JP4673068B2 - Th1型アレルギー疾患治療用組成物 - Google Patents

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本発明は、Th1型アレルギー疾患の予防および/または治療に用いる薬学的組成物に関するものであり、特にTh1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息の予防および/または治療に用いる薬学的組成物に関するものである。
アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis、以下、ADと記す)は、代表的な慢性皮膚障害であり、その主な特徴は、掻痒性、慢性反復性および遺伝的背景を有することである(非特許文献1〜5)。
以前から、ADは血清IgEレベルの上昇とTh2応答に由来する免疫病理が原因であると考えられてきた。実際、多数の研究者が報告しているように、高い血清IgEレベルを有しているAD患者(外因性AD)は、全体の約80%に及び、末梢血T細胞および病変部位において優先的なTh2細胞への偏りや、CCL17(TARC)やCCL22(MDC)のようなTh2ケモカインの発現を示す(非特許文献1〜3、5)。
しかしながら、内因性ADと呼ばれているIgEレベルが正常範囲のAD患者は、多少異なった免疫学的特性、すなわち、Th1サイトカインのIFN−γや、CXCL9(Mig)、CXCL10(IP−10)、CXCL11(I−TAC)のようなIFN関連ケモカインの発現増加という特性を有している(非特許文献2、5〜8)。さらに、最近の研究により、皮膚病変部における免疫学的特長は、ADのステージにより全く異なることが明らかとなった(非特許文献2、5)。幼児期の急性ADの皮膚病変部においてはTh2サイトカインを発現しているリンパ球が優性であるが、慢性AD患者の皮膚病変部にはIFN−γ(Th1サイトカイン)を発現しているリンパ球、さらに、IL−12(Th1細胞への分化を促進するサイトカイン)を発現する単球系細胞が認められる(非特許文献2、5)。
本発明者らは、最近、IgEに依存しないがケラチノサイトからのIL−18分泌の増加に完全に依存して、マウスにADを誘発することが可能であることを明らかにした(非特許文献9、10)。ケラチノサイトから大量のIL−18を分泌するカスパーゼ−1−トランスジェニックマウス(KCASP1Tg)はSPF(specific pathogen-free)環境下でAD様皮膚炎を自然発症することが知られている(特許文献1)。本発明者らは、上記KCASP1TgにおいてIL−18遺伝子を欠損させることで、IgE誘導に必須のIL−4シグナル伝達因子であるStat6遺伝子を有していてもADを発症しないことを見出した。逆に、上記KCASP1TgにおいてStat6遺伝子を欠損させると、IgE非依存性のTh1型ADモデルマウスを作製できることを見出し(非特許文献9、10)、これらのモデルマウスについて特許出願している(特許文献2)。
一方、気管支喘息もアレルゲン、IgE、およびヘルパーT2細胞が産生するサイトカイン(Th2サイトカイン)の協調作用によって誘導されるTh2型疾患と考えられてきた。特に、Th2サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−9、IL−13など)、およびGM−CSF(顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子)によって気管支喘息が引き起こされることは、よく知られている。
しかしながら、気管支喘息患者の中には、Th1細胞優位な免疫応答を示す症例、Th1細胞とTh2細胞の両免疫応答を示す症例も混在するという報告もあり、近年の研究の進歩によって、現在では3つのタイプ、すなわち、Th1細胞誘導型気管支喘息(Th1型気管支喘息)、Th2細胞誘導型気管支喘息(Th2型気管支喘息)およびTh1細胞/Th2細胞混合誘導型気管支喘息(混合型気管支喘息)に分類できる。Th1型気管支喘息では、IgE産生を認めないか、認めても正常範囲の場合がほとんどである。また、感染で増悪するのが、Th1型気管支喘息の特徴である。
本発明者らは、抗原特異的なTh1細胞を抗原とIL−18とで刺激すると、Th1サイトカインのみならず、アレルギー性応答を担うエフェクター分子であるIL−13や種々のケモカインを大量に産生することを見出し、この知見に基づいて抗原特異的なTh1細胞を内包したマウスに、抗原とIL−18を点鼻することにより抗原点鼻だけでは誘導できない気管支喘息(Th1型気管支喘息)を誘発できることを報告している(非特許文献11)。
また、IL−18は間質性肺炎を誘導する可能性が報告されており(非特許文献12)、COPD(慢性呼吸不全)を誘発する可能性も示唆されている。したがって、間質性肺炎やCOPDは、おそらくTh1型気管支喘息の進行形と考えられる。
ところで、現在、アトピー性皮膚炎の治療としては、ステロイドの外用、免疫抑制剤の外用、抗アレルギー剤の内服等が行われている。また、気管支喘息の治療としては、ステロイド吸入、気管支拡張作用のある交感神経薬剤の吸入、抗アレルギー剤の吸入、またはこれらの薬剤の内服等が行われている。さらに、IgEが原因で発症するADや気管支喘息に対しては、抗IgE抗体によるIgE中和療法も行われている。しかし、Th1型ADやTh1型気管支喘息は上記治療法に抵抗性であり、未だ適切な治療法は確立されていない。なお、Th1型気管支喘息は、難治性喘息に組み込まれている。
国際公開WO01/95710A1号パンフレット(国際公開日:2001年12月20日) 特開2004−41123号公報(公開日:平成16年2月12日) Grewe, M., et al. A role for Th1 and Th2 cells in the immunopathogenesis of atopic dermatitis. Immunol. Today 19, 359-361 (1998). Leung, D.Y.M.& Bieber, T. Atopic dermatitis. Lancet 361, 151-160 (2003). Novak, N., Bieber, T.& Leung, D.Y.M. Immune mechanisms leading to atopic dermatitis. J. Allergy Clin. Immunol. 112, S128-S139 (2003). Spergel, J.M.& Paller, A.S.P. Atopic dermatitis and the atopic march. J. Allergy Clin. Immunol. 2003, S118-S127 (2003). Leung, D.Y.M., Boguniewicz, M., Howell, M.D., Nomura, I.& Hamid, Q.A. New insights into atopic dermatitis. J. Clin. Invest. 113, 651-657 (2004). Simon, D., Borelli, S., Braathen, L.& Simon, H. Peripheral blood mononuclear cells from IgE- and non-IgE-associated allergic atopic eczema/dermatitis syndrome (AEDS) demonstate increased capacity of generating interleukin-13 but diffr in their potential of synthesizing interferon-γ. Allergy 57, 431-435 (2002). Jeong, C.-W., et al. Differntial in vivo cytokine mRNA expression in lesional skin of intrinsic vs. extrinsic atopic dermatitis patients using semiuantitative RT-PCR. Clin. Epx. Allergy 33, 1717-1724 (2003). Klunker, S., et al. A second step of chemotaxis after transendothelial migration: Keratinocytes undergoing apoptosis release IFN-γ-inducible protein 10, monokine induced by IFN-γ, and IFN-γ-inducible α-chemoattractant for T cell chemotaxic toward epidermis in atopic dermatitis. J. Immunol. 171, 1078-1084 (2003). Konishi, H., et al. IL-18 contributes to the spontaneous development of atopic dermatitis-like inflammatory skin lesion independently of IgE/stat6 under specific pathogen-free conditions. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 11340-11345 (2002). Tsutsui, H., Yoshimoto, T., Hayashi, N., Mizutani, H.& Nakanishi, K. Induction of allergic inflammation by interleukin-18 in experimental animal models. Immunol. Rev. 202, 115-138 (2004). Sugimoto, T., et al. IL-18 acts on memory Th1 cells to induce airway inflammation and hyperresponsiveness in a naive host mouse. J. Exp. Med. 199, 535-545 (2004). Hoshino, T., et al. Interleukin-18 (IL-18) in synergy with IL-2 induces lethal lung injury in mice: a potential role for cytokines, chemokines, and natural killer cells in the pathogenesis of interstitial pneumonia. Blood 99, 1289-1298 (2002).
