JP3945024B2 - 2サイクルエンジン油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温清浄性に優れる2サイクルエンジン油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
2サイクルエンジンは、オートバイを始め、スノーモービル、船外機、発電機、ポンプ、チェーンソー、草刈り機など様々なところで使用されている。近年、2サイクルエンジンの高性能化に伴いその潤滑条件は益々厳しくなっており、使用される2サイクルエンジン油に対する潤滑性、清浄性などの要求もより高まってきている。
【0003】
従来より、2サイクルエンジン油には、ピストンやリングの摩耗、スカッフィングの抑制など潤滑性の面でブライトストックのような高粘度の鉱油、ポリブテン、或いは油性効果のある動植物油などの不飽和脂肪酸エステル類を単独又は混合して使用してきた。このうちポリブテンは、高粘度であるにもかかわらず鉱油に比べ熱分解しやすいため、エンジン内で完全に燃焼し、清浄性が良好である。
しかしながら、高粘度の鉱油やエステル類を使用した場合、ピストン部分及び燃焼室におけるデポジット(堆積物)が多くなるため清浄性が劣り、始動不良、焼き付き、プラグ失火、エンジン出力の低下などが問題となる。
【0004】
この清浄性不良の改善のために、通常、アルケニルコハク酸イミドなどの無灰型分散剤、及びカルシウムスルフォネートなどの金属系清浄剤が添加されるが、より厳しい高温条件においてはその効果は十分なものではない。一方で、2サイクルエンジン油が燃焼室で燃料とともに燃えるという特徴のため、清浄性改善の反面、金属系清浄剤はデポジット生成の原因となっている。そのため、潤滑油の硫酸灰分の低減、即ち、低灰化のために塩基性のより低い金属系清浄剤の使用が望まれている。更に最近では、2サイクルエンジン油規格の国際化に伴い、金属系清浄剤の添加量自体を低減するという傾向がみられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、清浄性に優れた2サイクルエンジン油組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、エポキシ化合物が2サイクルエンジン油の清浄性向上に用いられる無灰型分散剤及び金属系清浄剤に比べ同等又はそれ以上の性能を有することを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明に係る2サイクルエンジン油は、鉱油、動植物油及び/又は合成油からなる1種又は2種以上の基油に対し、エポキシ化合物を配合してなることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
鉱油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油などが例示され、通常は100℃における動粘度が1.5〜40mm/sの範囲にあるものが推奨される。
【0009】
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油などが例示される。
【0010】
合成油としては、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどの合成炭化水素油及びフィッシャートロプッシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油のほか、有機酸エステル、ポリエーテルなどが挙げられる。
【0011】
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンなど)の重合体又は共重合体が例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜40mm/s、粘度指数が100以上の化合物が推奨され、中でも100℃における動粘度が3〜30mm/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
【0012】
ポリブテンとしては、イソブチレンの重合物やイソブチレンとノルマルブチレンとの共重合物が例示され、一般に100℃の動粘度が2〜6000mm/sの広範囲のものが推奨される。
【0013】
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼンなどが例示される。
【0014】
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレンなどが例示される。
【0015】
有機酸エステルとしては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの炭素数10〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのモノエステル類;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン−2酸などの炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのジエステル類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸若しくはそれらの酸無水物と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのフルエステル;シクロヘキサンジカルボン酸若しくはその酸無水物と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのジエステル;ダイマー酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルなどの脂環式多価カルボン酸エステル;及びネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールと炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステル若しくは部分エステルなどが例示される。
【0016】
ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、ポリエステルエーテル、ポリフェニルエーテルなどが例示され、一般に100℃の動粘度が2〜4000mm/sの広範囲のものが挙げられる。
【0017】
本発明に係るエポキシ化合物は、分子内に1個以上のオキシラン環を有する化合物であり、例えば、エポキシ化アルカン及びその誘導体、エポキシ化シクロアルカン及びその誘導体、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化油脂などが挙げられる。
