JP3542552B2 - ズームレンズ及びそれを用いた光学機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はズームレンズ及びそれを用いた光学機器に関し、特にレンズ系の一部に回折光学面を用いることによって諸収差、特に色収差を良好に補正した写真用カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、そして放送用カメラ等の光学機器に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ホームビデオカメラやデジタルカメラ等の光学機器の小型軽量化に伴い、それに用いる撮像用のズームレンズとしてレンズ全長が短く前玉径が小さいことが要望されている。
【0003】
これらの目的を達成する一つの手段として、物体側の第1レンズ群以外のレンズ群を移動させてフォーカスを行う、所謂リヤーフォーカス式のズームレンズが知られている。
【0004】
一般にリヤーフォーカス式のズームレンズは第1レンズ群を移動させてフォーカスを行うズームレンズに比べて第1レンズ群の有効径が小さくなり、レンズ系全体の小型化が容易になり、また近接撮影、特に極至近撮影が容易となり、さらに小型軽量のレンズ群を移動させているので、レンズ群の駆動力が小さくて済み迅速な焦点合わせが出来る等の特徴がある。
【0005】
このようなリヤーフォーカス式のズームレンズとして、例えば特開昭62−24213号公報や特開昭63−247316号公報では物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群の4つのレンズ群を有し、第2レンズ群を移動させて変倍を行い、第4レンズ群を移動させて変倍に伴なう像面変動とフォーカスを行っている。
【0006】
一般にカメラの非使用時に収納性を高めるにはレンズを沈胴させるのが効果的であるが第2レンズ群が変倍作用の殆どの変倍機能を有する上記のようなズームレンズでは第1レンズ群、第2レンズ群の偏心に対する敏感度が大きすぎて沈胴には適さない。
【0007】
これに対して特開平10−62687号公報では、変倍比3倍程度のズームレンズにおいて、物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群の4つのレンズ群を有し、第1レンズ群を単レンズで構成すると共に第2、3、4レンズ群を移動させて変倍を行い、第4レンズ群を移動させフォーカスを行って光学系を簡素化して沈胴構造にも適した光学系を提案している。
【0008】
一方、色収差の発生を抑制する方法として近年、回折光学素子(回折光学面)を撮像光学系に応用する提案がなされている。
【0009】
例えば特開平4−213421号公報、特開平6−324262号公報では単レンズに回折光学素子を応用することで色収差の低減を図っている。
またUSP5,268,790ではズームレンズの第2レンズ群または第3レンズ群に回折光学素子を用いることを提案し、従来例に対してレンズ枚数の削減や小型化を達成しているが、レンズ枚数の削減や小型化は十分には達成されていない。
【0010】
特開平9−211329号公報、特開平11−271616号公報では、物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群の4つのレンズ群を有し、第1レンズ群を単レンズで構成すると共に行う第1レンズ群に回折光学面を導入してレンズ枚数の削減、小型化を図っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
光学系を小型化するために単にレンズ群の屈折力を強めつつ、レンズ枚数を削減しようとするとレンズ肉厚が増してしまい短縮効果が不十分になると同時に諸収差の補正が困難になってしまう。
【0012】
また非使用時にレンズを沈胴して収納しようとするとメカ構造的にどうしてもレンズの倒れなどの誤差が大きくなり、レンズの敏感度(レンズの単位変位量に対する像面の変位量の比)が大きいと光学性能の劣化や変倍時の像ゆれが生じてしまうのでレンズ群の敏感度はなるべく小さくするのが望ましい。
【0013】
正、負、正、正の屈折力のレンズ群より成る4群ズームレンズにおいて、
第2レンズ群,第4レンズ群だけを移動して変倍を行おうとすると、殆どの変倍を第2レンズ群で負担しなくてはならなくなり、どうしても第1レンズ群と第2レンズ群の屈折力は大きくせざるを得なくなる。
【0014】
これに対して特開平10−62687号公報で示されたようなズーム光学系は比較的第1レンズ群や第2レンズ群の敏感度が小さくなるので沈胴構造には適している。しかしながら第1レンズ群が変倍時固定であるので変倍比5倍以上といった大きな変倍比を得るのは困難である。