上述のように、本発明者らは、Th1型ADやTh1型気管支喘息について鋭意研究を進展させており、その結果、Th1型のADや気管支喘息ではIL−18が皮膚炎や喘息を誘発する主な因子であることを既に公表している(例えば、特許文献2など)。また、IL−18がIL−4、IL−13、GM−CSF、IL−8、IFN−γ、ならびにIFN−γ関連ケモカインの産生を誘導することも知られている。
しかしながら、病気の誘発因子であることが実験的に強く示唆された場合でも、単純に当該誘発因子の機能を阻害することで、その病気の予防や治療が可能となるものではないことは当業者にはよく知られている事実である。例えば、IL−5およびIL−13は喘息において発現レベルの増加が認められるサイトカインであるが、抗IL−5抗体または抗IL−13抗体を投与した場合、好酸球の増加が抑制されるが気道過敏性は抑制されないことが報告されている(Ichinose, M., et al. Cytokine-directed therapy in asthma. Curr. Drug Targets Inflamm.Allergy. Sep;3(3):263-269 (2004). Nagai, H., et al. The role of interleukin-5(IL-5) in allergic airway hyperresponsiveness in mice. Ann. N. Y. Acad. Sci. Oct31;796:91-96 (1996).)
したがって、Th1型ADやTh1型気管支喘息において、IL−18またはIFN−γを阻害した場合に、病態がどのように変化するかについては研究することは非常に意義のあるものと考えられるが、このような研究成果については未だ報告されていない。
また、上述のように、現在のADや気管支喘息の治療は、アレルゲンによるIgEの増加に起因するTh2型の病態を対象としたものであり、Th1型の患者に対する効果は低いため、Th1型のAD患者や気管支喘息患者に適した治療薬や治療方法の開発が待ち望まれている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、効果的な治療方法や治療薬がないTh1型アトピー性皮膚炎やTh1型気管支喘息などのTh1型アレルギー疾患に対して有効な薬学的組成物を提供することにある。

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明者らが独自に開発したTh1型ADモデルマウスまたはTh1型気管支喘息モデルマウスに対して、抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を投与することで、ADまたは喘息の発症を抑えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る薬学的組成物は、Th1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息を予防および/または治療するために用いられ、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含むことを特徴としている。上記IL−18阻害物質は抗IL−18中和抗体であり、上記IFN−γ阻害物質は抗IFN−γ中和抗体であることが好ましい。
本発明に係るキットは、Th1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息を予防および/または治療するために用いられるキットであって、少なくとも試料中のIgEレベルを測定する試薬、試料中のIL−18レベルを測定する試薬およびIL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含む薬学的組成物を備えることを特徴としている。上記IL−18阻害物質は抗IL−18中和抗体であり、上記IFN−γ阻害物質は抗IFN−γ中和抗体であることが好ましい。
本発明に係るTh1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息の予防および/または治療方法は、被検体由来の試料におけるIgEレベルおよびIL−18レベルを測定する工程、上記IgEレベルおよびIL−18レベルを正常レベルと比較する工程、およびIgEレベルが正常範囲内にあり、かつ、IL−18レベルが正常範囲を超えている被検体に対して、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を投与する工程、を包含することを特徴としている。上記IL−18阻害物質は抗IL−18中和抗体であり、上記IFN−γ阻害物質は抗IFN−γ中和抗体であることが好ましい。
上記構成の組成物、キットおよび方法により、Th1型ADまたはTh1型気管支喘息を有効に予防および/または治療することが可能となる。
本発明の薬学的組成物、キットおよび方法により、従来効果的な治療ができなかったTh1型ADまたはTh1型気管支喘息を有効に予防および/または治療できる手段を提供できるという効果を奏する。さらに、Th1型気管支喘息の進行形と考えられる間質性肺炎や慢性呼吸不全の発症を予防できるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
〔薬学的組成物〕
本発明に係る薬学的組成物は、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含むものであればよく、Th1型のアレルギー疾患を予防および/または治療するために用いられる。
本明細書において、Th1型アレルギー疾患とは、抗原と感染が原因で発症し、IgE産生を伴わないか、IgEレベルが正常範囲内であるような疾患を意味するものとする。
Th1型アレルギー疾患としては、例えば、Th1型アトピー性皮膚炎(AD)、Th1型気管支喘息などを挙げることができる。
本発明者らは、実施例において詳細に記載しているように、Th1型ADモデルマウスに抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を投与するとADを発症しないことを実験的に確認した。また、Th1型気管支喘息モデルマウスに抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を投与すると喘息症状が抑制されること、および、IL−18遺伝子ノックアウト(KO)マウスまたはIFN−γ遺伝子KOマウスを用いて作製したTh1型気管支喘息モデルマウスでは、中和抗体を投与したマウスと同様に喘息症状が抑制されることを、実験的に確認した。
このような本発明者らによる実験データに基づけば、IL−18阻害物質およびIFN−γ阻害物質がTh1型のアレルギー疾患、なかでもTh1型ADおよびTh1型気管支喘息を有効に抑制できることは明らかである。
ここで、「阻害物質」はIL−18またはIFN−γの正常な機能を損なわせるように作用する物質であれば特に限定されない。したって、「阻害物質」にはIL−18遺伝子またはIFN−γ遺伝子からの転写を阻害する物質、IL−18mRNAまたはIFN−γmRNAからの翻訳を阻害する物質、IL−18タンパク質またはIFN−γタンパク質の成熟を阻害する物質、成熟したIL−18タンパク質またはIFN−γタンパク質の機能発現を阻害する物質などが含まれる。
IL−18(成熟タンパク質としてのIL−18)阻害物質は、以下のような方法で取得することができる。例えば、皮膚ケラチノサイトを黄色ブドウ球菌由来のプロテインAで刺激する、または気道上皮細胞を大腸菌由来LPSで刺激することで、IL−18の産生が誘導されるが、この系に阻害候補物質を添加してIL−18産生が抑制されるか否かを測定することにより、IL−18阻害物質を取得することができる。ただし、IL−18阻害物質のスクリーニング方法はこれに限定されるものではない。
また、IFN−γ(成熟タンパク質としてのIFN−γ)阻害物質は、以下のような方法で取得することができる。例えば、Th1細胞を抗原刺激する、またはNK細胞をIL−12とIL−18とで刺激するとIFN−γが産生されるが、この系に阻害候補物質を添加してIFN−γ産生が抑制されるか否かを測定することにより、IFN−γ阻害物質を取得することができる。ただし、IFN−γ阻害物質のスクリーニング方法はこれに限定されるものではない。
より具体的なIL−18阻害物質としては抗IL−18中和抗体を挙げることができ、より具体的なIFN−γ阻害物質としては抗IFN−γ中和抗体を挙げることができる。ここで「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびこれらのフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体などが挙げられるがこれらに限定されない。
