JP4097151B2 - 加工性に優れた高強度ばね用鋼線および高強度ばね - Google Patents

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Description

本発明は、疲労特性及び耐へたり性に優れるだけでなく、冷間加工性(コイリング性)にも優れた高強度ばね用鋼線及び高強度ばねに関するものである。
自動車エンジンの弁ばね、サスペンションの懸架ばね、クラッチばね、ブレーキばねなどは、近年の自動車の軽量化や高出力に伴い、高応力に適した設計が求められている。
例えば、ばねの耐へたり性が低いと、高応力負荷中に、ばねのへたり量が大きくなって、設計通りにエンジンの回転数が上がらず応答性が悪くなるため、耐へたり性に優れたばねが求められる。
ばねの耐へたり性を改善するためには、ばね素材を高強度化すればよいことが知られている。またばね素材を高強度化すれば疲労限の点からは、疲労特性の向上が期待される。例えば化学成分の調整と、油焼入れ・焼戻し後(オイルテンパー処理後)の引張強度を上昇させることにより、疲労強度、耐へたり性を改善する方法が知られている。またSiなどの合金元素を多量に添加して、耐へたり性を改善する方法も知られている(特許文献1,2参照)。
しかし、引張強度を上昇させて疲労特性及び耐へたり性を向上させる方法では、ばねのコイリング時に折損が起こるという問題が発生する。また合金成分を多量に添加して耐へたり性を改善する方法では、表面疵や内部欠陥に対する感受性が高くなり、ばねの組み付け時や使用時にこれらの欠陥を起点として折損が起こり易くなる。
従ってばねの耐へたり性と疲労特性の両方を向上させながら、さらに冷間加工性をも向上させるのは困難である。
特許第2898472号公報(請求項1,段落0015) 特開2000−169937号公報(請求項1,段落0018,段落0028)
本発明は上記事情に鑑みたものであり、耐へたり性と疲労特性の両方に優れ、しかも加工性(冷間加工性)にも優れた高強度ばね用鋼線及び高強度ばねを提供する。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、合金元素を多量添加して疲労強度及び耐へたり性を向上させた上で、耐力比(σ0.2/σB)を0.85以下に小さくすると、優れたコイリング性(冷間加工性)を得られることを見出した。しかも、結晶粒を小さくすれば、さらなる疲労寿命の向上及び耐へたり性の向上が達成され、さらにはCrを多量添加しても欠陥感受性を低下させることなく耐へたり性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明に係る加工性に優れた高強度ばね用鋼線は、C:0.53〜0.68%(質量%の意、以下同じ)、Si:1.2〜2.5%、Mn:0.2〜1.5%(例えば0.5〜1.5%)、Cr:1.4〜2.5%、及びAl:0.05%以下(0%を含まない)を含有しており、さらにNi:0.4%以下(0%を含まない)、V:0.4%以下(0%を含まない)、Mo:0.05〜0.5%、及びNb:0.05〜0.5%から選択される少なくとも1種を含み、残部はFe及び不可避的不純物である。しかも本発明のばね用鋼線は、焼戻しマルテンサイト組織を有しており、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号が11.0以上であり、0.2%耐力(σ0.2)と引張強さ(σB)の比(σ0.2/σB)が0.85以下でもある。
前記ばね用鋼線は、温度400℃×20分の焼鈍をした際に、0.2%耐力(σ0.2)が300MPa以上上昇するものであるのが好ましい。
また本発明のばねは、上記高強度ばね用鋼線からなるものであり、芯部の硬さはHv550〜700程度、前記表面の圧縮残留応力が引張に転ずる深さは0.05mm以上0.5mm以下程度であるのが望ましい。また本発明のばねは表面硬化処理(窒化処理など)の有無は問わないが、表面硬化処理がされていない場合は、ばねの表面の圧縮残留応力が−400MPa以下であるのが望ましい。表面硬化処理がされている場合(すなわちばね表面に窒化処理層が形成されている場合)は、ばねの表面の圧縮残留応力が−800MPa以下であるのが望ましく、またばねの表面硬さはHv750〜1150程度であるのが好ましい。硬化層(芯部硬さよりもHv15以上硬くなっている層)の深さは、例えば0.02mm以上である。
