JP3547791B2 - 高耐熱水性高シリカゼオライト及びその製造方法 - Google Patents

高耐熱水性高シリカゼオライト及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高耐熱水性高シリカゼオライト及びその製造方法に関するもので、より詳細には、結晶への成長が均一にしかも高度に行われており、優れた耐熱水性を示す高シリカゼオライト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、SiO/Alのモル比が20以上であるような高シリカ含有量ゼオライトは、疎水性を示すモレキュラーシーブ、吸着剤、触媒或いは触媒担体としての広範な用途が期待されている。
【0003】
高シリカ含有量ゼオライトを合成する方法には、シリカ源、アルミナ源、アルカリ金属成分、水及び塩基性有機窒素化化合物を水熱処理する方法(例えば特公昭46−10064号及び56−49850号公報)や、塩基性有機窒素化合物の非存在下に水性コロイドシリカゾル、アルミン酸アルカリ及び水酸化アルカリを水熱処理する方法(例えば特公昭56−49851号公報)等が知られている。
【0004】
高耐熱水性の高シリカゼオライトを製造することについても既に提案があり、特開平3−293031号及び特開平4−50115号公報には、ケイ酸ナトリウム等と硫酸アルミニウム等とを反応させて、アルミノケイ酸ゲルを製造し、このゲルを稀薄なカセイソーダ溶液中で水熱処理し、得られるゼオライトをカリウムカチオン或いは遷移金属カチオンでイオン交換させることが記載されている。
【0005】
また、本出願人の提案にかかる特開平1−172206号公報には、アルミニウム分を塩基性硫酸アルミニウムの形で含有するシリカ−アルミナのヒドロゾル、ヒドロゲルまたはキセロゲルとアルカリ金属化合物成分或いは更に追加量のシリカ成分とを水熱反応させて、SiO/Alのモル比が20以上のゼオライトを晶出させる方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者のテンプレートを用いる方法では、高価な塩基性有機窒素化合物を反応原料として必要とするばかりではなく、水熱反応に2乃至10日という著しく長い時間を必要とする問題がある。また後者のテンプレートを使用しない方法でも、やはり水熱合成に2乃至10日という著しく長い反応時間が必要であると共に、生成するゼオライトの結晶性並びに収率においても未だ十分満足し得るものではない。
また、テンプレートを使用した高シリカゼオライト、触媒金属成分によるイオン交換率が例えば35%程度と未だ低く、よりイオン交換率の高い、例えば90%以上の高シリカゼオライトの出現が望まれている。
更に、脱硝触媒等の用途においては、触媒等が高温でしかも水蒸気の存在する雰囲下におかれるが、公知の高シリカゼオライトでは、高温熱水蒸気の雰囲中では結晶が崩壊しやすい傾向がある。
【0007】
本発明者等は、比較的高濃度の中性塩を含有する水性媒質中でシリカ源とアルミナ源とを反応させ、生成ゲルを水熱処理するときには、結晶の成長が顕著にしかも均一に行われ、この高シリカゼオライトは高いイオン交換性と高い耐熱水性とを有することを見出した。
【0008】
即ち、本発明の目的は、結晶への成長が高度にしかも一様に行われており、しかも高いイオン交換性と高い耐熱水性とを示す高シリカゼオライト及びその製造方法を提供するにある。
本発明の他の目的は、比較的安価な原料を使用して、比較的短時間の内に少ない工程数で上記高シリカゼオライトを製造し得る方法を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、水溶性乃至水分散性シリカ原料と水溶性アルミナ原料とを、アルミナ分当り7.5モル倍以上の中性塩を含む水溶液中に注加終了時のpHが11乃至13になるように同時注加して、アルミノケイ酸ゲルを調製し、このアルミノケイ酸ゲルを水熱処理することを特徴とする高耐熱水性高シリカゼオライトの製造方法が提供される。
【0010】
本発明によればまた、酸化物基準モル比で表わして、一般式(1)、
