JP3712103B2 - プラスチックレンズの製造方法及びプラスチックレンズ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法及びプラスチックレンズに関する。さらに詳しくは、本発明は、表面に酸化チタン微粒子を含む硬化被膜と反射防止膜とが順次積層され、かつ該硬化被膜と反射防止膜との密着性に優れると共に、耐摩耗性が良好で、着色の少ないプラスチックレンズの製造方法、及び上記特性を有するプラスチックレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックレンズは、無機ガラスレンズと比較して、軽量で割れにくく、かつ着色しやすいなどの特性を有することから、ファッション性が重視される眼鏡レンズなどに広く用いられている。
このプラスチックレンズ用樹脂としては、例えばポリジエチレングリコールビスアリルカーボネートやポリメチルメタクリレートが一般に実用化されている。
しかしながら、これらのプラスチックレンズ材料は,屈折率が1.5以下であり、無機ガラスの屈折率1.52に比べて小さく、従って、上記材料を用いたプラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて、マイナスレンズではコバ厚(レンズ周囲の厚さ)が、プラスレンズでは中心厚が、各々厚くなるのを免れない。
このように、コバ厚や中心厚が厚くなると軽量であるプラスチックレンズの優位性が損なわれる上、審美性の点でも好ましくない。また、特にマイナスレンズにおいては、コバ厚が厚くなると、屈折率や色収差が生じやすいなどの問題が生じる。そのため、屈折率のより高いプラスチックレンズ材料の開発研究が積極的になされ,近年では、1.70〜1.75の屈折率を有するプラスチックレンズが開発されている。
【0003】
ところで、プラスチックレンズは、一般的に傷がつきやすいことから、その耐摩耗性を向上させるために表面に硬化被膜を設けることが行われており、この硬化被膜について多くの提案がなされている。
プラスチックレンズ表面に設けられる硬化被膜とプラスチックレンズ基材との屈折率が異なると干渉縞が発生しやすいので、該硬化被膜の屈折率は、プラスチックレンズ基材の屈折率と同程度であることが好ましい。
プラスチックレンズ基材は、前記したように、高屈折率化の傾向にあり、高屈折率のプラスチックレンズ基材の屈折率と硬化被膜の屈折率とを同程度にするために、例えば高屈折率物質である酸化チタン微粒子を含む硬化被膜が種々提案されている(特開平2−264902号公報、特開昭60−221702号公報、特開平10−306258号公報、特開平8−113760号公報など)。
しかしながら、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜は、一般に経時により劣化する傾向を有している。したがって、この酸化チタン微粒子を含む硬化被膜上に、蒸着法により反射防止膜を形成した場合、この反射防止膜と該硬化被膜との密着性が劣化する傾向がある上、プラスチックレンズの耐摩耗性も劣化する傾向があるなどの問題が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、プラスチックレンズ基材上に、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜と反射防止膜とが順次積層され、かつ該硬化被膜と反射防止膜との密着性の劣化が抑制されると共に、耐摩耗の劣化も抑制され、しかも着色の少ないプラスチックレンズを効率良く製造する方法及び上記特性を有するプラスチックレンズを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜表面に特定の処理を施し、この上に蒸着法により反射防止膜を形成させることにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を有するプラスチックレンズ基材の該硬化被膜表面に、オゾン水処理又は酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理を施したのち、蒸着法によって反射防止膜を形成させる方法であって、該硬化被膜が、分子中にエポキシ基と、ケイ素原子に結合するアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物の加水分解物を被膜形成成分として含む酸化チタン微粒子含有コーティング液を用いて形成されたものであることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法を提供するものである。
本発明はまた、プラスチックレンズ基材上に、オゾン水処理又は酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理により表面が改質された酸化チタン微粒子を含む硬化被膜であって、分子中にエポキシ基と、ケイ素原子に結合するアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物の加水分解物を被膜形成成分として含む酸化チタン微粒子含有コーティング液を用いて形成されたものである硬化被膜と、蒸着法により形成された反射防止膜とが順次積層されてなるプラスチックレンズをも提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、レンズ材料として酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を有するプラスチックレンズ基材が用いられる。
