JP4187497B2 - 半導体基板の化学機械研磨方法 - Google Patents

半導体基板の化学機械研磨方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体基板の化学機械研磨方法および化学機械研磨用水系分散体に関する。更に詳しくは、半導体装置の製造における配線パターンが設けられたウェハの化学機械研磨(以下、「CMP」ということもある。)の際、低誘電率の絶縁膜が用いられた場合において有用な化学機械研磨方法、およびそのために用いられる化学機械研磨用水系分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子などにおける絶縁膜としては、CVD法などの真空プロセスで形成されたSiO膜が主として使用されている。
しかし近年、超LSIの性能向上を目的とした絶縁膜の低誘電率化が注目されている。この低誘電率化のため、誘電率の高いSiO膜に代わるものとして、シルセスキオキサン(比誘電率;約2.6〜3.0)、フッ素添加SiO(比誘電率;約3.3〜3.5)、ポリイミド系樹脂(比誘電率;約2.4〜3.6、日立化成工業(株)製、商品名「PIQ」、Allied Signal 社製、商品名「FLARE」等)、ベンゾシクロブテン(比誘電率;約2.7、Dow Chemical社製、商品名「BCB」等)、水素含有SOG(比誘電率;約2.5〜3.5)及び有機SOG(比誘電率;約2.9、日立化成工業(株)製、商品名「HSGR7」等)などからなる絶縁膜が開発されている。しかし、これらの絶縁膜はSiO膜に比べて機械的強度が小さく、柔らかくて脆いため、従来の化学機械研磨方法により研磨すると、大きなスクラッチが発生したり、種々の形状のスクラッチが多数発生する場合がある。
【0003】
また、半導体基板上に上記のような低誘電率の絶縁膜を積層し、溝部を形成し、その後バリアメタル膜を形成した溝付き基板全面に配線材料たる金属を堆積して膜とした被研磨面を化学機械研磨する場合には、低誘電率の絶縁膜が研磨面に露出していない段階、すなわち配線材料たる金属のみを化学機械研磨している段階において、下層たる低誘電率の絶縁膜がその外周部から剥がれてくるという欠陥が見られることがあり、問題となっている。
【0004】
上記のような問題を解決するために、種々の方法が提案されている。
例えば、砥粒としてシリカ粒子を用いて金属膜の化学機械研磨を行うと、被研磨面の表面欠陥を抑制し得る旨が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、固体砥粒を含まない研磨液が提案されており、これによる研磨により被研磨面の表面欠陥を抑制し得る旨が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、これら公報においては、前記したような低誘電率の絶縁膜は被研磨面として想定されておらず、このような被研磨面を化学機械研磨した場合にスクラッチの発生、外周部における剥がれ等を押さえるための検討はまったくなされていない。
【0005】
一方、化学機械研磨装置の加圧ヘッド押し付け圧を低減することにより、低誘電率の絶縁膜の化学機械研磨において発生するスクラッチを低減しようとの試みがなされている。しかし、加圧ヘッドの押し付け圧が低減された条件において、従来知られている化学機械研磨用水系分散体を用いて半導体装置の化学機械研磨を行うと、特に被研磨面にスクラッチの発生が低減されるべき低誘電率の絶縁膜が露出する以前の段階、すなわち配線材料たる銅、タングステン、アルミニウム等の金属材料のみが被研磨面に露出している段階において十分な研磨速度が得られず、製品歩留まり上の問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−110761号公報
【特許文献2】
国際公開第00/13217号パンフレット
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するものであり、機械的強度が小さい低誘電絶縁膜であっても、スクラッチの発生や外周部における剥がれを大幅に低減可能であり、かつ配線材料たる金属膜の研磨速度に優れた半導体基板の化学機械研磨方法およびそのために用いられる化学機械研磨用水系分散体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば本発明の上記課題は、第一に、(1)少なくとも有機無機複合粒子と、(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物が配合された化学機械研磨用水系分散体を使用し、定盤回転数が50〜200rpm、加圧ヘッド押し付け圧が1,400〜12,000Paの条件で、ナノインデンテーション法により測定した弾性率がGPa以下である絶縁膜上に形成された銅膜を研磨することを特徴とする、半導体基板の化学機械研磨方法によって達成される。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明の半導体基板の化学機械研磨方法においては、(1)砥粒および(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物が配合された化学機械研磨用水系分散体を使用する。
上記(1)砥粒としては、無機粒子、有機粒子および有機無機複合粒子から選択される少なくとも1種が挙げられる。
