JP4410131B2 - 車両用ガラスアンテナ及び車両用ガラスアンテナを備える車両 - Google Patents

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本発明は、車両用ガラスアンテナ及び車両用ガラスアンテナを備える車両に関し、特にFM波、デジタルTV波、アナログTV波等の高周波の受信に適する車両用ガラスアンテナ及び車両用ガラスアンテナを備える車両に関する。
従来よりFM、TV等の電波を受信する車両用ガラスアンテナとして、車両用窓ガラスに対し横方向に伸びる直線状のアンテナ素子を形成し、そのアンテナ素子に同軸ケーブルの中心導体を接続し、車体開口部に同軸ケーブルの外部導体を接続するアンテナが知られている。(例えば、特許文献1参照。)
特開平08−330833号公報
しかし、上述した特許文献1に開示されたガラスアンテナの内、図9のように窓ガラス51の上部周縁部近傍の車体ルーフに同軸ケーブルの外部導体52を接続した場合、FM及びTV等の高周波帯の受信感度が低く、給電点と受信機との間に受信感度を増幅するための前置増幅器を設けなければならず、生産性が悪いという問題があった。また、図10のように窓ガラス側部(サイドピラー)に同軸ケーブルの外部導体52を接続した場合、受信感度は向上するものの、車両によっては車両の組み立ての制約上、外部導体をサイドピラーに接続することが困難であるという問題点があった。具体的にはカーテンエアバッグが装着された車では、車両の天井の内装が乗員の頭部付近まで伸びている。通常窓ガラスの車両への取り付けは、天井の内装を取り付けた後に行うため、車両の天井の内装が乗員の頭部付近まで伸びている車両においては配線が天井の内装に隠れてしまい、従って天井の内装を取り付けた後ではアンテナの配線を行うことが困難になる。また、ピラーにはエアバッグを膨らませるためのインフレーター等、電装品のケーブル等が存在するため、アンテナケーブルのアースを取り付ける穴がアンテナ近傍のピラーに開けられず、同軸ケーブルの線が長くなりアンテナ性能の劣化を招く問題点がある。
そこで本発明の目的として、同軸ケーブルの外部導体を窓ガラス上部の車体に接続し、かつ受信感度の優れる車両用ガラスアンテナ及び車両用ガラスアンテナを備える車両を提供する。
上述の課題を解決するために本発明は、車両の窓ガラスの表面にアンテナを形成した車両用ガラスアンテナにおいて、アンテナは、窓ガラスに対し横方向に伸びるアンテナ素子と、アンテナ素子の上部に設けられた給電点と、アンテナ素子の窓ガラスの側辺に近い側の端部と給電点を接続する補助素子とを備え、補助素子は窓ガラスを車体に取り付けた際の車体と窓ガラスとの境界に沿って形成し、かつ補助素子の長さは、受信する電波の波長をλ、短縮率をkとすると、2分の1kλ以上3分の2kλ以下であることを特徴とする車両用ガラスアンテナである。上記窓ガラスを車両に取り付けた場合、補助素子は車体と窓ガラスの境界に沿って形成しているため、補助素子と車体の境界が同軸ケーブルと同等な役割を果たす。ここで補助素子の長さを2分の1kλ以上3分の2kλ以下とすると、同軸ケーブルを接続した接続点のインピーダンスと、アンテナ素子の窓ガラス側辺に近い側の端部及び窓ガラス側辺部の車体のインピーダンスがほぼ同じとなる。すなわち、同軸ケーブルの中心導体を給電点に接続し、外部導体を、車両用ガラスアンテナを取り付けた車両の、車両用ガラスアンテナ(より好ましくは給電点)上部の車体に取り付けると、インピーダンスの特性的に同軸ケーブルの中心導体をアンテナ素子の窓ガラス側辺に近い側の端部に接続し、同軸ケーブルの外部導体をサイドピラーに接続した場合と同等の構成となり、従来例における図9のアンテナに比べ受信感度を向上することが出来る。また、外部導体を窓ガラスの上部の車体に接続するため、アンテナケーブルのアースをピラーに取り付けることが困難な車両においても配線が可能となる。ここで、補助素子は車体と窓ガラスの境界に沿って形成しているが、本発明において沿っているとは、境界と補助素子との間隔(距離)が一定であるものの他に、境界と補助素子との間隔がその平均間隔に対して例えば30%程度の間隔差があるものも含むものである。
