JP4031932B2 - ドナー等識別方法及び生体物質識別手段 - Google Patents

ドナー等識別方法及び生体物質識別手段 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の細胞群や血液等生体物質を用いたドナー等識別方法及び生体物質識別手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
ある個体から体外に取り出した血液や組織・細胞等の生体物質の管理は、それらを収納する容器等に該生体物質のドナーに関する情報を記載もしくはデータ化したラベルを貼り付ける等して間接的に行われるのが通常の方法である。
【0003】
近年、いろいろな種類の細胞を増殖させる因子などが遺伝子工学で大量に作られるようになったことや、細胞培養の技術が進歩したことなどにより、体から取り出した細胞を体外で培養し、いろいろな性質を与えた上で体に戻すことによって病気の治療を行うという細胞療法が試みられている。
【0004】
大別してドナー自身の細胞を使うものと、他人の細胞を使うものとがあるが、自己細胞を使うものは、他人の細胞を使うものに比べて、ウイルス感染などを持ち込む危険もなく、有害な免疫反応が起こることもなく、格段に安全なため、新たな治療法として期待が大きい。
【0005】
細胞療法の種類としては、ドナー自身のリンパ球を培養・加工して治療に用いる免疫細胞療法(活性化自己リンパ球療法)の他、皮膚の細胞を培養して火傷の治療などに使うものや、軟骨の細胞を培養して関節の病気の治療などに使うものなどの再生医療と呼ばれる分野のものもある。さらに、胚性幹細胞を培養して、肝臓の細胞や神経細胞など種々の細胞に分化させて用いる試みなども研究されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなドナー自身の細胞を取り出し、体外で培養、加工したものをその本人にのみ投与する細胞医療において、ドナーを取り違えることは許されず、従って、ドナーの取り違えが起こらないようにすることがきわめて重要である。
【0007】
ドナーの取り違えを予防する方法としては、従来、容器の外面を用いて細胞を識別する方法、例えば細胞の培養に用いる容器の外面に識別ラベルを貼る方法や容器の外面にドナーの氏名やID番号等を直接記入する方法等をとらざるを得なかった。
【0008】
しかし、このように容器の外面を用いて細胞を識別する方法においても、細胞の培養・加工の工程中、特に容器の移し替え等の際にラベルや容器に記入されたドナーの氏名やID番号の見間違え等により細胞と容器の外面の記載とが一致して対応しなくなり、結果としてドナーを取り違えた場合と同様の結果を招く可能性や、ラベルを用いた場合にラベルがはがれてもとの細胞がわからなくなってしまう可能性は依然として残っていた。
【0009】
また、血液を採取して検査を行う等、生体物質を用いたその他の治療や検査を行う際にも、上述したような容器の外面を用いて細胞を識別する方法を用いる限りにおいては、同様に生体物質と容器とドナー及び/又はレシピエントとが一致して対応しなくなる可能性は依然として残っていた。
【0010】
本発明は以上に述べたような不具合を解消すべく、生体物質識別手段を用いて医療に用いる細胞や血液等の生体物質の識別を行い、ドナー及び/又はレシピエントの取り違えを無くすべく図ったものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、特定の細胞群や血液等の生体物質を包含する容器内に生体物質とは異なる生体物質識別手段を該生体物質と共存させるように混合して、該生体物質識別手段から発信される前記生体物質を識別する情報たる生体物質識別情報を読取装置により読み取り、該読取装置により読み取られた生体物質識別情報を用いて、前記生体物質に対応するドナー及び/又はレシピエントを識別可能としたことを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、生体物質識別手段を生体物質を包含する容器内に生体物質と共存させるように混合させているので、生体物質と生体物質識別手段との対応が保たれたまま生体物質を他の容器に移し替えることができ、ラベルを用いた方法と異なりラベルを見落として生体物質と対応しないラベルを有する容器に生体物質を移してしまうミスを排除できる。また、生体物質識別手段自体に前記生体物質識別情報を発信させているので、前記生体物質識別情報の読み取り、及び前記生体物質をドナー及び/又はレシピエントに投与する場合の前記生体物質識別情報に対応するドナー及び/又はレシピエントと実際のドナー及び/又はレシピエントとの照合を確実に行うことができる。なお、以下の記述中、単に「生体物質識別手段を生体物質に混合させる」とは、生体物質識別手段を生体物質を包含する容器内に生体物質と共存させるように混合させることをいう。
【0013】
ドナー及び/又はレシピエント個人を特定する必要があれば、前記生体物質識別情報にドナー及び/又はレシピエントの氏名や生年月日、又はドナー及び/又はレシピエントごとにつけられた通し番号等、ドナー及び/又はレシピエントを特定する情報であるドナー等特定情報を必ず含むものとすればよい。一方、血液型等、ドナー及び/又はレシピエントの属性がわかれば足りる場合には前記生体物質識別情報に必要な属性を示す情報が含まれていればよい。
【0014】
さらに、前記生体物質に対応するドナー及び/又はレシピエントの確認を随時行いたい場合には、前記生体物質識別情報を非接触で読み取る読取装置を用いればよい。このようにすれば、各工程を行う箇所ごとに前記読取装置を備え、前記読取装置を用いて前記生体物質識別情報を読み取り、対応するドナー及び/又はレシピエントを確認するようにできる。
【0015】
ドナー及び/又はレシピエントを識別し照合する具体的な方法の一例としては、前記読取装置と情報処理装置とを有線又は無線で接続し、前記読取装置が受信した生体物質識別情報を情報処理装置から出力させる方法を挙げることができる。なお、「生体物質識別情報を情報処理装置に出力」とは、生体物質識別情報を他の形式に変換して出力することも含む。
