JP4298100B2 - 被記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いた記録に好適な被記録媒体に関し、濃淡インク、さらに、3種類以上の濃度が異なるインクセットでの印字、ベタ画像の多い印字、顔料/染料混合系インクでの印字、顔料インクと染料インクの併用印字等を高速で行ったときに、画像濃度が高く、色調が鮮明であり、階調数の多い、濃度による色味変化がなく、ビーディングの発生を抑え、かつインク吸収能力に優れたインクジェット記録に好適な被記録媒体ならびに製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて、紙等の被記録媒体に付着させ、画像、文字等の記録を行うものである。高速低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像、定着が不要等の特徴があり、各種画像の記録装置として情報機器をはじめ各種の用途において急速に普及している。さらに、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較して遜色のない記録を得ることも可能であり、作成部数が少ない場合には通常の多色印刷や印画によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
記録の高速化、高精細化、フルカラー化等の記録特性の向上に伴って記録装置、記録方法の改良が行われてきたが、被記録媒体に対しても高度な特性が要求されるようになってきた。
【0004】
かかる要求を解決するために、従来から多種多様の被記録媒体の形態が提案されている。
【0005】
例えば、特開昭52−53012号公報には低サイズの原紙に表面加工用塗料を浸潤させるインクジェット用紙が開示されている。特開昭53−49113号公報には尿素−ホルマリン樹脂粉末を内添したシートに水溶性高分子を含浸させたインクジェット用紙が開示されている。特開昭56−5830号公報には支持体表面にインク吸収性の塗工層を設けたインクジェット記録用紙が開示され、同55−51583公報には被覆層中の顔料として非晶質シリカを用いた例が開示され、同55−144172号公報には水性インクの着色成分を吸着する顔料塗布層を有する受像シートが、同55−146786号公報には水溶性高分子塗工層を用いた例が開示されている。
【0006】
さらに、インクの吸収性及びシート表面光沢性等を改善するために以下のような記録媒体が提案されている。米国特許明細書第4879166号、同5104730号、特開平2−276670号、同3−215082号、同3−281383号、及び本願発明者らの特開平7−089221、同7−172038、同7−232473、同7−232474、同7−232475、同8−132731、同8−174993、同9−066664、同9−076628、同9−086035、同9−099627では、擬ベーマイト等のアルミナ水和物を用いたインク受容層を有する記録シートが提案されている。
【0007】
米国特許4879166号、欧州特許298424号、特開平1−97678号、同6−48016号、同6−55829号では特定の吸着能を持つアルミナ水和物とシリカの併用された被記録媒体が提案されている。
【0008】
また、画質、光沢、表面の耐傷性等の向上を図るために、以下のような2層構成の記録媒体が提案されている。
【0009】
▲1▼米国特許5104730号、欧州特許407720号、特開平2−276671号、同3−281383号、同4−115984号、同4−115985号では多孔質アルミナ層の上に多孔質微粉末シリカ層が積層された構成の被記録媒体が提案されている。
【0010】
▲2▼特開平6−18131号では基材上に第1のインク受容層を形成し、その上に無機微粒子による実質的に有機高分子接着剤を含有しない第2のインク受容層を積層した記録媒体が提案されている。
【0011】
▲3▼米国特許5463178号、欧州特許634287号、特開平7−76162号では多孔質アルミナ水和物層の上にシリカゲルからなる層を積層した構成の被記録媒体が提案されている。
【0012】
▲4▼特開平10−166715号に支持体上に擬ベーマイト状アルミナ水和物層からなるインク受容層、非球状のシリカ粒子を含んだシリカ層を順次設けた被記録媒体が提案されている。
【0013】
▲5▼特開平7−089220、同7−101142、同7−117335にはそれぞれインク受容層を2層構成にして、上層をコロイダルシリカを主成分とした光沢発現層にした形態の被記録媒体が提案されている。
【0014】
▲6▼特開平9−150571、同9−175000、同9−183267、同9−286165、同10−71764にはインク受容層を2層構成にして、表面層の細孔分布や、シリカ粒子の平均粒子直径を特定範囲内にしたものや、シリカとアルミナゾルの併用、シリカとシリカアルミナの併用等の形態の被記録媒体が提案されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示された思想はインク吸収性、解像度、画像濃度、色彩性、色再現性、透明性、光沢度等の被記録媒体のそれぞれ特性の改良に関するものであるが、かかる媒体であっても、最近の記録装置の進歩によって銀塩写真に匹敵する画質を高速印字することが達成されてきたことに伴い、問題点が発生している。例えば米国特許明細書第4879166号や米国特許4879166号に開示されているアルミナ水和物やアルミナ水和物とシリカの併用された被記録媒体は画質や光沢の点で優れているが、表面が傷つき易いため、プリンターの搬送方法によっては搬送傷が生じ易い。また、高温多湿における環境下でインク吸収性は低下する傾向にあり、そういった環境での多重保管の際にもシート同士貼り付きが生じる等の問題があった。
【0016】
また、インク吸収性や表面特性等を向上させるためにインク受容層を2層構成にした被記録媒体が提案されているが、これらの被記録媒体も以下の点で十分とは言えない。
【0017】
▲1▼米国特許5104730号、欧州特許407720号、特開平2−276671号、同3−281383号、同4−115984号、同4−115985号は多孔質アルミナ層の上に多孔質微粉末シリカ層が積層された構成の被記録媒体である。印字されたインクの色材成分を多孔質アルミナ層で吸着し、シリカ層はインクの溶媒成分の吸収を行うという思想である。この構成では機能分離を行っているためにインク吸収、発色ともに良好であるが、インクの溶媒吸収に用いるシリカ層は多孔質の微粉末シリカを用いるためにシリカ層が白濁するという問題点があった。
【0018】
▲2▼特開平6−18131号では、インク受容層を2層構成にして、表面層を無機微粒子による実質的に有機高分子樹脂接着剤を含有しない層とするため、インクの接触により膨潤あるいは溶解がインクと樹脂の界面で生じることもなく、樹脂部分が印字により変形することもないが、有機高分子樹脂接着剤がないため、十分な膜強度が確保できず、プリンターの搬送時やハンドリングにおいて膜の剥がれや傷等が生じるおそれがある。
【0019】
▲3▼米国特許5463178号、欧州特許634287号、特開平7−76162号では、表面層にシリカゲル層を形成するが、シリカゲル層内ではシリカの一次粒子が二次粒子を形成せずに規則的に配列するために、シリカ粒子の充填が密となり、溶媒の連通を促進する空隙は形成されないために、擬ベーマイト多孔質層上にシリカゲル層を形成しても、吸収能の向上はそれほど期待できない。
【0020】
▲4▼特開平10−166715号では、表面層に非球状のシリカ粒子を含んだシリカ層を設けるため、ミクロ的には粒子の充填が粗になるためインクの浸透は向上するが、球状のシリカを用いる場合比べ透明性の低下や、クラックの発生のおそれがある。
【0021】
▲5▼特開平7−089220、同7−101142、同7−117335では、インク受容層を2層構成にし、上層をコロイダルシリカを主成分とした光沢発現層として形成しているが、この方法では確かにインク受容層の表面光沢は高くなるが、キャスト成型を必要とするため、吸収能は減少傾向にあり、逆に向上させることは困難である。すなわち、併用する高分子ラテックスのガラス転移温度の調整やコロイダルシリカ複合体エマルジョンの利用、コロイダルシリカの平均粒子径を300nm以下とする等の工夫がなされているが、いずれもキャスト等を用いるために、キャスト条件等によっては多孔性の減少を軽微にすることはできるが、インキの吸収の低下をなくすことは困難である。
【0022】
▲6▼特開平9−150571、同9−175000、同9−183267、同9−286165、同10−71764ではインク受容層を2層構成にして、表面層の細孔分布や、シリカ粒子の平均粒子直径を特定範囲内にすることにより、インク吸収と透明性を両立させようという思想である。しかしながらシリカ層のシリカ粒子の粒子径範囲が広いため、粒子径が大きい場合、二次粒子を形成している場合には、インク受容層の透明性が十分でなく、接着剤に用いる樹脂が水溶性樹脂である場合、十分な多孔層を形成することができず、インク吸収性が十分でない等の問題が生じる。すなわち、透明性と吸収性を両立させる多孔性を形成するには不十分なものであった。
【0023】
本発明は、上記の問題点を解決する目的でなされたものであり、3種類以上の濃度が異なるインクセットでの印字、ベタ画像の多い印字、顔料/染料混合系インクでの印字、顔料インクと染料インクの併用印字、等を高速で行ったときに、画像濃度が高く、色調が鮮明であり、階調数の多い、濃度による色味変化がなく、ビーディングの発生を抑え、かつインク吸収能力に優れており、さらには、表面の耐傷性、透明性を同時に付加した被記録媒体及び該被記録媒体を用いる画像形成方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の被記録媒体は、基材上に、擬べーマイト構造を有するアルミナ水和物及びバインダーを含有する多孔質下層を形成する工程と、前記多孔質下層に分散液を塗布し、塗布した分散液を乾燥して多孔質上層を形成する工程と、を有する製造方法により製造された被記録媒体であって、前記多孔質下層は、細孔容積が8cc/m 2 以上であり、前記分散液は、粒子直径分布のピークが1〜100nmの球状コロイダルシリカと、熱可塑性樹脂粒子と、分散媒として水及びアルコールとを含有し、前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度は、10℃以上150℃以下であり、前記分散液の乾燥は、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度以上で行い、前記多孔質上層は、球状シリカ粒子及び熱可塑性樹脂粒子を含む凝集体と、空隙とで構成され、前記空隙は前記凝集体の間に存在することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の被記録媒体の製造方法は、基材上に、擬べーマイト構造を有するアルミナ水和物及びバインダーを含有する多孔質下層を形成する工程と、前記多孔質下層に分散液を塗布し、塗布した分散液を乾燥して多孔質上層を形成する工程と、を有する被記録媒体の製造方法であって、前記分散液は、粒子直径分布のピークが1〜100nmの球状コロイダルシリカと、熱可塑性樹脂粒子と、分散媒として水及びアルコールとを含有し、前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度は、10℃以上150℃以下であり、前記分散液の乾燥は、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度以上で行うことを特徴とする。
【0026】
本発明は、表面性、インク吸収性の改善が可能であり、かつインクジェット記録に好適な被記録媒体ならびに製造方法である。本発明は、本発明者らの実験により得た知見をさらに詳細に検討を加えて完成したものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照してより詳細に説明する。
【0028】
