JP4075366B2 - 光ディスクおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクにおいて、該記録層の表面に耐磨耗性、基材密着性および透明性などに優れた薄膜カバー層/ハードコート層の複合層が形成された光ディスクおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大量のデータを高密度で記録、再生できる光記録媒体において、より高密度にデータを記録、再生するためには、レーザー光スポットのサイズをより小さくする必要がある。このサイズを小さくする方法としては、レーザー光波長(λ)を短くする方法、またはレンズの開口数(NA)を大きくする方法の2通りの方法が考えられる。現在用いられている光記録媒体用の半導体レーザー光の波長は、主に780〜680nmであるが、さらに短波長の650nmの橙色レーザー光、および、より短波長の緑または青色レーザー光を用いる検討がなされている。特に、青色レーザー光を用いる方式としては光源の波長を400nm程度、NAを0.6以上として、より大きな記録密度を得ることが提案されている。
【0003】
一方、光源の短波長化や対物レンズの高NA化に伴ない、光記録媒体のレーザー光入射面が光軸に対して直角より傾くチルトの許容量が小さくなり、また、光ディスクの厚みムラの許容量も小さくなるため、上記許容量を少しでも稼ぐためにレーザー光入射面のカバー層の厚さを薄くする必要がある。従来の光記録媒体のカバー層の厚さは、コンパクトディスク(CD)で1.2mm、デジタルバーサタイルディスク(DVD)で0.6mmであり、ディスク基盤自体がカバー層としての役割を果たしていた。しかし、短波長のレーザー光を用いる光記録媒体では、カバー層の厚さを0.1mm程度にする必要があるため、従来のようにディスク基盤自体をカバー層とすることができず、ディスク基盤の反射膜、記録膜などの積層膜(以下、該積層膜を単に記録層と記すことがある。)を形成した面に薄膜カバー層が形成される。
【0004】
CDやDVDで行われているようにポリカーボネートを射出成形して透明基材を作製する従来の方法は、基材内部に光学的にゆがみが生じ複屈折し易くなるため好ましくない。このような困難を回避するため光硬化性樹脂をレーザー光が通過する透明基材として用いる試みがなされている。すなわち、ディスク状の支持体の上に設けた記録層の表面に液状の光硬化性樹脂を塗布した後、該光硬化性樹脂に活性エネルギ線を照射して硬化させることにより、該光硬化性樹脂の硬化物をレーザー光が通過する透明基材として用いる。光硬化性樹脂として従来CDの保護コート材として用いられている光硬化性樹脂を用いた場合には、粘度が低いために塗布膜厚が薄くなり所望の0.1mmの膜厚にすることが困難である。
【0005】
さらに、硬化の際の体積収縮によりディスクが反ってしまうという不都合が生じるという問題点がある。そこで、硬化収縮を低減させるために柔軟な樹脂を用いると、表面が傷付きやすく信号の記録再生に支障を来しやすいと言った不都合が生じる。このような柔軟な樹脂層上にハードコート層を形成しても下地が柔軟すぎて、所期のハードコート性能が確保できないといった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスク(以下、単に超高密度記録用光ディスクと記すことがある。)の高性能化を実現することにある。すなわち、該光ディスクの記録層上に形成された薄膜カバー層は、レーザー光の透過率が高く、記録層と良好な密着性を有し、さらに該薄膜カバー層の形成時の収縮などによるディスク変形が極めて小さく、かつ、特定のハードコート層を形成した際に充分なハードコート性能を発現できる光ディスクおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の薄膜カバー層を用いることによって上記課題を達成できることを見いだし、さらに特定のハードコート層を組み合わせることにより本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクにおいて、光ディスク基盤面に形成された記録層表面に下記薄膜カバー層(X)が形成され、かつ、該薄膜カバー層(X)表面に下記ハードコート層(Y)が形成されていることを特徴とする光ディスクを提供する。
薄膜カバー層(X):多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、ポリシクロアルカン構造を有する活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を1個以上有する化合物(B)、および光重合開始剤(C1)を含有する活性エネルギ線硬化性組成物(P)を硬化せしめて得られる硬化物層。
ハードコート層(Y):活性エネルギ線によって重合しうる重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(D)、メルカプト基を有する有機基と加水分解性基および/または水酸基とがケイ素原子に結合しているメルカプトシラン化合物で表面修飾された平均粒径1〜200nmの修飾コロイド状シリカ(E)、および光重合開始剤(C2)を含有する活性エネルギ線硬化性組成物(Q)を硬化せしめて得られる硬化物層。
【0009】