抗体は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従えば作製することができる。また、作製した抗体が中和活性を有するか否かは、例えば上記IL−18阻害物質のスクリーニング方法または上記IFN−γ阻害物質のスクリーニング方法に従えば確認することができる。また、公知の抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を用いてもよい。
また、抗体は投与対象動物由来の抗体であることが好ましい。異種動物由来の抗体を投与すると異種タンパク質として認識され、免疫系により不活化・排除されるからである。
本発明の薬学的組成物の適用対象はヒトに限定されるものではないが、例えば、ヒトに対して抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を含有する本発明の薬学的組成物を適用する場合には、抗体はヒト抗体またはヒト化抗体であることが好ましい。ヒト抗体やヒト化抗体は公知の方法(例えば、Riechman, Nature 332, 323-327 (1988)、Queen, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 10029-10033(1989)、国際特許出願公開番号WO92-03918、WO93-2227、WO94-02602、WO94-25585、WO96-33735、WO96-34101など)により取得することができる。
本発明の薬学的組成物には、IL−18阻害物質またはIFN−γ阻害物質の何れか一方のみが含まれていてもよいし、両方が含まれていてもよい。
本発明の薬学的組成物は、経口、非経口、または局所のいずれかの経路で哺乳動物に投与することができる。有効成分としてのIL−18阻害物質またはIFN−γ阻害物質の含有量は、治療対象の体重および状態、治療される疾病の状態、および選択される特定の投与経路に応じて、適宜選択すればよい。
IL−18阻害物質またはIFN−γ阻害物質は、上記投与経路のいずれかにより、単独で、あるいは、薬剤学的に許容することのできる担体または希釈剤との組み合わせで、投与することができ、投与は、単回または複数回投与で実施することができる。より具体的には、本発明の薬学的組成物は、幅広い種々の剤形で投与することができる。すなわち、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、ハードキャンディー剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、塗剤、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤、水性懸濁液、注射溶液、エリキシル剤、シロップ剤などの形で、種々の薬剤学的に許容されることのできる不活性担体と組み合わせることができる。担体には、固体希釈剤もしくは充填剤、滅菌水性媒体、種々の非毒性有機溶媒などが含まれる。更に、経口医薬組成物には、適当な甘味および/または香気を付与することができる。通常、有効成分は、上記剤形中に、5重量%〜70重量%(好ましくは10重量%〜50重量%)の範囲の濃度レベルで存在する。
経口投与用では、種々の賦形剤(例えば、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カリウム、およびグリシン)を含有する錠剤を、種々の崩壊剤(例えば、デンプン(好ましくはコーン、ポテト、またはタピオカスターチ)、アルギン酸、およびケイ酸複合体)と一緒に、あるいは顆粒化結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、およびアラビアゴム)と一緒に用いることができる。加えて、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク)が、多くの場合、錠剤形成用に非常に有用である。また、同型の固体組成物をゼラチンカプセルにおける充填剤として用いることができる。これに関連する好適材料には、ラクトース(乳糖)および高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。経口投与用に水性懸濁液および/またはエリキシル剤が望まれる場合には、活性成分を、種々の甘味量もしくは香料、着色剤、または色素と組み合わせることができ、所望により、さらに乳化剤および/または懸濁剤と、上記希釈剤(例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの種々の組み合わせ)と一緒に組み合わせることができる。
非経口投与用では、ゴマもしくはピーナッツオイルまたは水性プロピレングリコールのいずれかを溶媒として用いることができる。所望に応じて、上記水溶液を適当に緩衝化(好ましくはpH>8)すべきであり、液体希釈剤を最初に等張性にするべきである。これらの水溶液は、静脈注射用に適している。油性溶液は、関節内、筋内、および皮下注射用に適している。滅菌条件下におけるこれらの全ての溶液の調製は、当業者に周知の標準的薬剤学的技術により、容易に達成される。加えて、また、皮膚の炎症症状を治療する場合に、本発明の化合物を局所投与することができる。この場合、好ましくは、標準的薬剤学的手法に従って、クリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、および軟膏剤により行うことができる。
〔キット〕
本発明に係るキットは、少なくとも試料中のIgEレベルを測定する試薬、試料中のIL−18レベルを測定する試薬およびIL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含む薬学的組成物を備えるものであればよい。本発明のキットは、Th1型アレルギー疾患、具体的には、例えばTh1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息を予防および/または治療するために用いられる。
本キットに備えられるIL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含む薬学的組成物については、上記〔薬学的組成物〕の項で既に説明したので、ここでの説明は省略する。
本発明のキットを用いることにより、試料中のIgEレベルを測定する試薬および試料中のIL−18レベルを測定する試薬を用いてIgEレベルおよびIL−18レベルをあらかじめ測定し、Th1型アレルギー疾患であるか否かを確認すれば、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を含む薬学的組成物(すなわち、上記本発明に係る薬学的組成物)を用いて、より効率良くTh1型アレルギー疾患の予防および/または治療を行うことが可能となる。
試料は、本キットに含まれる本発明の薬学的組成物を適用しようとする対象動物由来の生体試料であればよく、例えば、血液、体液、喀痰、洗浄液、排泄液、生検組織などを挙げることができる。
試料中のIgEレベルは、例えば試料中のIgE濃度を測定することにより決定することができる。したがって、試料中のIgEレベルを測定する試薬は、公知のIgE濃度測定方法に用いられる試薬であれば特に限定されるものではない。一般に、IgEの濃度測定方法としては、ELISA法などの抗IgE抗体を用いた免疫学的測定法が広く用いられている。それゆえ、本キットに備えるIgEレベルを測定する試薬の一例としては、目的の動物種のIgEと結合可能な抗IgE抗体、標識二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液、ELISA用プレートなどを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
試料中のIL−18レベルは、例えば試料中のIL−18濃度を測定することや試料中のIL−18mRNAレベルを測定することにより決定することができる。
IL−18濃度を測定する場合には、上記IgE濃度の測定と同様に、ELISA法などの抗IL−18抗体を用いた免疫学的測定法を用いることができる。したがって、本キットに備えるIL−18レベルを測定する試薬の一例としては、目的の動物種のIL−18と結合可能な抗IL−18抗体、標識二次抗体、発色用試薬、洗浄用緩衝液、ELISA用プレートなどを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
