JP3535319B2 - 既存構造物の補修補強方法 - Google Patents

既存構造物の補修補強方法

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JP3535319B2
JP3535319B2 JP26594096A JP26594096A JP3535319B2 JP 3535319 B2 JP3535319 B2 JP 3535319B2 JP 26594096 A JP26594096 A JP 26594096A JP 26594096 A JP26594096 A JP 26594096A JP 3535319 B2 JP3535319 B2 JP 3535319B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は橋脚、橋梁、建造物
等の既存構造物の補修補強方法、特にコンクリート製既
存構造物の補修補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】橋脚、橋梁、建造物の柱等のコンクリー
トからなる既存構造物の補修補強方法として、(1)一
方向に引き揃えた、炭素繊維、ガラス繊維、高強度有機
繊維等の強化繊維に少量の樹脂を予め含浸させて、幅方
向及び厚み方向に拘束を持たせた一方向シート材料を用
い、現場で適量の樹脂を含浸し、補強補修箇所に貼り付
け硬化させる方法、(2)現場での作業時間を短縮し、
安定な性能を発現させる目的で一方向シート材料または
織物材に予め適量の樹脂を含浸させた、いわゆるプリプ
レグを補強補修箇所に貼り付け、硬化させる方法が知ら
れている。
【0003】樹脂を硬化する方法としては、加熱オーブ
ン、ヒートブランケット、赤外線ランプなどの加熱方法
を選択する場合もあるが、非常に面倒な作業となるた
め、樹脂として比較的硬化温度の低い樹脂を使用した
り、また常温硬化型の樹脂を用いてそのまま常温で放置
して行うことが一般的である。
【0004】常温硬化型の樹脂としては、常温硬化型の
エポキシ樹脂が広く使用されているが、常温硬化とはい
え、10℃以下特に5℃以下では硬化性が著しく低下
し、硬化不良を起こしやすく、又常温で硬化し十分な補
強効果を得るためには、十分な硬化養生期間(通常1週
間程度)を設ける必要があった。
【0005】さらに、硬化性に優れる樹脂、例えば不飽
和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を用いた場
合には、ポットライフ、可使時間が短く、作業中に硬化
してしまう恐れがあり、十分な作業時間を確保できない
といった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決し、常温で十分な可使時間の確保が可能で安定な
作業性を有し、かつ常温及び低温で良好な硬化性を有
し、短時間で硬化し、早期に補強効果を発揮する既存構
造物の補修補強方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、2液常温硬化
型樹脂の一方の樹脂液(A液)を既存補強物の補修補強
箇所に塗布した後、そのA液塗布面に強化繊維からなる
シート状物を貼り付け、貼り付けた強化繊維からなるシ
ート状物の表面に2液常温硬化型樹脂のもう一方の樹脂
液(B液)を塗布し、そのB液塗布面に更にA液を塗布
し2液常温硬化型樹脂を硬化することを特徴とする既存
構造物の補修補強方法を要旨とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に使用される強化繊維とし
ては、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、あるいはア
ラミド繊維等の高強度有機繊維など通常強化繊維として
使用される高強度あるいは高弾性の繊維が挙げられる。
さらにこれらの強化繊維を混合したものを使用しても差
し支えない。
【0009】その中でも特に炭素繊維が好ましく、引張
弾性率150Gpa以上、引張強度3Gpa以上のもの
がより好ましい。さらに炭素繊維表面にラジカル反応性
基を有する低分子量化合物を付与されたものが最も好ま
しい。
【0010】ラジカル反応性基を有する低分子量化合物
としては、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルア
クリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル系単官
能単量体、又はエチレングリコールジアクリレート、ト
リエチレングリコールジアクリレート等の多官能単量体