【0015】
またズーム比が5倍以上の高変倍比のズームレンズでは各レンズ群内で発生する色収差をある程度補正しておかないと変倍に伴う色収差の変動を良好に補正することが困難となる。又、光学系中に非球面を用いるとレンズ枚数を減らすことができるが、単に非球面を用いてレンズ枚数を削減しようとすると正レンズの屈折力が強くなりすぎて製造が難しいレンズ形状になり、結局変倍部の屈折力を弱くする必要が生じてレンズ全長の小型化が難しくなる。
【0016】
これに対して回折光学面を導入したズームレンズが種々と提案されているが、変倍比5倍程度でかつ簡易な構成で例えば200万画素以上のデジタルスチルカメラにも適応できるような高性能の光学系を得るにはレンズ構成を適切に設定することが必要となってくる。
【0017】
本発明では光学系の一部に回折光学面を導入し、回折光学的な作用と屈折系の色消し効果を合成することで各レンズ群で発生する色収差を低減し、変倍部の屈折力を強く維持しつつレンズ枚数を削減することでレンズ全長の小型化を達成すると共に、広角端から望遠端に至る全変倍範囲にわたり良好なる光学性能を有するズームレンズ及びそれを用いた光学機器の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明のズームレンズは、
物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群をから成り、広角端から望遠端への変倍に際して第1レンズ群と第3レンズ群は望遠端で広角端よりも物体側に位置する様に移動し、第2レンズ群は望遠端で広角端よりも像面側に位置する様に移動し、第1レンズ群は1つの正レンズで構成され、第2レンズ群は1枚の負レンズと1枚の正レンズで構成され、かつ光軸に対して回転対称な回折光学面を有しており、第2レンズ群中の負レンズの物体側のレンズ面、及び像側のレンズ面の曲率半径(非球面の場合は軸上と有効径で決定される参照球面)をそれぞれRa、Rb、第2レンズ群の回折光学面の2次項の係数をC22,4次の係数をC24,回折光学面の有効径の1/2をHとするとき
−1.5< (Rb+Ra)/(Rb−Ra)< 0.7 …(4)
5.0×10-3 <|C22・H2+C24・H4|< 5.0×10-2 …(5)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0019】
請求項2の発明は請求項1の発明において無限遠物体に対する第3レンズ群の広角端と、望遠端における横倍率を各々
β3w,β3t、広角端と、望遠端における全系の焦点距離を各々fw,ftとするとき
0.4<(β3t・fw)/(β3w・ft)< 0.9…(1)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0020】
請求項3の発明は請求項1又は2の発明において広角端から望遠端への変倍に要する第1レンズ群の移動量をm1、第3レンズ群の移動量をm3とするとき
0.35 < m1/m3 < 0.9…(2)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0021】
請求項4の発明は請求項1,2又は3の発明において全系の広角端及び望遠端における焦点距離、第2レンズ群の焦点距離を各々fw、ft、f2とするとき
【0022】
【数2】
【0023】
なる条件式を満足することを特徴としている。
【0024】
請求項5の発明は請求項1から4のいずれか1項の発明において、有限距離物体に対するフォーカスを前記第4レンズ群で行うことを特徴としている。
【0025】
請求項6の発明は請求項1から5のいずれか1項の発明において、前記第1レンズ群は回折光学面を有することを特徴としている。
【0026】
請求項7の発明は請求項1から6のいずれか1項の発明において、前記第3レンズ群は回折光学面を有することを特徴としている。
【0027】
請求項8の発明は請求項1から7のいずれか1項の発明において、前記回折光学面は少なくとも2層以上の積層構造を有していることを特徴としている。
【0028】
請求項9の発明は請求項1から8のいずれか1項の発明において、撮像素子上に像を形成することを特徴としている。
【0029】
請求項10の発明は光学機器は請求項1から9のいずれか1項のズームレンズと、該ズームレンズによって形成される像を受光する撮像素子とを有することを特徴としている。
【0030】