また、IL−18mRNAレベルを測定する場合には、公知のmRNAを測定する方法を用いることができ、本キットに備える試料中のIL−18レベルを測定する試薬は、これら公知の方法に用いられる試薬であれば、特に限定されるものではない。具体的には、例えばRT−PCR法、リアルタイムRT−PCR法、ノーザンハイブリダイゼーション法、DNAアレイ法などを挙げることができる。
例えば、RT−PCR法またはリアルタイムRT−PCR法で試料中のIL−18レベルを測定する場合、本キットに備えるIL−18レベルを測定する試薬の一例としては、目的の動物種のIL−18mRNA(cDNA)を増幅可能なプライマーセット、組織または細胞からRNAを調製するための試薬、逆転写酵素、逆転写反応に用いる緩衝液、耐熱性DNAポリメラーゼ、PCR用試薬、リアルタイムPCR用試薬、PCR用チューブ、PCR用プレートなどを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
なお、本発明のキットに備えられる、上記試料中のIgEレベルを測定する試薬、試料中のIL−18レベルを測定する試薬および本発明に係る薬学的組成物以外の試薬や器具等は特に限定されない。
〔予防・治療方法〕
本発明に係るTh1型アレルギー疾患の予防および/または治療方法は、被検体由来の試料におけるIgEレベルおよびIL−18レベルを測定する工程、上記IgEレベルおよびIL−18レベルを正常レベルと比較する工程、およびIgEレベルが正常範囲内にあり、かつ、IL−18レベルが正常範囲を超えている被検体に対して、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を投与する工程、を包含するものであればよい。
以下、上記各工程について順番に説明する。
被検体由来の試料におけるIgEレベルおよびIL−18レベルを測定する工程(以下、便宜上「測定工程」と記す。)において、被検体は特に限定されるものではなく広く動物一般を含むが、ヒトであることが好ましい。ヒト以外の動物としては、例えばイヌ、ネコ等のペット動物が好ましい。試料については上記〔キット〕の項で説明したとおりである。
本発明者らの研究により、Th1型のアレルギー疾患においては、IgEレベルは正常範囲内であるが、IL−18レベルが上昇していることが明らかにされている。したがって、被検体のIgEレベルおよびIL−18レベルをあらかじめ測定し、Th1型アレルギー疾患であることを診断した後に治療を行うことは、治療効率を上げるとともに医療経済の観点からも有意義である。
IgEレベルの測定方法およびIL−18レベルの測定方法は特に限定されるものではなく、上記〔キット〕の項で説明したように、公知の方法から適宜選択して使用することができる。
なお、Th1型アレルギー疾患の病態の指標としては、上記IgEおよびIL−18以外に先行する感染、環境要因(粉塵、ガス等)の影響などを挙げることができる。したがって、上記指標を総合的に判断し、Th1型アレルギー疾患であるか否かを決定することが好ましい。
次の工程では、上記測定工程で測定したIgEレベルおよびIL−18レベルを正常レベルと比較する(以下、便宜上「比較工程」と記す。)。ここで、正常レベルとは正常健康個体におけるIgEおよびIL−18のレベルを意味する。正常レベルは、比較する非検体由来の試料と同一の動物種における同一の細胞、組織、体液を試料として用いて測定されたものであることが好ましい。また、正常レベルは正常健康個体集団の平均レベルを用いることがより好ましい。
IgEレベルおよびIL−18レベルは測定方法や施設により異なることが知られており、具体的数値で正常レベルの範囲を規定することは困難である。したがって、施設ごとに同一方法で測定した正常健康個体の測定値を蓄積し、それを背景データとして用いて被検体の測定レベルと比較することにより、正常範囲内か否かを判断することが好ましい。
次の工程では、上記比較工程において、IgEレベルが正常範囲内にあり、かつ、IL−18レベルが正常範囲を超えている被検体に対して、IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質を投与する(以下、便宜上「投与工程」と記す。)。
IL−18阻害物質およびIFN−γ阻害物質については上記〔薬学的組成物〕の項で説明したとおりであり、例えば、抗IL−18中和抗体、抗IFN−γ中和抗体を挙げることができる。IL−18阻害物質および/またはIFN−γ阻害物質はそれぞれ単独で投与してもよいが、薬剤学的に許容することのできる担体または希釈剤との組み合わせで投与することが好ましい。担体または希釈剤についても上記〔薬学的組成物〕の項で説明したとおりである。
投与経路、投与回数等については特に限定されない。被検体に適した投与経路、投与回数等を適宜選択すればよい。
なお、本発明の予防および/または治療方法においては、上記測定工程、比較工程および投与工程以外の工程を包含してもよいことはいうまでもなく、包含できる工程の内容についても限定されない。
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
参考例1:Th1型アトピー性皮膚炎モデルマウスにおけるIL−18阻害およびIFN−γ阻害による抑制作用〕
(1)使用動物
NC/Ngaマウス(雌、6〜8週齢、日本チャースルリバー)を購入し、SPF(specific pathogen-free)環境下で飼育した。1群の匹数は、4〜6匹とした。
(2)試薬等
S.aureus Cowan1株由来のSpAはCalbio Chem社(La Jolla, CA)から購入した。PE-conjugated anti-I-Ad、FITC-conjugated anti-CD3、PE-conjugated anti-CD8、FITC-conjugated anti-CD4およびPE-conjugated anti-Gr-1はPharMingen(San Diego, CA)から購入した。anti-IL-4 mAb(11B11)を産生するハイブリドーマおよびanti-IFN-γ mAb(6A2)を産生するハイブリドーマはATCC(American Type Culture Collection)から入手した。anti-IL-18ウサギポリクローナル抗体は文献(Sugimoto, T., et al. IL-18 acts on memory Th1 cells to induce airway inflammation and hyperresponsiveness in a naive host mouse. J. Exp. Med. 199, 535-545 (2004).)に記載のものを使用した。Recombinant mouse IL-12はR & D(Minneapolis, MN)から購入した。Recombinant mouse IL-18はMBL(Nagoya, Japan)から購入した。Recombinant human IL-2は塩野義製薬から供与された。細胞培養液には、10 % FCS, 100 U/ml penicillin, 100 mg/ml streptomycin, 50 mM of 2-ME および 2 mM L-glutamineを含むRPMI 1640を用いた。
(3)Th1型アトピー性皮膚炎(AD)モデルマウスの作製
SDS(Sodium dodecyl salfate)を滅菌蒸留水に溶解し、4%溶液を調製した。また、SpAを滅菌蒸留水に溶解し、1匹あたりの塗布量が10μg、100μgおよび200μgとなるように適当な濃度に調製した。
背部を剃毛したマウスに4%SDS溶液を塗布し、その2分後にSpAを塗布した。塗布は4週間連日行った。皮膚症状のスコアリングにはclinical severity score(Matsuda, H., et al. Development of atopic dermatitis-like skin lesion with IgE hyperproduction in NC/Nga mice. Int. Immunol. 9, 461-466 (1997))を用い、各症状を表1に記載のスコアで採点し、その合計点で皮膚症状の重症度を評価した。
Figure 0004673068
結果を図1(A)および(B)に示した。図1(A)から明らかなように、4%SDSとSpAの塗布により、SPF環境下であるにも関わらず、皮膚の乾燥と苔癬化、および掻爬行動を主症状とする皮膚炎が惹起された。また、図1(B)から明らかなように、皮膚炎の重傷度はSpAの用量に依存的であり、200μgのSpAを4%SDSと組み合わせて塗布することにより、7点を超える中等度以上の皮膚炎が全例で惹起された。なお、SDS単独またはSpA単独の塗布では、有意な皮膚炎の発症は認められなかった。