上記の酸化チタン微粒子を含む硬化被膜における酸化チタン微粒子としては特に制限はなく、単体の酸化チタン微粒子であってもよいし、酸化チタン微粒子と他の無機酸化物微粒子との複合微粒子であってもよい。このようなものとしては、例えば特開昭60−221702号公報に開示されている単体の酸化チタン微粒子、特開平2−264902号公報に開示されている酸化セリウムと酸化チタンとの複合微粒子、特開平8−113760号公報に開示されている酸化チタン、酸化セリウム及び酸化ケイ素の複合微粒子、特開平10−306258号公報に開示されている酸化チタン、酸化セリウム及び酸化スズからなる複合微粒子などの単体及び複合微粒子、あるいは、特開昭60−221702号公報に開示されている酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどとの混合微粒子などを挙げることができる。
【0007】
また、硬化被膜の原料である被膜形成成分としては、エポキシ基とケイ素原子に結合するアルコキシル基を有する有機ケイ素化合物の加水分解物が好ましく用いられる。特に好ましくは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基と、ケイ素原子に結合する少なくとも2個のアルコキシル基とを有する有機ケイ素化合物の加水分解物である。
上記有機ケイ素化合物の具体例としては、一般式(1)
【0008】
【化1】
Figure 0003712103
【0009】
で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(1)において、R1 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、このアルキル基は直鎖状、枝分れ状のいずれであってもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基及びter−ブチル基が挙げられる。
2 は炭素数1〜4のアルキレン基を示し、このアルキレン基は直鎖状、枝分れ状のいずれであってもよいが、直鎖状のものが好ましい。このアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
【0010】
前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の好ましい例としては、γ−グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピル(トリエトキシ)シラン、2−グリシドキシエチル(トリメトキシ)シラン、2−グリシドキシエチル(トリエトキシ)シランなどを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明においては、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜の形成に、上記有機ケイ素化合物の加水分解物を被膜形成成分として含む酸化チタン微粒子含有コーティング液が用いられる。このコーティング液は、上記有機ケイ素化合物とそれを加水分解するための酸成分と、前述の酸化チタン微粒子(単体の酸化チタン微粒子又は酸化チタン微粒子と他の無機酸化物微粒子との複合微粒子)と、さらに所望により添加される硬化剤や有機溶剤などを含有するものである。
ここで、加水分解用の成分としては、無機酸、アルカリ、有機酸が一般に用いられ、有機酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸などを例示することができる。
また、所望により添加される硬化剤としては、通常使用されている公知のもの、例えばイミダゾール誘導体やアセチルアセトン金属塩などを用いることが出来るが、特にアセチルアセトンアルミニウム錯化合物が好適である。
【0012】
さらに、酸化チタン微粒子(単体の酸化チタン微粒子又は酸化チタン微粒子と他の無機酸化物微粒子との複合微粒子)の添加量は、硬化被膜中のその含有量が好ましくは5〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%になるよう選定される。
また、この酸化チタンや他の無機酸化物の微粒子の平均粒子径は、通常1〜100nm、好ましくは1〜20nmの範囲である。
【0013】
有機溶剤は、加水分解を均一に、かつその度合を適度に調節するために、所望により添加されるものであり、このようは有機溶剤としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類が好ましく、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等と組み合わせたものが好適である。この場合、全有機溶剤中のセロソルブ類の含有量は、3重量%以上が好ましく、特に10重量%以上が好ましい。