【0018】
エポキシ化アルカンとしては、炭素数10〜1000の直鎖状若しくは分岐鎖状のエポキシ化アルキル鎖を有する末端エポキシ化アルカン、内部エポキシ化アルカンが例示される。具体例としては、炭素数2〜30のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセンなど)の1種又は2種以上のモノマー若しくはオリゴマーから誘導された末端オレフィン及び内部オレフィンのエポキシ化合物が挙げられる。また、内部エポキシ化アルカンは、上記α−オレフィン若しくはオリゴマーから誘導された末端オレフィンを異性化することによって得られる内部オレフィンをエポキシ化することによっても調製される。
【0019】
エポキシ化アルカン誘導体としては、炭素数3〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキルグリシジルエーテル及びアルキルグリシジルエステル、芳香族グリシジルエーテル、アルキル化芳香族グリシジルエーテル、芳香族グリシジルエステル、アルキル化芳香族グリシジルエステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが例示される。
【0020】
エポキシ化シクロアルカンとしては、炭素数3〜12のエポキシ化シクロアルカンが例示され、より具体的にはエポキシ化シクロプロパン、エポキシ化シクロブタン、エポキシ化シクロペンタン、エポキシ化ジシクロペンタン、エポキシ化シクロヘキサン、エポキシ化シクロヘプタン、エポキシ化シクロオクタン、エポキシ化シクロノナン及びエポキシ化シクロデカン、エポキシ化シクロドデカン、エポキシ化ノルボルナンが例示される。
【0021】
エポキシ化シクロアルカン誘導体としては、脂環部分にアルキル基又はアルケニル基が1個以上導入されたアルキル化又はアルケニル化エポキシ化シクロアルカン(I)、脂環部分に脂肪族若しくは芳香族のアルコキシ基が1個以上導入されたエーテル化合物(II)、脂環部分にカルボキシル基が1個以上導入されたエステル化合物(III)、脂環部分にカルボン酸残基が1個以上導入されたエステル化合物(IV)、脂環部分にイミド基が1個以上導入されたイミド化合物(V)及びビスイミド化合物(VI)、脂環部分にアミド基が1個以上導入されたアミド化合物(VII)などが挙げられ、(I)〜(VII)に対し、各々一般式(3)〜(9)の化合物が例示される。
【0022】
Figure 0003945024
[式中、Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。aは1〜6を示す。]
【0023】
Figure 0003945024
[式中、Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基又はアリール基を表す。aは1〜6を示す。bは0又は1〜6を示す。]
【0024】
Figure 0003945024
[式中、Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。Rは炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基又は炭素数3〜12のエポキシ化シクロアルキル基を表す。aは1〜6を示す。bは0又は1〜6を示す。]
【0025】
Figure 0003945024
[式中、Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。Rは炭素数10〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸残基、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸残基、芳香族多価カルボン酸残基又は脂環族ジカルボン酸残基を表す。aは1〜6を示す。bは0又は1〜6を示す。]
【0026】
Figure 0003945024
[式中、Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。Rは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。bは0又は1〜6を示す。]
【0027】
Figure 0003945024
[式中、R10は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。R11は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は基−(CHCHNH)d−CHCH−(d=1〜9)を表す。]
【0028】
Figure 0003945024
[式中、R12は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。R13は水素、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、又は基−(CHCHNH)c−H(c=1〜10)を表す。bは0又は1〜6を示す。]
【0029】
又、エポキシ化シクロアルカン誘導体として、リモネン、リムエン、ノルボルネンなどの脂環式テルペン類の環内不飽和結合をエポキシ化した化合物、アビエチン酸、レボピマル酸、パラストリン酸などのロジン酸、或いはダイマー酸などの不飽和脂環式カルボン酸のエステル誘導体、アミド誘導体などの環内不飽和結合をエポキシ化した化合物なども例示される。
【0030】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、炭素数12〜22の不飽和脂肪酸と炭素数3〜22の飽和若しくは不飽和の一価アルコールからなるエステルのエポキシ化物が例示され、例えば、エポキシ化オレイン酸ブチル、エポキシ化オレイン酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0031】
エポキシ化油脂としては、動植物油のエポキシ化物が例示され、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などが挙げられる。
【0032】
本発明に係るエポキシ化合物は、その酸価が1mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下、更に好ましくは0.2mgKOH/g以下であることが望ましい。酸価が1mgKOH/gより高いときは良好な高温清浄性が得られにくい。
【0033】
本発明に係るエポキシ化合物の中でも、特にエポキシ化アルカン及びエポキシ化シクロアルカン誘導体が好ましく、中でも高温清浄性に優れた性能を示す化合物として、炭素数10〜32の直鎖状若しくは分岐鎖状の末端エポキシ化アルカン又は内部エポキシ化アルカン、一般式(1)