【0016】
ドナー及び/又はレシピエントを識別し照合する具体的な方法の他の一例としては、前記読取装置と情報処理装置とを有線又は無線で接続し、前記読取装置が受信した生体物質識別情報と、ドナー及び/又はレシピエント側の被照合手段に格納されたドナー等照合情報とを前記情報処理装置によって照合する方法を挙げることができる。このようなものであれば、生体物質識別手段に格納した生体物質識別情報と、ドナー及び/又はレシピエント側の被照合手段に格納したドナー等照合情報を情報処理装置を介して照合することにより、照合を確実に行うことができる。なお、「前記読取装置と情報処理装置とを有線又は無線で接続」とは、これらを一体に構成することを含む。さらに、前記被照合手段と前記読取装置と前記情報処理装置とをすべて一体に構成してもよい。
【0017】
前記生体物質識別情報と前記ドナー等照合情報とを照合する方法としては、情報処理装置に生体物質識別情報とドナー等照合情報とを関連付けて格納しておき、情報処理装置において受信した前記生体物質識別情報に対応する前記ドナー等照合情報と受信したドナー等照合情報とを比較して照合させるようにする方法も考えられる。このような方法であれば、前記情報識別手段及び前記被照合手段が書き込み不可能に構成されたものであっても情報処理装置にこれらの対応関係を予め格納しておき、受信した際にこの対応関係と照合を行うことができる。
【0018】
前記生体物質識別情報と前記ドナー等照合情報とを照合する方法の他の一例として、前記情報識別手段に格納した生体物質識別情報と、前記被照合手段に格納したドナー等照合情報とが同一の内容を有するものを挙げることができる。このようなものであれば、単に生体物質識別情報とドナー等照合情報とを比較するのみで照合することができる。
【0020】
このようなドナー等識別方法に用いる生体物質識別手段としては、特定の細胞群や血液等の生体物質を包含する容器内に生体物質と共存させるよう混合させるものであり、前記生体物質を識別する情報たる生体物質識別情報を格納する生体物質識別情報格納部と、この生体物質識別情報を発信する発信部とを具備するものを挙げることができる。このような生体物質識別手段によれば、生体物質識別情報格納部に格納させた生体物質識別情報を発信部から発信させることにより、識別手段と生体物質とが混合したままの状態で情報の確認を行うことができる。
【0021】
水分を含む培地等と共存可能にできるようにするには、防水性コーティングを施し、又は耐水性を有する材料を用いる等して耐水性を有するものにすればよい。
【0022】
誤って生体物質識別手段を体内に入れる等のミスを排除できるようにするには、フィルタでろ過することにより前記医療行為に用いる細胞等と分離可能であるようにすればよい。
【0023】
遠心分離で生体物質をピペット又は注射器を用いて取り出す際に、生体物質識別手段を生体物質とともに取り出すことができるようにするには、ピペットにより吸い取り可能な大きさにすればよい。
【0024】
容器を移し変える際に表面に接着した生体物質、一例として細胞が引っかかってピペット等を通過できなくなり、生体物質識別手段が生体物質と混合した状態でなくなることを防ぐことができるようにするには、生体物質の接着を防止する物質でコーティングし、又は生体物質識別手段自体を生体物質が接着しにくい物質で構成する等、表面に生体物質の接着を防止する処理を施せばよい。
【0025】
より効果的に生体物質識別手段を目的の生体物質と混合したままの状態で取り出すことができるようにするには、比重を目的の生体物質と略同一であるようにすればよい。遠心分離で目的の生体物質を取り出す際に、生体物質識別手段が目的の生体物質と同一の層に位置しているからである。
【0026】
生体物質識別手段の一層の小型化を図ると同時に、生体物質識別手段のバッテリー内の物質が溶出する等して細胞等が汚染されるのを防ぐことができるようにするには、電磁波を受信して電力に変換する受信部を具備し、この電力が前記発信部の動力源であるようにすればよい。受信部で電磁波を受信して電力に変換するようにしたので、生体物質識別手段にバッテリーを備える必要がなくなるからである。
【0027】
生体物質識別情報を任意の形式に設定できるようにするには、生体物質識別情報を書き込み可能に構成すればよい。
【0028】
前記読取装置が受信した生体物質識別情報とドナー及び/又はレシピエント側の被照合手段に格納されたドナー等照合情報とを照合するのに用いられる情報処理装置の具体的な構成としては、読取装置と有線又は無線接続され、読取装置から生体物質識別手段に格納した生体物質識別情報を受信する第1受信部と、被照合手段に格納したドナー等照合情報を受信する第2受信部と、これらを照合する照合部とを具備するものが挙げられる。
【0029】
生体物質識別情報とドナー等照合情報とが異なる内容を示すものであっても照合を行うことができるようにするには、前記生体物質識別情報と前記ドナー等照合情報とを関連付けて格納する識別照合情報格納部をさらに具備するものにすればよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0031】
本実施形態に係るドナー等識別方法は、「活性化自己リンパ球療法」において用いるものである。これは、ドナー及び/又はレシピエントが同一であるもので、自己の末梢血液由来のリンパ球を取り出し、体外で培養・加工してさまざまな性質を与えたものを、治療の目的で再び本人の体内に戻すものである。
【0032】
まず、本実施形態に用いる機器を説明する。図1に示すように、本実施形態では、生体物質であるリンパ球Lに混合させるものであり、生体物質識別情報J1を格納するものである生体物質識別手段1と、ドナー及び/又はレシピエント側(本実施形態ではドナーとレシピエントとは同一)に備えられ、ドナー等照合情報J2を格納するものである被照合手段2と、前記生体物質識別情報J1及びドナー等照合情報J2を読み取る装置である読取装置3と、前記読取装置3から生体物質識別情報J1及びドナー等照合情報J2をそれぞれ受信し照合を行う情報処理装置4とを用いる。読取装置3による生体物質識別手段1からの生体物質識別情報J1の読み取り、及び被照合手段2からのドナー等照合情報J2の読み取りは、本実施形態では電磁波による通信により非接触で行う。また、前記読取装置3は、前記情報処理装置4と有線で接続されている。