さらに、コーティング液には、所望により、塗膜の平滑性を向上させる目的でシリコーン系界面活性剤を添加することもでき、また、硬化被膜の耐光性の向上、あるいは劣化防止の目的で、紫外線吸収剤や酸化防止剤などを添加することができる。
このようにして調製されたコーティング液は、プラスチックレンズ基材上に良好にコーティングしうるものであれば、その固形分濃度及び粘度については特に制限はない。
【0014】
プラスチックレンズ基材上に前記のコーティング液を用いて硬化被膜を形成させるには、例えばディッピング法、スピンコート法、ロールコート法、スプレー法などにより該基材上に上記コーティング液を塗布したのち、好ましくは40〜150℃、より好ましくは80〜130℃の範囲の温度で、加熱して、硬化させればよい。加熱時間は1〜4時間程度で充分である。
このようにして形成された酸化チタン微粒子を含む硬化被膜の厚さは、通常0.1〜30μm、好ましくは1〜5μmの範囲である。
【0015】
本発明の方法においては、この酸化チタン微粒子を含む硬化被膜の上に反射防止膜を形成させるが、この反射防止膜を形成させる前に、上記硬化被膜表面に予め酸素ラジカル処理を施して該表面を改質しておくことが必要である。
酸素ラジカル処理は、オゾンガス処理、オゾン水処理、酸素ガスを原料とするリモートプラズマ処理などがあり、オゾン水処理、酸素ガスを原料とするリモートプラズマ処理が好ましく用いられる。また、ラジカルを有する酸素原子に水素原子等が結合したものを用いる方法も本発明の酸素ラジカル処理に該当する。
【0016】
オゾン水処理に用いるオゾン水は、例えば、市販のオゾン水製造装置を用いて製造することができる。オゾン水の原料となる水は、イオン交換、蒸留、逆浸透などの方法で得られた純水が用いられるが、必要なオゾン濃度が得られる範囲で水道水等を混合してもよい。
また、オゾン水におけるオゾン濃度が不安定にならない程度の範囲で、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、アルコ−ル等の有機溶剤等を添加することもできる。
オゾン水のオゾン濃度は、本発明が目的とする効果が得られる範囲であれば、特に限定されないが、1ppm以上が好ましく、実用的なことを考慮すれば、5ppm以上が特に好ましい。
【0017】
このオゾン水処理においては、一般にオゾン水の中に酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を施してなるプラスチックレンズ基材を浸漬させることにより、該硬化被膜表面に改質処理が行われる。
オゾン水による処理温度に関しては、特に限定されないが、オゾン水の温度が高くなると、オゾンの分解が早まり、濃度を維持しにくくなることを考慮すると、好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下である。
オゾン水への、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を施してなるプラスチックレンズ基材の浸漬時間は、硬化被膜の材料、オゾン水のオゾン濃度等の条件により大きく異なり特に限定されないが、1分以上浸漬するのが好ましい。
オゾン水に浸漬した酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を施してなるプラスチックレンズ基材は、さらなる密着性向上のために、アルカリ処理、酸処理等をすることが可能である。また、あらかじめ、アルカリ処理、酸処理等を施したプラスチックレンズ基材をオゾン水に浸漬することも可能である。
【0018】
なおコンタクトレンズをオゾン水に浸漬させてコンタクトレンズを洗浄する方法(特表平6−501112号公報)あるいはコンタクトレンズを保存する方法(特開平5−329196号公報)は、従来公知である。しかし、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を施してなるプラスチックレンズ基材における硬化被膜と、蒸着法によって形成される反射防止膜との密着性の劣化を抑制すると共に、耐摩耗性の劣化を抑制するために、本発明で定義されるプラスチックレンズ基材をオゾン水に浸漬させることは従来知られていなかった。また、かかる方法が、特に、反射防止膜と特定の硬化被膜との組み合わせにおいて、顕著な効果を有することは知られていなかった。本発明者は、上述した課題達成のために、多くの試行錯誤を繰り返した結果、本発明を見出したものである。
本発明によって硬化被膜と反射防止膜との密着性が向上する理由については必ずしも明確ではないが、硬化被膜表面がオゾン水により改質され、活性化されることによるものと考えられる。
【0019】
オゾン水処理を終えた酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を施してなるプラスチックレンズ基材は、硬化被膜表面の活性が低下する前に反射防止膜を設けるのが好ましい。オゾン水処理をした前記プラスチックレンズ基材に反射防止膜を設けるまでの時間は、硬化被膜の種類等によって異なり、一概には言えないが、通常は、24時間以内が好ましく、さらに好ましくは6時間以内である。
【0020】
一方、酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理は、従来公知の技術である。プラズマは、プラズマイオン、電子、中性のラジカルが混在した状態であるが、リモ−トプラズマ処理では、プラズマの状態からラジカルのみを、硬化被膜を施したプラスチックレンズ基材に当てる。
