JP4450131B2 - 水中油型組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製菓、製パン、調理加工等に用いる水中油型組成物に関する。詳しくは、乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの食品添加物として指定された安定剤を使用しなくても、生クリーム以上のホイップ性、作業性、保存性があり、かつ軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のある水中油型組成物、該組成物と生クリームを混合した起泡性を有する水中油型組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ケーキ、シュークリーム、アイスクリーム等のデコレーションや、菓子パン等のトッピング、フィリング用に使用される起泡性水中油型乳化脂組成物、すなわちホイップ用クリームや、またパン生地、カスタードクリーム、ルウー、ホワイトソース等に加工練り込み用として使用されるクリーム類は、多数の乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの安定剤を巧みに組み合わせて製造するのが公知である。
【0003】
これらの安定剤を添加する目的は、クリームの原液安定性(クリームの可塑化防止)の向上、ホイップ時の物性(ホイップ時間、オーバーラン)調整、クリームに取り込まれた起泡の安定化、ホイップしたクリームからの離水防止、調理時の加熱による乳化破壊の防止などである。
【0004】
これらの目的のために使用される安定剤は、乳化剤として0.5〜2.0重量%程度、またリン酸塩として0.05〜0.2重量%程度である。更に、増粘多糖類、カゼイネートなどを含み、総量として0.5〜5重量%程度使用されているのが実体である。
【0005】
しかし、これらの安定剤を添加することは、クリームのえぐ味、嫌味、渋味、糊感の原因となるため、風味等の点から考えるとかえってマイナス効果しか持たないものである。
【0006】
一方、リン酸塩やクエン酸塩等の安定剤を使用せず、生クリームの様なキメとみずみずしい食感を得ようとした試みが提案がされている(特開平11−56282)が、原液安定性、ホイップ物性を調整するための安定剤として、多量のカゼイネート、卵黄油(卵黄レシチン)を必須成分として使用しなければならないのが実体である。
【0007】
このため、たとえ生クリーム並みのホイップ機能があっても、生クリーム以上に軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のある水中油型組成物は得られていないのが実状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの安定剤を使用しなくても、生クリーム以上のホイップ性、作業性、保存性があり、かつ軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のある水中油型組成物、該組成物と生クリームを混合した起泡性を有する水中油型組成物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的とし、水中油型組成物に使用する油脂成分と安定剤の機能を代替する成分について鋭意検討したところ、ホイップ用クリームとしては、極めて低融点の油脂成分とラウリン系硬化油脂を特定の範囲内において使用し、さらに安定剤の代替成分として乳化を安定化する特定成分と、乳化を不安定化する特定成分を併用することにより、より優れた起泡性を有する水中油型組成物が得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第1は、油脂含量が20〜50重量%である水中油型組成物において、油脂成分が、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、或いはそれらを分別、硬化等の通常の手法により調整したこれら油脂を単独、または数種類混合してなる上昇融点20〜25℃の油脂80〜98重量%とパーム核油を単独に硬化したものか、分別または混合硬化してなる上昇融点32〜36℃のラウリン系硬化油脂2〜20重量%を含み、乳化安定化成分として、卵白、卵白粉末、ラクトアルブミンからなる群から選ばれた1種以上と乳化不安定化成分として、卵黄、卵黄粉末、乳脂肪球被膜蛋白質からなる群から選ばれた1種以上をそれぞれ0.1重量%以上1.0重量%以下含有し、更に脱脂粉乳及び/又はバターミルクパウダーである無脂乳固形分を3.0〜8.0重量%含んでなることを特徴とする水中油型組成物に関する。
【0011】
