JP2802546B2 - 希土類磁石粉末の製造方法 - Google Patents

希土類磁石粉末の製造方法

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JP2802546B2
JP2802546B2 JP6514587A JP51458793A JP2802546B2 JP 2802546 B2 JP2802546 B2 JP 2802546B2 JP 6514587 A JP6514587 A JP 6514587A JP 51458793 A JP51458793 A JP 51458793A JP 2802546 B2 JP2802546 B2 JP 2802546B2
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義信 本蔵
浩成 御手洗
千里 三嶋
義一 天弘
浩 松岡
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、磁気異方性に優れた希土類元素(以下、R
で示す。)−Fe−B系合金磁石粉末の製造方法、磁気異
方性および温度特性に優れたR−Fe−B−Co系合金磁石
粉末の製造方法およびその粉末に関するものであり、ま
た工業的に量産する場合に磁気特性のばらつきが少ない
安定した製造法に関するものである。
さらに、上記のR−Fe−B−Co系合金磁石粉末を用い
て射出成形法または圧縮成形法により製造した樹脂結合
型磁石に関する。
背景の技術 近年の電子機器の小型化、高効率化、多様化そして高
温下に曝される自動車用等における過酷な環境下での使
用の要求にともなって永久磁石はますます高性能化が求
められている。この要求に応えるべく永久磁石として希
土類磁石の開発が活発になされ、最近、R−Fe−B系合
金が優れた磁気特性を示す永久磁石材料として注目され
るようになってからその原料としてのR−Fe−B系合金
磁石粉末の開発が行われている。
特に、R−Fe−B系合金を水素吸蔵したのち脱水素処
理することによりR−Fe−B系合金磁石粉末を製造する
方法は、優れた磁気特性を有する磁石粉末の製造方法と
して注目されている。例えば、特開平1−132106号公報
に記載のR−Fe−B系合金磁石粉末がある。
このR−Fe−B系合金磁石粉末は、強磁性相であるR2
Fe14B型金属間化合物相(以下、R2Fe14B型相という。)
を主相とするR−Fe−B系合金のインゴットまたはその
インゴットの粉末を高温に加熱した水素雰囲気中に保持
して水素を吸蔵させ、引き続いて同高温度にて水素を排
気し、真空雰囲気下で脱水素処理することにより再び強
磁性相であるR2Fe14B型相を生成させたものである。こ
の結果得られたR−Fe−B系合金磁石粉末の組織は、平
均粒径0.05〜3μmの極めて微細なR2Fe14B型相の再結
晶組織を主相とした集合組織でを有し、かつ高い磁気特
性を有している。
しかしながら、上記の方法で製造されたR−Fe−B系
合金磁石粉末は優れた磁気特性を有するが、インゴット
の合金組成、結晶組織や粒径により、また均質化処理、
水素吸蔵および脱水素などの処理条件の微小な変動など
により、得られたR−Fe−B系合金磁石粉末の磁気異方
性が著しく低下したり、また磁気異方性にばらつきが生
じたりする。このような低下、ばらつきは工業的に量産
する場合には極めて不都合であるばかりでなく、工業化
には困難とされることになる。
この問題を解決するために、例えば、特開平3−1466
08号公報や特開平4−17604号公報にて磁気異方性のば
らつきが生ずる原因は、水素吸蔵処理が吸熱反応のため
に温度の低下変動差を生ずることによるものとして、イ
ンゴット等を保温作用を有する蓄熱材とともに加熱・水
素処理することを開示している。しかし、本開示に対し
ては、特開平5−163510号公報にてインゴットの全ての
面と蓄熱材と接触させることは困難であり、蓄熱材を入
れるために加熱処理炉を大きくせざるをえなくなり、さ
らにインゴットへの蓄熱材破片の付着混入があることな
どから磁気特性の低下をもたらす、などの課題を指摘し
ている。
一方、R−Fe−B系合金磁石のキュリー点(Tc)は一
