JP3776600B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(電界発光)素子に関し、詳しくは、有機化合物の薄膜に電界を印加して光を放出する素子に用いられる無機/有機接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に有機EL素子は、ガラス基板上にITOなどの透明電極を形成し、その上に有機アミン系のホール輸送層、電子導電性を示しかつ強い発光を示す、例えばAlq3 材からなる有機発光層を積層し、さらに、MgAgなどの仕事関数の小さい電極を形成した構造をしている。
【0003】
これまでに報告されている素子構造としては、ホール注入電極及び電子注入電極の間に1層または複数層の有機化合物層が挟まれた構造となっており、有機化合物層としては、2層構造あるいは3層構造がある。
【0004】
2層構造の例としては、ホール注入電極と電子注入電極の間にホール輸送層と発光層が形成された構造または、ホール注入電極と電子注入電極の間に発光層と電子輸送層が形成された構造がある。3層構造の例としては、ホール注入電極と電子注入電極の間にホール輸送層と発光層と電子輸送層とが形成された構造がある。また、単一層に全ての役割を持たせた単層構造も高分子や混合系で報告されている。
【0005】
図3および図4に、有機EL素子の代表的な構造を示す。
【0006】
図3では基板11上に設けられたホール注入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物であるホール輸送層14と発光層15が形成されている。この場合、発光層15は、電子輸送層の機能も果たしている。
【0007】
図4では、基板11上に設けられたホール注入電極12と電子注入電極13の間に有機化合物であるホール輸送層14と発光層15と電子輸送層16が形成されている。
【0008】
これら有機EL素子においては、共通して、信頼性が問題となっている。すなわち、有機EL素子は、原理的にホール注入電極と、電子注入電極とを有し、これら電極間から効率よくホール・電子を注入輸送するための有機層を必要とする。しかしながら、これらの材料は、製造時にダメージを受けやすく、電極との親和性にも問題がある。また、有機薄膜の劣化もLED、LDに較べると著しく大きいという問題を有している。
【0009】
また、有機材料は比較的高価なものが多く、低コストの有機EL素子応用製品を提供するために、その一部の構成膜を安価な無機材料で置き換えることのメリットは大きい。
【0010】
また、今まで以上に発光効率を改善し、低駆動電圧で、より消費電流の少ない素子の開発が望まれている。
【0011】
このような問題を解決するために、有機材料と無機半導体材料のそれぞれのメリットを利用する方法が考えられている。すなわち、有機ホール輸送層を無機p型半導体に置き換えた有機/無機半導体接合である。このような検討は、特許第2636341号、特開平2−139893号公報、特開平2−207488号公報、特開平6−119973号公報で検討されているが、発光特性や基本素子の信頼性で従来素子の有機ELを越える特性を得ることが困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、有機材料と無機材料の有するメリットを併せ持ち、長寿命で、効率が改善され、動作電圧が低く、低コストであり、さらには、輝度の高い有機EL素子を提供することである。
【0013】
また、特に高性能の平面型カラーディスプレー用として、実用的価値の大きい有機EL素子を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0015】
(1) 基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5eV未満の酸化物を1種以上含有し、
さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4eVの酸化物を1種以上含有し、
前記低仕事関数の酸化物が、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムおよび酸化イットリウムのいずれか1種以上である有機EL素子。
基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
前記高仕事関数の酸化物が、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロジウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウムおよび酸化トリウムのいずれか1種以上である有機EL素子。
基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
前記低仕事関数の酸化物と前記高仕事関数の酸化物との仕事関数の差が0.5〜2.5eVである有機EL素子。
基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
前記無機電子注入層は、有機層側に前記低仕事関数の酸化物が多く、電子注入電極側に前記高仕事関数の酸化物が多い構造を有する有機EL素子。
) 前記無機電子注入層は、前記高仕事関数の酸化物を5〜50mol%含有する上記(1)〜()のいずれかの有機EL素子。
(6) 前記無機電子注入層のバンドギャップは、4eV以上である上記(1)〜(5)のいずれかの有機EL素子。
) 前記電子注入電極がアルミニウムを主成分とする上記(1)〜()のいずれかの有機EL素子。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の有機EL素子は、基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有する。そして、前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として仕事関数が2.5eV未満の酸化物を1種以上含有し、さらに、高仕事関数の酸化物として仕事関数が2.5〜4eVの酸化物を1種以上含有する。