あるいはメタクリル酸、メチルメタクリレート等メタク
リレート系単官能単量体、又はエチレングリコールジメ
タクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレー
ト等の多官能単量体等のビニル単量体あるいは(メタ)
アクリロイル基を有する各種のオリゴマーが例示でき、
処理する方法としては、ラジカル反応性基を有する低分
子量化合物を含有する溶液等に炭素繊維を通過せしめ乾
燥するなど通常用いられる方法が上げられる。特に好ま
しいものとしてビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリ
ル酸、メタクリル酸とを反応して得られる(メタ)アク
リレートを末端に有するビスフェノール誘導体が挙げら
れる。
【0011】本発明に使用される強化繊維からなるシー
ト状物としては、前述の強化繊維からなる織布、一方向
配列シート状物、又比較的短い強化繊維をランダムに配
向したマット、シート等いずれの形態でも使用できる。
さらに、これらを組み合わせたもの及びこれらの強化繊
維からなるシート状物に予め樹脂を含浸したいわゆるプ
リプレグも使用できる。予め含浸する樹脂としては、後
述する2液硬化型樹脂と同系統の樹脂が挙げられる。
【0012】特に本発明においては、強化繊維からなる
シート状物として、(a)一方向に引き揃えた強化繊維
のシート状物を横切って繊維を配置したもの、(b)一
方向に引き揃えられた強化繊維からなるシート状物の少
なくとも一方の面に強化繊維と直交する方向に熱融着性
繊維を強化繊維の長手方向に沿って3〜150mmの間
隔で配置し、熱融着したもの、(c)一方向に引き揃え
られた強化繊維からなるシート状物の少なくとも一方の
表面に熱可塑性樹脂からなる又は熱可塑性樹脂で被覆さ
れたネット状支持体、ウエブ状支持体等の熱融着性繊維
布帛を熱融着したもの、が好ましく使用される。
【0013】ここで、上記(a)は、強化繊維をたて糸
に、強化繊維あるいはその他の繊維例えばガラス繊維、
アラミド繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、アクリ
ル系樹脂あるいはメタクリル系樹脂を繊維状に賦型した
もの等をよこ糸として織るあるいは絡めることにより製
造される。
【0014】また、(b)は、強化繊維を一方向に引き
揃えシート状とし、強化繊維と直交する方向に熱融着性
繊維を配置し、熱融着することにより製造される。使用
する熱融着性繊維としては、室温以上の温度で溶融し接
着性を示す繊維あるいは、熱融着性を示す物質を表面に
配する繊維、あるいは熱融着性繊維とそうでない繊維の
交絡糸、あるいはこれらの繊維を組み合わせたもの等を
意味する。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミ
ド、アクリル系あるいはメタクリル系樹脂等の繊維及び
これらの繊維を易融着処理した繊維、あるいはガラス繊
維などの繊維表面にポリアミド等熱融着可能な物質を付
着した繊維、ガラス繊維などの繊維とポリアミド糸等を
交絡処理したものを例示できるがこれらに限定されるも
のでない。配置するとは単に表面に置くことあるいは強
化繊維をたて糸に熱融着性繊維をよこ糸に織るあるいは
絡める等を意味する。 配置する間隔は、3〜150m
mが好ましく、より好ましくは、3〜15mmである。
配置する間隔がこれよりも小さいとシート状物の扱い性
は良好であるが、強化繊維の拘束が強く成りすぎて樹脂
の含浸性が低下する傾向にあり、又これよりも大きいと
シート状物としての扱い性が低下する傾向にあり好まし
くない。熱融着性繊維を配置した後、加熱し強化繊維と
融着することにより(b)を得ることができる。
【0015】これらの中でも好ましい強化繊維からなる
シート状物として、引張強度3GPa以上、引張弾性率
150GPa以上の高強度高弾性の強化繊維をたて糸と
し、該たて糸より低い引張弾性率の繊維を緯糸とする強
化繊維シートであって、よこ糸が融点差50℃以上の二
種の繊維からなる1m当たりの重量が0.1g以下の複
合糸であり、且つたて糸方向におけるよこ糸の間隔が3
〜15mmであって、よこ糸を構成する低融点繊維によ
りたて糸とよこ糸とが接着されている強化繊維からなる
シート状物であり、更にはよこ糸として使用する複合糸
が、引張弾性率50〜100GPa、融点200℃以上
の高融点繊維(例えばガラス繊維)と、引張弾性率50
GPa以下、融点150℃以下の低融点繊維(例えばポ
リアミド繊維)とを、150℃以下の温度で融解又は軟