般に300℃前後、最高370℃と温度特性が悪いため、特公
平3−19296号にてその改良が報告されている。
温度特性を改善する元素としてCoを含有した合金を微
粉砕により3〜10μmの粉末とし、ついで成形〜焼結し
た結果、焼結体永久磁石の温度特性の改善に結びつくキ
ュリー点の上昇と残留磁束密度の低下が見い出されてい
る。
しかし、R−Fe−B系合金にCoを含有すると、Co含有
量が増加すると保磁力iHcは低下する傾向にあり、その
改善が望まれていた。
また、近年の永久磁石の利用範囲としては焼結磁石に
対して樹脂結合型磁石が急激に増加している。その背景
としては、樹脂結合型磁石は、磁石粉末に有機系樹脂あ
るいは金属系樹脂とを結合させて製造するために同種類
の焼結磁石等に比べて磁気特性は劣っているが、機械的
性質が優れるために取扱いが容易であるとともに形状の
自由度が高い等の理由から、また磁気特性の優れた磁石
粉末の開発とあいまってその利用範囲は急速に拡がって
いるものといえる。
この樹脂結合型磁石の成形方法には圧縮成形法、押出
成形法および射出成形法がある。圧縮成形法は、一体成
形が難しく形状自由度は少ないが磁石粉末の充填率を80
〜90vol%まで高められるために磁気特性を高性能化で
きる。また、押出成形法は、磁石粉末の充填率は70〜75
%volとやや低下するものの磁気特性に優れかつ連続的
に製造できる特徴がある。一方、射出成形法は一体成形
でき、寸法精度・形状自由度が優れているものの磁石粉
末の量は生産性を高めるために60〜65%volに止まる。
したがって、磁気性能を高めることが困難なためにその
使用には限界があった。
しかし、磁気特性の優れた希土類磁石粉末を利用した
樹脂結合型磁石としては、Sm−Co系では、特開平2−15
3507号にて射出成形法による異方性磁石があり、磁石粉
末を初めに成形磁場より高い磁場で着磁するという粉末
着磁成形法で磁気特性を改善している。
Nd−Fe−B系では、特開平3−129702号にて圧縮成形
法による磁気的異方性および耐食性に優れた磁石があ
る。
一方、最近の希土類磁石の磁気特性の高性能化の研究
と資源問題からNd−Fe−B系の磁石に関する技術開示が
多くなされている。
しかし、優れた生産性とともに安定した品質を有する
Nd−Fe−B−Co系磁石粉末を用いた磁気異方性および温
度特性に優れたNd−Fe−B−Co系樹脂結合型磁石に関し
て、射出成形法または圧縮成形法により製造した樹脂結
合型磁石については何ら開示されていない。
本発明は、第1に磁気異方性の優れたR−Fe−B系合
金磁石粉末とともに、磁気特性のばらつきが少なく安定
した製造方法を提供することにある。第2に磁気異方性
に加えて温度特性も優れたR−Fe−B−Co系合金磁石粉
末および磁気特性のばらつきが少なく安定した製造方法
を提供することにある。第3に磁気異方性および温度特
性の優れたR−Fe−B−Co系樹脂結合型磁石を提供する
ことにある。
発明の開示 本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究し
た結果、次のような知見を得た。
磁気異方性を有するR−Fe−B系合金磁石粉末として
最大エネルギー積((BH)max)、保磁力(iHc)および
残留磁束密度(Br)からなる磁気特性が優れるとともに
特にばらつきが少なく安定した合金磁石粉末を得るため
に、また磁気的異方性を有するR−Fe−B−Co系合金磁
石粉末として最大エネルギー積((BH)max)、保磁力
(iHc)および残留磁束密度(Br)からなる磁気特性が
優れ、かつ温度特性にも優れるとともにばらつきが少な
く安定した合金磁石粉末を得るためには、R−Fe−B系
合金またはR−Fe−B−Co系合金を水素吸蔵したのち脱
水素処理することによりR−Fe−B系合金磁石粉末また
はR−Fe−B−Co系合金磁石粉末を製造する際の水素吸
蔵工程において、加圧した水素雰囲気で行うことにより
達成できることを見い出したのである。
以下に、発明の詳細について説明する。
(A)R−Fe−B系合金磁石粉末の製造方法 (1)R−Fe−B系合金 R−Fe−B系合金は、ベースとしてR−Fe−B合金か