本発明の第2は、上記記載の水中油型組成物と生クリームを含んでなる、起泡性を有することを特徴とする水中油型油脂組成物に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明についてさらに詳細に説明する。本発明の水中油型組成物は、植物性油脂を含んでなる油脂成分、特定の乳化安定化成分と乳化不安定化成分、無脂乳固形分を必須成分とし、その他呈味成分を含有した水中油型乳化脂組成物のことであり、以下に内容を詳細に説明する。
【0013】
本発明の水中油型組成物中の油脂は、組成物中に20〜50重量%含有される。20重量%未満では、起泡化力に劣る傾向にあるばかりでなく、油脂の旨味に欠ける傾向にあり、また、油脂が50重量%を越えると乳化安定性(原液の可塑化)の維持が困難となるため不向きである。
【0014】
また、水中油型組成物において、油脂成分は20〜25℃の上昇融点の油脂80〜98重量%と上昇融点32〜36℃のラウリン系硬化油脂2〜20重量%を混合したものである。油脂の上昇融点は、基準油脂分析試験法(1)(1996年版「日本油化学会」)に準じて測定できる。
【0015】
本発明に使用できる上昇融点20〜25℃の油脂としては、例えば、コーン油、大豆油、菜種油、ヤシ油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、パーム油等の植物性油脂、乳脂肪等を分別、硬化等の通常の手法により調整できる。これら油脂を単独、または数種類混合して使用できるが、融点を20〜25℃に調整した油脂であれば何ら制限なく使用でき、水中油型組成物の油脂成分に80〜98重量%含むことが必要である。油脂の上昇融点が20℃未満では、水中油型組成物を起泡化したクリームの保存性が劣る傾向にあり、油脂の上昇融点が25℃より高いと、原液安定性、口溶けが劣る傾向がある。
【0016】
また、融点32〜36℃のラウリン系硬化油としては、ヤシ油、またはパーム核油を単独に硬化したものか、分別または混合硬化したものであれば何ら制限なく使用でき、水中油型組成物の油脂成分に2〜20重量%含むことが必要である。ラウリン系硬化油の融点が、32℃未満では、起泡化したクリームの保型性が劣る傾向にあり、36℃より高いと、起泡化したクリームのシマリが強くなり造花性に劣る傾向がある。
【0017】
本発明では、油脂成分として20〜25℃の上昇融点からなる油脂80〜98重量%と上昇融点32〜36℃のラウリン系硬化油脂を2〜20重量%の範囲内に混合して使用するが、ラウリン系硬化油脂の比率が範囲より少ないときは、水中油型組成物の保型性、保存性が劣る傾向があり、油脂結晶化の遅延によりエージング時間が長くなる為あまり好ましくない。また、ラウリン系硬化油脂の比率が多くなると原液安定性、造花性、口溶けが劣る傾向がある。この為、所定の比率が必要である。
【0018】
さらに、好適な実施態様を得るためには、乳化安定化成分として、卵白、卵白粉末、ラクトアルブミンからなる群から選ばれた1種以上と乳化不安定化成分として、卵黄、卵黄粉末、乳脂肪球被膜蛋白質からなる群から選ばれた1種以上をそれぞれ0.1重量%以上含有することが必要である。乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネート等の安定剤が、水中油型組成物を乳化する際の役割、また起泡化する際の役割について検討したところ、水中油型組成物中の脂肪球の大きさを小さくして原液安定性を維持すること、及び起泡化する際に細かい空気の抱き込みと乳化破壊をスムーズに行うこと、の2点を補えば最良な起泡性を有する水中油型組成物が得られることが判った。これらを制御するには乳化安定化成分として、卵白、卵白粉末、ラクトアルブミンからなる群から選ばれた1種以上と乳化不安定化成分として、卵黄、卵黄粉末、乳脂肪球被膜蛋白質からなる群から選ばれた1種以上をそれぞれ0.1重量%以上含有することにより達成されることを見出した。
【0019】
本発明に使用する乳化安定化成分は、卵白、卵白粉末、ラクトアルブミンからなる群から選ばれた1種以上であり、酵素分解その他の手法により耐熱性を向上させたものでもよい。
【0020】
本発明に使用する乳化不安定化成分として、卵黄、卵黄粉末、乳脂肪球被膜蛋白質からなる群から選ばれた1種以上を使用するが、酵素分解その他の手法により耐熱性を向上させたものでもよい。また、卵黄の分画物・精製物等を用いても差し支えないが、安価で且つ簡便に用いることが出来る卵黄、卵黄粉末を用いることで十分に目的を達成できる。
【0021】
ラクトアルブミン、乳脂肪被膜蛋白質は、牛乳、全脂粉乳、バターミルクパウダー等に含まれているものであり、これらから精製したものを用いる。未分画の形態のものでは、ラクトアルブミン、乳脂肪球被膜蛋白質の含量が少ないこと等から、限外濾過膜、酸沈殿などの手法により分画された粉末を使用することが必要である。
