JP4299573B2 - エレベータの扉装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部に設置された扉を常に完全に閉じるための扉装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エレベータにおいては、乗場から昇降路に通じる開口部に、複数枚の引き戸からなる扉(乗り場扉)が配備されており、該扉は、例えばベルト駆動によって開閉方向に駆動される(特許文献1参照)。
【0003】
図13に示す従来の扉装置の一例においては、乗場から昇降路に通じる開口部(図示省略)の上方位置にヘッダー3が取り付けられており、該ヘッダー3にはレール4が水平に設置され、該レール4に対して、乗り場扉を構成する2枚の引き戸(図示省略)を吊り下げるための一対のハンガー1、2が周知のとおり移動自在に設けられている。ヘッダー3には、その両端部に一対のプーリ6、7が配置され、両プーリ6、7にはワイヤー5が巻き付けられ、該ワイヤーの両端は一方のハンガー2に連結されている。又、両プーリ6、7間に掛け渡されたワイヤー5の中間位置にはグリップ8が固定され、該グリップ8は他方のハンガー1に連結されている。これによって、両ハンガー1、2は互いに逆方向に移動することになる。
一方のハンガー2には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。又、他方のハンガー1とヘッダー3との間にはスプリング11が張設され、該スプリング11によって一対のハンガー1、2が常に戸閉方向に付勢されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2842513号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図13に示す従来の扉装置においては、スプリング11によって扉が全開位置から全閉位置までの全長を閉じ方向に付勢される構成が採用されていたので、全開時にはスプリング11が大きく伸張して最大の付勢力が得られるが、全閉時には、スプリング11が収縮して付勢力が最も小さくなり、場合によっては扉を完全に閉じることが出来ない虞があった。
特に、火災時に発生する煙が昇降路内へ流入したり昇降路から流出したりすることを防止するために遮煙機構を装備した扉装置や、戸外に設置されて風の影響を強く受ける扉装置では、扉が全閉位置に近づいたときに抵抗力が増大するので、扉を完全に閉じることが困難となる。
【0006】
そこで本発明の目的は、扉に作用する抵抗力の大小に拘わらず扉を完全に閉じることの出来るエレベータの扉装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係るエレベータの扉装置は、エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部を開閉する扉を具え、該扉には、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたときに扉を全閉位置に向けて押圧する戸閉力増強装置が連繋している。
【0008】
上記本発明の扉装置においては、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたとき、戸閉力増強装置が作動して、扉が全閉となるまでの戸閉力を増強するので、扉が全閉位置近傍から全閉位置まで移動する過程で抵抗力が増大したとしても、扉は完全に閉じられることになる。
【0009】
具体的構成において、上記開口部の上方に取り付けられたヘッダーには、レールが水平に設置され、該レールにはハンガーを移動自在に設け、該ハンガーに前記扉が吊り下げられると共に、ヘッダーに設置されたスプリングによって扉が全開位置から全閉位置に至るまで閉じ方向に付勢されている。
該具体的構成において、扉が閉じる過程で前記スプリングによる付勢力が弱まったとしても、戸閉力増強装置によって戸閉力が増強されるので、扉は完全に閉じられることになる。
【0010】
又、具体的構成において、前記戸閉力増強装置は、ヘッダーに設けられたカムと、ハンガーに設けられたローラと、該ローラをカムに押し付ける付勢部材とによって構成され、前記カムは、水平に伸びる水平カム面と、該水平カム面に連続して斜めに伸びる傾斜カム面とを具えている。
