JP4214233B2 - 透明材料の微細加工方法および微細構造体 - Google Patents

透明材料の微細加工方法および微細構造体 Download PDF

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Description

本発明は、レーザーによる微細加工方法に関する。
石英ガラスなどの透明基板上にパターン化された有機薄膜を作製することは、配線、電極、絶縁層、発光層、光学薄膜として広く用いられており、半導体素子、ディスプレー、発光素子などの分野に適用されている。
通常、有機薄膜をパターンニングするためには、フォトリソグラフィー法が用いられている。フォトリソグラフィーの手法を用いる事により、サブミクロンサイズのパターン加工が可能となる。しかしながら、フォトリソグラフィーの手法を採用すると、全体の工程数が多くなるという欠点がある。一般的なフォトリソグラフィーによるパターン化された有機薄膜の形成の工程は、次のような工程からなる。まず、パターン加工を行う薄膜を基板全面に形成する。さらに、レジスト塗布、露光、現像、洗浄などを経てレジストパターンを形成する。その後に、レジストパターンをマスクとしてエッチング処理を行い不要な部位を除去して、有機薄膜からなる任意のパターン形状を得る。
特開2002−18273号公報(特許文献1)によれば、以下の方法が提案されている。
「紫外光を遮光するパターンを有する基板表面に膜厚が3nm以下の有機分子膜を形成した後に、前記基板を介して紫外光を照射して、有機分子膜の一部を除去する有機分子膜パターンの製造方法。」
そして、この方法によれば、フォトマスクを用いなくとも、基板上に有機分子膜パターンを形成することができる。そして、紫外光を遮光するパターンは、金属薄膜パターンからなる。紫外光の波長が、200nm以上、380nm以下の範囲にあり、前記基板が、200nm以上、380nm以下の範囲の紫外光に対して吸収が小さいものであり、前記基板は、石英あるいはガラスである。
複数の官能基を有する有機分子を基板上に形成する方法は、あらかじめ清浄にした基板表面全体に第一の有機分子膜を形成し、所望の形状に第一の有機分子膜の一部を除去し、さらに、除去した領域にのみ第二の有機分子膜を形成するのが一般的である。3種類以上の官能基を有する有機分子膜を形成する場合には、さらに所望の形状に第一あるいは第二の有機分子膜を除去し、そこに、べつの有機分子膜を形成する。類似の有機分子膜パターンを製造する方法としては、特開2002−19008号公報(特許文献2)、特開2002−23356号公報(特許文献3)、ならびに、特開2002−23367号公報(特許文献4)]がある。特開平5−330063号公報(特許文献5)では、紫外レーザーアブレーション法によってノズル板上のぬれ性改質膜やぬれ性改質層を選択的に除去する方法が記載されている。
これらの方法は,いずれも紫外光を照射する方法であり、紫外光を照射したのでは、超微細加工はできないという点に,その限界がある。
近年、光学素子の高性能化や微小流路反応セルなどの開発研究が高度化し、基板表面に微細加工を行うことと、有機分子膜パターンを形成することを同時に簡便に行う手法の開発が求められてきた。具体的には,以下の方法が提案されている。
石英ガラス単体の微細加工方法としては、以下の方法が知られている。
(1)多段階リソグラフィ法
この方法では、まず、適切なレジストを基板表面に製膜した後、リソグラフィによってパターニングし、イオン・ビームやプラズマ、または、フッ酸を用いてエッチングを行う。その後、更にレジストを剥離する工程が加わる[例えば、Bennionら:Electron.Lett.Vol.22,p.341(1986))(非特許文献1)。特開平6−280060号公報(特許文献6)の方法]。
(2)イオンエッチング法
イオン注入法により生じたエッチング速度の差を利用して、マスクレスの化学エッチングを行う方法[Albertら:Appl.Phys.Lett.Vol.63,p.2309(1993)(非特許文献2)]。
(3)短波長レーザー法
透明材料が吸収できる短波長光を発振するレーザーを利用してドライエッチングを行う方法[例えば、特開平7−256473号公報(特許文献7)]
(4)極短パルスレーザー法
パルス幅がピコ秒以下の極短パルスレーザーを使用したドライエッチング法[Varelら:Appl.Phys.A,vol.65,p.367,(1997)(非特許文献3)]
(5)レーザー誘起プラズマ法
真空容器中、金属の基板をガラスの後方に置いて、レーザーを照射し、金属から発生したプラズマを利用して行う[Zhang、杉岡ら:1998年春季応用物理学会学術講演会講演予稿集28a−W−4,p.1039(1998)(非特許文献4)]
上記(1)の方法は、フォトリソグラフィ技術に利用するものであるので、レジストの塗膜、乾燥、露光、現像、エッチング、剥離などの複雑工程が必要である。微細加工するうえでは、長時間を要するという問題がある。(2)の方法は集光できるイオン注入装置が必要であり、加工できる範囲が小さい。また、操作に長時間を要し、量産に向いてないという問題がある。(3)および(4)の方法では高真空下で操作することが必要であり、エネルギー効率も悪く、量産に向いていないという問題がある。(5)の方法では、金属基板表面とガラス表面とのレーザー密度を同時に調整するするひつようがあるためにマスクのイメージの形成が難しく、かつ、真空環境が必要であるなどの問題がある。更に(5)の方法では未照射部分でも金属がコーティングされてしまい、試料への損傷が大きく、酸による洗浄工程が必要で処理に手間がかかる。
レーザーなどを用いる従来技術は、実用性という点から見てみると、問題は多い。
