JP4288334B2 - ホモシステインの測定方法及び測定用試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、L-システイン分解酵素を利用したホモシステインの測定方法およびホモシステイン測定用試薬に関するものである。さらに詳しくは本発明は、ホモシステインおよびL-システインを含有する試料中のホモシステインの測定において、L-システイン分解酵素を利用したL-システインの消去系を組み入れることにより、混在する試料中のホモシステインのみを定量する方法およびそのための試薬に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ホモシステインは生体内では含硫黄アミノ酸、メチオニンからシステインへの代謝における代謝中間アミノ酸であり、通常低濃度で生体内に存在する。しかしながらこの代謝経路の異常はホモシステインレベルの上昇に直結し、各種疾患のインディケーターと成り得ることより臨床的に有用なアミノ酸の一つとされている。例えば、先天性代謝異常であるホモシスチン尿症においてはシスタチオニンβシンセターゼまたはメチルテトラヒドロ葉酸メチル転移酵素に欠失があることに由来するアミノ酸代謝異常である。また最近、血中ホモシステイン濃度の上昇がアテローム性動脈硬化症の発症に関連つけられるようになり、血中濃度の上昇が心臓疾患または脈管疾患の危険因子と結びつくものと考えられている。また糖尿病やアルコール中毒、肝および腎疾患や神経疾患等のインディケーターとしても報告されている。
【0003】
ホモシステインの測定方法として広く知られた方法としては、クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、ホモシステインをS−アデノシルホモシステイン加水分解酵素の存在下、アデノシンと反応させた後、生成物であるS−アデノシルメチオニンをHPLCで分離する方法がある(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。また、ホモシステインを蛍光団と反応させ、HPLCで蛍光分析する方法もある(例えば非特許文献3参照)。さらには、ホモシステインをN5−メチルテトラヒドロ葉酸存在下、N5−メチルテトラヒドロ葉酸−ホモシステインメチル転移酵素の作用によりメチオニンに変換した後、蛍光団と反応させ、HPLC、蛍光分析する方法も報告されている(例えば非特許文献4参照)。
【0004】
また、S−アデノシルホモシステイン加水分解酵素を用いた非クロマトグラフィー定量法も報告されている(例えば特許文献1参照)。この方法においては、ホモシステインを、アデノシン、フルオレセイン標識S−アデノシルホモシステイン、S−アデノシルホモシステイン加水分解酵素と反応後、反応液に存在するS−アデノシルホモシステインを抗S−アデノシルホモシステイン抗体で捕捉し、蛍光偏光イムノアッセイを行う方法を中心に、S−アデノシルホモシステイン加水分解酵素を利用する方法が詳述されている。
【0005】
このように、ホモシステインを測定する方法としては種々報告されているものの、いずれも満足なものではない。クロマトグラフィーを利用する測定方法は一般的に精巧な装置を必要とする。また費用的、時間的に負担が大きい方法である。また、イムノアッセイ法も一般生化学反応に比較すると複雑で時間がかかることが知られている。
【0006】
これらの知見から、ホモシステインを迅速且つ簡便に測定出来る手法が待望されており、特に酵素の基質特異性を利用して測定する生化学的手法は有望と考えられている。酵素を応用したホモシステインの測定法で従来知られているものとしては、ホモシステインをホモシステインデスルファラーゼに作用させ、生成するアンモニア、α−ケト酪酸または硫化水素を測定に用いる方法が報告されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、ホモシステインデスルファラーゼは特異性が低く、ホモシステイン以外にシステインにも作用するので、正確なホモシステインの定量が困難である。
【0007】
他にも、酵素を用いる手法が知られているが(例えば特許文献3及び特許文献4参照)、いずれも用いる酵素の基質特異性が低いために測定の特異性が高くない等の問題があり、臨床的測定法としては受け入れ難いものであった。
【0008】
また、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、ジメチルグリシンオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼなどを用いる酵素的ホモシステイン測定方法(例えば特許文献5参照)、O−アセチルホモセリン−リアーゼやL-メチオニンγリア−ゼを用いる酵素的ホモシステイン測定方法(例えば特許文献6参照)、O−アセチルホモセリンスルフヒドロラーゼを用いる酵素的ホモシステイン測定方法(例えば特許文献7参照)なども知られている。しかしながら、これらの方法においてもシステインの消去方法は開示されておらず、システインを含有する試料中のホモシステイン測定に関する記載も無い。
【0009】
このように、システインを含有する試料中のホモシステイン量を正確に測定することは困難であった。
【0010】
【特許文献1】
特表平8−506478号公報
【0011】
【特許文献2】
国際公開第98/07872号パンフレット
【0012】
【特許文献3】
特開2001−161399号公報
【0013】
【特許文献4】
特開2001−149092号公報
【0014】
【特許文献5】
特開2001−17198号公報
【0015】
【特許文献6】
特開2000−270895号公報
【0016】
【特許文献7】
特開2002−10787号公報
【0017】
【非特許文献1】
トタニら(Totani et al.),バイオケミカル・ソサイエティー(Biochemical Society),14(6),11712(1988)
【0018】
【非特許文献2】
シミズら(Shimizu et al.),バイオテクノロジー・アンド・アプライド・バイオケミストリー(Biotchnology and Applied Biochemistry),8,153(1986)
