残るように描かれているが、該塗膜22はその厚さや導電性ポリマーの種類によってキャリア箔21側に残る場合もあれば、被覆層11側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。なお、先に述べた通り、負極3をその使用の前まではキャリア箔21から剥離せず、キャリア箔21に支持させておいてもよい。
このようにして得られた本実施形態の負極3は、公知の正極、セパレータ、非水系電解液と共に用いられて図1に示すコイン型の非水電解液二次電池1となされる。図1に示す正極5は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、さらに裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の従来公知の正極活物質が用いられる。特筆すべきは、本実施形態の負極は、電池の作製段階で既に充電が完了した状態になっているので、リチウムを含まない物質であるFeOOHやNiOOHなどを正極活物質として用いることができる点である。セパレーター6としては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン又はポリプロピレン多孔質フイルム等が好ましく用いられる。非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、例えば、LiC1O4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiC1、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC49SO3等が例示される。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図2に示す負極3においては、下層11b中に、リチウム化合物の形成能の低い材料が浸透していたが、下層11bに含まれる粒子12の著しい脱落が起こらない範囲において、下層11bに該材料を浸透させなくてもよい。
また図2に示す負極3においては、被覆層11が上層11aと下層11bとの2層構造になっていたが、下層11bに含まれる粒子12の著しい脱落が起こらない範囲において、上層11aを形成せず、下層11bのみから被覆層11を構成してもよい。下層11bのみから被覆層11を構成する場合にも、前記と同様に該下層11bに、リチウム化合物の形成能の低い材料を浸透させなくてもよい。
また、前記実施形態は、本発明の負極をコイン型電池に適用した例であるが、本発明の負極は他のタイプの電池、例えばジェリーロールタイプの電池にも同様に適用できる。ジェリーロールタイプの電池に適用する場合には、先に述べた通り、金属リチウム層の両面に被覆層を形成した構造とすることが好適である。この場合には、図6に示す構造を採用することができる。このような負極は、図4に示す方法に基づいて製造できる。即ち、図4(d)に示すように、上層11a及び下層11bがこの順で形成されたキャリア箔21を2個用意し(このようなキャリア箔を負極前駆体という)、図7(a)に示すように、負極前駆体30を2個一組で用い、各負極前駆体30における下層11bを対向させ且つその間に金属リチウム箔10を介在させる。そしてこれら三者を接合一体化する。次に、図7(b)に示すように、各負極前駆体30におけるキャリア箔21を剥離分離することによって、図6に示す構造の負極が得られる。三者の接合一体化の後で且つキャリア箔21の剥離前に、三者の接合体に対して、先に述べた孔あけ加工を施して縦孔を形成してもよい。或いは、各負極前駆体30に対して、先に述べた孔あけ加工を施して縦孔を形成し、次いで、孔あけ加工が施された負極前駆体30間に金属リチウム箔10を介在させ、これら三者を接合一体化してもよい。なお、ここでいう接合一体化は、前記の三者を例えば接着剤等を用いて接合することだけでなく、単に三者を重ね合わせて(貼り合わせて)電気的に接触させることも包含する。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
図4及び図7に示す方法に従い図6に示す負極を製造した。先ず、電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いで、40℃に保った状態の3.5g/lのCBTA溶液中に、キャリア箔を30秒間浸漬した。これにより剥離処理を行った。剥離処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる上層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。上層は10μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
次に、上層上に、Siの粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。粒子の平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、粒子:アセチレンブラック:スチレンブタジエンラバー=98:2:1.7であった。
上層上に塗膜が形成されたにキャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。この浸透めっきは、めっき面から一部の活物質粒子が僅かに露出する程度に行った。このようにして上層上に下層を形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