Figure 0003945024
[式中、Aは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。Bは基−COORを表す。Rは炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基、炭素数3〜22のエポキシ化アルキル基又は炭素数3〜12のエポキシ化シクロアルキル基を表す。h=0〜6、i=1〜6、m=1〜10を示す。]
で表されるエポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステル及び一般式(2)
Figure 0003945024
[式中、Dはカルボン酸残基、Eは炭素数1〜5のアルキレン基、Fは炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基を表す。j=0〜6、k=1〜4、n=1〜10を表す。]
で表されるカルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上のエポキシ化エステルが推奨される。
【0034】
本発明に係るエポキシ化アルカンのなかでも高温清浄性に特に優れた性能を示すものとして炭素数12〜32のα−オレフィンのエポキシ化物が挙げられ、中でもエポキシ化ドデカン、エポキシ化テトラデカン、エポキシ化ヘキサデカン、エポキシ化オクタデカン、エポキシ化イコサンなどが好ましい。
【0035】
エポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルは、一般式(1)で表される1〜6個のエステル基で置換されたエポキシ化シクロアルキル環をもつ化合物である。
【0036】
エポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルは、例えば、相当するシクロアルケンカルボン酸とアルコールから調製したシクロアルケンカルボン酸エステルを過酸化物の存在下、エポキシ化することによって調製される化合物である。
【0037】
エポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルの酸成分としては、エポキシ化シクロプロパン、エポキシ化シクロブタン、エポキシ化シクロペンタン、エポキシ化ジシクロペンタン、エポキシ化シクロヘキサン、エポキシ化シクロヘプタン、エポキシ化シクロオクタン、エポキシ化シクロノナン、エポキシ化シクロデカン、エポキシ化シクロドデカン及びエポキシ化ノルボルナンなどのエポキシ化シクロアルカンに1〜6個のカルボキシル基を導入してなるモノ及びポリカルボン酸のほか、これらの酸の脂環部分にアルキル基(例えば、炭素数1〜18)、又はアルケニル基(例えば、炭素数3〜18)が導入された誘導体などが例示される。
【0038】
エポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルのアルコール成分としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の不飽和アルコール、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のエポキシ化不飽和アルコール及び炭素数3〜12のエポキシ化シクロアルキルアルコールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の一価アルコールが挙げられる。
【0039】
直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプタノール、n−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、n−デカノール、イソデカノール、n−ウンデカノール、イソウンデカノール、n−ドデカノール、イソドデカノール、n−トリデカノール、イソトリデカノール、n−テトラデカノール、イソテトラデカノール、n−ペンタデカノール、イソペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、n−ヘプタデカノール、イソヘプタデカノール、n−オクタデカノール、イソオクタデカノールなどが例示される。「オキソアルコール」として工業的に得られる一価アルコールには、直鎖成分と分岐成分の混合物或いは炭素数の異なる複雑な混合物もあり、これらを使用することもできる。
【0040】
不飽和アルコールとしては、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコール、2−デセン−1−オール、2−ウンデセン−1−オール、2−テトラデセン−1−オール、2−ペンタデセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1−オール、2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタデセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、11−ドデセン−1−オール、12−トリデセン−1−オール及び15−ヘキサデセン−1−オールなどが例示され、エポキシ化不飽和アルコールとしては、上記不飽和アルコールをエポキシ化したものが例示される。
【0041】
エポキシ化シクロアルキルアルコールとしては、エポキシ化シクロプロパン、エポキシ化シクロブタン、エポキシ化シクロペンタン、エポキシ化ジシクロペンタン、エポキシ化シクロヘキサン、エポキシ化シクロヘプタン、エポキシ化シクロオクタン、エポキシ化シクロノナン、エポキシ化シクロデカン、エポキシ化シクロドデカン及びエポキシ化ノルボルナンなどのエポキシ化シクロアルキル基を有するアルコールの他、これらのアルコールの脂環部分にアルキル基(例えば、炭素数1〜18)、又はアルケニル基(例えば、炭素数3〜18)が導入された誘導体などが例示される。
【0042】
カルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルは、一般式(2)で表されるカルボン酸エステルのアルコール残基にエポキシ化シクロアルキル構造を有する化合物である。
【0043】
カルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルは、例えば、相当するカルボン酸とシクロアルケニルアルコールから調製したカルボン酸シクロアルケニルエステルを過酸化物の存在下、エポキシ化することによって調製される化合物である。
【0044】
カルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルの酸成分としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの炭素数10〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン−2酸などの炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、エポキシ化シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが例示される。
【0045】
カルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルのアルコール成分としては、エポキシ化シクロプロパン、エポキシ化シクロブタン、エポキシ化シクロペンタン、エポキシ化ジシクロペンタン、エポキシ化シクロヘキサン、エポキシ化シクロヘプタン、エポキシ化シクロオクタン、エポキシ化シクロノナン、エポキシ化シクロデカン、エポキシ化シクロドデカン及びエポキシ化ノルボルナンなどのエポキシ化シクロアルキル基を有するアルコールの他、これらのアルコールの脂環部分にアルキル基(例えば、炭素数1〜18)、又はアルケニル基(例えば、3〜18)が導入された誘導体などが例示される。
【0046】
上記エポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステル及びカルボン酸エポキシ化シクロアルキルエステルにおいて、分子構造の脂環部分に導入されるエポキシ環の位置はエステル基に対して限定されるものではない。例えば、エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルとしては、1,2−エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、2,3−エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、3,4−エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル、4,5−エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルのいずれをも用いることができる。
【0047】
又、本発明に係るエポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルのなかでも、高温清浄性に特に優れた性能を示すのは、エポキシ化シクロヘキサンジカルボン酸エステルであり、その中でも、ジ(n−ヘキシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジ(n−オクチル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジ(n−デシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)−4,5−エポキシ−3−メチル−ヘキサヒドロフタレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)−4,5−エポキシ−4−メチル−ヘキサヒドロフタレート、ジウンデシル−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジオレイル−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート、ジエポキシステアリル−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレートなどが好ましい。
【0048】
本発明に係る2サイクルエンジン油組成物中におけるエポキシ化合物の配合量としては、0.1〜50重量%が推奨され、より好ましくは0.1〜20重量%である。0.1重量%未満では望ましい清浄性効果が得られず、50重量%を越えて配合したとしても、清浄性において大きな向上が見られず、コストアップにつながる面から好ましくない。
【0049】
本発明に係る2サイクルエンジン油組成物には、その性能を向上させるために従来より公知の各種添加剤の1種又は2種以上を適宜添加することが可能である。そのような添加剤として、無灰型分散剤、金属系清浄剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤などが挙げられる。又、必要に応じて、耐摩耗剤・極圧剤、油性剤・摩擦調整剤、酸化防止剤、腐食防止剤などを添加しても良い。通常、好ましく適用される添加量(基油及びエポキシ化合物の合計量に対する添加剤の重量%)を上記各添加剤の具体例と共に示す。
【0050】
無灰型分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステルのほかこれらをホウ素化合物で処理した誘導体などが例示され、その添加量としては2〜10重量%が挙げられる。
【0051】
金属系清浄剤としては、金属スルホネート、過塩基性金属スルホネート、金属フェネート、過塩基性金属フェネート、金属ホスホネート、サリシレート、カルボキシレートなどが例示され、その添加量としては2〜10重量%が挙げられる。
【0052】
流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、塩素化パラフィンとナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、ポリブテン、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテートなどが例示され、その添加量としては0.1〜1重量%が挙げられる。
【0053】
防錆剤としては、スルフォン酸塩系、カルボン酸系、有機アミン石けん系、ソルビタン部分エステル系の化合物が例示され、その添加量としては0.05〜3重量%が挙げられる。
【0054】
消泡剤としては、ポリジメチルシリコーンなどのシリコーン系化合物が例示され、その添加量としては1〜100ppmが挙げられる。
【0055】
耐摩耗剤・極圧剤としては、オレフィンポリサルファイド、硫化油脂、ジアルキルポリサルファイドなどの有機硫黄系、塩素化パラフィン、アルキル及びアリールりん酸エステル、アルキル及びアリール亜りん酸エステルなどの有機リン系、ジアルキルジチオリン酸亜鉛系、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛系、長鎖脂肪酸系の化合物が例示され、その添加量としては0.05〜10重量%が挙げられる。
【0056】