【0033】
各機器の構成及び動作機能を次に述べる。また、機器の動作機能を示した機能ブロック図を図2に示す。
【0034】
前記生体物質識別手段1は、樹脂等によりコーティングを施した非接触型ICチップを用いて構成している。
【0035】
前記非接触型ICチップは、図3に示すように、電磁波を受信して動力源たる電力に変換する受信部11、生体物質識別情報を格納する生体物質識別情報格納部12、及び前記生体物質識別情報を電磁波として発信する生体物質識別情報発信部13を具備している。受信部11は、一定周波数、本実施形態では2.45GHzの電磁波を受信して電力に変換する回路を用いて構成されている。生体物質識別情報格納部12は、生体物質識別情報J1を格納するメモリを用いて構成されている。この生体物質識別情報J1は、特定の細胞群や血液等生体物質を識別するのに必要な情報又はその組み合わせであり、本実施形態では、図4に示すように、ドナー及び/又はレシピエント特定情報たるドナー及び/又はレシピエントごとに付したドナー番号J11を含み、さらに採取年月日、及び第何回目の採取であるかの情報を組み合わせ構成しているものである。生体物質識別情報発信部13は、前記生体物質識別情報格納部12に格納された生体物質識別情報J1を信号に変換し、一定周波数、本実施形態では2.45GHzの電磁波として読取装置に発信する。
【0036】
この生体物質識別手段1は、本実施形態では0.4mm角の厚さ60ミクロンの大きさである前記非接触ICチップにコーティングを施したものであるので、直径7〜16ミクロンであるリンパ球より大きい。
【0037】
前記コーティングは樹脂を用いて構成した防水性のものであり、アルブミンを表面に固定して細胞の付着を防止する処理を施してある。また、この生体物質識別手段1のコーティングを含めた全体の比重は、目的の生体物質たるT型リンパ球(比重1.077g/cm3)と略同一になるようにしてある。
【0038】
前記被照合手段2は、本実施形態では前記生体物質識別手段1に用いられているものと同一の構造を有する非接触型ICチップをカード等に埋め込んで構成している。
【0039】
被照合手段2を構成するICチップは、図5に示すように、電磁波を受信して動力源たる電力に変換する受信部21、ドナー等照合情報を格納するドナー等照合情報格納部22、及び前記ドナー等照合情報を電磁波として発信するドナー等照合情報発信部23として機能する。
【0040】
ドナー等照合情報格納部22は、ドナー等照合情報J2を格納するメモリを用いて構成されている。このドナー等照合情報J2は、ドナー本人又は治療や検査に必要な属性を特定するのに必要な情報又はその組み合わせである。本実施形態では、このドナー等照合情報J2は、前記生体物質識別情報J1と同一の形式であり、予め前記生体物質識別情報J1と同一の内容を格納したものをドナー及び/又はレシピエントに渡すようにしている。
【0041】
その他受信部21及びドナー等照合情報発信部23は、それぞれ生体物質識別手段の受信部及び発信部と同一の機能を有している。
【0042】
前記読取装置3は、図6に示すように、前記生体物質識別手段1及び被照合手段2の動力に変換される電磁波を発信する発信器301と、前記生体物質識別手段及び被照合手段から発信された電磁波を受信するアンテナ302と、受信した信号を出力する出力端子303と、これらを制御する制御チップ304とを備えている。そして、図2に示すように、制御チップ内のメモリに内蔵されたプログラムを制御チップ内のCPUが実行して電磁波を発信する発信部31、生体物質識別手段が電磁波として発信した生体物質識別情報を受信する読取部32、及び受信部が受信した生体物質識別情報を情報処理装置に送信する送信部33として機能する。
【0043】
前記情報処理装置4は、図7に示すように、CPU401、メインメモリ402、キーボード等入力装置403、HDD等外部記憶装置404、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置405、及び読取装置等からの信号を入力する入出力インタフェース406等を備えている。そして、メインメモリ402や外部記憶装置等404に記憶したプログラムに従ってCPU401が作動し、図2に示すように、受信部41、照合部42、及び結果出力部43として機能する。
【0044】
受信部41は、前記入出力インタフェース406等を利用して構成しているものであり、読取装置3から出力された生体物質識別情報J1及びドナー等照合情報J2を受信する。
【0045】
照合部42は、受信部41が受信した生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを比較し、これらが同一の値を有する場合には「1」、異なる値を有する場合には「0」の2値をとる判断結果識別子Rを生成する。
【0046】
結果出力部43は、前記出力装置405等を利用して構成しているものであり、前記照合部42が生成した判断結果識別子Rの値が「1」ならば「OK」、「0」ならば「NG」のメッセージをそれぞれ出力する。
【0047】
次に、この細胞治療の流れを以下に述べる。また、図8にこの流れの概略を示す。
【0048】
まず、生体物質識別手段1を予めエタノール、ガス、オゾン、γ線等を用いて滅菌しておく。次に、図9に示すように、生体物質識別手段1を真空採血管Tの中に入れておき(ST1)、図10に示すように、この生体物質識別手段1が入った真空採血管Tを用いてドナー及び/又はレシピエントから採血する(ST2)。採血した血液BLから、以下の方法でリンパ球Lを分離して加工し、さらにこのリンパ球を培養する。
【0049】
まず、採血した血液BLを遠心分離し、リンパ球Lを含むリンパ球層LLを取り出せるようにする(ST3)。遠心分離を行った後の状態を図11に示す。このとき、生体物質識別手段1は目的の生体物質たるリンパ球Lと略同一の比重を有するようにしてあるので、リンパ球Lの層に生体物質識別手段1が共存している。
