JP4180606B2 - 生分解性シート及びこのシートを用いた成形体とその成形方法 - Google Patents

生分解性シート及びこのシートを用いた成形体とその成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、生分解性シート及びこのシートを用いた成形体とその成形方法に関し、特に、成形性に優れた生分解性シート及び成形体とその成形方法に関する。
カップ、トレー等の食品容器やブリスターパック、ホットフィル用容器、あるいは電子部品搬送用トレー、キャリアテープ等の材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が用いられてきた。これらプラスチック製品等は一般に使い捨てされるものであり、使用後、廃棄する際に、焼却又は埋立等の処分が問題となっている。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂は、燃焼時の発熱量が多く、燃焼処理中に焼却炉をいためる恐れがあり、ポリ塩化ビニルは焼却時に有害なガスを発生する。一方、埋立処分においても、これらのプラスチック製品は化学的安定性が高いので自然環境下でほとんど分解されず半永久的に土中に残留し、ゴミ処理用地の能力を短期間で飽和させてしまう。また、自然環境中に投棄されると、景観を損なったり海洋生物等の生活環境を破壊する。
そこで、環境保護の観点から、近年においては、生分解性の材料の研究、開発が活発に行われている。その注目されている生分解性の材料の1つとして、ポリ乳酸がある。ポリ乳酸系樹脂は、生分解性であるので土中や水中で自然に加水分解が進行し、微生物により無害な分解物となる。また、燃焼熱量が小さいので焼却処分を行ったとしても炉をいためない。さらに、出発原料が植物由来であるため、枯渇する石油資源から脱却できる等の特長も有している。
ところが、ポリ乳酸系樹脂は耐熱性が低く、加熱食品を入れるような容器や熱湯を注ぎ込むための容器等、高温での使用には適していなかった。また、ポリ乳酸系樹脂製シート及びその成形体を貯蔵や輸送する場合、貯蔵庫や輸送中のトラック、また船の内部は夏期等になると高温に達することも少なくないため、変形や融着等の問題が発生することがあった。
ポリ乳酸系樹脂に耐熱性を付与する技術として、成形工程において、金型をポリ乳酸系樹脂の結晶化温度近傍(80〜130℃)に保持し、金型内でポリ乳酸を高度に結晶化させることにより耐熱性を付与する方法がある。しかし、この方法では、成形したポリ乳酸を金型内で結晶化させるため、結晶化が完了する間、成形体を金型内で保持しなければならず、通常の成形よりも成形サイクルが長くなり、製造コストが高くなる。また、金型を加温する必要があるため、加温設備も必要である。
また、成形後にアニール処理をしてポリ乳酸系樹脂を高度に後結晶化させることにより耐熱性を付与する方法がある。しかし、この方法では、ポリ乳酸系樹脂の成形体を後結晶化させる過程で成形体が変形し、寸法精度に問題を生じる場合があり、また後結晶化させる工程が必要なため、製造コストが高くなる。
ポリ乳酸系樹脂に耐熱性を付与する別の方法として、特開平8−73628号公報に、ポリ乳酸を主成分とする乳酸系ポリマーシートをアニ−リング処理により予備結晶化させて貯蔵弾性率を所定範囲とした後、加熱された金型で成形を行う方法が開示されている。しかし、この方法では、耐熱性のある成形体を得るために、金型の温度をポリ乳酸系樹脂の結晶化温度近傍(80〜130℃)に保持し、金型内でポリ乳酸系樹脂の結晶化を完了させる必要があり、金型を加温する設備も必要である。また、この方法では通常の成形よりも成形サイクルが長くなり、製造コストが高くなる。
特開平8−73628号公報
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、環境問題を発生することがなく、耐熱性に優れ、かつ、成形加工性が良好で、簡易に成形することができる生分解性シートを提供することにある。また、この生分解性シートを用いた成形体と、その成形方法を提供することにある。
本発明の生分解性シートは、ポリ乳酸系樹脂75〜25重量%と、ガラス転移温度が0℃以下、融点が前記ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度より高く、ポリ乳酸系樹脂の融点以下であるポリエステル25〜75重量%とを合計で100重量%となるように配合した樹脂組成物から成るシートを、予備結晶化させたことを特徴とする。
本発明の別の態様の生分解性シートは、ポリ乳酸系樹脂75〜25重量%と、ガラス転移温度が0℃以下、融点が90℃以上でポリ乳酸系樹脂の融点以下であるポリエステル25〜75重量%とを合計で100重量%となるように配合した樹脂組成物から成るシートを、予備結晶化させたことを特徴とする。
ここで、前記ポリエステルは、ポリ乳酸系樹脂以外の生分解性脂肪族系ポリエステルであることが好ましい。
また、前記生分解性脂肪族系ポリエステルは、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートの共重合体及びポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサノエートの共重合体からなる群から選択された少なくとも1種であることができる。
また、前記ポリ乳酸系樹脂の予備結晶化後の結晶化度は20%以上であることができる。
また、本発明においては、上記樹脂組成物から成るシートを、キャストロールに接触させることによって予備結晶化させることができる。
また、本発明においては、前記樹脂組成物から成るシートを、冷却する前に予備結晶化させることができる。
