JP3821087B2 - 撮像レンズ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は撮像レンズ装置に関するものであり、特に被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで撮像素子により電気的な信号として出力する撮像レンズ装置{例えば、デジタルカメラ;ビデオカメラ;デジタルビデオユニット,パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,携帯電話,携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)等に内蔵又は外付けされるカメラの主たる構成要素}、なかでも高変倍で小型のズームレンズ系を備えた撮像レンズ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータ等の普及に伴い、手軽に画像情報をデジタル機器に取り込むことの可能なデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等(以下単に「デジタルカメラ」という。)が個人ユーザーレベルで普及しつつある。このようなデジタルカメラは、今後も画像情報の入力機器として益々普及することが予想される。
【0003】
ところで、デジタルカメラの画質は、一般にCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子の画素数で決定される。現在、一般向けのデジタルカメラは100万画素を超える高画素化がなされており、画質の面で銀塩フィルム用カメラに近づこうとしている。また、一般向けデジタルカメラにおいても画像の変倍、特に画像劣化の少ない光学変倍が望まれているため、近年では高変倍率で高画質かつコンパクトなデジタルカメラ用ズームレンズ系が要求されるようになってきている。しかし、銀塩フィルム用レンズシャッターカメラに搭載されるようなズームレンズ系では、射出瞳位置が像面の近くにあるため、固体撮像素子の前面に設けられているマイクロレンズの集光性能を十分に発揮させることができない。その結果、画像の明るさが画像中央部と画像周辺部とで極端に異なってしまう。また、従来より提案されているデジタルカメラ用ズームレンズ系おいて、その射出瞳位置を像面から離そうとすると、どうしても光学系全体の大型化が避けられなくなる。
【0004】
上記問題点を解消することを目的としたデジタルカメラ用ズームレンズ系が、特許文献1で提案されている。また、レンズ間に挿入したプリズムで光路を折り曲げて光軸方向の小型化を目指したズームレンズ系が、特許文献2で提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−343588号公報
【特許文献2】
特開平8−248318号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1で提案されている負・負・正・正の4群ズームレンズ系は、射出瞳位置が像面から十分に離れているため、上述した問題は生じない。しかし、レンズ枚数の削減が不十分であり、光軸方向の小型化も十分とは言えない。また、特許文献2記載のズームレンズ系では、プラスリードであるために前玉及びプリズムが大きく、小型化も十分ではない。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、高変倍率で高画質を満足する全く新規な小型のズームレンズ系を備えた撮像レンズ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明の撮像レンズ装置は、複数の群から成り群間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズ系と、そのズームレンズ系により形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備えた撮像レンズ装置であって、前記ズームレンズ系が、物体側から順に、反射部材を有する負パワーの第1群と、負パワーの第2群と、正パワーの第3群と、正パワーの第4群とから構成され、前記第1群が物体側から1枚のレンズと反射部材とから構成され、ズーミングにおいて前記第1群が固定であり、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