kM2/m O・Al・nSiO・pHO ・・・(1)
式中、Mは金属カチオン、または水素イオンであり、
kは0.8乃至1.2の数であり、
nは 20乃至 80の数であり、
pは 0乃至 30の数であり、
mは金属カチオンの価数である、
で表わされる組成を有する高シリカゼオライトであって、長軸(a)が2μm以上、厚み(c)が0.3μm以上で、長軸(a)/短軸(b)の比が2乃至15及び長軸(a)/厚み(c)の比が4乃至50の粒子寸法範囲にある明確な長六角板状晶粒子を75個数%以上の量比で含み、且つ900℃で5時間スチーミング処理したときの結晶保持率が85%以上であることを特徴とする高耐熱水性高シリカゼオライトが提供される。
【0011】
【作用】
本発明の高シリカゼオライトの製造方法では、水溶性乃至水分散性シリカ原料と水溶性アルミナ原料とを、アルミナ分当り7.5モル倍以上、特に8乃至30モル倍の中性塩を含む水溶液中に注加終了時のpHが11乃至13になるように同時注加して、アルミノケイ酸ゲルを調製することが顕著な特徴である。
即ち、シリカ原料及びアルミナ原料を反応させる際、水性媒質中に存在する中性塩の量乃至濃度が、生成するゼオライトのX線結晶度及び結晶の粒成長の程度及び均一性に大きな影響を及ぼすことがわかった。
【0012】
例えば後述する例に示す通り、シリカ原料及びアルミナ原料を注加する水性媒質中に中性塩を添加しなかった場合(比較例1)、或いは中性塩を添加してもAl分当り7.5モル倍よりも少なかった場合(比較例2)には、X線回折法による結晶化度が相対値として80%以下であり、また生成する結晶粒子も明確な長六角板状粒子とならないか、或いは長六角板状粒子が形成されたとしても、その長軸寸法は高々2μmのオーダーである。上記比較例1の高シリカゼオライトのX線回折像を図3及びその粒子構造を表わす電子顕微鏡写真を図4に示し、上記比較例2の高シリカゼオライトのX線回折像を図5及び電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0013】
これに対して、本発明に従い、シリカ原料及びアルミナ原料を注加する水性媒質中にAl当り7.5モル倍以上の中性塩を含有させて、高シリカゼオライトのX線回折像のピークも高くなり、生成する結晶粒子も大きくてしかも明確な長六角板状粒子となる。本発明による高シリカゼオライトのX線回折像を図1に、またその電子顕微鏡写真を図2に示す。
この図2と図4及び図6との対比から、本発明による高シリカゼオライトは、その結晶粒子の形状及び大きさが特異であり、個々の粒子が明確な長六角板状結晶であると共に、その粒子サイズが大きく、しかも粒子サイズ及び形状が均一であることが了解される。
【0014】
即ち、本発明による高シリカゼオライトの粒子寸法は、電子顕微鏡観察による長軸(a)、短軸(b)及び厚み(c)の3方向寸法と、所定寸法内にある粒子の個数%とで表現されるが、本発明によるものは、
長軸(a) 2μm以上、特に3乃至15μm、
厚み(c) 0.3μm以上、特に0.5乃至3μm、
a/b 2乃至15、特に2乃至10、
a/c 4乃至50、特に4乃至30
であり、しかも上記寸法のものの個数%が75%以上、特に85%以上である。
【0015】
本発明による高シリカゼオライトの粒子形状に近いものとして、前述した特開平1−172206号公報記載のものがあり、そのX線回折像を図7及び電子顕微鏡写真を図8に示すが、この高シリカゼオライトでは、上記寸法の長六角板状晶粒子の個数%が40%以下程度であって、粒子形状及び寸法の均一性において本発明によるものとは全く相違している。
【0016】
本発明による高シリカゼオライトは、上記粒子形状及び寸法とその均一性とを有することが、耐熱水性に関して重要である。
後述する表2を参照されたい。
即ち、高シリカゼオライトであっても、明確な長六角形板状晶でないもの(比較例1)、粒子サイズが本発明の範囲よりも小さいもの(比較例2)、特定粒子の個数%が本発明の範囲よりも小さいもの(比較例6)では、何れも900℃で5時間のスチーミングが処理後での結晶保持率が70%以下であるのに対して、本発明の全ての条件を満足する場合にのみ、85%以上の結晶保持率が得られる。