本発明の生分解シートの成形方法は、上記生分解性シートを、脂肪族系ポリエステルの融点以上、かつポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度で成形することを特徴とする。
本発明の生分解シートの成形体は、上記成形方法によって成形されたことを特徴とする。
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ、成形加工性が良好で、簡易に成形することができる生分解性シートを提供することができる。また、この生分解性シートを用いた成形体と、その成形方法を提供することができる。
発明を実施するための形態
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の生分解性シートは、ポリ乳酸系樹脂75〜25重量%と、特定のポリエステル25〜75重量%との配合物を含む樹脂組成物からシートを形成し、かつ、予備結晶化させたものである。
ポリ乳酸系樹脂及びポリエステルの重量比は、ポリ乳酸系樹脂75〜25重量%と、上記ポリエステル25〜75重量%とを合計で100重量%となるように配合することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の配合量が75重量%を越えると成形加工性が悪くなり、真空成形や圧空成形等の汎用成形が困難となる。また25重量%以下では得られるシート及び成形体の剛性が劣る結果となる。
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂としては、構造単位がL−乳酸又はD−乳酸であるホモポリマー、すなわち、ポリ(L−乳酸)又はポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸及びD−乳酸の両方である共重合体、すなわち、ポリ(DL−乳酸)や、これらの混合体が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の重合法としては、縮重合法、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮重合法ではL−乳酸又はD−乳酸、あるいはこれらの混合物を、直接脱水縮重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
また、開環重合法では乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、適宜選択された触媒を使用してポリ乳酸系樹脂を得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。
さらに、耐熱性向上等の必要に応じて、少量共重合成分を添加することもでき、テレフタル酸等の非脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の非脂肪族ジオール等を用いることもできる。
さらにまた、分子量増大を目的として、少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用することもできる。
ポリ乳酸系樹脂は、さらにα−ヒドロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位との共重合体であっても、脂肪族ジオール/脂肪族ジカルボン酸との共重合体であってもよい。
他のヒドロキシ−カルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂に共重合される脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、5万〜40万の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10万〜25万である。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量が5万を下回ると実用物性が発現されにくく、40万より上回ると溶融粘度が高すぎて成形加工性に劣ることがある。
本発明においては特定のポリエステルを配合することが、シート及びその成形体に耐熱性、耐衝撃性及び成形加工性を付与するために必要である。
特定のポリエステルは、ガラス転移温度が0℃以下、融点が、配合するポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度より高く、例えば90℃以上、かつポリ乳酸系樹脂の融点以下のポリエステルである。ガラス転移温度が0℃より高いと、耐衝撃性の改良効果が不十分となる。また、融点が90℃より低いと、成形体の耐熱性が不十分なものとなる場合がある。本発明において、ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は0℃以下であることが必要であるが、−20℃以下であることが好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂の融点は、構造単位であるL−乳酸、D−乳酸の混合割合によって異なるが、一般的には、約135℃〜175℃である。ポリエステルの融点が配合するポリ乳酸系樹脂の融点より高いと、ポリ乳酸系樹脂を予備結晶化させる意味がなくなり、剛性や成形加工性の点で問題が生じる。
本発明においては、ポリエステルとして、ポリ乳酸系重合体以外の生分解性脂肪族系ポリエステルを使用することが好ましい。生分解性脂肪族系ポリエステルとしては、ポリヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル又は脂肪族芳香族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成される脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
