JP3087240B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリチウム二次電池に関
し、詳細にはリチウムの樹枝状結晶の生成を防止するこ
とができるリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】リチウム一次電池は、カード型計算器、
カメラ、腕時計等の様なポータブル用電子製品に用いら
れる電源として、近年大量に使用されているが、リチウ
ム二次電池の商品化は遅れているのが現状である。その
理由は、純粋なリチウムをリチウム二次電池の負極用物
質として使用すると、充電と放電の過程でセパレーター
に浸透するリチウムの樹枝状結晶が生成し、その結果短
絡がおこって安全性を確保することができないからであ
る。
【0003】そこで、より安全なリチウム二次電池を供
給するために、純粋なリチウムを負極用物質として用い
る代わりに種々の代替物質を用いた研究がなされてお
り、具体的には、例えばLiAlの様なリチウム合金、
炭素粉や層状化合物等の様にリチウムイオンの挿入(in
tercalation )および脱離(deintercalation )に適し
た物質等の使用が試みられている。例えばWeiss 等は、
負極用物質としてTi(HPO42 ・H2 Oの化学式
を有するα−りん酸チタン(α−TiP)の使用を提案
しており[M. A. Weiss およびE. Michael. Z. Naturfo
rsch, B22 巻, 1100頁 (1967年) ]、またS. Allulli等
はTi(PO42 (H2 PO4 )・2H 2 Oの化学式
を有するγ−りん酸チタン(γ−TiP)の使用を提案
している[S. Allulli, C. Ferragina, A. LaGinestra,
M. A. Massucci およびN. J. Tomassini, Inorg. Nuc
l. Chem. 39巻, 1043頁 (1977年) ]。
【0004】しかしながら、いずれのリチウム二次電池
についてもリチウムの樹枝状結晶の生成を完全に防止す
ることはできず、十分な安全性を確保するには至ってい
ないものであり、電圧および容量等の点で電池としての
特性を十分に発揮させることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたのもであり、その目的は、リチウムの樹
枝状結晶の生成を防止することができる結果、安全で、
且つ作動電圧および放電容量が大きくしかも放電電圧が
定常である等の電池として要求される特性にも優れたリ
チウム二次電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
ができた本発明のリチウム二次電池は、負極用物質とし
て層状のりん酸チタン:TiO(OH)(H2PO4)を
用いるところに要旨を有するものである。上記層状のリ
ン酸チタンは、好ましくは(a)水酸化テトラメチルア
ンモニウム、二酸化チタンおよびりん酸の混合物を15
0℃以上の温度で加熱し(b)次いで水素陽イオン交換
に付した後、(c)真空熱処理することにより得られる
ものである。
【0007】本発明のリチウム二次電池に用いられる正
極用物質としては、LiCoO2 またはLiNiO2
用いることが好ましい。また、本発明のリチウム二次電
池に用いられる電解質は、炭酸エチレンと炭酸ジメチル
の等量溶液(v/v )または炭酸プロピレンと炭酸ジエチ
ルの等量溶液(v/v )に対して、それぞれ1モルのLi
ClO4 を含むものが好ましい。
【0008】
【作用】本発明のリチウム二次電池の特徴は、負極用物
質として、層間構造を有し且つリチウムイオンの挿入お
よび脱離の際に層間距離が変化する層状のりん酸チタン
[化学式:TiO(OH)(H2 PO4 )で表されるも
のであり、上記層状のりん酸チタンをLTPと略記す
る]を使用する点にある。上記LTPは、純粋なリチウ
ムではなく層間構造を有するリチウム化合物であるた
め、充電または放電過程においてリチウム金属が負極に
結晶することなく、リチウムの樹枝状結晶の生成を防止
することができる他、それ自身が還元されることができ
る還元可能(reducible )なチタンイオンを含有してい