【0019】
【非特許文献3】
レフサムら(Refsum et al.),クリニカル・ケミストリー(Clinical Chemistry),35(9),1921(1989)
【0020】
【非特許文献4】
ガーラスら(Garras et al.),アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),199,112(1991)
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
ホモシステインの酵素的測定法は、操作性、測定時間などの面から有用と考えられるが、上述したように、システインを含有する試料中のホモシステインの測定においてホモシステインに対する反応の特異性の問題があり、ホモシステイン量が試料中のシステイン、特に生体内に存在するL-システインの影響を受けるため、正確な定量が困難である。
【0022】
したがって、本発明の主な目的は、L-システインの影響を受けず、正確かつ簡便で多数の検体処理が可能なホモシステインの酵素的測定方法及び測定用試薬を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することを主な目的として、本発明者らは鋭意検討を行った。より詳しくは、L-システインを含有する試料中のホモシステインの測定において、試料中のL-システインの消去反応をあらかじめおこなうことにより、ホモシステインを特異的に測定することのできる方法を提供することを課題とし、検討を行った。
【0024】
その結果、L-システイン分解酵素を利用したホモシステインの測定方法およびホモシステイン測定用試薬を開発し、これによりホモシステインを特異的に測定することができることを見出した。すなわち、ホモシステインおよびL-システインを含有する試料中のホモシステインの測定において、L-システイン分解酵素を利用したL-システインの消去系を組み入れることにより、混在する試料中のホモシステインの正確な定量が可能であることを見出した。
【0025】
さらに詳しくは、試料中のL-システインに、L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D-システイン、ホモシステインとは実質的に反応しないL-システイン分解酵素を、ピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させ、続いてホモシステインに反応する酵素を作用させてホモシステインを定量することを特徴とするホモシステインの測定方法およびホモシステイン測定用試薬を開発した。
【0026】
本発明により、L-システインが混在する試料中のホモシステインを正確かつ簡便に測定することが可能となる。
【0027】
即ち、本発明は以下の構成からなる。
【0028】
1.ホモシステインおよびL-システインを含有する試料中のホモシステインを測定する方法であって、L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D-システイン、ホモシステインとは実質的に反応しないL-システイン分解酵素を、ピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させることによりL-システインを試料中より消去し、ついでホモシステインおよびL-システインに反応する酵素を作用させることによりホモシステインを定量することを特徴とするホモシステインの測定方法。
【0029】
2.L-システイン分解酵素が、口腔内に存在する細菌由来のものである1記載のホモシステインの測定方法。
【0030】
3.L-システイン分解酵素が、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のいずれかの細菌由来のものである2に記載のホモシステインの測定方法。
【0031】
4.L-システイン分解酵素が、配列番号1記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むものである1〜3のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
【0032】
5.L-システイン分解酵素が、配列番号2記載の塩基配列、その相補配列、又はそれらとストリンジェントな条件でハイブリダイズする配列のいずれかによってコードされるものである1〜3のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
【0033】
6.L-システイン分解酵素が、配列番号3記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むものである1〜3のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
【0034】
7.L-システイン分解酵素が、更にセリン、アラニン、L-システインメチルエステル、L-メチオニンとも実質的に反応しない酵素である1〜6のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
【0035】
8.以下の(a)〜(e)のいずれかの工程を有する1〜7のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
(a)生成された硫化水素を、硫化物イオンの発色検出により測定する工程、
(b)生成されたアンモニアを、グルタミン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(c)生成されたピルビン酸を、ピルビン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADまたはNADPの存在下において作用させ、生成されたNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(d)生成されたピルビン酸を、乳酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(e)生成されたピルビン酸をピルビン酸酸化酵素の反応の基質とし、色原体及びペルオキシダーゼの存在下において作用させ、反応に伴い増加するキノン色素を発色定量する工程。