【0017】
本発明による高シリカゼオライトは、Naタイプの形で、種々の金属カチオンに対して高いイオン交換率を示すことが顕著な特徴の一つである。例えば、テンプレートを用いて合成された高シリカゼオライトは、非常に高いX線結晶度を示すものでも、Cuに対するイオン交換率が20乃至40%のオーダーにすぎないが、本発明による高シリカゼオライトでは、85%以上、特に95%以上の高いイオン交換率を示す。
【0018】
本発明によれば、シリカ原料及びアルミナ原料を注加する水性媒質中に、予め一定量の中性塩を含有させるという簡単な手段で、上記特性を有する高シリカゼオライトが得られるばかりでなく、その合成も比較的短時間で行うことができ、更に粒子形状及びサイズも一定でしかも大きいため、製造時の濾過性もよく、粉体としての取扱い、例えば流動性もよいという利点を与える。
【0019】
本発明において、水性媒体中に加えた中性塩が生成する結晶を一定形状及び寸法の粒子に大きく成長させる理由は、これに決して束縛されるものではないが、水性媒体中に存在する中性塩がシリカ原料とアルミナ原料との反応により生成するアルミノケイ酸ゲルを、可溶化させることなく微細粒子に析出させるように作用し、しかもゲル中に含有される中性塩が水熱処理時に高シリカゼオライトの結晶成長を促進させるための媒晶剤としても作用するためと思われる。
【0020】
本発明において、注加終了時におけるpHが11乃至13となるように注加反応させることも重要であり、上記範囲を外れると、所定の粒子形状及びサイズの高シリカゼオライトが得られなくなる。
【0021】
【発明の好適態様】
アルミノケイ酸混合ゲルの調製
本発明による高シリカゼオライトを合成するためには、原料のシリカ成分とアルミナ成分とを中性塩水溶液中に同時注加させて得られるアルミノケイ酸混合ゲルが、酸化物基準のモル比で表わす下記式、
qNaO・Al・rSiO・xHO・yNS
式中、NSは中性塩を表わし、
qは 4乃至 15の数であり、
rは 20乃至 100の数であり、
xは2000乃至4000の数であり、
yは7.5以上の数である、
で表わされる組成であって、pHが11乃至13の範囲にあるアルミノケイ酸混合ゲルを調製することが、顕著な特徴である。
【0022】
原料のシリカ成分は、水溶性の市販のケイ酸アルカリでも、又はこのケイ酸アルカリを硫酸等の鉱酸中に撹拌下に徐々に注加し、その最終pHを0.5乃至4.0特に1乃至3の範囲とすることにより容易に得られる水分散性シリカ原料であるシリカゾルでもよい。このpHが上記範囲より高いとヒドロゾルの安定性が乏しく、一方上記範囲より低いと加熱によりゲル化する性能が乏しくなる。シリカのヒドロゾルの固形分濃度は、特に制限はないが、一般に5乃至20重量%、特に7乃至15重量%の範囲にあるのがよい。
これらのシリカ成分の濃度は、特に限定されないがSiO基準で5乃至12重量%の範囲にあればよい。
【0023】
一方、本発明においては、アルミナ成分は市販の水溶性のアルミナ原料であれば、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、及びアルミン酸アルカリ等の水溶液であれば特に限定されることなく使用できるが、好適には市販の硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム溶液が用いられる。
これらのシリカ原料とアルミナ原料とをSiO/Alのモル比で20乃至100、好ましくは30乃至80となる割合いで、この両原料溶液を硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸ナトリウム等の中性塩溶液中に下記に示す条件下に同時注加させてアルミノケイ酸混合ゲルを調製するものである。
【0024】
この混合ゲルを調製するにあたっては、両原料溶液をアルミナ分当りトータルとして7.5モル倍以上、好ましくは8乃至30モル倍の上記の中性塩溶液中に、且つ注加終了時のpHが11乃至13になるように同時注加することが特に重要である。
なお、上記pHを保持するために、両原料溶液中に水酸化ナトリウム、又は硫酸等の酸、アルカリを添加して前もってpHを調整することができる。