請求項11の発明は請求項10の発明において、前記光学機器はデジタルカメラであることを特徴としている。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のズームレンズの近軸屈折力配置の説明図である。
【0032】
図2は本発明の数値実施例1の広角端のレンズ断面図、図3,図4,図5は本発明の数値実施例1の広角端、中間、望遠端の収差図である。
【0033】
図6は本発明の数値実施例2の広角端のレンズ断面図、図7,図8,図9は本発明の数値実施例2の広角端、中間、望遠端の収差図である。
【0034】
図10は本発明の数値実施例3の広角端のレンズ断面図、図11,図12,図13は本発明の数値実施例3の広角端、中間、望遠端の収差図である。
【0035】
図14は本発明の数値実施例4の広角端のレンズ断面図、図15,図16,図17は本発明の数値実施例4の広角端、中間、望遠端の収差図である。
【0036】
図18は本発明のズームレンズを用いた光学機器の要部概略図である。
【0037】
レンズ断面図においてL1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群である。
【0038】
SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置して変倍に際して第3レンズ群と一体で移動する。
【0039】
IPは像面であり、フィルムや撮像素子(CCD)等が配置されている。
【0040】
Gはフェースプレートや光学フィルター等のガラスブロックである。
【0041】
本実施例では広角端から望遠端への変倍に際して矢印のように第1レンズ群と第3レンズ群を物体側へ第4レンズ群を物体側へ凸状の軌跡で移動させるとともに第2レンズ群を像面側へ凸状の軌跡で移動させて変倍に伴う像面変動を補正している。
【0042】
また、第4レンズ群を光軸上移動させてフォーカシングを行うリヤーフォーカス式を採用している。望遠端において無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合には矢印4cに示すように第4レンズ群を前方(物体側)に繰り出すことによって行っており、第4レンズ群の実線の曲線4aと点線の曲線4bは各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの広角端から望遠端への変倍に伴う際の像面変動を補正するための移動軌跡を示している。
【0043】
本実施例では変倍に際して第3レンズ群を物体側に移動させることにより第3レンズ群で主な変倍効果を持たせ、更に正の屈折力の第1レンズ群を物体側へ移動することで第2レンズ群にも変倍効果を持たせて第1レンズ群と、第2レンズ群の屈折力をあまり大きくすることなく5倍程度の変倍比を容易に得ている。
【0044】
本実施例では、4つのレンズ群のうち1以上のレンズ群に1以上の光軸に対して回転対称な回折光学素子(回折光学面)を設けその位相を適切に設定し、これにより回折光学素子を設けたレンズ群で発生する色収差を低減し、全変倍範囲に渡り色収差を良好に補正している。
【0045】
本発明は以上の構成によりビデオカメラや電子スチルカメラ、銀塩写真用カメラに好適な変倍比5倍程度以上Fナンバー2.8程度以上の高変倍比、大口径比を持ちかつ良好な光学性能を維持しつつ小型化を図ったズームレンズを達成している。
【0046】
本発明に係わる回折光学面は、ホログラフィック光学素子(HOE)の製作手法であるリソグラフィック手法で2値的に製作した光学素子であるバイナリーオプティックス(BINARY OPTICS)で製作しても良い。この場合更に回折効率を上げるためにキノフォームと呼ばれる鋸状の形状にするのが更に望ましい。
これらの方法で製作した型によって成形により製造しても良い。
【0047】
回折光学面を1つの層で構成した場合、ある特定の波長近辺では十分な回折効率が得られるが、それ以外の波長に対するいわゆる2次スペクトルが大きくなってして回折効率を改善するためには少なくとも2つの回折格子を組み合わせて構成される積層構造の回折光学素子にするのが良い。積層構造の回折格子にすることで、設計次数の回折効率は、使用波長全域で95%以上の高い回折効率を得ることが可能となる。
【0048】
また本発明における回折光学面は以下の式で表されるものである。
位相をφ(h)として
φ(h)=2π/λ(C2・h2+C4・h4+・・C2・i・h2i)
但し λ:基準波長(d線)
h:光軸からの距離
積層構造の回折光学素子として、材質は紫外線硬化樹脂やプラスチック材等も使用できる。又、基材によっては第1の直接基材に形成しても良い。また各格子厚が必ずしも異なる必要はなく、材料の組み合わせによっては格子厚を等しくしても良い。
