JP3965731B2 - ホイップクリーム用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイップクリーム用組成物と、生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と混合してホイップしたホイップクリームに関するものであり、更に詳しくは生クリームの持つ優れた風味、コク味を増幅させ、かつ生クリームの物性的欠点を解決し、トータルの商品価値を高めたホイップクリームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ホイップ用クリームは、植物油脂を主体とし、バター、調整乳脂等の乳脂肪を配合したコンパウンドタイプのものが主流であり、乳脂肪の一部を生クリームで補った製品が一部存在する程度であったが、最近は食生活の多様化、本物指向への回帰等により生クリームを見直す傾向にある。
【0003】
しかし、牛乳から遠心分離により得られる乳脂肪35〜47重量%の生クリームは、ホイップ後のシマリ現象が強く、大量に洋菓子を生産するには不向きなこと、ケーキにデコレーションした時、表面が乾燥や黄変しやすいこと、また口どけがすぐに低下することなど、商品価値が低下する欠点を持っている。
一方、生クリームは風味、コク味の点でこれに勝る美味なホイップクリームはないといっても過言でないのが実情である。
【0004】
このため、洋菓子メーカーでは生クリームのおいしさをだそうと植物性油脂を主体とし、乳脂を適度に配合したコンパウンドタイプ、もしくは、植物性油脂のホイップ用クリームを風味、作業性、保存性、コスト等を考慮して適度に混合して使用している。
しかし、現在のコンパウンドタイプや植物性油脂のホイップ用クリームは、物性コントロールのため、多量のリン酸塩、乳化剤、ガム類を使用しているので、いくらおいしい生クリームと混合ホイップしても、また仮に物性面の改善に効果があったとしても、風味、コク味は思ったほど良くならない。即ち、コンパウンドタイプや植物性油脂のホイップクリームに含まれる上記の添加剤の味、例えば、嫌み、苦み、糊感となり、せっかくの生クリームの風味、コク味を消失させたり、生クリームの味を混合ホイップしたコンパウンドタイプや植物性油脂のホイップクリームの味に変化させてしまうからである。
【0005】
そこで、特開平5−328928では、SUSトリグリセライドとラウリン系油脂を混合したクリーム用油脂を使用した乳化物を生クリーム等の乳脂含有乳化物と併用して上述の課題解決を計ろうとしているが、生クリームの物性を変えるための手段がかえって生クリームの風味、コク味を阻害し、一般のコンパウンドタイプのホイップ用クリームと変わらないものであった。
【0006】
上述の様に、生クリームの持つ優れた風味、コク味を損なうことなく、むしろ風味、コク味を増幅させトータルの商品性を高めることが出来る生クリーム混合用のホイップクリーム用組成物はなかった。本発明は、生クリームにホイップクリーム用組成物を混合し、ホイップする時、生クリームのシマリ、黄変、乾燥、口どけ等、物性面の改良がなされても、生クリームの風味、コク味はホイップクリーム用組成物が多くなるにつれて薄くなり生クリーム本来の味を消失させてしまうという問題点を解決し、生クリームにホイップクリーム用組成物を添加し、物性はもちろん、生クリームの持つ優れた風味、コク味を損なうことなく、増幅させるホイップクリーム用組成物、及びあらかじめ生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と上記のホイップクリーム用組成物を混合してなるホイップクリームを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく生クリームとホイップクリーム用組成物の起泡化時間について鋭意研究の結果、起泡化時間の有意に長いホイップクリーム用組成物と生クリームとを混合ホイップした場合、明らかに生クリームの風味、コク味が消失することを見いだした。つまり、ホイップクリーム用組成物の乳化が、ホイップ中に破壊されて起泡化する間に生クリームの乳化が完全に破壊され、生クリームでなくバターに変化してしまうため、かえって味の薄い、コク味のないものになるとの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1は、生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と、油脂の上昇融点が28℃以下であり、かつ、ラウリン系油脂を油脂中で70重量%以上含有し、起泡時間が、前記生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物の起泡化時間と同等又はそれより短いホイップクリーム用水中油型起泡性乳化油脂組成物を混合したホイップ用クリームを、前記生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物の起泡化時間より短い時間で混合ホイップすることを特徴とするホイップクリームの製造方法に関するものである。