【0017】
仕事関数とは、固体から真空中に電子を取り出すのに要する最小限の仕事の大きさであり、真空中の静止自由電子の準位を基準として測定した固体フェルミ準位の深さに相当する。電子は仕事関数の小さい金属から大きい金属に向かってトンネル効果によって移動する。
【0018】
本発明では、無機電子注入層に、仕事関数が2.5eV未満の酸化物と仕事関数が2.5〜4eVの酸化物とを含有させるので、電子注入電極から電子輸送層や発光層等の有機層へ効率よく電子を注入することができ、発光輝度が向上する。すなわち、仕事関数が2.5eV未満の低仕事関数の酸化物と電子注入電極との中間に仕事関数を有する高仕事関数の酸化物を電子注入層に含有させることによって、電子が高仕事関数の酸化物を経由して低仕事関数の酸化物、有機層へと移動するため、一段階でのエネルギー障壁が小さくなり、発光層へ電子を注入しやすくなる。また、仕事関数が4.4eV程度(4.41〜4.06eV)のAl等仕事関数の大きい材料を電子注入電極として使用することが可能になる。また、電子注入層をこのような組成にすることで、有機層側から電子注入層へのホールの移動を界面でブロックすることができ、発光層でのホールと電子の再結合を効率よく行わせることができる。さらには、耐候性、耐熱性等、無機材料の有するメリットと、設計の自由度が大きい等といった有機材料の有するメリットを併せ持った有機EL素子とすることができる。
【0019】
無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5eV未満、好ましくは0.5〜2.3eVの酸化物を含有する。このような酸化物としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化セシウム(Cs2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)および酸化イットリウム(Y23)等が挙げられ、特に、酸化ストロンチウム、酸化リチウムが好ましい。これらは1種を用いても2種以上を用いてもかまわない。なお、これらの酸化物は、通常、化学量論組成で存在するが、これから多少偏倚していてもよい。
【0020】
無機電子注入層は、さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4eV、好ましくは2.5〜3.5eV、さらに好ましくは2.8〜3.5eVの酸化物を含有する。このような酸化物としては、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO、TiO2)、酸化鉄(FeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ランタン(La23)、酸化セリウム(Ce23)、酸化プラセオジム(Pr23)、酸化ネオジム(Nd23)、酸化サマリウム(Sm23)、酸化ユーロピウム(Eu23)、酸化ガドリニウム(Gd23)、酸化テルビウム(Tb23)、酸化ジスプロジウム(Dy23)、酸化ホルミウム(Ho23)、酸化エルビウム(Er23)、酸化イッテルビウム(Yb23)、酸化ルテチウム(Lu23)および酸化トリウム(ThO2)等が挙げられ、特に、酸化セリウム、酸化ハフニウムが好ましい。これらは1種を用いても2種以上を用いてもかまわない。なお、これらの酸化物は、通常、化学量論組成で存在するが、これから多少偏倚していてもよい。
【0021】
このような仕事関数が2.5〜4eVの高仕事関数の酸化物は、無機電子注入層に5〜50mol%、特に10〜40mol%含有することが好ましい。含有量がこれより多くても少なくても、電子注入能が低下し、発光輝度が低下してくる。
【0022】
低仕事関数の酸化物と高仕事関数の酸化物との組み合わせは、用いる電子注入電極と、発光層等の有機層の仕事関数を考慮して最適なものを選べばよい。つまり、低仕事関数の酸化物と電子注入電極との中間に高仕事関数の酸化物の仕事関数がくるようにすることで、エネルギー障壁を最小にすることができる。例えば、電子注入電極にAl(仕事関数4.4eV)を用い、電子注入層には、低仕事関数の酸化物としてSrO(仕事関数1.3eV)、高仕事関数の酸化物としてHfO2(仕事関数2.8eV)を含有させることが好ましい。低仕事関数の酸化物と高仕事関数の酸化物との仕事関数の差は0.5〜2.5eV、特に1〜2eVであることが好ましい。
【0023】
無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物と高仕事関数の酸化物とが均一に混合されていてもよいが、有機層側に低仕事関数の酸化物が多く、電子注入電極側に高仕事関数の酸化物が多い構造を有することが好ましい。このような構造にすることにより、電子注入電極から発光層へより効率よく電子を注入することができ、さらに輝度の向上が図れる。
【0024】
また、無機電子注入層は、バンドギャップ4eV以上、さらには5eV以上、特に6eV以上が好ましい。その上限としては、特に規制されるものではないが、通常、8eV程度である。電子親和力は、2.5〜3.5eV程度が好ましい。
【0025】
仕事関数、およびバンドギャップの値は、薄膜構造と薄膜を構成する物質で決められる。仕事関数は、光電子放射を応用したX線光電子分光法(XPS)等により、バンドギャップの値は分光法等により測定することができる。
【0026】
無機電子注入層は、通常、非晶質状態である。
【0027】
無機電子注入層の厚みとしては、特に制限はないが、0.2〜10nm、特に1〜10nm程度が好ましい。
【0028】
上記の無機電子注入層の製造方法としては、スパッタ法、EB蒸着法などの各種の物理的または化学的な薄膜形成方法などが考えられるが、スパッタ法が好ましい。