らなりFeの一部をCo、Ni、V、Nb、Ta、Cu、Cr、Mn、T
i、Ga、Zrの一種または二種以上で置換してもよい。ま
た、Bの一部はN、P、S、C、Sn、Biの一種または二
種以上で置換してもよい。
(2)均質化処理 原料である上記R−Fe−B系合金はインゴットであ
る。このインゴットを不活性ガス雰囲気中で、温度800
〜1200℃に保持して均質化処理を行う。
この均質化処理の目的は、鋳造して得られたR−Fe−
B系合金インゴットはα−Fe相などの非平衡組織が析出
していることが多く、この非平衡組織は磁気特性を低下
させる原因となるので、水素吸蔵〜脱H2処理にさきだっ
て非平衡組織を消失させ、実質的に主相であるR2Fe14B
相からなる均質化処理インゴットを原料として用いるこ
とにより磁気特性を大幅に向上させることである。
均質化処理条件として、均質化処理の際の酸化を防止
するためにArガス等の不活性ガス雰囲気で加熱処理が必
要である。不活性ガス雰囲気の圧力としては、加圧下な
いし減圧下でもよいが、減圧下の場合はインゴットの表
面から組織を構成する元素が蒸発するまで減圧させては
ならない。蒸気圧の高い元素が蒸発することにより、組
織が局所的に変動するからである。また、加圧する場合
は設備・処理上から2〜3kgf/cm2でよい。
均質化処理温度としては800〜1200℃の範囲内であ
る。均質化処理温度が800℃より低いと均質化処理に長
時間を必要とするために、工業的生産性が悪い。一方、
1200℃を越えると上記のインゴットが溶融するので好ま
しくない。
(3)粗粉砕処理 上記均質化インゴットは粗粉砕により5〜10mmの大き
さからなる粗粉砕粒とする。この理由は、R−Fe−B系
合金磁石粉末を製造する過程における原料の酸化等の汚
染をできる限り少なくすることが最終的に得られるR−
Fe−B系合金磁石粉末の磁気特性を向上させ、工業的生
産における取扱いを容易ならしめるとともに後工程の水
素吸蔵〜脱水素処理の時間短縮化による工業的生産の改
善を図るものである。
すなわち、原料を粉末とすると粉末化の際の汚染とと
もに得られた粉末そのもの比表面積が大きくなることに
より容易に汚染されるからである。また、粉末での取扱
いは粗粉砕粒に比べて容易ではない。
他方、インゴットの場合は取扱は容易であり、汚染も
発生しないけれども後工程における水素吸蔵〜脱水素処
理時間に長時間を要するからである。
(4)水素吸蔵処理 次に、原料である上記の均質化処理した粗粉砕粒の組
織変化を生じさせてR−Fe−B系合金の優れた磁気特性
を有する再結晶組織とするために、加圧した水素雰囲気
中で、温度750〜950℃に保持し水素を吸蔵させる。
粗粉砕粒に水素を均一かつ安定して迅速に吸蔵させる
ためには水素ガスを加圧することが必要である。このこ
とにより、粗粉砕粒内における組織変化が迅速に進行す
るとともに粗粉砕粒が高温化にさらされる時間も短時間
化を図ることができる。水素ガスの加圧としては、好ま
しくは1.2〜1.6kgf/cm2が好ましい。1.2kgf/cm2未満で
は加圧の効果が現れない。一方、1.6kgf/cm2を越えると
工業的生産における安全性の問題が生ずるからである。
なお、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用した場
合は、水素ガス分圧として1.2〜1.6kgf/cm2が必要であ
る。
温度としては、750〜950℃である。750℃未満では上
記の組織変化が十分に行われず、950℃を越えると組織
変化が進行し過ぎて再結晶が粒成長をおこして保持力を
低下させるからである。
(5)脱水素処理 水素を吸蔵させた粗粉砕粒から、完全に脱水素を行う
ことにより高保磁力が得られる。この脱水素条件として
は、水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気になるま
で温度500〜800℃で脱水素処理を行う。
磁石粉末に残留した水素は磁束密度を低下させるので
水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気まで脱水素を
行うことが必要である。また、水素ガス圧力としたの