【0009】
好ましい実施態様としては、前記ホイップクリーム用水中油型起泡性乳化組成物が、乳固形分として乳脂肪球皮膜蛋白質を0.1重量%以上、かつ乳清ミネラルを0.1重量%以上含有する。また、別の好ましい実施態様としては、前記ホイップ用クリームが、前記ホイップクリーム用水中油型起泡性乳化油脂組成物を、乳化、滅菌、冷却後、別に滅菌、冷却した生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と、混合したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のホイップクリーム用組成物とは、通常のコンパウンドタイプや植物性油脂のホイップクリームと同様に、油脂、乳固形分、乳化剤、香料、水等からなる水中油型の起泡性乳化油脂組成物のことであり、以下に内容を詳細に説明する。
【0011】
油脂は、組成物中25〜40重量%含有するが、その油脂の上昇融点が28℃以下であり、かつラウリン系油脂を70重量%以上含有するものである。ここでいう上昇融点とは、ガラスキャピラリーに油脂を充填後、固化させ、一定温度で上昇させた時の融解温度のことを言うが、測定法としては、基準油脂分析試験法(I)(1996年版「日本油化学会」)に準じて測定できる。
【0012】
油脂の融点が、28℃を越えると、生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と混合ホイップした時、その混合比率によっては、起泡化したクリームがダレやすいという不都合があった。
またラウリン系油脂が70重量%未満では、口どけが低下する傾向にあり、不都合であった。ラウリン系油脂として、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油、エステル交換油等を例示できる。一方、ラウリン系以外の油脂としては、乳脂、パーム油、ナタネ油、コーン油、サフラワー油、綿実油等、一般的な植物性油脂や、動物性油脂であれば何ら制限はないが、特開平5−328928に記載されているようなトリグリセライド組成の単調な油脂は好ましくなかった。
【0013】
さらに本発明のホイップクリーム用組成物は、組成物中4〜7重量%の無脂乳固形分を含有するが、この中に乳脂肪球皮膜蛋白質及び乳清ミネラルを含む。乳脂肪球被膜蛋白質とは、牛乳中の脂肪球を覆っている膜のことであり、主に脂質と蛋白質から成る生体膜様の物質のことである。一般に、牛乳100g当たり18〜54mg含まれるとされている。乳脂肪皮膜蛋白質の供給源としては、バターミルク、バターミルクパウダー、バターセーラム、バターセーラムパウダー、全粉乳、牛乳、生クリーム、バター等が例示できるが、その量が0.1重量%以上含有するのが好ましい。0.1%未満では、生クリームと混合してホイップした時、風味の増強に効果が小さくなりがちである。
【0014】
一方、乳清ミネラルとは、牛乳より得られるホエーからラクトアルブミン等のホエー蛋白質を分離した残査を精製することにより得られる塩であり、20重量%前後の塩類を含む粉体が好ましい。また上記の乳清ミネラルを0.1重量%以上含有するのが好ましい。0.1%未満では、味がうすくなりがちである。
乳清ミネラルは、一般的に調味料として用いられたりするが、乳脂肪球皮膜蛋白質と乳清ミネラルを一定以上含むホイップクリーム用組成物と生クリームを混合ホイップした時、生クリームの風味、コク味を増幅させる効果があった。
【0015】
本発明は、上記の成分以外に、乳化剤としてレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を組成物中に0.3〜0.5重量%使用できるほか、香料、セルロース、リン酸塩等、一般の起泡性水中油型乳化油脂組成物に添加される原料を生クリームの風味、コク味を損なわない範囲であれは何ら問題なく使用できる。
【0016】
また、本発明に用いる生クリームとしては、牛乳より遠心分離等によりクリーム部を濃縮した乳脂肪40〜47重量%、無脂乳固形分5重量%前後のクリームであり、85℃、15秒程度のHTST殺菌から140℃前後のUHT殺菌もしくは滅菌をおこなった後、ホモジナイザーによる均質化、冷却したものである。