【0049】
尚、本発明のズームレンズにおいて、更に変倍による収差変動を抑制し、全変倍領域において高い光学性能を有するズームレンズを得るには次の構成のうち1以上を満足させるのが良い。
(アー1)
無限遠物体に対する第3レンズ群の広角端と、望遠端における横倍率を各々
β3w,β3t、広角端と、望遠端における全系の焦点距離を各々fw,ftとするとき
0.4<(β3t・fw)/(β3w・ft)< 0.9…(1)
なる条件を満足することである。
【0050】
条件式(1)は主にレンズ系全体を小型にしつつ、第1レンズ群、第2レンズ群の敏感度があまり大きくならない様にする為のものである。
【0051】
条件式(1)の下限を超えて第3レンズ群の変倍寄与が小さくなると全系の変倍比を確保するために、第1レンズ群や第2レンズ群の屈折力を大きくする必要が生じて結果的にその敏感度が高くなって製造上の誤差の影響が大きくなる。逆に上限を超えると第3レンズ群の変倍に伴う移動量が大きくなって広角端でのレンズ全長が大きくなるので良くない。
(ア−2)
広角端から望遠端への変倍に要する第1レンズ群の移動量をm1、第3レンズ群の移動量をm3とするとき
0.35 < m1/m3 < 0.9…(2)
なる条件を満足することである。
【0052】
条件式(2)の下限を超えて第1レンズ群の移動量が小さくなり過ぎると第3レンズ群の変倍に要する移動量が大きくなって広角端でのレンズ全長が大きくなってしまう。逆に上限を超えて第1レンズ群の移動量が大きくなると望遠端でのレンズ全長が長くなり過ぎてレンズを沈胴構造化する際に沈胴段数が増えるなどの鏡筒構造への影響が出るので良くない。
(ア−3)
全系の広角端及び望遠端における焦点距離、第2レンズ群の焦点距離を各々fw、ft、f2とするとき
【0053】
【数3】
【0054】
なる条件式を満足することである。
【0055】
一般に第2レンズ群の屈折力を適切に設定しないと、第2レンズ群の移動量が大きくなり過ぎたり、敏感度が高くなりすぎて製造誤差の影響による性能劣化や変倍時の像ゆれが大きくなってしまう。
【0056】
条件式(3)は、第2レンズ群の屈折力を適切に設定し、所定の変倍比を変倍に伴う収差変動を少なくしつつ得る為のものである。
【0057】
条件式(3)の下限を超えて第2レンズ群の屈折力が小さくなり過ぎると製造誤差の影響による光学性能の劣化や変倍時の像ゆれ大きくなるので良くない。逆に上限を超えると第2レンズ群の移動量が大きくなり過ぎてレンズ全長の小型化が達成できない。
(ア−4)
第2群は負レンズと正レンズを有し、第2レンズ群中の負レンズの物体側のレンズ面、及び像側面の曲率半径(非球面の場合は軸上と有効径で決定される参照球面)をそれぞれRa、Rbとするとき、
−1.5< (Rb+Ra)/(Rb−Ra)< 0.7…(4)
なる条件式を満足することである。
【0058】
条件式(4)の下限を超えると広角端で発生する歪曲収差が負に大きくなりすぎ、逆に上限を超えると望遠端での歪曲収差が補正しきれなくなるので良くない。
(ア−5)
第2レンズ群は回折光学面を有し、第2レンズ群の回折光学面の2次項の係数をC22,4次の係数をC24,回折光学面の有効径の1/2をHとするとき
5.0×10-3 < |C22・H2+C24・H4|< 5.0×10-2…(5)
なる条件を満足することである。
【0059】
条件式(5)の下限を超えると第2レンズ群における色収差補正が不十分になって広角端での倍率色収差が補正不足になり、逆に上限を超えると補正過剰になるので良くない。
(ア−6)
有限距離物体に対するフォーカスを前記第4レンズ群で行うことを特徴とすることである。
(ア−7)
前記第1レンズ群は回折光学面を有することを特徴とすることである。
(ア−8)
前記第3レンズ群は回折光学面を有することを特徴としている。
(ア−9)
前記回折光学面は少なくとも2層以上の積層構造を有していることを特徴としている。
(ア−10)
第2レンズ群を負レンズと正メニスカスレンズの2枚のレンズで構成し、少なくとも1面の回折光学面を有するようにしてその位相を適切に設定することが良い。
【0060】
これによれば第2レンズ群で発生する色収差を低減し、変倍全域に渡って色収差を良好に補正することが容易となる。
【0061】
回折光学面なしで屈折面のみで色収差を補正しようとすると、色消しのために正レンズと負レンズの屈折力が強くなってしまうために、その屈折力を維持したまま第2レンズ群を正、負の単レンズの2枚構成といった少ない枚数で構成することは困難になる。
【0062】