図1〜図3に本発明の記録物の一例を示す。図1中の101は基材、102は多孔質下層、103は多孔質上層を示す。また図2は図1の多孔質下層及び上層部分を拡大した図であり、202は多孔質下層、203は多孔質上層、204は球状シリカ粒子、205はバインダー、206は空隙を示す。図3は同様に図1の部分拡大図であり、2種類の大小の球状シリカ粒子を含んでいる場合の図である。302は多孔質下層、303は多孔質上層、304は粒子直径の大きな球状シリカ粒子、305はバインダー、306は空隙、307は粒子直径の小さな球状シリカ粒子を示す。
【0029】
本発明において、多孔質上層103は多孔質下層102上に形成され、球状シリカ粒子とバインダーからなる凝集体と空隙を内部に持つ層であるために、この空隙がインクの通過を担い、インクの吸収能が良好で、かつ、画像形成に好適な被記録媒体が得られる。さらに、2層構成であるために、多孔質下層102をインク吸収及び定着層、多孔質上層103をインクの吸収及び透過、膜の硬さや光沢等の表面性に制御といった機能分離が可能となり、インクジェット等の記録画像形成に適した被記録媒体が得られる。
【0030】
ここにおける空隙とは、多孔性シリカを用いた場合のようにシリカ内に内在している空隙や、一次粒子のシリカ同士を凝集結合させて、二次粒子として形成した空隙とは異なり、十分な大きさの空隙であり、下層本来の持つインク吸収能の確保のみならず、さらなる増加も可能とさせるものである。すなわちここでは、球状シリカ粒子が局在化されたその間にバインダーを介在させ、十分に細孔径の大きい空隙を形成するためにインク着弾後、直ちにこの空隙を介して、インク成分は吸収される。
【0031】
本発明において、多孔質上層は球状シリカ粒子とバインダーによる凝集体と空隙によって形成されているが、本発明のような空隙を持った多孔質上層を得るためには、球状シリカ粒子及びバインダーの選択、さらには形成するために用いる塗工分散液に含まれる溶媒分の種類や含有量等の選択、さらには乾燥条件等の製造上の工夫が必要であり、従来の方法では得られるものではない。
【0032】
本発明に用いる球状シリカ粒子は、主として粒子直径1〜100nmの球状シリカ粒子が好ましい。この範囲よりも粒子直径が小さい場合には多孔質上層にある細孔が潰れてしまい、被記録媒体全体の細孔容積や細孔半径が低下するために、インクの浸透性が低下して記録時にインクの溢れが生じ、滲み(一定の面積にベタ印字したときに、染料等の色材により着色される部分が印字した面積よりも広く(大きく)なる)、ブリーディング(異なる色インクの界面で滲み、混色が生じる)、ビーディング(ベタ印字部で発生するインク滴同志の凝集による粒状の濃度むらが現れる現象)等が発生し易くなる。また、粒子直径がこの範囲より小さい球状シリカが存在すると球状シリカ粒子同士が凝集し易くなるために、多孔質上層に部分的、局所的に凝集部分が生じて、その結果クラックが発生し易くなる。一方、この範囲よりも粒子直径が大きくなる場合には、多孔質上層の透明性が低下して、記録後の画像が白もやがかかったようにぼけたり、解像度が低下してシャープネスが低下したりする。さらにこれらの球状シリカ粒子のうち85%以上が粒子直径1〜100nmの範囲のものであることにより上記効果が発現可能となる。
【0033】
また、本発明においてシリカ粒子が球状であることは重要である。すなわち、多孔質上層はシリカ粒子とバインダーによる凝集体と空隙によって形成されており、シリカ粒子とバインダーによる凝集体はこの層中でシリカ粒子とバインダーが結合して形成されたものである。シリカ粒子を球形にすることにより、シリカ粒子の比表面積を大きくすることができ、シリカ粒子とバインダーの接触する確率が高まる。そのため、バインダーとシリカ粒子の結合性はより高まり、強固に結合できる。また、空隙を層内にある程度局在せずに形成するためにはシリカ粒子は対称性が高い形状であることが必要であることからも球状であることが好適であり、さらには真球状に近いことが望ましい。このとき、シリカ粒子の真球度が60〜100%のものを用いると好適である。
【0034】
球状シリカ粒子の粒子直径は上記の範囲、すなわち、主として1〜100nmにあることにより、球形シリカ粒子とバインダーの凝集体、及び空隙からなる多孔質上層の形成は可能である。より好ましくは5〜90nmの範囲である。さらに、上記の範囲内において、粒子直径のばらつきの大きい様々な粒子直径の球状シリカ粒子を用いるよりも、ある程度、粒子直径のばらつきの少ないまとまった大きさの球状シリカ粒子を用いることにより、膜質の均一性の向上等には好適である。特に、単一のピークの粒子直径のシリカ粒子から多孔質上層を形成する場合には20〜80nmの範囲内のシリカ粒子が含まれることにより、透明性と吸収性の両立性を達成できる空隙を形成できる。また、30〜70nmの範囲内のシリカ粒子が含まれている場合には吸収性の向上と適度な膜強度の確保が維持できるためさらに好適である。
【0035】
また、粒子直径の範囲内で2種類以上の大小の球状シリカ粒子を含むことにより、膜質の強固な多孔質上層が形成される。これは、球状シリカ粒子とバインダーの凝集体の形成の際に、粒子直径の小さい球状シリカ粒子はバインダー塊の内部に取り込まれ、粒子直径の大きい球状シリカ粒子はその外部に位置する構造が形成できるため、バインダー塊の部分の強度が高くなるためである。この際、粒子直径の大小は、十分な差があると効果的であり、10〜100nm及び、1〜10nm未満の範囲の粒子直径の球状シリカ粒子を含むと好適である。この際、10〜100nmの範囲の粒子直径の球状シリカにおいて、上記単一ピークの範囲の場合に好適なシリカ粒子と同様のものが含まれると好適である。上記の2種の大小の粒子径の球状シリカが多孔質上層に存在する場合、その直径比は70:30〜95:5の範囲が好ましい。また、空隙の大きさや、空隙の数、空隙の層内における分布性等を調節するために3種以上の大小の球状シリカ粒子を含んでもよい。なお、本発明において多孔質上層中の構造や層中に存在する球状シリカ粒子の粒子直径は、多孔質上層の断面を図4に示したようにミクロトームで切断して、電子顕微鏡、レーザー顕微鏡等で観察することができる。
【0036】
本発明に用いる基材101としては、従来より知られる各種の部材が使用できる。具体的には、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、ポリエチレンフィルム等を用いたレジンコート紙等の紙類や熱可塑性フィルムが挙げられる。熱可塑性フィルムの場合にはポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリスチレン等が挙げられ、写真調の画像を得るために白色で隠蔽性の高いものが好適でアルミナ水和物やチタンホワイト等の顔料の充填または微細な発泡による不透明化したシートを用いることができる。また、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、レントゲンフィルム、電飾フィルム等、光を透過させて用いるシートには透明性の高い基材を用いる。具体的には光透過率が50%以上であり、好ましくは80%以上である。また、基材に各種の色顔料等を含有させて半透明や色付きのものとして画像全体の色調を調節することもできる。
【0037】
基材の表面には、多孔質下層との接着性を良好とするために、コロナ処理等の表面処理を行ったり、易接着層を下引き層として設けてもよい。さらに、カール防止用として基材の裏面あるいは、所定の部位に樹脂層や顔料層等のカール防止層を設けることもできる。
【0038】
基材の厚みについても特に限定はないが、5〜500μmのものが好ましい。基材の厚みは目的に応じて適宜選択される。
【0039】
本発明の多孔質下層102はベーマイト構造を有するアルミナ水和物とバインダーからなる層として形成される。多孔質下層は本質的にインクジェット記録によってインクが飛翔、着弾された後、インクの溶媒を吸収し、染料等の色材を定着する機能を有するものである。本発明において、インク受容層として機能する多孔質下層は高い吸収能を有し、滲み、溢れ等を低減し、写真調の画像を得るためには、均一な膜質を形成することが必要となる。さらに、本発明では多孔質上層103を形成する際に、ベーマイト構造を有するアルミナ及びバインダーからなる多孔質下層が持つ多孔質の特殊な微細構造が最も適している。これは、透明性が高いこと、更にこの緻密な微細構造を持った下層の上に本発明の上層を設けると、アルコールおよび水の浸透が瞬時に行われ、乾燥時にアルコールと水の放出がバランスよく行われるために、本発明のような上層の空隙構造が好ましいものとなる。更に、多孔質形成後のインク吸収能に関しても高いために好ましい。
【0040】
多孔質下層の吸収量を十分に確保するためには多孔質下層としての細孔直径を調整する必要がある。このとき、平均細孔半径は2.0〜20.0nmの範囲のものが好ましい。この範囲内であれば、インク吸収速度と染料の定着速度の両者を速く行うことができる。
【0041】
また、平均10nm以下とすることにより、光散乱が抑制され、透明性が確保でき、印字した場合に形成された画像が白っぽくなる現象を極力低減できる。なお、細孔径分布の測定は窒素吸着脱離法または水銀圧入法による。
【0042】
さらに、吸収量を調整するために多孔質下層の全細孔容積は0.1〜1.0cc/gの範囲が望ましい。さらに好ましい範囲は0.4〜0.6cc/gである。多孔質下層の細孔容積が上記範囲より大きい場合には多孔質下層形成時にひび割れ、粉落ちが発生し、上記範囲より小さい場合にはインクの吸収が悪くなる。また、多孔質下層の面積単位の細孔容積は8cc/m2 以上であることが望ましい。上記の範囲以下では特に多色印字を行った場合に多孔質下層で担うインクの吸収能が不十分であり、インクが溢れて画像に滲みが発生する。これらの細孔構造についてさらに詳しくは、その目的によって、特公平7−2430号に記載されている擬ベーマイトからなるインク受容層の半径10nm〜100nmを有する細孔の全容積が0.1cc/g以下である被記録媒体、特許2714352号に記載されているように、インク受容層の平均細孔半径が2.0〜20.0nmで細孔半径分布の半値幅が2.0〜15.0nmである被記録媒体、特許2714350号に記載されているように、半径10.0nm以下と、半径10.0〜20.0nmの範囲にそれぞれ極大を持つ被記録媒体、特開平5−323037号に記載されているインク受容層の平均細孔径が2〜8nmで厚さが5〜60μmの下層と平均細孔径が4〜15nmで厚さが2〜30μmの上層の2層構成の擬ベーマイト層からなる被記録媒体、特開平9−66664号に記載されているインク受容層が内部に空洞を有し、該空洞がこれより小さい半径の細孔を通してインク受容層表面に連通している被記録媒体として開示されているが、これらの細孔構造の多孔質層を本発明の多孔質下層102も用いることにより、それぞれ、インクの選択幅を広げることができる。透明性の向上、インク吸収性の向上、滲み、かすれ防止、多色印字での吸収性の向上等の効果が得られ、さらに、多孔質上層103の形成により、上記の効果の向上、さらなる効果の付与が可能となる。
【0043】
前記アルミナ水和物はカチオン性であり、正電荷を持っているためインク中の染料の定着がよく、高光沢、発色のよい画像が得られ、また、他顔料を用いたインク受容層に比べ、低ヘイズで透明性も高くなり、インク受容層に用いる顔料としてはより好ましい。
【0044】
本発明に用いられるアルミナ水和物としては、X線回折法でベーマイト構造を示すアルミナ水和物(ピークの回折角度2θが14〜15°に現れる)が、染料の吸着性とインク吸収性及び透明性が良好なので最も好ましい。アルミナ水和物は、下記の一般式により表されるものである。
【0045】
Al2 O3 -n(OH)2n−mH2 O
式中、nは0,1,2,または3の整数のうちいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。mとnは、同時に0にならない。mH2 Oは多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼するとmは0の値に達することがあり得る。
【0046】
本発明の実施に好適なベーマイト構造を有するアルミナ水和物の結晶はその(020)面が巨大平面を形成する層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示す。ベーマイト構造としては、完全ベーマイトの他に、擬ベーマイトと称する過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造をとることもできる。この擬ベーマイト構造のX線回折図は完全ベーマイトよりもブロードな回折ピークを示す。完全べーマイトと擬ベーマイトは明確に区別できるものではないので、本発明では特に断わらない限り、両者を含めて擬べーマイト構造を示すアルミナ水和物という。また、シリカを含有してもべーマイト構造を保っていれば、(ベーマイトの層間にシリカが取り込まれた構造になっている可能性がると推定される)本発明においては、擬べーマイト構造を示すアルミナ水和物に含める。