1.828 ≦f2/f1<6 …(1)
ただし、
f1:第1群の焦点距離、
f2:第2群の焦点距離、
である。
【0009】
第2の発明の撮像レンズ装置は、上記第1の発明の構成において、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする。
2 <| fa1 / fW |< 8 … (3)
ただし、
fa1 :反射部材の反射面より前に位置する全光学要素の合成焦点距離、
fW :広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
【0010】
第3の発明の撮像レンズ装置は、上記第1の発明の構成において、以下の条件式(4)を満足することを特徴とする。
1.0 < D / fW < 3.0 … (4)
ただし、
D :第1群の最も物体側の面から反射部材の反射面までの軸上面間隔、
fW:広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
【0011】
第4の発明の撮像レンズ装置は、上記第1の発明の構成において、広角端から望遠端へのズーミングにおいて、前記第2群が像側に凸の軌跡を描くようにUターン移動し、前記第3群が物体側に単調移動することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施した撮像レンズ装置を、図面を参照しつつ説明する。被写体の映像を光学的に取り込んで電気的な信号として出力する撮像レンズ装置は、被写体の静止画撮影や動画撮影に用いられるカメラ{例えば、デジタルカメラ;ビデオカメラ;デジタルビデオユニット,パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,携帯電話,携帯情報端末(PDA)等に内蔵又は外付けされるカメラ}の主たる構成要素である。その撮像レンズ装置は、例えば図11に示すように、物体(被写体)側から順に、物体の光学像を形成する撮影レンズ系(TL)と、光学的ローパスフィルター等に相当する平行平面板(PL)と、撮影レンズ系(TL)により形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子(SR)と、で構成される。撮影レンズ系(TL)内の光路の途中には平面状の反射面(RL)が配置されており、反射面(RL)の前側と後側には各々少なくとも1枚のレンズが配置されている。この反射面(RL)により、撮影レンズ系(TL)を屈曲光学系として使用するための光路の折り曲げが行われ、その際、光軸(AX)が約90度折り曲げられるようにして光束が反射される。なお反射面(RL)は、プリズム類(直角プリズム等),ミラー類(平面ミラー等)等の反射部材により構成される。
【0015】
後述する各実施の形態では、複数の群から成るズームレンズ系が撮影レンズ系(TL)として用いられ、複数の群が光軸(AX)に沿って移動し、各群の間隔を変化させることにより変倍(すなわちズーミング)が行われる。撮像素子(SR)としては、例えば複数の画素から成るCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の固体撮像素子が用いられ、ズームレンズ系により形成された光学像が撮像素子(SR)により電気的な信号に変換される。
【0016】
またズームレンズ系で形成されるべき光学像は、撮像素子(SR)の画素ピッチにより決定される所定の遮断周波数特性を有する光学的ローパスフィルター{平行平面板(PL)から成る。}を通過することにより、電気的な信号に変換される際に発生するいわゆる折り返しノイズが最小化されるように、空間周波数特性が調整される。光学的ローパスフィルターとしては、例えば所定の結晶軸方向が調整された水晶等を材料とする複屈折型ローパスフィルターや、必要とされる光学的な遮断周波数特性を回折効果により達成する位相型ローパスフィルター等が適用可能である。撮像素子(SR)で生成した信号は、必要に応じて所定のデジタル画像処理や画像圧縮処理等が施されてデジタル映像信号としてメモリー(半導体メモリー,光ディスク等)に記録されたり、場合によってはケーブルを介したり赤外線信号に変換されたりして他の機器に伝送される。
【0017】