【0036】
9.L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D-システイン、ホモシステインとは実質的に反応しない酵素、ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素及びピリドキサル-5’-リン酸を含むことを特徴とするホモシステインの測定用試薬。
【0037】
10.L-システイン分解酵素が、口腔内に存在する細菌由来のものである9記載のホモシステインの測定用試薬。
【0038】
11.L-システイン分解酵素が、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のいずれかの細菌由来のものである10に記載のホモシステインの測定用試薬。
【0039】
12.L-システイン分解酵素が、配列番号1記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むものである9〜11のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
【0040】
13.L-システイン分解酵素が、配列番号2記載の塩基配列、その相補配列、又はそれらとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列のいずれかによってコードされるものである9〜11のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
【0041】
14.L-システイン分解酵素が、配列番号3記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むものである9〜11のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
【0042】
15.L-システイン分解酵素が、更にセリン、アラニン、L-システインメチルエステル、L-メチオニンとも実質的に反応しない酵素である9〜14のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
【0043】
16.更に、グルタミン酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸酸化酵素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素を含む9〜15のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0045】
L- システイン分解酵素
本発明で用いられる酵素としては、L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D-システイン、ホモシステインとは実質的に反応しないL-システイン分解酵素であれば特に制限はない。
L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応は、具体的には、以下の化学式で表される。
【0046】
【化1】
【0047】
また、D-システイン、ホモシステインと実質的に反応しないとは、L-システインとの反応と比較して、全く反応しないか又はほとんど反応しないことを意味する。例えば、図1においてL-システインのかわりにD-システイン、ホモシステインを用いて同様の試験を行った場合に、図1におけるL-システインが0mMのときとほぼ同様の測定結果が得られることを意味する。測定結果の判定には、従来用いられている任意の検定方法を適宜採用することができる。
本発明のL-システイン分解酵素は、ホモシステインと実質的に反応せず、高い基質特異性を有していることから、試料中の測定対象であるホモシステイン量を変化させることが無い。したがって、L-システインの消去用酵素として適切であり、本酵素を消去用酵素として用いることによりホモシステインの正確な定量が可能となる。
【0048】
本発明のL-システイン分解酵素は、更に、セリン、アラニン、L-システインメチルエステル、L-メチオニンとも実質的に反応しないものが好ましい。セリン、アラニン、L-システインメチルエステル、L-メチオニンと実質的に反応しないとは、L-システインとの反応と比較して、全く反応しないか又はほとんど反応しないことを意味する。
【0049】
セリン、アラニン、L-システインメチルエステル、L-メチオニンとも実質的に反応しないことによって、反応産物の生成による測定系への影響を考慮する必要が無く、したがって、試料に対する測定精度が高まって、ホモシステインのより正確な定量が可能となる。
本発明のL-システイン分解酵素は、好ましくは、口腔内に存在する細菌由来、より好ましくは口腔内常在細菌由来のものである。ここで、口腔内常在細菌とは、頻繁に口腔内から検出される細菌を意味する。
口腔内常在細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・サリバリアス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、アクチノマイセス・ネスランディー(Actinomyces naeslundii)、ペプトストレプトコッカス・ミクロス(Peptostreptococcus micros)、キャプノサイトファーガ・オクラセア(Capnocytophaga ochracea)、キャンピロバクター・グラシリス(Campylobacter gracilis)、ユーバクテリウム・ノダタム(Eubacterium nodatum)等が例示される。
このうち、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のいずれかの細菌に由来するL-システイン分解酵素が酵素反応性の点で好ましい。更に、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)に由来するL-システイン分解酵素が酵素反応性と、安定性の点でもっとも好ましい。
