JP4716543B2 - 消臭性に優れたセルロース繊維又は繊維製品、その製造方法及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭性に優れたセルロース繊維又は繊維製品、その製造方法及びその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体から発生する臭気には、酸性臭、塩基性臭及び中性臭の性質の異なる臭気が存在している。更に、中高年の人の皮脂には、若い人には殆ど存在しないパルミトオレイン酸という脂肪酸が多く存在し、これが過酸化脂質によって酸化分解されたり、皮膚表面に常在している菌によって分解されて、ノネナールというアルデヒドが生成することが、最近の研究により明らかにされた。このノネナールという成分が中年臭の原因となる臭気物質であることが突き止められ、最近の話題になっている。
【0003】
今日までに、消臭性能が付与されたセルロース繊維又は繊維製品が数多く開発されている(例えば特開平4−370270号公報、特許第2946339号)。しかしながら、斯かるセルロース繊維又は繊維製品は、ノネナール臭を除去する効果が不充分であり、特にノネナール臭等の種々の臭気が混在した中年臭を有効に除去できるものではない。
【0004】
更に、消臭性能が付与されたセルロース繊維又は繊維製品には、洗濯を繰り返し行っても消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えていることが要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸性臭、中性臭及び塩基性臭に対し優れた消臭性能を発現し得るセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、中年臭に対して優れた消臭性能を有するセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、洗濯を繰り返し行っても上記消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えたセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0008】
本発明は、上記セルロース繊維及びセルロース繊維製品の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明は、上記セルロース繊維及びセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルターを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸性臭、中性臭及び塩基性臭に対し優れた消臭性能を有し、更に中年臭に対しても優れた消臭性能を有し、しかも耐洗濯性を備えたセルロース繊維及びセルロース繊維製品を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、セルロース繊維及びセルロース繊維製品にフラボノイド類をエステル結合を介して結合させ且つ水不溶性無機金属化合物を把持させることにより、上記課題を達成できることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
1.本発明は、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
2.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、ポリカルボン酸及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
3.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
4.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、更に熱処理して得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
5.本発明は、水不溶性無機金属化合物が水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種である、上記1〜4に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
6.本発明は、ポリカルボン酸が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸である、上記1〜5に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
7.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、ポリカルボン酸及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法である。
8.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法である。
9.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、更に熱処理することにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法である。
10.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品を金属塩の水溶液で処理してセルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる、上記7〜9に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法である。
11.本発明は、上記1〜6に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルターである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、セルロース繊維は、従来公知のセルロース繊維であり、例えば木綿、麻等の天然セルロース、レーヨン等の再生セルロース、又はこれらの混紡品である。本発明のセルロース繊維には、これら繊維の他、これら繊維の一次加工品、例えば糸、ニット、織物、編物、不織布等が包含される。特に木綿の場合、原綿そのもの、苛性マーセル化した木綿、液体アンモニアで処理した木綿等も、本発明のセルロース繊維に包含される。
【0012】
本発明においては、本発明のセルロース繊維に非セルロース系合成繊維を混紡、交撚、混編させることもできる。
【0013】
非セルロース系合成繊維としては、従来公知のものを広く例示でき、例えばポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等を挙げることができる。上記合成繊維の中でも、ポリエステル、ポリアミド、アクリル及びポリプロピレンが好ましく、ポリエステルが特に好ましい。
【0014】
セルロース繊維に上記合成繊維が混紡される場合、混紡割合は特に限定されるものではない。セルロース繊維の混紡割合が多い方が、本発明の効果(優れた消臭性能及び耐洗濯性)がより一層発現されるが、混紡繊維及び繊維製品の特徴である繊維強度等の合成繊維の性能を損なわないように具現する為には、通常合成繊維が全繊維中に1〜80重量%、好ましくは20〜66重量%の割合で混紡されるのがよい。
【0015】
