JP3787528B2 - シート状物の薄膜成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状物における対向した辺縁のそれぞれを間隔をおいてクリップで挟持し、各クリップを対向した辺縁に対して移動させてシート状物を延伸することにより薄膜化するシート状物の薄膜成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のシート状物を薄膜化する装置としては、多段ロールにシート状物を巻き付け、前段のロール周速より後段のロール周速を早くし縦方向に延伸しながら薄膜化し搬送するものがある。
【0003】
また、他の従来技術としては、シート状物の両端(対向した辺縁)のそれぞれクリップで一定間隔で把持(挟持)し、ガイドレールを機械中心に対して入口から出口に向い裾広がり状に配置しておいて、ガイドレールを走行路としてクリップを移動させることにより、シート状物をクリップで把持(挟持)したシート状物の幅方向に延伸して薄膜化し搬送するものがある。
【0004】
そしてシート状物をクリップで把持(挟持)したシート状物の幅方向だけでなく、シート状物の幅方向に直交した縦方向(機械中心の方向)にも、同時にシート状物を延伸することによりシート状物を薄膜化するものがある(特許第1775266号公報や特許第1817497号公報参照)。
【0005】
さらに、上記のシート状物を縦横方向へ延伸するものに対し、シート状物を斜交した方向に延伸するものもある(特公平2−113920号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、以下の問題がある。
【0007】
多段ロールを用いるものでは、前段のロール周速より後段のロール周速を早くしてシート状物とロールの摩擦抵抗によりロール間のシート状物を縦方向に延伸する為、シート状物がロールと擦れて、シート状物の流れ方向(縦方向)に並行した無数の微細な擦り傷がシート状物の全面に付く。 横方向のみに延伸するもの,縦横両方向に延伸するもの,あるいは斜交した方向に延伸するものなどでは、前後のクリップ同士を連結してあったりリンク機構を用いた専用機に近いものとなっていて、縦横延伸倍率を変更したい場合などには、走行路としてのガイドレールの固定位置の変更をはじめとして装置の仕様変更が面倒であるだけでなく、縦横延伸比率の変更範囲が狭かったり段階的であったりして、自由度が低かった。
【0008】
それゆえ本発明の目的は、シート状物に与える影響が少なく、縦方向,横方向,縦横両方向,さらには斜交方向への延伸と延伸方向を容易に切り替えることができるだけでなく、その延伸倍率の可変範囲が広くしかも無段階に変更可能なシート状物の薄膜成形装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の特徴とするところは、シート状物の対向した辺縁のそれぞれを複数のクリップで互いに間隔をおいて挟持し、該辺縁が対向するシート状物の幅方向に直交する方向に各クリップを移動させて該シート状物を流しつつ各クリップをシート状物の幅方向にも移動させて該シート状物を延伸することにより該シート状物を薄膜化するシート状物の薄膜成形装置において、該シート状物の幅方向に直交する方向にガイドレール上を走行して移動する複数の移動本体を設けてあり、該各移動本体にクリップを個別にしかも該シート状物の幅方向に移動可能に設けてあり、該各移動本体該シート状物の幅方向に直交する方向に移動するための個別の駆動源を備えており、該各移動本体該シート状物の幅方向に直交する方向に移動する場合に各クリップが該各移動本体上で該シート状物の幅方向に移動することを調整するガイド部材を該ガイドレールに対する設置位置を変更できるように設けてあることにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係わるシート状物の薄膜成形装置(以下、本装置と略記する)を示す概略斜視図であり、図2は図1に示した本装置でシート状物を縦横両方向に延伸する状況を示す概略斜視図である。
【0012】
両図では、長尺のシート状物1が各図における右上の上流より各図における左下の下流に向けて図示を省略した搬送手段により定速で搬送されて(流されて)おり、下流側から見て右半分を概略的に示している。
【0013】
実際の装置はシート状物の流れ方向の中心線Hに対し左右対象の構成をしていて、機械における長手方向の中心線とシート状物の流れ方向の中心線Hが一致するようにしている。
【0014】
シート状物1の流れ方向に直交した左右の端が、シート状物における対向した各辺縁に相当している。
【0015】
図1,図2において、11a〜14a,11b〜14bはシート状物1左右各端を間隔をおいて把持(挟持)するクリップである。クリップ11aと11b,12aと12b、13aと13b,14aと14bは、シート状物1における左右幅方向の対向した位置において一対となりシート状物1の流れ方向に同期した速度で移動する(その駆動系は後述する)。
【0016】
各クリップ11a〜14a,11b〜14bはそれぞれシート状物の幅方向に伸びたアーム1a〜4a,1b〜4b(図3参照)に個別に取り付けている。
