JP4547745B2 - 低硫黄含有量のガソリンの製造方法 - Google Patents

低硫黄含有量のガソリンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低硫黄含有量のガソリンの製造方法に関する。この方法により、硫黄を含むガソリン留分全体を高価値化することが可能になり、またガソリン収率の実質的な低下を伴わないで、前記ガソリン留分から硫黄全体およびメルカプタンの含有量を非常に低いレベルに削減することが可能になる一方、オクタン価の低下を最小限に抑えることが可能になる。
【0002】
先行技術
新規環境規格に応える再規格化されたガソリンの製造において、特にオレフィンおよび/または芳香族化合物(特にベンゼン)、並びに硫黄(そのうちメルカプタン)のガソリンにおける濃度の低下が必要とされる。接触クラッキング・ガソリンは、オレフィンの高含有量を有する。再規格化されたガソリン中に存在する硫黄は、約90%において特に接触クラッキング(FCC、「Fluid Catalytic Cracking」すなわち流動床接触クラッキング)のガソリンに起因する。従って、ガソリン、主としてFCCのガソリンの脱硫(水素化脱硫)は、明らかに重要なものである。
【0003】
接触クラッキングに搬送される仕込原料の水素化処理(水素化脱硫)により、典型的には硫黄100ppmを含むガソリンが生じる。しかしながら、接触クラッキング仕込原料の水素化処理装置は、温度および圧力の苛酷な条件下に操作が行われるものであり、このことにより、多大な投資が必要とされる。さらに、仕込原料の全体が脱硫されねばならない。このことにより、非常に大量の容積の仕込原料が処理されねばならない。
【0004】
接触クラッキング・ガソリンの水素化処理(または水素化脱硫)が、当業者に公知の従来の条件下に行われる場合には、これにより、留分の硫黄含有量を削減することが可能になる。しかしながら、この方法は、水素化処理中の全てのオレフィン類を飽和するので、留分のオクタン価の非常に大幅な低下を引き起こす大きな不都合を有する。
【0005】
水素化処理前の軽質ガソリンおよび重質ガソリンの分離は、米国特許US−A−4397739において既に特許請求されている。この特許において、ガソリンの軽質フラクションおよび重質フラクションへの分別を含むガソリンの水素化脱硫方法と、該重質フラクションの特殊な水素化脱硫方法とが特許請求されている。
【0006】
他方では、米国特許US−A−4131537において、ガソリンを沸騰点に応じて、いくつかの留分、好ましくは3つの留分に分別することが有益であり、またこれらの留分を、異なってもよい条件下に脱硫することが有益であることが教示されている。この特許には、ガソリンが3つの留分に分別される場合に、また中間沸点を有する留分が温和な条件下に処理される場合に、最も大きな利益が得られることが記載されている。
【0007】
ヨーロッパ特許出願EP−A−0725126には、クラッキング・ガソリンの水素化脱硫方法が記載されている。この方法では、ガソリンは、複数のフラクションに分離され、これらフラクションには、脱硫が容易な化合物に富む少なくとも1つの第一フラクションと、脱硫が困難な化合物に富む第二フラクションとが含まれる。この分離を行う前に、硫黄物質の分配を分析により予め測定しなければならない。これらの分析は、装置と分離条件とを選択するために必要である。
【0008】
従って、この特許出願には、クラッキング・ガソリンの軽質フラクションが、分別をされないで脱硫される場合には、そのオレフィン含有量およびオクタン価が大幅に低下するのが見られることが記載されている。これに対して、前記軽質フラクションの7〜20フラクションへの分別と、これに次ぐ、これらフラクションの硫黄含有量およびオレフィン含有量の分析とにより、硫黄化合物に最も富む単数または複数フラクションを確定することが可能になる。次いでこれらは、同時にまたは別々に脱硫され、かつ他の脱硫または非脱硫フラクションに混合される。そのような手順は、複雑であり、かつ処理すべきガソリンの組成物が変化する毎に繰り返されねばならない。
【0009】