【0029】
無機電子注入層をスパッタ法で形成する場合、スパッタ時のスパッタガスの圧力は、0.1〜1Paの範囲が好ましい。スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使用される不活性ガス、例えばAr,Ne,Xe,Kr等が使用できる。また、必要によりN2 を用いてもよい。スパッタ時の雰囲気としては、上記スパッタガスに加えO2 を1〜99%程度混合してもよい。ターゲットとしては上記酸化物を用い、1元または多元スパッタとすればよい。
【0030】
なお、無機電子注入層を積層する際、有機層等がアッシングされ、ダメージを受ける恐れがある場合、無機電子注入層を2層に分けて積層するとよい。すなわち、最初に酸素を加えることなく薄く積層し、さらに酸素を加えて厚く積層する。この場合、酸素を加えないときの膜厚は全体の1/5〜4/5程度とする。このとき、酸素を加えないで成膜した酸素欠乏層は通常の酸素含有量の60〜90%程度が好ましい。また、酸素を加えて成膜した酸化層は通常の酸化物としての化学量論組成で存在するが、これから多少偏倚していてもよい。したがって、酸素欠乏層と酸化層との酸素含有量の差は、好ましくは10%以上、特に20%以上である。また、上記範囲で酸素量が連続的に変化していてもよい。
【0031】
スパッタ法としてはRF電源を用いた高周波スパッタ法や、DCスパッタ法等が使用できるが、特にRFスパッタが好ましい。スパッタ装置の電力としては、好ましくはRFスパッタで0.1〜10W/cm2 の範囲が好ましく、成膜レートは0.5〜10nm/min 、特に1〜5nm/min の範囲が好ましい。
【0032】
成膜時の基板温度としては、室温(25℃)〜150℃程度である。
【0033】
電子注入電極材料は、例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn、Zr等の金属元素単体、または安定性を向上させるためにそれらを含む2成分、3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:0.1〜50at%)、Al・Li(Li:0.01〜12at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)、Al・Ca(Ca:0.01〜20at%)等が挙げられる。また、本発明の有機EL素子では、電子注入層に高仕事関数の酸化物と低仕事関数の酸化物とを含有するため一段階でのエネルギー障壁を小さくできるので、電子注入電極に高仕事関数の物質も好ましく使用できる。電子注入電極材料としては、高仕事関数だが低抵抗のAl、または、Alを90at%以上含有する合金が特に好ましい。Alを用いることによって十分高い電子注入効率が得られる。電子注入電極層にはこれらの材料からなる薄膜、それらの2種類以上の多層薄膜が用いられる。
【0034】
電子注入電極薄膜の厚さは、電子注入を十分行える一定以上の厚さとすれば良く、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、特に1nm以上とすればよい。また、その上限値には特に制限はないが、通常膜厚は1〜500nm程度とすればよい。電子注入電極の上には、さらに補助電極(保護電極)を設けてもよい。
【0035】
補助電極の厚さは、電子注入効率を確保し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するため、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以上、さらには100nm以上、特に100〜500nmの範囲が好ましい。補助電極層が薄すぎると、その効果が得られず、また、補助電極層の段差被覆性が低くなってしまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一方、補助電極層が厚すぎると、補助電極層の応力が大きくなるため、ダークスポットの成長速度が速くなってしまう。
【0036】
補助電極は、組み合わせる電子注入電極の材質により最適な材質を選択して用いればよい。例えば、電子注入電極の電子注入効率が低く、それを確保することを重視するのであればAl等の低抵抗の金属を用いればよく、封止性を重視する場合には、TiN等の金属化合物を用いてもよい。ただし、前述した通り、本発明ではAlを電子注入電極として使用することができるので、その場合、十分な電子注入効率が得られ、補助電極は必要としない。
【0037】
電子注入電極と補助電極とを併せた全体の厚さとしては、特に制限はないが、通常50〜500nm程度とすればよい。
【0038】
ホール注入電極材料は、ホール注入層へホールを効率よく注入することのできるものが好ましく、仕事関数4.5eV〜5.5eVの物質が好ましい。具体的には、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化インジウム(In23 )、酸化スズ(SnO2 )および酸化亜鉛(ZnO)のいずれかを主組成としたものが好ましい。これらの酸化物はその化学量論組成から多少偏倚していてもよい。In23 に対するSnO2 の混合比は、1〜20wt%、さらには5〜12wt%が好ましい。また、IZOでのIn23 に対するZnO2 の混合比は、通常、12〜32wt%程度である。
【0039】
ホール注入電極は、仕事関数を調整するため、酸化シリコン(SiO2 )を含有していてもよい。酸化シリコン(SiO2 )の含有量は、ITOに対するSiO2 の mol比で0.5〜10%程度が好ましい。SiO2 を含有することにより、ITOの仕事関数が増大する。
【0040】
光を取り出す側の電極は、発光波長帯域、通常400〜700nm、特に各発光光に対する光透過率が80%以上、特に90%以上であることが好ましい。透過率が低くなると、発光層からの発光自体が減衰され、発光素子として必要な輝度を得難くなってくる。
【0041】