また、窓ガラスを車体に取り付けた際の車体と窓ガラスとの境界と、補助素子との距離は、5mm以上30mm以下であり、補助素子は境界よりもガラスの中央側(内側)に配置していることが好ましい。補助素子が境界よりもガラスの周辺側(外側)に配置していたり、距離が5mm未満であると車体と補助素子との間のインピーダンスが下がり、アンテナの感度が低下する可能性がある。また、30mmより大きくなると境界と補助素子が同軸ケーブルと同等の役割を果たさなくなり感度が低下する可能性がある。
本発明の車両用ガラスアンテナは、窓ガラスを車体に取り付けた際の車体と窓ガラスとの境界に沿って形成され、かつアンテナ素子と給電点を接続する補助素子を備えることにより、給電点が窓ガラスの上部にあり、かつ窓ガラス上部の車体に接続しても良好な感度が得られる。また、本発明の車両は、上述した本発明の車両用ガラスアンテナを備えるので、配線がしやすく良好な感度のアンテナを備えることが出来る。
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。
図1は本発明の車両用ガラスアンテナの全体図、図2は本発明の車両用ガラスアンテナの、アンテナが形成された上部右側の図である。以下車両用ガラスアンテナを表す図は、車両に取り付けた際に車内側となるガラスの面側から見た図として表し、右側、左側なる言葉も車内側となるガラス面側から見た場合の場所として表す。図1及び図2においてアンテナ1、は窓ガラス2の車内面側の表面で、右上付近に形成している。形成方法としては、例えば銀などの導電性材料を含有するペーストを用い、スクリーン印刷法等によりガラス表面にプリントし、その後ガラスを加熱することによりペーストを焼結体とする方法などが挙げられる。
図2においてアンテナ1は窓ガラス2に対し横方向に伸びるアンテナ素子3と、アンテナ素子3の上部に設けられた給電点4と、アンテナ素子3の窓ガラスの側辺5に近い側の端部6と給電点4を接続する補助素子7を備える。補助素子7は、窓ガラス2を車体に取り付けた際の車体(図示せず)と窓ガラス2との境界8に沿って形成する。また、補助素子7の長さは、受信する電波の波長(自由空間波長)λに対し、2分の1kλ以上3分の2kλ以下とする。ここでkはアンテナを形成したガラスに起因する短縮率を表し、車両用窓ガラスの場合、約0.6である。例えば500MHzの信号を受信する場合、自由空間波長は600mmでありkλは約360mmとなる。
アンテナ素子3は窓ガラス2に対し横方向に伸びるアンテナ素子でありその長さは4分の1kλ以上2分の1kλ以下が好ましい。4分の1kλ未満であると受信感度が低下し、2分の1kλより大きいとアンテナ素子の長さが長くなり、視認性上好ましくない。また、アンテナ素子の長さが長くなると他のアンテナを配置する空間が狭くなることからも好ましくない。
アンテナ素子3としては前述したアンテナ1の他に必要に応じて無給電線を形成してもよく、また複数本の横方向の素子を結合してもよい、具体的には図3のようにアンテナ素子3の上下に無給電線11及び12を配置したもの、図4のようにアンテナ素子3の下側に無給電線12を配置したもの、図5のように2本の横方向素子13及び14を縦方向素子15により結合しコ字状としたもの、図6のように2本の横方向素子16及び17を縦方向素子18及び19により結合しループ状としたもの等が挙げられる。このようにアンテナの形状を適宜調整することにより、アンテナの受信性能及び指向特性等を調整することが出来る。例えば図3及び図4のようにアンテナ素子3の上下又は下側に無給電線を配置すると、水平方向の指向性を強くすることが出来る。図5のようにコ字状とすると横方向に伸びる素子が2本となるため受信感度が向上する。図6のようにループ状とすると実質的にアンテナの幅を広げたことになり広帯域になる。