【0050】
このリンパ球Lと生体物質識別手段1が共存した層を、図12に示すように、ピペットPPで取り出し、図13に示すフラスコFLに移す(ST4)。ピペットPPの先端部の口径は、生体物質識別手段1が通過可能な大きさである。そして、フラスコFL内に刺激用の抗体を加えてリンパ球Lに免疫機能を与える。その後、リンパ球Lを一定量になるまでの期間、本実施形態では約1週間培養する(ST5)。
【0051】
フラスコFL内のリンパ球Lが一定量になった時点で、図14に示すように、リンパ球Lを含むリンパ球懸濁液L1を生体物質識別手段1とともにバッグBGと呼ばれる容器に移して(ST6)、さらに一定量になるまでの期間、本実施形態では約1週間培養する(ST7)。
【0052】
リンパ球Lが前記バッグBGを略満たした時点で、図15に示すように、バッグBGの内容物たるリンパ球L及び生体物質識別手段1を含むリンパ球懸濁液L1を遠心用ボトルBT1に移して(ST8)、遠心分離を行いリンパ球Lを培養液等から分離して精製する(ST9)。このリンパ球Lの層には、同様に生体物質識別手段1が共存している。このように精製したリンパ球Lを含む投与用リンパ球懸濁液L2の層を、図16に示す点滴用ボトルBT2に移す(ST10)。
【0053】
そして、治療に用いる生体物質であるこのリンパ球Lを含む投与用リンパ球懸濁液L2をドナー及び/又はレシピエントに投与する前に、図1に示すように、点滴用ボトルBT2に読取装置3を近づけ、生体物質識別情報J1を読み取る。そして、ドナー及び/又はレシピエント側に与えた被照合手段2に同様に読取装置3を近づけ、ドナー等照合情報J2を読み取る(ST11)。
【0054】
以下、情報処理装置4が行う処理の流れを図17に示す。まず、受信部41が生体物質識別情報J1を受信する(ST101)。次に、同じく受信部41がドナー等照合情報J2を受信する(ST102)。照合部42は、生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを受信部41から受け取り(ST103)、これらを比較して(ST104)同一内容であれば「1」(ST105)、そうでない場合は「0」(ST106)の2値をとる判断結果識別子Rを生成し、結果出力部43に渡す(ST107)。結果出力部43は、判断識別子Rの値が「1」であるか否かを判定し(ST108)、そうであれば「OK」(ST109)、判断識別子Rの値が「1」でなく「0」であれば「NG」を出力する(ST110)。
【0055】
そして、図8に示すように、投与を行う医師等が出力された照合結果を参照し(ST12)、「OK」が出力された場合にのみ、点滴用ボトルBT2に生体物質識別手段1が通過不可能に構成されたフィルタFIを取り付け、さらに点滴用チューブと注射針を取り付けて図18に示すようにドナー及び/又はレシピエントに点滴する(ST13)。
【0056】
「NG」が出力された場合は、別の生体物質識別手段1と混合したリンパ球懸濁液L2が入った点滴用ボトルBT2を用意して(ST14)、同様に照合を行う操作を「OK」が出力されるようになるまで繰り返す。もし正しい点滴用ボトルがなければ細胞を培養する機関にその旨連絡し、見つかった場合には指定した期日に投与を行うようドナー及び/又はレシピエント及び細胞を培養する機関に伝える。なお、「NG」が出力された場合には、同じ点滴用ボトルBT2に読取装置3を近づけて照合を行う操作を所定回数繰り返し、「OK」が一度も出力されないことを確認してから別の点滴用ボトルBT2を用意するようにしてもよい。この場合は、「OK」が2度続けて出力されない限り点滴の操作に移らないようにしてももちろんよい。
【0057】
このように、リンパ球Lに生体物質識別手段1を混合しているので、加工の工程中にラベルを見落として、又は見間違えてリンパ球Lを違うドナー及び/又はレシピエントを示すラベルの容器に間違えて移してしまうようなミスを排除できる。また、前記生体物質識別手段1自体に前記生体物質識別情報J1を格納し、読取装置3に向けて生体物質識別情報J1を発信させるようにしているので、ラベルを用いた場合と異なりラベルがはがれることや薬品がかかってしまう等してラベルの記載内容が読めなくなることがなく、照合を確実に行うことができる。
【0058】
また、ドナー及び/又はレシピエント側にドナー等照合情報J2が格納された被照合手段2を渡す一方、前記読取装置3と情報処理装置4とを有線接続して前記生体物質識別情報J1と前記ドナー等照合情報J2とを情報処理装置4で照合するようにしたので、ドナー及び/又はレシピエントの識別を確実に行うことができる。
【0059】
さらに、前記生体物質識別情報J1と前記ドナー等照合情報J2とが同一の内容を有するようにしたので、これらを単純に比較するだけで照合を行うことができる。
【0060】
一方、前記生体物質識別手段1に防水性コーティングを施し耐水性を与えたので、この生体物質識別手段1は水分を含む培地と共存できる。
【0061】
また、前記生体物質識別手段1に細胞の接着を防止する処理を施しているので、接着した細胞がピペットの吸い込み口に引っかかって生体物質識別手段をリンパ球と共存したままピペットに吸い取ることが不可能になってしまうことを防げる。
【0062】
加えて、前記生体物質識別手段1は電磁波を受信して電力に変換する受信部11を備えているので、バッテリーを備える必要がなくなり、一層の小型化及びバッテリー内物質の溶出による汚染の防止を図ることができる。
【0063】
そして、前記生体物質識別手段1はリンパ球Lよりも大きいので、投与の際にフィルタでろ過することにより除去でき、誤ってドナー及び/又はレシピエントの体内に入ってしまうことはない。
【0064】
さらに、前記生体物質識別手段1はリンパ球Lと混合したままピペットPPにより吸い取り可能であるので、遠心分離後にリンパ球Lを取り出す工程の際にこの生体物質識別手段1がリンパ球Lに混合したまま取り出すことができ、ラベル等を確認する手間が省ける。