上記無機粒子としては二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、及び二酸化マンガン等を挙げることができる。これらのうち、二酸化ケイ素が好ましい。このような二酸化ケイ素として、具体的には気相中で塩化ケイ素などを酸素および水素と反応させるヒュームド法により合成されたヒュームド法シリカ、金属アルコキシドから加水分解縮合するゾルゲル法により合成されたコロイダルシリカ、精製により不純物を除去した無機コロイド法等により合成されたコロイダルシリカなどが挙げられる。
上記有機粒子としては、▲1▼ポリスチレン及びスチレン系共重合体、▲2▼ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル系共重合体、▲3▼ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、並びに▲4▼ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン及びオレフィン系共重合体等の熱可塑性樹脂からなる粒子を使用することが出来る。これらは乳化重合法、懸濁重合法、乳化分散法、粉砕法等で製造することができる。また、上記重合体の合成時に、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等を共存させ、架橋構造を有する共重合体としても使用することができる。
これらのうち、▲1▼ポリスチレン及びスチレン系共重合体、▲2▼ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、および(メタ)アクリル系共重合体、ならびにこれらの架橋構造を有する共重合体が好ましい。
【0010】
上記有機無機複合粒子としては、上記で例示したような有機粒子と無機粒子が、研磨工程の際、容易に分離しない程度に一体に形成されているものを指し、その種類、構成等は特に限定されない。
上記複合粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の重合体粒子の存在下、アルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、重合体粒子の少なくとも表面に、ポリシロキサン等が結合されてなるものを使用することができる。なお、生成する重縮合体は、重合体粒子が有する官能基に直接結合されていてもよいし、シランカップリング剤等を介して結合されていてもよい。
またアルコキシシラン等に代えてシリカ粒子、アルミナ粒子等を用いることもできる。これらはポリシロキサン等と絡み合って保持されていてもよいし、それらが有するヒドロキシル基等の官能基により重合体粒子に化学的に結合されていてもよい。
【0011】
また、上記の複合粒子としては、符号の異なるゼータ電位を有する有機粒子と無機粒子とを含む水分散体において、これら粒子が静電力により結合されてなるものを使用することもできる。
有機粒子のゼータ電位は、全pH域、或いは低pH域を除く広範な領域に渡って負であることが多いが、カルボキシル基、スルホン酸基等を有する有機粒子とすることによって、より確実に負のゼータ電位を有する有機粒子とすることができる。また、アミノ基等を有する有機粒子とすることにより、特定のpH域において正のゼータ電位を有する有機粒子とすることもできる。
一方、無機粒子のゼータ電位はpH依存性が高く、この電位が0となる等電点を有し、その前後でゼータ電位の符号が逆転する。
従って、特定の有機粒子と無機粒子とを組み合わせ、それらのゼータ電位が逆符号となるpH域で混合することによって、静電力により有機粒子と無機粒子とを一体に複合化することができる。また、混合時、ゼータ電位が同符号であっても、その後、pHを変化させ、ゼータ電位を逆符号とすることによって、有機粒子と無機粒子とを一体とすることもできる。
さらに、この有機無機複合粒子としては、このように静電力により一体に複合化された粒子の存在下、前記のようにアルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、この粒子の少なくとも表面に、さらにポリシロキサン等が結合されて複合化されてなるものを使用することもできる。
【0012】
次に、本発明の水系分散体に用いる(1)砥粒の好ましい粒子径について説明する。
粒子は、例えばゾルゲル法またはコロイド法により合成されたコロイダルシリカなどは、比較的小粒子径の場合は水系分散体中で一次粒子が会合、または凝集した状態(二次粒子)で存在していることが多いと信じられている。
このときの平均一次粒子径としては1〜3000nmが好ましく、2〜1000nmがさらに好ましい。
また平均二次粒子径は5〜5000nmが好ましく、5〜3000nmがさらに好ましく、特に10〜1000nmであることが好ましい。平均二次粒子径が5nm未満であると、研磨速度が不十分となる場合がある。一方、この値が5000nmを超える場合は、ディッシング、エロージョンの抑制が不十分となる場合があり、さらにスクラッチ等の表面欠陥を生じやすくなる場合がある他、水系分散体の安定性が損なわれる場合がある。
上記平均一次粒子径は、比表面積の測定および透過型電子顕微鏡による観察等から算出することができる。また、上記平均二次粒子径は、レーザー散乱回折型測定器による測定等により知ることができる。
【0013】
一方、ヒュームド法により合成されたシリカなどの粒子は、元々二次粒子の形で製造され、それを水系分散体中に一次粒子で分散させることは非常に困難なことから、上記同様一次粒子が凝集した二次粒子として存在すると信じられている。そのため、ヒュームド法により合成されたシリカなどの粒子については二次粒子径のみを規定すれば足りる。