電極の厚さは、50〜500nm、特に50〜300nmの範囲が好ましい。また、その上限は特に制限はないが、あまり厚いと透過率の低下や剥離などの心配が生じる。厚さが薄すぎると、十分な効果が得られず、製造時の膜強度等の点でも問題がある。
【0042】
本発明の有機EL素子は、例えば図1に示すように、基板1/電子注入電極2/無機電子注入層4/発光層5/ホール注入電極3と、通常の積層構成(基板側にホール注入電極がある。)とは逆に積層された構成とするとよい。逆積層とすることにより、無機電子注入層成膜時のアッシングによる有機層へのダメージが防止できる。また、例えば図2に示すように、基板1/ホール注入電極3/発光層5/無機電子注入層4/電子注入電極2とが順次積層された構成としてもよい。この場合、無機電子注入層は上記2層構造とすればよい。これらは、例えば、ディスプレーの作製プロセスにより、適宜選択し使用される。図1、2において、ホール注入電極3と電子注入電極2の間には、駆動電源Eが接続されている。なお、上記発光層5は、広義の発光層を表し、ホール注入輸送層、狭義の発光層、電子輸送層等を含む。
【0043】
また、上記発明の素子は、電極層/無機物層(無機電子注入層)および発光層/電極層/無機物層および発光層/電極層/無機物層および発光層/電極層・・・と多段に重ねてもよい。このような素子構造により、発光色の色調調整や多色化を行うことができる。
【0044】
発光層は、少なくとも発光機能に関与する1種類、または2種類以上の有機化合物薄膜の積層膜からなる。
【0045】
発光層は、ホール(正孔)および電子の注入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。発光層には、比較的電子的にニュートラルな化合物を用いることで、電子とホールを容易かつバランスよく注入・輸送することができる。
【0046】
発光層は、必要により、狭義の発光層の他、さらにホール注入輸送層、電子輸送層等を有していても良い。
【0047】
ホール注入輸送層は、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子を妨げる機能を有するものであり、必要により設けられる電子輸送層は、無機電子注入層からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するものである。これらの層は、発光層に注入されるホールや電子を増大・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。
【0048】
発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さおよび電子輸送層の厚さは、特に制限されるものではなく、形成方法によっても異なるが、通常5〜500nm程度、特に10〜300nmとすることが好ましい。
【0049】
ホール注入輸送層の厚さおよび電子輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の厚さと同程度または1/10〜10倍程度とすればよい。ホールの注入層と輸送層とを分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で500nm程度である。このような膜厚については、注入輸送層を2層設けるときも同じである。
【0050】
有機EL素子の発光層には、発光機能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。さらには、特開平8−12600号公報(特願平6−110569号)記載のフェニルアントラセン誘導体、特開平8−12969号公報(特願平6−114456号)記載ののテトラアリールエテン誘導体等を用いることができる。
【0051】
また、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントとしての使用が好ましい。このような場合の発光層における化合物の含有量は0.01〜10wt% 、さらには0.1〜5wt% であることが好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
【0052】
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、さらには8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号、特開平3−255190号、特開平5−70733号、特開平5−258859号、特開平6−215874号等に開示されているものを挙げることができる。
【0053】
具体的には、まず、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]等がある。
【0054】
また、8−キノリノールまたはその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等がある。
【0055】
このほか、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であってもよい。
【0056】
このほかのホスト物質としては、特開平8−12600号公報(特願平6−110569号)に記載のフェニルアントラセン誘導体や特開平8−12969号公報(特願平6−114456号)に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
【0057】
発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これらの蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0058】