(4)Th1型ADモデルマウスを用いた解析
4−1.血清IL−18および血清IgE
尾静脈から経時的に採血し、血清中のIL−18濃度およびIgE濃度を測定した。測定は非特許文献9に記載の方法に従った。
結果を図2に示した。図2左側のグラフから明らかなように、200μgのSpAを4%SDSと組み合わせて塗布することにより、血清中のIL−18濃度は塗布開始前と比較して有意(p<0.01)に増加した。SpA単独の塗布では増加傾向が認められたが、塗布開始前と比較して有意ではなかった。SDS単独の塗布では、血清中のIL−18濃度は増加しなかった。一方、図2右側のグラフから明らかなように、血清中のIgE濃度は何れの群においても増加しなかった。したがって、このTh1型ADモデルマウスにおける皮膚炎の発症にはIL−18が関与し、IgE非依存的な機序があることが示された。
4−2.組織学的観察
皮膚病変部をサンプリングし、定法に従いホルマリン固定後パラフィン包埋切片作製した。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色またはトルイジンブルー染色を施し、光学顕微鏡で観察した。また、低倍率(40倍)において無作為に選んだ5視野の肥満細胞数を数え、血漿ヒスタミン濃度との関係を解析した。
図3に皮膚病変部の顕微鏡観察像を示した。図3から明らかなように、時間に依存した表皮および真皮の肥厚が認められた。真皮では、好中球、好酸球、肥満細胞、リンパ球などの様々な白血球が高密度に浸潤した炎症性変化が観察され、特に塗布開始4週後の病変部において顕著であった。4週目の病変部のHE染色強拡大像では、皮下において好中球および好酸球からなる重篤な炎症部位が観察された。なお、図3に示していないが、SDS単独の塗布では4週間にわたりほぼ正常な組織像が観察された。
図4に顕微鏡で観察した肥満細胞数の変化(左側グラフ)と血漿中ヒスタミン濃度(右側グラフ)を示した。図4から明らかなように、SDSとSpAと塗布により、肥満細胞数および血漿中ヒスタミン濃度は、皮膚炎の重症度とパラレルな増加を示した。一方、SDSの単独塗布では何れも変化しなかった。
次に、病変部の浸潤細胞のタイプを同定するために、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。すなわち、採取した皮膚を直ちにOTCコンパウンドに包埋し、−80℃で保存した。厚さ4μmの凍結切片を作製し、3%パラホルムアルデヒドを含むPBSで30分間固定し、1%ウシ血清アルブミンでブロッキング処理した。PBSで洗浄した後、上記(2)に記載のFITC標識またはPE標識した各モノクローナル抗体と1時間反応させた。なお、各標識抗体は50倍希釈で使用した。PBSで洗浄した後、各切片の免疫染色像を共焦点レーザー顕微鏡(オリンパスIX81)を用いて評価した。
図5に共焦点レーザー顕微鏡観察像を示した。4%SDSと200μgのSpAとを4週間塗布したマウスの病変部の表皮および真皮ではCD3陽性T細胞の増加が観察された。CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞はほぼ同程度であった。また、真皮においてGr−1陽性の好中球の局所的な集積が多数観察された。さらに興味深いことに、MHCクラスII陽性細胞が極端に増加していた。一方、SDSのみの塗布では、好中球(Gr−1陽性)の軽度の集積が認められたが、その他の所見は観察されなかった。
以上の観察結果から、本ADモデルマウスにおいては、肥満細胞および好酸球と同程度にT細胞および好中球が高密度に浸潤していることが明らかとなった。
4−3.皮膚病変部のサイトカインおよびケモカイン発現
採取した皮膚病変部からRNeasyキット(Quiagen, Basel, Switzerland)を用いて使用説明書に従い、トータルRNAを抽出した。このトータルRNAを用いてRT−PCRを文献(Ogushi, I., et al. Nuclear factor kB decoy oligodeoxynucleotides prevent endotoxin-induced fatal liver failure in a murine model. Hepatology 38, 335-344 (2003))に記載の方法で行った。
結果を図6に示した。図6から明らかなように、IL−12(p40)は1日目から14目まで発現していた。一方、IL−12(p35)は恒常的に弱く発現していた。IFN−γの発現は、IL−12(p40)と同様であった。TFN−αは1日目または2日目で発現し始め、その後28日目までその発現は徐々に連続的に増加した。IL−13は14日目以後弱く発現するようになり、相対的にIFN−γの発現より遅れていることが興味深い。一方、IL−4は発現していなかった。
以上のサイトカインの発現動態は、IFN−γおよびその上流サイトカインであるIL−12は、TNF−αおよびIL−13の発現が誘導された後直ちに誘導されることを示しており、このことは、当該皮膚病変部においてTh1様の反応が優位に活性化されていることを示唆するものである。
また、図6から明らかなように、T細胞および好中球の集積に関与するケモカインの発現が検出された。すなわち、1日目には、マクロファージおよびT細胞の集積に関与するIFN誘導ケモカインであるMig、IP−10およびI−TACが発現しており、明らかにIL−12およびIFN−γの発現誘導と同調していた。同時に、MIP−1αおよびMIP−1βが発現し始めた。これらはマクロファージ、Th1細胞、肥満細胞、好酸球などの様々な炎症性細胞の集積に関与するケモカインである。その後マウスにおいて好中球を集積させるケモカインであるMIP−2が発現した。一方、eotaxinおよびRANTESの発現レベルは、SpA/SDSを適用した後も変化がなかった(データを示さず)。
以上の結果から、Th1型炎症反応に優先的に関与するサイトカインおよびケモカインが、SpA/SDSチャレンジ後の皮膚病変部に順次誘導されていることが明らかとなった。
4−4.抗IL−18中和抗体および抗IFN−γ中和抗体の効果
本ADモデルマウスの皮膚病変部においてTh1に関わるサイトカインおよびケモカインが選択的に誘導されていたことから、内因性のIL−18および/またはIFN−γが皮膚症状の進行の原因であるか否かを確認するため、以下の解析を行った。
4%SDSおよびSpA(200μg)の塗布開始前日(0日目)に上記(2)に記載の抗IL−18中和抗体(anti-IL18ウサギポリクローナル抗体)500μg/マウスまたは抗IFN−γ中和抗体(anti-IFN-γ mAb(6A2))1000μg/マウスを腹腔内に投与した。なお、抗IL−18中和抗体はPBSを用いて2.5mg/mLに調製したものを、抗IFN−γ中和抗体はPBSを用いて5mg/mLに調製したものを、いずれも注射ポンプを用いて200μL投与した。初回抗体投与の翌日からSpA/SDSの塗布を開始し、抗IL−18中和抗体は7日ごとに、抗IFN−γ中和抗体は5日ごとに初回投与と同一用量を腹腔内投与した。塗布開始後1週間目および2週間目に表1に記載のスコアを用いて皮膚症状の重症度を評価した。また、2週間目に皮膚を採取し、組織学的観察に供した。
図7に抗体を投与したマウスおよび投与していないマウスの皮膚の重症度を示した。図中のCtrlはSpA/SDSを連日塗布し何れの抗体も投与していない群(対照群)を示し、α−IL−18はSpA/SDSを連日塗布し、かつ、抗IL−18中和抗体を投与した群(抗IL−18群)を示し、α−IFN−γはSpA/SDSを連日塗布し、かつ、抗IFN−γ中和抗体を投与した群(抗IFN群)を示す。図7から明らかなように、抗体投与群は何れの抗体もADスコアが低く抑えられ、有意な皮膚炎の発症は認められなかった。一方対照群は、スコアが約5点に上昇し、有意な皮膚炎が発症した。なお、コントロール抗体を投与したマウスは対照群と同程度のスコアを示した(データを示さず)。なお、抗IL−18抗体のコントロール抗体としては、免疫前の正常ウサギ血清のγ−グロブリン分画を用い、抗IFN−γ抗体のコントロール抗体としては、当該抗IFN−γ抗体のクラスにマッチし、かつマウスと反応性を示さない抗体を用いた。
図8に組織学的観察像を示した。1段目はHE染色したパラフィン切片の光学顕微鏡観察像、2段目はトルイジンブルー染色したパラフィン切片の光学顕微鏡観察像、3段目および4段目は凍結切片に免疫染色を施し共焦点レーザー顕微鏡で観察した像である。
抗IL−18群では、真皮に炎症性の変化が観察されたが、表皮にはほとんど変化がなかった。T細胞および肥満細胞の数に変化はなく、好中球の浸潤も観察されなかった。MHCクラスII陽性細胞は対照群と比較して低いレベルであったが、増加した状態を維持していた。