化する高分子化合物(ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸
ビニル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、ポリ
アクリル酸エステル、ポリエステル、ポリエチレン、ポ
リブタジエン系共重合体がその代表例)を0.5〜10
重量%付着させて一体化した複合糸を用いた前記強化繊
維からなるシート状物であり、より好ましくは、よこ糸
に付着させる高分子化合物が、後述する2液常温硬化型
樹脂に溶解する高分子化合物である前記強化繊維からな
るシート状物を挙げることができる。
【0016】そして、(c)は、強化繊維を一方向に引
き揃えシート状とし、その少なくとも一方の表面に室温
以上の温度で溶融し接着性を示す熱可塑性樹脂からなる
あるいは熱可塑性樹脂で被覆されたネット状支持体、ウ
エブ状支持体等の熱融着性繊維布帛を熱融着することに
より製造される。熱融着性繊維としては、ポリプロピレ
ン、ポリアミド、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂等
からなる繊維が例示され、ネット状支持体のネットの目
開きは、樹脂の含浸性の観点からは広い方が好ましく目
開き部分の多角形の一辺が1mm以上であって、その目
開き面積が10mm2 以上が好ましい。一辺が2.5m
m以上で目開き面積が15mm2 以上であればより好ま
しい。一方、強化繊維のほつれ防止、切断時の扱い性の
観点からは、目開きは小さいことが好ましく、一辺が2
0mm以下で目開き面積が500mm2以下であること
が好ましい。
【0017】ウエブ状支持体とは、短繊維あるいは長繊
維の絡み合ったシート状物である。ネット状あるいはウ
エブ状支持体の目付は、得られる成形物の機械的特性特
に層間せん断強度保持及び強化繊維からなるシート状物
の樹脂含浸性の点から、20g/m2以下が好ましい。
【0018】強化繊維として炭素繊維を使用する場合、
シート状物としての好適な炭素繊維の目付としては、1
00〜800g/m2 が好ましく、より好ましくは15
0〜600g/m2 である。
【0019】炭素繊維の目付が100g/m2 未満であ
ると樹脂の含浸は良好であるものの、シート状物として
の取り扱い性が低下し、特にシートにスリットが発生し
易くなる傾向にあり好ましくなく、又貼り付け枚数が多
くなって作業が煩雑となる。800g/m2 を超える
と、樹脂の含浸性が悪化する傾向にあり、樹脂中の硬化
剤、硬化促進剤の拡散が不十分となり、樹脂が硬化不足
になり易く好ましくない。
【0020】本発明で使用する2液常温硬化型樹脂と
は、常温で単独では安定であるが、2液が接触混合する
ことにより硬化が開始する樹脂であり、2成分以上の硬
化剤成分、例えば硬化剤と硬化促進剤等を分離して、そ
れぞれ2分割された主剤樹脂に混合されているものであ
る。
【0021】本発明に使用する樹脂は、2液常温硬化型
の樹脂であれば、いずれの樹脂でも使用できるが、エポ
キシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹
脂、アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノー
ル樹脂等が具体例として挙げられる。その中でも反応速
度の面から、ラジカル重合性2液常温硬化型樹脂が好ま
しく、ビニルエステル、不飽和ポリエステル更にアクリ
ル系、アリルフタレート系等の不飽和基を有する単量体
及びこれらの混合物が使用できる。
【0022】中でも、最も好ましい2液常温硬化型樹脂
として少なくとも一種の(メタ)アクリレートモノマー
と分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリル基を有す
る反応性オリゴマーとを主成分とするアクリル樹脂を例
示することができる。
【0023】(メタ)アクリレートモノマーとしては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレ
ート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)
アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレー
ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)ア
クリル酸、アリル(メタ)アクリレート等、通常アクリ
ル樹脂に使用されているモノマーがそのまま使用出来
る。エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリ
メチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の分子内に
2個以上の(メタ)アクリル基を有する多官能モノマー
も当然使用出来る。これらのアクリル系モノマーは必要
に応じ、2つ以上を混合して使用しても、もちろん差し
支えない。
【0024】分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリ
ル基を有する反応性オリゴマーとしては、比較的低分子
量の(メタ)アクリレート系共重合体、スチレン系共重
合体或いはスチレン・アクリルニトリル共重合体の末端
に(メタ)アクリル基を付加したいわゆるマクロモノマ
ーの他、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸とエチレン
グリコール、ブタンジオール等の多価アルコールと(メ
タ)アクリル酸の反応で得られるポリエステルポリ(メ
タ)アクリレート、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸
とエチレングリコール、ブタンジオール等の多価アルコ
ールとトリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペン
タエリスリトールトリアリルエーテル等のアリルエーテ
ル基含有アルコールと(メタ)アクリル酸との反応で得
られるアリルエーテル基含有ポリエステルポリ(メタ)
アクリレート、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との
反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート、フ
タル酸、アジピン酸等の多塩基酸とエポキシ樹脂とペン
タエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロール
プロパンジアリルエーテル等のアリルエーテル含有アル
コールと(メタ)アクリル酸との反応により得られるア
リルエーテル基含有エポキシポリ(メタ)アクリレー
ト、ポリオールとポリイソシアネートと水酸基含有(メ
タ)アクリレートモノマーとの反応で得られるウレタン
ポリ(メタ)アクリレート、ポリオールとポリイソシア
ネートとペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ト
リメチロールプロパンジアリルエーテル等のアリルエー
テル基含有アルコール及び2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート等の水酸基含有単量体との反応で得ら
れるアリルエーテル基含有ウレタンポリ(メタ)アクリ
レート等を例示出来るが、必ずしもそれらに限定される
ものではない。
【0025】本発明で使用されるラジカル重合性2液常
温硬化型樹脂の硬化剤と硬化促進剤の組み合わせとして
は、任意に選択可能であるが、有機過酸化物と芳香族3
級アミン、有機過酸化物と芳香族3級アミン及び/又は
金属石鹸の組み合わせが一般的に使用される。
【0026】硬化剤として使用する有機過酸化物として
は、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパ
ーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の一種又は二
種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0027】また、硬化促進剤として使用する芳香族3
級アミンとしては、ジメチルトルイジン、ジエチルトル
イジン、ジイソプロピルトルイジン、ジヒドロキシエチ
ルトルイジン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、
ジイソプロピルアニリン、ジヒドロキシエチルアニリン
等の一種又は二種以上の組み合わせが挙げられ、金属石
鹸としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト
等の一種又は二種以上の組み合わせが挙げられる。更に
ラウリルメルカプタン、ジフェニルスルフィド等のメル
カプタン、ジスルフィド化合物等も硬化促進剤として用
いられる。
【0028】樹脂液の粘度としては、20℃において5
〜104 センチポイズ、より好ましくは20℃において
5〜800センチポイズである。これよりも高粘度であ
ると樹脂の塗工性、強化繊維からなるシート状物への樹
脂の含浸性が悪化し、良好な硬化成型物が得られない場