本発明に用いる生クリーム含有乳脂組成物とは、生クリームをベースにして生クリームの原液の可塑化現象等を防止する目的で少量の乳化剤、リン酸塩を添加したものや、生クリームの一部をバターオイル、乳固形分、乳化剤、塩類等により置換し、上記の殺菌、滅菌、均質化、冷却を行い調製したものでもよいが、生クリームの乳脂置換率が、50%を越えると生クリーム自身の風味、コク味が減少する傾向にあるため、生クリームの乳脂置換率が50%未満であることが好ましい。
【0017】
これらの生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物は、泡立て器具、例えば、ケンウッドミキサー、カントーミキサー、アイコー社等のオープンタイプのミキサーにて、攪拌して起泡化することによりホイップドクリームに加工される。
本発明でいう起泡化時間とは、クリームを原液の状態から最適な状態、すなわちナッペ、トッピング使用できうる硬さのクリームまで持っていくのに要する攪拌時間をいう。この起泡化時間が、生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と同等か、もしくは短いことを特徴とするホイップクリーム用組成物に関するものであり、ここでいう起泡化時間とは、生クリーム、生クリーム含有乳脂組成物、又はホイップクリーム用組成物をそれぞれの単独でホイップしたときの時間をいう。
【0018】
前記ホイップクリーム用組成物の製造方法としては、油脂に溶解しやすい乳化剤を油相部に溶解させ、一方水に溶解させた乳脂肪球皮膜蛋白質等を含む乳固形分や乳製品、乳清ミネラル、その他乳化剤等から成る水相部を混合、乳化させた後、公知方法により殺菌又は滅菌を行い、ホモジナイザー等による均質化、冷却、エージングしてホイップクリーム用組成物を製造できる。
【0019】
本発明のホイップ用クリームとは、本発明のホイップクリーム用組成物を乳化、滅菌、冷却後、別に滅菌、冷却した生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と、混合したものである。
前記ホイップ用クリームの製造方法としては、本発明のホイップクリーム用組成物と生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物との混合は、ホイップする直前にホイップ用ボール、連続ミキサーのタンクで行ってもよいし、本発明のホイップクリーム用組成物とは別に、同様の殺菌、滅菌方法を行って、冷却した生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物を無菌タンクにて混合してホイップ用クリームとすることができる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお 以下の記載において、「%」とあるのは、特に断らない限り「重量%」を意味する。
実施例1
硬化ヤシ油(融点28℃)25%、硬化パーム核油(融点36℃)3%、コーン油2%、硬化パーム油(融点30℃)5%から成る上昇融点27.6℃の油脂部にレシチン0.2%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)0.15%を添加し、65℃で溶解して油相部を作成した。一方、水57.95%にバターミルクパウダー6%、乳清ミネラル0.2%、結晶セルロース0.5%、ショ糖脂肪酸エステル0.15%を60℃にて溶解した水相部を作成した。このときの乳脂肪球皮膜蛋白質含量は、0.18%であった。
【0021】
この油相部と水相部を20分間予備乳化を行った後、UHT滅菌機にて142℃で3秒間滅菌処理した。その後、70kg/cm2の圧力で均質化処理をした後、冷却器にて10℃まで冷却して容器に充填し、ホイップクリーム用組成物を作成した。
このホイップクリーム用組成物を20コートミキサー(関東ミキサー株式会社製)にてホイップしたところ、起泡化時間は4分35秒であった。更に、同条件での起泡化時間が4分45秒の生クリームと1:1の割合にて同条件でホイップしたところ4分38秒で起泡化してトッピング性のすこぶる良好なホイップ用クリームを得た。このホイップ用クリームは、口どけが非常に軽く、生クリーム本来のコク味、風味を強く感じるまれにみる美味なものであった。このホイップ用クリームと市販の乳脂40%純生クリームを10人のパネラーにより比較パネルテストしたところ、半数以上の人が本発明のホイップ用クリームの方が美味しいとの結果を得た。また、ケーキに仕上げて48時間後を比較したところ、クリームの黄変、乾燥、口どけいずれも本発明のホイップ用クリームの方が勝っていた。