また、発光層は、必要に応じて、少なくとも1種のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、さらにはこの混合層中にドーパントを含有させることが好ましい。このような混合層における化合物の含有量は、0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とすることが好ましい。
【0059】
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に有利な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こりにくくなるため、有機化合物がダメージを受けにくくなり、素子寿命がのびるという利点がある。また、前述のドーパントをこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、素子の安定性を向上させることもできる。
【0060】
混合層に用いられるホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール注入輸送層に用いる化合物および電子輸送層に用いる化合物の中から選択すればよい。なかでも、ホール注入輸送性化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えばホール輸送性化合物であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。電子注入輸送性の化合物としては、キノリン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好ましい。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラアリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
【0061】
この場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度によるが、一般的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/1、さらに好ましくは10/90〜90/10、特に好ましくは20/80〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
【0062】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚み以上で、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましい。具体的には1〜85nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
【0063】
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは、樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
【0064】
ホール注入輸送層には、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234681号公報、特開平5−239455号公報、特開平5−299174号公報、特開平7−126225号公報、特開平7−126226号公報、特開平8−100172号公報、EP0650955A1等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、オリゴチオフェン、ポリチオフェン等である。これらの化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用するときは、別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0065】
ホール注入輸送層をホール注入層とホール輸送層とに分けて設層する場合は、ホール注入輸送層用の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いることができる。このとき、ホール注入電極(ITO等)側からイオン化ポテンシャルの小さい化合物の順に積層することが好ましい。また、ホール注入電極表面には薄膜性の良好な化合物を用いることが好ましい。このような積層順については、ホール注入輸送層を2層以上設けるときも同様である。このような積層順とすることによって、駆動電圧が低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成長を防ぐことができる。また、素子化する場合、蒸着を用いているので1〜10nm程度の薄い膜も均一かつピンホールフリーとすることができるため、ホール注入層にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部に吸収をもつような化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収による効率の低下を防ぐことができる。
【0066】
必要に応じて設けられる電子輸送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )等の8−キノリノールまたはその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。電子輸送層は発光層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電子輸送層の形成は、発光層と同様に、蒸着等によればよい。電子輸送層は、発光層が電子輸送層を兼ねたものとするか形成しない方が好ましい。
【0067】