るので、電気化学的にイオンが挿入する酸化還元反応
(redox reaction)が進行し易い。例えば、上記LTP
を負極用物質として使用した場合、n−ブチルリチウム
中では、次の様な反応が行われる。 この様に上記反応の下では、Lix ・LTP化合物は2
個のリチウムイオンを含み得るので、リチウムイオンの
挿入をスムースに行うことができるのである。
【0009】本発明に用いられるLTPを調製するに当
たっては、熱水を溶媒として用いるいわゆる水熱反応を
用いることが好ましく、その反応条件は、使用する原料
物質や反応容器等によって適宜選択される。LTPの調
製方法の一例を図1を用いて説明する。図1は、LTP
の製造工程に用いられるステンレススチール製加圧反応
器21の概略図であり、この反応器21はステンレス外殻21
aおよびテフロン製ライニング層21bから構成される本
体と、その本体に螺合されるステンレス製蓋21cから構
成され、該ステンレス製蓋21cと本体は、ステンレス製
バネ21dによって密閉できる様になっている。まずテト
ラメチルアンモニウム・りん酸チタン(NMe4 TPと
略記する)を水熱反応によって調製する。NMe4 TP
の調製方法は特に限定されず、例えば、水酸化テトラメ
チルアンモニウム[N(CH3 4 OH]溶液:0.0
5モルに、りん酸:0.15モルとアナターゼ型の二酸
化チタン(TiO2 ):0.05モルを混合し、得られ
た混合物をテフロン内張りのステンレススチール製加圧
反応器に入れて密封した後、150℃以上の温度(好ま
しくは180℃)、6〜7気圧の圧力下で3日間加熱す
る。次にこれを冷却した後、加圧反応器を開けて反応物
をろ過し、蒸留水で洗浄して空気中で乾燥することによ
りNMe4 TPを得る。
【0010】次に、この様にして得られたNMe4 TP
を濃塩酸溶液中に入れ、室温で5日間水素陽イオン交換
に付すことにより、純粋な層状のりん酸チタン[TiO
2 (H2 PO4 )(H3 O)]が得られる。その後、1
10℃で真空熱処理することにより、本発明に用いられ
るLTPを調製することができる。
【0011】この様にして得られたLTPは、通常約1
モルの結晶水を含んでおり、結晶面の層間距離は10オ
ングストロームであることに留意されたい。該LTPの
X線回析(XRD)のパターンを図2に示す。金属リチ
ウムは、水との反応性が高いため、LTPの層状構造
は、リチウムと水の反応によって発生する強塩基によっ
て壊される恐れがあることから、リチウムイオンの挿入
に先立って結晶水を除去することが必要である。結晶水
を除去した後の層間距離は8.9オングストロームにな
る。
【0012】本発明のリチウム二次電池は上述した様に
負極用物質を規定する点に特徴を有するものであり、電
池を構成する他の構成要件(正極用物質、電解質等)に
ついては特に限定するものではない。好適な実施態様で
は、本発明に用いられる正極用物質は、LiCoO2
たはLiNiO2 であり、本発明に用いられる電解質
は、炭酸エチレンと炭酸ジメチルの等量溶液(v/v )ま
たは炭酸プロピレンと炭酸ジエチルの等量溶液(v/v )
に対して、それぞれ1モルのLiClO4 を含むもので
ある。あるいは、上記電解質としては、炭酸エチレン、
炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、炭酸ジエチルのうちの
2種以上の混合溶液に対して、それぞれLiClO4
含むものを用いることもできる。
【0013】本発明において、負極用物質としてLTP
を使用し、正極用物質としてLiCoO2 ,LiNiO
2 またはLi・LTPを使用するリチウム二次電池は、
槽電圧4V、実用作動電圧3V、充電電圧および放電電
圧は定常であるので、ポータブル用電子製品(3ボル
ト)等に好適に用いることができる。
【0014】以下実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0015】
【実施例】以下の実施例では、図3に示す試験電池を使
用した。図中、10はガラス管であり、詳細には、雌ネ
ジ付の端部11、11’に、それぞれテフロン製の円形
キャップ8、8’が螺合されており、該ガラス管の中央