【0022】
上述の乳化安定化成分と乳化不安定化成分は、それぞれ0.1重量%以上使用するが、乳化剤の飽和系、不飽和系乳化剤のようにそれぞれ乳化安定性、起泡化時間を目安にバランスを取り使用できるが、多量に使用すると殺菌時の焦げ付きなどが発生する可能性があるため、それぞれ1.0重量%以下が好適である。
【0023】
本発明は、特定組成の油脂、特定の乳化安定化成分と乳化不安定化成分、脱脂粉乳、バターミルクパウダーなどの無脂乳固形分を3.0〜8.0重量%を含む他、本発明の意思を阻害しない範囲で各種の調味料、呈味料等を含有しても何ら問題ない。
【0024】
本発明の水中油型組成物を製造する方法は、特定の油脂成分からなる油相部と、特定の乳化安定化成分と乳化不安定化成分、無脂乳固形分、その他水溶性原材料を溶解した水相部を60℃前後で乳化させる。次に、従来の公知の方法に準じて製造可能であるが、好ましくは、高温短時間殺菌、滅菌装置を使用して製造する。たとえば、水中油型乳化脂組成物の乳化液に蒸気を直接混入させ、140〜150℃で4秒程度の滅菌を行ったのち、過剰の水分を減圧フラッシュさせた後、ホモジナイザーによる均質化、冷却して容器に充填される。なお、冷却工程は加圧晶析等の手法により冷却後のエージング時間を短縮することも可能である。
【0025】
また、本発明の水中油型組成物は、別に殺菌、均質化、冷却した生クリームを製造工程内にて混合したり、もしくは使用する直前に市販の生クリームと混合して、乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの安定剤不使用の起泡性を有する水中油型組成物とすることができる。
【0026】
このようにして調製された水中油型組成物は、乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの安定剤を使用しなくても、生クリーム以上のホイップ性、作業性、保存性があり、かつ軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のある水中油型組成物、及び生クリームと混合しても生クリーム以上に軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感がある起泡性を有する水中油型組成物が得られる。
【0027】
【実施例】
以下に、実施例、比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、ここに例示する実施例に限定されるものではない。なお、配合中の%は、すべて重量%を示す。
【0028】
(実施例1)
パーム分別硬化油、パーム核油からなる混合油脂(上昇融点23.2℃)35%、硬化パーム核油(上昇融点36℃)3%からなる油相部を65℃に温調して65℃で溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳6.5%を60℃の残水に溶解した水相部を先の油相部と予備乳化させた。この乳化液は、145℃にて4秒間滅菌処理をしたのち、均質化圧6.0MPaにて処理したのち5℃まで冷却して容器に充填し水中油型組成物を得た。
【0029】
該水中油型組成物を、5℃にて48時間エージングした後、20Qミキサーにてホイップしたところ、ホイップ時間14分12秒、オーバーラン135%にてホイップが終了した。得られたクリームは、クリームのキメが良好なうえ造花性もよく、作業中の状態変化も無く良好な物性であり、軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のあるクリームであった。
【0030】
(実施例2)
硬化菜種油(上昇融点22.0℃)35%、硬化パーム核油(上昇融点36℃)5%からなる油相部を65℃に温調して65℃で溶解して油相部とした。一方、脱脂粉乳6.5%を60℃の残水に溶解した水相部を先の油相部と予備乳化させた。この乳化液は、145℃にて4秒間滅菌処理をしたのち、均質化圧6.0MPaにて処理したのち5℃まで冷却して容器に充填し水中油型組成物を得た。
【0031】
該水中油型組成物を、5℃にて48時間エージングした後、20Qミキサーにてホイップしたところ、ホイップ時間15分10秒、オーバーラン152%にてホイップが終了した。得られたクリームは、クリームのキメが良好なうえ造花性もよく、作業中の状態変化も無く良好な物性であり、軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のあるクリームであった。
(実施例3)