【0050】
また、本発明における、L-システイン分解酵素として、好ましくは、以下のものが挙げられる。
【0051】
配列番号1記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むL-システイン分解酵素。
【0052】
配列番号2記載の塩基配列、その相補配列、又はそれらとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列のいずれかによってコードされるL-システイン分解酵素。
【0053】
配列番号3記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換した配列を含むL-システイン分解酵素。
【0054】
配列番号1記載のアミノ酸配列を含むL-システイン分解酵素としては、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)由来の酵素が挙げられる。
【0055】
配列番号2記載の塩基配列によってコードされるL-システイン分解酵素としては、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)由来の酵素が挙げられる。
【0056】
配列番号3記載のアミノ酸配列を含むL-システイン分解酵素としては、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)由来の酵素が挙げられる。
【0057】
上記において、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加又は置換したものとは、従来周知の技術により得ることができ、かつ、上述した酵素の性質及び機能が失われていない範囲内のものである。
【0058】
また、上記において、「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリダイゼーションのみが起き、非特異的なハイブリダイゼーションが起きないような条件をいう。このような条件とは、通常、「1xSSC,0.1%SDS,37℃」程度、好ましくは「0.5xSSC,0.1%SDS,42℃」程度、更に好ましくは、「0.2xSSC,0.1%SDS,65℃」程度である。
【0059】
本発明で用いられる酵素は、該酵素を生産する微生物、例えば上述した口腔内に存在する細菌を培養して菌体を回収し、この菌体を超音波処理等により破砕して得られる破砕液を、必要に応じて、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトゲル、ゲル濾過等のカラムクロマトグラフィを組合せて精製することにより得ることができる。
【0060】
L- システインの消去方法
本発明のL-システインの消去方法は、試料中のL-システインに、上述のL-システイン分解酵素を、ピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させ、L-システインをアンモニア、ピルビン酸、硫化水素のいずれかの反応生成物へ変換することを特徴とする。
【0061】
本発明のL-システインの消去方法におけるL-システイン分解酵素の使用濃度は特に限定されないが、0.0005〜1mg/mlであり、特に0.002〜0.1mg/mlの範囲とすることが好ましい。
【0062】
また本発明において、補酵素として用いるピリドキサル-5’-リン酸の使用濃度も特に限定されないが、通常0.001〜0.1mmol/mlであり、特に0.005〜0.05mmol/mlの範囲が好ましい。
【0063】
本発明においては、緩衝液として、pH6〜10のリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス塩酸緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液等の、通常使用されるものを用いることができる。
【0064】
本発明の測定方法が適用される試料(検体)としては、L-システインを含有しホモシステインの濃度を測定したいものであれば特に制限はない。例えば、血液、血清、血漿、髄液、尿などの生体試料、又はこれらの生体試料から調製された試料等が好適に使用される。
【0065】
ホモシステインの測定方法
本発明のホモシステインの測定方法は、まず、試料中のL-システインに、上述のL-システイン分解酵素を、ピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させて消去し、ついでホモシステインおよびL-システインに反応する酵素を作用させて、生成された反応生成物のいずれかを定量することを特徴とする。
【0066】
ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素としては、例えば、ホモシステインデスルファラーゼ、O−アセチルホモセリン−リアーゼ、L-メチオニンγリア−ゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドロラーゼ、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素などが挙げられる。
ホモシステインデスルファラーゼは、更に、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、ピルビン酸酸化酵素などと組合わせて測定に用いる。またベタイン−ホモシステインメチル転移酵素は、更に、ジメチルグリシンオキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼなどと組合わせて測定に用いる。
【0067】
このうち、ホモシステインデスルファラーゼ、O−アセチルホモセリン−リアーゼ、L-メチオニンγリア−ゼが、酵素の最適条件に測定系を至適化することが容易である点で、好適に用いられる。
【0068】