【0047】
本発明に用いるベーマイト構造を有するアルミナ水和物の製造方法としては、特に限定されないが、アルミナ水和物を製造することが可能な方法、例えばバイヤー法、明ばん熱分解法等のいずれかの方法も採用することができる。好ましくは、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解する方法が挙げられる。例えば炭素数5以上のアルコキシドであり、さらに炭素数12〜22のアルコキシドを用いると、後述するようなアルコール分の除去、及びベーマイト構造を有するアルミナ水和物の形状制御が容易になるために好ましい。上記の方法には、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較して、各種イオン等の不純物が混入しにくいという利点がある。さらに、長鎖のアルミニウムアルコキシドは、加水分解後のアルコールを除去し易いため、アルミニウムイソプロキシド等の短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行うことができる。
【0048】
なお、本発明において、ベーマイト構造のアルミナ水和物の形状は、アルミナ水和物を水、アルコール等に分散させてコロジオン膜上に滴下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察して求めることができる。アルミナ水和物の中で擬ベーマイトには文献(Rocck J., et al, Applied Catalysis. 74巻、29〜36頁、1991年)に記載されたように、繊毛状とそれ以外の形状があることが一般的に知られている。
【0049】
本発明において繊毛状または平板形状のいずれの形状のアルミナ水和物でも用いることができる。アルミナ水和物の形状(粒子形、粒子径、アスペクト比)はアルミナ水和物をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴下して測定用試料を作り、この試料を透過型電子顕微鏡で観察を行うことによって測定することができる。さらに、平板状の形状のほうが針状または毛状束(繊毛形状)よりも水への分散性がよく、これを用いてインク受容層を形成すると、アルミナ水和物粒子の配向がランダムになるために、細孔容積が大きく、かつ細孔径分布が幅広くなるのでより好ましい。ここで毛状束形状とは針状のアルミナ水和物が側面同士を接して髪の毛の束のように集まった状態をいう。
【0050】
前記アルミナ水和物は、製造過程において細孔物性の調整がなされるが、前記インク受容層のBET比表面積、細孔容積を満たすためには、細孔容積が0.1〜1.0ml/gであるアルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物の細孔容積が上記範囲外では多孔質下層の細孔容積を前記規定範囲内にすることが困難になる。また、上記アルミナ水和物の粒子径としては、平板形状ではアスペクト比3〜10の範囲で、平均粒子直径1〜50nmのものが好ましい。ここで平板形状のアスペクト比は、粒子の厚さに対する直径の比を示し特公平5−16015号に定義されている方法で求めることができる。ここで、この範囲よりも小さな粒径のものを用いた場合、クラックが発生し易くなる傾向があり、この範囲よりも大きな粒径のものを用いた場合には光の散乱により、ヘイズが高くなり画像が全体に白っぽくなる場合がある。
【0051】
BET比表面積については、40〜500m2 /gであるアルミナ水和物を用いることが好ましい。アルミナ水和物のBET比表面積が上記範囲外では、インク受容層の比表面積を前記規定範囲にすることが困難になる。ここで、前記BET比表面積及び、細孔容積は、試料を24時間、120℃で脱気処理した後、窒素吸着脱離法により求めることができる。
【0052】
また、本発明では、アルミナ水和物にその他の添加物を加えて用いることができる。添加物としては、各種金属の酸化物、水酸化物、2価以上の金属の塩、またはハロゲン化物、カチオン性有機物質等の中から必要に応じて自由に選択して用いることができる。
【0053】
金属酸化物としては、シリカ、シリカアルミナ、ボリア、シリカボリア、マグネシア、シリカマグネシア、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛等の酸化物、水酸化物、2価以上の金属塩としては、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の塩、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化物、カオリン、タルク等が好ましい。カチオン性有機物質としては4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン等が好ましい。添加物の添加量としては、顔料の20重量%以下がよい。
【0054】
上記顔料と組み合わせて使用するバインダーとしては、水溶性、水分散性、アルコール等の溶剤分散性の高分子物質が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)またはその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)、澱粉またはその変性体(酸化、エーテル化)、ゼラチンまたはその変性体、カゼインまたはその変性体、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテッックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸またはその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が好ましい。これらの高分子物質の中ではPVAが吸水性や透明性の点で幅広く使われている。また、特開平8−325992号や特開平10−94754号に記載されているように樹脂エマルジョンを用いることもできる。これらのバインダーは、単独であるいは複数種混合して用いることができる。
【0055】
多孔質下層のBET比表面積、細孔容積が前記の範囲を満たす限りにおいては、前記顔料とバインダーの混合比は重量比で1:1〜30:1、好ましくは5:1〜20:1の間で任意に選択できる。バインダーの量が上記範囲よりも少ない場合はインク受容層の機械的強度が不足して、クラックや粉落ちが発生し、上記範囲よりも多い場合は細孔容積が少なくなってインクの吸収が悪くなる。
【0056】
上記アルミナとバインダーを用いて塗工液が得られ、これを基材上に塗膜形成することにより、多孔質下層102を形成することができる。
【0057】
塗工液には、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、抑泡剤、剥離剤、防ばい剤等を添加することができる。
【0058】
塗工液の基材上への塗工は、例えば、ブレードコート方式、エアナイフコート方式、ロールコート方式、フラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー方式、カーテンコート方式、スプレー方式等を用いた方法により行うことができる。
【0059】
塗工液の基材上への塗工量は所望する用途等に応じて、適宜選択すればよいが、塗工層が薄すぎるとインクを十分に吸収できず、多孔質上層への滲みを生じてしまうため好ましくない。逆に厚すぎると多孔質下層の強度が低下したり、塗工及び乾燥時に塗膜欠陥を生じるため、部分的に十分なインク吸収量が確保できない部分が生じる。また、透明性が減少して記録物の透明性や画像の鮮明度が損なわれるおそれがあり、好ましくない。そのため、吸収量の確保と全体的な膜としての強度を保つために多孔質下層の好ましい厚さは5〜50μmである。
【0060】
基材上に設けられた塗工層上に、必要に応じた加熱による乾燥処理を行うことで多孔質下層が得られる。乾燥処理により、水性媒体(分散媒)が蒸発するとともに、アルミナ水和物粒子とバインダーの架橋または融着による結合により造膜が起きる。乾燥処理の条件は用いる塗工液の組成に応じて適宜決定できる。乾燥は一般に用いられる熱風乾燥炉、赤外線乾燥炉等が単独でまたは組み合わせで行われる。乾燥の度合いとしては完全に溶媒分を乾燥させることが望ましいが、上層を形成時の乾燥を考慮して半乾燥状態にして、上層の乾燥時に乾燥を完了してもよい。
【0061】
本発明における多孔質上層103は、着弾されたインクの溶媒分の吸収、透過、インク色材の一部の定着、また、被記録媒体の表面性を決定するものである。一般的には無機顔料及びバインダーからなる多孔質無機顔料層が2層構成の被記録媒体の場合には、インクの吸収能が高いために好適であるが、近年では写真調の高画質化の要求が高いために、特殊なインクや、インク量の多い方法を用いる記録装置の普及により、従来より特に吸収の良好な吸収量をもった被記録媒体が必要となっている。本発明では球状シリカ粒子とバインダーから形成される特殊構造を得ることにより、インクの高速、高吸収容量に最適な空隙配置をもった多孔質上層を形成するに至った。
【0062】
図5に本発明の被記録媒体の多孔質上層の塗工、乾燥、形成過程を示す。すなわち塗工液塗布(図5−a)、溶媒の多孔質下層への浸透(図5−b)、塗工液の弱凝集(図5−c)、塗膜中のアルコール分の揮発(図5−d)、塗膜表面の樹脂エマルジョンの溶融開始、次に内部の樹脂エマルジョンの溶融開始(図5−e)、水分の揮発(図5−f)、塗膜中の樹脂エマルジョンの溶融の完了(図5−g)。
【0063】
ここで、上記のような塗膜形成に至るには幾つかの条件が必要となり、その条件と効果は以下のように説明される。まず、塗膜中に存在する球状シリカ粒子は上述したように、主として粒子直径が1〜100nmの範囲である必要がある。これは多孔質上層を形成時に球状シリカ粒子同士を凝集させず存在させ、空隙を吸収性及び透明性を阻害しない大きさに調整するためである。さらにバインダーは従来のようなPVAのような水溶性樹脂、更にはアルコール可溶性樹脂のように、水やアルコール等の溶媒に完全に溶解している場合とは異なり、水やアルコールに分散しているエマルジョンタイプの熱可塑性樹脂粒子を用いている。このため、樹脂粒子が徐々に溶融結合することによりバインダーとしての機能を果たすために、空隙は塗工及び乾燥工程を経てつぶれることなく形成されることが可能となる。
【0064】
また、多孔質上層形成の際に用いる塗工分散液の中に溶媒分として水とアルコールが共に含有されていて、乾燥時に揮発性の違いからアルコールが先に乾燥除去され、その後に水が乾燥除去されるために、表面付近は先に乾燥され、比較的に緻密な膜が形成される。次に内部に残った水が徐々に乾燥されるために、後まで層中に水分が介在していた部分は、水が除去された後に空隙として形成される。しかも、バインダーよりも親水性の高い球状シリカ粒子の周辺に水は介在し易いために、すなわち、シリカ粒子同士で取り囲まれた部分に水は介在し易く、その部分の水がまとまって除去されることにより、空隙は主としてシリカとバインダーからなる凝集体の間に存在し、凝集体内部には存在しない状態で形成される。また、塗工液中にアルコールを含有することによって塗工膜欠陥の防止も可能となる。すなわち、多孔質下層の上に塗工液を塗布する際に水のみによる分散液では、水の細孔への浸透が遅いために、塗膜を乾燥中に、多孔質下層の細孔からの気泡が上層の塗膜中に浮き上がり塗膜欠陥が生じてしまうが、本発明ではアルコールが含有された分散液を用いるために、多孔質下層の細孔に溶媒分の浸透が速く行われ、気泡の発生は抑えられ塗膜欠陥を防止できる。そのため、画像形成時にもハジキというベタ印字した部分で色材が定着しない部分が生じる画像欠陥等も低減できる。
【0065】