ヒュームド法により合成されたシリカなどの粒子の平均二次粒子径は10〜10000nmが好ましく、20〜7000nmがさらに好ましく、特に50〜5000nmであることが好ましい。この範囲の平均二次粒子径とすることで、研磨速度が大きく、ディッシング、エロージョンが十分に抑制され、かつ安定な化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。
【0014】
有機粒子は、水系分散体中ではそのほとんどが単独の粒子として存在していると信じられている。
有機粒子の平均粒子径は10〜5000nmが好ましく、15〜3000nmがさらに好ましく、特に20〜1000nmであることが好ましい。この範囲の平均粒子径とすることで、研磨速度が大きく、ディッシング、エロージョンが十分に抑制され、かつ安定な化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。
【0015】
有機無機複合粒子は、使用される有機粒子と無機粒子の粒子径および使用量に応じて、以下のいずれかひとつ以上の状態で存在するものと考えられる。
(i)有機粒子がコア粒子となり、その周りに無機粒子が(一次粒子または二次粒子の状態で)シェル粒子として付着して有機無機複合粒子を形成している状態。
(ii)無機粒子(一次粒子または二次粒子の状態で)がコア粒子となり、その周りに有機粒子がシェル粒子として付着して有機無機複合粒子を形成している状態。
(iii)有機粒子と無機粒子(一次粒子または二次粒子の状態で)が明確なコア/シェル構造をとらずに凝集して有機無機複合粒子を形成している状態。
好ましくは、(i)または(iii)の状態である。
【0016】
上記(i)〜(iii)における無機粒子と有機粒子の使用量の比は、有機粒子100重量部に対し、無機粒子1〜2000重量部を使用することが好ましく、10〜1000重量部を使用することがさらに好ましい。
また、上記(i)〜(iii)の有機無機複合粒子の平均粒子径は、20〜20000nmが好ましく、50〜10000nmがさらに好ましく、50〜5000nmがとくに好ましい。
このような有機無機複合粒子とすることで、研磨速度が大きく、スクラッチが十分に抑制され、かつ安定な化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。
【0017】
(1)砥粒の配合量は、化学機械研磨用水系分散体の全量を100質量%とした場合に、0.01〜15質量%とすることができる。(1)砥粒の配合量が0.01質量%未満では、十分な研磨速度を有する水系分散体とすることができず、一方、15質量%を越えて配合した場合は、コスト高になるとともに、水系分散体の安定性が不十分となる場合があるため好ましくない。
これらの(1)砥粒は、単独でもまたは2種以上を併用することが出来るが、無機粒子および有機粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子、ならびに有機無機複合粒子を併用することが、大きな研磨速度が得られ、被研磨面のスクラッチを十分に抑制できる点で好ましい。
無機粒子および有機無機複合粒子を併用する態様がさらに好ましい。
【0018】
無機粒子および有機粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子、ならびに有機無機複合粒子を併用する場合、無機粒子および有機粒子から選ばれる少なくとも一種の粒子と、有機無機複合粒子の使用量の比は、質量比として1:10〜10:1であることが好ましく、1:10〜5:1であることがさらに好ましく、1:5〜5:1であることがとくに好ましい。両者の使用量の比をこのような範囲に設定することにより、研磨速度の大きさとスクラッチ抑制の点においてもっとも優れた効果を発揮することとなる。
【0019】
上記(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物としては、例えば、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンおよび5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンから選択される少なくとも一種を挙げることができる。
これら化合物に含まれるカルボキシル基は、カルボン酸(COOH)の構造であっても良く、また、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、アミン化合物イオン等とカルボン酸塩の構造をとっていても良い。
これらのうち、2,3−ピリジンジカルボン酸ならびにそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
上記(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物の配合量は、水分散体の全量を100質量%とした場合に、0.0001〜7質量%とすることができ、0.001〜5質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物の配合量が0.0001質量%未満であると、研磨速度が不十分となる場合がある。一方、7質量%配合すれば十分な効果が得られ、これを越えて配合する必要はない。
【0021】