さらにヨーロッパ特許出願EP−A−0725126の記載によれば、脱硫が「容易である」と言われる化合物は、特に各々沸点220℃および244℃を有するベンゾチオフェンおよびメチルベンゾチオフェンであることに留意するのが重要である。従って、これらの化合物は、米国特許US−A−4131537の「高沸点を有する」と言われる留分中に見いだされる。この留分は、この特許によれば脱硫されるために最も苛酷な処理を必要とする。
【0010】
さらに米国特許US−A−5290427において、ガソリンを分別し、次いでフラクションを脱硫し、認められるオクタン価損失を異性化により補うために、ゼオライトZSM−5上で脱硫済みフラクションを転換することからなるガソリンの水素化処理方法が提案されている。
【0011】
米国特許US−A−5318690には、ガソリンの分別と軽質フラクションのスイートニングとを用いる方法が提案されている一方で、重質フラクションは、脱硫され、次いでZSM−5上で転換され、温和な条件下に改めて脱硫される。この技術は、粗ガソリンの分離に基づいており、メルカプタン以外の硫黄化合物を実質上除去した軽質留分を得るようにする。このことにより、メルカプタンを取り除くスイートニングを用いて前記留分のみを処理することが可能になる。
【0012】
従って、重質留分は、比較的大量のオレフィンを含み、これらオレフィンは、水素化処理の際に一部飽和される。オレフィンの水素化に関連するオクタン価の低下を補うために、この特許において、オレフィンを生成するがその収率の低いゼオライトZSM−5上でのクラッキングが推奨されている。さらに、これらオレフィンは、媒質中に存在するH2 Sと再結合してメルカプタンを再生成するものである。従って、スイートニングまたは追加的水素化脱硫を行うことが必要である。
【0013】
発明の要約
本発明は、低硫黄含有量のガソリンの製造方法に関する。この方法により、硫黄を含むガソリン留分全体を高価値化することが可能になり、またガソリン収率の実質的な低下を伴わないで、前記ガソリン留分から硫黄全体およびメルカプタンの含有量を非常に低いレベルに削減することが可能になる一方、オクタン価の低下を最小限に抑えることが可能になる。
【0014】
本発明による方法は、硫黄を含むガソリン留分からの低硫黄含有量のガソリンの製造方法である。本発明による方法は、前記硫黄を含むガソリンの軽質フラクションおよび重質フラクションへの分離と、ニッケルをベースとする触媒上での軽質ガソリンの水素化脱硫と、第VIII族の少なくとも1つの金属および/または第VIb 族の少なくとも1つの金属を含む触媒上での重質フラクションの水素化脱硫と、脱硫されたフラクションの混合とを含む。
【0015】
本発明による方法の仕込原料は、硫黄を含むガソリン留分、好ましくは接触クラッキング装置により生じるガソリン留分である。この留分の沸点範囲は、典型的には炭素原子数5を有する炭化水素(C5)のおおよその沸点から約220℃までに及ぶ。ガソリン留分の終留点は、この留分が生じる石油精製所および市場の制約に依存するものであるが、一般に前述の限度内にある。
【0016】
本発明による方法には、ガソリンの2つのフラクションへの分離が含まれる:すなわち一般に約160℃以下、好ましくは140℃未満、より好ましくは120℃未満の終留点を有する(以下において、さらに軽質留分または軽質ガソリンと呼ばれる)軽質フラクションと、軽質ガソリンの補足的重質フラクションにより構成される(以下において、さらに重質留分または重質ガソリンと呼ばれる)重質フラクションとである。
【0017】
一般に、カットポイントは、軽質留分中のオレフィン含有量を最大限にするように選ばれる。この含有量は、例えば一般に現場において自由に処分できる臭素価の測定により容易に測定されうる。
【0018】
軽質ガソリンの(さらに水素化処理と呼ばれる)水素化脱硫は、同時に出願されている特許出願に記載されているニッケルをベースとする触媒上で行われる。
重質フラクションの水素化脱硫は、第VIII族の金属と第VIb 族の金属とを含む従来の水素化処理(水素化脱硫)触媒上で行われる。
【0019】
次いで、こうして脱硫された軽質および重質留分は、混合される。得られた流出物は、水素化脱硫の際に生成されたH2 Sを除去するために、場合によってはストリッピングされてよい。
【0020】
さらに特に脱硫すべきガソリンが、ポリオレフィン(ジエン)を含む場合には、分別前にガソリンの選択的水素化を行うことが可能であるしかつ好ましい。
【0021】
発明の詳細な説明
