JP3669899B2 - 電子部品容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC等の静電気に敏感な電子部品の容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC等の静電気によって破壊され易い電子部品が収納される電子部品容器は、従来、電子部品と容器間の接触、摩擦により発生する静電気を除去し易く、また発生した電荷が容器中に均一に分散し電位差を生じにくくするために導電性を付与する事が一般的に行なわれている。例えば、導電性を有する金属材料、カーボン繊維やカーボンブラックを練り込んだ樹脂を成形したものを使用したり、あるいは成形後の容器表面へカーボンブラック等の導電性の塗料を塗布することにより導電性を付与したものが使用されている。
【0003】
これらの電子部品容器は静電気が発生した場合に接地により電気が逃げ易いとの特長を有し、電子部品の静電気破壊を防止してきた。しかし、そのようにしても完全に静電気破壊を防止できない場合がある。とくに、電子部品の高集積化に伴い電子部品内の配線が微細化されるに従い、導電性樹脂を電子部品容器として使用した場合に於いても、電子部品表面の静電気による障害、破壊が発生するようになり問題となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子部品の静電気破壊を防止する容器を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
従来の電子部品容器は導電性を付与することにより、発生した静電気を除電して電子部品を静電気破壊より守ろうとするものであり、IC等の電子部品との摩擦により発生する静電気の“発生し易さ”については全く考慮されていなかった。電子部品容器が導電性であっても、電子部品容器とICとの摩擦によりICは帯電し、またIC表面の封止剤は帯電し易く、更にIC外装表面の封止剤は非導電性であるために、IC外装表面に発生した電荷は電子部品容器を接地しても完全に除去出来ないということには何の配慮もしていなかった。発明者らの測定によれば導電性を有する電子部品容器であっても絶縁状態でICを収納した容器に振動を与えた場合、ICの表面の帯電電圧は1万V、2万Vを超える事があることを確認した。ICの表面に帯電した静電気はICを破壊するに十分である。
【0006】
本発明は電子部品と容器が摩擦しても静電気自体が発生しない、あるいは発生しても電子部品を破壊するまでは帯電させないというものである。即ち本発明は電子部品との摩擦により生ずる、電子部品の表面の帯電電圧の絶対値が低い電子部品容器である。IC等の電子部品と、電子部品容器あるいは電子部品容器の表面を成す樹脂組成物との摩擦による帯電電圧の絶対値を2000V以下、好ましくは1000V以下とすることにより、ICの静電気障害、および破壊を抑制することが出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる電子部品容器は樹脂製であり、当該樹脂としては、電子部品容器に収納される電子部品との摩擦帯電電圧の絶対値が低ければ低いほどよく、その値は電子部品により異なるが、20000回の摩擦回数において2000V以下、好ましくは1000V以下のものがよい。また、500回の摩擦回数において1000V以下のものも好ましい。ここで、樹脂は前記性能を満足するものであれば、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0008】
使用される熱可塑性樹脂としては収納される電子部品の封止剤に用いられている樹脂と帯電列が近いものが、摩擦帯電電圧を低くすることができる。また、収納される電子部品の封止剤に用いられている樹脂に対して帯電列で正極性と負極性のものを併用すると摩擦帯電電圧を低くすることができる。電子部品、特にICの封止剤としてはエポキシ系の樹脂が広く使われている。そのような電子部品の容器としてはエポキシ系樹脂に対して帯電列で正極側にあるポリスチレンと、負極側にあるポリエチレンの両方のブレンド物やこれらの構造を同時に有する樹脂を好適に用いることができる。例えばエチレン構造を主鎖としそれにスチレン構造がグラフトされた樹脂あるいは、スチレン構造を主鎖としそれにエチレン構造がグラフトされた樹脂がある。これらは市販のものをそのまま用いることができる。更に前期ブレンド物とこれらの樹脂を併用することもできる。
【0009】
帯電電圧の絶対値が大きいと、ICチップ等の電子部品に障害、及び破壊を生じ易くなり問題となる。また、静電気障害、破壊の発生し難い部品においても容器への部品の静電気吸着を発生し、作業性の低下を招く可能性があり好ましくない。
【0010】
電子部品容器へのICの水分除去の為に実施される120℃以上のエージング工程に耐えられる耐熱性を付与する為、耐熱性の樹脂を使用することも可能である。
【0011】
本発明の電子部品容器に用いられる樹脂には、目的の電子部品との摩擦による電子部品との帯電電圧が小さいとの特性を損なわなければ、タルク、マイカ、シリカや、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、酸化カルシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等の充填材等を添加することも可能である。また、同様に非カーボン繊維、スチール繊維、アルミニウム繊維、真鍮繊維、銅繊維、ステンレス繊維等の金属繊維、カーボン繊維、金属被覆したカーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛粉末、金属被覆したガラス繊維等の導電性物質を添加することも可能であり、これらの物質の添加により樹脂に導電性を持たせることも可能である。本発明で電子部品容器が導電性を有する事は何ら問題ではなく、好ましい形態の一つである。この場合電子部品と直接接触する層を導電化することもできるし、或いは、電子部品容器を二層以上の構造として、電子部品と直接接触しない層を導電性とすることもできる。
【0012】