抗IFN−γ群では、表皮および真皮に明らかな炎症性の変化は認められなかった。共焦点レーザー顕微鏡による観察においてもT細胞、肥満細胞、好中球の明らかな浸潤はなかった。さらに、MHCクラスIIの発現は正常マウスのレベルに低下していた。
一方、対照群では図5および図6に示した像と同様に、T細胞、好中球、肥満細胞などの白血球が高密度に浸潤した炎症像が観察された。また、上記コントロール抗体を投与した場合も対照群と同様の炎症像が観察された(データ示さず)。
以上の結果より、内因性のIL−18および内因性のIFN−γは、本ADモデルマウスのAD発症に必須であり、これらの機能を阻害することによりADの発症を抑えることが可能であることが明らかとなった。
4−5.所属リンパ節におけるTh1/Th2分化
最初に、SpA/SDSを皮膚に塗布した後にT細胞がSpAに応答できるか否かを確認した。すなわち、4%SDSおよびSpA(200μg)を連日塗布したマウスから塗布開始後4週目に頸部リンパ節を採取した。採取したリンパ節の細胞を、各濃度のSpAを含む培地で3日間培養し、SpAに応答して細胞が増殖するかどうかを確認した。細胞の増殖は、培養終了16時間前にH−TdRを添加し、培養終了後、H−TdRの細胞への取り込み量を測定した。
結果を図9に示した。図9から明らかなように、SpA/SDSを塗布した後の細胞はSpA濃度に依存して増殖した。一方、SpA/SDSを塗布する前の細胞は増殖しなかった。したがって、SpA/SDSの塗布により所属リンパ節にSpA特異的T細胞が蓄積していることが明らかとなった。
次に、リンパ節の細胞がTh1またはTh2のどちらに分化するかを調べた。すなわち、4%SDSおよびSpA(200μg)塗布群と、4%SDSの単独塗布群との2群を設け、経時的に頸部リンパ節を採取した。MACSを用いてCD4陽性リンパ節細胞を選抜した。各群3〜5匹分のCD4陽性をプールし、抗CD3抗体を固相化したプレートで48時間培養した後、上清のIFN−γ、IL−13およびIL−4濃度を測定した。これらの測定にはELISAキット(Genzyme Techne, Boston, MA)を用いた。
結果を図10に示した。図10から明らかなように、SpA/SDSを1回または数回塗布されたマウス由来の細胞で、SDSの単独塗布の場合と比較して大量のIFN−γが産生された(左上グラフ)。しかし、何れの群でもIL−4は検出されなかった(右下グラフ)。また、IL−13については、SpA/SDSを7日以上塗布したマウス由来の細胞で大量に産生された(左下グラフ)。
以上の結果より、SpA/SDSの塗布開始後直ちに局所のCD4陽性T細胞はTh1細胞に分化することが示され、さらにTh1細胞は、TCR刺激とIL−18刺激とを受けIFN−γとIL−13とを産生した。
さらに、IL−18がIL−12と共同してナイーブCD4陽性T細胞をIFN−γとIL−13との両方を産生するTh細胞(以下「炎症誘発Th細胞」と記す)に分化誘導するか否かを確かめるため、以下の実験を行った。すなわち、NC/Nga由来のリンパ節のナイーブCD4陽性細胞を、IL−18を添加したTh1環境で培養し、固相化した抗CD3抗体および/またはIL−18の刺激により産生されるIFN−γおよびIL−13を測定した。
結果を図11に示した。図11から明らかなように、Th1環境下でIL−18による刺激を受けたCD4陽性T細胞はIFN−γおよびIL−13を産生した。一方、Th1細胞は同じレベルのIFN−γを産生したがIL−13を産生しなかった。この結果は、TCRを介した刺激とIL−18との両方に対する応答によりTh1細胞がIL−13を産生するという、本発明者らの従来の知見と一致した。炎症誘発Th細胞は同じ刺激に対する応答により、Th1細胞よりはるかに大量のIL−13を産生した。反対に、炎症誘発Th細胞およびTh1細胞の何れも抗CD3抗体とIL−18との刺激に対する応答により産生されるIFN−γの量は、抗CD3抗体のみに対する応答より産生されるIFN−γと同じレベルであった。したがって、これらのユニークな分化をした炎症誘発Th細胞によるIL−13産生に関して、抗原刺激とIL−18とは相乗作用を有していた。
4−6.炎症誘発Th細胞発生とIL−18の関係
SpA/SDS塗布による炎症誘発Th細胞の発生にIL−18が必須であるか否かを確認するため、以下の実験を行った。すなわち、SpA/SDSを塗布していないマウス(正常マウス)、SpA/SDSを塗布したマウスおよび抗IL−18中和抗体を投与し、かつ、SpA/SDSを塗布したマウスから、塗布開始2週間目に頸部リンパ節を採取し、CD4陽性細胞を分離して抗CD3抗体を固定化したプレートで培養した。培養上清のIFN−γおよびIL−13を測定し、正常マウス由来細胞の培養上清における濃度に対する比率を算出した。なお、抗IL−18中和抗体の投与条件は、上記4−4に記載の投与条件と同一とした。
結果を図12に示した。SpA/SDS塗布マウス由来のCD4陽性細胞は正常マウスと比較して顕著に大量のIFN−γおよびIL−13を産生した(図中Ctrl)。反対に、抗IL−18中和抗体を投与したSpA/SDS塗布マウス由来のCD4陽性細胞は、正常マウスレベルのIFN−γおよびIL−13を産生した(図中α−IL−18)。
この結果から、炎症誘発Th細胞の発生にはIL−18が必須であることが明らかとなった。
〔実施例2:Th1型気管支喘息モデルマウスにおけるIFN−γ阻害およびIL−18阻害による抑制作用〕
(1)使用動物
Jackson Laboratoryから特定病原体未感染(SPF)雌BALB/cマウスを購入した。Dr.D.Loh(Washington University,St.Louis,MO)から、OVA323−339(OVAの323〜339番目のアミノ酸からなるポリペプチド)を認識するαβTCRのトランスジェニック(Tg)マウス(DO11.10;遺伝的背景BALB/c)を入手した。当該トランスジェニックマウスについては、全ての実験に、導入遺伝子に対してヘテロ接合性のものを用いた。IL−4受容体α鎖遺伝子KOマウス(IL−4RαKO)はJackson Laboratory(USA)より購入した。IFN−γ遺伝子KOマウス(IFN−γKO)は、東京大学・岩倉教授より恵与された。IL−18遺伝子KOマウス(IL−18KO)は、兵庫医科大学で審良静男らが作製したものを分与された。上記いずれのKOマウスも外見は正常でノックアウトされたサイトカインを使う免疫応答のみに異常を持つ。なお、全てのマウスは兵庫医科大学(西宮、日本)の動物施設においてSPF条件下で飼育し、6〜10週齢のものを使用した。
(2)試薬等
組み換えマウスIL−12はR&D(Minneapolis, MN)から購入した。組み換えマウスIL−18はMBL(Nagoya, Japan)から購入した。抗マウスIL−18抗体(anti-IL18ウサギポリクローナル抗体)は文献(Sugimoto, T., et al. IL-18 acts on memory Th1 cells to induce airway inflammation and hyperresponsiveness in a naive host mouse. J. Exp. Med. 199, 535-545 (2004).)に記載のものを精製して使用した。抗マウスIL−4(11B11)および抗マウスIFN−γ(XMG1.2)を精製して使用した。組換えマウスIL−13Rα2/Fc ChimeraはR&D(Minneapolis, MN)から購入した。PE(Phycoerythrin;フィコエリスリン)標識抗Gr−1抗体は、PharMingen(San Diego,CA)から購入した。
(3)Th1型気管支喘息モデルマウスの作製
3−1.OVA特異的Th1細胞のin vitro誘導
10%FBS(ウシ胎仔血清)、50μM 2−ME(ME:メルカプトエタノール)、2mM L−グルタミン、100U/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを充填したRPMI1640を、全量3mlの6ウェルプレート中に加え、7日間、DO11.10Tgマウス由来のナイーブ脾臓CD4CD62LT細胞(CD4およびCD62発現T細胞;1×10/ml)を、抗原提示細胞(APC;放射線照射によるT細胞を除去したBALB/cの脾細胞)存在下(1×10/ml)、IL−2(100pM)およびOVA323−339(1μM)によって刺激した。このT細胞を、Th1細胞に誘導するため、IL−12(10ng/ml)および抗IL−4抗体(11B11;10μg/ml)を培地に添加した。このような抗原刺激を2回行った。
