JP3779492B2 - 3次元造形機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄い素材シートを積層し、これを所望の形状に切断する動作を繰り返すことにより、3次元形状を造形する3次元造形機に関し、特に、熱溶融性の接着剤を付着した素材シートを用いる3次元造形機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の3次元造形機としては、例えば特開平6−278214号公報(同公報の図23から図25に係る実施例)に記載された技術がある。
【0003】
このものは、加熱により溶融して接着力を生じる熱溶融性の接着剤を裏面に付着した素材シート(紙シート、ポリカーボネートシート等)を用い、これを積層し、所望の形状に切断する動作を繰り返す3次元造形機である。
【0004】
詳しくは、あらたな素材シートを、それまでに積層されてできた中間生成物である中間積層体の最上層に接着されている素材シート上に搬送、載置する素材シート供給装置と、素材シートを加熱しつつ押圧し、前記した最上層の素材シートの表面に接着させる加熱ローラと、接着された素材シートを、その高さ位置に対応する造形物の輪郭形状に沿って切断する切断装置とを備えたものである。
【0005】
そして、素材シートを中間積層体上に供給し、図6のように、加熱ローラ320を、同図で見て中間積層体W0の右端を始点かつ終点として、矢印A6のように往復移動させることにより、素材シートを中間積層体W0に接着して、所望の形状に切断するという動作を繰り返し、3次元形状の造形物を製作する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのような従来の3次元造形機を用いた場合、中間積層体W0(または造形物)の高さ方向の総厚みが、全域で均一にならず、図6に誇張して示すように、加熱ローラ320の往復移動の両端縁部E0が跳ね上がるように厚みが大きくなる場合がある。
【0007】
しかも、加熱ローラ320の移動折り返し点(以下、折り返し点と記す)となる側の縁部E10よりも、加熱ローラ320の移動始点かつ終点(以下、始点終点と記す)となる側の縁部E20の厚みがさらに大きくなることがある。
【0008】
そこで、前記現象の原因について検討してみる。
【0009】
高温の加熱ローラ320による加熱を繰り返すため、造形過程で中間積層体W0内に熱が蓄積されることとなる。そして、この熱は、積層された素材シート間の接着剤層を伝わり、素材シートの平面方向(図6の左右方向)に伝達されて中間積層体W0の縁部(外周部)E0から大気に放出される。
【0010】
このため、中間積層体W0の上面(最上層)の温度は、中間積層体W0の縁部E0付近では、縁部E0が比較的低温、その内側(中間積層体W0を平面的に見た中央部C0側)が比較的高温、となる。
【0011】
そして、このように部位によって温度の異なる中間積層体W0に対して、あらたな素材シートを加熱、押圧して接着することとなる。その際、加熱ローラ320によって均一に加熱しても、中間積層体W0の上面の温度が部位により異なっているため、あらたな素材シートの接着剤に実質的に与えられる熱量は、中間積層体W0の全域で均一とはならない。
【0012】
ここで用いる熱溶融性の接着剤は、低温ほど溶融しにくく、高温ほど溶融しやすい。そして、溶融が足りず粘性の大きい接着剤は、被接着側である中間積層体W0の最上層の素材シートに浸透しにくく、素材シート間に接着剤層として残る厚みは大きくなる。一方、十分に溶融して粘性の小さくなった接着剤は、前記最上層の素材シートに浸透しやすく、接着剤層の厚みは小さくなる。
【0013】
すなわち、素材シートの接着剤に実質的に与えられる熱量が少ない縁部E0では、接着剤層の厚みが大きく、実質的に与えられる熱量が多い縁部E0の内側(中央部C0側)では、接着剤層の厚みが小さくなり、この差が、縁部E0が跳ね上がるように厚みが大きくなる現象をもたらしている。
【0014】
また、加熱ローラ320による加熱の際、折り返し点側の縁部E10に近い部位ほど、往復移動する加熱ローラ320の往路(始点終点から折り返し点へ向かう行程)での加熱と復路(折り返し点から始点終点へ向かう行程)での加熱がほぼ連続して行われ、始点終点側の縁部E20に近い部位ほど、往路での加熱と復路での加熱との間に時間的間隔があき、この間にある程度、自然冷却されてしまう。
【0015】
すなわち、折り返し点側の縁部E10側では、往路での加熱で溶融した接着剤が、直ちに復路での加熱でより溶融される。このため、折り返し点側の縁部E10に近い部位ほど、接着剤が、被接着側である中間積層体W0の最上層の素材シートに浸透しやすく、接着剤層の厚みは小さくなる。