ホール注入輸送層、発光層および有機材料の電子輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから、真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.2μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.2μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、ホールや電子の注入効率も著しく低下する。
【0068】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの発生・成長を抑制したりすることができる。
【0069】
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましい。
【0070】
さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐために、素子上を封止板等により封止することが好ましい。封止板は、湿気の侵入を防ぐために、接着性樹脂層を用いて、封止板を接着し密封する。封止ガスは、Ar、He、N2 等の不活性ガス等が好ましい。また、この封止ガスの水分含有量は、100ppm 以下、より好ましくは10ppm 以下、特には1ppm 以下であることが好ましい。この水分含有量に下限値は特にないが、通常0.1ppm 程度である。
【0071】
封止板の材料としては、好ましくは平板状であって、ガラスや石英、樹脂等の透明ないし半透明材料が挙げられるが、特にガラスが好ましい。このようなガラス材として、コストの面からアルカリガラスが好ましいが、この他、ソーダ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、シリカガラス等のガラス組成のものも好ましい。特に、ソーダガラスで、表面処理の無いガラス材が安価に使用でき、好ましい。封止板としては、ガラス板以外にも、金属板、プラスチック板等を用いることもできる。
【0072】
封止板は、スペーサーを用いて高さを調整し、所望の高さに保持してもよい。スペーサーの材料としては、樹脂ビーズ、シリカビーズ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等が挙げられ、特にガラスビーズ等が好ましい。スペーサーは、通常、粒径の揃った粒状物であるが、その形状は特に限定されるものではなく、スペーサーとしての機能に支障のないものであれば種々の形状であってもよい。その大きさとしては、円換算の直径が1〜20μm 、より好ましくは1〜10μm 、特に2〜8μm が好ましい。このような直径のものは、粒長100μm 以下程度であることが好ましく、その下限は特に規制されるものではないが、通常直径と同程度以上である。
【0073】
なお、封止板に凹部を形成した場合には、スペーサーは使用しても、使用しなくてもよい。使用する場合の好ましい大きさとしては、前記範囲でよいが、特に2〜8μm の範囲が好ましい。
【0074】
スペーサーは、予め封止用接着剤中に混入されていても、接着時に混入してもよい。封止用接着剤中におけるスペーサーの含有量は、好ましくは0.01〜30wt%、より好ましくは0.1〜5wt%である。
【0075】
接着剤としては、安定した接着強度が保て、気密性が良好なものであれば特に限定されるものではないが、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いることが好ましい。
【0076】
本発明において、有機EL構造体を形成する基板としては、非晶質基板、例えばガラス、石英など、結晶基板、例えばSi、GaAs、ZnSe、ZnS、GaP、InPなどが挙げられ、また、これらの結晶基板に結晶質、非晶質あるいは金属のバッファ層を形成した基板も用いることができる。また金属基板としては、Mo、Al、Pt、Ir、Au、Pdなどを用いることができ、好ましくはガラス基板が用いられる。基板は、通常光取り出し側となるため、上記電極と同様な光透過性を有することが好ましい。
【0077】
さらに、本発明の素子を、平面上に多数並べてもよい。平面上に並べられたそれぞれの素子の発光色を変えて、カラーのディスプレーにすることができる。
【0078】
基板に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0079】
色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、有機EL素子の発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0080】
また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向上する。
【0081】
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0082】
蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
【0083】
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いことが望ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロシアニン等も含む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系化合物等を用いればよい。
【0084】
バインダーは、基本的に蛍光を消光しないような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。また、基板上にホール注入電極と接する状態で形成される場合、ホール注入電極(ITO、IZO)の成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0085】
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要のない場合は用いなくても良い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べば良い。