上記のような、シリカとバインダーによる凝集体と空隙が存在する多孔質上層を形成するために、本発明に用いられる球状シリカ粒子としては、前述したように分散媒に均一分散されたコロイド状のコロイダルシリカ粒子が好適である。通常、このコロイダルシリカは無水珪酸(シリカ)の超微粒子を水またはアルコールに安定に分散させた分散液である。本発明においてはコロイダルシルカは水及びアルコールの混合溶媒にも分散可能であることが必要である。
【0066】
コロイダルシリカのイオン性については、アニオン性またはカチオン性コロイダルシリカが使用可能であるが、本発明においては、着弾したインク成分は通常アニオン性なので、本発明でアニオン性コロイダルシリカを用いた場合には、多孔質上層中に形成された空隙を介して、インク成分は通過、吸収される。すなわち、インク中の色素成分、溶媒ともに多孔質下層まで通過していき、多孔質下層にて定着される。カチオン性コロイダルシリカを用いた場合には、多孔質上層もインクの色素成分の定着に関与し、インク吸収が多少遅れて溢れ気味となった場合にもインクの色素成分は定着されている。アニオン性コロイダルシリカを用いる場合には酸性コロイダルシリカがアルコールに対する分散性が良好であり、好ましく使用され、透明性の高い多孔質上層が形成される。
【0067】
コロイダルシリカの粒子直径に関しては、平均粒子直径1〜100nmのものが好ましい。特に粒子直径分布のピークが1〜100nmのものを用い、1〜100nm範囲から外れるものが含まれる場合には公知の方法を用いて分粒してこの範囲のものを選択して用いる。球状シリカ粒子のうち85%以上が粒子直径1〜100nmの範囲に含まれることが望ましい。このとき、この範囲より小さいものを用いた場合には、多孔質下層を塗工形成した際にシリカ粒子の比表面積が大きいためシリカ粒子同士が接着結合して、シリカ粒子同士の凝集体を形成してしまい、さらにはシリカ粒子のほとんどがバインダー塊の中に取り込まれた形で形成されるために、空孔や細孔の少ない平坦な膜になってしまい、本発明のような空隙は得られ難い。また、この範囲より大きいものを用いた場合には、空隙が大きすぎるのみならず、バインダーと球状シリカ粒子の接着が不十分になる。そのため、透明性の低下、十分に強固な膜が形成できない等の問題が生じる。好ましくは5〜90nmの範囲のものを用いる。さらに、特に、単一のピークの粒子直径球状コロイダルシリカ粒子を用いる場合には20〜80nmの範囲内の球状コリダルシリカ粒子を用いることにより、透明性と吸収性の両立を達成できる空隙を形成できる。また、30〜70nmの範囲内の球状コロイダルシリカ粒子を用いる場合には吸収性を向上させつつ、適度な膜強度の確保が維持できるためさらに好適である。
【0068】
また、粒子直径の異なる2種類以上の大小の球状コロイダルシリカ粒子を用いることにより、膜質の強固な多孔質上層が形成できる。この際、粒子直径の大小は、十分差があると効果的であり、粒子直径分布のピークが10〜100nm及び、1〜10nm未満の範囲の球状コロイダルシリカ粒子を含むと好適である。この際、10〜100nmの範囲の粒子直径の球状コロイダルシリカには、上記単一ピークの範囲の場合に好適なコロイダルシリカ粒子と同様のものを選択すると好適である。また、さらに上記の大小の粒子径の球状コロイダルシリカ粒子の大小の差がその直径比で70:30〜95:5の範囲のものを用いることが好ましい。また、大小の粒子径の球状コロイダルシリカ粒子の混合比は重量比で55:45〜95:5の範囲が好適である。
【0069】
コロイダルシリカの粒子直径の測定、及び、シリカ粒子の粒子径が揃っているか否か、すなわち、ピークが存在するかを調べるためには、準弾性レーザー光散乱法(動的光散乱法)等の一般の方法が用いられる。
【0070】
本発明では水やアルコール等に可溶しているものとは異なり、樹脂エマルジョンが水に分散しているものを用いるが、さらに水及びアルコールに分散可能な樹脂エマルジョンを用いる。これにより、上述した球状コロイダルシリカと水及びアルコールの分散媒中で分散して塗工液を得ることができる。
【0071】
具体的には、酢ビエマルジョン、エチレン−酢ビエマルジョン、エチレン−酢ビ共重合系エマルジョン、酢ビ−アクリル共重合系エマルジョン、アクリル−スチレンエマルジョン、アクリルエマルジョン、塩化ビニリデン系エマルジョン、ウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン等の合成樹脂エマルジョン、SBRラテックス、MBRラテックス等の合成ゴムラテックスを挙げることができる。
【0072】
本発明に用いる樹脂エマルジョンのガラス転移温度は10℃〜150℃のものが好ましい。この範囲よりも低いものを用いた場合、多孔質上層を形成後にタックやべたつきが起こり、また、樹脂エマルジョンの乾燥時の溶融粘度が低すぎるために、上述したように空隙は十分に維持されずつぶれてしまう。さらに、塗膜に白もやが発生して透明性が低下する傾向がある。この範囲よりも大きいものを用いた場合には、樹脂エマルジョンが乾燥時に十分溶融しきれず、乾燥時に球状シリカ粒子に接着剤としてバインダーの機能しにくいために強固な塗膜が形成されにくい。また、十分に溶融されていない樹脂粒子が塗膜中に存在するとヘイズが増えて透明性が低下する。30℃〜140℃のものがより好ましい。
【0073】
本発明では樹脂エマルジョンは乾燥により溶融してバインダーとして機能することが必要で、その選択には前述した球状コロイダルシリカと混合分散した際に塗液中で急激なゲル化による沈殿が生じない組合せのものを用いる。
【0074】
樹脂エマルジョンの粒子直径については、0.03〜0.5μmの範囲のものを用いる。この範囲よりも小さいものを用いた場合には、樹脂粒子が溶媒に溶解している樹脂の挙動に近くなり、乾燥時に徐々に樹脂粒子が溶融することができず、上述したような空隙を形成できない。この範囲よりも大きいものを用いた場合には、乾燥時に樹脂粒子が溶融して形成される球状シリカ粒子とバインダーの凝集体の部分が大きくなり、それに伴ってできる空隙の大きさにばらつきが生じてしまい、インクの吸収時に均一性が保てなくなる問題が生じる。さらに、好ましくは、0.05〜0.2μmの範囲のものを用いる。
【0075】
球状コロイダルシリカと樹脂エマルジョンの配合比は、その固形分比で30:1〜1:1の範囲でそれぞれ、球状コロイダルシリカの粒子径、イオン性、種類等及び、樹脂エマルジョンの種類等によって適宜選択可能である。この範囲内にすることにより、シリカ粒子とバインダーによる適度な凝集体と空隙が形成される。樹脂エマルジョンの量が上記範囲より少ない場合には多孔質上層の機械的強度が不足する。上記範囲よりも多い場合には、多孔質上層の空隙が少なくなりインクの浸透性が低下し易くなる。多孔質上層のインク浸透性と機械的強度の向上の両立を考慮すると、上記範囲は20:1〜3:1の範囲であることが望ましい。
【0076】
上記球状コロイダルシリカと樹脂エマルジョンの分散媒としては水及びアルコールを用いるが、分散媒の全体量中にアルコールを30〜90%の範囲で含むことが望ましい。この範囲内でアルコールを含む分散媒を用いた球状コロイダルシリカと樹脂エマルジョンの塗工液を多孔質下層上に塗布、乾燥することにより、上述したようにアルコールの乾燥、除去が水の乾燥、除去に先立ち行われるために、本発明の空隙が形成される。アルコールが少なすぎ、水が多すぎる場合には必要以上に大きい空隙が形成されたり、塗膜に白もやが発生する。さらに乾燥に時間を要する等の問題が生じる。逆にアルコールが多すぎ、水が少なすぎる場合には十分な大きさや数の空隙が形成されないために、十分な吸収能が得られない等の問題が生じる。アルコールの割合が上記範囲から大きくはずれると、シリカ粒子とバインダによる凝集体と、空隙とのバランスが崩れて、本発明のような空隙構造は得にくくなる。50〜80%の範囲であるアルコールが含まれることがより好ましい。本発明で用いられるアルコールは水よりも揮発性が高いこと、水と溶解混合が可能であることが必要となる。さらには樹脂エマルジョンを溶解せずに分散し、かつ球状コロイダルシリカを沈殿させずに分散できるものを用いる。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等、比較的低級アルコールが好適であるが。多孔質下層への浸透性が速く、水よりも揮発性も高く、さらに上述した条件を満たす溶媒であればこれらに限定されない。また、これらのアルコールは1種類もしくは2種類以上を自由に選択して用いることができる。
【0077】
本発明では上記コロイダルシリカと樹脂エマルジョン、分散媒に加えてカップリング剤、顔料分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、消泡剤、抑泡剤、耐水化剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤等を添加することが可能である。
【0078】
上記添加剤の中でもカップリング剤は多孔質上層の機械的強度をさらに向上させるのに有効である。これは、無機物である球状シリカ粒子と有機物であるバインダーの接着性を向上できるためである。カップリング剤の添加にはあらかじめコロイダルシリカに添加する方法や樹脂エマルジョンに混合する方法、コロイダルシリカと樹脂エマルジョンの分散液に添加する方法があるが、本発明ではいずれも効果がある。本発明に用いることができるカップリング剤としては一般のシラン系、チタネート系、アルミニウム系またはジルコニウム系カップリング剤を用いることができる。中でもシランカップリング剤がコロイダルシリカと反応性が高く、バインダーとの結合を強固にすることができる。
【0079】
コロイダルシリカと樹脂エマルジョンを含む分散液の分散処理方法としては、一般に用いられている方法の中から選択して用いることができる。具体的な方法、装置としてはホモミキサーやホモディスパージョン等の攪拌系の分散機やボールミルやサンドミル等の磨砕型の分散機が好適に用いられる。
【0080】
本発明においては、多孔質下層102上に多孔質上層103を形成する場合の塗工液の塗工は、例えば、ブレードコート方式、エアナイフコート方式、フラッシュコート方式、グラビアコート方式、ロールコート方式、ダイコート方式、キスコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー方式、カーテンコート方式、スプレー方式等を用いた方法により行うことができる。
【0081】
多孔質下層上102に多孔質上層103を形成する際の塗工量は所望する用途等に応じて適宜選択すればよいが塗工膜が薄すぎると表面を強固な膜として耐傷性を向上させる効果や、インク吸収を向上させる効果が得られにくいため好ましくない。逆に厚すぎると、塗工及び乾燥時に塗膜欠陥を生じるため、また、ヘイズが高くなり、透明性が減少して記録物の透明性や画像の鮮明度が損なわれるおそれがあり好ましくない。具体的には0.05〜20g/m2 の範囲、より好ましくは0.5〜20g/m2 の範囲で塗工するとよい。なお、乾燥した際の多孔質上層の好ましい厚さは0.1μm〜10μmである。
【0082】
多孔質上層103を塗布形成するために、固形分及び粘度の調整が必要である。この調整はアルコールの添加量や種類、コロイダルシリカや樹脂エマルジョンの種類や組み合わせ等の選択によって行う。固形分としては上述したような適切な膜厚を均一に得るため、3〜30重量%の範囲が適切である。粘度は用いる塗工機の塗工適性等に応じて調整する必要があるが、具体的には1〜100cpsの範囲が、薄膜で均一な膜が得やすいために好適である。
【0083】
多孔質下層102の上に上記のようにして塗工後、必要に応じた加熱による乾燥処理を行うことで、多孔質上層103が形成される。乾燥時に、溶媒が蒸発する際に、塗膜中の溶媒分が減少することにより、塗膜中に弱凝集が生じ、球状シリカ粒子と樹脂エマルジョンにより凝集体が形成される。また、その隙間に存在している水成分の部分が次第に蒸発することにより、その部分に空隙が形成される。さらに、凝集体の中で樹脂エマルジョンが熱融着してシリカはバインダーと強固な結合を形成し、造膜が完了して、その後冷却することにより、多孔質上層が形成する。
【0084】
乾燥処理の温度は樹脂エマルジョンの熱溶融及び塗膜化のために樹脂エマルジョンのガラス転移温度以上で行うことを必須とする。さらに、乾燥時間の短縮化、溶媒中の水を蒸発するために、100℃以上で行うことが好ましい。当然のことながら、用いる基材が変形、変色しない温度及び時間の範囲内で乾燥を行う。
【0085】