【0065】
この第1実施形態の変形として、生体物質識別手段1及び被照合手段2を書き込み可能に構成し、生体物質識別情報J1及びドナー等照合情報J2をその都度書き込むような実施形態が考えられる。このように構成すれば、それぞれに書き込む際にドナー及び/又はレシピエントが立ち会うようにできるので、最初の段階で被照合手段2と対応しない生体物質識別手段1を血液BLに混合してしまうミスを排除しやすくできる。この場合、書き込んだ後に滅菌処理を行えるようにするか、または滅菌状態を保ったまま書き込み可能にするとよい。
【0066】
また、別の変形例として、第1実施形態の情報処理装置4に、生体物質識別情報J1とドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号をそれぞれ対応付けて格納しておき、生体物質識別手段1と被照合手段2との照合の際に生体物質識別情報J1と対応するドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号を検索させ、検索結果を出力させるようにしてもよい。
【0067】
このようなものであれば、出力結果と実際のドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号とを投与を行う医師等が照合するようにできる。
【0068】
さらに別の変形例として、情報処理装置4による照合は行わず、生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2を並べて出力し、投与を行う医師等が照合するようにしてもよい。また、被照合手段2そのものを省略して生体物質識別情報J1そのもの、または生体物質識別情報J1と対応するドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号等を出力し、投与を行う医師等が実際のドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号等と照合するようにしてもよい。これらの場合においても、照合を人の目に頼るものではあるが、生体物質識別手段1をリンパ球L等に混合させていることには変わりがないので、採取から投与までリンパ球Lと生体物質識別手段1と対応を保たせること、及びリンパ球Lのドナー及び/又はレシピエントを識別すること自体は可能である。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。ここで、前記第1実施形態に対応する機器及び機能ブロックに関しては同一の名称及び符号を付している。
【0070】
本実施形態に係るドナー等識別方法は、第1実施形態と同様、ドナー及び/又はレシピエント個人(本実施形態では同一)の人体から生体物質たるリンパ球Lを取り出し、体外で培養、加工してさまざまな性質を与えたものを細胞医薬品として体内に戻す細胞治療に用いるものである。
【0071】
まず、本実施形態に用いる機器を説明する。図19に示すように、本実施形態では、リンパ球Lに混合させるものであり、生体物質識別情報J1を格納するものである生体物質識別手段1と、ドナー及び/又はレシピエント側に備えられ、ドナー等照合情報J2を格納するものである被照合手段2と、前記生体物質識別情報J1を読み取る装置である読取装置3と、前記ドナー等照合情報J2を読み取る装置である第2読取装置5と、前記読取装置3から生体物質識別情報J1を、前記第2読取装置5からドナー等照合情報J2をそれぞれ受信し照合を行う情報処理装置4とを用いる。読取装置3による生体物質識別手段1からの生体物質識別情報J1の読み取りは、本実施形態では電磁波による通信により非接触で行う。第2読取装置5による被照合手段2からのドナー等照合情報J2の読み取りは、本実施形態ではバーコードリーダを用いて行う。また、前記読取装置3及び前記第2読取装置5は、前記情報処理装置4と有線で接続されている。
【0072】
次に、各機器の構成及び機能について述べる。また、機器の動作機能を示した機能ブロック図を図20に示す。
【0073】
生体物質識別手段1及び読取装置3の構成は、第1実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0074】
被照合手段2は、本実施形態では所定の用紙にバーコードを印刷したものを利用して構成している。このバーコードの内容がドナー等照合情報J2であり、ドナー及び/又はレシピエントの氏名、生年月日、採取を行った年月日、カルテ番号に対応させてある。そしてこのドナー等照合情報J2は、後述するように情報処理装置4に生体物質識別情報J1と対応付けて格納してある。
【0075】
第2読取装置5は、本実施形態ではバーコードリーダとして周知のものを利用して構成されるものであり、バーコードとして印刷されたドナー等照合情報J2を読み取る読取部51、及び読取部51が読み取ったドナー等照合情報J2を情報処理装置4に送信する送信部52としての機能を発揮するものである。
【0076】
情報処理装置4は、第1実施形態に用いたものと同様のものであり、図2に示すようにCPU401、メインメモリ402、キーボード等入力装置403、HDD等外部記憶装置404、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置405、及び読取装置、第2読取装置からの信号を入力する端子等の入出力インタフェース406等を具備するものである。そして、メインメモリ402や外部記憶装置404等に記憶したプログラムに従ってCPU401が作動し、受信部41、第2受信部44、識別照合情報格納部45、照合部42、及び結果出力部43として機能する。
【0077】
受信部41は、前記入出力インタフェース406等を利用して構成しているものであり、読取装置3から出力された生体物質識別情報J1を受信する。
【0078】
第2受信部44は、前記入出力インタフェース406等を利用して構成しているものであり、第2読取装置5から送信されたドナー等照合情報J2を受信する。
【0079】