また、本発明は、記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクの製造方法において、光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(P)の未硬化物層(X1)、部分硬化物層(X2)または硬化物層(X)を形成し、該(X1)、該(X2)または該(X)の表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(Q)の未硬化物層(Y1)または部分硬化物層(Y2)を形成し、次いで、前記(P)の層が硬化物層(X)である場合は前記(Q)の未硬化物層(Y1)もしくは部分硬化物層(Y2)を硬化させ、または、前記(P)の層が未硬化物層(X1)もしくは部分硬化物層(X2)である場合は前記(P)の層および前記(Q)の層を同時に硬化させて、前記薄膜カバー層(X)および前記ハードコート層(Y)が形成された光ディスクを得ることを特徴とする光ディスクの製造方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、薄膜カバー層(X)形成用樹脂として、硬化収縮量が低く柔軟性に優れる特定のウレタンアクリレートとTgが高くかつ硬化収縮量が低い特定のポリシクロアルカン化合物とを併用することで、低収縮が達成され、かつ、上部にハードコート層が形成された際に、優れたハードコート性能を発現できる層が形成される。また、ハードコート層(Y)として、光重合時に連鎖移動反応でマトリクス樹脂と共重合し得るメルカプト基で表面修飾された特定のコロイド状シリカと特定の光重合性多官能化合物からなる有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物を選択することにより、非常に高度な耐擦傷性を発現できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
まず、活性エネルギ線硬化性組成物(P)(以下、単に組成物(P)と記すことがある。)について説明する。なお、以下の説明において、アクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基と記し、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートなどの表現も同様とする。
【0012】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)(以下、化合物(A)または単に(A)と記すことがある。)としては、特開平11−240103号公報の段落番号0024〜0036に記載された化合物が好ましく挙げられる。特に、2官能の化合物(A)であって、重量平均分子量が1500以上、かつ、20000以下のものが好ましい。2官能の化合物(A)を使用することにより、光重合時の硬化収縮量をより低くできる。また、上記範囲の重量平均分子量を採用することにより、組成物(P)の粘度を所望範囲に調整でき、1回のコートで50μm以上の層を形成できるとともに、コーティング作業が容易となる。該化合物(A)は1種類で用いてもよく、2種類以上で用いてもよい。
【0013】
組成物(P)における、化合物(A)、ポリシクロアルカン構造を有する活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を1個以上有する化合物(B)(以下、化合物(B)または単に(B)と記すことがある。)および光重合開始剤(C1)(以下、単に(C1)と記すことがある。)の割合は特に限定されないが、通常は(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、化合物(A)が10〜80質量部であることが好ましい。化合物(A)の割合が上記範囲であれば、組成物(P)の粘度を所望範囲に調整でき、1回のコートで50μm以上の層を形成できるとともに、コーティング作業が容易となる。
【0014】
本発明における化合物(B)はポリシクロアルカン構造を有することが重要である。該ポリシクロアルカン構造としては、ビシクロアルカン構造、トリシクロアルカン構造、テトラシクロアルカン構造、ペンタシクロアルカン構造などが挙げられるが、通常はビシクロアルカン構造およびトリシクロアルカン構造が好ましい。
【0015】
該化合物(B)としては、以下に挙げる化合物が例示できる。
イソボルニル(メタ)アクリレート、8−(2−アクリロイルオキシ)エチルオキシカルボニル−9−カルボキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,4−ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8,9−ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8−アクリロイルオキシメチル−9−ヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8−メタクリロイルオキシ−メチル−9−ヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8,9−ビス(メタアクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8−ヒドロキシメチル−9−(2−ビニルオキシエトキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8,9−ビス(2−ビニルオキシエトキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,4−ビス(メタクリロイルオキシ)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,9−ジカルボン酸無水物、3,4−ビス(メタクリロイルオキシ)−8,9−ビス(メトキシカルボニル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、8,9−ビス(アリルカルボニル)−3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3(4)−ヒドロキシ−4(3)−メタクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、ジアリルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,9−ジカルボキシレート、ジアリルオキシエチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8,9−ジカルボキシレート、ジメチロールトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジアクリレート。