本発明において、セルロース繊維製品とは、上記セルロース繊維を更に加工したもの、例えば外衣、中衣、内衣等の衣料、寝装品、インテリア等の製品を意味する。本発明のセルロース繊維製品としては、具体的にはコート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、サポーター、靴下、タイツ、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、布団地、布団綿、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ等の製品を例示できる。また、本発明のセルロース繊維製品には、例えば壁布、フロア外張り等の産業資材分野で使用される繊維製品の形態のものも包含される。
【0016】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
【0017】
本発明において、フラボノイド類は、下記の化学式に示すような、[C6−C3−C6]を基本構造とする一群の化合物をいう。
【0018】
【化1】
【0019】
フラボノール類は、
【0020】
【化2】
【0021】
の骨格を有する化合物である。この種の化合物は、3位の水酸基でエーテル結合して配糖体を形成し、配糖体として広く植物中に存在している。本発明では、このような化合物を広く使用することができる。ここで配糖体は、3位の水酸基でエーテル結合して形成されたものであってもよいし、6位又は7位で直接結合して形成されていてもよい。
【0022】
例えば、4’,5,7−トリヒドロキシフラボノールは、ケンフェロールと呼ばれ、ケンフェロールの3−ガラクトシドは、トリホリンと呼ばれてアカツメクサの花中に存在し、ケンフェロールの3−グルコシドは、アストラガリンと呼ばれてレンゲの花中に存在し、ケンフェロールの3−ラムノグルコシドは、ロビニンと呼ばれてニセアカシアの花中に存在している。
【0023】
また、3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボノールは、クエルセチンと呼ばれており、クエルセチンの3−ラムノシドがクエルシトリンと呼ばれてQuercus tinctoriaの樹皮中に存在している。クエルセチンの3−グルコシドは、イソクエルシトリンと呼ばれてシロツメクサの花中に存在している。また、クエルセチンの3−ラムノグルコシドは、ルチンと呼ばれてエンジュの花やソバの葉中に存在している。
【0024】
また、3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラボノールは、ミリセチンと呼ばれ、ミリセチンの3−ラムノシドは、ミリシトリンと呼ばれてヤマモモの樹皮等に存在している。
【0025】
更に、クエルセチン−7−グリコシドは、クエルシメリトリンと呼ばれ、綿の花、杉の葉に存在している。また、ケンフェロール−3,7−ジラムノシドは、ケンフェリトリンと呼ばれ、ミヤコグサ、カラスウリの葉に存在している。
【0026】
フラボノール類としては、ケンフェロール、クエルセチン及びミリセチン並びにそれらの誘導体が好ましい。
【0027】
フラバノノール類は、上記式(1)のフラボノール類に水素が添加された化合物であり、
【0028】
【化3】
【0029】
の骨格を有する化合物である。この種の化合物も、3位の水酸基でエーテル結合して配糖体を形成し、配糖体として広く植物中に存在している。本発明では、このような化合物を広く使用することができる。
【0030】
例えば、5,7−ジヒドロキシフラバノノールは、ピノバンクシンと呼ばれPinus banksinaの心材中に含まれている。4’,5,7−トリヒドロキシフラバノノールは、アロマデンドリンと呼ばれ、ユーカリ属、カツラの材に含まれ、アロマデンドリンの3−ラムノシドは、エンゲリチンと呼ばれフジバシデの材に含まれている。3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノノールは、タキシホリンと呼ばれイスノキの材に含まれ、タキシホリンの3−ラムノシドは、アスチルビンと呼ばれトリアシシヨウマ、アカシヨウマの根茎に含まれている。また、3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラバノノールは、アンベロブチンと呼ばれセンダンバウドカズラの葉に含まれている。
【0031】
フラバノール類は、フラバンの3位に水酸基が導入された化合物であり、
【0032】
【化4】
【0033】
の骨格を有する化合物である。
【0034】
例えば、3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノールは、カテキンと呼ばれ、そのエピマーであるエピカテキンと共に、茶葉から抽出される。
【0035】
3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラバノールは、エピガロカテキンと呼ばれ、そのエピマーであるガロカテキンと共に、茶葉から抽出される。
【0036】
エピカテキンの3−ガロイルエステルは、エピカテキンガレートと呼ばれ、茶葉から抽出される。
【0037】
また、エピガロカテキンの3−ガロイルエステルは、エピガロカテキンガレートと呼ばれ、茶葉から抽出される。
【0038】
これらのフラバノール類は、茶葉から混合物として又はそれぞれ精製物として抽出製造されており、例えば三井農林株式会社製のポリフェノンシリーズとして市販されている。
【0039】
本発明のフラボノイド類には、上記フラボノール類、フラバノノール類、フラバノール類の他、フラボンの5位及び7位に水酸基が置換したクリシン、フラボンの3位、5位及び7位に水酸基が置換したガランギン、フラボンの5位、7位及び4’位に水酸基が置換したアピゲニン、フラボンの3位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したフィセチン、フラボンの5位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したルテオリン、フラボンの3位、5位、7位、2’位及び4’位に水酸基が置換したモリン、フラボンの3位、7位、3’位、4’位及び5’位に水酸基が置換したロビネチン、フラボンの3位、5位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したゴシペチン等やこれらを基本骨格とする誘導体も包含される。
【0040】
本発明では、フラボノイド類は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品中に0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%含有されているのがよい。
【0041】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品にエステル結合(−COO−)を介してフラボノイド類を結合させるには、ポリカルボン酸が使用される。
【0042】
本発明において、ポリカルボン酸としては、例えば分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用することができる。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0043】
分子中に2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、例えば飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0044】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等を例示できる。