【0086】
本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動型、パルス駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜30V 程度とされる。
【0087】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0088】
<実施例1>
ガラス基板としてコーニング社製商品名7059基板を中性洗剤を用いてスクラブ洗浄した。
【0089】
この基板上を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×10-4Pa以下まで減圧した。次いで、減圧を保ったまま、Alを200nmの厚さに蒸着し、電子注入電極とした。
【0090】
さらに、減圧を保ったまま、スパッタ装置に移し、ターゲットに、酸化ストロンチウム(SrO)と酸化ハフニウム(HfO2)とをHfO2 25mol%になるように混合したものを用い、無機電子注入層を1nmの膜厚に成膜した。このときの成膜条件として、基板温度25℃、スパッタガスArにO2 を1:1となるように混合し、成膜レート1nm/min 、動作圧力0.5Pa、投入電力5W/cm2 とした。
【0091】
減圧を保ったまま、N,N,N’,N’−テトラキス(m−ビフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)と、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )と、ルブレンとを、全体の蒸着速度0.2nm/secで40nmの厚さに蒸着し、発光層とした。TPD:Alq3 =1:1(重量比)、この混合物に対してルブレンを0.5mol%ドープした。
【0092】
次いで、TPDを蒸着速度0.1nm/secで20nmの厚さに蒸着してホール輸送層を形成し、ポリチオフェンを蒸着速度0.1nm/secで10nmの厚さに蒸着してホール注入層を形成した。
【0093】
さらに、ITO酸化物ターゲットを用いDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度250℃で、膜厚200nmのITOホール注入電極層を形成した。
【0094】
最後にガラス封止して有機EL素子を得た。
【0095】
SrO/HfO2 混合薄膜を蛍光X線分析により組成分析した結果、HfO2 の含有量は25mol%であった。
【0096】
得られた有機EL素子に空気中で、電界を印加したところ、ダイオード特性を示し、ITO側をプラス、Al側をマイナスにバイアスした場合、電流は、電圧の増加とともに増加し、封止板側から観察して通常の室内ではっきりとした発光が観察された。また、繰り返し発光動作をさせても、輝度の低下はみられなかった。
【0097】
次に、加速試験として、100mA/cm2 の一定電流で発光輝度、寿命特性を調べた。この有機EL素子の初期の輝度は5000cd/m2 であり、300時間後でも初期の輝度の80%以上の輝度を保っていた。また、本発明の有機EL素子は、リークの発生も、ダークスポットの発生も見られなかった。
【0098】
<比較例1>
Alを200nmの厚さに蒸着し、続けてLi2Oを1nmの厚さに蒸着して補助電極および電子注入電極とし、無機電子注入層を成膜する代わりにトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を蒸着速度0.2nm/secで30nmの厚さに蒸着し、電子注入輸送層とした他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
【0099】
この有機EL素子を100mA/cm2 の一定電流で連続駆動したところ、300時間以下で輝度が半減した。また、この有機EL素子は、リークやダークスポットが発生した。また、実施例のものと比べて輝度が低かった。
【0100】
<比較例2>
無機電子注入層をSrOとした他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
【0101】
この有機EL素子は、実施例のものと比べて50%程度輝度が低かった。
【0102】
<比較例3>
無機電子注入層をHfO2とした他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
【0103】
この有機EL素子は、実施例のものと比べて70%程度輝度が低かった。
【0104】
<実施例2>
実施例1において、低仕事関数の酸化物として酸化ストロンチウム(SrO)を用い、高仕事関数の酸化物として酸化セリウム(Ce23)を用いて電子注入層を成膜した他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0105】
そして、この有機EL素子を実施例1と同様に100mA/cm2 の一定電流で連続駆動したところ、実施例1と同等の初期輝度が得られ、300時間後でも初期輝度の80%以上の輝度を保っていた。また、本発明の有機EL素子は、リークの発生も、ダークスポットの発生も見られなかった。
【0106】
<実施例3>
実施例1において、低仕事関数の酸化物として、酸化ストロンチウム(SrO)の代わりに、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化ルビジウム(Rb2O)、酸化セシウム(Cs2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)または酸化イットリウム(Y23)を用いて電子注入層を成膜した他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製しても、実施例1と同様の効果が得られた。
【0107】