反応生成物を定量する方法としては、例えば、生成された硫化水素を、一般的に知られた硫化物イオンの測定法、すなわち、発色検出として、2,2’−ジピリジルジスルファイド(スベンソン(Svenson),アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),107;51〜55(1980))やニトロプルシッドナトリウムを用いる方法、強酸性下で、N,N−ジメチル−P−フェニレンジアミンと塩化第二鉄を用いてメチレンブルーを生成させ青色発色を検出する方法(メチレンブルー法)、セレニウムを触媒として色素(トルジンブルーやメチレンブルー)の退色量及び速度を測定する方法(マウサビ(Mousavi)等,ブレチン・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティー・オブ・ジャパン(Bulletin of the Chemical Society of Japan),65;2770〜2772(1992)、(ゴックメン)Gokmen等,アナリスト(Analyst),119;703〜708(1994))などで定量する方法等が挙げられる。
【0069】
また、生成されたアンモニアを、グルタミン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する方法等が挙げられる。
【0070】
また、生成されたピルビン酸を、ピルビン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADまたはNADPの存在下において作用させ、生成されたNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する方法、或いは、生成されたピルビン酸を乳酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する方法等が挙げられる。また、生成されたピルビン酸をグルタミン酸酸化酵素の反応の基質とし、色原体及びペルオキシダーゼの存在下において作用させ、反応に伴い増加するキノン色素を発色定量するなどの手法と組合せることもできる。
【0071】
本発明の測定方法におけるL-システイン分解酵素の使用濃度は特に限定されないが、0.0005〜1mg/mlであり、特に0.002〜0.1mg/mlの範囲とすることが好ましい。
【0072】
また本発明において、補酵素として用いるピリドキサル-5’-リン酸の使用濃度も特に限定されないが、通常0.001〜0.1mmol/mlであり、特に0.005〜0.05mmol/mlの範囲が好ましい。
【0073】
また、本発明において用いるホモシステイン及びL-システインに反応する酵素の使用濃度も特に限定されないが、1〜200U/ml程度、特に10〜50U/ml程度の範囲とすることが好ましい。
【0074】
本発明において、更に補酵素(電子供与体)としてNADHまたはNADPHを用いる場合には、NADHまたはNADPHの使用濃度は、通常0.01〜10mmol/mlであり、特に0.05〜0.2mmol/mlの範囲が好ましい。補酵素の還元体を定量するために、還元されることによって発色する発色剤を併用してもよい。かかる発色剤は、使用する補酵素に応じて適宜選択すればよく、例えばNADの還元体であるNADHを定量するために、電子キャリアーとして、フェナジンメトサルフェートやジアホラーゼとテトラゾリウム塩を共存させ、生成されるホルマザン色素を比色定量する方法等が挙げられる。
【0075】
本発明においては、緩衝液として、pH6〜10のリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス塩酸緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液等の、通常使用されるものを用いることができる。
【0076】
本発明の測定方法が適用される試料(検体)としては、ホモシステインの濃度を測定したいものであれば特に制限はない。例えば、血液、血清、血漿、髄液、尿などの生体試料、又はこれらの生体試料から調製された試料等が好適に使用される。
【0077】
ホモシステイン測定用試薬
本発明のホモシステイン測定用試薬は、上述したL-システイン分解酵素、ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素及びピリドキサル-5’-リン酸を含むことを特徴とする。
【0078】
ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素としては、例えば、ホモシステインデスルファラーゼ、O−アセチルホモセリン−リアーゼ、L-メチオニンγリア−ゼ、O−アセチルホモセリンスルフヒドロラーゼ、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素などが挙げられる。
【0079】
本発明のホモシステイン測定用試薬には、更に、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、ピルビン酸酸化酵素、からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素を含むことが好ましい。
【0080】
本発明のホモシステイン測定用試薬は、2種以上の試薬構成とすることができる。例えば、L-システイン分解酵素とピリドキサル-5’-リン酸を含む第1試薬を生体試料に添加してL-システインの消去反応を行わせた後、ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素を含む第2試薬を添加して、生体試料中のホモシステインに作用させ、生成された1種又は2種以上の反応生成物を定量することによって、ホモシステインの測定を行うことができる。
【0081】
ただし、本発明のホモシステイン測定用試薬の試薬構成は第1試薬にL-システイン分解酵素とピリドキサル-5’-リン酸を含むものであればよく、補酵素及び測定用酵素を別々に組合せたものでもよい。
【0082】
例えば、L-システイン分解酵素とピリドキサル-5’-リン酸、並びに乳酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、及びピルビン酸酸化酵素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素を含む第1試薬と、ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素及びNADHを含む第2試薬との組合わせなどが挙げられる。