上記の(1)〜(4)の他にも以下の例が知られている。(5)池野らの報告がある[池野:精密光学会誌、Vol.55,p.335(1989)(非特許文献5);池野:レーザー学会研究会報告、RTM−98−4,p.23(1998)(非特許文献6)]。パルス幅1msのYAGレーザーの基本波(波長1064nm)を利用して、硫酸ニッケル溶液を用いて石英ガラスの穴あけ加工を行っている。この方法では非常に高いレーザー強度が必要であり、報告例では、10000J/cm/pulse程度のレーザー強度が使われている。したがって、この強いレーザーに対しても透明性が高い透明材料であることが求められ、石英ガラスに使用が限定されている。
いずれにしても、上記(1)〜(5)の方法は、石英ガラス材料など基板単体の微細加工方法であって、有機薄膜パターン形成については、一切述べられていないものである。
このようなことを背景にして、本発明者の一人は、レーザー光化学などの基礎研究として、ポリマーに対してレーザーアブレーションを行ったときに、レーザー強度依存性があることを研究した[王ら:Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38、p.871−876(1999)(非特許文献7)]。
また、本発明者らは、「
流動性物質を透明材料の裏面に接触させ、透明材料の表面から強度範囲が0.01J/cm2/pulseから100J/cm2/pulseまでのレーザーを照射することによる透明材料の微細加工法。」の発明を行った(特許文献8 特許第3012926号)。
この方法は、従来の紫外光を用いる方法などと対比して、「約一万分の一のレーザー強度で、真空雰囲気が不要で、かつ、一段階で精密に透明材料を微細エッチングすることができる簡便な方法」である。
この方法は、透明材料に対してエッチングによる微細加工を行うことができるという点では画期的であるということができるものの、超微細な有機薄膜のパターンを形成できるものではなく、また、その結果として得られる基板表面上にパターン化された有機薄膜を形成された新規な構造体の開発が望まれていた。
特開2002−18273号公報 特開2002−19008号公報 特開2002−23356号公報 特開2002−23367号公報 特開平5−330063号公報 特開平6−280060号公報 特開平7−256473号公報 特許第3012926号公報 Bennionら:Electron.Lett.Vol.22,p.341(1986) Albertら:Appl.Phys.Lett.Vol.63,p.2309(1993) Varelら:Appl.Phys.A,vol.65,p.367,(1997) 1998年春季応用物理学会学術講演会講演予稿集28a−W−4,p.1039(1998) 精密光学会誌、Vol.55,p.335(1989) レーザー学会研究会報告、RTM−98−4,p.23(1998) Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38、p.871−876(1999) Applied Physics A誌、Vol.75,No.6,pp.641−645(2002) Applied Physics A 誌、Vol.74,No.4,pp.453−456(2002) Applied Surface Science誌、Vol.186,No.1−4,pp.276−281(2002)
本発明の課題は、透明基板の表面にパターン化された有機薄膜とエッチング表面からなる構造体、及びエッチングされたパターンが形成されると同時に、パターン化された有機薄膜によるパターンを形成する微細加工方法、及びパターン化された多重の有機薄膜を有する構造体及びそれを形成する微細加工方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題について鋭意検討し、以下の事柄を新たに見出して、本発明を完成させた.
あらかじめ有機薄膜の層を透明基板表面に形成した後、レーザー波長に強い吸収を持つ流動性物質を前記透明基板の表面に接触させた状態で、前記有機薄膜とは反対側の透明基板に0.01J/cm/pulseから100J/cm/pulseまでの強度のレーザーを照射することにより、有機薄膜に微細加工が施された透明基板を得ること、透明基板の表面にパターン化された有機薄膜とエッチング表面からなる構造体及びその形成方法を見出した。
この有機薄膜層を形成するための形成方法としては、シランカップリング処理、スピンコート処理、溶液浸せき法、溶液キャスト処理などが有効であることを見出した。
この透明基板の有機薄膜層に、前記レーザー照射による表面微細加工により、レーザー照射部位は有機薄膜層およびガラス基板の表面層がエッチングされ、同時に除去される。その際に、レーザー非照射部位には有機薄膜層が損傷を受けずに残され、これにより、パターン化された有機薄膜が透明基板の表面に形成され、パターン化されたエッチングがほどこされた透明基板が得られる。即ち、レーザー照射部位は透明基板が露出したエッチングされた表面が形成され、レーザー非照射部位は有機薄膜層の最表面層が形成される。そして、石英ガラス基板の疎水性有機薄膜材料にレーザー照射を行った場合、レーザー照射部位は石英ガラスが露出して親水性を示し、一方、非照射部位は疎水性となり、両者は表面極性(ぬれ性)が異なるパターンを得る事ができる。
この表面極性の違いを利用して、多重パターン化有機薄膜を作成することが可能となる。具体的には、前記処理を行って得られる表面にパターン化された有機薄膜とエッチング表面を形成した透明基板を、水溶液溶媒中の流動性物質(色素など)を接触させると、前記親水性部位であるレーザー照射エッチング表面部位は水溶液と強い親和力により結び付けられる。一方、レーザー非照射表面部位は有機薄膜層が最表面層となり、疎水性である有機薄膜の部分は,水と親和力がないので、はじかれることになる。したがって、レーザー照射エッチング表面部位である親水性部位のみに位置選択的に、水溶性溶媒中の流動性物質を付着させることができ、基板表面を乾燥させると、溶媒は除去され、前記、親水性部位には、第2のパターン化された有機薄膜を形成する事ができる