予期しないことではあるが、この簡単なガソリンの分別と、ニッケルをベースとする触媒上での軽質フラクションの水素化脱硫と、従来触媒での重質フラクションの水素化脱硫との組み合わせにより、脱硫されたフラクションを混合した後にオレフィン含有量またはオクタン価の大幅な低下を示さない脱硫ガソリンを得ることが可能になるのが認められる。
【0022】
本発明の方法により処理される仕込原料中に含まれる硫黄種は、メルカプタンまたは複素環式化合物、例えばチオフェンまたはアルキル・チオフェン、あるいはベンゾチオフェンのようなより重質な化合物であってよい。これら複素環式化合物は、メルカプタンとは異なり、抽出方法により除去されうるものではない。
これら硫黄化合物は水素化処理により除去される。この水素化処理により、炭化水素およびH2 Sへの分解が生じる。
【0023】
軽質フラクションにおいて、沸点160℃未満、さらには140℃未満、好ましくは120℃未満を有する硫黄化合物が見いだされる。これらの化合物として、メタンチオール(沸点=6℃)、エタンチオール(沸点=35℃)、プロパンチオール(沸点=68℃)、チオフェン(沸点=84℃)、チアシクロブタン(沸点=95℃)、ペンタンチオール(沸点=99℃)、2−メチルチオフェン(沸点=113℃)、3−メチルチオフェン(沸点=115℃)、チアシクロペンタン(沸点=121℃)、2−メチルチアシクロペンタン(沸点=133℃)、2−エチルチオフェン(沸点=134℃)、3−エチルチオフェン(沸点=136℃)、2,5−ジメチルチオフェン(沸点=137℃)、3−メチルチアシクロペンタン(沸点=139℃)、2,4−ジメチルチオフェン(沸点=141℃)、2,3−ジメチルチオフェン(沸点=142℃)、2,5−ジメチルチアシクロペンタン(沸点=142℃)、3,3−ジメチルチアシクロペンタン(沸点=145℃)、3,4−ジメチルチオフェン(沸点=145℃)、2,3−ジメチルチアシクロペンタン(沸点=148℃)、2−イソプロピル・チオフェン(沸点=153℃)、3−イソプロピル・チオフェン(沸点=157℃)および3−エチル−2−メチル・チオフェン(沸点=157℃)が挙げられる。
【0024】
接触クラッキング(FCC)により生成されるガソリン留分の硫黄含有量は、FCCで処理される仕込原料の硫黄含有量と、留分の終留点とに依存する。軽質フラクションは、当然重質留分よりも低い硫黄含有量を有する。
【0025】
一般に、ガソリン留分全体の硫黄含有量、特にFCCに由来する硫黄含有量は、1000重量ppmを越え、たいていは500重量ppmを越える。200℃を越える終留点を有するガソリンにおいて、硫黄含有量は、多くの場合1000重量ppmを越える。これら含有量は、いくつかの場合においては、4000〜5000重量ppm程度の値に達することさえある。
【0026】
本発明による方法の工程は、以下においてより詳細に記載される。
【0027】
ジエンの水素化
ジエンの水素化は、任意工程であるが、有利である。この工程により、水素化脱硫前に、処理すべき硫黄を含むガソリン留分中に存在するジエンのほとんど全部を除去することが可能になる。水素化は、一般に好ましくは白金、パラジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる、第VIII族の少なくとも1つの金属と、担体とを含む触媒の存在下に開始される。例えば不活性担体、例えばアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、あるいはアルミナを少なくとも50重量%含む担体上に担持されるニッケル1〜20重量%を含む触媒が使用される。この触媒は、圧力0.4〜5MPa、温度50〜250℃、液体の毎時空間速度1〜10h-1で作用する。例えばモリブデンまたはタングステンのような別の金属が、二金属触媒を形成するために組み合わされてよい。
【0028】
特に沸点160℃未満の留分を処理する場合には、ガソリンの少なくとも一部のスイートニング、すなわちメルカプタン含有量の相当な削減が得られるような条件下で操作を行うのが特に有利である。これを行うために、フランス特許出願FR−A−2753717に記載されている手順を使用してよい。この特許出願では、パラジウムをベースとする触媒が使用される。
【0029】