なお、図11に示す撮像レンズ装置では、撮影レンズ系(TL)によって拡大側(共役長の長い側)の被写体から縮小側(共役長の短い側)の撮像素子(SR)への縮小投影が行われるが、撮像素子(SR)の代わりに2次元画像を表示する表示素子(例えば液晶表示素子)を用い、撮影レンズ系(TL)を投影レンズ系として使用すれば、縮小側の画像表示面から拡大側のスクリーン面への拡大投影を行う画像投影装置を構成することができる。つまり、以下に説明する各実施の形態のズームレンズ系は、撮影レンズ系(TL)としての使用に限らず、投影レンズ系としても好適に使用することが可能である。
【0018】
図1〜図5は、第1〜第5の実施の形態を構成するズームレンズ系にそれぞれ対応するレンズ構成図であり、広角端(W)でのレンズ配置を光学断面で示している。ただし、第3の実施の形態は本発明の単なる参考例であり、本発明に属さないものである。各レンズ構成図中の矢印mj(j=1,2,...)は、広角端(W)から望遠端(T)へのズーミングにおける第j群(Grj)等の移動をそれぞれ模式的に示している。ただし、第1,第2,第5の実施の形態(図1,図2、図5)では、第1群(Gr1)が固定群、第2群(Gr2)〜第4群(Gr4)が可動群であり{m5は平行平面板(PL)のみのズーム位置固定を示している。}、第3,第4の実施の形態(図3,図4)では、第1群(Gr1)及び第4群(Gr4)が固定群、第2群(Gr2)及び第3群(Gr3)が可動群である。また、各レンズ構成図中、ri(i=1,2,3,...)が付された面は物体側から数えてi番目の面(riに*印が付された面は非球面)であり、di(i=1,2,3,...)が付された軸上面間隔は、物体側から数えてi番目の軸上面間隔のうち、ズーミングにおいて変化する可変間隔である。
【0019】
各実施の形態のズームレンズ系はいずれも、物体側から順に、負のパワーを有する第1群(Gr1)と、負のパワーを有する第2群(Gr2)と、正のパワーを有する第3群(Gr3)と、正のパワーを有する第4群(Gr4)と、から成り、第3群(Gr3)の最も物体側に絞り(ST)を含み、各群間隔を変化させることによりズーミングを行う4群ズームレンズである。そして、CCD等の撮像素子(SR)を備えたカメラ(例えばデジタルカメラ)に用いられるズームレンズ系として、その像側には光学的ローパスフィルター等の光学フィルターや撮像素子(SR)のカバーガラス等に相当する2枚のガラス製平行平面板(PL)が配置されている。その平行平面板(PL)と少なくとも第1群(Gr1)とは、いずれの実施の形態の場合もズーミングにおいて位置固定であり、前述したように第3,第4の実施の形態の場合には第4群(Gr4)も位置固定である。各実施の形態のレンズ構成を更に詳しく以下に説明する。
【0020】
《第1の実施の形態(図1)》
第1の実施の形態では、負・負・正・正の4群ズーム構成において、各群が物体側から順に以下のように構成されている。第1群(Gr1)は、縮小側に凹の負メニスカスレンズと、光軸(AX)を90度曲げるための反射面(RL)を有する直角プリズム(PR)と、で構成されている。第2群(Gr2)は、両凹の負レンズ(両面が非球面)と、物体側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群(Gr3)は、絞り(ST)と、両凸の正レンズ及び両凹の負レンズから成る接合レンズと、物体側に凸の正メニスカスレンズと、物体側に凹の負メニスカスレンズ(両面が非球面)と、で構成されている。第4群(Gr4)は、像側に凸の正メニスカスレンズ(物体側が非球面)で構成されている。
【0021】
《第2の実施の形態(図2)》
第2の実施の形態では、負・負・正・正の4群ズーム構成において、各群が物体側から順に以下のように構成されている。第1群(Gr1)は、縮小側に凹の負メニスカスレンズと、光軸(AX)を90度曲げるための反射面(RL)を有する直角プリズム(PR)と、で構成されている。第2群(Gr2)は、物体側に凸の負メニスカスレンズ(物体側面が非球面)と、物体側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群(Gr3)は、絞り(ST)と、両凸の正レンズと、両凸の正レンズ及び両凹の負レンズから成る接合レンズと、物体側に凸の正メニスカスレンズ(物体側面が非球面)と、で構成されている。第4群(Gr4)は、像側に凸の正メニスカスレンズ(両面が非球面)で構成されている。
【0022】
《第3の実施の形態(図3)》