該具体的構成においては、扉が全開位置から全閉位置近傍まで移動する過程で、ローラはカムの水平カム面に圧接され、該水平カム面は水平に伸びているので、扉の開閉に対して力が作用することはない。これに対して、扉が全閉位置の近傍から全閉位置まで移動する過程では、ローラがカムの傾斜カム面に圧接されて、扉を全閉位置に向かって押圧する分力が発生する。
【0011】
又、具体的構成において、両開き扉を構成する2枚の引き戸の内、一方の引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置が連繋すると共に、他方の引き戸に前記戸閉力増強装置が連繋している。
該具体的構成によれば、扉を閉じたときに、ロック装置が一方の引き戸を全閉位置にロックすると同時に、戸閉力増強装置が他方の引き戸を全閉位置に向けて押圧しているので、扉の閉止状態を確実に維持することが出来る。
【0012】
更に具体的な構成において、扉と開口部を包囲する開口周縁部との間には、扉が全閉位置に達したときに扉と開口周縁部との間の隙間を塞ぐ遮煙機構が配備されている。
該具体的構成においては、扉が全閉位置の近傍から全閉位置まで移動する過程で、遮煙機構が扉の移動に抵抗力を及ぼすが、この過程で戸閉力増強装置によって戸閉力が増強されるので、扉は完全に閉じられることになる。
【0013】
又、前記遮煙機構は、扉に取り付けられた遮煙部材と、開口周縁部に取り付けられて遮煙部材が摺接するガイド部材とを具え、遮煙部材は、弾性材料からなる本体の表面に表面活性改質処理剤などによるコーティングを施して構成されている。
該具体的構成によれば、遮煙部材の表面に表面活性改質処理剤によるコーティングが施されているので、引き戸の開閉に伴う開口周縁部との摩擦による遮煙部材の摩耗や騒音の発生が効果的に抑制される。
【0014】
【発明の効果】
本発明に係るエレベータの扉装置によれば、扉が全閉位置に接近する過程で大きな抵抗力が発生したとしても、戸閉力の増強によって扉を完全に閉じることが出来る。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1に示す如くエレベータにおいては、乗場から昇降路に通じる開口部を包囲して、上枠91及び左右一対の縦枠92、92が配備されると共に、該開口部には、例えば中央から両側へ開く左右一対の両開きの引き戸9、9が配備されている。又、開口部の下方縁には、敷居93が配備されている。
【0016】
引き戸9の下端部並びに背面上部にはそれぞれ、図8に示す如く遮煙部材95、96が取り付けられている。上方の遮煙部材96は、引き戸9が全閉位置の近傍から全閉位置まで移動する過程で、図9の如く上枠91に突設された当て板94に摺接し、火災発生時の煙を遮断するものである。又、下方の遮煙部材95は、図11の如く敷居93の溝に摺動可能に嵌まっており、火災発生時の煙を遮断するものである。
【0017】
上方の遮煙部材96は合成樹脂製であって、当て板94との摺接部分が図10の如く断面環状に形成され、その表面には、例えばシリコンポリマー等の表面活性改質処理剤によるコーティング96aが施され、これによって当て板94との摩擦による遮煙部材96の摩耗や騒音の発生が抑制されている。
又、下方の遮煙部材95は合成樹脂製であって、敷居93との摺接部分が図12の如く下方に向かって拡開する断面形状に形成され、その表面には、例えばウレタンポリマー等の表面活性改善処理剤によるコーティング95aが施され、これによって敷居93との摩擦による遮煙部材95の摩耗や騒音の発生が抑制されている。この遮煙部材96、95の表面加工については、滑りやすく、耐摩耗性に優れていればよく、この他にも種々の方法を採用することが出来る。又、遮煙部材96、95の両部材に表面加工を施しているが、何れか一方の部材にのみ表面加工を施してもよいことは言うまでもない。
【0018】
乗場から昇降路に通じる開口部の上方位置には、図2に示すヘッダー3が取り付けられている。ここで図13と同一符号のものは図13と同一のものを示しており、ヘッダー3には、レール4が水平に設置され、該レール4には、一対のハンガー1、2がレール4に沿って移動自在に設けられている。又、ヘッダー3には、その両端部に一対のプーリ6、7が配置され、両プーリ6、7にはワイヤー5が巻き付けられ、該ワイヤーの両端は一方のハンガー1に連結されている。両プーリ6、7間に掛け渡されたワイヤー5の中間位置にはグリップ8が固定され、該グリップ8は他方のハンガー2に連結されている。これによって、両ハンガー1、2は互いに逆方向に移動することになる。
尚、両プーリ6、7は図3に示す如く傾斜した姿勢に支持されており、これによってスペースの有効利用が図られている。
【0019】