操作の条件の選択は、特に重要である。最も一般には、ジオレフィンの水素化に必要な化学量論値に対して少し過剰な水素量の存在下において加圧下に操作が行われる。水素および処理すべき仕込原料は、好ましくは触媒の固定床を有する反応器内で上昇流または下降流で注入される。温度は、最も一般には約50〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは160〜190℃である。
圧力は、反応器内において液相の処理すべきガソリンの80重量%以上、好ましくは95重量%以上を維持するのに充分なものである。すなわち、この圧力は、最も一般には0.4〜5MPa、好ましくは1MPaを越える。圧力は、有利には1〜4MPaである。空間速度は、約1〜10h-1、好ましくは4〜10h-1
である。
【0030】
接触クラッキングのガソリン留分の軽質フラクションは、ジオレフィンを数重量%まで含むものである。水素化後、ジオレフィンの含有量は、一般に3000ppm以下、さらには2500ppm以下、好ましくは1500ppm以下に削減される。いくつかの場合には、500ppm以下で得られるものである。選択的水素化後のジエン含有量は、たとえ必要であるとしても250ppm以下に削減されるものである。
【0031】
本発明の実施の形態によれば、ジエンの水素化工程は、水素化接触反応器内で開始される。この反応器には、仕込原料の全体と、所期反応を行うために必要な水素量とが通過する接触反応帯域が含まれる。
【0032】
軽質ガソリンおよび重質ガソリンの分離
この工程は、ガソリンを2つのフラクションに分別することからなる。すなわち、軽質ガソリンと呼ばれる軽質フラクションと、さらに重質ガソリンと呼ばれる重質フラクションとである。これら2つのガソリンのカットポイントは、軽質ガソリンの(さらには終留点と呼ばれる)最終の沸点と、重質ガソリンの(さらには初留点と呼ばれる)最初の沸点とに一致する。このカットポイントは、沸点としては一般に温度160℃未満、好ましくは140℃未満、より好ましくは120℃未満である。
【0033】
従って、軽質ガソリンは、一般に約160℃以上、好ましくは140℃を超える、より好ましくは120℃を越える終留点(軽質フラクションと重質フラクションとの留点)を有する。
【0034】
重質ガソリンは、軽質ガソリンの補足的重質フラクションに相当する。この重質ガソリンは、一般に温度約160℃以上、好ましくは140℃を越える、より好ましくは120℃を越える初留点を有する。
【0035】
この分離は、例えば蒸留または吸着のような当業者に公知のあらゆる技術を用いて行われてよい。
【0036】
軽質フラクションの水素化脱硫
軽質ガソリン留分の終留点は、確かに石油精製所に依存するものであるが、前述の限界内にとどまるものである。仕込原料は、好ましくは接触クラッキング・ガソリンの分離により生じる軽質ガソリンである。
【0037】
適する触媒は、好ましくは担持されたニッケルをベースとする触媒である。
【0038】
本発明により使用される触媒のニッケル含有量は、一般に約1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%である。好ましくは、触媒は、一般に好ましくは球状物、押出し物、ペレットまたは三葉物形態に成形される。ニッケルは、予備成形された担体上で触媒に組み込まれてよい。さらにニッケルは、成形工程前に担体と混合されてもよい。ニッケルは、一般に例えば硝酸ニッケルのような、一般に水に可溶性である前駆体塩の形態で導入される。この導入様式は、本発明の特有なものではない。当業者に公知のあらゆる他の導入様式が、本発明に適するものである。
【0039】
本発明の方法において使用される触媒の担体は、一般に耐火性酸化物、例えばアルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、マグネシア、並びに酸化チタンおよび酸化亜鉛から選ばれる多孔質固体である。これら後者の酸化物は、単独で、あるいはアルミナまたはシリカ・アルミナとの混合物状で使用されてよい。好ましくは、担体は、比表面積25〜350m2 /gを有する遷移アルミナまたはシリカである。天然化合物(例えばキーゼルグール(kieselguhr)またはカオリン)から選ばれる担体も本発明による方法の触媒における担体として適するものである。