本発明では、酸素ガスを原料とする酸素ラジカルが用いられるが、本発明の効果を損なわない程度の範囲で、四フッ化炭素等を原料とするフッ素ラジカルを混合させてもよい。酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマの照射の程度は、本発明の効果が得られ、かつ、レンズが着色しない程度であればよい。
なお、本発明では、電子銃などを用いて、酸素イオン処理を照射することは、照射エネルギーが強いことより、レンズ基材あるいは硬化被膜の着色化を招くことから除外される。
【0021】
本発明の方法においては、プラスチックレンズの反射防止効果を向上させるために、このようにして酸化チタン微粒子を含む硬化被膜表面に酸素ラジカル処理を施して該表面を改質したのち、これに蒸着法により反射防止膜を形成させる。
蒸着法としては、例えば真空蒸着法、イオンスパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。蒸着物質としては、例えばSiO,SiO2 ,Si3 4 ,TiO2 ,ZrO2 ,Al2 3 ,MgF2 などを用いることができる。
本発明においては、反射防止膜として、単層からなるものを形成してもよいし、多層からなるものを形成してもよいが、該硬化被膜表面に接する蒸着層は、反射率、硬化被膜との密着性、耐摩耗性などを考慮すると、主として二酸化ケイ素から構成されていることが好ましい。また、反射防止膜が単層からなる場合、その光学的膜厚は、0.25λ0 (λ0 =450〜650nm)であるのが好ましい。さらに、光学的膜厚が0.25λ0 /0.25λ0 の屈折率の異なる二層膜や、光学的膜厚が0.25λ0 /0.5λ0 /0.25λ0 または0.25λ0 /0.25λ0 /0.25λ0 の屈折率の異なる三層膜よりなる多層反射防止膜、あるいは一部等価膜で置き換えた多層コートによる反射防止膜が好ましく用いられる。
【0022】
本発明で用いるプラスチックレンズ基材の材料としては特に制限はないが、その上に設けられる酸化チタン微粒子を含む硬化被膜の屈折率と同程度の屈折率を有するプラスチック材料が用いられる。このようなプラスチックレンズ材料としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−トを主成分とする共重合体、エピチオ基を有する化合物を重合した重合体、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0023】
本発明はまた、プラスチックレンズ基材上に酸素ラジカル処理により表面が改質された酸化チタン微粒子を含む硬化被膜と、蒸着法により形成された反射防止膜とが順次積層されてなるプラスチックレンズをも提供するものである。このプラスチックレンズにおける各構成要素については、前記で説明した通りである。また、このプラスチックレンズは、前述の本発明の方法により製造することができる。
【0024】
【実施例】
次に本発明を実施例により、更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の物性評価は、下記の方法に従って行った。
(a)耐磨耗性
スチールウール#0000で、スチ−ルウ−ルとレンズ面が直交する方向に、50回(往復)擦り、傷の付きにくさを以下の基準で判定した。
A:ほとんど傷がつかない。
B:極くわずかに傷がつく。
C:少し傷がつく。
D:多く傷がつく。
(b)密着性
硬化膜表面を1mm間隔のゴバン目(10×10個)にカットし、セロハン粘着テープ(ニチバン(株)製No.405)を強くはりつけ、90度方向に急激にはがして残ったゴバン目の数を調べた。
(c)YI値
分光計U3410(株式会社日立製作所製、商品名)を用い、C光源2°視野でのXYZ値より算出した。
(d)外観
肉眼でレンズの着色程度、透明性を観察した。
【0025】
実施例1
▲1▼ハードコート膜の形成
ステンレス製容器にγ−グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン1045重量部と、γ−グリシドキシプロピルメチル(ジエトキシ)シラン200重量部とを入れ、撹拌しながら0.01モル/リットル塩酸299重量部を添加し、10℃のクリーンルーム内で一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分30重量%、平均粒子径5〜8mμ、核微粒子中の構成比:Ti/Siの重量比=84/16であるので、Ti/Si原子比=3.07である。核微粒子への酸化ジルコニウム−酸化ケイ素の被覆率:7重量%、表面改質剤:γ−グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン)3998重量部にメチルセロソルブ4018重量部とイソプロパノール830重量部とを加え撹拌混合し、さらにシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製「L−7001」)4重量部とアルミニウムアセチルアセトネート100重量部とを加え、上記と同様に10℃のクリーンルーム内で一昼夜撹拌を続けたのち、上記加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行いハードコート膜形成用塗工液Aを得た。