識別照合情報格納部45は、メインメモリ402、外部記憶装置404等の所定領域に形成しているものであり、生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを対応付けて図21に示すように格納するものである。そして、受信部41が受信した生体物質識別情報J1に対応するドナー等照合情報J2を照合部42に渡すようにしている。
【0080】
照合部42は、識別照合情報格納部45から渡されたドナー等照合情報J2と第2受信部44が受信したドナー等照合情報J2とを比較し、これらが同一の値を有する場合には「1」、異なる値を有する場合には「0」の2値をとる判断結果識別子Rを生成する。
【0081】
結果出力部43は、前記出力装置405等を利用して構成しているものであり、前記照合部42が生成した判断結果識別子Rの値が「1」ならば「OK」、「0」ならば「NG」のメッセージをそれぞれ出力する。
【0082】
次に、この細胞治療の流れを以下に述べる。また、図22にこの流れの概略を示す。
【0083】
まず、生体物質識別手段1を予めエタノール、ガス、オゾン、γ線等を用いて滅菌しておく。次に、図9に示すように、生体物質識別手段1を真空採血管Tの中に入れておき(ST21)、図10に示すように、この生体物質識別手段1が入った真空採血管Tを用いてドナー及び/又はレシピエントから採血する(ST22)。
【0084】
採血が終わった段階で、生体物質識別情報J1を読み取る(ST23)。次いで、ドナー等照合情報J2を含むバーコードを作成する(ST24)。そして、これら生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを情報処理装置4の識別照合情報部45に対応付けて格納する(ST25)。
【0085】
採血した血液BLから、以下の方法でリンパ球Lを分離して加工し、さらにこのリンパ球を培養する。
【0086】
まず採血した血液BLから遠心分離によりリンパ球Lを含むリンパ球層LLを取り出せるようにする(ST26)。遠心分離を行った後の状態を図11に示す。このとき、生体物質識別手段1はリンパ球Lと略同一の比重を有するようにしてあるので、リンパ球Lの層に生体物質識別手段1が共存している。
【0087】
このリンパ球Lと生体物質識別手段1とが共存している層を、図12に示すように、ピペットPPで取り出し、図13に示すフラスコFLに移す(ST27)。ピペットPPの先端部の口径は、生体物質識別手段1が通過可能な大きさである。そして、フラスコFLに刺激用の抗体を加えて免疫機能を加え、リンパ球Lを一定量になるまでの期間、本実施形態では約1週間培養する(ST28)。
【0088】
フラスコFL内のリンパ球Lが一定量になった時点で、図14に示すように、リンパ球Lを含むリンパ球懸濁液L1を生体物質識別手段1とともにバッグBGと呼ばれる容器に移して(ST29)さらに一定量になるまでの期間、本実施形態では約1週間培養する(ST30)。
【0089】
リンパ球Lが前記バッグBGを略満たした時点で、図15に示すように、バッグBGの内容物たるリンパ球Lを含むリンパ球懸濁液L1及び生体物質識別手段1を遠心用ボトルBT1に移して(ST31)、遠心分離を行いリンパ球Lを培養液等から分離して精製する(ST32)。このリンパ球Lの層には、同様に生体物質識別手段1が共存している。このように精製したリンパ球Lを含む投与用リンパ球懸濁液L2の層を、図16に示す点滴用ボトルBT2に移す(ST33)。
【0090】
そして、治療に用いる生体物質であるこのリンパ球Lを含む投与用リンパ球懸濁液L2をドナー及び/又はレシピエントに投与する前に、点滴用ボトルBT2に読取装置3を近づけ、生体物質識別情報J1を読み取らせる(ST34)。そして、ドナー及び/又はレシピエント側に与えた被照合手段2に第2読取装置5を近づけ、ドナー等照合情報J2を読み取らせる(ST35)。
【0091】
以下、情報処理装置が行う処理の流れを図23に示す。まず、受信部41が生体物質識別情報J1を受信し(ST201)、識別照合情報部45はこの生体物質識別情報J1に対応するドナー等照合情報J2を検索して得る(ST202)。次に、第2受信部44がドナー等照合情報J2を受信する(ST203)。照合部42は、識別照合情報部45が検索して得たドナー等照合情報J2と第2受信部44が受信したドナー等照合情報J2とを比較して(ST204)、同一内容であれば「1」(ST205)、そうでない場合は「0」の2値をとる判断結果識別子Rを生成し、(ST206)結果出力部43に渡す(ST207)。結果出力部43は、判断識別子が「1」であれば「OK」(ST208)、「0」であれば「NG」を出力する(ST209)。
【0092】
そして、図22に示すように投与を行う医師等が出力された照合結果を参照し(ST36)、「OK」が出力された場合にのみ、点滴用ボトルBT2に生体物質識別手段1が通過不可能に構成されたフィルタFIを取り付け、さらに点滴用チューブと注射針を取り付けて図18に示すようにドナー及び/又はレシピエントに点滴する(ST37)。
【0093】
「NG」が出力された場合は、別の生体物質識別手段1と混合したリンパ球懸濁液L2が入った点滴用ボトルを用意して(ST38)、同様に照合を行う操作を「OK」が出力されるようになるまで繰り返す。もし正しい点滴用ボトルがなければ細胞を培養する機関にその旨連絡し、見つかった場合には指定した期日に投与を行うようドナー及び/又はレシピエント及び細胞を培養する機関に伝える。なお、「NG」が出力された場合には、同じ点滴用ボトルBT2に読取装置3を近づけて照合を行う操作を所定回数繰り返し、「OK」が一度も出力されないことを確認してから別の点滴用ボトルBT2を用意するようにしてもよい。この場合は、「OK」が2度続けて出力されない限り点滴の操作に移らないようにしてももちろんよい。
【0094】
このように情報処理装置4の識別照合情報部45に生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを関連付けて格納したので、生体物質識別情報J1とドナー等照合情報J2とを同一のものにしなくても、前記識別照合情報格納部により受信した生体物質識別情報J1に対応するドナー等照合情報J2と受信したドナー等照合情報J2との比較を行うことで照合が可脳である。