【0040】
ニッケルの導入後および場合によっては触媒の成形後に(この工程が、既にニッケルを含む混合物について行われる場合には)、触媒は、第一工程において活性化される。この活性化は、酸化とこれに次ぐ還元に相当するものであるか、あるいは直接還元に相当するものであるか、あるいは単独的に焼成に相当するものである。焼成工程は、一般に温度約100〜600℃、好ましくは200〜450℃で空気流下に行われる。還元工程は、ニッケルの酸化形態の少なくとも一部を金属に転換しうる条件下に行われる。一般に、この還元工程は、触媒を水素流下に温度少なくとも300℃で処理することからなる。還元も化学還元剤を用いて一部行われてよい。
【0041】
触媒は、好ましくは少なくとも一部硫化物形態で使用される。このことは、例えばオレフィンまたは芳香族化合物のような不飽和化合物の水素化のリスクを開始段階の間、最大限に制限する利点を有する。硫黄の導入は、種々の活性化工程の間に介在してよい。好ましくは、硫黄または硫黄化合物が、触媒上に導入される場合には、何ら酸化工程は、行われない。硫黄または硫黄化合物は、現場外で(ex situ) 、すなわち本発明による方法が行われる反応器の外で、あるいは現場で(in situ) 、すなわち本発明による方法において使用される反応器内
に導入されてよい。この後者の場合には、触媒は、好ましくは前述の条件下に還元され、次いで少なくとも1つの硫黄化合物を含む仕込原料の通過により硫化される。この硫黄化合物は、一旦分解されて、触媒上への硫黄の固定化をもたらす。この仕込原料は、ガスまたは液体であってよく、例えばH2 Sを含む水素であるか、あるいは少なくとも1つの硫黄化合物を含む液体であってよい。
【0042】
好ましくは、硫黄化合物は、現場外で触媒上に添加される。例えば焼成工程後、硫黄化合物は、場合によっては別の化合物の存在下に触媒上に導入されてよい。次いで触媒は、乾燥され、ついで本発明の方法の実施用の反応器に移送される。ついで、この反応器において、触媒は、ニッケルの少なくとも一部を硫化物に転換するために水素下に処理される。特に本発明に適する手順は、フランス特許FR−B−2708596およびFR−B−2708597に記載されている手順である。
【0043】
硫化後、触媒の硫黄含有量は、一般に0.5〜25重量%、好ましくは4〜20重量%である。
【0044】
ガソリンの軽質フラクションの水素化脱硫は、前述の触媒を用いて留分の硫黄化合物をH2 Sに転換して流出物を得るようにすることを目的とする。この流出物は、脱硫された重質ガソリンとの混合後、硫黄化合物の含有量の面で所望の規格を満足するものである。生成された軽質留分は、同じ蒸留範囲と、オレフィンの部分的であるが避けられない飽和による、少し低いオクタン価とを有する。
【0045】
本発明による水素化処理反応器の操作条件は、オレフィンの飽和により生じるオクタン価の損失を最小限にするために、所期の水素化脱硫レベルに達するように調整されねばならない。本発明による方法において使用される触媒により、一般にオレフィンの多くとも70%、好ましくはオレフィンの多くとも60〜65%、より好ましくはオレフィンの20%以下を転換することが可能である(ジオレフィンは、完全にあるいは実質上完全に水素化される)。従って、本発明による方法の触媒を用いることにより、オレフィンの損失を制限して、またその結果オクタン価の低下を制限して水素化脱硫の高い割合に達することが可能である。
【0046】
軽質フラクションの水素化脱硫は、水素の存在下にニッケルをベースとする触媒を用いて温度約160〜420℃、一般に約0.5〜8MPaの適度な低圧力下に行われる。液体の空間速度は、(毎時触媒1容積当たり液体の容積で表示されて)約0.5〜10h-1、好ましくは1〜8h-1である。H2 /炭化水素(HC)比は、1リットル当たり約100〜600リットルの範囲で所期の水素化脱硫割合に応じて調整される。
【0047】
好ましくは、温度は、200〜400℃、非常に好ましくは290〜350℃である。好ましくは圧力は、1〜3MPaである。
【0048】
重質フラクションの水素化脱硫
重質ガソリンに相当するフラクションは、留分の硫黄化合物をH2 Sに転換するために従来の水素化処理触媒上で行われる従来の水素化処理(水素化脱硫)に付されて、脱硫された軽質ガソリンと混合した後に流出物を得るようにする。この流出物は、硫黄化合物の含有量の面で所期の規格を満足するものである。