本発明のよれば、合金成分が適切に調整されているため高強度となっており、またCrを有効利用しており、さらには結晶粒度及び耐力比も適切に調整されているため、疲労寿命、耐へたり性、及び冷間加工性のいずれにも優れているばね用鋼線及びばねを得ることができる。
本発明の鋼線及びばねは、C、Si、Mn、Cr、Alを含有し、さらにNi、V、Mo、及びNbから選択される少なくとも1種を含み、残部はFe及び不可避的不純物である。以下、各成分の量及びその限定理由を説明する。
C:0.53〜0.68%(質量%の意、以下同じ)
Cは高応力が負荷されるばね鋼として十分な高強度を確保し、疲労寿命、耐へたり性などを向上させるために不可欠な元素であるため、下限を0.53%とした。しかし、多すぎると靭延性が極端に悪くなり、表面疵や内部欠陥を原因としてばね加工中や使用中の割れが発生しやすくなるため、上限を0.68%とした。好ましいC量は、0.58%以上、0.65%以下である。
Si:1.2〜2.5%
Siは製鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、また、軟化抵抗性を高め、耐へたり性を向上させるのに有用な元素であるため、下限を1.2%とした。しかし、多すぎると靭・延性が悪くなるだけでなく、疵が増加したり、熱処理の際に表面の脱炭が進行し易くなったり、また粒界酸化層が深くなり易く疲労寿命を短くし易くなるため、上限を2.5%とした。好ましいSi量は、1.3%以上、2.4%以下である。
Mn:0.2〜1.5%
Mnも製鋼時の脱酸に有効な元素であり、また、焼入性を高めて強度向上に寄与し、疲労寿命向上、耐へたり性向上などにも寄与する元素であるため、下限を0.2%とした。好ましいMn量は、0.3%以上、特に0.4%以上(例えば、0.5%以上)である。しかし本発明の鋼線(及びばね)は、鋼を熱間圧延した後、必要に応じてパテンティング処理し、次いで伸線、オイルテンパー、コイリングなどすることによって得られるものであり、Mnが多すぎると熱間圧延時やパテンティング処理時にベイナイト等の過冷組織が生成し易くなり、伸線性が低下し易くなるため、上限を1.5%とした。好ましいMn量は、1.0%以下である。
Cr:1.4〜2.5%
Crは耐へたり性の向上作用及び欠陥感受性低下作用を有しており、本発明にとって極めて重要な元素である。なおCrは粒界酸化層を厚くして疲労寿命を低下させる作用も有しているものの、この点はオイルテンパー時の雰囲気を制御して(具体的には、積極的に水蒸気を約3〜80体積%程度混入させ、表面に緻密な酸化被膜を形成することによって)粒界酸化層を薄くすることが可能であるため、本発明ではかかる不具合は解消できる。従ってCrは多い程望ましく、1.4%以上、好ましくは1.45%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。なおCrが過剰になると、伸線の際のパテンティング時間が長くなりすぎ、また靭性や延性も低下するため、2.5%以下、好ましくは2.0%以下とする。
なお本発明の鋼線及びばねでは、粒界酸化層の深さは、通常、10μm以下程度である。
Al:0.05%以下(0%を含まない)
Alはオーステナイト化時に結晶粒を微細化する作用があり、靭・延性を向上させる効果がある。しかし、過剰に添加するとAl23系の粗大な非金属系介在物が多くなり、疲労特性を悪化させるため、上限を0.05%、好ましくは0.04%とした。
Ni:0.4%以下(0%を含まない)
Niは焼入性を高め、低温脆化を防止するのに有用な元素である。しかし、多すぎると熱間圧延時においてベイナイトあるいはマルテンサイト組織が生成し、靭性、延性が低下するため、上限を0.4%、好ましくは0.3%とした。好ましいNi量は、0.1%以上である。
V:0.4%以下(0%を含まない)
Vはオイルテンパー処理(焼入れ焼戻し)等の熱処理時に結晶粒を微細化する作用があり、靭・延性を向上させる効果がある。また、焼入れ・焼戻し処理およびコイリング後の歪取り焼鈍時に2次析出硬化を起こして高強度化にも寄与する。しかし、過剰に添加すると圧延時やパテンティング時にマルテンサイトやベイナイト組織が生成し、加工性が悪くなるため、上限を0.4%、好ましくは0.3%とした。好ましいV量は0.1%以上である。
Mo:0.05〜0.5%