一方、疎水性溶媒(例えばアルカン有機溶液を用いた場合)中の流動性物質(色素など)を接触させて、同様な処理を施すと、有機薄膜の表面に疎水性溶媒中の流動性物質(色素など)強く結び付けられ、有機薄膜の上にパターン化された有機薄膜を形成する多重パターン化された有機薄膜をえることができる。
以上の方法により、レーザー照射エッチング加工後の基板の表面極性の違いと色素溶液の極性との相互作用を利用することで、多重パターン化有機薄膜を作成することが可能である。さらに、加工パターンのポジパターンとネガパターンを溶液の極性を制御することでつくり分けることができる。以上の微細加工方法で得られる。また、透明基板表面上にレーザー光を照射することにより同時に形成されているパターン化された有機薄膜とエッチング表面上にこれらのパターン化された多重有機薄膜構造体を形成することは、本発明によってのみ作成可能のである。
また、同じく、パターン化された有機薄膜とエッチング表面を形成した透明基板に、水溶性溶媒中の微小球または微粒子の有機高分子化合物、セラミック、または炭素化合物から選ばれる化合物と接触させた状態で接触させると,前記と同じ理由により、水溶性溶媒中の微小球または微粒子の有機高分子化合物、セラミック、または炭素化合物から選ばれる化合物は、親水性部位のみに位置選択的に、水溶性溶媒中の流動性物質を付着させることができ、基板表面を乾燥させると、溶媒は除去され、前記、親水性部位のエッチング表面にパターン化された微小球または微粒子集合体層を形成することができ、透明基板の表面に有機薄膜及び微粒子集合体層を形成することができる。透明基板表面上にレーザー光を照射することにより同時に形成されているパターン化された有機薄膜とエッチング表面上にパターン化されたエッチング表面上のパターン化された有機薄膜からなる多重構造体を形成することは、本発明によってのみ作成可能のである。
具体的には、本発明では、本発明者らの特許第3012926号公報(特許文献8)記載の透明材料のレーザー微細加工法(流動性物質を透明材料の裏面に接触させ、透明材料の表面から強度範囲が0.01J/cm2/pulseから100J/cm2/pulseまでのレーザーを照射する方法,以下、単にA方法とも言う)を用いて、表面にあらかじめ有機薄膜層を形成させた石英ガラス基板などの透明材料基板に表面微細加工を行う。有機薄膜層の形成方法としては、シランカップリング処理、スピンコート処理、溶液浸せき法、溶液キャスト処理などが挙げられる。
本発明によれば、以下に示す透明基板の微細加工方法及び透明基板への多重パターン形成方法が提供される。
明基板表面に有機薄膜を形成した後、レーザー波長に強い吸収を持つ流動性物質を前記透明基板の表面に接触させた状態で、前記透明基板の有機薄膜とは反対側から0.01J/cm/pulseから100J/cm/pulseまでの強度のレーザーを照射することにより、前記透明基板上にパターン化された有機薄膜を形成すると同時に、前記透明基板がエッチングされた表面を形成することを特徴とする透明基板の微細加工方法。
(2)前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面とで、表面極性が異なるパターンが形成されていることを特徴とする(1)に記載の透明基板の微細加工方法。
)前記透明基板として、石英ガラス、一般ガラス、フッ化カルシウム、シリコンカーバイド、サファイヤ、アルミナ、水晶又はダイヤモンドから選ばれたいずれか一つの基板を用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の透明基板の微細加工方法。
)前記有機薄膜がシランカップリング剤由来のものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の透明基板の微細加工方法。
(5)前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面の表面極性の違いを利用して、前記透明基板上に多重パターンを形成する方法であって、(1)〜(4)のいずれかに記載の微細加工方法が施された透明基板の表面を、極性の低い溶液で処理することにより、前記パターン化された有機薄膜の表面に別の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
(6)前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面の表面極性の違いを利用して、前記透明基板上に多重パターンを形成する方法であって、(1)〜(4)のいずれかに記載の微細加工方法が施された透明基板の表面を、極性の高い溶液で処理することにより、前記エッチング表面に別の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
(7)前記極性の低い溶液又は前記極性の高い溶液として、有機高分子化合物、セラミックス、又は炭素化合物の微小球又は微粒子を含有する溶液を用いることにより、前記パターン化された有機薄膜の表面又は前記エッチング表面に微小球又は微粒子の集合体層を形成することを特徴とする(5)又は(6)に記載の透明基板への多重パターン形成方法。
(8)透明基板表面に第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成した後、レーザー波長に強い吸収を持つ流動性物質を前記透明基板の表面に接触させた状態で、前記透明基板の有機薄膜とは反対側から0.01J/cm /pulseから100J/cm /pulseまでの強度のレーザーを照射することにより、前記透明基板上にパターン化された第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成すると同時に、前記透明基板がエッチングされた表面を形成し、次いで、前記第1のシランカップリング剤とは異なる第2のシランカップリング剤で処理することにより、前記エッチングされた表面に第2のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成し、その後、前記第1のシランカップリング剤又は前記第2のシランカップリング剤が有する官能基を利用して、前記第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜又は第2のシランカップリング剤からなる有機薄膜の表面に、第3の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