【0049】
こうして脱硫された重質フラクションは、同じ蒸留範囲と、オレフィンの完全な飽和により、水素化処理前よりも少し低いオクタン価とを有する。重質フラクション(重質ガソリン)は、一般に20重量%未満、好ましくは10重量%未満のオレフィン含有量を有するので、このオクタン価の損失は、制限される。
【0050】
本発明による水素化処理反応器の操作条件は、所期の脱硫レベルに達するために調整されねばならない。一般に重質ガソリン中に存在する硫黄化合物の少なくとも90%が、H2 Sに転換される。
【0051】
重質フラクションは、第VIII族の少なくとも1つの金属および/または第VIb 族の少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて、水素の存在下に温度約160〜420℃、圧力一般に約0.5〜8MPaで水素化に付される。液体の空間速度は、(毎時触媒1容積当たり液体の容積で表示されて)約0.5〜10h-1、好ましくは1〜6h-1である。H2 /HC比は、1リットル当たり約100〜600リットル、好ましくは1リットル当たり300〜600リットルの範囲で所期の脱硫割合に応じて調整される。
【0052】
好ましくは温度は、200〜300℃である。好ましくは圧力は、2〜4MPaである。
【0053】
本発明の方法による重質ガソリンの水素化処理反応を行うために、適当な担体上に、第VIII族(新規周期表の第8、9および10族の金属、すなわち鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金)の少なくとも1つの金属および/または第VIb 族(新規周期表の第6族の金属、すなわちクロム、モリブデンまたはタングステン)の少なくとも1つの金属を含む、少なくとも1つの従来の水素化脱硫触媒が一般に使用される。
【0054】
第VIII族の金属が存在する場合には、この金属は、一般にニッケルまたはコバルトである。第VIb 族の金属が存在する場合には、この金属は、一般にモリブデンまたはタングステンである。ニッケル・モリブデンまたはコバルト・モリブデンのような組み合わせが好ましい。触媒の担体は、通常例えばアルミナ、シリカ・アルミナのような多孔質固体、あるいは単独でまたはアルミナもしくはシリカ・アルミナとの混合物状で、例えばマグネシア、シリカまたは酸化チタンのような他の多孔質固体である。
【0055】
本発明による方法の実施
上述されているような本発明による方法は、例えば初めの段階においてガソリンの2つのフラクションへの分離、例えば蒸留を含む形態において実施されてよい:
・例えば各々20℃および160℃の初留点および終留点を有しかつオレフィンの最も大きい部分と、硫黄化合物の一部とを含む軽質フラクション、および
・例えば160℃を越える初留点を有し、かつ最も重質である硫黄化合物と、不飽和化合物としてほとんどオレフィンを含まないが、主として芳香族化合物とを含む重質フラクションである。
【0056】
ついで、2つのフラクションの各々は上述された条件下に水素化脱硫に付され、重質フラクションから硫黄をほぼ完全に除去するようにし、また好ましくは、2つの水素化脱硫済み留分の混合により得られる物質が所期規格に一致する硫黄含有量を有するのに必要な硫黄含有量に達する限度で、軽質フラクション中に存在する硫黄の一部を除去するようにする。
【0057】
別の可能性のある手段は、蒸留帯域の外部でガソリンの軽質および重質フラクションの水素化脱硫反応が行われる反応帯域を配置することからなる。しかしながら、これは、水素化脱硫の反応帯域の仕込原料として、蒸留帯域の棚段から、採取レベルの上方または下方、好ましくは近辺に位置する単数または複数のレベルで前記蒸留帯域への脱硫済み流出物の再循環物を伴って採取される液体フラクションを使用することからなる。
【0058】
さらに別の形態を使用することも可能である。この形態において、ガソリンの軽質および重質フラクションの処理を目指す水素化処理触媒は、軽質フラクションと重質フラクションとの分離を可能にする蒸留帯域に直接配置される。
【0059】
【発明の実施の形態】
次の実施例は、本発明を例証するが、その範囲を限定するものではない。
【0060】