Moは、軟化抵抗を向上させるとともに、析出硬化を発揮し、低温焼鈍後の耐力を上昇させるのに有用な元素である。Moは、例えば、0.05%以上、好ましくは0.10%以上とする。しかし、過剰に添加すると、オイルテンパー処理するまでの段階でマルテンサイトやベイナイト組織が生成し、加工性が悪くなるため、上限を0.5%、好ましくは0.3%、さらに好ましくは0.2%とした。
Nb:0.05〜0.5%
Nbはピン止め効果を有するNb炭窒化物を形成するため、オイルテンパー処理(焼入れ焼戻し)等の熱処理時に結晶粒を微細化する作用があり、靭・延性を向上させることができる。かかる効果を有効に発揮するため、0.05%以上、好ましくは0.10%以上とした。しかし、過剰に添加するとNb炭窒化物の凝集がおこり、かえって結晶粒が粗大化し易くなるため、上限を0.5%、好ましくは0.3%とした。
なお本発明のばね用鋼線の組織は、通常、焼戻しマルテンサイトと残留オーステナイト(常温まで冷却後、残っているオーステナイト)などから構成される複合組織である。焼戻しマルテンサイトは、例えば、90面積%以上であり、残留オーステナイトは、例えば、約5〜10面積%程度である。
また本発明の鋼線およびばねは、通常、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号が11.0以上(好ましくは13以上)である。結晶粒度番号が大きい(すなわち結晶粒が小さい)ほど、疲労寿命の向上及び耐へたり性の向上に有効である。なお結晶粒度番号は、結晶粒微細化元素(Cr、Al、V、Nb)の添加量を調整することによって、またオイルテンパー処理における焼入れ時の加熱速度を速くすることによって大きくできる。
さらに本発明の鋼線(オイルテンパー線)及びばねは、0.2%耐力(σ0.2)と引張強さ(σB)の比(耐力比;σ0.2/σB)が0.85以下(好ましくは0.80以下)である。オイルテンパー後の耐力比が小さいほどコイリング時の折損を防止でき、冷間加工性を高めることができる。耐力比は、例えば、オイルテンパー処理における焼戻し後の冷却速度を速く(例えば水冷)することによって小さくできる。
上述したような本発明の鋼線及びばねは、合金成分が適切に調整されているため高強度となっており、さらには結晶粒度及び耐力比も適切に調整されているため、疲労寿命、耐へたり性、及び冷間加工性のいずれにも優れている。なお上記鋼線及びばねの芯部のビッカース硬さは、合金成分の調整の他、熱処理などによっても適宜調整できるが、例えば、Hv550以上(好ましくはHv570以上、さらに好ましくはHv600以上)である。また前記ビッカース硬さは、例えば、Hv700以下程度であってもよく、Hv650以下程度であってもよい。なお表面の硬さは、表面硬化処理技術(窒化処理など)の利用などによってもさらに高めることができる。例えば窒化処理した(従って表面に窒化処理層が形成されている)ばねの表面硬さは、Hv750以上(好ましくはHv800以上)、Hv1150以下(例えばHv1100以下)程度である。
前記ばね用鋼線(オイルテンパー線)は、温度400℃×20分の焼鈍をした際に、0.2%耐力(σ0.2)が300MPa以上(好ましくは350MPa以上)上昇するものであるのが望ましい。0.2%耐力の上昇量(Δσ0.2)が大きいほど、耐へたり性をさらに改善できる。なおΔσ0.2も、前記耐力比と同様、オイルテンパー処理(焼入れ焼戻し)後の冷却速度を速く(例えば水冷)することによって大きくできる。
また本発明のばねは、ばねの表面の圧縮残留応力が高められているのが望ましい。残留応力が圧縮側にあるほど、疲労寿命を高めることができる。望ましい圧縮残留応力はばねが窒化処理されているか否かによって異なるが、窒化処理されていない場合は、例えば、−400MPa以下(好ましくは−500MPa以下、さらに好ましくは−600MPa以下)である。なお残留応力は負の値であるときに圧縮であることを意味し(また正の値であるときに引張であることを意味し)、絶対値が大きいほど残留応力が大きいことを意味する。また窒化処理されている場合(すなわちばね表面に窒化処理層が形成されている場合)には、例えば、−800MPa以下(好ましくは−1000MPa以下、さらに好ましくは−1200MPa以下)程度である。ばねの表面の圧縮残留応力は、例えば、ショットピーニングの回数を多くすることによって(例えば2回以上することによって)高めることができる。