第2レンズ群の色消し効果を回折光学面に分担させるには回折光学面の屈折力は負の屈折力を持つことが望ましい。回折光学面の屈折力が正になってしまうと通常の屈折光学系と発生する色収差が同じになってしまい、回折光学面による色消し効果が出ず、光学系全域で十分な色収差の補正が行えない。
(ア−11)
第2レンズ群にレンズ周辺に行くに従って負の屈折力が弱くなるような形状の非球面を導入するのが良い。
【0063】
これによればレンズ枚数削減で発生する広角端での像面湾曲や歪曲の補正を効果的に行うことが出来る。本実施例では回折光学面のベース面を非球面としている。
(ア−12)
第2レンズ群を負、正レンズの2枚構成とするのが良い。
これによれば広角端での入射瞳位置を第1面に近づけることが出来て、第1レンズ群の径を小型化できる。
【0064】
本実施例の構成で広角端での非点収差や歪曲を良好に補正するには第2レンズ群は物体側から物体側に比べて像面側に強い曲面を有する負レンズと物体側に強い凸面を有する正レンズで構成するのが良い。
【0065】
本発明のズームレンズの各実施例の特徴について説明する。
【0066】
実施例1,2では、第1レンズ群のレンズ径が大きいので、単レンズで構成することで重量を軽量化し、移動のためのアクチュエーターの負荷を低減している。
第3レンズ群は物体側から2枚の正レンズと像面側に強い凹面を有する負レンズで構成し、第2群と第3群の合成の主点間隔を小さくすることで3群以降のレンズ長を短縮している。
【0067】
また第4レンズ群はフォーカスによる球面収差等の変動を補正するために非球面が導入されている。
【0068】
実施例3では第1レンズ群を単レンズで構成すると共に回折光学面を導入することで変倍比を6程度と1群を単レンズで構成したにかかわらず更なる高変倍比化を達成している。
【0069】
第1レンズ群の回折光学面が色収差補正効果を持つには正の屈折力を有するのが良い。
【0070】
また更に1群の回折光学面のベースを非球面にすると更に広角端での歪曲収差や望遠端での球面収差やコマ収差の補正が効果的になる。
実施例4では第3レンズ群に回折光学面を導入することで、第3レンズ群の屈折力を強めながらも色収差の発生を低減し、レンズ系の小型化を図っている。
【0071】
次に本発明のズームレンズを撮影光学系として用いたビデオカメラ(光学機器)の実施形態を図18を用いて説明する。
【0072】
図18において10はビデオカメラ本体、11は本発明のズームレンズによって構成された撮影光学系、12は撮影光学系11によって被写体像を受光するCCD等の撮影素子、13は撮像素子12が受光した被写体像を記録する記録手段、14は不図示の表示素子に表示された被写体像を観察するためのファインダーである。上記表示素子は液晶パネル等によって構成され、撮像素子12上に形成された被写体像が表示される。
【0073】
このように本発明のズームレンズをビデオカメラ等の光学機器に適用することにより、小型で高い光学性能を有する光学機器を実現している。
【0074】
次に本発明の数値実施例を示す。数値実施例においてRiは物体側より順に第i番目の面の曲率半径、
Diは物体側より順に第i番目の光学部材及び空気間隔、
Niとνiは各々物体側より順に第i番目の光学部材の屈折率とアッベ数である。又前述の各条件式と数値実施例の関係を表―1に示す。
また、数値実施例における最も像面側の屈折力を持たない2面は光学フィルター、フェースプレート等を表す。
【0075】
非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にH軸、光の進行方向を正としRを近軸曲率半径、K,B,C,D,Eを各々非球面係数としたとき
【0076】
【数4】
【0077】
なる式で表している。
【0078】
【外1】
【0079】
【外2】
【0080】
【外3】
【0081】
【外4】
【0082】
【表1】
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば光学系の一部に回折光学面を導入し、回折光学的な作用と屈折系の色消し効果を合成することで各レンズ群で発生する色収差を低減し、変倍部の屈折力を維持しつつレンズ枚数を削減することでレンズ全長の小型化を達成すると共に、広角端から望遠端に至る全変倍範囲にわたり良好なる光学性能を有するズームレンズ及びそれを用いた光学機器を達成することができる。
【0084】
この他、本発明によれば以上のように正、負、正、正の屈折力のレンズ群より成る4群構成で第1,3群を物体側に移動させて変倍を行い第1レンズ群を単レンズで構成したズームレンズにおいて少なくとも1枚の光軸に対して回転対称な回折光学面を有するような構成とすることにより光学性能を良好に維持したままレンズ全長の短縮化を達成することができるズームレンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の近軸屈折力配置を示す図