【0045】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等を例示できる。
【0046】
芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等を例示できる。
【0047】
脂環式ジカルボン酸としては、具体的にはヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等を例示できる。
【0048】
本発明において、ポリカルボン酸として、分子中に少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用するのが好ましい。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0049】
少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等を例示できる。
【0050】
脂肪族トリカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等を例示できる。
【0051】
脂肪族テトラカルボン酸としては、具体的には、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等を例示できる。
【0052】
脂肪族ペンタカルボン酸としては、具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸等を例示できる。
【0053】
脂肪族ヘキサカルボン酸としては、具体的には、トリエチレンテトラミン六酢酸等を例示できる。
【0054】
芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等を例示できる。
【0055】
カルボン酸ポリマーとしては、具体的には、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等を例示できる。
【0056】
これらポリカルボン酸は夫々単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0057】
これらのポリカルボン酸のうち、トリカルバリル酸、アコニチン酸、クエン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の水溶性のポリカルボン酸は作業性が良好であることから好ましく、特に水溶性で四塩基酸の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が最も効果が優れており好ましい。
【0058】
本発明では、ポリカルボン酸は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品中に0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%含有されているのがよい。
【0059】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品の内部に把持される無機金属化合物としては、水不溶性である限り特に限定されるものではなく、銅、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ゲルマニウム、セリウム等の遷移金属の水酸化物、アルミニウム、珪素、スズ、アンチモン等の両性金属の水酸化物、マグネシウム等の水酸化物、アルカリ金属を除く金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、ジルコン酸塩等が例示される。これら金属化合物は、セルロース繊維内部に1種又は2種以上把持される。これら金属化合物の中では、水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛が特に好適である。
【0060】
本発明では、斯かる金属化合物は、セルロース繊維中に0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%把持されているのがよい。
【0061】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、例えば下記に示す方法により製造される。
【0062】
方法A:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、ポリカルボン酸及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより製造される。
【0063】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる場合には、セルロース繊維の内部に金属イオンを侵入させる方法である限り従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えばセルロース繊維又はセルロース繊維製品に侵入させようとする金属イオンを、水溶性金属塩の形態でセルロース繊維又はセルロース繊維製品に侵入させればよい。
【0064】
水溶性金属塩は、繊維の内部に把持しようとする金属化合物を構成する金属の塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩の形態がよい。特に繊維の内部に把持しようとする金属化合物が水酸化亜鉛又は塩基性炭酸亜鉛である場合には、水溶性金属塩は塩化亜鉛が好適である。
【0065】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品へフラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩を付着及び/又は含浸させるに当たっては、従来公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、コーティング法等従来公知の各種の方法を広く適用することができる。本発明では、フラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩を含有する処理液中に処理すべきセルロース繊維又はセルロース繊維製品を浸漬する、いわゆる、浸漬法を採用するのが好ましい。
【0066】
以下、浸漬法につき詳述する。
【0067】
処理液中のフラボノイド類濃度、ポリカルボン酸濃度及び水溶性金属塩濃度は、処理液の絞り率と必要とする担持量より算出した濃度に設定すればよい。
【0068】
本発明では、一つの処理液中に所定濃度のフラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩が全て含有されていてもよいし、これらフラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩が別個の処理液中に含有されていてもよい。
【0069】
上記処理液のpHは0〜6、好ましくは2〜5に調整されていることが好ましい。処理液のpHがこの範囲であれば、本発明で所望するセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることができる。当該範囲のpHは処理液に対して中和剤、即ち適当なアルカリ又は塩を添加することにより調整できる。
【0070】
pHの調整に使用される中和剤として、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記のナトリウム塩に代わり、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用できる。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