3−2.モデルマウスの作製
上記in vitroで誘導したOVA特異的Th1細胞(5〜10×10cell/マウス)をBALB/cマウスに静脈内投与し、受動Th1型気管支喘息モデルマウスを作製した。また、BALB/cマウス、各種ノックアウトマウスにOVAとCFA(Complete Freund Adjuvant)を皮下投与することで能動Th1型気管支喘息モデルマウスを作製した。具体的には、OVA(SIGMA, USA)を200μg/mLとなるようにPBSで溶解し、同量のCFAと混和したものをマウス1匹あたり500μL皮下投与した(最終濃度として、OVA:50μg/マウス、CFA:250μL/マウス)。これらのマウスは、投与後2〜4週間で以下の実験に使用した。
(4)実験方法
上記により作製したTh1型気管支喘息モデルマウスに、PBS(コントロール)、OVAまたはOVA+IL−18を3日間連続で鼻腔内投与した。
AHR(気道抵抗)は、Pulmos−I(MIPS、大阪、日本)のハードウェアおよびソフトウェアを用いて、マウスのβ−メタコリン(Mch)吸入に対するAHRを測定した。チャンバーにマウスを置き、最初に、生理食塩水のエアロゾル(ベースライン)を暴露し、次いで、濃度を増加したメタコリン(5、10、15および20mg/ml)を暴露した。それぞれ、2分間の暴露後、増強された圧力波形状および呼吸時間の振幅の変化を反映する指数を3分間測定した。
BALF(肺胞洗浄液)は、1匹のマウス当たり、0.5mLのPBSを3回に分けて肺胞洗浄を行い、回収したBALF中の全細胞数を計測した。また、BALFを遠心後、Dif−Quik(Baxter Healthcare Corp,Miami,FL)で染色し、形態学および染色特性に基づいて区別した。
肺の免疫組織学的は以下の手順で行った。すなわち採取した肺組織を直ちにOTCコンパウンドに包埋し、−80℃で保存した。厚さ7μmの凍結切片を作製し、3%パラホルムアルデヒドを含むPBSで30分間固定し、1%ウシ血清アルブミンでブロッキング処理した。PBSで洗浄した後、PE標識抗Gr−1抗体(50倍希釈)と1時間反応させた。PBSで洗浄した後、共焦点レーザー顕微鏡(オリンパスIX81)を用いて評価した。
(5)実験結果
5−1.In vivo誘導Th1型気管支喘息モデルマウス
正常マウスにOVA+CFAを皮下に免疫することで正常Balb/cマウスにTh1環境が誘導される。このマウスにOVA(100μg/day)およびIL−18(500ng/day)を3日間連続鼻腔内投与するとTh1細胞移入マウスと同様のAHRの上昇、気道の炎症所見、BALF中の好中球、好酸球浸潤が認められ、Th1型気管支喘息の病態を呈した。
AHRの結果を図13に示した。左側のグラフ(DO11.10Th1)はTh1細胞移入マウスの結果を示し、右側のグラフ(OVA+CFA)はOVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスの結果を示す。図中のControlはPBSを鼻腔内投与したことを表し、OVA+IL−18はOVAおよびIL−18を鼻腔内投与したことを表す。図13から明らかなように、OVAおよびIL−18を鼻腔内投与した場合、いずれのマウスもAHRが上昇した。
5−2.IL−13、IL−4RαのTh1型気管支喘息に及ぼす影響
図14に、OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対してPBS(Control)、OVA+IL−18またはOVA+IL−18+IL−13Rα2/Fc Chimeraを鼻腔内投与した場合、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−4RαKOマウスに対してPBS(Control)またはOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のAHRの測定結果を示した。図14から明らかなように、IL−13Rα2/Fc Chimeraを同時に投与してIL−13を中和した場合もAHRの上昇は抑制されなかった(図14左)。また、OVA+CFA免疫を施したIL−4RαKOマウスは、野生型マウスと同様にOVAおよびIL−18の鼻腔内投与によりAHRの上昇が認められた(図14右)。
図15に、OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対して鼻腔内投与を行わなかった場合(unchallenge)、OVA+IL−18を鼻腔内投与した場合、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−4RαKOマウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示した。図中Mo.は単球、Eo.は好酸球、Lymはリンパ球、Neu.は好中球を表す。図15から明らかなように、OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合、BALF中の好酸球が顕著に増加した。一方、IL−4RαKOマウスのBALF中の好酸球は、野生型マウスと比較して有意に少数であった。
5−3.IFN−γのTh1型気管支喘息に及ぼす影響
図16に、Th1細胞移入マウス(DO11.10Th1)またはOVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、PBS(Control)、OVA+IL−18またはOVA+IL−18+抗IFN−γ抗体(anti IFN−γ)を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示した。図16から明らかなように、いずれのマウスも抗IFN−γ抗体の投与により、AHRの上昇が抑制された。
図17に、OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、PBS(Control)、OVA+IL−18またはOVA+IL−18+抗IFN−γ抗体(anti IFN−γ)を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示した。図中Mo.は単球、Eo.は好酸球、Lymはリンパ球、Neu.は好中球を表す。図17から明らかなように、抗IFN−γ抗体の投与によりBALF中の好中球浸潤が抑制されたが好酸球は影響を受けなかった。
図18に、OVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス対してPBS(Control)またはOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のAHRの結果、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を、同じ処理を施した野生型マウスのBALF中細胞の種類および数と比較した結果を示した。図18から明らかなように、IFN−γKOマウスで作製したモデルではAHRの上昇は認められなかった(図18左)。また、IFN−γKOマウスで作製したモデルではBALF中の好中球浸潤が抑制されたが好酸球浸潤は野生型と比較して亢進した。
5−4.LPS(Lipopolysaccharide)による内因性IL−18の誘導およびOVA+LPSによるTh1型気管支喘息の誘導
図19に、OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、PBS(Cont)、LPS、OVA+LPS、OVA+LPS+抗IFN−γ抗体またはOVA+LPS+抗IL−18抗体を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示した。図19から明らかなように、LPSの投与のみではAHRは上昇せず、OVA+LPSの投与ではAHRが上昇した。一方、抗IFN−γ抗体または抗IL−18抗体を同時に投与した場合には、いずれもAHRの上昇を抑制した。
図20に、上記各処置を施したマウスのBALF中細胞の種類および数を示した。図中Mo.は単球、Eo.は好酸球、Lymはリンパ球、Neu.は好中球を表す。図17から明らかなように、抗IFN−γ抗体または抗IL−18抗体を同時に投与した場合には、いずれもBALF中の好中球浸潤が抑制された。
図21に、OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して鼻腔内投与を行わなかった場合(unchallenge)、OVA+LPSを鼻腔内投与した場合、およびOVA+LPS+抗IL−18抗体を鼻腔内投与した場合において、各マウスから採取した肺についてPE標識抗Gr−1抗体を用いた免疫組織学的観察結果を示した。図21から明らかなように、OVA+LPSを鼻腔内投与した場合には好中球の浸潤が亢進していたが、抗IL−18抗体を同時投与することで好中球の浸潤は抑制された。