更に本発明の電子部品容器および樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で補強材、発泡剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、カップリング剤、難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐熱安定剤、着色剤を配合することも可能である。
【0013】
本発明の電子部品容器に用いられる樹脂を作製する方法としては特に限定しないが、公知の方法、例えばタンブラー或いは、マゼラー等により混合した原料の、単軸押出機や二軸押出機による溶融混練押出で実施出来る。あるいは、タンブラー或いは、マゼラー等により混合した原料を用いて直接に成形することもできる。
【0014】
本発明の電子部品容器とは、特に静電気障害を生じ易い電子部品を収納する容器であり、例えばICチップ用トレイ、ICチップ用キャリアテープがある。また、静電気を生じ難い容器を使用することにより電子部品の容器への静電吸着も抑制出来るため、ベアチップ用トレイ、コンデンサ用、コネクター用等の各種部品用キャリアテープ等に使用することも可能である。トレイ形状の電子部品容器は前述のとおり一般的な油圧式、トグル式等の射出成形機にて、加熱溶融後、成形して得ることが出来、一方キャリアテープ形状については、一般的なフラットダイ法により作成したシートを真空成形、圧空成形等の公知の方法により成形して得ることがで出来る。尚、多層のフラットダイ法を用い、表層のみをICとの摩擦帯電圧の小さい樹脂組成とすることも出来る。
【0015】
【実施例】
以下実施例によって本発明を更に説明する。
【0016】
(実施例1)
ポリスチレン(東洋スチレン製トーヨースチロールHI−U2−301U、表1中「HIPS」と略記)75重量部、高密度ポリエチレン(日本ポリケム製HF−310、表1中「HDPE」と略記)25重量部、ポリスチレンとポリエチレンの相溶化材として、ポリスチレンを主鎖としポリエチレンを側鎖とするグラフト共重合物(三菱化学製VMXAN−50F、表1中「PS−g−PE」と略記)30重量部を使用し、図1に示す板状片を射出成形により成形した。この板状片を使用し、エポキシ樹脂を封止剤とする電子部品(QFP32×32のIC)との摩擦帯電電圧の測定を実施した。摩擦帯電電圧の測定方法は、図1の板状片を摩擦機上に設置し、除電気を用い板状片を除電した。一方摩擦対象物となるICについては、帯電電圧を正確に測定する目的でIC金属端子からの電荷の移動を防ぐ為、端子を切断し絶縁性テープにて同箇所を塞いだ。ICは除電気による除電を実施した後、板状片に載せ摩擦を行った。摩擦の条件は図1に示す振動方向に、振れ巾:22mm、摩擦速度;300往復/分の速度とした。摩擦終了後、ICの摩擦箇所の帯電電圧を測定し、摩擦回数;50回、200回、500回、20000回での帯電電圧を測定した。結果を表1に示すが同組成物に於いては帯電電圧の上昇が殆ど観られなかった。尚、帯電電圧の測定にはキーエンス製の帯電電圧測定器SK−030、SK−200を使用した。
【0017】
(実施例2〜7)
組成を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行った。なお、表1中でPE−g−PSはポリエチレンを主鎖としポリスチレンを側鎖とするグラフト共重合物(日本油脂社製商品名モディパ−A1100)を、ABはアセチレンブラック(電気化学工業社製)を示す。
【0018】
(比較例1)
樹脂として、ポリスチレン(東洋スチレン製トーヨースチロールHI−U2−301U)100重量部の樹脂組成物について実施例1と同様に摩擦帯電試験を実施し、摩擦回数と帯電電圧の関係を測定した。結果を表1に示すが摩擦により帯電電圧が大きく増大した。
【0019】
(比較例2)
樹脂として、ポリスチレン(東洋スチレン製トーヨースチロールHI−U2−301U)100重量部に導電化剤としてカーボンブラック(東海カーボン製シースト116)25重量部添加した体積抵抗値が102Ω・cmの導電性を有する樹脂組成物について実施例1と同様に摩擦帯電試験を実施し、摩擦回数と帯電電圧の関係を測定した。結果を表1に示すが導電性を有するにもかかわらず摩擦により帯電電圧が大きく増大した。
【0020】
(比較例3〜5)
樹脂の組成を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行った。なお、表1中でPVCは塩化ビニル樹脂、A−PETはポリエチレンテレフタレート樹脂、PCはポリカーボネート樹脂を示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003669899
【0022】
【発明の効果】
電子部品との摩擦に於いて、電子部品の表面に発生する静電気の帯電電圧の絶対値が2000V以下である電子部品容器を用いると、電子部品の静電気障害、破壊の根本的な問題である静電気の発生を抑えることにより、ICチップ等の電子部品を静電気障害、破壊から護ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ICチップとの摩擦帯電試験に使用する樹脂容器

Claims (2)

  1. 電子部品と接する面が、電子部品のエポキシ系樹脂封止剤に対して、帯電列で正極側にあるポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンを除く)と負極側にあるポリエチレンの両方のブレンド物、又はこれらの構造を同時に有する樹脂を含有してなり、該電子部品との20000回の摩擦(振れ巾:22mm、摩擦速度:300往復/分)により生ずる電子部品の表面の帯電圧が絶対値で2000V以下である電子部品容器。
  2. 電子部品と接する面が、電子部品のエポキシ系樹脂封止剤に対して、帯電列で正極側にあるポリスチレン(シンジオタクチックポリスチレンを除く)と負極側にあるポリエチレンの両方のブレンド物、又はこれらの構造を同時に有する樹脂を含有してなり、該電子部品との500回の摩擦(振れ巾:22mm、摩擦速度:300往復/分)により生ずる電子部品の表面の帯電圧が絶対値で1000V以下である電子部品容器。
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