合があるのみならず、樹脂中の硬化剤、硬化促進剤の拡
散が不十分となり、樹脂が硬化不足になり易く好ましく
ない。
【0029】また、種々の特性を改善するために、種々
の添加剤、例えば可塑剤、耐候剤、帯電防止剤、潤滑
剤、離型剤、染料、顔料、消泡剤、重合抑制剤、各種充
填剤等を添加してもよい。
【0030】特に、空気遮断作用、硬化物表面への光沢
性付与、耐汚れ性の向上を目的としてパラフィンワック
ス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワッ
クス等のパラフィン類、ワックス類やステアリン酸、
1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸の添加
が好ましい。
【0031】本発明においては、2液常温硬化型樹脂の
一方の樹脂液(A液)を既存補強物の補修補強箇所に塗
布した後、そのA液塗布面に強化繊維からなるシート状
物を貼り付け、貼り付けた強化繊維からなるシート状物
の表面に2液常温硬化型樹脂のもう一方の樹脂液(B
液)を塗布し、そのB液塗布面に更にA液を塗布して硬
化させることが樹脂の十分な硬化特に表面の十分な硬化
を確保する点で必要である。
【0032】強化繊維からなるシート状物を貼り付けに
は、強化繊維からなるシート状物を予め塗布したA液に
押しつける、ローラがけをする等のA液の含浸作業が含
まれ、更に強化繊維からなるシート状物の表面へのB液
及びその塗布面へのA液の塗布には、強化繊維からなる
シート状物へのB液及びその塗布面へのA液の単なる塗
布のみならず毛羽ローラ、溝切りローラなどによるシー
ト状物への両樹脂液の含浸作業、及び両液の混合作業が
含まれる。
【0033】既存構造物の補修補強箇所とは、既存構造
物の表面であってもよいし、既存構造物の表面に塗布し
たプライマー面であっても良いし、既に強化繊維からな
るシート状物が貼り付けた面あるいは貼り付け硬化せら
れたその表面であってもよい。補修補強面の大きさ、可
使時間、環境温度等により硬化剤、硬化促進剤の量の調
整が可能である。
【0034】本発明により補修補強を実施するに先立
ち、既存構造物の表面の下地処理をすることは接着を強
固にし十分な補修補強効果を得る上で極めて好ましい。
下地処理は、例えば、まず既存構造物表面に塗装等が施
して有る場合にはこれを取り除き、表面を平滑に研磨処
理した後、本発明で使用する樹脂と接着性が良好な下地
処理剤で欠陥部分を埋める、あるいはプライマーを表面
に塗布する。
【0035】本発明において、2層の強化繊維からなる
シート状物で補修補強する場合には、既存補強物の補修
補強箇所に塗布したA液上に強化繊維からなるシート状
物を貼り付け、その強化繊維からなるシート状物の表面
にB液を塗布し、そのB液塗布面に更にA液を塗布した
1層目が硬化する前に強化繊維からなるシート状物を貼
り付け、その上からB液を塗布し、さらにA液を塗布す
ればよい。さらに3層以上の補修補強層を形成する場合
は、上記の強化繊維からなるシート状物の貼り付け、B
液の塗布、A液の塗布を1単位として1層目の上に繰り
返し積層していけばよい。
【0036】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。
【実施例】
(実施例1)TEX番手22.5(0.0225g/
m)のガラス繊維(引張弾性率72.5GPa、融点8
40℃、比重2.54g/cm3 )とトータルデニール
が70デニールの低融点ポリアミドのマルチフィラメン
ト(融点125℃、比重1.08g/cm3 )とを撚合
わせ、エチレン酢酸ビニル共重合体(融点80℃)を撚
合わせ糸1000m当たり1.5g付着させて複合糸を
得た。この複合糸の1m当たりの重量は約0.03g、
高融点繊維と低融点繊維の複合比率は体積比で1対0.
8であった。
【0037】三菱レイヨン(株)製炭素繊維パイロフィ
ルTR30G(引張強度4.5GPa、引張弾性率23
5GPa、フィラメント数12000本)を繊維目付が
300g/m2 になるように引き揃えてたて糸とし、よ
こ糸として上記複合糸を用いて、よこ糸の間隔が5mm
になるように織成して、更に、この織物を180℃に加
熱した一対のロール間を通過させることにより、たて糸
をよこ糸が部分的に接着した強化繊維からなるシート状
物を得た。
【0038】メチルメタクリレート70部、1,3−ブ
チレングリコールジメタクリレート2部、末端にメタク
リル基を有する数平均分子量が6000のn−ブチルア
クリレートマクロモノマー25部、n−パラフィン1
部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1