【0016】
逆に、始点終点側の縁部E20側では、往路での加熱と復路での加熱との間に自然冷却が起こって接着剤が溶融しにくいので、始点終点側の縁部E20に近い部位ほど、中間積層体W0の最上層の素材シートに浸透しにくく、接着剤層の厚みはおおきくなる。
【0017】
このことが、折り返し点側の縁部E10と始点終点側E20の縁部とでの造形物の総厚みの差、すなわち、造形物の総厚みが、図6で見て、始点終点側E20の縁部へ向けて右肩上がりに大きくなる現象をもたらすこととなっている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明においては、以下の手段を採用した。
【0019】
請求項1の発明は、熱溶融性の接着剤を裏面に塗布した素材シートをそれまでに積層された中間積層体上に送り込む素材シート供給手段と、前記素材シート上を往復移動して素材シートを加熱する加熱手段と、この加熱手段に連動して移動し前記素材シートを押圧して前記中間積層体の上面に接着する押圧手段と、前記素材シートを所定の形状に切断する切断手段とを備えた3次元造形機において、前記加熱手段の進行方向に隣接して設けられ前記加熱手段とともに往復移動して前記素材シートを冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする3次元造形機を要旨とするものである。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1において、前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の往路進行方向に隣接して設けたことを特徴とする3次元造形機を要旨とするものである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1において、前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の復路進行方向に隣接して設けたことを特徴とする3次元造形機を要旨とするものである。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1において、前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の往復移動方向の両側に隣接して設けたことを特徴とする3次元造形機を要旨とするものである。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項において、前記冷却手段が略室温に維持されるように構成されたことを特徴とする3次元造形機を要旨とするものである。
【0024】
【発明の実施形態】
本発明の、第1の実施形態に係る3次元造形機は、素材シートとして、加熱により溶融して接着力を生じる熱溶融性の接着剤を裏面に付着した紙シートを用い、これを積層して所望の形状に切断する動作を繰り返すことにより、3次元形状を造形するものであり、図1から図3に示すように、以下を備えたものである。
【0025】
ただし、前記素材シートは、その裏面に熱溶融性の接着剤を付着したものであればよく、裏面の全域に接着剤があらかじめ塗布されたものでも、前記特開平6−278214号公報に記載のもののように、積層の都度、裏面の所望領域に接着剤を転写するもの、その他であってもよい。
【0026】
11は、それまでに積層されてできた中間生成物である中間積層体Wを載置、保持する造形テーブルを示す。この造形テーブル11は、その四隅を鉛直方向に延びる4本の昇降送りねじ12で支持されており、昇降送りねじ12は、モータ13によりベルト14を介して回転駆動されるようになっている。
【0027】
20は、あらたな素材シートPを、中間積層体Wの最上層に接着されている素材シート上に搬送、載置する素材シート供給装置(素材シート供給手段)を示す。この素材シート供給装置20は、造形テーブル11の一側に配置された供給ロールPaと案内ローラ21a、造形テーブル11の他側に配置された案内ローラ21b、送りローラ22、回収ロールPbとからなる。
【0028】
送りローラ22、供給ロールPa、回収ロールPbは、それぞれモータ23、24、25により駆動されるものであり、供給ロールPaに巻かれている素材シートPが、送りローラ22によって引き出され、案内ローラ21a、21bによって中間積層体Wの上方を通るように案内され、回収ロールPbに巻き取られるようになっている。
【0029】
30は、移動台31に取り付けられた加熱冷却装置を示す。3次元造形機の機枠(図示省略)には、素材シートPの搬送方向であるX方向(図1の左右方向)に延びる一対のガイドレール(図示省略)が設けられており、このガイドレールにより移動台31の両端が案内支持されている。