【図2】本発明の数値実施例1の広角端のレンズ断面図
【図3】本発明の数値実施例1の広角端の収差図
【図4】本発明の数値実施例1の中間の収差図
【図5】本発明の数値実施例1の望遠端の収差図
【図6】本発明の数値実施例2の広角端のレンズ断面図
【図7】本発明の数値実施例2の広角端の収差図
【図8】本発明の数値実施例2の中間の収差図
【図9】本発明の数値実施例2の望遠端の収差図
【図10】本発明の数値実施例3の広角端のレンズ断面図
【図11】本発明の数値実施例3の広角端の収差図
【図12】本発明の数値実施例3の中間の収差図
【図13】本発明の数値実施例3の望遠端の収差図
【図14】本発明の数値実施例4の広角端のレンズ断面図
【図15】本発明の数値実施例4の広角端の収差図
【図16】本発明の数値実施例4の中間の収差図
【図17】本発明の数値実施例4の望遠端の収差図
【図18】本発明の数値実施例本発明の光学機器の要部概略図
【符号の説明】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
SP 開口絞り
IP 像面
d d線
g g線
ΔM メリディオナル像面
ΔS サジタル像面
10 ビデオカメラ本体
11 ズームレンズ
12 撮像素子
13 記録手段
14 ファインダー
Claims (11)
- 物体側より順に正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群をから成り、広角端から望遠端への変倍に際して第1レンズ群と第3レンズ群は望遠端で広角端よりも物体側に位置する様に移動し、第2レンズ群は望遠端で広角端よりも像面側に位置する様に移動し、第1レンズ群は1つの正レンズで構成され、第2レンズ群は1枚の負レンズと1枚の正レンズで構成され、かつ光軸に対して回転対称な回折光学面を有しており、第2レンズ群中の負レンズの物体側のレンズ面、及び像側のレンズ面の曲率半径(非球面の場合は軸上と有効径で決定される参照球面)をそれぞれRa、Rb、第2レンズ群の回折光学面の2次項の係数を C 22,4次の係数を C 24,回折光学面の有効径の1/2を H とするとき
−1.5< (Rb+Ra)/(Rb−Ra)< 0.7
5.0×10 -3 <| C 22・ H 2 + C 24・ H 4 |< 5.0×10 -2
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。 - 無限遠物体に対する第3レンズ群の広角端と、望遠端における横倍率を各々β3w,β3t、広角端と、望遠端における全系の焦点距離を各々fw,ftとするとき
0.4<(β3t・fw)/(β3w・ft)< 0.9…(1)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。 - 広角端から望遠端への変倍に要する第1レンズ群の移動量をm1、第3レンズ群の移動量をm3とするとき
0.35 < m1/m3 < 0.9…(2)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1又は2のズームレンズ。 - 有限距離物体に対するフォーカスを前記第4レンズ群で行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
- 前記第1レンズ群は回折光学面を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のズームレンズ。
- 前記第3レンズ群は回折光学面を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
- 前記回折光学面は少なくとも2層以上の積層構造を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のズームレンズ。
- 撮像素子上に像を形成することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のズームレンズ。
- 請求項1から9のいずれか1項のズームレンズと、該ズームレンズによって形成される像を受光する撮像素子とを有することを特徴とする光学機器。
- 前記光学機器はデジタルカメラであることを特徴とする請求項10に記載の光学機器。
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