【0016】
本発明においては、前記化合物(B)を用いることによって、組成物(P)自体のTgが高くなるとともに、ポリシクロアルカン構造に基づく低い硬化収縮量が、ハードコート層(Y)の物性発現と薄膜カバー層(X)自体の低収縮量化に寄与していると考えられる。
【0017】
組成物(P)における化合物(B)の割合も特に限定されないが、通常は(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、化合物(B)が20〜70質量部であることが好ましい。化合物(B)の割合が上記範囲であれば、組成物(P)の粘度を所望範囲に調整でき、1回のコートで50μm以上の層を形成できるとともに、コーティング作業が容易となる。なお、化合物(B)の割合が余りに多すぎると、薄膜カバー層(X)が剛直になり過ぎ、光ディスクの反りに追随できずにクラック等が入りやすくなる。
【0018】
本発明における光重合開始剤(C1)としては、アリールケトン系光重合開始剤(例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシルオキシムエステル類など)、含イオウ系光重合開始剤(例えば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、その他の光重合開始剤などが挙げられる。該光重合開始剤(C1)は1種類で用いてもよく、2種類以上で用いてもよい。また、該光重合開始剤(C1)はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用してもよい。
【0019】
該光重合開始剤(C1)としては、以下に挙げる化合物が例示できる。
4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン。
【0020】
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、メチルフェニルグリオキシレート。
【0021】
4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン。
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド。
【0022】
組成物(P)における光重合開始剤(C1)の割合も特に限定されないが、通常は(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、光重合開始剤(C1)が0.01〜20質量部であることが好ましく、特に0.1〜10質量部が好ましい。
【0023】
本発明において、組成物(P)としては、(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、(A)が10〜80質量部であり、(B)が20〜70質量部であり、かつ、(C1)が0.01〜20質量部であることが特に好ましい。
【0024】
本発明における組成物(P)には、上記化合物(A)、上記化合物(B)、光重合開始剤(C1)の他に、以下に例示される、重合性官能基を1個有する単官能の活性エネルギ線硬化性化合物(G)(以下、単官能化合物(G)または単に(G)と記すことがある。)などが含有されてもよい。該単官能化合物の割合は、特に限定されないが、通常は(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、0〜50質量部の範囲から適宜選定される。
【0025】
一般式CH2=C(R2)COOCnH2n+1(R2は水素原子またはメチル基であり、nは1〜13の整数である。)で表されるアルキル(メタ)アクリレート(前記一般式において、CnH2n+1は直鎖構造でも分岐構造でもよい。)、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ビニルアセテート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート。
【0026】
また、本発明における組成物(P)には、その他の添加剤として、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ペンタジエン誘導体、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)、SBSの水添物、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等を配合することができる。
【0027】
さらに、上記光重合開始剤(C1)以外の機能性配合剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料(有機着色顔料、無機顔料)、帯電防止剤、硬化触媒などが挙げられ、本発明における組成物(P)に適宜配合してもよい。
【0028】
紫外線吸収剤としては、合成樹脂用紫外線吸収剤として使用されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが好ましい。具体的には、特開平11−268196号公報の段落番号0078に記載された化合物が挙げられる。本発明においては、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−3−(3−ベンゾトリアゾール−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)プロピオネートなど分子内に光重合性の官能基を有するものが特に好ましい。
【0029】