また、同時注加時は、特に加熱する必要はなく、常温で十分であるが、一般に60℃以下、特に5乃至30℃の範囲にあることが望ましく、且つ注加終了後は0.5乃至5時間ほど撹拌下に熟成することが望ましい。
【0025】
高シリカゼオライトの合成
本発明によれば、上記のアルミノケイ酸混合ゲルを用いることにより、従来法では高シリカゼオライトを製造するために不可欠であった高価なテンプレートを使用せずに、合成されることが顕著な特徴である。
本発明による高シリカゼオライトは、既に指摘した通り、SiO/Al比が20乃至80の数であって、長軸(a)が2μm以上、厚み(c)が0.3μm以上で、長軸(a)/短軸(b)の比が2乃至15及び長軸(a)/厚み(c)の比が4乃至50の粒子寸法範囲にある明確な長六角板状晶粒子である。
【0026】
本発明によれば、上記で得られた中性塩を含有するSiO/Alのモル比が20乃至100の範囲にあるアルミノケイ酸混合ゲルの水性スラリーを原料として使用することによって120乃至220℃の温度で、且つ3乃至100時間の条件で、水熱処理することによって、長六角板状晶粒子の高シリカゼオライトが高収率で得られるのが本発明の利点である。
また水熱処理前の混合ゲルのスラリー濃度は特に限定されないが、一般的にSiO基準で4乃至12重量%の範囲にあればよい。
【0027】
本発明によって得られた高シリカゼオライトは、後述する実施例から明らかなように、結晶が高度に成長していることにより、高シリカゼオライトとしては高いイオン交換性を有していることから、Ag,Zn,Cu,Ni,Co,Fe,Sn更にはPt,Pd,Rh,Ir等の各種の活性金属種をイオン交換させて担持させてたものは触媒、吸着剤、抗菌剤、消臭剤としての用途に有用であり、特に高いイオン交換性と高い耐熱水性を示す高シリカゼオライトであることから、高温でしかも水蒸気の存在下におかれる脱硝触媒等の用途には特に有望である。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、アルミナ分当り7.5モル倍以上の塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の中性塩水溶液中にシリカ成分とアルミナ成分を同時注加させて得られたpH11乃至13のアルミノケイ酸混合ゲルを水熱処理して得られる高シリカゼオライトは、SiO/Alのモル比が20乃至80の範囲にあり、且つ長軸/短軸の比が2乃至15、長軸/厚みの比が4乃至50である単結晶に近い長六角板状の定形高シリカゼオライトが高収率で得られた。
【0029】
更に本発明で得られた定形高シリカゼオライトは、従来の高シリカゼオライトに比較すると、イオン交換率に優れ、しかも高温の水蒸気に曝露させても、ゼオライトの結晶度及び交換金属種の担持率がほとんど低下しないことから、高耐熱水性に優れた、触媒として期待される。
【0030】
【実施例】
本発明における各項目の測定は下記の方法によった。
1.結晶化度
各粉末サンプルを関係湿度90%のデシケーター中で24時間吸湿後、理学電機(株)製、ゴニオメーターPMG−2レートメーターECP−D2・X線回折装置を用いて測定し、d=3.85±0.05(2θ=23°)のピーク高さから結晶化度を求めた。ここでは実施例1のサンプルを100%として比較した。
2.化学組成
強熱減量(=水分)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ナトリウム(NaO)の分析はJIS M 8852に準拠して行った。尚Cu,Ni,Coは原子吸光法を用いた。
3.長六角板状粒子の個数
常法により走査型電子顕微鏡(日立製S−570)で視野を変えて数枚の電子顕微鏡写真を得る。視野中の長六角板状粒子とその他の粒子の個数を数え全体中の六角板状粒子の個数%を求めた。
4.長軸・短軸、厚みの測定
測定法3.で得られた電子顕微鏡写真から代表的な長六角板状粒子50個について、メジャーを用いて長軸、短軸、厚みについて各々測定し、その平均値で示した。
5.比表面積
カエロエルバ社製Sorptomatic Series1900を使用し、BET法により測定した。