以上のように、形成された多孔質上層103の細孔構造は上記のような特殊な空隙により得られるものであるが、多孔質上層の細孔半径分布における最大ピークは10〜200nmの範囲であることが望ましい。上記範囲であることにより、多孔質上層の吸収能、透明性、耐傷性等の複数の性能を両立することができる。更に、前記多孔質上層の細孔半径分布における最大ピークが10〜20nm未満の範囲であることにより、透明性が高く、耐傷性が高く、吸収能に関しても、多孔質上層を設けない場合に比べて向上することができる。また、前記多孔質上層の細孔半径分布における最大ピークが20〜200nmの範囲であることにより、多孔質上層は高い吸収能を確保し、特に吸収速度が速く、後述するような1スキャンで高密度に大量にインクを付与する印字方法においても、インクを一時的に保持する緩衝層としての機能を果たすことができる。透明性の観点からは200nm以下であることが望ましい。これらの細孔は上述したような0.1〜10μmの薄膜中に形成されることにより、これらの性能が確保できる。
【0086】
本発明の被記録媒体において、多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径が2.0〜20nmの範囲に最大ピークを有することが好ましい。すなわち、二層構成の中で上層は透明性を確保できる膜質の範囲で前述した細孔半径を有し、吸収能の向上、耐傷性等を得るのに必要最小限の細孔数を有していればよく、下層の前述したような小さい大きさの範囲にある細孔が大半を占める。これにより、インクの吸収と保持、透過といった微妙な機能分離が可能になり、しかも透明性が高く吸収能を更に向上することができる。また、多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔容積が0.4〜1.5ml/gの範囲にあることにより高いインクの吸収容量を確保できる。さらに、多孔質下層102の細孔容積PV1と多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔容積PV2の比PV2/PV1が1.0〜1.5の範囲にあることにより、透明性を確保しながらインク量の多い印字に対応できる被記録媒体としては望ましい。
【0087】
また、本発明の被記録媒体は吸収能が高いため、上述した滲み、ブリーディング、ビーティング等の画像欠陥を低減でき、さらに、着弾したインク液滴を適度に滲ませる働きも持ち合わせるために、スジムラというベタ印字とした部分がヘッド幅でスジ状のむらになって認識される欠陥も低減することができる。
【0088】
本発明の画像形成方法に使用されるインクは、主として色材(染料または顔料)、水溶性有機溶剤及び水を含むものである。染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素等に代表される水溶性染料が好ましく、上記の被記録媒体との組み合わせにより定着性、発色性、鮮明性、安定性、耐光性その他の要求される性能を満たす画像を与えるものであれば、いずれの染料でもよい。顔料としては例えばカーボンブラック等の無機顔料、有機顔料、金属微粒子、金属酸化物、金属化合物を用いることができる。顔料色材としては自己分散型でも界面活性剤等の分散剤を併用するもので用いることができる。
【0089】
水溶性染料は、一般に水または水と有機溶剤からなる溶媒中に溶解して使用するものであり、これらの溶媒成分としては、好ましくは水と水溶性の各種有機溶剤等との混合物が使用されるが、インク中の水分含有量が、20〜90重量%の範囲内となるように調整するのが好ましい。
【0090】
上記水溶性の有機溶媒としては、例えばメチルアルコール等の炭素数が1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトン等のケトンまたはケトンアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素数を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0091】
これらの多くの水溶性有機溶媒の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類が好ましい。多価アルコール類は、インク中の水が蒸発し、水溶性染料が析出することに基づくノズルの目詰まり現象を防止するための潤滑剤としての効果が大きいため、特に好ましい。
【0092】
インクには可溶化剤を加えることもできる。代表的な可溶化剤は、含窒素複素環式ケトン類であり、その目的とする作用は、水溶性染料の溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上させることにある。例えばN−メチル−2−ピロリドン、1,3,−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。さらに特性の改善のために、粘度調整剤、界面活性剤、表面張力調整剤、pH調整剤、比抵抗調整剤等の添加剤を加えて用いることもできる。
【0093】
前記被記録媒体に上記インクを付与して記録を行う方法は、インクジェット記録方法であり、該記録方法はインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。特に特開昭54−59936号公報に記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式は有効に使用することができる。本発明の被記録媒体の印字には、
▲1▼染料を色材として用いるインク、
▲2▼顔料を色材として用いるインク、
▲3▼顔料色材と染料色材を混合したインク、または、顔料色材を含むインクと染料色材を含むインクの併用
等が可能である。
【0094】
本発明における被記録媒体に染料を色材として用いたインクを使用して画像形成した場合には、特に、被記録媒体の吸収能の高さから、多色のインクによるベタ印字の組み合わせ等の画像におけるブリーディング(境界滲み)が従来に比べ大きく軽減される。さらに、印字部の白もや現象も大幅に少なく、印字部と未印字部の光沢の差も少なく、自然な写真調の画像が得られる。また、顔料を色材として用いた場合には、顔料色材を捕らえるのに適度な細孔構造を有しているために、印字部の耐擦過性は高く、耐水性も良好である。さらに、顔料色材と染料色材の混合されたインクの場合、従来の被記録媒体の場合には顔料成分による印字部と染料成分の印字部の光沢に差が出てしまうという問題があったが、本発明の被記録媒体に用いた場合には、その特有な細孔構造により、顔料成分が表面に浮き上がることなく定着しているため、着弾されたインクが均一に分布し、光沢の色材による差が少ない。
【0095】
印字方法としては従来の方法に加えて、
1)同一画素内に顔料と染料等の色材の種類が異なるインクを印字する方法
2)3種類以上の色材濃度の異なる濃淡インクを同一画素内に印字する方法
3)マルチパスのパス数を少なくし、1スキャンで高密度に大量のインクを付与する高速印字方法
等を用いることができる。
【0096】
本発明の被記録媒体に顔料と染料等の色材の種類が異なるインクの印字を同一画素内に行った場合にも、例えば、黒インクを顔料インクとし、他のインクを染料インクとして黒色部の印字濃度を高め、シャープな画像を得たい場合にも、種類の異なるインク同士の界面でのブリーティングが少なく、黒インクにより画像形成された部分のみに艶が出てしまうこともなく、色材の違いによる光沢の差も少ない写真調の画像が得られる。また、3種類以上の色材濃度の異なる濃淡インクを同一画素内に印字する場合にも、例えば、ドット密度を高くして、染料濃度の異なるインクを重ね打ちすることにより、ハイライト部からシャドウ部にかけて滑らかなグラデーションを表現したい場合にも、本発明の被記録媒体を用いると、インク吸収能が高く、高濃度の部分のインクが溢れることもなく印字可能なため、印字部、未印字部の光沢の差も少ないことから精巧な画像の形成にも適用可能である。さらに、マルチパスのパス数を少なくし、1スキャンで高密度に大量のインクを付与する印字方法に対応できる。すなわち、プリント速度の高速化に対応できる被記録媒体が求められているが、本発明の被記録媒体を用いると従来のものに比べパス数が少なく大量のインクを着弾する場合でも、インクの溢れや滲みによる画質低下を大幅に低減できる。これは、本発明の二層構成の被記録媒体において、1パスごとにインク量が多い場合にも、最初のパスで着弾されたインクは、多孔質下層において大半が吸収され、若干の溢れたインク分は多孔質上層が緩衝層の役目を果たすため、一時、インクを層中で保持することができ、次のパスによるインクの着弾時にはそのインク分は多孔質下層に吸収されて、高いインク吸収能を維持できるのである。
【0097】
【実施例】
本発明を以下の実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
実施例1
前述の図1に示す被記録媒体を次のようにして調製した。基材101に透明性で厚み100μmのPETフィルム(東レ(株)製100Q80D)を使用し、この基材上に多孔質下層102を形成するために下記の方法で塗工液を作製した。
【0099】
まず、米国特許第4242271号に記載された方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許第4202870号に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物固形分が7.9%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.4であった。次に、3.9%の硝酸水溶液を加えてpH調整した後、熟成工程を経て、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを入り口温度83℃でスプレー乾燥してベーマイト構造を有するアルミナ水和物粉末を得た。アルミナ水和物の結晶構造はベーマイトで、粒子形状は平板形状であり、アスペクト比5、平均粒子直径は21nm、BET比表面積が200m2 /g、細孔容積が0.65ml/gであった。なお、粒子形状はアルミナ水和物をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴下して測定試料を作り、この試料を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察した。X線回折測定は、RAD−2R(理学電気(株)製)を用いて、ベ−マイト構造であることを確認した。BET比表面積、細孔容積の測定には、アルミナ水和物を十分加熱、脱気し、窒素吸着脱離法により測定した。測定装置はオートソープ1(カンタクローム社製)を用いた。
【0100】
アルミナ水和物はイオン交換水に分散して15%の溶液とした。次にポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセノールGH17)をイオン交換水に溶解して10%の溶液を得た。上記アルミナ水和物とポリビニルアルコール溶液を固形分換算で重量混合比で7:1になるようにして混ぜ合わせて攪拌して塗工液を得た。
【0101】
この塗工液を不図示のコート機及び熱風乾燥炉を用いてダイコート後、乾燥し(乾燥温度140℃)、厚さ40μmの多孔質下層102を形成した。
【0102】
このとき、多孔質下層102のBET比表面積197m2 、細孔半径の最大ピーク7.5nm、細孔容積は0.64ml/gであった。測定は、多孔質下層を形成したシートを十分加熱、脱気し、窒素吸着脱離法により測定した。測定装置はオートソープ1(カンタクローム社製)を用いた。
【0103】
次に、多孔質上層103を形成するために下記の方法で塗工液を作製した。ここで用いた球状コロイダルシリカは粒子直径分布のピークが52nmの単一であるものを用いた。
【0104】
まず、SiO2 として3.60重量%のアルカリ珪酸塩水溶液を水素型イオン交換樹脂で処理し、アルカリ金属イオンを除去した活性珪酸の水性コロイド溶液を得た。次に、この活性珪酸の水性コロイド溶液に硝酸を加えてpH1.54とし、成熟した後、水素型強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、続いて水酸型強塩基性陰イオン交換樹脂で処理し、再び水素型強酸性陽イオン交換樹脂で処理することによりSiO2 として3.52重量%の高純度活性珪酸の水性コロイド溶液を得た。粒子直径分布は動的光散乱法により測定し、Coultet N4F (コールタール社製)の装置を用いた。この水性コロイド液はイオン交換水を加えて20%の分散液とした。この分散液100部に、続いてアクリル樹脂エマルジョン(平均粒子径0.06μm、Tg48℃)を10部加え、溶媒としてメタノールを200部加えて固形分を8.0%として攪拌、分散して塗工液を調製した。