本発明によれば、透明材料の表面にエッチングされたパターンを形成すると同時に、有機薄膜によるパターンを形成した構造体及びその微細加工方法が可能となる。また、パターン化された有機薄膜とエッチング表面を形成した透明基板に、レーザー波長に強い吸収を持つ水溶性溶媒中の流動性物質と前記透明基板表面に接触させた状態で処理することにより、パターン化された有機薄膜とは別に前記エッチング表面にパターン化された有機薄膜を形成する多重有機薄膜形成体及びその微細加工方法を得ることができる。同様に、パターン化された有機薄膜とエッチング表面を形成した透明基板に、レーザー波長に強い吸収を持つ疎水性溶媒中の流動性物質と表面に接触させた状態処理することにより、前記パターン化された有機薄膜の表面にさらにパターン化された有機薄膜を形成する多重有機薄膜構造体及びその微細加工方法を得ることができる。
又,パターン化された有機薄膜とエッチング表面を形成した透明基板に、水溶性溶媒中の微小球または微粒子の有機高分子化合物、セラミック、または炭素化合物から選ばれる化合物と接触させた状態で,同様に処理することにより、前記パターン化された有機薄膜とは別に前記エッチング表面にパターン化された微小球または微粒子集合体層を形成することができる。
これらにより、表面に有機薄膜パターン構造を有する透明材料のマイクロメートル〜ナノメートルサイズの微細加工が可能である。具体的な応用例としては、マイクロレンズアレー、回折格子、光導波路、発光素子、フォトニック素子、液晶配向基板などの光学素子の加工やDNAチップ基板、マイクロリアクター反応容器、マイクロ分析セル、センサー基板などの化学・環境・バイオ・医用材料、極微小マーキング、微小電気回路素子などの産業応用材料のように様々な応用が可能となる。
本発明に用いられる透明基板は、レーザー波長を透過する透明性のもが用いられる。具体的は、石英ガラス、一般ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、シリコンカーバイド、アルミナ、サファイヤ、水晶、ダイヤモンドのような無機材料、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂などのプラスチック材料、有機ガラス、有機結晶・固形化合物、およびそれらの混合物などが挙げられる。透明材料の形態は基板状、容器状、管状など任意の形状のものを用いることができる。
この透明基板の表面に、有機薄膜層を形成する。
有機薄膜層の形成には,以下の方法が採用される。
(1)シランカップリング処理、(2)スピンコート処理、(3)溶液浸せき法、及び(4)溶液キャスト処理
(1)シランカップリング処理について
有機薄膜形成方法としては、自己組織化膜作成方法を用いる。基板表面または金属薄膜表面に結合可能な官能基とその反対側に親水基あるいは疎水基といった基板の表面状態や化学反応性を制御する官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を有しており、基板に結合して自己組織化して分子薄膜を形成する。この有機分子膜の膜厚は、分子鎖の長さによって決まるが、通常1nm程度、厚くとも10nm程度である。本発明において基板表面に形成される自己組織化膜とは、基板など下地層の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。前記自己組織化膜は単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。したがって、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた疎水性や親水性などの表面極性特性を付与することができ、微細なパターンニングをする際に特に有用である。
前記自己組織化膜作製用の有機化合物としては、ヘプタデカフルオロ・テトラヒドロデシル・トリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ・テトラヒドロデシル・トリクロロシラン、トリデカフルオロ・テトラヒドロオクチル・トリクロロシラン、トリフルオロプロピル・トリメトキシシラン、ヘプタフルオロ・イソプロポキシプロピル・トリメトキシシラン等のフルオロアルキルシランや、炭化水素アルキル基を有するアルキルシランも使用できる。また、前記シラン化合物にアミノ基やチーオル基などの各種の官能基が末端部などに置換した化合物も有効である。
前記有機化合物をシランカップリング剤として用いる事により、前記基板上に
有機薄膜を形成することができる。
具体的には,前記化合物を基板に接触させる事により行われる。
(2)スピンコート処理、
透明基板表面にスピンコート法により、溶液状の有機物質を塗布して有機薄膜層を形成する。
有機物質は被覆形成能を有するものであればよく、従来公知のものが適宜用いられる。このものには、各種の高分子物質(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、タンパク質等)の他、各種の有機金属化合物(有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等)等が用いられる。
熱可塑性樹脂には、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが挙げられる。また、熱硬化性樹脂には、t―ブトキシスチレン、シリコーン樹脂などが、光硬化性樹脂には感光性樹脂が有効で、タンパク質としてはアルブミンやリゾチームが効果的である。