【0083】
また、L-システイン分解酵素とピリドキサル-5’-リン酸、およびNADHとを含む第1試薬と、ホモシステインおよびL-システインに反応する酵素、並びに、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素及びピルビン酸酸化酵素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素を含む第2試薬との組合わせなども挙げられる。
【0084】
本発明の測定試薬におけるL-システイン分解酵素の含有濃度は特に限定されないが、通常0.0005〜1mg/mlであり、特に0.002〜0.1mg/mlの範囲とすることが好ましい。
【0085】
また、ピリドキサル-5’-リン酸の含有濃度も特に限定されないが、通常0.001〜0.1mmol/mlであり、特に0.005〜0.05mmol/mlの範囲が好ましい。
【0086】
更に補酵素(電子供与体)としてNADHまたはNADPHを用いる場合には、NADHまたはNADPHの含有濃度は、通常0.01〜10mmol/mlであり、特に0.05〜0.2mmol/mlの範囲が好ましい。
【0087】
また、ホモシステイン及びL-システインに反応する酵素の使用濃度も特に限定されないが、1〜200U/mlであり、特に10〜50U/mlの範囲とすることが好ましい。
【0088】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0089】
酵素製造例( L- システイン分解酵素の製造)
(1)染色体DNA の調製
ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus) FW73株をブレインハートインフージョン(brain heart infusion)(Difco Laboratories)ブロス中において、5%二酸化炭素存在下で37℃、一昼夜培養した。定常期に達した菌液に等量の培地を加えて、さらに同じ条件下で約1時間培養した。さらに、培養液の3/20容量の20% グリシン(glycine)溶液を加え、約1時間培養した。その後、培養液を遠心して上清を取り除き、培養液の1/50容量の緩衝液(50 mM Tris-HCl, 50 mM glucose, 1 mM EDTA; pH 8)で菌体を懸濁した。同懸濁液 (250 μl) に 1.0 mg/ml (1,000 U/ml) のムタロライシン K-1(mutanolysin K-1) (25 μl) を加え37℃で30分間反応させた。同反応液に100 μl のリゾチーム(10 mg/ml; 和光純薬工業)を加え、37℃で60分間反応させた。その後、溶液中のRNAを除去するために、10 μlのリボヌクレアーゼ(10 mg/ml; ニッポンジーン)を加え、37℃で30分間反応させた。さらに、 10 μl のプロテイナーゼK(Proteinase K) (140 U/ml; Sigma Chemicals, USA) を混合し、37℃で60分間反応させた。続いて同反応液にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を1%になるように加え、穏やかに混合した。この反応液を用いて、フェノール・クロロホルム(1:1、v/v)混合溶液による抽出を4回程度行い、さらにクロロホルムによる抽出を1回行った。この抽出液と等量のイソプロパノールを緩やかに混合した際、白雲状に認められる染色体DNAをガラス棒で絡め取り、70%エタノールで洗浄した後、適当量のTE溶液(10 mM Tris-HCl, 1 mM EDTA; pH 8.0)に溶解し、使用時まで4℃で保存した。なお、本実施例で用いたストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus) FW73株は、九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座で継代保存されているものを用いた。
【0090】
(2)L-システイン分解酵素遺伝子を発現させるプラスミドの構築
ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus) FW73株のL-システイン分解酵素をコードする遺伝子は、すでに、吉田らによってクローン化され、その塩基配列は国際DNAデータベースである、DNA Data Bank of Japan (DDBJ)に登録されている(登録番号:AB084812)。その塩基配列をもとに、BamHIおよびSalIの制限酵素サイトを付したプライマーを設計した(フォワードプライマー; 5’-TCCGGATCCCGCAAATACAATTTTCAAA-3’(配列番号4)、リバースプライマー; 5’-GACGTCGACTTATTGCGCCAAACAATGCA-3’(配列番号5))。Taq DNAポリメラーゼを用いて、ストレプトコッカス・アンジノサス FW73株の染色体DNAを鋳型としたPCR法にてL-システイン分解酵素をコードする約1.2 kbのDNA断片を増幅した。以上のPCR産物は、QIAquick PCR Purification Kit (Qiagen) を用いて未反応のdNTPおよびプライマーを除去した。発現ベクターとして、N末端にグルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)をコードする遺伝子および プレサイション プロテアーゼ(PreScission Protease)切断部位を含むpGEX-6P-1 (Amarsham)を用いた。得られたDNA断片をBamHIおよびSalIで切断した後に、同様にBamHIおよびSalIで切断し、脱リン酸化処理した発現ベクターpGEX-6P-Iと等モルずつライゲーションした。こうして得られたプラスミドをエシェリヒア コリ(Esherichia coli )BL21株に形質導入した。本プラスミドはpMILCD110と名付けた。
【0091】