【0030】
そして、移動台31は、プーリ33に懸架された送りベルト34により、たとえば供給ロールPa側を移動始点かつ終点(以下、始点終点と記す)とし、巻取ロールPb側を移動折り返し点(以下、折り返し点と記す)として、X方向に往復平行移動される。すなわち、始点終点から折り返し点へ向かう行程が往路、折り返し点から始点終点へ向かう行程が復路となる。
【0031】
移動台31には、X方向と直交するY方向に沿った軸線を有し、図示しないヒータにより所定温度に加熱される円筒状の加熱ローラ32が回転自在に支持されている。この加熱ローラ32の長さおよび直径は、素材シートPの幅、製作しようとする造形物の大きさ等により、適宜、設定される。
【0032】
前記加熱ローラ32は、素材シートPを加熱する加熱手段であるとともに、下向きに弾性的に付勢されるか、あるいはその自重により、あらたな素材シートPを中間積層体Wの最上層の素材シートPに対して押圧する、押圧手段としても機能する。
【0033】
さらに移動台31には、加熱ローラ32に対して往路進行方向へ隣接して設けられ、Y方向に沿った軸線を有し、前記加熱ローラ32と略同径、略同長の、冷却手段としての冷却ローラ35が回転自在に支持されている。
【0034】
前記冷却ローラ35は、鉄などの熱伝導率のよい金属で形成された円柱物であり、自然冷却されて室温に維持されるものである。この冷却ローラ35を備えた点が、本実施形態の特徴とするところである。
【0035】
また、加熱ローラ32と冷却ローラ35との間は、移動台31に植設された遮蔽部材36によって隔絶され、加熱ローラ32から冷却ローラ35への空気を介した熱伝達を遮断または軽減するようになっている。こうすることにより、加熱ローラ32の発散する熱によって冷却ローラ35の冷却能力を損ねるようなことがない。
【0036】
前記加熱ローラ32、冷却ローラ35は、移動台31ごとベルト34によって移動され、中間積層体Wの上方に送り込まれたあらたな素材シートP上をスムーズに転動するようになっている。
【0037】
移動台31には、リミットスイッチ37が設けられており、造形テーブル11とともに上昇する中間積層体Wおよび素材シートPの上面が所定の高さに達すれば、このリミットスイッチ37が当接し、その高さ位置を図略のエンコーダで検出するように構成されている。
【0038】
40は、接着された素材シートPを、前記高さ位置に対応する造形物の輪郭形状に沿って、レーザビームにより切断する切断装置(切断手段)を示す。
【0039】
切断装置40は、レーザトーチ41とミラーボックス42aを備えた移動ヘッド43を備えている。この移動ヘッド43は、Y方向に延びる細長いガイドプレート44上に、駆動機構46によってY方向に沿って往復移動可能に案内支持されている。さらに、このガイドプレート44は、その両端が前記ガイドレールにより案内支持され、プーリ46に懸架された送りベルト47によりX方向に往復平行移動される。
【0040】
これにより、レーザトーチ41は、移動ヘッド43、ガイドプレート44ごと、中間積層体Wを載置する造形テーブル11に対しX方向およびY方向に移動され、その軌跡は制御装置55により制御される。
【0041】
図2に示すように、レーザ発振器47からのレーザビームLは、ミラーボックス42b、42a(ミラーボックス42bは、ガイドプレート44の一端部に取り付けられる)に内蔵されたミラーにより反射され、レーザトーチ41から下向きに照射されて、中間積層体Wの上面に接着された素材シートPを切断するようになっている。
【0042】
次に、この実施形態の作動を説明する。
【0043】
まず、中間積層体Wの上方にあらたな素材シートPが搬送、保持されている状態で、加熱冷却装置30の移動台31を前進させ、リミットスイッチ37だけが中間積層体Wの平面投影領域にかかる位置で停止させる。
【0044】
そして、造形テーブル11を上昇させ、中間積層体Wの上面があらたな素材シートPの裏面に当接し、これをわずかに押し上げたところでリミットスイッチ37が素材シートPの表面に当接して、造形テーブル11を停止させるとともに、その高さ位置を検出する。
【0045】
ついで、移動台32を一旦、始点終点となる位置(図1に示す位置)まで後退させ、中間積層体Wを通り越した折り返し点となる位置まで前進(図1で見て左動)させてから、再び始点終点となる位置まで後退(図1で見て右動)させる。
【0046】
これにより、所定温度に加熱されている加熱ローラ32は、中間積層体Wの最上層の素材シートに当接されている、あらたな素材シートPを加熱、押圧しながら往復転動し、素材シートPは、裏面の熱溶融性の接着剤が加熱溶融されるとともに、中間積層体Wの最上層の素材シートに対して押圧され、接着される。