部を均一になるまで十分に混合し、最後にN,N−ジメ
チル−p−トルイジン2部を添加混合し、硬化促進剤を
含み硬化剤を含まない樹脂液Aを得た。20℃での樹脂
粘度は75センチポイズであった。
【0039】また、N,N−ジメチル−p−トルイジン
2部の代わりにベンゾイルパーオキサイド4部を添加混
合し、硬化剤を含み、硬化促進剤を含まない樹脂液Bを
得た。20℃での樹脂粘度は75センチポイズであっ
た。
【0040】JIS A1132に準拠したコンクリー
ト製曲げ試験体の強化繊維からなるシート状物貼り付け
面に樹脂液Aを塗布量が125g/m2 程度になるよう
に毛羽ローラーを用いて塗布し、強化繊維からなるシー
ト状物を強化繊維の配列方向がコンクリート試験体の長
手方向となる様に貼り付け、樹脂液A塗布面に強化繊維
からなるシート状物を軽く押さえることで樹脂液Aを軽
く含浸させた。その上に、250g/m2 程度となるよ
うに樹脂液Bを毛羽ローラーで塗布し、強化繊維からな
るシート状物に含浸した。さらに樹脂液B塗布面に、樹
脂液Aを125g/m2 程度となるように毛羽ローラー
で塗布し、最後に溝切りローラーで含浸、両液の混合を
促し、そのまま放置した。樹脂液Aも樹脂液Bも単独で
は常温で安定であるが、混合後は速やかに反応が進行
し、約30分で硬化した。樹脂液Aも樹脂液Bも強化繊
維からなるシート状物に容易に含浸し、作業はスムーズ
に進行し、一人で一度の樹脂調製で20個のコンクリー
ト試験体への貼付作業は余裕をもって終了し、何の困難
もなかった。硬化は樹脂液Bの塗布から約1時間で完了
し、指触による点検で硬化不良箇所もなかった。1時間
半後にコンクリートとの接着性を建研式で評価したとこ
ろ破壊はコンクリート部分で起こり、十分な接着強度が
得られていることが確認された。
【0041】次いでJIS A1106に準拠して曲げ
試験を実施し、補強効果の確認を行った。補強無しの場
合の曲げ強度は90kgf/cm2 であったが、補強を
行うことで160kgf/cm2 に向上した。
【0042】(比較例1)メチルメタクリレート70
部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート2
部、末端にメタクリル基を有する数平均分子量が600
0のn−ブチルアクリレートマクロモノマー25部、n
−パラフィン1部、γ−メタクリロキシプロピルトリメ
トキシシラン1部を均一になるまで十分に混合し、次に
N,N−ジメチル−p−トルイジン1部を添加混合し
た。最後に、ベンゾイルパーオキサイド50%可塑剤希
釈品2部を添加混合し、直ぐにJIS A1132に準
拠したコンクリート製曲げ試験体の強化繊維からなるシ
ート状物貼付け面に塗布量が250g/m2 程度になる
ように毛羽ローラーで塗布し、実施例1と同一の強化繊
維からなるシート状物を強化繊維の配列方向とコンクリ
ート試験体の長手方向が合う様に貼り付けた後、更に2
50g/m2 程度の樹脂液をその上に毛羽ローラーで塗
布、含浸し、最後に溝切りローラーで含浸を促し、その
まま放置した。樹脂液の常温での硬化時間は約25分で
あったが、強化繊維からなるシート状物が取扱易く、樹
脂液の含浸も容易なため作業はスムーズに進行し、6個
の試験体への貼付作業は、困難はなかった。しかし一人
で12個の試験体を一度の樹脂調製で実施したところ、
途中で樹脂が硬化し、貼り付け作業を中断せざるを得な
かった。
【0043】貼り付けが終了した試験体について、硬化
剤添加後1時間半後にコンクリートとの接着性を建研式
引張試験で評価した。破壊はコンクリート部分で起こ
り、十分な接着強度が得られていることが確認された。
次いでJIS A1106に準拠し曲げ試験を実施し、
補強効果の確認を行った。補強を行うことで160kg
f/cm2 に向上した。
【0044】(比較例2)実施例1と同様にして、樹脂
液A及び樹脂液Bを調製した。コンクリート製曲げ試験
体の強化繊維からなるシート状物貼付面に樹脂液Aを塗
布量が250g/m2 程度になるように毛羽ローラーで
塗布し、実施例1と同一の強化繊維からなるシート状物
を貼り付けた後、更に250g/m2 程度の樹脂液Bを
その上に毛羽ローラーで塗布し、最後に溝切りローラー
で含浸と両液の混合を促し、そのまま放置した。樹脂液
Aも樹脂液Bも単独では常温で安定であるが、混合後は
速やかに反応が進行し、約30分で硬化した。樹脂液A
もBも強化繊維からなるシート状物に容易に含浸し、作
業はスムーズに進行し、20個の試験体への貼付作業
は、何の困難もなかった。樹脂液Bの含浸から約1時間
後、指触による硬化不良箇所の点検では、一部の試験体