図3及び図4のように無給電線を配置する場合、アンテナ素子3と無給電線との離間距離l/2は、60分の1kλ〜30分の1kλ、すなわち図3における無給電線11及び12の離間距離lは30分の1kλ〜15分の1kλとし、無給電線の長さは、4分の1kλ〜8分の3kλとし、アンテナ素子3と無給電線が窓ガラスの上下方向において重なっている距離mは、32分の1kλ〜8分の1kλとすることが好ましい。前述の値を設定することにより、良好な特性が得られるアンテナとすることができる。
また、アンテナ素子及び補助素子の幅は0.5mm以上1mm以下が好ましい。0.5mm未満では、アンテナ素子上での抵抗ロスが大きくなり受信感度が低下する可能性がある。また、製造時に断線する可能性が高くなるため好ましくない。また、1mmより大きいと見栄えが悪くなる。
図3のアンテナ、すなわちアンテナ素子3の上下に無給電線11及び12を配置したアンテナを用いて、補助素子7の長さと、窓ガラスを車両に取り付けた際の車体と窓ガラスとの境界8と補助素子7との距離gがアンテナの受信感度に及ぼす影響を、水平方向より角度30°で車体に取り付けた車両用窓ガラスにデジタルTV帯域(470〜710MHz)の電波を照射し、それぞれの周波数の感度を測定することで確認した。確認結果を図7に示す。また、用いたアンテナ素子3の長さは0.25kλ、アンテナ素子の幅は0.8mm、アンテナ素子3に対し平行に設けられた無給電線11及び12とアンテナ素子3の離間距離l/2を30分の1kλ、無給電線11及び12の長さを0.5kλ、アンテナ素子3と無給電線11及び12が窓ガラスの上下方向において重なっている距離mを0.1kλとした。ここでλは508mm(周波数590MHzの波長)とし、kは0.6とした。アンテナにて受信した信号は、同軸ケーブルの中心導体を給電点4に接続し、同軸ケーブルの外部導体を給電点上部の車体に接続することで取り出した。
図7において、(a)は平均感度、すなわち希望方向、具体的には車両後方で且つ水平方向における周波数470〜710MHz間の感度を周波数ごとに求め、周波数の数で平均をとった平均の感度を表す。(b)は最小感度、すなわち希望方向における周波数470〜710MHz間の感度を周波数ごとに求め、そのうち最小となる感度を表す。(c)は平均FB比、すなわち希望方向(F)と希望方向とは逆の方向(B)のそれぞれの感度の比(FB比)を周波数470〜710MHz間の周波数ごとに求め、周波数の数で平均をとった平均のFB比を表す。(d)は最小FB比、すなわち希望方向と希望方向とは逆の方向のそれぞれの感度の比(FB比)を周波数470〜710MHz間の周波数ごとに求め、そのうち最小となるFB比を表す。ここで、平均感度は図8のように補助素子を設けず外部導体を窓ガラス側部の車体に接続したアンテナを基準アンテナとした。また、図7の(a)〜(d)において補助素子の長さを表す値は、kを省略した値として記した。なお、アンテナ素子、無給電線及びアンテナ素子と無給電線との関係は、図3のアンテナと同じである。
図7(a)及び(b)より明らかなように距離gが15から30mmでかつ補助素子の長さが2分の1kλから3分の2kλの範囲において、平均感度が高く、基準アンテナと比べて差が−1dB以内であった。また、最小感度については、0.8から1.2dB基準アンテナに比べ高い値であった。また、図7(c)及び(d)より明らかなように距離gが5から10mmでかつ補助素子の長さが3分の1kλからkλの範囲において、FB比が−2dB以内であり良好であった。また、最小FB比も−2.1dB以内であり良好であった。感度の結果及びFB比の結果より距離gが5から30mmでかつ補助素子の長さが2分の1kλから3分の2kλの範囲において良好であることがわかる。
以上の結果より、本発明の車両用ガラスアンテナ及び車両では外部導体を窓ガラス側部に接続した場合と略同等の性能があることがわかる。また、本発明の車両用ガラスアンテナは、外部導体を窓ガラス上部の車体に接続するため窓ガラス側部の車体に外部導体を接続不可能な車両にも適用することができる。
また、本発明の車両は、本発明の車両用ガラスアンテナを備えることにより、生産が容易で且つ受信感度が良好なアンテナを備えることができる。