【0047】
その際、本実施形態に係る3次元造形機では、加熱ローラ32に対して往路進行方向へ隣接して冷却ローラ35を備えており、図3に示す位置を始点終点として、矢印A3のように、中間積層体W上を往復転動する。このため、冷却装置30が始点終点から折り返し点へ向けて移動する往路においては冷却ローラ35が先行し、折り返し点から始点終点へ向けて移動する復路においては加熱ローラ32が先行することとなる。
【0048】
中間積層体Wの上面(最上層)の温度は、縁部E付近では、縁部Eが比較的低温、その内側(中間積層体Wを平面的に見た中央部C側)が比較的高温となっている(従来の技術参照)。
【0049】
このため、往路では、中間積層体Wの上面の温度が比較的高温の縁部Eの内側(中央部C側)を、この部分との温度差が大きくて熱伝導が高い状態で冷却ローラ35によって、すなわち中間積層体Wから冷却ローラ35への熱伝導によって冷却した上で、加熱ローラ32が加熱し、復路では、加熱ローラ32によって加熱され、過熱状態となった縁部Eの内側(中央部C側)を、高い熱伝導で冷却ローラ35が直ちに冷却することとなる。
【0050】
一方、中間積層体Wの上面の温度が比較的低温の縁部Eにあっては、冷却ローラ35の温度が室温程度のため、縁部との温度差が小さいので縁部Eが過冷却されてしまうものではなく、従来の3次元造形機とほぼ同様の、加熱ローラ32による加熱が行われる。
【0051】
これにより、中間積層体Wの上面の温度が比較的高温の縁部Eの内側(中央部C側)へ実質的に与えられる熱量が減じられるので、あらたな素材シートPの接着剤に実質的に与えられる熱量の、縁部Eとその内側(中央部C側)とでの不均一が解消または軽減される。
【0052】
これに伴い、素材シートP裏面の熱溶融性の接着剤の溶融具合が、中間積層体Wの縁部Eとその内側(中央部C側)とで同等または同等に近くなる。これにより、被接着側である中間積層体Wの最上層の素材シートに浸透せずに、素材シート間に接着剤層として残る厚みも、縁部Eとその内側(中央部C側)とで同等または同等に近くなる。
【0053】
したがって、従来の3次元造形機において散見された、造形物の縁部Eの高さ方向の総厚みが、その内側(中央部C側)に対して跳ね上がるように厚くなる現象が、除去または軽減されるので、より平坦度の高い、精度のよい3次元造形物を製作できる。
【0054】
図4に示す第2の実施形態は、冷却ローラ35を、第1の実施形態とは逆に、加熱ローラ32に対して復路進行方向へ隣接して設けたものである。その他の構成は前記第1の実施形態と同一であるので、重複する説明および図は省略する。
【0055】
このものにあっては、加熱ローラ32に対して復路進行方向へ隣接して冷却ローラ35を備えており、図4に示す位置を始点終点として、矢印のように中間積層体W上を往復転動する。このため、加熱冷却装置30の往路においては加熱ローラ32が先行し、復路においては冷却ローラ35が先行することとなる。
【0056】
そして、中間積層体Wの、折り返し点側の縁部E1においては、往路での加熱ローラ32による加熱が行われると、直ちに冷却ローラ35による冷却が行われ、その上で、復路での加熱ローラ32による加熱が行われる。すなわち、この実施形態のものにあっては、従来の3次元造形機のように、加熱ローラによる往路での加熱と復路での加熱がほぼ連続して行われることがない。
【0057】
一方、中間積層体Wの、始点終点側の縁部E2においては、従来の3次元造形機と同様、往路での加熱後、ある程度、自然冷却された上で、復路での加熱が行われる。ただし、冷却ローラ35の温度が室温程度のため、縁部E2が冷却ローラ35で過冷却されてしまうものではない。
【0058】
すなわち、往路での加熱後、中間積層体Wの全域が冷却ローラ35でほぼ均一に冷却されるため、復路での加熱による接着剤の溶融具合もほぼ均一となる。
【0059】
これに伴い、素材シートP裏面の熱溶融性の接着剤の溶融具合が、中間積層体Wの、折り返し点側の縁部E1と始点終点側の縁部E2とで同等または同等に近くなる。
【0060】
これにより、被接着側である中間積層体Wの最上層の素材シートに浸透せずに、素材シート間に接着剤層として残る厚みも、素材シート間に接着剤層として残る厚みも、折り返し点側の縁部E1と始点終点側の縁部E2とで同等または同等に近くなる。
【0061】
したがって、従来の3次元造形機において散見された、造形物の高さ方向の総厚みが、折り返し点側の縁部E1から始点終点側の縁部E2へ向けて右肩上がりに大きくなる現象が、除去または軽減されるので、より平坦度の高い、精度のよい3次元造物を製作できる。