【0017】
以下、簡略化のために、シート状物1の幅方向左側に位置する構成部材は図示や説明を省略し、類似物については添字を省略することもある。
【0018】
41,42は無端状のガイドレールで、各アーム1a〜4a,1b〜4bに対応する移動本体4が走行するように取り付けてある。移動本体4とアーム1a〜4aはアーム1a〜4aの長孔を移動するカムフォロア(第一のカムフォロア)46で移動自在に結合してあり、ガスシリンダ47でシート状物1の幅方向外側に向けて各アーム1a〜4aを偏倚するようにしている。各移動本体4はエンドレス状のチェーン(無端条体)21〜24に個別に取り付けている。このエンドレスチェーン21〜24はシート状物1の出入口(図2に示す位置Aと位置B)付近に垂直に設置した駆動側のスプロケット31a〜34aにより個別に循環駆動するようにしてあり、各スプロケット31a〜34aはそれぞれ回転数の制御が可能なサーボモータ26〜29により駆動するようにしてあり、従動側のスプロケット31〜34によってチェーンテンションの調整を可能としてある。43は、各アーム1a〜4aに設けてあるカムフォロア(第二のカムフォロア )である。45a,45bは、各クリップ11a〜14a及びクリップ11b〜14bにおけるシート状物1の幅方向での動きを調節するガイド部材であり、このガイド部材45a,45bは設置位置を自由に変更できるようにしてある。各アーム1a〜4aに設けてあるカムフォロア(第二のカムフォロア)43は、ガイド部材45a,45bに係合するようにしてある。
従って、ガスシリンダ47が各アーム1a〜4aをシート状物1の幅方向外側に偏倚するように引くと、ガイド部材45a,45bはカムフォロア43により各アームを介して各クリップ11a〜14aの幅方向への動作を規制する。各移動本体4は個々のサーボモータ26〜29でシート状物1の流れ方向に個別に移動すると、各カムフォロア43はガイド部材45a,45bに沿って移動するようになる。
【0019】
各クリップ11a〜14a,11b〜14bにおけるシート状物1の把持(挟持)機構は公知のものであるから、説明は省略する。
【0020】
各移動本体4や各クリップ11a〜14a,11b〜14bあるいはサーボモータ26〜29などは無端状のガイドレール41、42の全周に亘って設けてある。
【0021】
装置出口Bでシート状物1の把持(挟持)を開放した各クリップ11a〜14a,11b〜14bは、順次装置入口Aに戻って再びシート状物1における辺縁の把持(挟持)を行う。この場合、ガスシリンダ46は、アーム1a〜4aをシート状物1における辺縁付近に戻してあり、カムフォロア43がガイド部材45a,45bに接触するようにしている。
【0022】
各部材の動作は図示していない制御手段に組み込んであるプログラムによって連続して遂行するようにしてある。
【0023】
次に、本装置によりシート状物1を延伸し薄膜成形することについて説明する。
【0024】
図2に示すように、装置入口Aで幅W1を持つシート状物1について、出口Bにおいて幅W2にまで延伸させるとする。
【0025】
ガイド部材45a,45bは装置の入口Aから出口Bまでの長さLと幅W1とW2の差との比、つまりシート状物1の縦横延伸倍率に合うように傾斜させておき、各サーボモータ26〜29は等速で駆動するようにすると、シート状物1は横方向に延伸することになる。
【0026】
各アーム1a〜4aのカムフォロア43がガイド部材45a,45bに倣えばよいだけであるから、ガイド部材45a,45bの傾斜角度を変えれば、出口Bでの幅W2も変わる。入口Aでのシート状物1の幅W1が変更になっても、ガイド部材45a,45bの入口Aでの間隔を変えるだけでよい。
【0027】
図4に示すように、前後のアームが等間隔になるようにして各サーボモータ26〜29は等速で駆動すれば、シート状物1は下流に進むに従ってシート状物1は特定の位置で急激に無理な延伸を起すことなく、均等に延伸する。
【0028】
シート状物1を縦横両方向に延伸したい場合には、下流側のサーボモータほど上流側のサーボモータより駆動速度を早く設定しておく。
【0029】
そうすると、図2に示すように、単位時間当りの縦方向での移動ピッチは入口AでP1でも下流に行くに従い、大きなものとなって出口BではP2に変化していて、その分、シート状物1は流れ方向(縦方向)にも順次延伸していく。延伸倍率は、サーボモータの駆動速度の設定で自由に変更できる。
【0030】
シート状物1を流れ方向(縦方向)のみに延伸したい場合には、図3に示すように、ガイド部材45a,45bをシート状物1の流れ方向に並行に設定し、サーボモータの駆動速度を下流側ほど早いものとしておく。
【0031】
各クリップ11a〜14a,11b〜14bのシート状物1における辺縁との位置関係は入口Aと出口Bで変化していないから、幅方向での延伸は無く、流れ方向(縦方向)のみに延伸できる。
【0032】
図5は、左右のガイド部材45a,45bそれぞれの傾斜角度を異なったものとしている。そして、左右の対向するクリップ11aと11b,12aと12b,13aと13b,14aと14bの各サーボモータによる駆動速度を流れ方向において、左側のものを右側のものより僅かに早いものとしている。