でB液の表層部分で硬化不良が部分的に認められた。1
時間半後にコンクリートとの接着性を建研式で評価した
ところ破壊はコンクリート部分で起こり、十分な接着強
度が得られていることが確認された。次いで曲げ試験を
実施し、補強効果の確認を行った。補強を行うことで1
50kgf/cm2 に向上した。
【0045】(実施例2)コンクリート製曲げ試験体へ
の貼付作業を5℃の環境下で実施する他は実施例1と同
様にして試験片を作成し、評価した。5℃の環境下でも
2時間後には十分硬化し、指触による点検では硬化不良
箇所は認められなかった。接着性試験においてはコンク
リート部分で破壊することを確認した。また、曲げ強度
は158kgf/cm2 と向上しており、低温での施工
においても十分な補強効果が発現することを確認した。
【0046】(実施例3)実施例1と同様にして、強化
繊維からなるシート状物、樹脂液A及び樹脂液Bを調製
した。JIS A1132に準拠したコンクリート製曲
げ試験体の強化繊維からなるシート状物貼り付け面に上
記樹脂液Aを塗布量が125g/m2 程度になるように
毛羽ローラーで塗布し、強化繊維からなるシート状物を
強化繊維の配列方向がコンクリート試験体の長手方向と
なる様に貼り付け、樹脂液Aを軽く強化繊維からなるシ
ート状物に含浸させた。次にその上に、250g/m2
程度の樹脂液Bを同様に塗布し、強化繊維からなるシー
ト状物に同様に含浸し、さらに樹脂液B塗布面に、樹脂
液Aを250g/m2 程度となるように同様に塗布し、
強化繊維からなるシート状物を強化繊維の配列方向がコ
ンクリート試験体の長手方向となる様に貼り付け、樹脂
液Aを軽く強化繊維からなるシート状物に含浸させた。
次にその上に、250g/m2 程度の樹脂液Bを同様に
塗布し、強化繊維からなるシート状物に含浸し、さらに
樹脂液B塗布面に、樹脂液Aを125g/m2 程度とな
るように同様に塗布し、最後に溝切りローラーで含浸、
両液の混合を促し、そのまま放置した。樹脂液Aも樹脂
液Bも単独では常温で安定であるが、混合後は速やかに
反応が進行し、約30分で硬化した。樹脂液Aも樹脂液
Bも強化繊維からなるシート状物に容易に含浸し、作業
は比較的スムーズに進行し、6個のコンクリート試験体
への貼付作業は、何の困難もなかった。硬化は最後の樹
脂液Bの塗布から約20分で完了し、指触による硬化不
良箇所もなかった。1時間半後にコンクリートとの接着
性を建研式で評価したところ破壊はコンクリート部分で
起こり、十分な接着強度が得られていることが確認され
た。
【0047】(実施例4)日本ユピカ(株)社製ビニル
エステル樹脂ネオポール8250Lを100重量部に対
して日本油脂(株)製パーメックN(55%メチルエチ
ルケトンパーオキサイド)2重量部を混合し樹脂液Aを
調製した。20℃での樹脂粘度は100センチポイズで
あった。
【0048】一方、ネオポール8250Lを100重量
部に対して6%ナフテン酸コバルト1重量部を混合し樹
脂液Bを調製した。20℃での樹脂粘度は100センチ
ポイズであった。
【0049】樹脂としてこのビニルエステル樹脂を用い
る以外は、実施例1と同様にしてコンクリート試験体へ
の貼り付けを実施した。樹脂液Aも樹脂液Bも単独では
常温で安定であるが、混合後は速やかに反応が進行し、
約40分でゲル化した。樹脂液Aも樹脂液Bも強化繊維
からなるシート状物に容易に含浸し、作業はスムーズに
進行し、20個のコンクリート試験体への貼付作業は余
裕をもって終了し、何の困難もなかった。硬化は樹脂液
Bの塗布から約2時間で表面の粘着性は無くなり、指触
による硬化不良箇所もなかった。1日後にコンクリート
との接着性を建研式で評価したところ破壊はコンクリー
ト部分で起こり、十分な接着強度が得られていることが
確認された。次いでJIS A1106に準拠して曲げ
試験を実施し、補強効果の確認を行った。補強を行うこ
とで145kgf/cm2 に向上した。
【0050】(実施例5)武田薬品工業(株)社製不飽
和ポリエステル樹脂プロミネートP−991を100重
量部に対して日本油脂(株)製パーメックN(55%メ
チルエチルケトンパーオキサイド)2重量部を混合し樹
脂液Aを調製した。20℃での樹脂粘度は700センチ
ポイズであった。
【0051】一方、プロミネートP−991を100重
量部に対して6%ナフテン酸コバルト1重量部を混合し
樹脂液Bを調製した。20℃での樹脂粘度は700セン
チポイズであった。樹脂としてこの不飽和ポリエステル
樹脂を用いる以外は、実施例1と同様にしてコンクリー
ト試験体への貼り付けを実施した。樹脂液Aも樹脂液B
も単独では常温で安定であるが、混合後は速やかに反応
が進行し、約45分でゲル化した。樹脂液Aも樹脂液B