表1には、本発明による方法により処理される仕込原料(接触クラッキング・ガソリン)の特徴を示した。仕込原料および流出物を特徴付けるために使用される分析方法は、次の通りである:
・炭化水素成分に対するガス・クロマトグラフィー(GPC)、
・メルカプタンに対するNF M 07022/ASTM D 3227法、
・全体硫黄に対するNF M 07052法、
・リサーチ法オクタン価(RON)に対するNF EN 25164/M 07026−2/ISO 5164/ASTM D 2699法、および
・モーター法オクタン価(MON)に対するNF EN 25163/M 07026−1/ISO 5163/ASTM D 2700法。
【0061】
【表1】
Figure 0004547745
【0062】
[ 実施例1(比較例):非分別ガソリンの水素化脱硫
Procatalyse (プロカタリーズ)社により市販されている、触媒HR306C(登録商標)25mlを、水素化脱硫反応器内に配置した。先ず触媒を、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィド形態にある硫黄2%からなる供給物に接触させて、圧力3.4MPa、温度350℃で4時間の処理により硫化した。
【0063】
水素化脱硫の操作条件は、次の通りであった:T=270℃、VVH=4h-1、H2 /HC=125リットル/リットルおよびP=2.7MPa。これらの条件下に、脱硫後の流出物は、表2に記載した特徴を有していた。
【0064】
【表2】
Figure 0004547745
【0065】
[ 実施例2(本発明による):分別ガソリンの水素化脱硫
表1に記載した特徴を有するガソリンを、2つの留分に分別した。一方の留分は終留点110℃(軽質留分)を有し、他方の留分は初留点110℃(重質留分)を有していた。蒸留済みガソリンの特徴と各留分の収率とを、表3に記載した。
【0066】
【表3】
Figure 0004547745
【0067】
ガソリンの重質フラクションを、等温筒状反応器において従来の水素化処理触媒上で水素化脱硫に付した。 Procatalyse(プロカタリーズ)社により市販されている触媒HR306C(登録商標)25mlを、水素化脱硫反応器内に配置した。先ず触媒を、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィド形態にある硫黄2%からなる供給物に接触させて、圧力3.4MPa、温度350℃で4時間の処理により硫化した。
【0068】
水素化脱硫の操作条件は、次の通りであった:T=280℃、VVH=4h-1、H2 /HC=125リットル/リットルおよびP=2.7MPa。これらの条件下に、水素化脱硫後の流出物は、硫黄含有量1ppm未満と、オレフィン含有量1容積%未満とを有していた。
【0069】
ガソリンの軽質留分を、等温筒状反応器においてニッケルをベースとする触媒上で水素化処理に付した。触媒を次のように調製した。
【0070】
この触媒を、直径2mmの球状物形態で存在する140m2 /gの遷移アルミナから調製した。細孔容積は、担体の1ml/gであった。担体の1キログラムを、硝酸ニッケルの溶液1リットルにより含浸した。次いで触媒を、120℃で乾燥し、空気流下に400℃で1時間焼成した。触媒のニッケル含有量は、20重量%であった。次いで触媒(100ml)を、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィド形態にある硫黄4%を含む供給物に接触させて、圧力3.4MPa、温度350℃で4時間の処理により硫化した。
【0071】
次いで軽質ガソリンの水素化脱硫を行った。温度は、280℃であった。仕込原料の流量は、200ml/時であった。仕込原料1リットル当たり水素のリットルで表示されるH2 /仕込原料比は、400であり、操作圧力は、2.7MPaであった。
【0072】
これらの条件下に、液体流出物の分析により、表4に示される結果を生じた。
【0073】
【表4】
Figure 0004547745
【0074】
次いで別々に脱硫した軽質ガソリンと重質ガソリンとを混合した。得られた物質は、次の特徴を有していた:
【表5】
Figure 0004547745
【0075】
[ 実施例3(比較例):コバルト・モリブデン触媒を用いる分別ガソリンの水素化脱硫]