は、脱水素処理中における粗粉砕粒の酸化防止のためで
ある。
温度は500〜800℃としたのは、500℃未満では脱水素
が不十分となって磁石粉末中に水素が残留し、保磁力を
低下させるからである。一方、800℃を越えると再結晶
組織が粗大化して磁気特性が劣化する。
脱水素処理した粗粉砕粒は、すでに水素崩壊物として
組織変化して再結晶している微粉の集合体となって汚染
されやすい状態にあり、温度500〜800℃に保持されてい
る水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気から、酸化
等の汚染を防止するために常温まで急冷することにより
残留磁束密度の向上が図れる。
雰囲気としては加圧した不活性ガスを用いることによ
り冷却速度を高め、冷却途中における上記崩壊物への不
純物ガス成分の凝縮による汚染を防止するために50℃/m
in以上の速度で冷却することが好ましい。
(B)R−Fe−B−Co系合金磁石粉末の製造方法 (1)R−Fe−B−Co系合金 R−Fe−B系合金には通常のインゴット合金が使用さ
れる。この合金の成分組成は、原子百分率で、 R ; 12〜15 % B ; 5〜 8 % Co; 15〜23 % Ga;0.3〜 2.0% を含有し、残りがFeおよび不可避的不純物からなる。
さらに、上記合金に、 Mo;0.70%以下 V ;0.70%以下 Zr;0.70%以下 Ti;0.30%以下 の1種または2種以上を含有してもよい。
以下、各成分についての限定理由を示す。
Rは、Ndを含む希土類元素のうち1種または2種以上
であるが、特にNd単独またはNdとPr、Dyとの混合物が好
ましい。12%未満では保磁力が低下し、15%を越えて添
加すると残留磁束密度が低下する。
なお、Ndは好ましくは12.1〜13.0%の範囲である。
Bは、5%未満では保磁力が低下し、8%を越えると
残留磁束密度が低下する。さらに好ましくは、5.0〜7.0
%の範囲である。
Coは、キュリー点を改善するためには多く含有したほ
うが望ましいが、保磁力は低下するので少ないほうがよ
い。さらに、好ましくは19.5〜21.5%の範囲である。
Gaは、磁気的異方性および保磁力を向上させる元素で
あるが、0.3%未満ではその効果が得られず、2.0%を越
えると異方性、保磁力は低下する。さらに、好ましくは
1.5〜1.8%の範囲である。
Mo、V、Zrは、保磁力および最大エネルギー積を向上
させる元素であるが、0.70%を越えて含有しても保磁力
の効果は飽和し、最大エネルギー積および残留磁束密度
を低下させるので上限を0.70%とした。
Tiは、保磁力を向上させる元素であるが、残留磁束密
度を低下させる元素であるので含有量の上限を0.30%と
した。
(2)均質化処理および粗粉砕処理 均質化処理条件は、(A)R−Fe−B系合金と基本的
には同じ処理条件であるが、Co添加により均質化温度お
よび水素吸蔵処理のための粗粉砕塊の大きさが異なって
いる。
均質化処理温度としては1000〜1150℃の範囲内であ
る。均質化処理温度が1000℃より低いと均質化処理に長
時間を必要とするために、工業的生産性が悪い。一方、
1150℃を越えると上記のインゴットが溶融するので好ま
しくない。
上記均質化インゴットは粗粉砕により30mm以下の大き
さからなる粗粉砕塊とする。R−Fe−B−Co系合金磁石
粉末を製造する過程において原料の酸化等の汚染の防止
による磁気特性の向上と工業的生産の取扱い容易化・生
産性の改善のためである。
(3)水素吸蔵処理 原料である上記の均質化処理した粗粉砕塊の組織変化
を生じさせてR−Fe−B系合金の優れた磁気特性を有す
る再結晶組織とするために、加圧した水素ガス雰囲気中
で、温度780〜860℃に保持し水素を吸蔵させる。
粗粉砕塊に水素を均一かつ安定して迅速に吸蔵させる
ためには水素ガスを加圧することが必要である。このこ
とにより、粗粉砕塊内における組織変化が迅速に進行す
るとともに粗粉砕塊が高温化にさらされる時間の短縮化
を図ることができる。
水素ガスの加圧としては、1.1〜1.8kgf/cm2が望まし
い。1.1kgf/cm2未満では加圧の効果が少ない。一方、1.