(3)溶液浸せき法、及び(4)溶液キャスト処理
前記スピンコート処理に用いた有機物質を用いて、その溶液中に基板を浸せきしたり、溶液キャスト処理して有機薄膜層を形成するものである。
前記方法により形成される有機薄膜の厚さは、0.1〜10nm、好ましくは1〜10nm、より好ましくは1〜200nmである。
有機薄膜の透明材料への密着性を向上させるために、透明基板表面と有機薄膜層との間に金属薄膜層を形成する事が有効である。金属薄膜層を形成するためには、基板の表面に金属蒸着等の手段が採用される。例えば,金を蒸着させた場合にはアルキルチオールなどによる自己組織膜の形成が可能となる。チオール基を有するアルキル化合物のほかに、芳香族化合物、フッ素系化合物を利用することができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組み合わせて使用しても、本発明の所期の目的を損なわなければ制限されない。
この金属薄膜には、金、銀、白金などの貴金属類や鉄、コバルトなどの遷移金属類でも、密着性が向上する金属薄膜であれば、種類や構造は任意である。また、合金薄膜を用いることも可能である。薄膜の厚さは、単原子層から10ミクロン程度までが好適である。このとき50nm程度以上の厚さの薄膜を用いる場合光反射特性も向上するため、当該成型品を光センサーなどの光検出部品として用いる場合には、同時に光検出の高感度分析化も達成できる素子構造になる。
本発明に使用される流動性物質としては、使用しているレーザー波長に高い吸収率を持つ物質であれば良く、例えば、ピレンのアセトン溶液、ベンジルのアセトン溶液、ピレンのテトラヒドロフラン溶液、ローダミン6Gのエタノール溶液、フタロシアニンのエタノール溶液などのような芳香族環を含む有機化合物の溶液;有機色素化合物を含む溶液;ベンゼン、トルエン、四塩化炭素などのような液体状の化合物などが挙げられる。また、有機化合物、有機色素、無機顔料、あるいは炭素などの微粒子などを分散して作った溶液や、有機化合物、有機色素、無機顔料、あるいは炭素粉末などの微粒子や微結晶で作った流動性粉体などが挙げられる。これらは必要に応じて界面活性剤などを添加して用いることができる。
更に、上記に挙げられた物質の二種類以上を混合して作られた流動性物質も使用することができる。これらの物質は使用しているレーザー波長に対して、高い吸収率を有することが必要で、例えば、流動性物質と透明材料の界面から、流動性物質内部に0.1mmの深さで10%以上の吸収率を有することが望ましい。更に望ましいのは0.1mmの深さで50%以上の吸収率を有することである。吸収率が十分に高くない場合には、エッチングの精密化及び微細化が十分には達せられない。
前記流動性物質を前記有機薄膜層を形成した透明基板の表面に接触させた状態とする。これは以下のようにして行われる。
図6のように有機薄膜2を形成した透明基板3に流動性物質1を接触させる。透明基板がセルなどの容器状の場合には直接に容器に流動性物質を入れる。管状の場合には片方を密封して流動性物質を入れる。透明基板が平面基板、曲面基板などの基板状材料の場合には、この基板を容器の一面として流動性物質を入れるように容器状のものを作る。金具による固定法、大気圧を利用した吸引法、または磁気を利用した固定法などが利用できる。透明基板が容器状、管状および基板状などの形状に関係なく、接触方法は任意に決められる。最終的に流動性物質を透明基板に接触できれば良い。この接触部分は大気圧に開放しても、減圧でも加圧でも可能で、雰囲気ガスを導入しても良い。また作業温度としては流動性物質の流動性が保持されるのであれば限定されない。さらに、エッチングの安定性を高めるための手段、例えば、流動性物質を循環する方法、あるいは、攪拌する方法などを使うこともできる。
また、透明基板に流動性物質を接触させるときに、透明基板がセルなどの容器状金型の場合には直接に容器に流動性物質を入ればよい。また、管状の場合には片方を密封して流動性物質を入れる。透明基板が平面基板、曲面基板などの特定の形状の基板の場合には、この基板を容器の一面として流動性物質を入れるように容器状のものを作る。金具による固定法、大気圧を利用した吸引法、または磁気を利用した固定法などが利用できる。透明基板が容器状、管状および基板状などの形状に関係なく、接触方法は任意に決められる。最終的に流動性物質を透明基板に接触できれば良い。この接触部分は大気圧に開放しても、減圧でも加圧でも可能で、雰囲気ガスを導入しても良い。また作業温度としては流動性物質の流動性が保持されるのであれば限定されない。さらに、エッチングの安定性を高めるための手段、例えば、流動性物質を循環する方法、あるいは、攪拌する方法などを使うこともできる。
レーザー照射には、レーザーアブレーション法(Srinivasanら:Chem.Rev.,vol.89, p1303 (1989))による照射が行われる。透明基板を通して、流動性物質と有機薄膜を有する透明基板に対して有機薄膜とは反対側からレーザー照射が行なわれる。
レーザーと透明基板の入射角度も任意に設定でき、流動性物質と有機薄膜を有する透明基板の接触面にレーザーが到達できるようになれば良い。また、単一のレーザービームを照射するか、複数のレーザービームを同時にまたは続いて照射する。一つのレーザービームが有機薄膜層を有する透明基板と流動性物質に対して照射できれば良い。直接にレーザーをレンズにより集光させて照射する方法、マスク(遮光板の一部をくりぬいたもの)を介して照射する方法などの任意の方法によって行うことができる。