本発明の最良の形態では、アンテナを後部窓ガラスの右側に設けた例にて説明したが、これに限らず、後部窓ガラスの左側に設けても良いし車両の前面窓ガラスに設けてもよい。また、複数のアンテナを設けて、例えばダイバーシティアンテナとしてもよい。
また、本発明の他の実施形態として、窓ガラスの周縁部であって車体と窓ガラスが重なる領域に導電性被膜を設け、導電性被膜の窓ガラス中央よりの端部が、窓ガラスと車体との境界よりも窓ガラスの中央よりとなるようにし、かつ補助素子を導電性被膜の窓ガラス中央よりの端部に沿って形成してもよい。このような形態とすることにより車体と容量結合する導電性被膜と補助素子とが同軸ケーブルと同等の働きをするため、前述した効果を得ることができる。
補助素子を窓ガラスと車体との境界に沿って形成する場合、窓ガラスと車体との組み付け精度のばらつきにより、境界と補助素子との間の距離にばらつきが発生しやすくなるが、導電性被膜に沿って補助素子を形成する場合、導電性被膜と補助素子との距離は窓ガラスと車体との組み付けの影響を受けないため、より性能が安定したガラスアンテナとすることができる。
本発明の車両用ガラスアンテナの全体図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの、アンテナが形成された上部右側の図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの、2本の無給電線を備えるアンテナが形成された上部右側の図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの、1本の無給電線を備えるアンテナが形成された上部右側の図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの、コ字状のアンテナ素子を備えるアンテナが形成された上部右側の図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの、ループ状のアンテナ素子を備えるアンテナが形成された上部右側の図である。 本発明の車両用ガラスアンテナの特性を表す図である。 本発明のガラスアンテナの特性を比較するための基準アンテナを示す図である。 従来例を示す図である。 その他の従来例を示す図である。
符号の説明
1 アンテナ
2 窓ガラス
3 アンテナ素子
4 給電点
5 窓ガラスの側辺
6 端部
7 補助素子
8 境界
11,12 無給電線
13,14 横方向素子
15 縦方向素子
16,17 横方向素子
18,19 縦方向素子
51 窓ガラス
52 外部導体

Claims (4)

  1. 車両の窓ガラスの表面にアンテナを形成した車両用ガラスアンテナにおいて、前記アンテナは、前記窓ガラスに対し横方向に伸びるアンテナ素子と、該アンテナ素子の上部に設けられた給電点と、該アンテナ素子の前記窓ガラスの側辺に近い側の端部と前記給電点を接続する補助素子とを備え、該補助素子は、前記窓ガラスを車体に取り付けた際の車体と前記窓ガラスとの境界に沿って形成し、かつ前記補助素子の長さは、受信する電波の波長をλ、短縮率をkとすると、2分の1kλ以上3分の2kλ以下であることを特徴とする車両用ガラスアンテナ。
  2. 前記境界と前記補助素子の間の距離は、5mm以上30mm以下であり、前記補助素子は前記境界よりもガラスの中央側に配置していることを特徴とする請求項1記載の車両用ガラスアンテナ。
  3. 前記アンテナは、更に同軸ケーブルを備え、該同軸ケーブルの中心導体は前記給電点に接続していることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ガラスアンテナ。
  4. 車体と、請求項3記載の車両用ガラスアンテナを備え、中心導体が給電点に接続された同軸ケーブルの外部導体は、前記車両用ガラスアンテナの上部の前記車体に接続していることを特徴とする車両用ガラスアンテナを備える車両。
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