本発明の半導体基板の化学機械研磨方法において使用される化学機械研磨用水系分散体は、上記の如く(1)砥粒および(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物が配合されたものであるが、その他必要に応じて保護膜形成剤、酸化剤、有機酸、界面活性剤を配合することもできる。
上記保護膜形成剤は、配線材料たる金属と反応し、該金属膜表面に保護膜を形成することにより研磨速度を調整する目的で配合することができる。その具体例としては、例えば、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、チオ尿素、ベンズイミダゾール、ベンゾフロキサン、2,1,3−ベンゾチアジアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアジアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、キノリンカルボン酸、メラミン等の2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物に該当しない複素環化合物;
グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、シスチン、システィン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アミノ酪酸等のアミノ酸;
上記アミノ酸のアンモニウム塩等のアミノ酸塩;
サリチルアルドキシム、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、カテコール及びo−アミノフェノール等の化合物を挙げることができる。
これらのうち、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、キノリンカルボン酸、グリシン、アラニン、サリチルアルドキシムが好ましく、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、キノリンカルボン酸、グリシンが特に好ましい。
このような錯化剤の配合量としては、水分散体の全量を100質量%とした場合に、5質量%以下とすることができ、0.001〜3質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。この範囲の配合量とすることで、十分な研磨速度を支持しつつ金属配線のディッシングやエロージョンを抑制することができる。
【0022】
上記酸化剤は研磨速度を向上する目的で添加することができ、例えば、過硫酸塩、過酸化水素、無機酸、有機過酸化物、多価金属塩、ヘテロポリ酸等を使用することができる。
上記過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等を挙げることができる。
上記無機酸としては硝酸、塩酸、硫酸等を挙げることができる。
上記有機過酸化物としては過酢酸、過安息香酸、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。
上記多価金属塩としては、過マンガン酸化合物、重クロム酸化合物等を挙げることができる。過マンガン酸化合物としては過マンガン酸カリウム等を、重クロム酸化合物としては重クロム酸カリウム等をそれぞれ挙げることができる。
上記へテロポリ酸としては、けいモリブデン酸、けいタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステン酸、及びけいタングステンモリブデン酸等を挙げることができる。
これら酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸塩および無機酸が好ましい。
これらの酸化剤のうち、金属元素を含有せず分解生成物が無害である観点から、過酸化水素および有機過酸化物が好ましく、過酸化水素が特に好ましい。
このような酸化剤の配合量は、水分散体全量を100質量%とした場合に、5質量%以下とすることができ、特に0.01〜3部質量%、更には0.05〜2質量%とすることが好ましい。酸化剤は5質量%配合すれば十分に研磨速度を向上させることができ、5質量%を越えて多量に配合する必要はない。
【0023】
上記有機酸は研磨速度の向上のために配合することができ、この目的のために一塩基酸、二塩基酸、ヒドロキシル酸およびカルボキシレート酸のように広範な種類の有機酸を使用することができるが、例えば、飽和酸、不飽和酸、芳香族酸等を挙げることができる。
上記飽和酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヒドロキシル酸等を挙げることができる。
上記不飽和酸としてはマレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。
上記芳香族酸としては、安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。
上記ヒドロキシル酸としては、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
これらの有機酸のうちでは、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸が好ましく、特にシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸が好ましい。
上記有機酸の配合量は、水分散体を100質量%とした場合に、3質量%以下とすることができ、さらに0.01〜2質量%とすることができ、特に0.01〜1質量%とすることができる。有機酸は3質量%含有させれば研磨速度は十分に向上し、これを越えて配合する必要はない。