【0031】
実施例1
2Lポリエチレン製容器に純水669.4gを秤取り、ハイスターラーで撹拌下に酢酸ナトリウム(CHCOONa・3HO和光純薬製試薬1級)47.6gを溶解する。
次に下記のように調製したA液、B液をマイクロチューブポンプを用いて30分かけて注加し混合ゲルを得た。この混合ゲルの組成は4.0NaO・Al・50SiO・2550HO・15CHCOONaである。
A液:シリカゾル液(日産化学工業(株)製スノーテックス30)233.3g。
B液:純水180gに市販アルミン酸ナトリウム溶液(Al22.3%、NaO17.6%)10.7g、苛性ソーダ(和光純薬製試薬1級)5.4gを溶解した溶液。
同時注加終了後混合ゲルを30分間撹拌熟成し(熟成後のpHは12.9であった)、その後内容積約1.2Lの撹拌機付きオートクレーブに1kg入れ、室温から170℃まで3時間かけて昇温し、その温度で48時間かけて結晶化を行った。
結晶化終了後、反応液をオートクレーブから取り出し、吸引濾過法で母液と固形分を分離後、純水で十分水洗し、110℃の恒温乾燥機で16時間乾燥して高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末のX線回折図を図1に、電子顕微鏡写真(SEM像)を図2に示し、粉末性状を表1に示した。
【0032】
実施例2〜5
実施例1で酢酸ナトリウムのかわりに塩化ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して30モル倍添加する(実施例2)、硫酸ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して8モル倍添加する(実施例3)、ピロリン酸ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して8モル倍添加する(実施例4)、シュウ酸ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して8モル倍添加する(実施例5)以外は実施例1と同様に調製して高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末の性状を表1に示した。
【0033】
実施例6
実施例1で結晶化温度を200℃、処理時間を12時間とした以外は実施例1と同様に調製し、高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末の性状を表1に示した。
【0034】
実施例7
2Lのポリエチレン製容器に純水392gを秤取り、ハイスターラーで撹拌下無水硫酸ナトリウム13.2g(NaSO和光純薬製試薬特級)を溶解する。次に下記に調製したA液、B液をマイクロチューブポンプを用いて30分かけて同時に注加し混合ゲルを得た。この混合ゲルの組成は10.9NaO・Al・65SiO・2770HO・12NaSOである。
A液:珪酸ナトリウム溶液375.8g(SiO24.1%、NaO7.23%)を純水162.8gで希釈した溶液。
B液:純水220gに市販硫酸アルミニウム溶液(Al8.2%、SO18.2%)29.gと硫酸(和光純薬製試薬1級)12.1gを加えた溶液。
同時注加終了後混合ゲルを30分間撹拌熟成し(熟成後のpHは11.1であった)、その後内容積約1.2Lの撹拌機付きオートクレーブに1kg入れ、室温から170℃まで3時間かけて昇温し、その温度で24時間かけて結晶化を行った。
以後実施例1と同様に調製し高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末のX線回折図を図9に、電子顕微鏡写真(SEM像)を図10に示し、粉末性状を表1に示した。
【0035】
実施例8〜9
実施例7で硫酸ナトリウムのかわりに酢酸ナトリウム(CHCOONa・3HO和光純薬製試薬1級)をAlに対して2モル倍添加する(実施例8)、シュウ酸ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して4モル倍添加する(実施例9)以外は実施例7と同様に調製して高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末の性状を表1に示した。