部の直径が小さくなっている構造を有する。1および7
は、それぞれ負極電流および正極電流の給電線として使
用されるステンレススチール製の棒である。これらのス
テンレススチール製の棒1および7の直径は、ガラス管
10の内径と実質的に同じであり、ネジ付の端部11、
11’から円形キャップ8および8’を通してガラス管
10に挿入される結果、密閉された空間12を形成する
ことになる。また、2は銅製のコレクター、3は負極、
4は透過性物質からなるセパレーター、5は正極、6は
アルミニウム製のコレクターである。ステンレススチー
ル製の棒1および7の外側端部は、電源からの電流を入
力するための電線(図示せず)に各々接続され、密閉さ
れた空間12には電解質が充填されている。
【0016】以下の実施例2および3において、負極3
は、負極粉末[LTP粉:85重量%、アセチレンブラ
ック:5重量%、フッ化ポリビニリデン(PVDF):
10重量%]と溶媒の等量物(w/w )を混合することに
より得られるペーストを、アルミニウム箔に塗着するこ
とによって調製する。また、正極5は、LiCoO2
またはLiNiO2 粉:85重量%、アセチレンブラッ
ク:5重量%およびPVDF:10重量%を混合するこ
とにより得られるペーストを、アルミニウム箔に塗着す
ることによって調製する。
【0017】また電解質は、炭酸エチレン(EC)と炭
酸ジメチル(DMC)の等量溶液(v/v )または炭酸プ
ロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)の等量溶液
(v/v )に対して、それぞれ1モルのLiClO4 を含
むものを使用する。
【0018】実施例1 本実施例は、本発明で用いられるLTPにリチウムイオ
ンが挿入および脱離する特性について実験したものであ
る。図3に示す試験電池において、負極用物質としてリ
チウム、正極用物質としてLTP、および電解質として
1モルのLiCLO4 を含有するECとDMCの等量溶
液(v/v )を用いた。試験電池をカットオフ電圧が0.
1Vになるまで電流密度:0.4mA/cm2 で充電
し、その後カットオフ電圧が2.4Vになるまで電流密
度:0.2mA/cm2 で放電した。図4に、得られた
充電曲線および放電曲線をグラフ化して表す。
【0019】図4に示す様に、充電過程、即ちリチウム
イオンの挿入過程では作動電圧は全く定常で約0.14
Vのままであり、また放電過程中、即ちリチウムイオン
の脱離過程では、作動電圧は約0.5Vのままでこれも
定常であった。このことは本発明に用いられるLTPが
リチウムイオンの挿入および脱離特性に優れていること
を示すものである。
【0020】実施例2 図3に示す試験電池において、負極用物質としてLT
P、正極用物質としてLiCoO2 またはLiNiO
2 、電解質としてLiClO4 1モルを添加したECと
DMCの等量溶液(v/v )を用いた。試験電池をカット
オフ電圧が4Vになるまで電流密度0.8mA/cm2
で充電した後、カットオフ電圧が2.5Vになるまで電
流密度0.4mA/cm2 で放電した。
【0021】図5に、得られた充電曲線および放電曲線
をグラフ化して示す。図5に示す様に、正極用物質とし
てLiCoO2 またはLiNiO2 を用いた場合、放電
曲線において作動電圧はいずれも4Vから3Vへ低下し
た後は定常で3Vのままであった。
【0022】図6に、本実施例の放電容量とサイクルの
関係をグラフ化して示す。図6に示す様に負極用物質と
してLTP、正極用物質としてLiCoO2 を用いた場
合、最初の10サイクルでの平均放電容量は200mA
h/gであり、負極用物質としてLTP、正極用物質と
してLiNiO2 を用いた場合、最初の10サイクルで
の平均放電容量は175mAh/gであった。この結果
から明らかな様に、負極用物質としてLTP、正極用物
質としてLiNiO2 またはLiCoO2 を用いると、
175mAh/gから225mAh/gの範囲の放電容
量が得られ、この数値は、負極用物質としてコークスか
らの炭素粉を用いた場合に得られる数値とほぼ同じであ
り、非常に良好なものである。
【0023】実施例3 図3に示す試験電池において、負極用物質としてLT
P、正極用物質としてLiCoO2 および電解質として