図2に示す如く、前記他方のハンガー2には、扉を全閉位置でロックするためのロック装置10が配備されている。又、該ハンガー2とヘッダー3との間にはスプリング11が張設され、該スプリング11によって一対のハンガー1、2が常に戸閉方向に付勢されている。
【0020】
又、前記一方のハンガー1には、本発明に係る戸閉力増強装置20が連繋している。該戸閉力増強装置20においては、ヘッダー3にカム21が固定されている。ハンガー1には、ブラケット24を介して、レバー23の中間部が枢支され、該レバー23の基端部にはスプリング25が連結されて、該スプリング25によってレバー23が常に反時計方向に回転付勢されている。レバー23の先端部にはローラ22が回転自在に枢支され、該ローラ22は、スプリング25による付勢力を受けてカム21に圧接されている。
【0021】
上述の如く、一対のハンガー1、2の内、一方のハンガー1に戸閉力増強装置20が設けられ、他方のハンガー2にロック装置10が設けられているので、仮にワイヤー5が火災等により切断された場合であっても、一方のハンガー1に支持されている引き戸は戸閉力増強装置20の動作によって閉じ位置に保持されると共に、他方のハンガー2に支持されている引き戸はロック装置10の動作によって手動では開放することが出来ない。この様にして扉は閉じ状態に保持されるので、安全である。
【0022】
尚、戸閉力増強装置20には、戸閉力増強の大きさ、或いは増強を開始する扉位置を調整するための調整機構を設けることが可能であって、例えば、ローラ22及びレバー23からなるローラ支持機構の位置を上下或いは水平にずらす調整機構や、スプリング25の初期変形量を調節する調整機構などを採用することが出来る。これによって、現場にて容易に戸閉力などを調整することが出来る。
【0023】
図2において、二点鎖線は扉全開状態におけるハンガー1、2及びローラ22の位置を表わし、実線は扉全閉状態におけるハンガー1、2及びローラ22の位置を表わしている。扉全開状態から扉全閉状態に移行する過程で、ローラ22は先ずカム21の水平カム面によって案内される。ここで、ローラ22には、スプリング25によって水平カム面に対して垂直方向の反力が作用し、水平方向の分力は発生しないので、扉は従来装置と同様にスプリング11の付勢を受けて閉じ方向に駆動される。その後、扉全閉状態の直前まで移行すると、ローラ22がカム21の傾斜カム面に圧接されることとなり、該ローラ22には、傾斜カム面に対して垂直方向の反力が作用する。該反力は水平方向の成分を有しているので、水平方向の分力によってハンガー1が閉じ方向に付勢される。従って、扉には、スプリング11の付勢による戸閉力と前記水平方向の分力による戸閉力が同時に加わって、戸閉力が増強されることになる。
【0024】
上記扉装置においては、扉が全閉位置の近傍から全閉位置まで移動する過程で、特に扉全閉状態の直前から上方の遮煙部材96が当て板94との摺接を開始して扉の移動に抵抗力を及ぼすが、戸閉力増強装置20によって戸閉力が抵抗力を上回る大きさに増強されるので、扉は完全に閉じられることになる。
又、エレベータが戸外に設置されて扉の開閉が風の影響を強く受ける場合や、その他の種々の理由により、扉が全閉位置に近づいたときに大きな抵抗力が作用したとしても、戸閉力増強装置20による戸閉力の増強によって、扉は完全に閉じられることになる。
【0025】
図4及び図5は、扉が片側から一方向に開く2枚の引き戸によって構成される片開きの場合の扉装置の構成を表わしている。該構成においては、比較的スペースに余裕があるため、戸閉力増強装置20′の一部が、ロック装置10を具えて高速側の引き戸を吊り下げているハンガー2′に配備されている。即ち、カム21′はヘッダー3に設けられる一方、ローラ22′は、レバー23′とブラケット24′を介してハンガー2′に取り付けられており、レバー23′の他端はスプリング25により付勢されている。
【0026】
該扉装置においても前述の扉装置と同様に、扉全閉状態の直前から扉全閉状態まで移行する過程でローラ22′がカム21′の傾斜カム面に圧接され、該ローラ22′が受ける水平方向の分力によって戸閉力が増強される。
【0027】
又、図6及び図7は、戸閉力増強装置におけるローラ支持装置の他の構成例を表わしている。図6の構成例においては、ローラ32を付勢する部材としてトーションバネ31が採用されており、一端にローラ32を具えたT字状レバー33がトーションバネ31によって時計方向に回転付勢されている。該ローラ32をカム21(21′)に圧接する構成として、省スペースが図られている。