表1に記載した特徴を有するガソリンを、2つの留分に分別した。一方の留分は、終留点110℃(軽質留分)を有し、他方の留分は、初留点110℃(重質留分)を有していた。蒸留済みガソリンの特徴と各留分の収率とを、実施例2の表3に記載した。
【0076】
ガソリンの重質フラクションを、等温筒状反応器において従来の水素化処理触媒上で水素化脱硫に付した。 Procatalyse(プロカタリーズ)社により市販されている触媒HR306C(登録商標)25mlを、水素化脱硫反応器内に配置した。先ず触媒を、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィド形態にある硫黄2%からなる供給物に接触させて、圧力3.4MPa、温度350℃で4時間の処理により硫化した。
【0077】
水素化脱硫の操作条件は、次の通りであった:T=280℃、VVH=4h-1、H2 /HC=125リットル/リットルおよびP=2.7MPa。これらの条件下に、水素化脱硫後の流出物は、硫黄含有量1ppm未満と、オレフィン含有量1容積%未満とを有していた。
【0078】
ガソリンの軽質フラクションを、等温筒状反応器において触媒HR306C(登録商標)上で水素化脱硫に付した。先ず触媒を、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィド形態にある硫黄2%からなる供給物に接触させて、圧力3.4MPa、温度350℃で4時間の処理により硫化した。
【0079】
次いで軽質ガソリンの水素化脱硫を、次の条件下に行った:
T=220℃、VVH=4h-1、H2 /HC=400リットル/リットルおよびP=2.7MPa。
【0080】
これらの条件下に、液体流出物の分析により、表6に示される結果を生じた。
【表6】
Figure 0004547745
【0081】
次いで別々に脱硫した軽質ガソリンと重質ガソリンとを混合した。得られた物質は、次の特徴を有していた:
【表7】
Figure 0004547745

Claims (10)

  1. 低硫黄含有量を有するガソリンの製造方法であって、
    ・硫黄を含むガソリンの軽質フラクションおよび重質フラクションへの分離であり、留点が、軽質フラクションが重質フラクションより高いオレフィン含有量を有する留点に選ばれる分離と、
    担体上に金属ニッケルを含む触媒上での軽質フラクションの水素化脱硫と、
    ・第VIII族の少なくとも1つの金属および/または第VIb族の少なくとも1つの金属を含む触媒上での重質フラクションの水素化脱硫と、
    ・脱硫されたフラクションの混合とを含む、
    低硫黄含有量のガソリンの製造方法。
  2. 硫黄を含むガソリンが接触クラッキング方法により生じる、請求項1記載の方法。
  3. さらに重質フラクションの水素化脱硫において使用される触媒が、第VIb族の金属を含む、請求項1または2記載の方法。
  4. 第VIb族の金属がモリブデンまたはタングステンであり、第VIII族の金属が、ニッケルまたはコバルトである、請求項3記載の方法。
  5. 硫黄を含むガソリン留分中に存在するジエンの水素化を分離前に行う、請求項1〜4のうちのいずれか1項記載の方法。
  6. 軽質フラクションおよび重質フラクションの間のカットポイントが、160℃未満の温度である、請求項1〜5のうちのいずれか1項記載の方法。
  7. 重質フラクションが20重量%未満のオレフィン含有量を有する、請求項1〜6のうちのいずれか1項記載の方法。
  8. 軽質フラクションの水素化脱硫と重質フラクションの水素化脱硫とが、水素の存在下に温度160〜420℃、圧力約0.5〜8MPa、液体空間速度約0.5〜10h−1、H/HC比1リットル当たり約100〜600リットルで行われる、請求項1〜7のうちのいずれか1項記載の方法。
  9. 分離が蒸留塔で行われ、水素化脱硫反応器の仕込原料が前記塔の2つの異なるレベルで採取され、前記反応器の流出物が前記塔に再送される、請求項1〜8のうちのいずれか1項記載の方法。
  10. 分離が蒸留塔で行われ、水素化脱硫触媒が前記塔の内部に配置される、請求項1〜9のうちのいずれか1項記載の方法。
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