LiClO4 1モルを添加したPCとDECの等量溶液
(v/v )を使用した。この試験電池をカットオフ電圧が
4Vになるまで電流密度:0.8mA/cm2 で充電し
た後、カットオフ電圧が2.5Vになるまで電流密度:
0.4mA/cm2 で放電した。
【0024】図7に得られた放電容量、効率およびサイ
クルの関係をグラフ化して示す。図7に示す様に、最初
の10サイクルでは平均放電容量:約195mAh/
g、効率:約60%と極めて良好な結果が得られたこと
から、負極用物質としてLTP、正極用物質としてLi
CoO2 を用い、電解質としてPCとDECの混合溶液
を用いた場合でも電池としての特性が極めて優れている
ことが分かる。
【0025】
【発明の効果】本発明のリチウム二次電池は上述した様
に構成されているので、充電過程および放電過程でリチ
ウムの樹枝状結晶が生成せず、作動電圧が高く放電容量
も大きくしかも放電電圧が安定している等、電池として
の特性に極めて優れたものである。
【0026】また、本発明に用いられるLTPは、反応
工程が容易な低温下(180℃)での水熱反応によって
調製することができるので、高純度の生成物を効率よく
大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】LTPの製造に用いられる加圧反応器の概略図
である。
【図2】本発明に用いられるLTPのX線回析パターン
を示すグラフである。
【図3】本実施例で使用した試験電池の構造を示す概略
図である。
【図4】実施例1における充電曲線および放電曲線を示
すグラフである。
【図5】実施例2における充電曲線および放電曲線を示
すグラフである。
【図6】実施例2における放電容量とサイクルの関係を
示すグラフである。
【図7】実施例3における放電容量、効率およびサイク
ルの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ステンレススチール製の棒 2 銅製のコレクター 3 負極 4 セパレーター 5 正極 6 アルミニウム製のコレクター 7 ステンレススチール製の棒 8,8’ 円形キャップ 10 ガラス管 11,11’ 雌ネジ付の端部 12 密閉された空間 21 ステンレススチール製加圧反応器 21a ステンレス外殻 21b テフロン製ライニング層 21c ステンレス製蓋 21d ステンレス製バネ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−74457(JP,A) 特開 平3−81908(JP,A) 特開 平2−162605(JP,A) J.CHEM.SOC.DALTON TRANS.1989 No.5 pp. 829−835 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/58 C01B 25/37 JICSTファイル(JOIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 負極用物質として層状のりん酸チタン
    TiO(OH)(H 2 PO 4 を用いることを特徴とする
    リチウム二次電池。
  2. 【請求項2】 前記層状のりん酸チタンが、 (a)水酸化テトラメチルアンモニウム、二酸化チタン
    およびりん酸の混合物を150℃以上の温度で加熱し、 (b)次いで水素陽イオン交換に付した後、 (c)真空熱処理することにより得られるものである請
    求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 【請求項3】 正極用物質としてLiCoO2 またはL
    iNiO2 を用いるものである請求項1または2に記載
    のリチウム二次電池。
  4. 【請求項4】 電解質が、炭酸エチレンと炭酸ジメチル
    の等量溶液(v/v )または炭酸プロピレンと炭酸ジエチ
    ルの等量溶液(v/v )に対して、それぞれ1モルのLi
    ClO4 を含むものである請求項1〜3のいずれかに記
    載のリチウム二次電池。
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