【0036】
実施例10
実施例7で結晶化温度を200℃、処理時間を8時間とした以外は実施例7と同様に調製し、高耐熱水性ハイシリカゼオライト粉末を得た。
この粉末の性状を表1に示した。
【0037】
【表1】
Figure 0003547791
【0038】
比較例1
実施例1で酢酸ナトリウムのかわりに水を加え、全体量を同量にして80時間結晶化した(中性塩末添加)。結晶化度は71%と低かった。
この粉末のX線回折図を図3に、電子顕微鏡写真(SEM像)を図4に示し、粉末性状について表2に示した。
【0039】
比較例2
実施例2で塩化ナトリウム(和光純薬製試薬1級)をAlに対して4モル倍にした以外は実施例4と同様に調製した。
この粉末のX線回折図を図5に、電子顕微鏡写真(SEM像)を図6に示したが、長六角板状粒子とはならなかった。
粉末性状について表2に示した。
【0040】
比較例3
実施例1で500mlの純水中でA液、B液を同時注加後、酢酸ナトリウム(和光純薬製試薬1級)47.6gを純水169.4gに溶解した溶液を加え、以後実施例1と同様に調製した。
この粉末はケニヤアイトが生成し、長六角板状粒子とはならなかった。
粉末性状について表2に示した。
【0041】
比較例4
特開平4−50115の実施例1に準じてZSM−5類似ゼオライトを調製したが、ケニヤアイトが生成し長六角板状粒子とはならなかった。
粉末性状について表2に示した。
【0042】
比較例5
テンプレートを用いたZSM−5の合成法として特公昭62−4326の実施例1を参考に以下の仕込みモル比で調製した。
0.5NaO・5TPA−Br・Al・50SiO・3500HOこの粉末は微小粒子の凝集体で長六角板状粒子とはならなかった。
粉末性状について表2に示した。
【0043】
比較例6
特開平1−172206の実施例1によりZSM−5型ゼオライトを調製したが、一部長六角板状粒子も認められるが、全体的に粒度のバラツキが大きく不定形状粒子が多く含まれていた。
この粉末のX線回折図を図7に、電子顕微鏡写真(SEM像)を図8に示した。
粉末性状について表2に示した。
【0044】
【表2】
Figure 0003547791
【0045】
実施例11(イオン交換試験)
500mlのビーカーに純水500ml秤取り、マグネチックスターラーで撹拌下硝酸銅3水和物(和光純薬製試薬1級)1.933gを溶解する。
次に表3に示した各実施例で得られたハイシリカゼオライト15gを各々調製した硝酸銅溶液中に添加し撹拌下、室温で5時間イオン交換を行った。
イオン交換終了後吸引濾過により母液と固形分を分離し、純水1Lで十分水洗する。この操作を3回繰り返した後110℃の恒温乾燥機で16時間乾燥して銅イオン交換した耐熱水性ハイシリカゼオライトを得た。
次にコバルト、ニッケルイオン交換ゼオライトは以下のように調製した。
各実施例で得られたハイシリカゼオライト15gをゼオライト中のAl原子数に対し10倍モルのアンモニウム原子数になるように調製した塩化アンモニウム水溶液に投入し、60℃で2時間撹拌しイオン交換を行った。以後固液分離後、十分水洗した後、続けてゼオライト中のAl原子数に対して10倍モルのコバルト、ニッケルの原子数になるように0.2モル/Lの酢酸コバルト(II)4水和物((和光純薬製試薬1級)水溶液、または0.2モル/Lの酢酸ニッケル(II)4水和物((和光純薬製試薬1級)水溶液に投入後、60℃で16時間撹拌した。
イオン交換終了後吸引濾過により母液と固形分を分離し、純水1Lで十分水洗する。この操作を2回繰り返した後110℃の恒温乾燥機で16時間乾燥してコバルト、ニッケルイオン交換した耐熱水性ハイシリカゼオライトを得た。
イオン交換した粉末のイオン交換率を表3にまとめて示した。
【0046】
実施例12(耐熱水性試験)
固定床反応管に表3に示した各実施例、比較例のサンプル2gを充填し、水蒸気濃度で10%になるように水を添加した空気を100ml/min流量で流し、10℃/minのスピードで900℃まで昇温し、その温度で5時間保持した。以後電源を切りそのまま室温で放冷し、結晶の崩壊度をX線回折により求めた。