(3)組換えL-システイン分解酵素の精製
組換えL-システイン分解酵素の精製にはRediPack GST Purification Module (Amersham) を用い、操作はキットに添付されている指示書にしたがって行った。まず、BL21株にpMILCD110を導入した形質転換株を、100 μg/mlのアンピシリンを含む 2 ×YT培地を用いて37°Cで培養し、この菌液が550 nmでの吸光度約1.0 に達した時点でIPTGを1 mMになるように加え、さらに37°Cで1.5時間培養した。その後、培養液を4°C、6,000×gで10分間遠心して集菌した。この菌体を1 g (湿重量) あたり2-5 mlの氷冷したPBS (140 mM NaCl、2.7 mM KCl、10 mM K2HNO3、1.8 mM KH2NO3; pH 7.3) で懸濁し、超音波破砕機 (Heat Systems-Ultrasonics Inc., USA) を用いて、氷上にて冷却しながら出力30%、パルス幅0.5秒で30秒の菌体破砕を、冷却のため60秒の休止をおきながら合計5回行った。菌体破砕液は4°C、12,000×gで30分間遠心して上清を回収した。次に、グルタチオン セファロース(Glutathione Sepharose) 4Bの入ったカラムを氷冷したPBS 600 μlで平衡化した後、600 μlの菌体破砕液上清を加え、4°C、3,000×gで1分間遠心してカラムに吸着させた。このカラムを600 μlの氷冷したPBSで3回洗浄したのち、600 μlの氷冷したプレサイションクリベージバッファー(PreScission Cleavage Buffer) (50 mM Tris/HCl、150 mM NaCl、1 mM EDTA、1 mM ジチオスレイトール(dithiothreitol; pH 7.0) で2回洗浄した。これに180 μlのプレサイションクリベージバッファー(PreScission Cleavage Buffer)および10 μlのプレサイションプロテアーゼ(PreScission Protease (Amersham)) を加え、4°Cで一晩GST融合タンパクを消化した後に、カラムを4°C、3,000×gで1分間遠心して精製し、L-システイン分解酵素であるL-システインデスルフヒドラーゼ(L-cysteine desulfhydrase)を得た。
【0092】
実施例
上記酵素製造例で得られたL-システイン分解酵素、ホモシステインデスルフラーゼ(プロテウス・モルガニー(Proteus morganii)IFO3168由来):メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology), Vol.2, p318 (1955); ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry), Vol.192, p371 (1951); 特開2001−161399号公報参照)、L-乳酸脱水素酵素(ブタ由来:東洋紡績製)、及び、電子供与体として補酵素NADH(オリエンタル酵母製)を用いて、以下に示すホモシステイン定量用試薬を作成した。
【0093】
試薬組成:
<第1試薬>
50mM:リン酸緩衝液(pH7.0)
0.01mM:ピリドキサル-5’-リン酸
0.01mg/ml:L-システイン分解酵素
100U/ml :L-乳酸脱水素酵素
0.2mM:NADH
<第2試薬>
50mM:リン酸緩衝液(pH7.0)
50U/ml :ホモシステインデスルフラーゼ
ここで、37℃において1分間に1μmoleの反応を触媒する酵素量を1Uとする。そして、この試薬を用いて、以下に示すようにして、各種ホモシステイン濃度(0〜0.5mM)およびL-システイン濃度(0.1〜0.5mM)の試料溶液を測定した。
【0094】
各濃度の試料溶液各10μlに対し、第1試薬0.15mlを添加して37℃で5分反応させ、次に第2試薬0.15mlを添加して37℃で5分反応させ、波長340nmの吸光度を12秒毎に測定して、生成されたNADの定量、すなわちNADHの減少量の定量を行った。これらの操作は、日立7150形自動分析装置により行った。
【0095】
12秒毎の測定を1ポイントとし、50ポイントの値より26ポイントの値を引くことで、測定値を求めた。その結果を図1に示す。
【0096】
図1から明らかなように、ホモシステイン濃度0〜0.5mMまで、直線的な吸光度変化の上昇が得られた。得られた直線の関係は、y=162〜166x、r2=0.998〜1.00(ここで、yは吸光度変化、xはホモシステイン濃度、rは相関係数)であって、正確なホモシステインの定量が可能であることが分かった。
【0097】
比較例
L-システイン分解酵素およびピリドキサル-5’-リン酸を使用せず、ホモシステインデスルフラーゼ(プロテウス・モルガニー(Proteus morganii)IFO3168由来):メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology), Vol.2, p318 (1955); ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry), Vol.192, p371 (1951); 特開2001−161399号公報)、L-乳酸脱水素酵素(ブタ由来:東洋紡績製)、及び、電子供与体として補酵素NADH(オリエンタル酵母製)を用いて、以下に示すホモシステイン定量用試薬を作成した。
【0098】
試薬組成:
<第1試薬>
50mM:リン酸緩衝液(pH7.0)
100U/ml :L-乳酸脱水素酵素
0.2mM:NADH
<第2試薬>
50mM:リン酸緩衝液(pH7.0)
50U/ml :ホモシステインデスルフラーゼ
そして、この試薬を用いて、実施例と同様の方法により、各種ホモシステイン濃度(0.1〜0.5mM)およびL-システイン濃度(0.1〜0.5mM)の試料溶液を測定した。
【0099】
実施例と同様に、12秒毎の測定を1ポイントとし、50ポイントの値より26ポイントの値を引くことで、測定値を求めた。その結果を図2に示す。
【0100】