も強化繊維からなるシート状物に容易に含浸し、作業は
スムーズに進行し、20個のコンクリート試験体への貼
付作業は余裕をもって終了し、何の困難もなかった。硬
化は樹脂液Bの塗布から約2時間で表面の粘着性は無く
なり、指触による硬化不良箇所もなかった。1日後にコ
ンクリートとの接着性を建研式で評価したところ破壊は
コンクリート部分で起こり、十分な接着強度が得られて
いることが確認された。次いでJIS A1106に準
拠して曲げ試験を実施し、補強効果の確認を行った。補
強を行うことで140kgf/cm2 に向上した。
【0052】(実施例6)三菱レイヨン社製炭素繊維パ
イロフィルTR−30G(フィラメント数12000
本)を2.5mm間隔300mm幅で一方向に目板及び
櫛を用いてシート状に引き揃えその両表面に熱融着性不
織布としてダイセル化学社製ダイアミドスパン(目付1
3g/m2 )を配置し、温度130℃、圧1kg/cm
2 に設定した加熱ローラを40秒かけて通過させ熱融着
性不織布を炭素繊維に融着することにより強化繊維から
なるシート状物2を得た。
【0053】強化繊維からなるシート状物として強化繊
維からなるシート状物2を用いる以外は、実施例1と同
様にして、コンクリート試験体への貼り付けを実施し
た。20個のコンクリート試験体への貼付作業は余裕を
もって終了し、何の困難もなかった。硬化は樹脂液Bの
塗布から約1時間で完了し、指触による硬化不良箇所も
なかった。1時間半後にコンクリートとの接着性を建研
式で評価したところ破壊はコンクリート部分で起こり、
十分な接着強度が得られていることが確認された。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、橋脚、橋梁、建造物の
柱等のコンクリートからなる既存構造物を、短時間で周
りの温度、環境に煩わされることなく、極めて容易に補
修補強を実施することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴村 靖 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (72)発明者 小西 偉夫 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目1番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (56)参考文献 特開 平8−158665(JP,A) 特開 平1−139208(JP,A) 特開 昭62−23749(JP,A) 特開 昭62−33973(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E04G 23/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2液常温硬化型樹脂の一方の樹脂液(A
    液)を既存補強物の補修補強箇所に塗布した後、そのA
    液塗布面に強化繊維からなるシート状物を貼り付け、貼
    り付けた強化繊維からなるシート状物の表面に2液常温
    硬化型樹脂のもう一方の樹脂液(B液)を塗布し、その
    B液塗布面に更にA液を塗布し2液常温硬化型樹脂を硬
    化することを特徴とする既存構造物の補修補強方法。
  2. 【請求項2】 2液常温硬化型樹脂が、ラジカル重合性
    2液常温硬化型樹脂である請求項1記載の既存構造物の
    補修補強方法。
  3. 【請求項3】 2液常温硬化型樹脂が、不飽和ポリエス
    テル樹脂、ビニルエステル樹脂若しくはアクリル樹脂又
    はこれらの樹脂の2種以上の混合物であって、20℃に
    おいて5〜104 センチポイズの粘度を有する樹脂であ
    ることを特徴とする請求項2記載の既存構造物の補修補
    強方法。
  4. 【請求項4】 強化繊維からなるシート状物が、一方向
    に引き揃えた強化繊維からなるシート状物の少なくとも
    一方の面に熱融着性繊維布帛を熱融着したものである請
    求項1、2、又は3記載の既存構造物の補修補強方法。
  5. 【請求項5】 強化繊維からなるシート状物が、一方向
    に引き揃えた強化繊維からなるシート状物の少なくとも
    一方の面に強化繊維と直交する方向に熱融着性繊維を強
    化繊維の長手方向に沿って3〜150mmの間隔で配置
    し熱融着したものである請求項1、2又は3記載の既存
    構造物の補修補強方法。
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