さらに本発明のばねは、表面の圧縮残留応力が引張に転ずる深さ(クロッシングポイント)が深いほど望ましい。クロッシングポイントが深いほど、圧縮側の残留応力部分を増やすことができ、疲労寿命を向上できる。クロッシングポイント(深さ)は、例えば、0.05mm以上(好ましくは0.10mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上)、0.5mm以下(好ましくは0.4mm以下、さらに好ましくは0.35mm以下)程度である。なおクロッシングポイントは、例えば、ショットピーニングの回数を多くすることによって(例えば2回以上)、またショットピーニング時のショット粒の平均粒径を大きくする(例えば、1段目のショットピーニング時のショット粒の平均粒径を0.7〜1.2mm程度にする)ことによって深くできる。
また本発明のばねは、表面硬化処理(窒化処理など)されている場合、硬化層(芯部硬さよりもHvが15以上硬くなっている層)の深さは、深い程望ましい。硬化層が深いほど疲労亀裂の発生を抑制し、疲労特性を向上させることができる。硬化層深さは、例えば、0.02mm以上(好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.04mm以上)、0.15mm以下(好ましくは0.13mm以下、さらに好ましくは0.10mm以下)である。なお硬化層は、窒化時間を長くする、あるいは窒化温度を高めることによって深くできる。
本発明の鋼線及びばねは、疲労特性、耐へたり性、及び加工性に優れているため、これら特性が求められる用途、例えば、自動車エンジンの弁ばね、サスペンションの懸架ばね、クラッチばね、ブレーキばねなどのような機械の復元機構に使用するばねなどに特に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例1
表1に示す化学成分の鋼A〜R(残部はFe及び不可避的不純物)を溶製し、熱間圧延することにより直径8.0mmの線材を作製した。ついで、軟化焼鈍、表面皮削り、鉛パテンティング処理(加熱温度:950℃、鉛炉温度:620℃)後、直径4.0mmまで伸線した。その後、オイルテンパー処理(焼入れ時加熱速度:250℃/秒、加熱温度:960℃、焼入油温度:70℃、焼戻温度:450℃、焼戻し後の冷却速度:300℃/秒、炉雰囲気:10体積%H2O+90体積%N2)を行い、オイルテンパー線(鋼線)を作製した。
なお鋼種E2ではオイルテンパー処理における焼戻し後の冷却を空冷とした。また鋼種H2では、オイルテンパー処理における焼入れ時の加熱速度を20℃/秒とした。
得られたオイルテンパー線(粒界酸化層深さ:10μm以下)の特性を以下のようにして評価した。
(1)引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、結晶粒度番号
上記オイルテンパー線について引張試験を行い、引張強さ(σB)及び0.2%耐力(σ0.2)を測定し、耐力比(σ0.2/σB)を算出した。また旧オーステナイト粒の結晶粒度番号をJ1S G0551に準拠して測定した。
(2)歪み取り焼鈍後の0.2%耐力の変化量(Δσ0.2
上記オイルテンパー線を低温焼鈍(400℃×20分)した後、該低温焼鈍後の0.2%耐力(σ0.2)を測定し、低温焼鈍後の0.2%耐力(σ0.2)から低温焼鈍前の0.2%耐力(σ0.2)を差し引くことによって変化量(Δσ0.2)を求めた。
(3)加工性
上記オイルテンパー線の巻付試験をJIS G 3560に準拠して行った(巻数:10回)。
(4)疲労寿命、残留せん断歪み
上記オイルテンパー線を冷間コイリング成形(コイルの平均径:24.0mm、巻数:6.0、有効巻数:3.5)し、歪み取り焼鈍(400℃×20分)、座研磨、窒化処理(窒化条件:80体積%NH3+20体積%N2、430℃×3時間)、ショットピーニング[回数:3回、ショット粒の平均粒径(1段目):1.0mm、ショット粒の平均粒径(1〜3段目の平均):0.5mm]、低温焼鈍(230℃×20分)、冷間セッチングを行い、ばねとした。
得られた各ばねに760±650MPaの負荷応力下、温間(120℃)で疲労試験を行い、ばねが破断するまでの繰り返し数を測定した(疲労寿命)。なおばねが破断しない場合、繰り返し数1×107回で試験を中止した。