【0095】
また、第1実施形態と同様に生体物質識別手段1をリンパ球Lに混合させていて、この生体物質識別手段1は第1実施形態と同様の構成であることから、第1実施形態による主要な効果は第2実施形態においても得ることができる。
【0096】
この第2実施形態の変形例として、被照合手段2をバーコードでなく書き込み可能な媒体、例えば磁気ストライプを備えたカードや書き込み可能に構成したICチップ等で構成して投与のたびごとにドナー等照合情報J2を書き込むようにし、被照合手段2に書き込んだドナー等照合情報J2と生体物質識別手段1内の生体物質識別情報J1とを関連付けて情報処理装置4に格納してもよい。
【0097】
また、この第2実施形態の別の変形例として、被照合手段2をドナー及び/又はレシピエント本人、ドナー等照合情報J2を指紋等ドナー及び/又はレシピエント本人固有の生体情報で構成し、ドナー及び/又はレシピエント本人固有の生体情報であるドナー等照合情報J2と生体物質識別手段1内の生体物質識別情報J1とを関連付けて情報処理装置4に格納してもよい。この場合、生体物質識別手段1を書き込み可能なものとし、前記ドナー等照合情報J2をそのまま、又は所定のアルゴリズムを用いて圧縮したものを生体物質識別情報J1として前記生体物質識別手段1に書き込むようにしてもよい。
【0098】
そして、この第2実施形態のさらに別の変形例として、識別照合情報格納部を情報処理装置4でなく読取装置3に備えておき、読み取ったドナー等照合情報J2に対応する生体物質識別情報J1を検索して情報処理装置4に出力して、情報処理装置4においては前記第1実施形態におけるのと同様の手順により照合を行うような実施態様も考えられる。
【0099】
以上に述べた変形例においても、この第2実施形態における主要な効果はすべて得ることができる。
【0100】
なお、本発明は以上に示した実施形態に限られない。
【0101】
例えば、生体物質識別手段を防水性コーティングを施したものとする代わりに、生体物質識別手段自体を耐水性を有する構造として水分を含む培地と共存できるようにしてもよいし、場合によっては耐水性を有するものでなくてもよい。
【0102】
また、生体物質識別手段の大きさは、例えば磁性体を含ませておき、投与の際に磁石に吸着させる等、ドナー及び/又はレシピエントの体内に誤って注入しないようにできるならば、リンパ球、赤血球等のドナー及び/又はレシピエントに投与する生体物質の粒子よりも小さいものであってもよい。あるいは生体物質識別手段がドナー及び/又はレシピエントの体内に注入して差し支えない場合においても、生体物質識別手段の大きさを生体物質の粒子よりも大きくする必要はない。
【0103】
一方、遠心分離後のリンパ球等生体物質の取り出しには、上述した2つの実施形態ではピペットを用いたが、注射器を用いても構わない。この場合は、生体物質識別手段は注射針を通過可能にして、生体物質識別手段が生体物質と混合したまま注射器で吸い取られるようにすればよい。すなわち、生体物質識別手段の大きさは、生体物質の容器間の移し替えの際に用いる注射針、ピペット、チューブ等の器具のすべてを通過可能な範囲であればよい。
【0104】
さらに、生体物質識別手段の表面に細胞が接着しにくいような細胞を投与する場合であれば、特別に細胞の接着を防止する処理を施す必要はない。また、細胞の接着を防止する方法は、アルブミンではなく他の細胞非接着性バイオコロイド、例えば非イオン性の親水性合成高分子を表面に固定してもよいし、アクリルアミドをグラフト重合してもよい。
【0105】
加えて、生体物質識別手段の動力に用いる電磁波は、上述した実施形態で述べた2.45GHz以外にも、生体物質を破壊するような高エネルギーのものでなければ周波数は任意に設定してもよい。また、音波等、電磁波以外のものを動力源として用いてもよい。さらに、例えば所定の波長の電磁波を照射すると発光する粒状の生体物質識別手段を1又は複数個生体物質に混合し、生体物質識別手段の色や色の組み合わせ等を予め生体物質識別情報に対応させておいて、投与の直前に前記所定の波長の電磁波を照射して光の色ないし光の色の組み合わせ等から生体物質を識別しドナー及び/又はレシピエントと照合する方法等、生体物質識別手段から電磁波を発信する以外の方法を用いてもよい。
【0106】
そして、以上の実施形態で説明したような細胞治療だけでなく、ドナー及び/又はレシピエントの血液から生体物質たる血清を取り出して行う検査や、生体物質たる血液を注入する輸血等、他の医療行為の際にも応用することができる。
【0107】
例えば、血清を取り出して行う検査の場合には、各部門の検査を行う直前又は直後に生体物質識別情報の読み取りを行うようにし、ラベルの見間違い等に起因する誤診の防止を図ることができる。この場合は、血清は血液の遠心分離を行った場合上澄み液を構成するので、生体物質識別手段の比重は血清より軽いものであれば特に血清と略同じ比重にする必要はない。
【0108】
そして、ドナー及び/又はレシピエント個人でなく、ドナー及び/又はレシピエントの属性が区別できればよい場合には、生体物質識別情報にドナー及び/又はレシピエント特定情報が含まれる必要はない。例えば、輸血に本発明を適用する場合は、生体物質識別情報は血液型のみでも差し支えない。
【0109】
【発明の効果】
本発明は、以上に詳述したように、生体物質識別手段を生体物質と混合させているので、生体物質と生体物質識別手段との対応が保たれたまま生体物質を他の容器に移し替えることができ、ラベルを用いた方法と異なりラベルを見落として生体物質と対応しないラベルを有する容器に生体物質を移してしまうミスを排除できる。また、生体物質識別手段自体に前記生体物質識別情報を格納して送信させることにより、確実に情報を照合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態におけるドナー等識別方法の全体構成図。