実施例2
実施例1のうち、油相部のグリセリン脂肪酸エステル0.15%を0.22%とした以外は全く同じ方法にてホイップクリーム用組成物を得た。このホイップクリーム用組成物の起泡化時間を実施例1と同様にして調べたところ、8分25秒であった。更に、実施例1と同様にして生クリームと混合ホイップしたところ6分02秒で起泡化したが、実施例1のホイップ用クリームと比べると、やや水っぽく、生クリームの風味に劣るクリームであった。
比較例1
実施例1のうち硬化ヤシ油(融点28℃)10%、硬化パーム核油(融点36℃)18%、コーン油2%、硬化パーム油(融点30℃)5%から成る上昇融点31.5℃の油脂部に、レシチン0.3%を添加した油相部を用いる以外は、全て実施例1と同様の方法によりホイップクリーム用組成物を得た。このホイップクリーム用組成物の起泡化時間は、4分45秒であったが、実施例1と同様にして生クリームと混合ホイップしたところ、口どけが悪く、乳のおいしさに欠けるクリームであった。
実施例3
実施例1のうち、バターミルクパウダーを全粉乳に同量置き換えた以外は、全く同様に操作してホイップクリーム用組成物を作成した。このホイップクリーム用組成物の乳脂肪球皮膜蛋白質の含量は、0.03%であった。このホイップクリーム用組成物の起泡化時間は4分20秒であった。さらに実施例1と同様にして生クリームと混合ホイップすると4分23秒で起泡化したが、実施例1のホイップ用クリームと比べると、やや乳のコク味、風味に欠けるクリームであった。
実施例4
実施例1のうち、硬化ヤシ油をパーム核油に同量置き換えた以外は、全く同様に操作してホイップクリーム用組成物を作成した。このホイップクリーム用組成物を実施例1と同様に起泡化したところ4分10秒で起泡化し、さらに実施例1と同様にして生クリームと混合ホイップすると4分23秒で起泡化し、実施例1と同様な乳のコク味、風味にすぐれたホイップ用クリームであった。
実施例5
実施例1にて作成したホイップクリーム用組成物1000kgを無菌タンクにホールドしておく一方、60℃に加温した生クリーム1000kgにヘキサメタリン酸塩0.8kgを添加溶解後、UHT殺菌機にて142℃で3秒間滅菌した後、均質化器で10kg/cm2にて均質化し、10℃まで冷却したものを先のホイップクリーム用組成物をホールドした無菌タンクにフィードして撹拌機により均一に混合して容器に充填した。このホイップ用クリームを起泡化したところ、4分28秒にて起泡化し、実施例1のホイップ用クリームと同じ風味、コク味を有するクリームとなった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、生クリームに、本発明のホイップクリーム用組成物を生クリームの起泡化時間より短い時間で混合ホイップすることにより、生クリーム本来の優れた、風味、コク味を全く損なわないばかりか、そのコク味、風味を増強でき、生クリームの欠点であるホイップ時のシマリ、保存時の口どけの低下、黄変、乾燥を防止したホイップクリームを提供することができる。
Claims (3)
- 生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と、油脂の上昇融点が28℃以下であり、かつ、ラウリン系油脂を油脂中で70重量%以上含有し、起泡時間が、前記生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物の起泡化時間と同等又はそれより短いホイップクリーム用水中油型起泡性乳化油脂組成物を混合したホイップ用クリームを、前記生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物の起泡化時間より短い時間で混合ホイップすることを特徴とするホイップクリームの製造方法。
- 前記ホイップクリーム用水中油型起泡性乳化組成物が、乳固形分として乳脂肪球皮膜蛋白質を0.1重量%以上、かつ乳清ミネラルを0.1重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載のホイップクリームの製造方法。
- 前記ホイップ用クリームが、前記ホイップクリーム用水中油型起泡性乳化油脂組成物を、乳化、滅菌、冷却後、別に滅菌、冷却した生クリーム又は生クリーム含有乳脂組成物と、混合したものである請求項1又は2に記載のホイップクリームの製造方法。
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