パーム油、ヤシ油からなる混合油脂(上昇融点23.4℃)35%、硬化パーム核油(上昇融点36℃)5%からなる油相部を65℃に温調して65℃で溶解して油相部とした。一方、卵白粉末0.3%、卵黄粉末0.2%、脱脂粉乳6.5%を60℃の残水に溶解した水相部を先の油相部と予備乳化させた。この乳化液は、145℃にて4秒間滅菌処理をしたのち、均質化圧6.0MPaにて処理したのち5℃まで冷却して容器に充填した水中油型組成物を得た。
【0032】
該水中油型組成物を、実施例1と同様に操作して評価したところ、ホイップ時間7分15秒、オーバーラン105%でホイップ終了した。得られたクリームは、クリームのキメが良好なうえ造花性もよく、作業中の状態変化も無く良好な物性であり、生クリーム以上の軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のあるクリームであった。ホイップ時間、オーバーランも適性レベルであり生クリーム以上の性質のものであった。
【0033】
(比較例1)
実施例3において、卵白粉末を除いた以外は、すべて実施例1と同様に操作して水中油型組成物を得た。実施例1と同様に操作してホイップしたところ、ホイップ時間6分10秒、オーバーラン80%でホイップ終了した。得られたクリームは、軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のあるクリームであったが、シマリが強く造花性の点で劣るものであった。
【0034】
(比較例2)
実施例3において、卵黄粉末を除いた以外は、すべて実施例1と同様に操作して水中油型組成物を得た。さらに、実施例1と同様に操作してホイップしたところ、ホイップ時間13分20秒、オーバーラン165%でホイップ終了した。得られたクリームは、軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のあるクリームであったが、オーバーランが高すぎてキメがやや荒く見栄えの悪いクリームであった。
【0035】
(実施例4)
パーム分別硬化油、パーム核油からなる混合油脂(上昇融点23.2℃)35%、硬化パーム核油(上昇融点36℃)5%からなる油相部を65℃に温調して65℃で溶解して油相部とした。一方、卵白粉末0.2%、乳脂肪球被膜蛋白質0.3%、バターミルクパウダー6.0%を60℃の残水に溶解した水相部を先の油相部と予備乳化させた。この乳化液は、145℃にて4秒間滅菌処理をしたのち、均質化圧6.0MPaにて処理したのち5℃まで冷却して容器に充填した水中油型組成物を得た。得られた水中油型組成物50%と市販生クリーム50%をホイップする直前に混合して、実施例1と同様に操作してホイップしたところ、ホイップ時間6分30秒、オーバーラン95%でホイップ終了した。得られたクリームは、クリームのキメが良好なうえ造花性もよく、作業中の状態変化も無く良好な物性であり、生クリーム以上に軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感があり、かつ生クリームの風味もある極めて優れたものであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明により、乳化剤、リン酸塩、増粘多糖類、カゼイネートなどの安定剤を使用しなくても、生クリーム以上のホイップ性、作業性、保存性があり、かつ軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感のある水中油型組成物を得ることが出来た。また、生クリームと混合すると生クリーム以上に軽く爽やかな口溶けとフレッシュ感がある起泡性を有する水中油型組成物を得ることが出来た。
Claims (2)
- 油脂含量が20〜50重量%である水中油型組成物において、油脂成分が、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、或いはそれらを分別、硬化等の通常の手法により調整したこれら油脂を単独、または数種類混合してなる上昇融点20〜25℃の油脂80〜98重量%とパーム核油を単独に硬化したものか、分別または混合硬化してなる上昇融点32〜36℃のラウリン系硬化油脂2〜20重量%を含み、乳化安定化成分として、卵白、卵白粉末、ラクトアルブミンからなる群から選ばれた1種以上と乳化不安定化成分として、卵黄、卵黄粉末、乳脂肪球被膜蛋白質からなる群から選ばれた1種以上をそれぞれ0.1重量%以上1.0重量%以下含有し、更に脱脂粉乳及び/又はバターミルクパウダーである無脂乳固形分を3.0〜8.0重量%含んでなることを特徴とする水中油型組成物。
- 請求項1記載の水中油型組成物と生クリームを含んでなる、起泡性を有することを特徴とする水中油型油脂組成物。
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