光安定剤としては、合成樹脂用光安定剤として使用されているヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。具体的には、特開平11−268196号公報の段落番号0080に記載された化合物が挙げられる。本発明においては、N−メチル−4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの分子内に重合性官能基を有するものが特に好ましい。
【0030】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。また、レベリング剤としては、シリコーン樹脂系レベリング剤、アクリル樹脂系レベリング剤などが挙げられる。
消泡剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂系消泡剤などが挙げられる。また、増粘剤としては、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、水添ひまし油系化合物、脂肪酸アミド系化合物などが挙げられる。
【0031】
有機着色顔料としては、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料などが挙げられる。無機顔料としては、二酸化チタン、酸化コバルト、モリブデンレッド、チタンブラックなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤などが挙げられる。また、硬化触媒としては、酸、アルカリまたは塩類などから選ばれる硬化触媒が挙げられる。
【0032】
薄膜カバー層(X)の厚さは50〜150μmが好ましい。なお、この層の厚さは記録再生装置の光学設計から正確に要求値が決められることになる。
【0033】
次に、活性エネルギ線硬化性組成物(Q)(以下、単に組成物(Q)と記すことがある。)について説明する。該組成物(Q)は、特開平10−81839号公報に開示されたものである。すなわち該組成物(Q)は、活性エネルギ線によって重合しうる重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(D)(以下、化合物(D)または単に(D)と記すことがある。)、メルカプト基を有する有機基と加水分解性基および/または水酸基とがケイ素原子に結合しているメルカプトシラン化合物で表面修飾された平均粒径1〜200nmの修飾コロイド状シリカ(E)(以下、修飾コロイド状シリカ(E)または単に(E)と記すことがある。)、および光重合開始剤(C2)(以下、単に(C2)と記すことがある。)を含有する。
【0034】
本発明における前記化合物(D)は、特開平10−81839号公報の段落番号0013〜0052に記載された多官能性化合物(a)に相当する。本発明における化合物(D)としては、重合性官能基を分子中に3個以上有し、1官能基あたりの分子量が100以下であるものが特に好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく例示される。
【0035】
次に本発明における修飾コロイド状シリカ(E)は、特開平10−81839号公報の段落番号0057〜0079に記載された成分(b)に相当する。
また、該修飾コロイド状シリカ(E)におけるメルカプトシラン化合物は、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
HS−R−SiXnR1 3−n・・・(1)
ただし、式(1)において、HS−はメルカプト基を有する有機基、Rは2価の炭化水素基、R1は1価の炭化水素基、Xは水酸基または加水分解性基、nは1〜3の整数を表す。
【0036】
本発明における修飾コロイド状シリカ(E)としては、コロイド状シリカが分散した有機分散媒にメルカプトシラン化合物を添加して加水分解することにより得られるものが特に好ましく採用される。
前記組成物(Q)における光重合開始剤(C2)としては、前記の光重合開始剤(C1)と同様のものが採用される。本発明においては、(C1)と(C2)は同種のものを採用してもよく、異種のものを採用してもよい。
【0037】
前記組成物(Q)における、化合物(D)と修飾コロイド状シリカ(E)の割合は特に限定されないが、(D)の100質量部に対し、(E)が5〜300質量部であることが好ましい。(E)の割合が余りに少ないと、充分な耐磨耗性が得られ難く、また(E)の割合が余りに多いと、硬化被膜にヘーズが生じやすく、かつ、ディスクが外力により強制的に変形させられた際にクラック等を生じやすくなる。より好ましい割合は、(D)の100質量部に対し(E)が10〜200質量部である。
【0038】
また、(D)、(E)両者間の割合とは独立して、(D)中の重合性官能基のモル数に対して(E)中のメルカプト基のモル数は50%以下であることが好ましい。該モル数が余りに大きいと、マトリクスとなる樹脂の硬化不良が起こりやすく、充分な耐磨耗性が得られないおそれがある。さらに、光重合開始剤(C2)の割合も特に限定されないが、(D)の100質量部に対して0.01〜20質量部、特に0.1〜10質量部が好ましい。
【0039】
本発明において、組成物(Q)としては、(D)の100質量部に対し、(E)が5〜300質量部であり、かつ、(C2)が0.01〜20質量部であることが特に好ましい。
【0040】
なお、前記組成物(Q)においては、化合物(D)とともに前記単官能化合物(G)を併用してもよい。該単官能化合物(G)としては、前記例示化合物が適宜選定使用でき、組成物(P)と組成物(Q)とで該単官能化合物(G)を同種にしても異種にしてもよい。該単官能化合物(G)を化合物(D)とともに併用する場合は、(D)および(G)の合計100重量部に対し、(E)および(C)の割合を上記範囲とすることが好ましい。(E)中のメルカプト基のモル数についても同様に、(D)中の重合性官能基と(G)中の重合性官能基との合計モル数に対して50%以下であることが好ましい。また、化合物(D)/単官能化合物(G)の併用比(質量基準)は、10/0〜1/3の範囲から選定されるのが望ましい。該単官能化合物(G)の併用比が余りに大きくなると、ハードコート層(Y)の耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明における組成物(Q)は、上記基本的3成分(D)、(E)、(C2)または4成分(D)、(G)、(E)、(C2)以外に、溶剤や種々の配合剤を含んでいてもよい。溶剤は通常必須の成分であり、化合物(D)が特に低粘度の液体でないかぎり、溶剤を使用するのが好ましい。溶剤としては、通常多官能性化合物(D)を硬化成分とする被覆用組成物に使用される溶剤を使用できる。また、修飾コロイド状シリカ(E)の分散媒をそのまま溶剤として使用してもよい。さらに基材の種類により適切な溶剤を選択して用いることが好ましい。