ここで用いられるポリヒドロキシカルボン酸としては、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体や共重合体が挙げられる。
脂肪族ポリエステル又は脂肪族芳香族ポリエステルに使用される、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
これらの脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステルや、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族芳香族ポリエステルは、上記の各化合物の中からそれぞれ1種類以上を選んで縮重合し、さらに、必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーを得ることができる。
環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルは、環状モノマーとして、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の1種類又はそれ以上を重合することによって得られる。
合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体が挙げられる。
菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルとしては、アルカリゲネスユートロファスをはじめとする菌体内でアセチルコエンチームA(アセチルCoA)により生合成される脂肪族ポリエステルが挙げられる。この菌体内で生合成される脂肪族ポリエステルは、主にポリ−β−ヒドロキシ酪酸(ポリ3HB)であるが、プラスチックスとしての実用特性向上のために、ヒドロキシ吉草酸(HV)を共重合し、ポリ(3HB−CO−3HV)の共重合体にすることが工業的に有利である。HV共重合比は、一般的に0〜40mol%が好ましい。さらに、ヒドロキシ吉草酸のかわりに3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシオクタデカノエート等の長鎖のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂と特定のポリエステルとを所定の割合で配合した樹脂組成物からシートを形成し、このシートを予備結晶化させることが重要である。予備結晶化させることにより、ポリ乳酸系樹脂を少なくとも一部結晶化させることができ、成形体への剛性付与が可能である。また、ポリ乳酸系樹脂の結晶化度が20%以上であると、成形時のドローダウンを防止することができる。ポリ乳酸系樹脂の結晶化度について上限はなく、予備結晶化により100%結晶化してもよい。
なお、樹脂組成物からシートを形成する方法は、一般的なシート形成方法を用いることができ、例えば、Tダイキャスト法による押出成形により製造することができる。ただし、ポリ乳酸系樹脂は吸湿性が高く、加水分解性も高いため、製造工程における水分管理が必要であり、一般的な一軸押出機を用いて押出成形する場合には、真空乾燥器等によって除湿乾燥した後に、製膜する。またベント式二軸押出機を用いて押出成形する場合には、脱水効果が高いので効率的な製膜が可能であり、また複数押出機による多層シートとすることも可能である。
予備結晶化方法としては、特に制限はないが、例えば、赤外線ヒーターや熱風等で連続的に一定時間加熱する方法やロール等に接触させる方法等が挙げられる。Tダイキャスト法で押出したシートを高温のキャストロールに接触させることによって予備結晶化を行うことが、生産性の観点から好ましい。
本発明の生分解性シートは成形加工性に優れており、金型の加温を必要としないような温度で、かつ、短い成形サイクルで成形することができる。以下に、本発明の成形方法を説明する。
本発明の生分解性シートは、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形等の種々の成形方法を用いて成形体を形成することができる。ただし、シートの成形温度は、ポリエステルの融点以上、配合するポリ乳酸系樹脂の融点未満であることが好ましい。成形温度がポリエステルの融点未満であると、耐熱性や成形加工性が不十分となる場合があり、ポリ乳酸系樹脂の融点以上であると、剛性や成形加工性に問題が生じる場合がある。
このように、本発明の生分解性シートを用いれば、金型をポリ乳酸系樹脂の結晶化近傍の温度(例えば、80〜130℃)に保持しなくても、かかる温度より低い温度で、かつ短い成形サイクルで成形体を形成することができる。また、得られた成形体は耐熱性及び耐衝撃性にも優れたものである。
これは、本発明の生分解性シートが、予備結晶化によりポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部が結晶化し、また他のポリエステルとの混合系であり、特異な粘弾性を有するためと考えられる。本発明の生分解性シートの一実施形態の動的粘弾性(E’)と温度との関係を図1に示す。図1において、本発明の生分解性シートは、(i)ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度と(iii)ポリ乳酸系樹脂の融点との間の温度で成形可能であるが、(ii)ポリエステルの融点以上、かつ、(iii)ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度で成形することが好ましい。また、予備結晶化によりポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部が結晶化しているので、残りのポリ乳酸系樹脂の結晶を促し、短い成形サイクルでの成形が可能であり、かつ、得られた成形体は結晶化の度合いも十分であり、良好な耐熱性を有する。