本発明の微細エッチングは、ArF(λ=193nm)、KrCl(λ=222nm)、KrF(λ=248nm)、XeCl(λ=308nm)、XeF(λ=351nm)エキシマレーザー、YAGレーザー、YLFレーザー、色素レーザー、炭酸ガスレーザー、Krイオンレーザー、Arイオンレーザー、銅蒸気レーザー等の基本発振波長光、およびその基本発振波長光を非線形光学素子などにより変換したものを用いることもできる。例えば、YAGレーザーに二倍高調波(λ=532nm)、三倍高調波(λ=355nm)、四倍高調波(λ=266nm)なども挙げられる。エッチングを行うためのレーザー強度は、レーザー波長に対する流動性物質の吸収によって異なるが、レーザー強度が0.01から100J/cm2/pulseまでが望ましい。更に望ましいのは0.1から10J/cm2/pulseまでの範囲である。レーザー強度が弱すぎる場合には、エッチングが起こらず、強すぎるときは材料に損傷を与える。
この有機薄膜層を有する透明材料に対するレーザー照射による表面微細加工により、レーザー照射部位は有機薄膜層およびガラス基板の表面層がエッチングされ、同時に除去される。このとき、非照射部位には有機薄膜層が損傷を受けずに残っている。これにより、パターン構造の有機薄膜を表面に有し、パターン構造に表面エッチングされた透明材料が得られる。即ち、レーザー照射部位は透明材料の化学組成が露出したエッチング表面が形成され、非照射部位は有機薄膜層が最表面層となる。
例えば、石英ガラス基板と疎水性有機薄膜を用いた場合、レーザー照射部位は石英ガラスが露出しているので親水性を示し、非照射部位は疎水性となるので、表面極性(ぬれ性)の異なるパターン加工を行うことが可能になる。
更に、A法によれば、透明材料のレーザー入射側の表面では何らの変化もないが、流動性物質と接触した表面ではレーザー照射部分にのみ選択的にエッチングが行える。また、マスク露光法によるレーザー照射[X.Dingら、Applied Physics A誌、Vol.75,No.6,pp.641−645(2002)(非特許文献8)]や二光束干渉照射法[Zimmerら、Applied Physics A 誌、Vol.74,No.4,pp.453−456(2002)(非特許文献9)]を用いることによって、マイクロパターンの線幅が1マイクロメーター以下の鮮明な加工も可能である。しかも非加工部位には何らの化学的な劣化や損傷を与えず、加工部位は基板母体の組成が現れ、加工表面平滑度も光学研磨面と同等である。
加工速度はレーザー強度に依存し、加工工程を精密に制御できる。また、エッチングの深さは、レーザーパルス数に比例して増加するので、エッチングの深さを精密に制御できることを特徴としている。さらに、加工速度がレーザー強度に依存することを活用し、透過率を段階的に制限するマスク(グレーマスク)を用いることで、加工部位の表面曲率を自由に変えることができる[Zimmerら、Applied Surface Science誌、Vol.186,No.1−4,pp.276−281(2002)(非特許文献10)]。
さらに、これらの表面極性の違いを利用して、多重パターン化有機薄膜を作成することが可能である。例えば、極性の高い色素含有溶液(水溶液など)をレーザー加工後の基板にキャストすると、レーザー照射エッチング表面は透明材料の化学組成が露出しており、石英ガラス基板を用いた場合、レーザー照射エッチング表面は石英ガラス基板が露出した親水性部位となっているので、レーザー照射エッチング表面部位と水溶液は強い親和力を有することになる。一方、レーザー非照射表面部位は有機薄膜層が最表面層となり、疎水性の有機薄膜を用いた場合には水溶液には親和力がないのではじかれることになる。したがって、レーザー照射エッチング表面部位である親水性部位のみに位置選択的に極性の高い色素含有溶液を付着させることができ、基板表面を乾燥させて、溶媒を除去することで、第2の有機薄膜のパターン加工が達成される。
また、ここでは極性の低い有機溶液を用いることもできる。極性の低い有機溶液として、例えばアルカン有機溶液を用いた場合、疎水性の有機薄膜部位と有機溶液との間に強い親和力が働くので、有機溶液はレーザー非照射部位である有機薄膜部位のみに付着させて、多重パターン化有機薄膜が作製できる。以上の方法により、レーザー照射エッチング加工後の基板の表面極性の違いと色素溶液の極性との相互作用を利用することで、多重パターン化有機薄膜を作成することが可能である。さらに、加工パターンのポジパターンとネガパターンを溶液の極性を制御することでつくり分けることができる。
一方、高分子材料、セラミック材料、または炭素材料の微小球または微粒子を含有する水溶液または有機溶液を用いると、透明材料上に微小球(微粒子)集合体層を形成することができる。例えば、ポリスチレン微小球水溶液をレーザー加工後の基板にキャストすると、微小球水溶液はレーザー照射エッチング表面部位のみに凝集するので、基板表面を乾燥させて、溶媒を除去することで、微小球集合体層のパターン加工が達成される。
また、多重パターン化有機薄膜を作成する他の方法として、シランカップリング処理をレーザー照射エッチング加工後に再度行う方法がある。これは、レーザー加工後によってエッチング表面部位に露出している母材基板表面層を第2のシランカップリング処理を行えば、第1処理層の存在する部位と第2処理層の存在する部位とでパターン構造を形成させることができる。このとき、第1処理層または第2処理層のシランカップリング処理剤にアミノ基やチオオール基などの官能基を有する分子を用いれば、アミド結合等を形成させる分子固定化反応処理によって任意の第3の分子を多重パターン化有機薄膜として、有機薄膜層表面に新たに固定化させることができる。
微小球(微粒子)としては、直径が500ミクロン〜5nmまでの微小球が、有効である。さらに50ミクロン〜50nmまでのものが好適である。微小球(微粒子)の材料としては、ポリスチレンやポリアクリレートなどの高分子有機化合物、ガラス、酸化ケイ素などのオキサイドやナイトライドなどのセラミック材料、または、マイクロ・ナノカーボン球、ダイヤモンド球やフラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素材料などがあげられる。微小球表面の極性は親水性、疎水性、撥水撥油性いずれの場合でも効果的である。さらに上記に挙げられた微小球の二種類以上を混合または結合して作られたものも使用することができる。このほかに、微小球(微粒子)は母材材料以外に(0022)に有機薄膜として有用であるとした分子および添加物等を微小球(微粒子)表面または内部に含有するものを用いることもできる。