【0105】
この塗工液を不図示のコート機及び熱風乾燥炉を用いてダイコート後、140℃で乾燥し、厚さ3μmの多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)を用いて10万倍で観察したところ、図4に示したような球状シリカ粒子とバインダーを含む凝集体、空隙の構造が観察された。
【0106】
また、被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、12.0nmの位置に最大ピークが存在した。また、多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は7.5nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.698ml/gであった。測定は被記録媒体の試験片を25℃で24時間真空乾燥した後、水銀圧入法により測定した。このとき、オートポアIII (MICROMETICS 社)の装置を用いた。
【0107】
この被記録媒体100を用いて以下の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0108】
(評価)
(1)透明性
被記録媒体の全光線透過率(%)をJIS K−7105に従ってヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH−100DO)を用いて測定した。
【0109】
(2)表面性
目視により、被記録媒体の表面上のクラックの有無を確認した。目視によりクラックが認められないものを○、クラックが観察されるものを×とした。
【0110】
(3)膜強度
被記録媒体の表面上の鉛筆硬度をJIS K5400に準じて測定した。硬度3H以上を◎、硬度H以上を○、硬度B以上を△、硬度2B以下を×とした。
【0111】
(4)タック、耐指紋性
被記録媒体の表面を素手により指触試験(両親指を被記録媒体の表面に接触するように10秒間保持)を行い、付着及び指紋跡の有無を確認した。指紋跡が確認されないを○、若干指紋跡がつくを△、指が表面に付着して指紋跡がつくを×とした。
【0112】
(5)ブロッキング性
机の上に被記録媒体を10枚重ねた上に同型サイズの重さ1kgのガラス板を載せて30℃/80%RHの環境下で1ケ月保存した。保存後、試料同士がくっつかずに分離できるものを○、分離不可のものを×とした。
【0113】
(6)印字特性
1mmの24本の割合の間隔(600dpi)でノズルを備えたドロップオンデマンドのインクジェットヘッドを各インク分備え、ノズル列と垂直方向に走査して画像形成するインクジェットプリンターを用いて、下記組成のインクで、1ドットの印字につき10plのインクを吐出させてインクジェット記録を行った。1mm2 当たり24×24ドット(600dpi×600dpi)での単色インクの印字でのインク量を100%として、単色インクを2色用いた2色印字ではインク量が単色印字の2倍になるので200%、以下同様に3色、4色印字をそれぞれ300%、400%とした。
【0114】
用いたインク染料を以下に示す。
【0115】
Y : C.I.ダイレクトイエロー86
M : C.I.アシッドレッド35
C : C.I.ダイレクトブルー199
Bk: C.I.フードブラック2
上記染料を用いて以下のような染料濃度の異なるインクを調製した。
【0116】
1)インク組成1:染料高濃度インク
染料 3部
ジエチレングリコール 5部
ポリエチレングリコール 10部
水 82部
2)インク組成2:染料中濃度インク
染料 1部
ジエチレングリコール 5部
ポリエチレングリコール 10部
水 84部
3)インク組成3:染料低濃度インク
染料 0.6部
ジエチレングリコール 5部
ポリエチレングリコール 10部
水 84.4部
上記のインクセットを用いて以下の印字特性に関する評価を行った。
【0117】
▲1▼滲み、ブリーディング、ビーディング、ハジキ、スジムラの有無
インク組成1のインクを用い、前記記録装置を用いて、各色の印字インク量100%(単色)から400%(4色)まで変えたベタ印字を行い、滲み、ブリーディング、ビーディング、ハジキ、スジムラの有無を目視にて観察した。
【0118】
印字インク量400%で発生せず◎、300%で発生せず○、100%で発生せず△、100%で発生する×とした。
【0119】
▲2▼画像濃度
インク組成1のインクを用い、前記記録装置を用いて、各色のインク量100%(単色)でベタ印字した画像の透過画像濃度を、X−Rite社製310TRを用いて測定した。
【0120】
▲3▼階調数、濃度による色味変化の確認
インク組成1〜3の濃淡インクセットを用い、前記記録装置を用いて、各インクセットの打ち込み量を操作して、被記録媒体に印字した。すなわち約60ステップの濃度変化で印字し、各印字部を目視観察して、画像濃度の違いが判別できた場合には階調がとれたと判断した。この方法で階調がとれた際の階調数を数えた。
【0121】
また、このとき、色味の有無についても目視にて観察した。各印字部の色味差が確認できないを○、3ケ所未満の色味の違いがあるを△、3ケ所以上の色味の違いがあるを×とした。
【0122】
【表1】
【0123】
実施例2
実施例1において、球状コロイダルシリカの粒子直径分布のピークを0.08,1.0,10,30,50,70,100,150nmと変化させた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0124】
【表2】
【0125】
実施例3
実施例1において、球状コロイダルシリカを粒子直径分布のピークが50nmのコロイダルシリカと粒子直径分布のピークが8nmの2種の粒子径のコロイダルシリカを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、大小のコロイダルシリカの混合比は重量比で10:1とした。この被記録媒体について、実施例と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0126】
実施例4
実施例1において、球状コロイダルシリカを粒子直径分布のピークが90nmのコロイダルシリカと粒子直径分布のピークが40nmの2種の粒子径のコロイダルシリカを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、大小のコロイダルシリカの混合比は重量比で10:1とした。この被記録媒体について、実施例と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0127】
実施例5
実施例1において、球状コロイダルシリカをの粒子直径分布のピークが70nmのコロイダルシリカと粒子直径分布のピークが40nm、粒子直径分布のピークが20nmの3種の粒子径のコロイダルシリカを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、大中小のコロイダルシリカの混合比は重量比で10:3:1とした。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0128】
実施例6
実施例1において、有機基を表面に導入した複合コロイダルシリカを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、複合コロイダルシリカの粒子直径分布のピークが59nmであり、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例7
実施例1において、アルミニウム複合コロイダルシリカを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、複合コロイダルシリカの粒子直径分布のピークが51nmであり、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0131】
実施例8
実施例1において、ポリエステル樹脂エマルジョンを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、ポリエステル樹脂エマルジョンの平均粒子直径は0.08μmであり、Tgは58℃であった。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0132】
実施例9
実施例1において、スチレン−アクリル共重合体樹脂エマルジョンを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、スチレン−アクリル共重合体樹脂エマルジョンの平均粒子直径は0.06μmであり、Tgは98℃であった。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0133】
実施例10
実施例1において、酢ビ−アクリル共重合体樹脂エマルジョンを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、酢ビ−アクリル共重合体樹脂エマルジョンの平均粒子直径は0.06μmであり、Tgは38℃であった。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0134】
実施例11
実施例1において、アクリル樹脂エマルジョンと酢ビ−アクリル共重合体樹脂エマルジョンの2種の樹脂エマルジョンを用いた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、アクリル樹脂エマルジョンと酢ビ−アクリル共重合体樹脂エマルジョンの混合比は固形分換算7:1であった。実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0135】
実施例12
実施例1において、アクリル樹脂エマルジョンのガラス転移温度を0,10,30,50,70,100,140,150,200℃と変化させた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表4に示した。
【0136】
【表4】
【0137】
実施例13
実施例1において、球状コロイダルシリカ粒子とアクリル樹脂エマルジョンのP/B比0.5:1,1:1,3:1,7:1,20:1,30:1,40:1と変化させた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表5に示した
【0138】
【表5】
【0139】
実施例14
実施例1において、塗工液中に含有する溶媒中のメタノールを10,30,50,70,90,98%と変化させた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表6に示した。
【0140】
【表6】
【0141】
実施例15
実施例1において、塗工液中にシランカップリング剤を加えた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、シランカップリング剤にはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用い、球状コロイダルシリカの固形分に対して100:1の割合で添加した。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0142】
実施例16
実施例1において、塗工液に実施例14と同様のシランカップリング剤を同量加えた以外は同様にして、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。このとき、大小のコロイダルシルカの混合比は重量比で10:1とした。この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0143】
実施例17