本発明の生分解性シートを用いて形成された成形体としては、例えば、弁当箱、鮮魚・精肉・青果・豆腐・惣菜・デザート・インスタントラーメン等の食品用のトレーやカップ、歯ブラシ・電池・医薬品・化粧品等の包装用容器、プリン・ジャム・カレー等のホットフィル容器、あるいはIC・トランジスタ・ダイオード等の電子部品搬送用トレー、キャリアテープ等が挙げられる。
また、本発明においては、生分解性シートの形成に使用される樹脂組成物に、副次的添加剤を加えて、種々の改質を行うことができる。副次的添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、静電剤、導電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌剤、核形成剤やその他類似のもの等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例等を示して本発明を詳述するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお実施例及び比較例中の物性値は、以下の方法により測定し、評価を行った。
測定方法及び評価方法

(1)耐熱性の評価
生分解性シートから得られた成形体を、熱風循環式オーブンにおいて80℃で20分間熱処理し、成形体の容積減容率(%)を下記式にて算出した。

容積減容率={1−(熱処理後の成形体容積/熱処理前の成形体容積)}×100
(2)耐衝撃性(i)の評価
東洋精機社製のハイドロショット衝撃試験機(型式HTM−1)を用い、温度23℃で、直径が1/2インチの撃芯を3m/secの速度で生分解性シートに衝突させ、破壊に要したエネルギーを算出した。
(3)耐衝撃性(ii)の評価
生分解性シートから得られた成形体に水を充填し、開口部をシールして、1mの高さからコンクリート上に落下させ、成形体の破損の有無を調べた。
(4)ガラス転移温度の測定
JIS−K−7121に基づき、示差走査熱量測定法(DSC)にて昇温速度が10℃/minでポリエステルのガラス転移温度を測定した。
(5)結晶化度の測定
JIS−K−7121に基づき、示差走査熱量測定法(DSC)にて昇温速度が10℃/minで、生分解性シート中のポリ乳酸系樹脂に起因する融解熱量(ΔHm)及び結晶化熱量(ΔHc)を測定し、下記式によりポリ乳酸系樹脂の結晶化度を算出した。

結晶化度(%)=
(ΔHm−ΔHc)/(92.8×シート中のポリ乳酸系樹脂の割合)×100
(6)成形性の評価
φ100mm、深さ30mm、絞り比0.3の成形金型(金型温度25℃)を用いて圧空成形(空気圧:2kg/cm)を行い、成形体の型賦形状態を観察し、3段階で評価を行った。評価基準は、良好な形態の成形体が形成されている場合を「○」、実用可能なレベル程度の場合を「△」、不良形状の成形体の場合を「×」で示した。
(実施例1)
ピューラックジャパン社製のL−ラクチド(商品名:PURASORB L)100kgに、オクチル酸スズを15ppm添加したものを、攪拌機と加熱装置を備えた500Lバッチ式重合槽に入れた。窒素置換を行い、185℃、攪拌速度100rpmで、60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工社製の40mmφ同方向2軸押出機に供給し、ベント圧4torrで脱揮しながら、200℃でストランド状に押出してペレット化した。
得られたポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は20万であり、L体含有量は99.5%であった。またDSCによる融点は171℃であった。
上記ポリ乳酸系樹脂と、生分解性脂肪族系ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(昭和高分子製の商品名「ビオノーレ1001」、融点:111℃、ガラス転移点:−40℃)とを、ポリ乳酸系樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=60重量%/40重量%の割合で混合し、同方向二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出させ、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。
次いで、得られたペレットを70℃で8時間乾燥した後、単軸押出機に供給し、Tダイから押出した後、110℃のキャストロールに接触させて厚み400μmの生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は44%であった。