上記中和剤の添加量は、使用されるフラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩の溶解量や種類にもよるが、処理液中の濃度として通常0.1〜10重量%程度とするのがよい。
【0072】
上記処理液を構成する溶媒としては有機溶媒でも差支えないが、安全、価格を考慮すれば水を溶媒にするのが好ましい。また処理液の形態は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、溶液の形態であっても乳化液の形態であってもよいが、処理効率及び安全性の観点から水溶液であることが好ましい。
【0073】
上記処理液のセルロース繊維又はセルロース繊維製品に対する浸透速度は充分に速く、浸漬時間、浴温度に特に制限はない。通常、浸漬時間0.1〜300秒、浴温は10〜40℃で行われる。絞りは加工する製品によって異なり、夫々に適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、絞り率は30〜200%で行うのが好ましい。
【0074】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行う。工業的には、乾燥温度は40〜150℃、時間は温度に応じて選定すればよい。
【0075】
本発明においては、フラボノイド類、ポリカルボン酸及び水溶性金属塩を付着及び/又は含浸させたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を次いで加熱処理する。
【0076】
加熱処理の温度は、通常100〜250℃、好ましくは120〜200℃、処理時間は20秒〜1時間である。これより穏やかな条件では、加工布の消臭性能が洗濯を繰り返すことにより低下する傾向になり、厳しすぎる条件では繊維の劣化を引き起こし、強度低下や繊維黄変として表れる傾向が生ずるので、いずれも好ましくない。
【0077】
本発明の方法では、次いでセルロース繊維又は繊維製品の内部に侵入させた金属イオンを水不溶性の無機金属化合物の形態に変換させる。具体的には、セルロース繊維の内部に侵入させた金属イオンを水不溶性の無機金属化合物の形態に変換させる(不溶化させる)ための処理液(以下「第2処理液」という)中でセルロース繊維又は繊維製品を処理すればよい。
【0078】
第2処理液での処理において、水溶性金属塩にアルカリ、酸及びアルカリ金属塩の水溶液のいずれか一つを作用させて、繊維中に含浸付着させた水溶性金属塩を水不溶性の金属化合物に変換させる。この方法にも、浸漬法、パッド法、スプレー法、コーティング法等が適用できるが、実用上は浸漬法及びパッド法が好適である。浸漬法はあらゆる形態の繊維に対して適用できるが、特に織物や編物に対してはパッド法が適している。
【0079】
第2処理液での処理の具体例を示せば、アルカリ、酸又はアルカリ金属塩を0.01〜10重量%含有する水溶液に、処理すべきセルロース繊維又は繊維製品を浸漬し、室温〜70℃において3秒〜5分間処理した後、所定の均一な絞り率になるようにマングル等で絞るのがよい。アルカリ、酸及びアルカリ金属塩としては、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0080】
上記第2処理の後、必要に応じてソーピング又は水洗を行なってアルカリ、酸又はアルカリ金属塩を完全に除去した後、乾燥処理を行なうのがよい。斯くして本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品が製造される。本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品では、水不溶性の無機金属化合物が繊維の非晶質領域内部に封入されたような挙動を示す。
【0081】
方法B:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより製造される。
【0082】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させる工程、熱処理工程、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる工程、及び含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程の各手段や条件は、方法Aと同じでよい。
【0083】
方法C:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、更に熱処理することにより製造される。
【0084】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる工程、含浸させた金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させる工程、及び熱処理工程の各手段や条件は、方法Aと同じでよい。
【0085】
本発明では、方法Aに従いセルロース繊維又はセルロース繊維製品を製造するのが特に好ましい。方法Aに従い製造されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、一段と優れた消臭性能を発現する。
【0086】
更に、本発明によれば、上記セルロース繊維又はセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルターが提供される。
【0087】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品からエアーフィルターを作製する方法は特に限定されるものではなく、従来のエアーフィルターの作成方法と同様にして製造すればよい。
【0088】
本発明のエアーフィルターには、エアコン用、空気清浄機用、掃除機用の各種フィルターの他、掃除機用紙パックも包含される。
【0089】
【発明の効果】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、酸性臭、中性臭及び塩基性臭のいずれの臭気成分に対しても優れた消臭性能を有している。
【0090】
特に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、中年臭に対して優れた消臭性能を有している。
【0091】
更に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、洗濯を繰り返し行っても上記消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えている。
【0092】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0093】
実施例1
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%、塩化亜鉛1.6重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0094】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を6重量%含有し、水酸化亜鉛を1.2重量%把持していた。
【0095】
実施例2
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を塩化亜鉛1.6重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後、水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬した。更に該織物をマングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0096】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を6重量%含有し、水酸化亜鉛を1重量%把持していた。