次に、屈折率1.17のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製、商品名:テスラリッド)を前記ハードコート膜形成用塗工液Aに浸漬させ、20秒後に引き上げ速度20cm/min.で引き上げ、さらに110℃に設定したオーブン内で1時間加熱してハードコート膜を形成した。
【0026】
▲2▼酸素ラジカル処理
上記▲1▼で得られた酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を有するプラスチックレンズ基材を、ロキテクノ製オゾン水製造装置「OZ−DW3M」により製造したオゾン水の槽中に10分間浸漬処理した。オゾン濃度は自然放置で低下するので、常に一定濃度のオゾン水を供給して槽内の濃度を保つようにした。この際の水温は22℃、オゾン濃度は17ppmであった。
▲3▼反射防止膜の形成
上記▲2▼の酸素ラジカル処理した硬化被膜上に、イオンスパッタリング法により蒸着原料を蒸着させ、該硬化被膜側より、SiO2 (0.125λ0 )/Ta2 5 (0.05λ0 )/SiO2 (0.5λ0 )/Ta2 5 (0.125λ0 )/SiO2 (0.05λ0 )/Ta2 5 (0.25λ0 )/SiO2 (0.25λ0 )の7層からなる反射防止膜を形成させ、プラスチックレンズを作製した。
▲4▼劣化促進処理後の物性評価
上記▲3▼で反射防止膜を形成してなるプラスチックレンズを恒温恒湿下(40℃、湿度90%)にて7日間放置した後、耐摩耗性、密着性、YI値を測定した。その結果を第1表に示す。
【0027】
実施例2
▲2▼酸素ラジカル処理として、オゾン水処理の代わりに、酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理を行った以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果を第1表に示す。
なお、リモ−トプラズマ処理条件は、下記のとおりである。
処理パワー 250W
処理時間 15秒 (排気〜リーク 所要時間 +7分)
真空槽内圧力 13Pa
チャンバー内温度 27〜28℃
導入気体 酸素95% フレオン(CF4 )5%
流量 120ml/sec
【0028】
比較例1
▲2▼酸素ラジカル処理としてのオゾン水処理を行わなかった以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果を第1表に示す。
比較例2
▲2▼酸素ラジカル処理としてのオゾン水処理の代わりに、酸素イオン処理を行った以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果を第1表に示す。
なお、酸素イオン処理条件は、下記のとおりである。
イオン銃:カウフマン型
条件:90mA、500V、65秒
導入気体:酸素
【0029】
【表1】
Figure 0003712103
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチックレンズ基材上に、酸化チタン微粒子を含む硬化被膜と反射防止膜とが順次積層され、かつ該硬化被膜と反射防止膜との密着性の劣化が抑制されると共に、耐摩耗性の劣化も抑制され、しかも着色の少ないプラスチックレンズを効率よく製造することができる。

Claims (4)

  1. 酸化チタン微粒子を含む硬化被膜を有するプラスチックレンズ基材の該硬化被膜表面に、オゾン水処理又は酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理を施したのち、蒸着法によって反射防止膜を形成させる方法であって、該硬化被膜が、分子中にエポキシ基と、ケイ素原子に結合するアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物の加水分解物を被膜形成成分として含む酸化チタン微粒子含有コーティング液を用いて形成されたものであることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 硬化被膜表面に接する蒸着層が主として二酸化ケイ素から構成されている単層又は多層の反射防止膜を形成させる請求項1記載のプラスチックレンズの製造方法。
  3. プラスチックレンズ基材上に、オゾン水処理又は酸素ガスを原料とするリモ−トプラズマ処理により表面が改質された酸化チタン微粒子を含む硬化被膜であって、分子中にエポキシ基と、ケイ素原子に結合するアルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物の加水分解物を被膜形成成分として含む酸化チタン微粒子含有コーティング液を用いて形成されたものである硬化被膜と、蒸着法によって形成された反射防止膜とが順次積層されてなるプラスチックレンズ。
  4. 反射防止膜が、単層又は多層からなり、かつ硬化被膜表面に接する蒸着層が、主として二酸化ケイ素から構成されているものである請求項記載のプラスチックレンズ。
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