【0062】
さらに、図5に示すものは第3の実施形態である。このものは、加熱ローラ32に対して、往路進行方向、復路進行方向それぞれへ隣接して冷却ローラ35a、35bを設けたものである。その他の構成は前記第1、第2の実施形態と同一であるので、重複する説明および図は省略する。
【0063】
この構成により、第3の実施形態にあっては、冷却ローラを加熱ローラに対して往路進行方向へ隣接して設けた第1の実施形態における効果と、冷却ローラを加熱ローラに対して復路進行方向へ隣接して設けた第2の実施形態における効果とが、あわせて得られることとなる。
【0064】
以上の各実施例において、加熱ローラ32の温度は、製作しようとする造形物の大きさ、熱溶融性の接着剤の成分、素材シートPの厚み等によって異なる。これら諸条件に基づいて、加熱ローラ32の温度を高めに設定して用いると、冷却ローラ35(35a、35b)を自然冷却するだけでは、冷却ローラ35(35a、35b)自体を冷却しきれず、中間積層体Wに対して十分な冷却効果を発揮できないケースも想定される。
【0065】
その場合には、送風手段である冷却ファンを例えば移動台に設け、この冷却ファンで冷却ローラ35を強制冷却する、あるいは、水冷手段であるチラーを用い、冷却ローラ内に冷却水を循環させて強制冷却するなど、種々の手段により対応可能である。
【0066】
次に、前記各実施形態および別例から把握できる、請求項に記載した発明以外の技術的思想について、それらの効果とともに以下に記載する。
【0067】
(a) 請求項1から5のいずれかに記載の構成において、冷却手段が略円筒状の冷却ローラである3次元造形機。こうすることにより、前記各請求項のいずれかに記載のものと同様の作用効果が得られるとともに、冷却手段を、スムーズに素材シート上を移動させることができる。
【0068】
(b) 請求項1から5のいずれかに記載の構成において、加熱手段と冷却手段との間に、加熱手段から冷却手段への空気を介した熱伝達を遮断または軽減する遮蔽部材を設けた3次元造形機。こうすることにより、冷却手段の冷却能力を損ねないので、前記各請求項の効果がより確実に得られる。
【0069】
(c) 請求項5に記載の構成において、冷却手段が自然冷却により略室温に維持されるように構成された3次元造形機。こうすることにより、請求項5に記載のものと同様の作用効果が得られる。
【0070】
(d) 請求項5に記載の構成において、冷却手段が送風手段により略室温に維持されるように構成された3次元造形機。こうすることにより、請求項5に記載のものと同様の作用効果が得られるとともに、冷却手段をより確実に略室温に維持できる。
【0071】
(e) 請求項5に記載の構成において、冷却手段が水冷手段により略室温に維持されるように構成された3次元造形機。こうすることにより、請求項5に記載のものと同様の作用効果が得られるとともに、冷却手段をより確実に略室温に維持できる。
【0072】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1の発明は、加熱手段の進行方向に隣接して設けられ加熱手段とともに往復移動して素材シートを冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする3次元造形機である。
【0073】
従来の技術においては、中間積層体上面の温度の部位による不均一等により、加熱手段によって素材シートを接着する際、素材シートの接着剤に実質的に与えられる熱量、実質的な加熱温度に不均一が生じ、中間積層体(または造形物)の高さ方向の総厚みが均一にならなかった。
【0074】
これに対し請求項1の発明においては、前記構成を採用したことにより、従来、温度が高かくて素材シートの接着剤に与える熱量が多かった中間積層体の中央部が比較的低温の縁部より高い熱伝導で冷却手段によって冷却されるので、前記熱量、加熱温度の部位による不均一が解消または軽減される。
【0075】
したがって、中間積層体(または造形物)の高さ方向の総厚みの不均一が解消または軽減され、より平坦度の高い、精度のよい3次元造形物を製作できる。
【0076】
請求項2の発明は、請求項1において、冷却手段を、加熱手段に対して、この加熱手段の往路進行方向に隣接して設けたことを特徴とする3次元造形機である。
【0077】
こうすることにより、中間積層体上面の温度に、部位による不均一があっても、温度の高い部位を、往路では、冷却手段で冷却した上で加熱手段で加熱し、復路では、加熱手段で加熱され、加熱状態となったら直ちに冷却することとなる。
【0078】
これにより、中間積層体上面の温度の高い部位へ実質的に与えられる熱量が減じられるので、素材シートの接着剤に実質的に与えられる熱量の、部位による不均一が解消または軽減される。