このようにして負極前駆体を得た。この負極前駆体を2個用意し、各負極前駆体における下層どうしを対向させた。更に両負極前駆体間に厚さ100μmの金属リチウム箔を介在させた。そしてこれら三者を重ね合わせ圧着によって接合一体化させた。最後に、各キャリア箔を剥離して目的とする負極を得た。この負極における金属リチウムの量は、Siの飽和可逆容量に対して140%であった。
これとは別に、アルミニウム箔上にLiCoO2のペーストを塗工し対極を製造した。負極の各面に対極を対向させ且つ各極間にセパレーターを介在させた。非水電解液としてLiPF6/エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(1:1容量比)を用い、単層型ラミネートセルを作製した。電極面積は6.25cm2であった。
得られたセルについて、以下の充放電条件で80サイクルの充放電を行い、各サイクルの充放電容量を測定した。その結果を図8に示す。
〔充放電条件〕
・充電:1回目4.05V定電流・定電圧モード(以下CCCVという)、2回目以降3.95V CCCV
・放電:2.7V定電流モード CC
・電流密度:充電1.0mA/cm2、放電1.0mA/cm2
図8に示す結果から明らかなように、実施例1の負極を用いた電池は、充放電サイクルが2回目以降は、充放電を繰り返しても充放電容量に変化がないことが判る。このことは金属リチウムのデンドライトの成長が抑制されていることを示している。
更に、前記の単層型ラミネートセルについて、初回の充放電特性を測定した。その結果を図9に示す。図9に示す結果から明らかなように、充放電による電圧降下は観察されず、金属リチウムのデンドライトの発生が抑制されていることが判る。
〔比較例1〕
負極として厚さ100μmの金属リチウム箔を用い、実施例1と同様にして単層型ラミネートセルを作製した。このセルについて、実施例1と同様に、初回の充放電特性を測定した。その結果を図10に示す。図10に示す結果から明らかなように、充電の段階で電池短絡による電圧降下(0V到達)が観察される。このことは、充電によってリチウムイオンが還元され、金属リチウムのデンドライトが発生していることを意味している。
本発明の負極を用いたコイン型電池の断面図である。 図1における負極の要部拡大図である。 電解液中のリチウムイオンが被覆層中に取り込まれる状態を示す模式図である。 図2に示す負極の好適な製造方法を示す工程図である。 微細空隙が形成される状態を示す模式図である。 本発明の負極の別の実施形態を示す図(図2相当図)である。 図6に示す負極の好適な製造方法を示す工程図である。 実施例1で作製された電池の充放電サイクルと充放電容量との関係を示すグラフである。 実施例1で作製された電池の初回の充放電特性を示すグラフである。 比較例1で作製された電池の初回の充放電特性を示すグラフである。
符号の説明
1 コイン型電池
2 負極ケース
3 負極
4 正極ケース
5 正極
6 セパレータ
7 ガスケット
10 金属リチウム層
11 被覆層
11a 上層
12b 下層
13 導電性炭素材料又は導電性金属材料の粒子
14 微細空隙

Claims (6)

  1. 金属リチウム層及び該層の少なくとも一面に形成された被覆層を有し、該被覆層は、リチウム化合物の形成能の高い材料を含む粒子を含有し、且つリチウムイオンの通過が可能であり、
    前記被覆層における前記粒子間に、リチウム化合物の形成能の低い材料が浸透しており、
    前記被覆層に、該被覆層の表面において開孔し且つ前記金属リチウム層と通ずる、リチウムイオンの通過が可能な多数の微細空隙が、該被覆層の厚み方向に延びるように形成されていることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
  2. 導電性集電体の少なくとも一面に前記金属リチウム層が形成されており、その上に前記被覆層が形成されている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
  3. 金属リチウムが、リチウム化合物の形成能の高い前記材料の飽和可逆容量に対して100%超含まれている請求項1又は2記載の非水電解液二次電池用負極。
  4. リチウム化合物の形成能の高い前記材料が、シリコン系材料、スズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料、アンチモン系材料、インジウム系材料又はグラファイト系材料である請求項1ないしの何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
  5. 前記被覆層の表面において開孔し且つ前記金属リチウム層の厚み方向に延びる縦孔を多数有する請求項1ないしの何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
  6. 被覆層の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が5〜500μmである請求項記載の非水電解液二次電池用負極。
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