【0042】
溶剤の量は必要とする組成物の粘度、目的とする硬化物層の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は化合物(D)に対して質量基準で100倍以下が好ましく、特に0.1〜50倍が好ましい。
【0043】
該溶剤としては、例えば特開平10−81839号公報の段落番号0088に挙げられている、低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類などの溶剤が好ましい。また、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類なども好ましく挙げられる。耐溶剤性の低い芳香族ポリカーボネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロソルブ類、エステル類、それらの混合物などが適当である。
【0044】
さらに組成物(Q)には、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、潤滑性付与剤、指紋付着防止剤、スリッピング剤を適宜配合して用いてもよい。
【0045】
特に光ディスクはカートリッジに入れて使用することがあるため、表面の潤滑性に優れるのが好ましく、また手で持つことも多いため、ユーザーのハンドリング時に付着する可能性のある指紋の付着防止等の機能が重要となる。そのため組成物(Q)に、シリコン系化合物(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン/ポリエーテルブロックコポリマー、アルキル基変性ポリジメチルシロキサン等)、フッ素系化合物、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス等の潤滑性付与剤、指紋付着防止剤などを添加することが有効である。
【0046】
前記組成物(Q)に添加する上記潤滑性付与剤または指紋付着防止剤の割合は、化合物(D)の100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましい。該添加割合が余りに少ないと発現する効果が不充分となり、また余りに多いとハードコート層(Y)自体が可塑化されてしまい、耐擦傷性が低下する傾向にある。
【0047】
ハードコート層(Y)の厚さは0.05〜20μmが好ましく、特に0.1〜7μmが好ましい。ハードコート層(Y)の厚さが余りに大きいと、耐磨耗性などの表面特性の向上がそれ以上期待できないうえ、層が脆くなり、ディスクのわずかな変形によってもハードコート層(Y)にクラックなどが生じやすくなる。また余りに小さいと、該ハードコート層(Y)の耐磨耗性が充分発現できないおそれがある。
【0048】
次に、活性エネルギ線硬化性組成物(P)および活性エネルギ線硬化性組成物(Q)の塗工、硬化方法について説明する。
上記の組成物(P)および組成物(Q)を、光ディスクのレーザー光入射面に塗工する方法としては、特に制限されず、公知ないし周知の方法などを採用できる。例えば、ディップ法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、マイクログラビアコート法などの種々の方法を採用できる。また、例えば組成物(P)をグラビアコートした後、組成物(Q)をスピンコートまたはスプレーコートするといった複数の塗工方法を組み合わせることもできる。本発明においては、生産性や表面外観の点からスピンコート法が好ましく採用される。
【0049】
組成物(P)および組成物(Q)を硬化させる活性エネルギ線としては、特に限定されず、紫外線、電子線またはその他の活性エネルギ線を使用できる。本発明においては、紫外線が好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプなどを使用できる。
【0050】
次に、光ディスク基盤について説明する。
光ディスク基盤としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アモルファスポリオレフィンなどの透明樹脂またはガラスに直接案内溝を形成した基盤、上記透明樹脂またはガラスにフォトポリマー法により案内溝を形成した基盤などが好ましく挙げられる。
【0051】
上記の光ディスク基盤の案内溝の表面には、下記の誘電体膜、記録膜、反射膜などからなる積層膜が形成される。これら各膜の材質は特に限定されない。
誘電体膜の材質としては、例えば、Si3N4、SiO2、AlSiON、AlSiN、AlN、AlTiN、Ta2O5、ZnSなどが好ましく挙げられる。
記録膜の材質は、記録方式により異なるが、例えば、追記型光記録媒体ではTe、Sn、Seなどのカルコゲナイト系合金、相変化型光記録媒体ではTeOx、InSe、SnSbなどのカルコゲナイト系合金、光磁気ディスクではTbFeCo、NdDyFeCoなどの遷移金属と希土類金属との合金(単層または2層以上の交換結合膜)が好ましく挙げられる。
反射膜の材質は、たとえば、Al、Au、Ag、Cuなどの金属、Al−Ti、Al−Crなどの合金が好ましく挙げられる。
【0052】
本発明の光ディスクは、例えば以下のようにして製造できる。