第3の実施の形態では、負・負・正・正の4群ズーム構成において、各群が物体側から順に以下のように構成されている。第1群(Gr1)は、縮小側に凹の負メニスカスレンズと、光軸(AX)を90度曲げるための反射面(RL)を有する反射ミラー(MR)と、で構成されている。第2群(Gr2)は、像側に凹の負メニスカスレンズ(両面が非球面)と、物体側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群(Gr3)は、絞り(ST)と、両凸の正レンズと(物体側面が非球面)、両凸の正レンズ及び両凹の負レンズから成る接合レンズと、で構成されている。第4群(Gr4)は、像側に凸の正メニスカスレンズ(両面が非球面)で構成されている。
【0023】
《第4の実施の形態(図4)》
第4の実施の形態では、負・負・正・正の4群ズーム構成において、各群が物体側から順に以下のように構成されている。第1群(Gr1)は、縮小側に凹の負メニスカスレンズ(像側面が非球面)と、光軸(AX)を90度曲げるための反射面(RL)を有する反射ミラー(MR)と、で構成されている。第2群(Gr2)は、両凹の負レンズと、物体側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群(Gr3)は、絞り(ST)と、両凸の正レンズと(物体側面が非球面)、両凸の正レンズ及び両凹の負レンズから成る接合レンズと、物体側に凸の負メニスカスレンズ及び像側に凹の正メニスカスレンズから成る接合レンズと、で構成されている。第4群(Gr4)は、像側に凸の正メニスカスレンズ(両面が非球面)で構成されている。
【0024】
《第5の実施の形態(図5)》
第5の実施の形態では、負・負・正・正の4群ズーム構成において、各群が物体側から順に以下のように構成されている。第1群(Gr1)は、縮小側に凹の負メニスカスレンズと、光軸(AX)を90度曲げるための反射面(RL)を有する反射ミラー(MR)と、で構成されている。第2群(Gr2)は、両凹の負レンズ(両面が非球面)と、物体側に凸の正メニスカスレンズと、で構成されている。第3群(Gr3)は、絞り(ST)と、両凸の正レンズ及び像側に凸の負メニスカスレンズから成る接合レンズと、両凸の正レンズと、像側に凹の負メニスカスレンズ(物体側面が非球面)と、で構成されている。第4群(Gr4)は、像側に凸の正メニスカスレンズ(両面が非球面)で構成されている。
【0025】
各実施の形態のように、物体側から順に、負パワーの第1群(Gr1)と、負パワーの第2群(Gr2)と、正パワーの第3群(Gr3)と、正パワーの第4群(Gr4)と、を有するズーム構成を採用すると、第1群(Gr1)及び第2群(Gr2)の負パワーによって、容易にレトロフォーカスタイプを構成することができる。デジタルカメラの撮影レンズ系(TL)では像側へのテレセントリック性が必要条件となるが、負パワーの第1群(Gr1)及び第2群(Gr2)でレトロフォーカスタイプを構成すれば、像面への入射光線を容易にテレセントリックにすることが可能となる。そして、第1群(Gr1)及び第2群(Gr2)よりも像側に絞り(ST)と2つ以上の群(Gr3,Gr4)を配置することは、像側へのテレセントリック性を達成する上で有効である。
【0026】
また各実施の形態のように、ズーミングにおいて第1群(Gr1)を固定とし第1群(Gr1)以外の群の移動によりズーミングを行う構成にすると、ズームレンズ系の全長変化と前玉径の肥大化を抑えることができ、鏡胴構成も容易になる。そして、ズーム位置固定の第1群(Gr1)中に直角プリズム(PR)やミラー(MR)等の反射部材を配置し、その反射面(RL)で光軸(AX)を90度折り曲げれば、ズームレンズ系の入射側での光軸(AX)方向の長さが短くかつ一定になり、従来に比べて更に小型化と高倍率化が達成される。したがって、カメラの見かけ上の薄型化・小型化が達成され、ズーミングや沈胴による厚さの変化が生じないカメラを構成することができる。なお必要に応じて、直角プリズム(PR)や反射ミラー(MR)の代わりに他のプリズムやミラー等を反射部材として用いてもよく、光軸(AX)の折り曲げ角度を90度以外の角度に設定してもよい。また必要に応じて、反射部材の反射面(RL)にパワーを持たせてもよく、反射面(RL)の代わりに屈折面や回折面を用いて光軸(AX)を折り曲げるようにしてもよい。
【0027】