図22に、OVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス、またはOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−18KOマウスに対して、PBS(Control)またはOVA+LPSを鼻腔内投与した場合のAHRを、OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対してOVA+LPSを鼻腔内投与した場合のAHRと比較した結果を示した。図22から明らかなように、IFN−γKOマウスおよびIL−18KOマウスのいずれも野生型マウスで見られるAHRの上昇が認められなかった。
本発明は、Th1型アトピー性皮膚炎またはTh1型気管支喘息の予防および/または治療に用いる薬学的組成物を提供するものであり、医薬品産業に利用可能である。
(A)はTh1型ADモデルマウスの皮膚の病態を示す写真であり、(B)はADの重症度のスコアを示すグラフである。 Th1型ADモデルマウスの血清中のIL−18濃度およびIgE濃度を測定した結果を示すグラフである。 Th1型ADモデルマウスの皮膚病変部の光学顕微鏡観察画像である。 Th1型ADモデルマウスの皮膚病変部における肥満細胞数の変化および血漿中ヒスタミン濃度を示すグラフである。 Th1型ADモデルマウスの皮膚病変部の共焦点レーザー顕微鏡観察画像である。 Th1型ADモデルマウスの皮膚病変部における各種サイトカインおよびケモカインのRT―PCR結果を示す画像である。 抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を投与したTh1型ADモデルマウスにおけるADの重症度のスコアを示すグラフである。 抗IL−18中和抗体または抗IFN−γ中和抗体を投与したTh1型ADモデルマウスの皮膚病変部の光学顕微鏡観察画像および共焦点レーザー顕微鏡観察画像である。 Th1型ADモデルマウスの頸部リンパ節細胞のSpAに応答性試験の結果を示すグラフである。 Th1型ADモデルマウスの頸部リンパ節細胞のTh1/Th2分化を確認する試験において、培養上清のIFN−γ、IL−13およびIL−4濃度を測定した結果を示すデータである。 ナイーブCD4陽性T細胞の分化誘導実験において、培養上清のIFN−γ、IL−13、IL−4濃度およびIL−10を測定した結果を示すグラフである。 炎症誘発Th細胞発生とIL−18の関係を確認する試験において、SpA/SDS塗布マウス由来細胞および抗IL−18中和抗体を投与したSpA/SDS塗布マウス由来細胞の培養上清のIFN−γおよびIL−13を測定し、正常マウス由来細胞の培養上清における濃度に対する比率を測定した結果を示すグラフである。 OVA特異的Th1細胞移入マウスとOVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示すグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対してOVA+IL−18またはOVA+IL−18+IL−13Rα2/Fc Chimeraを鼻腔内投与した場合、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−4RαKOマウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示すグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫した野生型マウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−4RαKOマウスに対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示したグラフである。 OVA特異的Th1細胞移入マウスまたはOVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、OVA+IL−18またはOVA+IL−18+抗IFN−γ抗体を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示したグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、OVA+IL−18またはOVA+IL−18+抗IFN−γ抗体を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示したグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のAHRの結果、並びにOVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス対してOVA+IL−18を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示したグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、LPS、OVA+LPS、OVA+LPS+抗IFN−γ抗体またはOVA+LPS+抗IL−18抗体を鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示したグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウスに対して、LPS、OVA+LPS、OVA+LPS+抗IFN−γ抗体またはOVA+LPS+抗IL−18抗体を鼻腔内投与した場合のBALF中細胞の種類および数を示したグラフである。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したマウス、OVAおよびCFAを皮下に免疫しさらにOVA+LPSを鼻腔内投与したマウス、およびOVAおよびCFAを皮下に免疫しOVA+LPS+抗IL−18抗体を鼻腔内投与した各マウスから採取した肺の共焦点レーザー顕微鏡観察画像である。 OVAおよびCFAを皮下に免疫したIFN−γKOマウス、またはOVAおよびCFAを皮下に免疫したIL−18KOマウスに対して、OVA+LPSを鼻腔内投与した場合のAHRの結果を示したグラフである。

Claims (9)

  1. Th1型気管支喘息を予防および/または治療するために用いられ、抗IFN−γ中和抗体を含むことを特徴とする薬学的組成物。
  2. IL−18阻害物質をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
  3. 上記IL−18阻害物質が抗IL−18中和抗体であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
  4. Th1型気管支喘息を予防および/または治療するために用いられるキットであって、
    少なくとも試料中のIgEレベルを測定する試薬、試料中のIL−18レベルを測定する試薬および抗IFN−γ中和抗体を含む薬学的組成物を備えることを特徴とするキット。
  5. IL−18阻害物質をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のキット。
  6. 上記IL−18阻害物質が抗IL−18中和抗体であることを特徴とする請求項5に記載のキット。
  7. 被検体由来の試料におけるIgEレベルおよびIL−18レベルを測定する工程、
    上記IgEレベルおよびIL−18レベルを正常レベルと比較する工程、および
    IgEレベルが正常範囲内にあり、かつ、IL−18レベルが正常範囲を超えている被検体に対して、抗IFN−γ中和抗体を投与する工程、を包含し、
    上記被険体は、ヒト以外の動物であることを特徴とするTh1型気管支喘息の予防および/または治療方法。
  8. 上記被検体に対して、IL−18阻害物質を投与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のTh1型気管支喘息の予防および/または治療方法。
  9. 上記IL−18阻害物質が抗IL−18中和抗体であることを特徴とする請求項8に記載のTh1型気管支喘息の予防および/または治療方法。
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