上記光ディスク基盤の案内溝を有する面に、常法により誘電体膜、記録膜、反射膜などからなる積層膜(記録層)を形成する。誘電体膜、記録膜および反射膜のそれぞれは、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法またはプラズマCVDなどの化学蒸着法により形成できる。
【0053】
本発明における超高密度記録用光ディスクは、前記のとおり、光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(P)の未硬化物層(X1)、部分硬化物層(X2)または硬化物層(X)を形成し、該(X1)、該(X2)または該(X)の表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(Q)の未硬化物層(Y1)または部分硬化物層(Y2)を形成し、次いで、前記(P)の層が硬化物層(X)である場合は前記(Q)の未硬化物層(Y1)もしくは部分硬化物層(Y2)を硬化させ、または、前記(P)の層が未硬化物層(X1)もしくは部分硬化物層(X2)である場合は前記(P)の層および前記(Q)の層を同時に硬化させて、前記薄膜カバー層(X)および前記ハードコート層(Y)が形成された光ディスクを得ることにより製造される。
【0054】
すなわち、本発明の上記製造方法において、組成物(P)の塗工〜硬化および組成物(Q)の塗工〜硬化のそれぞれのタイミングとしては、以下の(1)〜(3)のタイミングが挙げられる。
(1)光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、組成物(P)を塗工した後、充分な量の活性エネルギ線を照射して充分に組成物(P)の層を硬化させて硬化物層(X)(すなわち、薄膜カバー層(X)と同じ。)を形成せしめ、次いで、該硬化物層(X)の表面に組成物(Q)を塗工した後、充分な量の活性エネルギ線を照射して充分に組成物(Q)を硬化させてハードコート層(Y)を形成する。この場合、組成物(Q)の未硬化物層(Y1)を予め部分硬化層(Y2)に転化せしめた後、さらに該部分硬化層(Y2)を硬化させるという、2段硬化を採用してもよいが、通常は、組成物(Q)の層の硬化は1段硬化が好ましい。
【0055】
(2)光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、組成物(P)を塗工して該組成物(P)の未硬化物層(X1)を形成した後、該未硬化物層(X1)の表面に組成物(Q)を塗工して該組成物(Q)の未硬化物層(Y1)を形成し、次いで、充分な量の活性エネルギ線を照射して組成物(P)および組成物(Q)を同時に硬化させて、薄膜カバー層(X)およびハードコート層(Y)を形成する。この場合も、組成物(Q)の層の2段硬化を採用してもよいが、通常は1段硬化が好ましい。
【0056】
(3)光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、組成物(P)を塗工した後、指触乾燥状態になり、かつ完全硬化に至らないまでの量の活性エネルギ線(通常、約500mJ/cm2までの照射量)を照射して組成物(P)の部分硬化物層(X2)を形成し、該部分硬化物層(X2)の表面に組成物(Q)を塗工して該組成物(Q)の未硬化物層(Y1)もしくは部分硬化物層(Y2)を形成し、次いで、完全硬化させるに充分な量の活性エネルギ線を照射して組成物(P)および組成物(Q)を同時に硬化させて、薄膜カバー層(X)およびハードコート層(Y)を形成する。この場合も、組成物(Q)の層の2段硬化を採用してもよいが、通常は1段硬化が好ましい。
【0057】
本発明の上記製造方法においては、2つの硬化物層(X)、(Y)間の層間密着力を上げるために、上記(2)または(3)のタイミングで行うことが好ましい。また、上記組成物(X)、(Y)が溶剤を含有している場合は、塗工後、乾燥して溶剤を除去してから硬化させることが好ましい。
【0058】
本発明における光ディスクは、単板で用いてもよく、2枚以上を貼り合わせて用いてもよい。また、必要に応じてハブを付け、カートリッジへ組み込んで用いることもできる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例7〜11)、比較例(例12)に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。各例においては、光ディスク基盤として、光記録媒体用ポリカーボネート基盤(直径12cm、厚さ1.2mm)の片面(案内溝を有する面)に、積層膜(Alからなる反射膜、SiNからなる第1誘電体膜、TbFeCoからなる光磁気記録膜、SiNからなる第2誘電体膜)をスパッタ法により成膜して記録層としたものを用いた。なお、例1〜6は修飾コロイド状シリカ分散液、塗工液(Q1)および塗工液(P1)〜(P4)の参考合成例である。
【0060】
また、各例で得られたサンプルについての各種物性の測定および評価は以下に示す方法で行い、その結果を表1に示した。なお、初期曇価、耐磨耗性および400nm光線透過率の測定用サンプルとしては、反射膜の形成を省いた光ディスク基盤を用いた。また、反りの有無についての評価は、厚さ0.6mmのポリカーボネート基盤を用いたサンプルについて行った。なお、参考として通常の建築用ガラスシート(厚さ3mmの板ガラス)についての評価結果も併せて表1に示した。
【0061】
[初期曇価、耐磨耗性]
JIS−R3212における耐磨耗試験法により、2つのCS−10F磨耗輪にそれぞれ500gの重りを組み合わせ500回転させたときの曇価(ヘーズ)をヘーズメータにて測定した。曇価の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。初期曇価は耐磨耗試験前の曇価の値(%)を、耐磨耗性は(耐磨耗試験後曇価)−(耐磨耗試験前曇価)の値(%)を示す。
【0062】
[400nm光線透過率]
島津製作所社製UV−3100により、サンプルの基盤をキャンセルした測定波長400nmにおける光線透過率を測定した。
【0063】
[密着性]