また上記各ばねを1372MPaの応力下で48時間に亘って継続してばねを締め付けた後(温度:120℃)、応力を除去し、試験前後のへたり量を測定し、残留せん断歪みを算出した。
(5)硬さ、残留応力
上記オイルテンパー線を「(4)疲労寿命、残留せん断歪み」と同様にしてばねとした。このばねの表面のビッカース硬さ(Hv)は、該表面を研磨したサンプル上でビッカース硬さ(300gf)を測定し、垂直方向に換算する方法(コード法)によって測定した。また前記ばねを切断し、JIS Z 2244に準拠して、断面のビッカース硬さ(Hv)を測定することにより、硬化層深さ及び芯部のビッカース硬さ(Hv)及び硬化層(芯部の硬さよりHv15以上高い層)の深さを求めた。さらにX線回折法によって残留応力を測定することにより、ばねの表面の圧縮残留応力と、表面側の圧縮残留応力が引張残留応力へと転じる点(深さ;クロッシングポイント)を求めた。
結果を表2に示す。
Figure 0004097151
Figure 0004097151
表1及び表2より明らかなように、No.18ではC量が不足しているために所定の強度が達成されず、疲労寿命及び耐へたり性が不十分である。No.20ではAlが過剰なため酸化物系介在物が粗大となって破壊の起点となるため、疲労寿命が短い。またNo.14〜17及び19でも、Cr量が不足しているために、疲労寿命が不十分である。
これらに対して、No.1〜5、7〜9、及び11〜13では、種々の化学成分が適切に調整されており、しかもCrが所定量添加されており、さらには結晶粒度及び耐力比も適切に制御されているため、疲労寿命、耐へたり性、及び加工性のいずれにも優れている。
なおNo.6から明らかなように、耐力比(σ0.2/σB)及び0.2%耐力の変化量(Δσ0.2)の条件が不適切であると、加工性が悪くなる。また前記No.14〜17に比べれば改善されているものの、耐へたり性が不十分となる。
またNo.10から明らかなように、結晶粒が大きくなると(粒度番号が小さくなると)、No.14〜17に比べれば改善されているものの、疲労寿命及び耐へたり性が不十分となる。

Claims (6)

  1. 焼戻しマルテンサイト組織を有するばね用鋼線であって、該ばね用鋼線は、
    C :0.53〜0.68%(質量%の意、以下同じ)、
    Si:1.2〜2.5%、
    Mn:0.2〜1.5%、
    Cr:1.4〜2.5%、及び
    Al:0.05%以下(0%を含まない)を含有し、
    さらにNi:0.4%以下(0%を含まない)、V:0.4%以下(0%を含まない)、Mo:0.05〜0.5%、及びNb:0.05〜0.5%から選択される少なくとも1種を含み、
    残部はFe及び不可避的不純物であり、
    旧オーステナイト粒の結晶粒度番号が11.0以上であり、
    0.2%耐力(σ0.2)と引張強さ(σB)の比(σ0.2/σB)が0.85以下であることを特徴とする加工性に優れた高強度ばね用鋼線。
  2. Mnが0.5〜1.5%である請求項1に記載の高強度ばね用鋼線。
  3. 前記ばね用鋼線は、温度400℃×20分の焼鈍をした際に、0.2%耐力(σ0.2)が300MPa以上上昇するものである請求項1又は2に記載の高強度ばね用鋼線。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の高強度ばね用鋼線からなる高強度ばね。
  5. 前記ばねは、
    芯部の硬さがHv550〜700であり、
    ばねの表面の圧縮残留応力が−400MPa以下であり、かつ
    前記表面の圧縮残留応力が引張に転ずる深さが0.05mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の高強度ばね。
  6. 前記ばねは表面に窒化処理層が形成されており、
    表面の硬さがHv750〜1150であり、
    芯部の硬さがHv550〜700であり、
    芯部硬さよりもHv15以上硬くなっている硬化層の深さが0.02mm以上0.15mm以下であり、
    ばねの表面の圧縮残留応力が−800MPa以下であり、かつ
    前記表面の圧縮残留応力が引張に転ずる深さが0.05mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の高強度ばね。
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