油性剤・摩擦調整剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどのアルコール類、オレイルアミンなどのアミン類、モリブデンジチオカーバメートなどの有機モリブデン類が例示され、その添加量としては0.1〜5.0重量%が挙げられる。
【0057】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤、N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミン、パラフェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤、ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスフォロチオネート、アルキル化トリフェニルホスフォロチオネートなどのリン系酸化防止剤、フェノチアジン、硫化油脂、ジベンジルジサルファイド、ジセチルサルファイドなどの硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
【0058】
腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール、2,5−ビス(n−ドデシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール系の化合物が例示され、その添加量としては0.01〜0.4重量%が挙げられる。
【0059】
又、上記の添加剤以外にも燃料との混合性を向上させるために、灯油、軽油などの軽質炭化水素を配合することも可能である。
【0060】
本発明に係る2サイクルエンジン油組成物は、通常、燃料(ガソリン)に対し0.1〜10重量%の割合で希釈して使用される。
【0061】
本発明に係る2サイクルエンジン油組成物は、オートバイ、船外機、スノーモービル、レジャーボート、発電機、チェーンソー、草刈り機などの2サイクルエンジン用の潤滑油として利用することができる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例を揚げて本発明を詳しく説明する。尚、各例における潤滑油の高温清浄性は、以下の方法により評価した。
【0063】
高温清浄性
ホットチューブテスタ(コマツエンジニアリング社製)を用いて評価した。ガラスチューブ内を280℃又は290℃に保ち、試料油0.31mL/時間、空気10mL/分の割合で16時間注入する。試験後にガラスチューブをn−ヘキサンで洗浄し、十分に乾燥させた後、汚れを評点見本と比較しカラー評点(0〜10点満点)として判定する。又、ガラスチューブの重量増加をコーク量(mg)とする。この際、評点の高い程、或いはコーク量の少ない程、清浄性が良好であることを示す。
【0064】
高温清浄性試験に用いた各試料の組成を第1表に示す。表中成分の数値は各々重量%を示す。又、表中成分は以下の通りである。
【0065】
ポリブテン:100℃の動粘度 120mm/s
鉱油:パラフィン系鉱油(500ニュートラル、100℃の動粘度 11mm/s)
エポキシ化合物A:ジ(2−エチルヘキシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート(商品名「サンソサイザー E−PS」、新日本理化社製)
エポキシ化合物B:ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)−4,5−エポキシヘキサヒドロフタレート
エポキシ化合物C:エポキシ化α−オレフィンオリゴマー(炭素数16)(商品名「リカレジン EX−6」、新日本理化社製)
無灰型分散剤:コハク酸イミド系無灰型分散剤(窒素含量=1.2重量%)
金属系清浄剤:カルシウム系金属系清浄剤(全塩基価=35mgKOH/g)
【0066】
実施例1〜6
第1表に示す組成の試料油に対し、280℃における高温清浄性試験を行った。得られた結果を第1表に併記する。
【0067】
比較例1〜2
第1表に示す組成の試料油に対し、280℃における高温清浄性試験を行った。得られた結果を第1表に併記する。
【0068】
Figure 0003945024
【0069】
実施例7〜8
市販の2サイクルエンジン油(ホンダ2サイクルモーターオイル)にエポキシ化合物Aを添加して、280℃及び290℃における高温清浄性試験を行った。
得られた結果を第2表に示す。
【0070】
比較例3
市販の2サイクルエンジン油(ホンダ2サイクルモーターオイル)の280℃及び290℃における高温清浄性試験を行った。得られた結果を第2表に示す。
【0071】
Figure 0003945024
【0072】
【発明の効果】
第1表に示すように、エポキシ化合物は、従来から2サイクルエンジン油基油として使用されている鉱油、ポリブテンに添加した場合、無灰型分散剤及び金属系清浄剤を添加した場合と比べて同等以上の高温清浄性を有することがわかる。又、第2表に示すように無灰型分散剤、金属系清浄剤のほか、その他の添加剤が配合されている市販の2サイクルエンジン油に添加をした場合にも、その高温清浄性を大きく改善することが明らかである。
【0073】
本発明に係る2サイクルエンジン油組成物によれば良好な高温清浄性を得ることが可能である。そのため、従来から添加されている金属系清浄剤の低減による低灰化が可能である。

Claims (2)

  1. 鉱油、動植物油及び/又は合成油からなる1種又は2種以上の基油に対し、エポキシ化合物を配合してなることを特徴とする2サイクルエンジン油組成物であって、当該エポキシ化合物が、炭素数2〜30のα−オレフィンの1種又は2種以上のモノマー若しくはオリゴマーから誘導された末端オレフィン及び内部オレフィンのエポキシ化合物、並びに一般式(III)に記載されたエポキシ化シクロアルカンカルボン酸エステルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上である2サイクルエンジン油組成物。
    Figure 0003945024
    [式中、R は炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又は炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基を表す。R は炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基又は炭素数3〜12のエポキシ化シクロアルキル基を表す。aは1〜6を示す。bは0又は1〜6を示す。]
  2. エポキシ化合物の配合量が、0.1〜50重量%である請求項1に記載の2サイクルエンジン油組成物。
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