各実施の形態のズームレンズ系のように直角プリズム(PR)等の反射部材で折り曲げ光学系を構成する場合、その光軸(AX)方向の大きさに対し反射部材の光軸(AX)方向の厚みが大きく影響を及ぼしてしまう。このため反射部材を薄型化して光学系全体を小型化する必要があり、それと同時に光学性能や高変倍率等を確保する必要もある。このような観点から、各実施の形態が満足すべき条件式、つまり各実施の形態のようにズーム位置固定の第1群(Gr1)中で光軸(AX)を折り曲げるズームレンズ系において満たすことが望ましい条件式を以下に説明する。なお、以下に説明する個々の条件式を光学構成に応じてそれぞれ単独に満たせば、それに対応する作用・効果を達成することは可能である。もちろん、複数の条件式を同時に満たす方が、光学性能,小型化・高変倍率化,組立等の観点からより望ましいことはいうまでもない。
【0028】
以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
1.828 ≦f2/f1<6 …(1)
ただし、
f1:第1群(Gr1)の焦点距離、
f2:第2群(Gr2)の焦点距離、
である。
【0029】
条件式(1)は、第1群(Gr1)と第2群(Gr2)との焦点距離比について、満たすことが望ましい条件範囲を規定している。条件式(1)の上限を越えると、第1群(Gr1)の焦点距離が小さくなりすぎるため、歪曲収差、特に広角側での負の歪曲収差が著しくなり、良好な光学性能を確保することが困難になる。逆に、条件式(1)の下限を越えると、第1群(Gr1)の焦点距離が大きくなりすぎるため、第1群(Gr1)に入射する光線の収斂作用が弱くなり、第1群(Gr1)のレンズ径の増大を招いてしまう。したがって、コンパクト化という点で好ましくない。
【0030】
以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
1<|f12/fW|<5 …(2)
ただし、
f12:広角端(W)での第1群(Gr1)と第2群(Gr2)との合成焦点距離、
fW:広角端(W)でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
【0031】
条件式(2)は、広角端(W)での第1群(Gr1)と第2群(Gr2)との合成焦点距離について、満たすことが望ましい条件範囲を規定している。条件式(2)の上限を越えると、第1群(Gr1)と第2群(Gr2)との合成焦点距離が大きくなりすぎるので、ズームレンズ系全長が大きくなる。また、第1群(Gr1)と第2群(Gr2)とで収斂するパワーが弱くなるので、レンズの外径が大きくなり、コンパクトなズームレンズ系を得ることが困難になる。逆に、条件式(2)の下限を越えると、第1群(Gr1)と第2群(Gr2)との合成焦点距離が小さくなりすぎるので、広角端(W)において第1群(Gr1)と第2群(Gr2)で発生する負の歪曲収差が大きくなりすぎてしまう。したがって、その補正が困難になるため好ましくない。
【0032】
各実施の形態では、第1群(Gr1)が負レンズ1枚と反射部材(PR,MR)とで構成されている。マイナスリードの負パワーを第1群(Gr1)と第2群(Gr2)とで負担すると、第1群(Gr1)をズーム位置固定にするとともにレンズ枚数を最少にすることが可能となるのである。その結果、レンズ枚数の削減や簡単な鏡胴構成による低コスト化・コンパクト化が達成可能となる。ただし、第1群(Gr1)において反射部材(PR,MR)の反射面(RL)よりも前(すなわち物体側)に位置する全光学要素について、その大きさ,光学性能等のバランスをとる必要がある。それには、第1群(Gr1)が物体側から少なくとも1枚のレンズと反射部材(PR,MR)とを含む構成において、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
2<|fa1/fW|<8 …(3)
ただし、
fa1:反射部材(PR,MR)の反射面(RL)より前に位置する全光学要素の合成焦点距離、
fW:広角端(W)でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
【0033】