【0024】
上記界面活性剤は研磨速度の調整およびスクラッチの低減等の目的で添加することができ、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等のいずれも使用することができる。特にアニオン系界面活性剤が好ましい。
このようなアニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。
上記カルボン酸塩としては、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
上記スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。
上記硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
上記リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
これらのアニオン系界面活性剤のうちではスルホン酸塩が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がさらに好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが特に好ましい。
界面活性剤の配合量は、水分散体全量を100質量%とした場合に、2質量%以下とすることができ、さらに0.001〜1質量%以下、特に0.001〜0.5質量%以下とすることが好ましい。この範囲の配合量とすることで、十分な被研磨面の研磨速度が十分大きく、かつ、効果的にスクラッチの発生が抑制された化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。
【0025】
本発明の半導体基板の化学機械研磨方法において使用される化学機械研磨用水系分散体は、上記の如く(1)砥粒および(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物、ならびに必要に応じて任意的に配合されるその他の配合剤を水系媒体に分散または溶解したものである。上記水系媒体としては、水、水とアルコールの混合媒体等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等を挙げることができる。水系媒体としては上記のうち水が好ましい。
本発明の化学機械研磨用水系分散体のpHは3〜12とすることが好ましく、5〜11とすることがさらに好ましく、7〜10とすることが特に好ましい。この範囲のpHであれば、十分な研磨速度が実現でき、かつ脆弱な絶縁膜を研磨した場合でも、スクラッチ等の表面欠陥の発生を抑制することができる。
pHの調整は、上記した無機酸や有機酸を添加する他、適当な塩基を適宜配合することにより調整することができる。
上記塩基としてはアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等がそれぞれ挙げられる。上記アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムまたは水酸化セシウム等を使用することができる。
【0026】
本発明によれば、上記のような化学機械研磨用水系分散体を使用し、半導体基板の被研磨面を化学機械研磨することができる。
本発明の化学機械研磨方法においては、例えばEPO112、EPO−222(以上、(株)荏原製作所製)、LGP−510、LGP−552(以上、ラップマスターSFT社製)、Mirra(アプライドマテリアル社製)等の市販の化学機械研磨装置、およびIC1000、IC1010(以上、ロデール・ニッタ社製)等の市販の研磨パッドを用いて行うことができる。
本発明の化学機械研磨方法において、定盤回転数は50〜200rpm好ましくは70〜180rpmである。また加圧ヘッドの押し付け圧は700〜18,000Pa、好ましくは1,400〜15,000Pa、さらに好ましくは1,400〜12,000Paである。
また、本発明の化学機械研磨方法において、化学機械水系分散体の定盤上への供給量は10〜500mL/分、好ましくは100〜400mL/分とすることができる。
【0027】
定盤回転数、加圧ヘッド押し付け圧、および化学機械水系分散体の供給量を上記のような範囲とすることで、十分な研磨速度と良好な被研磨面の表面状態を両立することができる。この効果は、研磨パッドと被研磨面との摩擦力が適当な範囲に設定されたことによると推定される。
上記摩擦力の指標として、化学機械研磨の際に定盤の駆動電流の値をモニターすることが有効である。定盤の駆動電流の適正値は、使用する化学機械研磨装置、研磨パッドおよび被研磨面の種類等により異なる。例えば、化学機械研磨装置として(株)荏原製作所製EPO−112、研磨パッドとしてロデール・ニッタ社製IC1000を使用して銅膜を化学機械研磨する場合には、7A以下、好ましくは5A以下が適正値である。
【0028】
本発明の化学機械研磨方法で化学機械研磨することのできる被研磨面としては、例えば半導体基板上に積層した絶縁膜に溝部を形成し、その後バリアメタル膜を形成した溝付き基板全面に配線材料たる金属を堆積して膜としたものを挙げることができる。
このとき、配線材料としての金属としては、例えば、銅、タングステン、アルミニウム等が挙げられるが、本発明の方法は配線材料が銅のときに特に好適に使用することができる。なお、ここで銅とは純銅の他、銅とシリコンの合金、銅とアルミニウムの合金等、95質量%以上の銅を含有する合金をも含むものとする。