一方、図7に示す構成例においては、上述のレバーを省略し、コイル状のスプリング41によりローラ32′を垂直上方に付勢しており、これによってバネ定数の小さなスプリング41の採用を可能としている。
【0028】
上述の如く、本発明の扉装置によれば、従来装置に対する簡易な構成の追加によって、遮煙機構の装備や周囲の環境条件等に拘わらず、常に扉を確実に全閉位置まで閉じることが出来る。
【0029】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記の実施例は、何れもスプリング11によって扉が閉じ方向に付勢されるタイプの扉装置について述べているが、従来から行なわれている重りを用いて閉じ力を発生させるタイプの扉装置に対して、本発明を実施出来ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】エレベータの扉装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の扉装置を示す部分正面図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】扉装置の他の実施例を示す正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】戸閉力増強装置の他の構成例を示す正面図である。
【図7】戸閉力増強装置の更に他の構成例を示す正面図である。
【図8】遮煙機構を示す断面図である。
【図9】遮煙機構の上部の構成を示す断面図である。
【図10】上部に設置される遮煙部材の断面図である。
【図11】遮煙機構の下部の構成を示す断面図である。
【図12】下部に設置される遮煙部材の断面図である。
【図13】従来の扉装置を示す部分正面図である。
【符号の説明】
1,2,2′ ハンガー
3 ヘッダー
5 ワイヤー
6,6′,7 プーリ
10 ロック装置
11,25 スプリング
20,20′ 戸閉力増強装置
21,21′ カム
22,22′,32,32′ ローラ

Claims (7)

  1. エレベータの乗場から昇降路に通じる開口部を開閉する扉を具え、該扉は、前記開口部にて互いに対向し開口部を中央から両側へ開く左右一対の引き戸を具え、該扉には、扉が全閉位置の近傍まで閉じられたときに扉を全閉位置に向けて押圧する戸閉力増強装置が連繋している扉装置において、
    前記一対の引き戸の内、一方の引き戸に、該引き戸を全閉位置でロックするロック装置が連繋すると共に、他方の引き戸に前記戸閉力増強装置が連繋していることを特徴とするエレベータの扉装置。
  2. 前記開口部の上方に取り付けられたヘッダーには、レールが水平に設置され、該レールにはハンガーがレールに沿って移動自在に設けられ、該ハンガーに前記扉が吊り下げられると共に、前記扉の全開位置から全閉位置の全域に亘って付勢装置により扉が閉じ方向に付勢されている請求項1に記載の扉装置。
  3. 前記付勢装置は、ヘッダーに設置されたスプリングである請求項2に記載の扉装置。
  4. 前記戸閉力増強装置は、ヘッダーに設けられたカムと、ハンガーに設けられたローラと、該ローラをカムに押し付ける付勢部材とによって構成され、前記カムは、水平に伸びる水平カム面と、該水平カム面に連続して斜めに伸びる傾斜カム面とを具え、扉が全閉位置の近傍から全閉位置まで移動する過程で前記ローラが前記カムの傾斜カム面に圧接されて、前記他方の引き戸を全閉位置に向かって押圧する力が発生する請求項1乃至請求項3の何れかに記載の扉装置。
  5. 前記扉と前記開口部を包囲する開口周縁部との間には、扉が全閉位置に達したときに扉と開口周縁部との間の隙間を塞ぐ遮煙機構が配備されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の扉装置。
  6. 前記遮煙機構は、扉に取り付けられた遮煙部材と、前記開口周縁部に取り付けられて遮煙部材が摺接すべきガイド部材とを具え、遮煙部材は、弾性材料からなる本体の表面に表面活性改質処理剤によるコーティングを施して構成されている請求項5に記載の扉装置。
  7. 前記遮煙機構は、扉に取り付けられた遮煙部材と、前記開口周縁部に取り付けられて遮煙部材が摺接すべきガイド部材とを具え、前記戸閉力増強装置は、前記遮煙部材が前記ガイド部材との摺接を開始する位置付近から全閉位置に至るまで前記他方の引き戸を戸閉方向に押圧する請求項5に記載のエレベータの扉装置。
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