条件式(3)は、反射面(RL)より前に位置する全光学要素の合成焦点距離について、満たすことが望ましい条件範囲を規定している。条件式(3)の下限を越えると、反射面(RL)より前に位置する全光学要素の合成焦点距離が小さくなりすぎるため、歪曲収差、特に広角側での負の歪曲収差が著しくなり、良好な光学性能を確保することが困難になる。逆に、条件式(3)の上限を越えると、反射面(RL)より前に位置する全光学要素の合成焦点距離が大きくなりすぎるため、第1群(Gr1)に入射する光線の収斂作用が弱くなり、第1群(Gr1)のレンズ径及び反射部材の増大を招いてしまう。したがって、コンパクト化という点で好ましくない。
【0034】
また、第1群(Gr1)が物体側から少なくとも1枚のレンズと反射部材(PR,MR)とを含む構成において、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
1.0<D/fW<3.0 …(4)
ただし、
D:第1群(Gr1)の最も物体側の面から反射部材(PR,MR)の反射面(RL)までの軸上面間隔、
fW:広角端(W)でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。
【0035】
条件式(4)は、第1群(Gr1)の最も物体側の面から反射面(RL)までの軸上面間隔について、満たすことが望ましい条件範囲を規定している。これは反射面(RL)を有する光学系において、コンパクト化に必要な条件である。条件式(4)の下限を越えると、物体側に配置された1枚のレンズのパワーが強くなるので、結果として第1群(Gr1)のパワーが強くなりすぎて広角端(W)での負の歪曲収差の補正が困難になる。逆に、条件式(4)の上限を越えると、反射面(RL)までの距離が長くなりすぎてしまい、コンパクト化という点で好ましくない。
【0036】
なお、各実施の形態を構成しているズームレンズ系には、入射光線を屈折作用により偏向させる屈折型レンズ(つまり、異なる屈折率を有する媒質同士の界面で偏向が行われるタイプのレンズ)が用いられているが、使用可能なレンズはこれに限らない。例えば、回折作用により入射光線を偏向させる回折型レンズ,回折作用と屈折作用との組み合わせで入射光線を偏向させる屈折・回折ハイブリッド型レンズ,入射光線を媒質内の屈折率分布により偏向させる屈折率分布型レンズ等を用いてもよい。また、絞り(ST)のほかに不要光をカットするための光束規制板等を必要に応じて配置してもよい。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施した撮像レンズ装置に用いられるズームレンズ系の構成等を、コンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1〜5は、前述した第1〜第5の実施の形態にそれぞれ対応しており、第1〜第5の実施の形態を表すレンズ構成図(図1〜図5)は、対応する実施例1〜5のレンズ構成をそれぞれ示している。したがって、第3の実施の形態に対応する実施例3は本発明の単なる参考例であり、本発明に属さないものである。
【0038】
各実施例のコンストラクションデータにおいて、ri(i=1,2,3,...)は物体側から数えてi番目の面の曲率半径(mm)、di(i=1,2,3,...)は物体側から数えてi番目の軸上面間隔(mm)を示しており、Ni(i=1,2,3,...),νi(i=1,2,3,...)は物体側から数えてi番目の光学要素のd線に対する屈折率(Nd),アッベ数(νd)を示している。また、コンストラクションデータ中、ズーミングにおいて変化する軸上面間隔は、広角端(短焦点距離端,W)〜ミドル(中間焦点距離状態,M)〜望遠端(長焦点距離端,T)での可変空気間隔である。各焦点距離状態(W),(M),(T)に対応する全系の焦点距離(f,mm)及びFナンバー(FNO)を他のデータとあわせて示し、各条件式の対応値を表1に示す。
【0039】
曲率半径riに*印が付された面は、非球面(非球面形状の屈折光学面、非球面と等価な屈折作用を有する面等)であり、非球面の面形状を表わす以下の式(AS)で定義される。各実施例の非球面データを他のデータとあわせて示す(ただしAi=0の場合は省略する。)。
X(H)=(C0・H2)/{1+√(1-ε・C02・H2)}+Σ(Ai・Hi) …(AS)
ただし、式(AS)中、
X(H):高さHの位置での光軸(AX)方向の変位量(面頂点基準)、
H:光軸(AX)に対して垂直な方向の高さ、
C0:近軸曲率(=1/曲率半径)、
ε:2次曲面パラメータ、
Ai:i次の非球面係数、
である。
【0040】