次に、得られた生分解性シートを用いて成形体を形成した。すなわち、成形金型(金型温度25℃)を用いて、シート温度140℃、空気圧2kg/cmの条件下で圧空成形を行い、生分解性の成形体を得た。得られた成形体について、耐熱性、耐衝撃性(i)、耐衝撃性(ii)および成形性の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリ乳酸系樹脂と生分解性脂肪族ポリエステルの配合量を、ポリ乳酸系樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=50重量%/50重量%に変更した以外は実施例1と同様にして、生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は43%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリ乳酸系樹脂と生分解性脂肪族ポリエステルの配合量を、ポリ乳酸系樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=40重量%/60重量%に変更した以外は実施例1と同様にして、生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は44%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
生分解性脂肪族系ポリエステルとしてポリブチレンアジペートテレフタレート(BASF社製の「Ecoflex」、融点:109℃、ガラス転移点:−30℃)を用い、ポリ乳酸系樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=70重量%/30重量%とした以外は実施例1と同様にして、生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸の結晶化度は40%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
ピューラックジャパン製L−ラクチド(商品名:PURASORB L)90kgと同社製DL−ラクチド(商品名:PURASORB DL)10kgに、オクチル酸スズを15ppm添加したものを、攪拌機と加熱装置を備えた500Lバッチ式重合槽に入れた。窒素置換を行い、185℃、攪拌速度100rpmで、60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工製40mmφ同方向2軸押出機に供給し、ベント圧4torrで脱揮しながら、200℃でストランド状に押し出してペレット化した。
得られたポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は20万であり、L体含有量は94.8%であった。またDSCによる融点は165℃であった。
このポリ乳酸系樹脂と、生分解性脂肪族系ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製の「ビオノーレ1001」、融点:111℃、ガラス転移温度:−40℃)とを、ポリ乳酸樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=50重量%/50重量%で混合し、同方向二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出させた後、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。
得られたペレットを70℃で8時間乾燥した後、単軸押出機に供給しTダイから押出し、110℃のキャストロールに接触させ厚み400μmの生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は36%であった。
得られた生分解性シートを用いて成形体を形成した。すなわち、成形金型(金型温度25℃)を用いて、シート温度140℃、空気圧2kg/cmの条件下で圧空成形を行い、生分解性シートの成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1で得られたペレットを、70℃で8時間乾燥した後、単軸押出機に供給し、Tダイから押出した後、40℃のキャストロールに接触させて厚み400μmの生分解性シートを得た。得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は10%であった。
得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例7)
ピューラックジャパン社製のL−ラクチド(商品名:PURASORB L)100kgに、オクチル酸スズを15ppm添加したものを、攪拌機と加熱装置を備えた500Lバッチ式重合槽に入れた。窒素置換を行い、185℃、攪拌速度100rpmで、60分間重合を行った。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工社製40mmφ同方向2軸押出機に供給し、ベント圧4torrで脱揮しながら、200℃でストランド状に押出してペレット化した。
得られたポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は13万であり、L体含有量は99.5%であった。またDSCによる融点は171℃であった。
得られたポリ乳酸樹脂と、生分解性脂肪族系ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製の商品名「ビオノーレ1001」、融点:111℃、ガラス転移点:−40℃)をポリ乳酸系樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=60重量%/40重量%で混合し、同方向二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出させた後、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。
得られたペレットを70℃で8時間乾燥した後、単軸押出機に供給し、Tダイから押出し、40℃のキャストロールに接触させて厚み400μmの生分解性シートを得た。