また、バリアメタル膜の材料としては、例えばタンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン等を挙げることができる。なお、ここでタンタルは純タンタルに限らず、タンタル−ニオブ等、タンタルを含有する合金を含むものとする。また、窒化タンタル、チタン、窒化チタンも純品に限定されない。
【0029】
本発明の化学機械研磨方法は、上記絶縁膜の材料として、低誘電率の絶縁膜を採用した場合でも、スクラッチの発生等の表面欠陥を抑制することができる。低誘電率の絶縁膜は従来のSiO膜に比べ機械的強度が弱いため、従来知られている化学機械研磨方法で化学機械研磨すると、スクラッチ等の表面欠陥が発生しやすかったが、本発明の化学機械研磨方法によると、このような低誘電率の絶縁膜を化学機械研磨した場合でも良好な表面状態を得ることができる。
本発明の化学機械研磨方法は、上記絶縁膜の材料としてナノインデンテーション法により測定した弾性率が20GPa以下である低誘電率の絶縁膜を採用した場合にも好適に適用することができる。上記弾性率は、10GPa以下、特に5GPa以下であってもよい。
なお、この弾性率は、非破壊検査第47巻6号(1998)、358〜363頁の「ナノインデンテーション法の原理と応用」における、4.ナノインデンテーションの原理と応用、4.1ナノインデンターの構成の項に記載されたCSIRO製のナノインデンター UMIS−2000を使用し、4.2鋭角圧子を用いたナノインデンテーション法の項に記載された方法、或いは4.3半球形圧子を用いたナノインデンテーション法の項に記載された方法により求めることができる。
【0030】
このような低誘電率の絶縁膜としては、例えば、シルセスキオキサン(比誘電率;約2.6〜3.0)、フッ素添加SiO(比誘電率;約3.3〜3.5)、ポリイミド系樹脂(比誘電率;約2.4〜3.6)、ベンゾシクロブテン(比誘電率;約2.7)、水素含有SOG(比誘電率;約2.5〜3.5)及び有機SOG(比誘電率;約2.9)等からなる絶縁膜;
アルコシキシラン、シラン、アルキルシラン、アリールシラン、シロキサン、アルキルシロキサン等を、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水蒸気、オゾン、アンモニア等の存在下でプラズマ重合した重合体からなる絶縁膜
を挙げることができる。
これらのうちシルセスキオキサンを主成分とする絶縁膜として、例えば、密度がが0.3〜1.85g/cmであって、孔径100nm以下の微細な空孔を有する多孔質なもの等が挙げられる。
【0031】
本発明の化学機械研磨方法においては、半導体基板上に上記のような絶縁膜を積層し、これに溝部を形成し、その後バリアメタル膜を形成した溝付き基板全面に配線材料たる金属を堆積して膜とした被研磨面を化学機械研磨することにより、前記溝部に埋め込まれた金属(配線材料)以外の部分の金属を除去することによって、埋め込み配線を形成することができる。
なお、上記のような被研磨面は、配線材料たる金属層と絶縁膜の間にバリアメタル層が形成されているため、理想的には絶縁膜部分が化学機械研磨されることはない。しかし、現実の化学機械研磨工程においては、溝以外の部分にじゃっかん残存する配線材料を除去する目的でいわゆる過剰研磨(金属層の除去に計算上必要な時間を超えて研磨を継続すること。)が行われるため、部分的に絶縁膜材料が被研磨表面に露出することがあり、その場合にスクラッチの発生等の表面欠陥が生じることとなる。本発明の化学機械研磨方法はそのような場合において、たとえ絶縁膜材料として機械的に脆弱な低誘電率の材料を用いたとしてもスクラッチ等の表面欠陥を抑制し、製品歩留まりの向上に資する利点を有するものである。
【0032】
また本発明の化学機械研磨方法は、半導体基板上に上記のような絶縁膜を積層し、これに溝部を形成し、その後バリアメタル膜を形成した溝付き基板全面に配線材料たる金属を堆積して膜とした被研磨面を化学機械研磨する際、低誘電率の絶縁膜が研磨面に露出していない段階、すなわち配線材料たる金属のみを化学機械研磨している段階において、下層たる低誘電率の絶縁膜がその外周部から剥がれてくる減少を効果的に抑制することができる。この効果は、研磨パッドと被研磨面たる金属膜(好ましくは銅膜)との摩擦力が適当な範囲に設定されたことによると推定される。この摩擦力の指標として、化学機械研磨の際の定盤の駆動電流の値を代替的に使用できることは上記したが、この場合の駆動電流は金属膜(好ましくは銅膜)を化学機械研磨している段階の駆動電流であると理解されるべきである。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
(1)ヒュームド法シリカ粒子を含有する水分散体の調製
イオン交換水6.7kg中にヒュームド法シリカ粒子(日本アエロジル(株)製、商品名「アエロジル#50」)2kgを投入し、超音波分散機によって分散させた後、孔径5μmのフィルタによって濾過し、ヒュームド法シリカ粒子を含有する水分散体を調製した。この水分散体に含有されるヒュームド法シリカ粒子の平均一次粒子径は20nmであり、平均二次粒子径は200nmであった。
【0034】
(2)ヒュームド法アルミナ粒子を含有する水分散体の調製
上記(1)において、ヒュームド法シリカ粒子の代わりにヒュームド法アルミナ粒子(デグサ社製、商品名「Aluminium Oxide C」)を使用した他は上記(1)と略同様にして実施し、ヒュームド法アルミナ粒子を含有する水分散体を調製した。この水分散体に含有されるヒュームド法アルミナ粒子の平均一次粒子径は13nmであり、平均二次粒子径は130nmであった。