結果について表3にまとめて示した。
【0047】
【表3】
Figure 0003547791
【0048】
ここで耐熱水性(%)は以下の式で求めた。
耐熱水性(%)=(熱水処理後のピーク高さ/熱水処理前のピーク高さ)×100
【0049】
実施例13(NOガス分解試験)
表4に示した各実施例、比較例の粉末状サンプルを加圧成型し、さらに砕いて16〜20メッシュに調製したサンプル1gを常圧固定床反応管に充填し、0.1%CO、4.0%O、4.0%HO、0.03%H、0.05%C、0.1%NO、Nバランスの組成のモデルガスを700ml/minの量で流通し、500℃×30min前処理後、250℃に戻し一定速度で800℃まで昇温し50℃毎にNO分解率を測定した。(その結果を新品として表4に示した)
次に800℃まで昇温した時点から5時間その温度で処理し、再度250℃に戻した後新品と同様にNO分解率を求めた。(その結果を耐熱処理後として表4に示した)
なおNOの分解率(%)は以下の式で求めた。
NO分解率(%)=(入口NO濃度−出口NO濃度)/入口NO濃度×100
【0050】
【表4】
Figure 0003547791

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られた高シリカゼオライトのX線回折図である。
【図2】実施例1で得られた高シリカゼオライトの粒子構造を表わす走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1のゼオライトのX線回折図である。
【図4】比較例1のゼオライトの粒子構造を表わす走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例2のゼオライトのX線回折図である。
【図6】比較例2のゼオライトの粒子構造を表わす走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例6のゼオライトのX線回折図である。
【図8】比較例6のゼオライトの粒子構造を表わす走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例7で得られた高シリカゼオライトのX線回折図である。
【図10】実施例7で得られた高シリカゼオライトの粒子構造を表わす走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. 水溶性乃至水分散性シリカ原料と水溶性アルミナ原料とを、アルミナ分当り7.5モル倍以上の中性塩を含む水溶液中に注加終了時のpHが11乃至13になるように同時注加して、アルミノケイ酸ゲルを調製し、このアルミノケイ酸ゲルを水熱処理することを特徴とする高耐熱水性高シリカゼオライトの製造方法。
  2. 水熱処理を120乃至220℃の温度で3乃至100時間行う請求項1記載の製造方法。
  3. シリカ原料とアルミナ原料とをSiO/Alのモル比で20乃至100となる割合いで注加する請求項1記載の製造方法。
  4. 中性塩が無機酸または有機酸のナトリウム塩である請求項1記載の製造方法。
  5. 酸化物基準モル比で表わして、一般式、
    kM2/m O・Al・nSiO・pH
    式中、Mは金属カチオン、または水素イオンであり、
    kは0.8乃至1.2の数であり、
    nは 20乃至 80の数であり、
    pは 0乃至 30の数であり、
    mは金属カチオンの価数である、
    で表わされる組成を有する高シリカゼオライトであって、長軸(a)が2μm以上、厚み(c)が0.3μm以上で、長軸(a)/短軸(b)の比が2乃至15及び長軸(a)/厚み(c)の比が4乃至50の粒子寸法範囲にある明確な長六角板状晶粒子を75個数%以上の量比で含み、且つ900℃で5時間スチーミング処理したときの結晶保持率が85%以上であることを特徴とする高耐熱水性高シリカゼオライト。
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