図2から明らかなように、測定結果は試料中のL-システインの影響を受け、同濃度のホモシステインに対し、正確な吸光度変化が得られなかった。すなわち、本発明の方法であるL-システイン分解酵素をピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させてL-システインを試料中より消去することによって初めて、正確なホモシステインの定量が可能であることが明らかとなった。
【0101】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、ホモシステインおよびL-システインを含む試料に、L-システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D-システイン、ホモシステインとは実質的に反応しないL-システイン分解酵素を、ピリドキサル-5’-リン酸の存在下において作用させることにより、L-システインを消去させ、更に、ホモシステインおよびL-システインと反応する酵素を作用させるという構成を有することによって、正確なホモシステインの定量が可能となる。また、本発明により、正確かつ簡便なホモシステインの測定用試薬も提供される。
【0102】
本発明を利用することにより、汎用の自動分析装置を用いて多数の検体処理を行うことも可能となる。
【0103】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例によるホモシステイン測定の結果を示す。
【図2】図2は、本発明の比較例によるホモシステイン測定の結果を示す。
Claims (12)
- ホモシステインおよびL−システインを含有する試料中のホモシステインを測定する方法であって、L−システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D−システイン、ホモシステインとは実質的に反応しない、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のいずれかの細菌由来のL−システイン分解酵素を、
ピリドキサル−5’−リン酸の存在下において作用させることによりL−システインを試料中より消去し、ついで
ホモシステインおよびL−システインに反応する酵素をホモシステインに作用させることによりホモシステインのみを定量することを特徴とするホモシステインの測定方法。 - L−システイン分解酵素が、配列番号1記載のアミノ酸配列を含むものである請求項1に記載のホモシステインの測定方法。
- L−システイン分解酵素が、配列番号2記載の塩基配列によってコードされるものである請求項1に記載のホモシステインの測定方法。
- L−システイン分解酵素が、配列番号3記載のアミノ酸配列を含むものである請求項1に記載のホモシステインの測定方法。
- L−システイン分解酵素が、更にセリン、アラニン、L−システインメチルエステル、L−メチオニンとも実質的に反応しない酵素である請求項1〜4のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
- 以下の(a)〜(e)のいずれかの工程を有する請求項1〜5のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
(a)生成された硫化水素を、硫化物イオンの発色検出により測定する工程、
(b)生成されたアンモニアを、グルタミン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(c)生成されたピルビン酸を、ピルビン酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADまたはNADPの存在下において作用させ、生成されたNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(d)生成されたピルビン酸を、乳酸脱水素酵素の反応の基質とし、NADHまたはNADPHの存在下において作用させ、反応に伴い減少するNADHまたはNADPHを紫外部吸光により定量する工程、
(e)生成されたピルビン酸をピルビン酸酸化酵素の反応の基質とし、色原体及びペルオキシダーゼの存在下において作用させ、反応に伴い増加するキノン色素を発色定量する工程。 - L−システインに反応してアンモニア、ピルビン酸及び硫化水素を生成する反応を触媒し、D−システイン、ホモシステインとは実質的に反応しない、ストレプトコッカス・アンジノサス(Streptococcus anginosus)又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)のいずれかの細菌由来のL−システイン分解酵素、ホモシステインおよびL−システインに反応する酵素及びピリドキサル−5’−リン酸を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載されるホモシステインの測定方法に使用するためのホモシステインの測定用試薬。
- L−システイン分解酵素が、配列番号1記載のアミノ酸配列を含むものである請求項7に記載のホモシステインの測定用試薬。
- L−システイン分解酵素が、配列番号2記載の塩基配列によってコードされるものである請求項7に記載のホモシステインの測定用試薬。
- L−システイン分解酵素が、配列番号3記載のアミノ酸配列を含むものである請求項7に記載のホモシステインの測定用試薬。
- L−システイン分解酵素が、更にセリン、アラニン、L−システインメチルエステル、L−メチオニンとも実質的に反応しない酵素である請求項7〜10のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
- 更に、グルタミン酸脱水素酵素、ピルビン酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、ピルビン酸酸化酵素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の酵素を含む請求項7〜11のいずれかに記載のホモシステインの測定用試薬。
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