サンプルを剃刀の刃により1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個の碁盤目を作り、市販のセロハンテープをよく密着させた後、90度手前方向に急激にはがした際の、薄膜カバー層およびハードコート層が剥離せずに残存した碁盤目の数(m)をm/100で表す。
【0064】
[反り]
サンプルをガラス平板上にハードコート層の面を上にして置き、中心部を手で押さえた際の、ディスク端部のガラス面からの距離を隙間ゲージにて測定した。
【0065】
[例1]
撹拌機および冷却管を装着した2000mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散型コロイド状シリカ(シリカ含量30質量%、平均粒径11nm)1000gと、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン50gを加え、105℃にて14時間撹拌した後、室温下に10時間熟成することにより、メルカプトシラン修飾コロイド状シリカ分散液を得た。
【0066】
[例2]
撹拌機および冷却管を装着した1000mLの4つ口フラスコに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを184.60g、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オンを9.23g、ポリジメチルシロキサンの両末端がメルカプト基で変性されたシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「X−22−167B」)を0.72g、ハイドロキノンモノメチルエーテルを1.20g、およびメチルエチルケトンを345.90g入れ、常温および遮光にした状態で、1時間撹拌して均一化した。続いて撹拌しながら、例1で合成したメルカプトシラン修飾コロイド状シリカ分散液169.90gをゆっくりと加え、さらに常温および遮光にした状態で1時間撹拌して均一化した。次いで、2−プロパノールの86.5gを加え、常温および遮光にした状態下で1時間撹拌して塗工液(Q1)を得た。
【0067】
[例3]
撹拌機および冷却管を装着した1000mLの4つ口フラスコに、2官能ウレタンアクリレート−1(日本化薬社製、商品名「UX−2201」)を290.00g、2官能ウレタンアクリレート−2(日本化薬社製、商品名「UX−8101」)を170.00g、イソボルニルアクリレートを240.00g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを100.00g、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを40.00g加え、常温および遮光にした状態で3時間撹拌して塗工液(P1)を得た。
【0068】
[例4]
例3において、日本化薬社製「UX−2201」を同量の2官能ウレタンアクリレート−3(共栄社化学社製、商品名「UF−8003」)に変更し、日本化薬社製「UX−8101」を同量の2官能ウレタンアクリレート−4(共栄社化学社製、商品名「UF−8001」)に変更する以外は、同様の組成および同様の方法で塗工液(P2)を得た。
【0069】
[例5]
例3において、日本化薬社製「UX−2201」を同量の2官能ウレタンアクリレート−5(日本化薬社製、商品名「UX−6101」)に変更し、日本化薬社製「UX−8101」を同量の2官能ウレタンアクリレート−4(共栄社化学社製、商品名「UF−8001」)に変更する以外は、同様の組成および同様の方法で塗工液(P3)を得た。
【0070】
[例6]
例3において、日本化薬社製「UX−2201」を同量の2官能エポキシアクリレート−1(日本化薬社製、商品名「R−146」)に変更し、日本化薬社製「UX−8101」を同量の2官能エポキシアクリレート−2(日本化薬社製、商品名「R−280」)に変更する以外は、同様の組成および同様の方法で塗工液(P4)を得た。
【0071】
[例7]
光ディスク基盤の記録層表面にスピンコート法により塗工液(P1)を塗工(厚さ98μm)し、得られた塗膜層(x1)に空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ量。以下同じ。)の紫外線を照射し、該塗膜層(x1)を部分硬化させ、膜厚98μmの透明部分硬化物層(X2x1)を前記記録層表面に形成した。
【0072】
該透明部分硬化物層(X2x1)の表面に、スピンコート法により塗工液(Q1)を塗工(ウェット厚さ6μm)し、90℃の熱風循環オーブン中で1分間保持して溶剤を除去し、塗膜層(y1)を形成した。次いで、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1500mJ/cm2の紫外線を照射し、該塗膜層(y1)および該透明部分硬化物層(X2x1)を硬化させ、膜厚1.8μmの透明硬化物層(Yy1)を形成するとともに、前記透明部分硬化物層(X2x1)が硬化した透明硬化物層(Xx1)を形成した。光ディスク基盤の記録層表面に薄膜カバー層(Xx1)/ハードコート層(Yy1)(総膜厚99.8μm)が形成されたサンプル1を得た。
【0073】
[例8]
光ディスク基盤の記録層表面にスピンコート法により塗工液(P1)を塗工(厚さ98μm)し、得られた塗膜層(x1)に空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、該塗膜層(x1)を硬化させ、膜厚98μmの透明硬化物層(Xx1)を前記記録層表面に形成した。
【0074】
該透明硬化物層(Xx1)の表面にスピンコート法により塗工液(Q1)を塗工(ウェット厚さ6μm)し、90℃の熱風循環オーブン中で1分間保持して溶剤を除去し、塗膜層(y1)を形成した。次いで、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1500mJ/cm2の紫外線を照射し、該塗膜層(y1)を硬化させ、膜厚1.8μmの透明硬化物層(Yy1)を前記透明硬化物層(Xx1)の表面に形成した。光ディスク基盤の記録層表面に薄膜カバー層(Xx1)/ハードコート層(Yy1)(総膜厚99.8μm)が形成されたサンプル2を得た。