実施例1において、多孔質下層102を内部空洞のあるアルミナ層とし、空洞がこれより小さい半径の細孔を通して多孔質下層表面から多孔質上層に連通している層とした以外は実施例1と同様に、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。
【0144】
多孔質下層102は以下のように形成した。実施例1で用いたアルミナ水和物のコロイダルゾルにコロイダルゾルの全量の5/100の量のエチレングリコールを添加して、実施例1と同様の方法で攪拌した。次に、前記スプレードライヤーを用いて145℃で乾燥してキセロゲルを得た。このキセロゲルにイオン交換水を添加して、実施例1と同様に攪拌して固形分濃度が15重量%のアルミナ水和物分散液を得た。この分散液を塗工液として実施例1と同様にして塗工、乾燥して40μm厚の多孔質下層102を形成した。このとき、多孔質下層102のBET比表面積227m2 、細孔半径の最大ピーク7.7nm、細孔容積は0.670ml/gであった。測定は、多孔質下層を形成したシートを十分加熱、脱気し、窒素吸着脱離法により測定した。測定装置はオートソープ1(カンタクローム社製)を用いた。また、多孔質下層の断面を透過型電子顕微鏡(日立製、H−500)を用い観察したところ、50〜150nmの半径をもつ空隙を有していた。さらに、実施例1と同様にして多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。次に、実施例1と同様にして被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、13.5nmの位置に最大ピークが存在した。多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は7.7nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.704ml/gであった。さらに、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表7に示した。
【0145】
【表7】
【0146】
実施例18
実施例1において、多孔質下層102を細孔半径の大きい部分の細孔容積を少なくした擬ベーマイトからなるアルミナ層とした以外は実施例1と同様に、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。
【0147】
まず擬ベーマイトゾルカタロイドAS−3(触媒化成社製)を5重量部、ポリビニルアルコールPVA117(クラレ社製)1重量部及び水からなる固形分10重量%の塗工液を調製し、実施例1と同様の方法で塗工した。このとき、多孔質下層102のBET比表面積185m2 、細孔半径と細孔容積の関係は10〜100nmの範囲には0.02ml/gと少なく、4〜10nmの範囲に0.23ml/g、1〜4nmの範囲に0.50ml/gと小さな細孔を多く有していた。多孔質上層103を形成後、実施例1と同様にして被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、10.6nmの位置に最大ピークが存在した。多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は7.4nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.643ml/gであった。さらに、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表7に示した。
【0148】
実施例19
実施例1において、多孔質下層102をバインダーにエマルジョンを用いたアルミナ層にした以外は実施例1と同様に、多孔質上層103を形成した被記録媒体100を得た。
【0149】
まず、アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得られた沈澱を解膠して、平均二次凝集径が170nmであるアルミナ水和物粒子を19重量%含むアルミナゾルを得た。次に、このアルミナゾル500部に、固形分濃度30重量%のカチオン型アクリル系樹脂粒子の水系分散液(平均粒子径0.01μm)95部を加えて攪拌、混合して塗工液とした。この塗工液を実施例1と同様にして塗工、乾燥して40μm厚の多孔質下層102を形成した。このとき、多孔質下層102のBET比表面積193m2 、細孔半径の最大ピーク7.5nm、細孔容積は0.682ml/gであった。多孔質上層103を形成後、実施例1と同様にして被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、11.8nmの位置に最大ピークが存在した。多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は7.6nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.673ml/gであった。さらに、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表7に示した。
【0150】
実施例20
実施例1において、多孔質下層102にシリカ含有アルミナを用いたアルミナ層とした以外は実施例1と同様に、多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。
【0151】
まず、米国特許4242271号に記載された方法でアルコキシドを製造した。得られたアルコキシド100重量部とイオン交換水、オルト珪酸8.45重量部を混合した。この混合溶液を反応容器に入れて攪拌しながら前記アルコキシドを110℃、30分間加水分解した。ここで、イオン交換水はアルコキシドと同じ重量を用いた。この懸濁物を入り口温度280℃でスプレー乾燥してシリカ含有アルミナ水和物粉末を得た。このアルミナ水和物の結晶構造をX線回折にて調べたところ、ベーマイト構造を有していた。
【0152】
次に、上記のアルミナ水和物を実施例1と同様にしてイオン交換水に分散して、固形分濃度15重量%の分散液を得た。この分散液にポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセノールNH−18)をイオン交換水にて溶解した固形分10重量%の溶液を固形分換算で10:1の比で混合、攪拌して塗工液を得た。
【0153】
この塗工液を実施例1と同様にして塗工、乾燥して40μm厚の多孔質下層102を形成した。このとき、多孔質下層102のBET比表面積195m2 、細孔半径の最大ピーク7.4nm、細孔容積は0.687ml/gであった。多孔質上層103を形成後、実施例1と同様にして被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、11.0nmの位置に最大ピークが存在した。多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は7.4nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.679ml/gであった。さらに、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表7に示した。
【0154】
実施例21
実施例1において、細孔半径の異なる2層構成の擬ベーマイト層からなる層とした以外は実施例1と同様に多孔質上層103を形成して被記録媒体100を得た。
【0155】
まず、容量が2000ccのガラス製の反応器にイオン交換水720gとイソプロパノール676gを仕込み、液温を75℃で加熱、攪拌しながらアルミニウムプロポキシド306gを添加し、液温を75〜78℃に保持しながら5時間加水分解を行った。この後、95℃に昇温し、酢酸9gを添加して48時間、75〜78℃に保持して解膠した。さらに、この液を900gになるまで濃縮し、アルミナ水和物のゾルを得た。また、このゾルの乾燥物はX線回折により擬ベーマイトであることが確認された。このアルミナ水和物のゾルにポリビニルアルコール(日本合成工業(株)社製、ゴーセノールNH−18)1重量部を加え、さらにイオン交換水を加えて固形分10重量%の塗工液を調製した。この塗工液を実施例1と同様に基材101上に塗布乾燥して多孔質下層102の下の層を形成した。
【0156】
次に、容量が2000ccのガラス製の反応器にイオン交換水540gとイソプロパノール676gを仕込み、液温を75℃で加熱、攪拌しながらアルミニウムプロポキシド306gを添加し、液温を75〜78℃に保持しながら5時間加水分解を行った。この後、95℃に昇温し、酢酸9gを添加して48時間、75〜78℃に保持して解膠した。さらに、この液を900gになるまで濃縮し、アルミナ水和物を得た。このゾルの乾燥物はX線回折により擬ベーマイトであることが確認された。このアルミナ水和物のゾルにポリビニルアルコール(日本合成工業(株)社製、ゴーセノールNH−18)1重量部を加え、さらにイオン交換水を加えて固形分10重量%の塗工液を調製した。この塗工液を同様にして、前述のアルミナ水和物二層のうちの下層の上に塗布乾燥して多孔質下層102の形成を完了した。このとき、多孔質下層102中の下層は細孔半径が5nmで膜厚さが20μmの擬ベーマイト層で、上層は細孔半径が6nmで膜厚さが10μmの擬ベーマイト層であった。測定は実施例1と同様にして行った。
【0157】
多孔質上層103を形成後、実施例1と同様にして被記録媒体の多孔質上層103の細孔半径分布を調べたところ、11.6nmの位置に最大ピークが存在した。多孔質下層102と多孔質上層103を併せた層全体の細孔半径は5nmの位置に最大ピークが存在し、全細孔容積は0.653ml/gであった。さらに、この被記録媒体について、実施例1と同様に透過型電子顕微鏡にて観察したところ、本発明の空隙構造が観察された。さらに、実施例1と同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表7に示した。
【0158】
実施例22
本実施例ではインクの色材に顔料を用いたインクセットを用いて実施例1と同様の被記録媒体に画像記録を行った。
【0159】
ここで用いた顔料インク顔料を以下に示す。
【0160】
Y : C.I.ピグメントイエロー83
M : C.I.ピグメントレッド48:3
C : C.I.ピグメントブルー15:3
Bk: C.I.カーボンブラック
上記顔料を用い以下の分散剤を用いて公知の分散方法で、顔料分散液を作製した。
【0161】
顔料 15部
オキシエチレン基を45モル導入したポリエチレングリコールモノアクリレートとアクリル酸ナトリウムとの共重合体
[単量体のモル比(前者/後者)=2/8] 3部
モノエタノールアミン 1部
ジエチレングリコール 5部
イオン交換水 76部
上記顔料分散液を用いて以下のような顔料濃度の異なるインクを調製した。
【0162】
<1>インク組成4:顔料高濃度インク
顔料分散液 33部
ジエチレングリコール 4部
イオン交換水 63部
<2>インク組成5:顔料中濃度インク
顔料分散液 11部
ジエチレングリコール 4部
イオン交換水 85部
<3>)インク組成6:顔料低濃度インク
顔料分散液 6.6部
ジエチレングリコール 4部
イオン交換水 89.4部
上記のインクセットを用いて実施例1と同様の(6)の評価を行った。さらに、以下の評価を追加した。
【0163】
(7)色材の定着性
前記記録装置を用いて、各色の高濃度インクを用いて、印字インク量100%(単色)でベタ印字した部分を乾燥後に指で擦って色材の剥離を調べた。色材の剥離がなければ○、色材の剥離が生じたら×とした。
【0164】
(8)異なる色材による印字部の光沢感の違い
前記記録装置を用いて、各色の高濃度インクを用いて、印字インク量100%(単色)でベタ印字した部分の光沢感の違いの有無を目視にて観察した。顔料成分と染料成分との印字部に差が確認されないを○、顔料成分と染料成分との印字部に差が確認されるを×とした。
【0165】
上記(6)〜(8)の評価結果は表8に示した。
【0166】
【表8】
【0167】
実施例23
本発明では、顔料インクと染料インクの併用により、実施例1と同様の被記録媒体に画像形成を行った。
【0168】
ここで、Y,M,Cは前記染料インク、Bkは前記顔料インクのインクセットを用い、上述した記録装置を用い画像形成を行った。実施例22と同様(6)〜(8)の評価を行った。評価(7),(8)においては上記インクのうち高濃度インクの組み合わせのインクセットを用いた。上記(6)〜(8)の評価結果は表8に示した。