本発明では、リソグラフィ法では多段階の工程が必要であることに比べて、現像工程が不要な一段階のレーザー処理で製造できる。さらに、低レーザー強度のためにマスク露光法を通してパターン状の大面積一括加工も可能で、パターンの精度は1マイクロメーター以下でも可能である。加えて、エッチング速度もコントロールできることから、本発明は微細化、精密化、高品質化できる方法であると共に、本発明は非常に低コストであり、量産性に富む方法を提供する。なお、本発明によって提供可能な精密成型品としては、例えば、マイクロレンズアレー、回折格子、光導波路、発光素子、フォトニック素子、液晶配向基板などの光学素子、ならびに、DNAチップ基板、マイクロリアクター反応容器、マイクロ分析セル、センサー基板などの化学・環境・バイオ・医用材料、極微小マーキング、微小電気回路素子などの産業応用材料などが挙げられる。
なお、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
次に、実施例について本発明を説明する。
あらかじめフッ素系有機シランカップリング剤であるヘプタフルオロ・イソプロポキシプロピル・トリメトキシシランを用いて、石英ガラス材料表面に有機薄膜層を形成させた。特許第3012926号公報(特許文献8)記載のレーザー微細加工法を用いて大気圧下で石英ガラス微細加工成型品を作製した。このとき、KrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅30ns、パルス繰返し数2Hz)をレーザー強度1Jcm−2pulse−1、200パルス照射した。石英ガラス微細加工成型品表面において、有機薄膜層が形成されているレーザー非照射部位の水に対する接触角は110度で疎水性を示したが、レーザー照射部位の接触角は20度以下で親水性を示した。この結果から、レーザー照射部位は有機薄膜層と石英ガラス表面層がエッチングされて石英ガラスの化学組成が露出し、レーザー非照射部位は有機薄膜層と石英ガラス表面層に化学的な損傷がないことが明らかになった。50ミクロン正方格子状のパターン・マスク加工を行った成型品表面の透過型光学顕微鏡観察においても、加工部位および周辺部位に物理的な損傷のない高品位の加工特性が示された(図1)。
実施例1の方法で、フッ素系有機シランカップリング処理を行った石英ガラス材料表面にレーザー微細加工を行った。加工成型品を極性の低い蛍光色素有機溶液であるローダミン色素エタノール溶液に浸せき処理し、基板を乾燥させて溶媒を除去することで蛍光色素薄膜を得た。図2に蛍光顕微鏡観察結果を示す。レーザー非照射部位のみにパターン状の蛍光色素分子薄膜を堆積させることができることが判明した。図2では、正方形の内側がレーザー照射部位でエッチング加工されているので、正方形の内側は石英ガラス母材が表面に露出しており、極性が高い表面状態にある。また、正方形の外側であるレーザー非照射部位にはフッ素系有機シランカップリング層が残っているので、蛍光色素有機溶液が付着し、乾燥後、当該部位のみに蛍光色素薄膜が形成され、蛍光発光層(白色部分)が得られた。この加工成型品の発光部位の表面層には石英ガラス母材表面にフッ素系有機シランカップリング層と蛍光色素分子薄膜が堆積しており、多重パターン化有機薄膜を作製することができた。
実施例1の方法で、フッ素系有機シランカップリング処理を行った石英ガラス材料表面にレーザー微細加工微細加工を行った。加工成型品を極性の高い蛍光色素水溶液であるピラニン水溶液に浸せき処理し、基板を乾燥させて溶媒を除去することで、蛍光色素薄膜を得た。発光画像は、図2とは逆の正方形の内側が発光するマイクロパターンが得られた。したがって、レーザー照射部位のみにパターン状の蛍光色素分子薄膜を堆積させることができた。この場合、正方形の内側はレーザー照射部位でエッチング加工されているので、石英ガラス母材が表面に露出しており、極性が高い表面状態にあるので、極性の高い蛍光色素水溶液と強い親和力を有し、当該部位のみに蛍光色素薄膜が形成され、ピラニン分子による蛍光発光層が得られた。レーザー非照射部位には疎水性の有機シランカップリング層が残っているので、蛍光色素水溶液ははじかれて、付着していない。以上の結果から、位置選択的な有機薄膜のパターンニング加工が達成されていることが判明した。
実施例1の方法で、フッ素系有機シランカップリング処理を行った石英ガラス材料表面にレーザー微細加工微細加工を行い、次に加工成型品にアミノ基を有するN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル・トリメトキシシランを用いた炭化水素系有機シランカップリング処理を第2のシランカップリング処理として行った。この結果、レーザー未照射部位にはフッ素系有機シランカップリング層が堆積し、レーザー照射部位にはアミノ基を有する炭化水素系有機シランカップリング層が形成されている。この後、加工成型品を硫酸塩素基(スルフォニルクロライド基)を有する蛍光色素分子(ダンシル・クロライド)と反応させた。蛍光顕微鏡観察および発光スペクトル測定からはレーザー照射部位のみにダンシル色素分子からの蛍光発光が観測された。これは、アミド硫酸結合を介して色素分子が第2のシランカップリング処理層表面部位のみに固定化されたためである。以上の結果から、位置選択的な有機薄膜のパターンニング加工が達成されていることが判明した。