得られた生分解性シートを110℃のオーブン内で24時間熱処理し、ポリ乳酸系樹脂の結晶化度が52%のシートを得た。
この生分解性シートを用いて成形体を形成した。すなわち、成形金型(金型温度25℃)を用いて、シート温度140℃、空気圧2kg/cmの条件下で、圧空成形を行い、生分解性の成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で用いたポリ乳酸系樹脂を同方向二軸押出機に供給し、溶融混練してストランド状に吐出させた後、ペレタイザーでカットしペレットを得た。
上記ペレットを70℃で8時間乾燥後、単軸押出機に供給しTダイから押出し、110℃のキャストロールに接触させ厚み400μmの生分解性シートを得た。
得られた生分解性シートのポリ乳酸系樹脂の結晶化度は43%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例2)
ポリ乳酸系樹脂と生分解性脂肪族ポリエステルとの配合割合を、ポリ乳酸樹脂/生分解性脂肪族系ポリエステル=80重量%/20重量%に変更した以外は実施例1と同様にして生分解性シートを作製した。得られた生分解性シートのポリ乳酸の結晶化度は44%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1において、生分解性脂肪族系ポリエステルとしてポリヒドロキシブチレート(三菱ガス化学社製の「ビオグリーン」、融点:180℃、ガラス転移点:4℃)を用い、ポリ乳酸系樹脂/ポリエステル=70重量%/30重量%とした以外は実施例1と同様にして生分解性シートを作製した。得られた生分解性シートのポリ乳酸の結晶化度は41%であった。
また、得られた生分解性シートを用いて、実施例1と同様にして成形体の作製を行ったが、成形体の型腑形性が極端に悪く、成形体を得られなかった。したがって、耐熱性等の評価を行うことができなかった。
Figure 0004180606
Figure 0004180606
表1及び表2から、実施例1〜7は耐熱性、耐衝撃性、成形性いずれも問題なく、良好な成形体が通常の成形サイクルで得られることが分かった。
一方、比較例1では生分解性脂肪族系ポリエステルが含まれていないために耐熱性、耐衝撃性に問題があり、また成形体も型賦形性が不十分で良好な成形体が得られなかった。比較例2では生分解性脂肪族系ポリエステルの配合量が少ないため耐熱性に問題があり、比較例1と同様に成形体の型賦形性も不十分であった。なお、実施例1の成形体について、成形性の評価においてシートのドローダウンの状態も観察したところ、シートのドローダウンは生じなかった。
以上詳しく説明したように、本発明のシートにおいては金型をポリ乳酸系樹脂の結晶化近傍(80〜130℃)に保持する必要はなく、常温の金型でも耐熱性のある成形体が得られ、通常の成形サイクルでの成形が可能である。すなわち、本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂と特定のポリエステルの予備結晶化シートを成形に用いることで、従来の問題点であった(i)成形サイクルが長くなり製造コストが高くなること、(ii)金型を加温するための設備等特別な装置が必要である等の問題が解消され、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、およびプレス成形等の種々の成形が可能な生分解性シートを提供することができる。また、かかる生分解性シートを用いて、耐熱性、耐衝撃性及び成形性に優れた成形体及びその成形方法を提供することができる。
本発明により得られる生分解性シートは、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、およびプレス成形等の種々の成形に適用することができる。
生分解性シートの動的粘弾性を示すグラフである。

Claims (4)

  1. ポリ乳酸系樹脂75〜25重量%と、ガラス転移温度が0℃以下、融点が前記ポリ乳酸系樹脂のガラス転移温度より高く、ポリ乳酸系樹脂の融点以下である脂肪族ポリエステル25〜75重量%とを合計で100重量%となるように配合した樹脂組成物であり、該脂肪族ポリエステルがポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリエステルカーボネート、ポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバリレートの共重合体及びポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシヘキサノエートの共重合体からなる群から選択された少なくとも1種である樹脂組成物から成るシートを、予備結晶化させ、脂肪族系ポリエステルの融点以上、かつポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度で成形することを特徴とする生分解性シートを用いてなる成形体の成形方法。
  2. 前記予備結晶化は、予備結晶化後の結晶化度が20%以上となるように予備結晶化されていることを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
  3. 前記予備結晶化が、キャストロール及び/又はオーブンを用いて行われることを特徴とする請求項2に記載の成形方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の成形方法によって成形されたことを特徴とする生分解性シートの成形体
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