【0169】
実施例24
本実施例ではインクの色材に顔料と染料を混合したインクを用いたインクセットを用いて実施例1と同様の被記録媒体に画像記録を行った。
【0170】
[1]インク組成7:染料/顔料混合高濃度インク
染料 1.5部
顔料分散液 16.5部
ジエチレングリコール 4.5部
ポリエチレングリコール 5部
水 72.5部
[2]インク組成8:染料/顔料混合中濃度インク
染料 0.5部
顔料分散液 5.5部
ジエチレングリコール 4.5部
ポリエチレングリコール 5部
水 84.5部
[3]インク組成9:染料/顔料混合低濃度インク
染料 0.3部
顔料分散液 3.3部
ジエチレングリコール 4.5部
ポリエチレングリコール 5部
水 86.9部
前述した記録装置を用い画像形成を行い、実施例22と同様(6)〜(8)の評価を行った。評価(7),(8)においてはBk,Y,M,Cは上記顔料/染料インクの高濃度インクのセットを用いた。上記(6)〜(8)の評価結果は表8に示した。
【0171】
比較例1
実施例1において、多孔質上層を形成しない以外は全て同様にして被記録媒体を得た。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0172】
比較例2
実施例1において、多孔質上層のシリカに多孔性微粉シリカを用いること以外は全て同様にして被記録媒体を得た。このとき、多孔性微粉シリカには平均粒子直径が30μm、細孔容積が1.5ml/gのものを用いて塗工液を作製し、同様に塗布乾燥して多孔性微粉シリカを含む多孔質上層を形成した。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察したところ、図2に示したような球状シリカ粒子とバインダー、空隙の構造は観察されず、多孔性微粉シリカが不規則に配置されてその間をバインダーが埋められている構造であった。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0173】
比較例3
実施例1において、多孔質上層を樹脂バインダーを含まない層とすること以外は全て同様にして被記録媒体を得た。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察したところ、図2に示したような球状シリカ粒子とバインダー、空隙の構造は観察されず、球状シリカの一次粒子が規則的に積層されている構造であった。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0174】
比較例4
実施例1において、多孔質下層102を形成した後、以下の上層を形成した。ゾル粒子が直径35〜55nmの範囲にある球状一次粒子からなるシリカゾルと、シラノール基を有するポリビニルアルコール共重合体(クラレ社製、R−ポリマーR−1130)とからなる固形分5重量%のシリカゾル(ポリビニルアルコール共重合体/SiO2 =0.1(重量比)、塗工液にアルコールは含有されない)のシリカゾル塗工液を、多孔質層102の上に塗布乾燥し、さらに140℃で熱処理して、厚さが1μmの上層を形成した。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察したところ、図2に示したような球状シリカ粒子とバインダー、空隙の構造は観察されず、多孔質上層をシリカの球状一次粒子が規則的に配置した構造の層となっていた。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0175】
比較例5
実施例1において、多孔質上層を非球状のシリカ粒子を用いること以外は全て同様にして被記録媒体を得た。このとき、非球状のシリカ粒子は鎖状で40〜100nmの範囲のものを用いた。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察したところ、図2に示したような球状シリカ粒子とバインダー、空隙の構造は観察されず、鎖状シリカの固まり同士の間に存在しており、空隙も小さく、部分的にクラックが生じていた。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0176】
比較例6
実施例1において、多孔質下層102を形成したのち、以下の上層を形成した。凝集体平均径3μmの合成非晶質シリカ(一次粒子径:11nm)を用いサンドグラインダーにより分散した後、超音波をかけ、凝集体平均粒子が300nmになるまでサンドグラインダーと超音波の分散操作を繰り返し、15%の水分散液を作製した。この分散液100重量部に、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA−124)40重量部を混合した固形分8重量%の塗工液を調製した。この塗工液を多孔質層102の上に塗布乾燥し、さらに140℃で熱処理して、3μm厚で形成した。このとき、断面を透過型電子顕微鏡(日立社製、H−500)で観察したところ、図2に示したような球状シリカ粒子とバインダー、空隙の構造は観察されず、シリカの凝集体は大きく、その凝集体同士をバインダーがくるんでしまっていて、図2のような構造の空隙は見られず、部分的に白かった。さらに、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0177】
比較例7
実施例1において、多孔質下層102のベーマイト構造のアルミナ水和物に代えて、シリカ(ミズカシルP78−A、水沢化学社製)を用いたこと以外は同様にして、被記録媒体100を作製した。このとき、上記シリカのBET比表面積は350m2 /g、平均粒径は3.0μmであった。多孔質上層103を形成後、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(6)の評価を行い。結果を表1に示した。
【0178】
【発明の効果】
上述したように、本発明により基材上にベーマイト構造を有するアルミナ水和物とバインダーからなる多孔質下層と粒子直径1〜100nmの球状シリカ粒子とバインダーからなる凝集体と空隙からなり、この空隙は主に前記球状シリカ粒子とバインダーからなる凝集体の間に存在し、凝集体内部には存在しない多孔質上層を形成することにより、大量なインクを打ち込む印字方法、顔料、染料等多種のインクを打ち込む印字方法、高速印字方法においても、画像濃度が高く、色調が鮮明であり、階調数の多い、濃度による色味変化がなく、ビーディングの発生を抑え、かつインク吸収能力に優れており、さらには、表面の耐傷性、透明性を同時に付加した被記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の被記録媒体の多孔質上層(シリカ粒子1種の粒子径)を拡大した断面図である。
【図3】本発明の被記録媒体の多孔質上層(シリカ粒子2種の粒子径)を拡大した断面図である。
【図4】本発明の被記録媒体の一例の断面を透過型電子顕微鏡で観察、撮影した図の模写図である。
【図5】本発明の被記録媒体の多孔質上層の塗工、乾燥、形成過程を示した断面図である。
【符号の説明】
100 被記録媒体
101 基材
102,202,302 多孔質下層
103,203,303 多孔質上層
204 球状シリカ粒子
205,305 バインダー
206,306 空隙
304 大きな粒径のシリカ粒子
307 小さな粒径のシリカ粒子
501 多孔質下層の細孔
502 樹脂エマルジョン
503 コロイダルシリカ粒子
504 アルコール分
505 水分
506 空隙
507 球状シリカ粒子とバインダーの凝集体
Claims (17)
- 基材上に、擬べーマイト構造を有するアルミナ水和物及びバインダーを含有する多孔質下層を形成する工程と、
前記多孔質下層に分散液を塗布し、塗布した分散液を乾燥して多孔質上層を形成する工程と、
を有する製造方法により製造された被記録媒体であって、
前記多孔質下層は、細孔容積が8cc/m2以上であり、
前記分散液は、粒子直径分布のピークが1〜100nmの球状コロイダルシリカと、熱可塑性樹脂粒子と、分散媒として水及びアルコールとを含有し、
前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度は、10℃以上150℃以下であり、
前記分散液の乾燥は、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度以上で行い、
前記多孔質上層は、球状シリカ粒子及び熱可塑性樹脂粒子を含む凝集体と、空隙とで構成され、前記空隙は前記凝集体の間に存在することを特徴とする被記録媒体。 - 前記球状シリカ粒子は少なくとも2種の粒子直径の異なるものである請求項1に記載の被記録媒体。
- 前記少なくとも2種の粒子直径の異なる球状シリカ粒子が10〜100nm及び、1〜10nm未満の範囲の粒子直径のものである請求項2に記載の被記録媒体。
- 前記1〜10nm未満の範囲の粒子直径の球状シリカ粒子は前記凝集体内部に主として存在し、10〜100nmの範囲の粒子直径の球状シリカ粒子は前記凝集体外部に存在する請求項3に記載の被記録媒体。
- 前記多孔質上層の細孔半径分布の最大ピークが10〜20nm未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記多孔質上層の細孔半径分布の最大ピークが20〜100nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記多孔質下層と多孔質上層とを併せた層全体の細孔半径が2.0〜20nmの範囲に最大ピークを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記多孔質下層と多孔質上層とを併せた層全体の細孔容積が0.4〜1.5ml/gの範囲にある請求項1〜7いずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記球状コロイダルシリカがその粒子直径分布において少なくとも2ケ所のピークを有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記球状コロイダルシリカの粒子直径分布が少なくとも10〜100nm及び、1〜10nm未満の範囲の2ケ所にピークがある請求項9に記載の被記録媒体。
- 前記球状コロイダルシリカが水及びアルコールに分散する請求項1〜10のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記球状コロイダルシリカが酸性コロイダルシリカである請求項1〜11のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記熱可塑性樹脂粒子が水及びアルコールに分散する請求項1〜12のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記熱可塑性樹脂粒子の分散粒子の平均直径が0.03〜0.5μmである請求項1〜13のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記多孔質下層の塗工液にカップリング剤を含む請求項1〜14のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 前記カップリング剤がシラン系、チタネート系、アルミニウム系またはジルコニア系カップリング剤から選択される請求項15に記載の被記録媒体。
- 基材上に、擬べーマイト構造を有するアルミナ水和物及びバインダーを含有する多孔質下層を形成する工程と、
前記多孔質下層に分散液を塗布し、塗布した分散液を乾燥して多孔質上層を形成する工程と、
を有する被記録媒体の製造方法であって、
前記分散液は、粒子直径分布のピークが1〜100nmの球状コロイダルシリカと、熱可塑性樹脂粒子と、分散媒として水及びアルコールとを含有し、
前記熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度は、10℃以上150℃以下であり、
前記分散液の乾燥は、熱可塑性樹脂粒子のガラス転移温度以上で行う、
ことを特徴とする被記録媒体の製造方法。
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