実施例1の方法で、ヘプタフルオロ・イソプロポキシプロピル・トリメトキシシランを用いた疎水性有機シランカップリング処理を行った石英ガラス材料表面にレーザー微細加工微細加工を行った。加工成型品をポリスチレン微小球(直径1ミクロン)を含有する水溶液に浸せき処理すると、レーザー照射部位のみにパターン状の微小球集合体層を堆積させることができ、基板を乾燥させて溶媒を除去することで、微小球集合体層を得た。図3の電子顕微鏡観察像は、図2とは逆に加工箇所の内側に微小球が集合した微小構造体が得られた。この場合、加工部位(直径10ミクロン円形)はレーザー照射でエッチング加工されている部位なので、石英ガラス母材が表面に露出しており、非レーザー加工部位と比べて極性が高い表面状態にある。したがって、微小球と強い親和力を有し、当該部位のみに微小球集合体層が得られた。レーザー非照射部位には疎水性有機シランカップリング層が残っているので、微小球ははじかれて付着していない。また、ポリスチレン微小球水溶液の濃度を希釈・制御することで図4のように、微小球が単層で集合体を形成しているものも作成でき、層構造も制御可能である。これらの集合構造はパターン・マスクによるレーザー加工を行うことで、たとえば図5のような正方格子状に配列した微小構造体を作成することができる。以上の結果から、位置選択的な微小球集合体層の構造体加工が達成されていることが判明した。
レーザー加工を行った石英ガラス基板の透過型光学顕微鏡観察像を示す。 石英ガラス基板上の蛍光色素発光の蛍光顕微鏡観察像を示す。白色部分は発光部位である。 石英ガラス基板上のポリスチレン微小球集合体の走査型電子顕微鏡観察像を示す。微小球集合体(集合体径10ミクロン)は多層(2層)の積層構造体を形成している。 石英ガラス基板上のポリスチレン微小球集合体の走査型電子顕微鏡観察像を示す。微小球集合体(集合体径20ミクロン)は単層(1層)の積層構造体を形成している。 石英ガラス基板上のポリスチレン微小球集合体(集合体径20ミクロン)から構成される正方格子状の微小構造体(格子間隔60ミクロン)の走査型電子顕微鏡観察像を示す。 本発明のレーザー照射方法を示す図
符号の説明
1 流動性物質
2 有機薄膜
3 基板

Claims (8)

  1. 明基板表面に有機薄膜を形成した後、レーザー波長に強い吸収を持つ流動性物質を前記透明基板の表面に接触させた状態で、前記透明基板の有機薄膜とは反対側から0.01J/cm/pulseから100J/cm/pulseまでの強度のレーザーを照射することにより、前記透明基板上にパターン化された有機薄膜を形成すると同時に、前記透明基板がエッチングされた表面を形成することを特徴とする透明基板の微細加工方法。
  2. 前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面とで、表面極性が異なるパターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明基板の微細加工方法。
  3. 前記透明基板として、石英ガラス、一般ガラス、フッ化カルシウム、シリコンカーバイド、サファイヤ、アルミナ、水晶又はダイヤモンドから選ばれたいずれか一つの基板を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明基板の微細加工方法。
  4. 前記有機薄膜がシランカップリング剤由来のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明基板の微細加工方法。
  5. 前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面の表面極性の違いを利用して、前記透明基板上に多重パターンを形成する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細加工方法が施された透明基板の表面を、極性の低い溶液で処理することにより、前記パターン化された有機薄膜の表面に別の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
  6. 前記パターン化された有機薄膜と前記エッチングされた表面の表面極性の違いを利用して、前記透明基板上に多重パターンを形成する方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細加工方法が施された透明基板の表面を、極性の高い溶液で処理することにより、前記エッチング表面に別の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
  7. 前記極性の低い溶液又は前記極性の高い溶液として、有機高分子化合物、セラミックス、又は炭素化合物の微小球又は微粒子を含有する溶液を用いることにより、前記パターン化された有機薄膜の表面又は前記エッチング表面に微小球又は微粒子の集合体層を形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の透明基板への多重パターン形成方法。
  8. 透明基板表面に第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成した後、レーザー波長に強い吸収を持つ流動性物質を前記透明基板の表面に接触させた状態で、前記透明基板の有機薄膜とは反対側から0.01J/cm /pulseから100J/cm /pulseまでの強度のレーザーを照射することにより、前記透明基板上にパターン化された第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成すると同時に、前記透明基板がエッチングされた表面を形成し、次いで、前記第1のシランカップリング剤とは異なる第2のシランカップリング剤で処理することにより、前記エッチングされた表面に第2のシランカップリング剤からなる有機薄膜を形成し、その後、前記第1のシランカップリング剤又は前記第2のシランカップリング剤が有する官能基を利用して、前記第1のシランカップリング剤からなる有機薄膜又は第2のシランカップリング剤からなる有機薄膜の表面に、第3の薄膜を形成することを特徴とする透明基板への多重パターン形成方法。
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