【0035】
(3)複合粒子からなる砥粒を含む水分散体の調製
メチルメタクリレ−ト90部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名「NKエステルM−90G #400」)5部、4−ビニルピリジン5部、アゾ系重合開始剤(和光純薬(株)製、商品名「V50」)2部、及びイオン交換水400部を容量2リットルのフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら70℃に昇温し、6時間重合させた。これによりアミノ基の陽イオン及びポリエチレングリコール鎖を有し、平均粒子径0.15μmのポリメチルメタクリレート系粒子を含む水分散体を得た。このポリメチルメタクリレート系粒子を含む水分散体にイオン交換水を加え、粒子含量を10質量%に調整した。尚、重合収率は95%であった。
次いでこのポリメチルメタクリレート系粒子を含む水分散体(粒子含量を10質量%)100部を、容量2リットルのフラスコに投入し、メチルトリメトキシシラン1部を添加し、40℃で2時間攪拌した。その後、1規定硝酸によりpHを2に調整して水分散体(a)を得た。
水分散体(a)に含まれるポリメチルメタクリレート系粒子のゼータ電位は+17mVであった。
【0036】
一方、コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名「スノーテックスO」)を10質量%含む水分散体(含有されるコロイダルシリカの平均一次粒子径は12nm、平均二次粒子径は79nmである。)のpHを1規定の水酸化カリウム水溶液により8に調整し、水分散体(b)を得た。
水分散体(b)に含まれるコロイダルシリカ粒子のゼータ電位は−40mVであった。
【0037】
その後、水分散体(a)100部に水分散体(b)50部を2時間かけて徐々に添加、混合し、2時間攪拌して、ポリメチルメタクリレート系粒子にシリカ粒子が付着した粒子を含む水分散体を得た。なお、この段階で、水分散体のpHは6.5となるが、このpHにおけるポリメチルメタクリレート系粒子のゼータ電位は+6.5mVであり、コロイダルシリカ粒子のゼータ電位は−30mVである。
次いで、この水分散体に、ビニルトリエトキシシラン2部を添加し、1時間攪拌した後、テトラエトキシシラン1部を添加し、60℃に昇温し、3時間攪拌を継続した後、冷却することにより、複合粒子を含む水分散体を得た。この複合粒子の平均粒子径は180nmであり、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面の80%にシリカ粒子が付着していた。
【0038】
化学機械研磨用水系分散体の調製
化学機械研磨用水系分散体1の調製
上記(1)にて調製したヒュームド法シリカ粒子を含有する水分散体の所定量をポリエチレン製の瓶に投入し、次いで、表1に記載の各配合剤を表1記載の配合量(質量部)となるように添加し、十分に攪拌した。なお、過酸化水素は31質量%の過酸化水素水を使用し、純過酸化水素換算で表1記載の配合量となるようにした。また、表1において、「DBK」はドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを表す。
次いで、10質量%の水酸化カリウム水溶液を加えてpHを調製した後、さらにイオン交換水を加え水系分散体の全量が100質量部となるようにした。次いで口径5μmのフィルタで濾過して化学機械研磨用水系分散体を得た。
この化学機械水系分散体のpHは10.5であった。
【0039】
化学機械研磨用水系分散体2〜12の調製
上記化学機械研磨用水系分散体1の調製において、配合する各成分の種類と量、pH調整剤の種類、およびpHを表1または2に記載の通りとした他は、上記化学機械研磨用水系分散体1の調製と略同様にして、化学機械研磨用水系分散体2〜12を調製した。
なお、化学機械用水系分散体3〜10および12において、砥粒は、上記(1)で調製したヒュームド法シリカ粒子を含有する水分散体および上記(3)で調製した複合粒子からなる砥粒を含む水分散体の各所定量を、容器に順次投入することにより配合した。化学機械兼用水系分散体6において、キナルジン酸とグリシンは各所定量を順次添加することにより配合した。
また、水系分散体7および8におけるpH調整剤であるアンモニアは、28質量%のアンモニア水を使用し、純アンモニア換算で表2記載の配合量になるようにした。
表1および2において、「DBK」はドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを表す。
【0040】
【表1】
Figure 0004187497
【0041】
【表2】
Figure 0004187497
【0042】
実施例2〜7、実施例9〜13、比較例1〜8
上記のようにして調製した化学機械研磨用水系分散体を使用し、銅膜および絶縁膜の研磨性能を以下のようにして評価した。
銅膜の研磨性能の評価
被研磨面として8インチ熱酸化膜つきシリコン基板上の銅膜(旭日産業(株)製、銅膜の膜厚15,000Å)を、化学機械研磨装置((株)荏原製作所製、型式「EPO112」)に装着し、多孔質ポリウレタン製研磨パッド(ロデールニッタ社製、品番「IC1000」)を用い、表3に記載の化学機械研磨用水系分散体を300mL/分の速度で供給し、表3に記載のヘッド押し付け圧および定盤の回転数にて1分間研磨した。このときの定盤の駆動電流値の最大値を表3に示す。また、研磨後の銅膜の厚さを電気伝導式膜厚測定器(ケーエルエー・テンコール社製、品番「オムニマップRS75」)にて測定し、銅膜の研磨速度を算出した。結果を表3ないし5に示す。