【0079】
したがって、中間積層体(または造形物)の高さ方向の総厚みの不均一、具体的には、中間積層体の縁部の高さ方向の総厚みが、その内側(平面的に見た中央部側)に対して跳ね上がるように厚くなる現象が、解消または軽減される。よって、より平坦度の高い、精度のよい3次元造形物を製作できる。
【0080】
請求項3の発明は、請求項1において、冷却手段を、加熱手段に対して、この加熱手段の復路進行方向に設けた3次元造形機である。
【0081】
こうすることにより、加熱手段の移動が往路から復路へ折り返す部位(折り返し点)では、往路での加熱手段による加熱が行われると、直ちに冷却手段による冷却が行われ、その上で、復路での加熱ローラによる加熱が行われる。
【0082】
これにより、折り返し点に近い部位ほど接着剤が溶融しやすく、始点終点に近い部位ほど接着剤が溶融しにくかった従来のものと比べ、本発明のものは、素材シートの接着剤に与えられる加熱温度の折り返し点と始点終点とでの不均一が解消または軽減される。
【0083】
したがって、中間積層体(または造形物)の高さ方向の総厚みの不均一(折り返し点から始点終点へ向けて厚みが大きくなる)が、解消または軽減され、より平坦度の高い、精度のよい3次元造形物を製作できる。
【0084】
請求項4の発明は、請求項1において、加熱手段の往復移動方向に両側に設けた3次元造形機である。こうすることにより、請求項2および請求項3の作用効果が合わせて得られる。
【0085】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項において、冷却手段が略室温に維持されるように構成された3次元造形機である。
【0086】
こうすることにより、中間積層体の冷却必要部位を冷却し、冷却不要部位は過冷却することなく、前記各請求項の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る3次元造形機の、概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に係る3次元造形機の、部分断面を含む全体正面図である。
【図3】図1、2に係る3次元造形機の作用を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る3次元造形機の、概略構成と作用を示す、部分断面を含む模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る3次元造形機の、概略構成を示す部分断面図である。
【図6】従来の3次元造形機の作用を示す模式図である。
【符号の説明】
P 素材シート
20 素材シート供給装置(素材シート供給手段)
30 加熱冷却装置
31 移動台
32 加熱ローラ(加熱手段、押圧手段)
35、35a、35b
冷却ローラ(冷却手段)
36 遮蔽部材
40 切断装置(切断手段)
Claims (5)
- 熱溶融性の接着剤を裏面に付着した素材シートをそれまでに積層された中間積層体上に送り込む素材シート供給手段と、前記素材シート上を往復移動して素材シートを加熱する加熱手段と、この加熱手段に連動して移動し前記素材シートを押圧して前記中間積層体の上面に接着する押圧手段と、前記素材シートを所定の形状に切断する切断手段とを備えた3次元造形機において、前記加熱手段の進行方向に隣接して設けられ前記加熱手段とともに往復移動して前記素材シートを冷却する冷却手段を設けたことを特徴とする3次元造形機。
- 前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の往路進行方向に隣接して設けたことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形機。
- 前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の復路進行方向に隣接して設けたことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形機。
- 前記冷却手段を、前記加熱手段に対して、この加熱手段の往復移動方向の両側に隣接して設けたことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形機。
- 前記冷却手段が略室温に維持されるように構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の3次元造形機
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