【0075】
[例9]
光ディスク基盤の記録層表面にスピンコート法により塗工液(P1)を塗工(厚さ98μm)し、塗膜層(x1)を形成した。該塗膜層(x1)の表面に塗工液(Q1)をスピンコート法により塗工(ウェット厚さ6μm)し、90℃の熱風循環オーブン中で1分間保持して溶剤を除去し、塗膜層(y1)を形成した。次いで、空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1500mJ/cm2の紫外線を照射し、該塗膜層(x1)および該塗膜層(y1)を硬化させ、膜厚98μmの透明硬化物層(Xx1)および膜厚1.8μmの透明硬化物層(Yy1)を形成した。光ディスク基盤の記録層表面に薄膜カバー層(Xx1)/ハードコート層(Yy1)(総膜厚99.8μm)が形成されたサンプル3を得た。
【0076】
[例10]
例7において、塗工液(P1)を塗工液(P2)に変更した以外は、例7と同様にしてサンプル4を得た。
【0077】
[例11]
例7において、塗工液(P1)を塗工液(P3)に変更した以外は、例7と同様にしてサンプル5を得た。
【0078】
[例12]
例7において、塗工液(P1)を塗工液(P4)に変更した以外は、例7と同様にしてサンプル6を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
【発明の効果】
本発明の光ディスクは、光ディスク基盤の記録層表面に薄膜カバー層/ハードコート層の複合膜が形成されてなり、該複合膜は、光ディスク基盤を反らすことなく、高い耐磨耗性および透明性を有し、かつ、光ディスク基盤との密着性に優れている。また、本発明の製造方法によれば、上記の優れた複合膜を光ディスク基盤の記録層表面に形成できるとともに、薄膜カバー層/ハードコート層間の密着性および該複合膜/光ディスク基盤間の密着性に優れた光ディスクを製造できる。
Claims (8)
- 記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクにおいて、光ディスク基盤面に形成された記録層表面に下記薄膜カバー層(X)が形成され、かつ、該薄膜カバー層(X)表面に下記ハードコート層(Y)が形成されていることを特徴とする光ディスク。
薄膜カバー層(X):多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)、ポリシクロアルカン構造を有する活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を1個以上有する化合物(B)、および光重合開始剤(C1)を含有する活性エネルギ線硬化性組成物(P)を硬化せしめて得られる硬化物層。
ハードコート層(Y):活性エネルギ線によって重合しうる重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(D)、メルカプト基を有する有機基と加水分解性基および/または水酸基とがケイ素原子に結合しているメルカプトシラン化合物で表面修飾された平均粒径1〜200nmの修飾コロイド状シリカ(E)、および光重合開始剤(C2)を含有する活性エネルギ線硬化性組成物(Q)を硬化せしめて得られる硬化物層。 - 前記活性エネルギ線硬化性組成物(P)における、(A)/(B)/(C1)の合計100質量部に対し、(A)が10〜80質量部であり、(B)が20〜70質量部であり、かつ、(C1)が0.01〜20質量部である請求項1に記載の光ディスク。
- 前記活性エネルギ線硬化性組成物(Q)における、(D)の100質量部に対し、(E)が5〜300質量部であり、かつ、(C2)が0.01〜20質量部である請求項1または2に記載の光ディスク。
- 前記メルカプトシラン化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1、2または3のいずれかに記載の光ディスク。
HS−R−SiXnR1 3−n・・・(1)
ただし、式(1)において、HS−Rはメルカプト基を有する有機基、Rは2価の炭化水素基、R1は1価の炭化水素基、Xは水酸基または加水分解性基、nは1〜3の整数を表す。 - 前記修飾コロイド状シリカ(E)が、コロイド状シリカが分散した有機分散媒にメルカプトシラン化合物を添加して加水分解することにより得られるものである請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク。
- 前記薄膜カバー層(X)の厚さが、50〜150μmである請求項1〜5のいずれかに記載の光ディスク。
- 前記ハードコート層(Y)の厚さが、0.05〜20μmである請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク。
- 記録および/または再生するのに用いられる光が薄膜カバー層を通して記録層に照射される方式の光ディスクの製造方法において、光ディスク基盤面に形成された記録層表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(P)の未硬化物層(X1)、部分硬化物層(X2)または硬化物層(X)を形成し、該(X1)、該(X2)または該(X)の表面に、前記活性エネルギ線硬化性組成物(Q)の未硬化物層(Y1)または部分硬化物層(Y2)を形成し、次いで、前記(P)の層が硬化物層(X)である場合は前記(Q)の未硬化物層(Y1)もしくは部分硬化物層(Y2)を硬化させ、または、前記(P)の層が未硬化物層(X1)もしくは部分硬化物層(X2)である場合は前記(P)の層および前記(Q)の層を同時に硬化させて、前記薄膜カバー層(X)および前記ハードコート層(Y)が形成された光ディスクを得ることを特徴とする光ディスクの製造方法。
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