図6〜図10は実施例1〜実施例5にそれぞれ対応する収差図であり、(W)は広角端,(M)はミドル,(T)は望遠端における諸収差{左から順に、球面収差等,非点収差,歪曲収差である。Y':最大像高(mm)}を示している。球面収差図において、実線(d)はd線に対する球面収差(mm)、一点鎖線(g)はg線に対する球面収差(mm)、二点鎖線(c)はc線に対する球面収差(mm)、破線(SC)は正弦条件(mm)を表している。非点収差図において、破線(DM)はメリディオナル面でのd線に対する非点収差(mm)を表しており、実線(DS)はサジタル面でのd線に対する非点収差(mm)を表わしている。また、歪曲収差図において実線はd線に対する歪曲(%)を表している。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【表1】
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、負パワーを有する第1群及び第2群が前記各条件式で規定される特徴的構成を有しているため、高変倍率で高画質を満足する全く新規な小型のズームレンズ系を備えた撮像レンズ装置を実現することができる。そして本発明を、デジタルカメラ;ビデオカメラ;デジタルビデオユニット,パーソナルコンピュータ,モバイルコンピュータ,携帯電話,携帯情報端末(PDA)等に内蔵又は外付けされるカメラに適用すれば、これらの機器のコンパクト化,低コスト化,高変倍化及び高性能化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態(実施例1)のレンズ構成図。
【図2】第2の実施の形態(実施例2)のレンズ構成図。
【図3】第3の実施の形態(実施例3)のレンズ構成図。
【図4】第4の実施の形態(実施例4)のレンズ構成図。
【図5】第5の実施の形態(実施例5)のレンズ構成図。
【図6】実施例1の収差図。
【図7】実施例2の収差図。
【図8】実施例3の収差図。
【図9】実施例4の収差図。
【図10】実施例5の収差図。
【図11】本発明に係る撮像レンズ装置の概略光学構成を示す模式図。
【符号の説明】
TL …撮影レンズ系(ズームレンズ系)
Gr1 …第1群
PR …直角プリズム(反射部材)
MR …反射ミラー(反射部材)
RL …反射面
Gr2 …第2群
ST …絞り
Gr3 …第3群
Gr4 …第4群
PL …平行平面板
SR …撮像素子
AX …光軸
Claims (4)
- 複数の群から成り群間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズ系と、そのズームレンズ系により形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備えた撮像レンズ装置であって、
前記ズームレンズ系が、物体側から順に、反射部材を有する負パワーの第1群と、負パワーの第2群と、正パワーの第3群と、正パワーの第4群とから構成され、前記第1群が物体側から1枚のレンズと反射部材とから構成され、ズーミングにおいて前記第1群が固定であり、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする撮像レンズ装置;
1.828 ≦f2/f1<6 …(1)
ただし、
f1:第1群の焦点距離、
f2:第2群の焦点距離、
である。 - 以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ装置;
2<|fa1/fW|<8 …(3)
ただし、
fa1:反射部材の反射面より前に位置する全光学要素の合成焦点距離、
fW:広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。 - 以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ装置;
1.0<D/fW<3.0 …(4)
ただし、
D:第1群の最も物体側の面から反射部材の反射面までの軸上面間隔、
fW:広角端でのズームレンズ系全体の焦点距離、
である。 - 広角端から望遠端へのズーミングにおいて、前記第2群が像側に凸の軌跡を描くようにUターン移動し、前記第3群が物体側に単調移動することを特徴とする請求項1記載の撮像レンズ装置。
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