【図2】同実施形態におけるドナー等識別方法に用いる各機器の機能ブロック図。
【図3】同実施形態における生体物質識別手段の内部構成図。
【図4】同実施形態における生体物質識別情報の概略図。
【図5】同実施形態における被照合手段の内部構成図。
【図6】同実施形態における読取装置の内部構成図。
【図7】同実施形態における情報処理装置の内部構成図。
【図8】同実施形態における細胞治療の処理フローチャート。
【図9】同実施形態における採血を開始する直前の採血管の状態を示す概略図。
【図10】同実施形態におけるドナー及び/又はレシピエントからの採血を示す概略図。
【図11】同実施形態におけるドナー及び/又はレシピエントから採血した血液を遠心分離した状態を示す概略図。
【図12】同実施形態におけるドナー及び/又はレシピエントから採血した血液からリンパ球と生体物質識別手段とを取り出す操作を示す概略図。
【図13】同実施形態における細胞治療に用いるフラスコを示す正面図。
【図14】同実施形態におけるフラスコからバッグにリンパ球及び生体物質識別手段を移す操作を示す概略図。
【図15】同実施形態におけるバッグから遠心ボトルにリンパ球及び生体物質識別手段を移す操作を示す概略図。
【図16】同実施形態における点滴用ボトルを示す正面図。
【図17】同実施形態における生体物質識別情報の照合に用いる情報処理装置が行う処理を示すフローチャート。
【図18】同実施形態における点滴操作を示す概略図。
【図19】本発明の第2実施形態におけるドナー等識別方法の全体構成図。
【図20】同実施形態におけるドナー等識別方法に用いる各機器の機能ブロック図。
【図21】同実施形態における識別照合情報格納部に格納された生体物質識別情報及びドナー等照合情報を示す概略図。
【図22】同実施形態における細胞治療の処理フローチャート。
【図23】同実施形態における生体物質識別情報の照合に用いる情報処理装置が行う処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…生体物質識別手段
11…生体物質識別手段
12…生体物質識別情報格納部
13…生体物質識別情報発信部
2…被照合手段
3…読取装置
4…情報処理装置
41…受信部
42…照合部
44…第2受信部
45…識別照合情報格納部
J1…生体物質識別情報
J11…ドナー番号(ドナー及び/又はレシピエント特定情報)
J2…ドナー等照合情報
L…リンパ球(生体物質)
L1…リンパ球懸濁液
L2…投与用リンパ球懸濁液(生体物質)
FI…フィルタ
PP…ピペット

Claims (16)

  1. 特定の細胞群や血液等の生体物質を包含する容器内に生体物質とは異なる生体物質識別手段を該生体物質と共存させるように混合して、該生体物質識別手段から発信される前記生体物質を識別する情報たる生体物質識別情報を読取装置により読み取り、該読取装置により読み取られた生体物質識別情報を用いて、前記生体物質に対応するドナー及び/又はレシピエントを識別可能としたことを特徴とするドナー等識別方法。
  2. 前記生体物質識別情報がドナー及び/又はレシピエントを特定する情報であるドナー等特定情報を含むものであることを特徴とする請求項1記載のドナー等識別方法。
  3. 前記生体物質識別手段から発信された前記生体物質識別情報を、読取装置を用いて読み取ることを特徴とする請求項1又は2記載のドナー等識別方法。
  4. 前記読取装置と情報処理装置とを有線又は無線で接続し、前記読取装置が受信した生体物質識別情報を情報処理装置から出力させることを特徴とする請求項3記載のドナー等識別方法。
  5. 前記読取装置と情報処理装置とを有線又は無線で接続し、前記読取装置が受信した生体物質識別情報と、ドナー及び/又はレシピエント側の被照合手段に格納されたドナー等照合情報とを、前記情報処理装置によって照合することにより前記生体物質に対応するドナー及び/又はレシピエントを識別することを特徴とする請求項3記載のドナー等識別方法。
  6. 前記ドナー等照合情報が、ドナー及び/又はレシピエント個体の特徴を示す情報であることを特徴とする請求項5記載のドナー等識別方法。
  7. 前記情報処理装置に生体物質識別情報とドナー等照合情報とを関連付けて格納し、情報処置装置が受信した生体物質識別情報に対応するドナー等照合情報と受信したドナー等照合情報とを比較して照合することにより前記生体物質に対応するドナー及び/又はレシピエントを識別することを特徴とする請求項5又は6記載のドナー等識別方法。
  8. 前記生体物質識別手段に格納した生体物質識別情報と、前記被照合手段に格納したドナー等照合情報とが同一の内容を有することを特徴とする請求項5又は6記載のドナー等識別方法。
  9. 特定の細胞群や血液等の生体物質を包含する容器内に生体物質と共存させるように混合させるものであり、生体物質を識別する情報たる生体物質識別情報を格納する生体物質識別情報格納部と、この生体物質識別情報を発信する発信部とを具備することを特徴とする生体物質識別手段。
  10. 耐水性を有することを特徴とする請求項記載の生体物質識別手段。
  11. フィルタを用いてろ過することにより前記生体物質と分離可能な大きさを有することを特徴とする請求項又は10記載の生体物質識別手段。
  12. ピペット又は注射器により前記生体物質と混合したまま吸い取り可能な大きさを有することを特徴とする請求項10、又は11記載の生体物質識別手段。
  13. 表面に生体物質の接着を防止する処理が施してあることを特徴とする請求項1011、又は12記載の生体物質識別手段。
  14. 比重が目的の前記生体物質と略同一であることを特徴とする請求項101112、又は13記載の生体物質識別手段。
  15. 電磁波を受信して電力に変換する受信部を具備し、この電力が前記発信部の動力源であることを特徴とする請求項10111213、又は14記載の生体物質識別手段。
  16. 生体物質識別情報を書き込み可能に構成したことを特徴とする請求項1011121314、又は15記載の生体物質識別手段。
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