また、実施例1において、高仕事関数の酸化物として、酸化ハフニウム(HfO2)の代わりに、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO、TiO2)、酸化鉄(FeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ランタン(La23)、酸化プラセオジム(Pr23)、酸化ネオジム(Nd23)、酸化サマリウム(Sm23)、酸化ユーロピウム(Eu23)、酸化ガドリニウム(Gd23)、酸化テルビウム(Tb23)、酸化ジスプロジウム(Dy23)、酸化ホルミウム(Ho23)、酸化エルビウム(Er23)、酸化イッテルビウム(Yb23)、酸化ルテチウム(Lu23)または酸化トリウム(ThO2)を用いて電子注入層を成膜した他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製しても、実施例1と同様の効果が得られた。
【0108】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、有機材料と無機材料の有するメリットを併せ持ち、長寿命で、効率が改善され、動作電圧が低く、低コストであり、さらには、輝度の高い有機EL素子を提供することができる。
【0109】
また、特に高性能の平面型カラーディスプレー用として、実用的価値の大きい有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示した概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の他の構成例を示した概略断面図である。
【図3】ホール輸送層を有する2層構造の有機EL素子の断面図である。
【図4】ホール輸送層と電子輸送層を有する3層構造の有機EL素子の断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 ホール注入電極
3 電子注入電極
4 無機電子注入層
5 発光層(有機層)
11 基板
12 ホール注入電極
13 電子注入電極
14 ホール輸送層
15 発光層(有機層)
16 電子輸送層

Claims (7)

  1. 基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
    前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
    前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5eV未満の酸化物を1種以上含有し、
    さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4eVの酸化物を1種以上含有し、
    前記低仕事関数の酸化物が、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムおよび酸化イットリウムのいずれか1種以上である有機EL素子。
  2. 基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
    前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
    前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
    さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
    前記高仕事関数の酸化物が、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユーロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロジウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウムおよび酸化トリウムのいずれか1種以上である有機EL素子。
  3. 基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
    前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
    前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
    さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
    前記低仕事関数の酸化物と前記高仕事関数の酸化物との仕事関数の差が0.5〜2.5eVである有機EL素子。
  4. 基板上に、ホール注入電極と、電子注入電極と、これらの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、
    前記電子注入電極と有機層との間には、無機電子注入層を有し、
    前記無機電子注入層は、低仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5 eV 未満の酸化物を1種以上含有し、
    さらに、高仕事関数の酸化物として、仕事関数が2.5〜4 eV の酸化物を1種以上含有し、
    前記無機電子注入層は、有機層側に前記低仕事関数の酸化物が多く、電子注入電極側に前記高仕事関数の酸化物が多い構造を有する有機EL素子。
  5. 前記無機電子注入層は、前記高仕事関数の酸化物を5〜50mol%含有する請求項1〜のいずれかの有機EL素子。
  6. 前記無機電子注入層のバンドギャップは、4eV以上である請求項1〜5のいずれかの有機EL素子。
  7. 前記電子注入電極がアルミニウムを主成分とする請求項1〜のいずれかの有機EL素子。
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