【0043】
低誘電率絶縁膜の研磨性能の評価
▲1▼低誘電率絶縁膜の製造
(i)ポリシロキサンゾルの調製
101.5gのメチルトリメトキシシラン、276.8gのメトキシプロピオン酸メチルおよび9.7gのテトライソプロポキシチタン/アセト酢酸エチル錯体からなる混合溶液を60℃に加熱し、この混合溶液に112.3gのγ−ブチロラクトンと水との混合物(重量比で4.58:1)を1時間かけて滴下した。混合物の滴下終了後、さらに60℃で1時間反応させ、ポリシロキサンゾルを得た。
【0044】
(ii)ポリスチレン粒子の製造
スチレン100部、アゾ系重合開始剤(和光純薬(株)製、商品名「V60」)2部、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム0.5部、およびイオン交換水400部を、フラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら70℃に昇温させ、6時間重合させた。これにより平均粒子径150nmのポリスチレン粒子を得た。
【0045】
(iii)低誘電率の絶縁膜の製造
上記(i)で得られたポリシロキサンゾル15gと、上記(ii)で得られたポリスチレン粒子1gとを混合し、得られた混合物を直径8インチの熱酸化膜つきシリコン基板(旭日産業(株)製)上にスピンコート法によって塗布し、膜厚1.39μmの塗膜を形成した。その後、80℃で5分間、続いて200℃で5分間加熱し、次いで、真空下、340℃、360℃及び380℃の順でそれぞれ30分間づつ加熱し、更に450度で1時間加熱して無色透明の皮膜(膜厚2,000Å)を形成した。
この皮膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、微細な空孔が形成されていることが確認された。また、比誘電率は1.98、弾性率は3GPaであり、空隙率は15%であった。
【0046】
▲2▼低誘電率絶縁膜の研磨
上記のようにして製造した低誘電率絶縁膜を被研磨面として、上記「銅膜の研磨性能の評価」と同様の研磨条件にて化学機械研磨を行った。光干渉式膜圧測定器(SENTEC社製、型式「FPT500」)によって研磨後の絶縁膜の膜厚を測定し、研磨速度を算出した。また、絶縁膜外周部における絶縁膜の剥がれの有無を、光学顕微鏡にて観察した。また、ウェハ表面異物検査装置(ケーエルエー・テンコール(株)製、型式「サーフスキャンSP1」)によって、被研磨面の全面のスクラッチの個数を計測した。この値を単位面積(10−2mm、100×100μmの正方形の領域)あたりの数に換算した値を、表3に示す。この値が5以下のとき、スクラッチは良好といえる。
低誘電率絶縁膜の研磨速度、絶縁膜外周部における絶縁膜の剥がれの有無、および単位面積あたりのスクラッチ数を表3ないし5に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0004187497
【0048】
【表4】
Figure 0004187497
【0049】
【表5】
Figure 0004187497
【0050】
表3および表4の結果によれば、本発明の化学機械研磨方法は、銅膜の研磨速度が十分に高く、かつ脆弱な低誘電率絶縁膜を研磨した場合でもスクラッチはまったく発生しないか極めて少ないものであることが分かる。比較例7は、砥粒として有機無機複合粒子を含まず、ヒュームドシリカのみが添加されている。そのため、2個/10 −2 mm のスクラッチが発生している。また、比較例8は、加圧ヘッド押し付け圧を17,000Paに設定している。そのため、5個/10 −2 mm のスクラッチが発生している。一方、表5によれば、本発明の条件を外れた研磨条件で化学機械研磨すると、絶縁膜研磨の際の良好な表面状態と、銅膜研磨の際の十分な研磨速度が両立しないことが分かる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度が小さい低誘電率の絶縁膜であっても、スクラッチの発生や外周部における剥がれを大幅に低減可能であり、かつ配線材料たる金属膜の研磨速度に優れた半導体基板の化学機械研磨方法、およびそのために用いられる化学機械研磨用水系分散体が提供される。

Claims (2)

  1. (1)少なくとも有機無機複合粒子と、(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物が配合された化学機械研磨用水系分散体を使用し、定盤回転数が50〜200rpm、加圧ヘッドの押し付け圧が1,400〜12,000Paの条件で、ナノインデンテーション法により測定した弾性率がGPa以下である絶縁膜上に形成された銅膜を研磨することを特徴とする、半導体基板の化学機械研磨方法。
  2. 上記(2)2つ以上のカルボキシル基を有する複素環化合物またはその無水物は、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンおよび5,5’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンから選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の化学機械研磨方法。
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