【0097】
実施例3
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、塩化亜鉛1.6重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥した。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥した。更に該織物を1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行い、本発明の綿織物を得た。
【0098】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を6重量%含有し、水酸化亜鉛を0.8重量%把持していた。
【0099】
比較例1
塩化亜鉛を使用しない以外は、実施例1と同様に処理した。即ち、目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、綿織物を得た。
【0100】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を6重量%含有していた。
【0101】
比較例2
フラボノール類を使用しない以外は、実施例1と同様に処理した。即ち、目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸6.9重量%、第2燐酸ソーダ3.4重量%、炭酸ソーダ1.2重量%及び塩化亜鉛1.6重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、綿織物を得た。
【0102】
この綿織物は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸を6重量%含有し、水酸化亜鉛を1.2重量%把持していた。
【0103】
比較例3
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理して、比較例3の綿織物とした。
【0104】
試験例1
上記実施例1〜3で得られた各綿織物を以下の消臭試験に供した。また、上記実施例1〜3で得られた各綿織物をそれぞれ50回洗濯したものを以下の消臭試験に供した。
【0105】
洗濯は花王(株)製の花王ニュービーズを5g/リットルの割合で溶解した水溶液を用い、40℃で10分間、家庭用洗濯機中で洗濯し、次いで水洗し、乾燥する操作を1サイクルとして、このサイクルを50回繰り返した。
【0106】
アンモニア及びイソ吉草酸の消臭率は、次のようにして求めた。上記実施例1〜3で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)を10cm×10cmの大きさに切断したものを、別々に三角フラスコに入れておき、次にこれらの三角フラスコ内にアンモニア又はイソ吉草酸の溶液を一定量入れ、密栓して室温で60分間放置し、その後三角フラスコの上部に溜まったアンモニアガス又はイソ吉草酸ガスの濃度を北川式ガス検知管を用いて調べ、消臭率を求めた。
【0107】
また、ノネナールの消臭率は、次のようにして求めた。上記実施例1〜3で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)の一定量をバイアル瓶に入れ、ノネナールをマイクロシリンジで一定量注入し、ゴム栓をしてアルミシールで密閉し、80℃で30分間加熱し揮発させ、室温にて30分間放冷後、バイアル瓶のヘッドスペース部分の適量を、ガスタイトシリンジでガスクロマトグラフに導入し測定した。
【0108】
バイアル瓶に綿織物を入れない以外は、上記と同じ方法で作成したものをブランクとした。
【0109】
ノネナールの検出にはFIDを用い、ブランクとのピーク面積比から消臭率を求めた。
【0110】
結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
試験例2
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)を以下の消臭試験に供した。
【0113】
中高年の体臭に多く含まれているイソ吉草酸(0.01重量%)とノネナール(0.01重量%)とを混合した中高年体臭合成液を調製した。この中高年体臭合成液を上記各綿織物にミニスプレーを用いて同量噴霧し、2〜3分放置した後の臭いを、20人に嗅がせた。下記に示す6段階基準に従い官能値を決定し、平均値を求めた。結果を下記表2に示す。
【0114】
官能値
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いであるのか判断できる程度の弱い臭い
3:何の臭いであるのか楽に判断できる程度の臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0115】
【表2】
【0116】
表2から、本発明の綿織物は、中高年体臭に対して格段に優れた消臭性能を備えており、しかも耐洗濯性にも優れていることがわかる。
Claims (11)
- エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、ポリカルボン酸及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで乾燥し、更に熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、次いで乾燥した後、熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、更に乾燥した後、熱処理して得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- 水不溶性無機金属化合物が水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- ポリカルボン酸が1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、ポリカルボン酸及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで乾燥し、更に熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、次いで乾燥した後、熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及びポリカルボン酸を付着及び/又は含浸させ、更に乾燥した後、熱処理することにより、エステル結合を介してフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることを特徴とするセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。
- セルロース繊維又はセルロース繊維製品を金属塩の水溶液で処理してセルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる請求項7〜9のいずれか一項に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品の製造方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルター。
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