【0033】
そのために、シート状物1は流れ方向の左側で下流側が流れ方向の右側で上流側より強く引かれることとなって、シート状物1をその流れの方向と斜交する方向に延伸することができる。
【0034】
左右のガイド部材45a,45bそれぞれの傾斜角度や左右の対向するクリップ11aと11b,12aと12b,13aと13b,14aと14bに対する各サーボモータによる駆動速度を適宜変えることで、斜交する方向での延伸倍率も自由に変更設定できる。
【0035】
このように無端状のガイドレール41,42や各サーボモータの固定位置はそのままにして、左右のガイド部材45a,45bの傾斜角度並びに設定位置や各クリップに対する各サーボモータの駆動速度を変更するだけで、各種の延伸の変更ができる。
【0036】
シート状物1の辺縁に各クリップで把持(挟持)した形跡が残るだけでシート状物に与える影響が少なく、シート状物1の殆ど全面を有効に使用できる。
【0037】
シート状物1はガイド部材45a,45bに倣って延伸するから、延伸倍率の可変範囲は広く、無段階に変えることができる。各サーボモータの駆動速度の変更も無段階で実施できるから、各サーボモータの駆動速度の変更による延伸倍率の変更も、無段階で実施できる。
【0038】
各駆動手段は、上記の動作を維持できるものであれば如何なるものを用いても構わない。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、シート状物に与える影響が少なく、縦方向,横方向,縦横両方向,さらには斜交方向への延伸と延伸方向を容易に切り替えることができるだけでなく、その延伸倍率の可変範囲が広くしかも無段階に変更可能なシート状物の薄膜成形装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係わるシート状物の薄膜成形装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した本発明に係わるシート状物の薄膜成形装置で、シート状物を縦横両方向に延伸する状況を示した概略斜視図である。
【図3】図1に示した本発明に係わるシート状物の薄膜成形装置で、シート状物を縦方向に延伸する状況を示した概略斜視図である。
【図4】図1に示した本発明に係わるシート状物の薄膜成形装置で、シート状物を横方向に延伸する状況を示した概略斜視図である。
【図5】図1に示した本発明に係わるシート状物の薄膜成形装置で、シート状物を斜交方向に延伸する状況を示した概略斜視図である。
【符号の説明】
1‥シート状物
1a〜4a‥アーム
4‥移動本体
11a〜14a,11b〜14b‥クリップ
21〜24‥エンドレスチェーン
26〜29‥サーボモータ
41,42‥無端状のガイドレール
43,46‥カムフォロア
45a,45b‥ガイド部材
47‥ガスシリンダ

Claims (4)

  1. シート状物の対向した辺縁のそれぞれを複数のクリップで互いに間隔をおいて挟持し、該辺縁が対向するシート状物の幅方向に直交する方向に各クリップを移動させて該シート状物を流しつつ各クリップをシート状物の幅方向にも移動させて該シート状物を延伸することにより該シート状物を薄膜化するシート状物の薄膜成形装置において、
    該シート状物の幅方向に直交する方向にガイドレール上を走行して移動する複数の移動本体を設けてあり、該各移動本体にクリップを個別にしかも該シート状物の幅方向に移動可能に設けてあり、該各移動本体は該シート状物の幅方向に直交する方向に移動するための個別の駆動源を備えており、該各移動本体が該シート状物の幅方向に直交する方向に移動する場合に各クリップが該各移動本体上で該シート状物の幅方向に移動することを調整するガイド部材を該ガイドレールに対する設置位置を変更できるように設けてあることを特徴とする薄膜成形装置。
  2. 上記請求項1に記載の薄膜成形装置において、該ガイドレールは無端状であり、各移動本体は該シート状物の幅方向に直交する方向に設けてある複数の無端条体と個別に連結してあり、該各駆動源は各無端条体を個別に駆動するようにしてあることを特徴とする薄膜成形装置。
  3. 上記請求項1に記載の薄膜成形装置において、各クリップは長孔を有する個別のアームを備え、各移動本体は該各アームの長孔を移動自在な第一のカムフォロアをそれぞれ備えていることにより該各クリップは該シート状物の幅方向に移動可能になっており更に各アームには該移動本体が該シート状物の幅方向に直交する方向に移動する場合に該ガイド部材に沿って移動する第二のカムフォロアをそれぞれ設けてあることを特徴とする薄膜成形装置。
  4. 上記請求項2に記載の薄膜成形装置において、該シート状物における各辺縁の対向した位置を挟持しているクリップ同士はそれぞれの移動本体および無端条体を介して各駆動源により同期した速度で該シート状物の幅方向に直交する方向に移動するようになされていることを特徴とする薄膜成形装置。
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