8kgf/cm2を越えるとその効果が飽和してくるためであ
る。また、工業的生産における安全性の問題が生ずるか
らである。
なお、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを使用した
場合は、水素ガス分圧として上記の加圧した水素ガス雰
囲気の圧力、1.1〜1.8kgf/cm2が必要である。
温度としては、780〜860℃である。780℃未満では上
記の組織変化が十分に行われず、840℃を越えると組織
変化が進行し過ぎて再結晶が粒成長をおこして保磁力を
低下させるからである。
なお、室温から上記温度780〜860℃に加熱する途中の
雰囲気は、真空、Arガス等の不活性ガスあるいは水素ガ
スでもよい。
(4)脱水素処理 水素を吸蔵させた粗粉砕塊から、完全に脱水素を行う
ことにより高保磁力が得られる。この脱水素条件として
は、水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気になるま
で温度500〜860℃で脱水素処理を行う。
磁石粉末に残留した水素は残留磁束密度を低下させる
ので水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気まで脱水
素処理を行うことである。また、水素ガス圧力としたの
は、脱水素処理中における粗粉砕塊の酸化防止のためで
ある。
温度を500〜860℃としたのは、500℃未満では脱水素
が不十分となって磁石粉末中に水素が残留し、保磁力を
低下させるからである。一方、860℃を越えると再結晶
組織が粗大化して磁気特性が劣化する。
また、脱水素処理は500〜860℃の範囲内で所定の温度
で行ってもよいし、860℃以下の温度から温度を下げな
がらおこなってもよい。
脱水素処理した粗粉砕塊は、すでに水素崩壊物として
組織変化し、再結晶している微粉の集合体となって汚染
されやすい状態にあり、温度500〜860℃に保持されてい
る水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気から、酸化
等の汚染を防止するために常温まで急冷することにより
残留磁束密度の向上が図れる。
雰囲気としては加圧した水素ガス、あるいはアルゴン
ガス等の不活性ガスを用いることにより冷却速度を高め
ることができる。さらに、冷却途中における上記崩壊物
への不純物ガス成分の凝縮による汚染を防止するために
は30℃/min以上の速度で冷却することが好ましい。
(5)水素吸蔵処理および脱水素処理の装置(以下、本
発明装置という。) R−Fe−B系合金の水素吸蔵処理における発熱および
脱水素処理における吸熱にともなう温度の変動、水素ガ
ス流量および水素ガス圧力の変動を制御することが必要
である。これらの制御により磁気特性のばらつきが少な
く、工業的生産ができる。
粗粉砕粒または粗粉砕塊などの合金磁石原料を入れる
原料保持部は当該原料を分割して互いに離間して保持す
る複数個の反応管からなる。
複数個の反応管について、同一温度を維持するために
温度制御装置を備えた単一の加熱炉と、単一の水素ガス
供給装置系により所定のガス量を供給して所定の圧力を
維持すること、また複数個の反応管から水素ガスを排気
するための単一の真空ポンプ系とからなっている。さら
に、複数個の反応管は、その外部を不活性ガスにより冷
却することができる。
なお、本発明装置による工業的な水素吸蔵処理および
脱水素処理は、吸熱発熱反応をともなう希土類磁石合金
粉末の製造に使用でき、特に温度、水素ガス流量および
水素ガス圧力の1又は2以上を制御するときには必要と
なる。
(6)R−Fe−B−Co系合金磁石粉末 以上の工程により製造されたR−Fe−B−Co系合金磁
石粉末は、平均粒径0.05〜3μmの極めて微細なR2Fe14
B型強磁性相の再結晶組織を主相とした集合組織からな
っており、最大エネルギー積((BH)max)28.5MGOe以
上で好ましくは35MGOe以上、残留磁束密度(Br)10.8kG
以上で好ましくは12.5kG以上および保磁力(iHc)10.0k
Oe以上の優れた磁気特性とキュリー点(Tc)480℃以上
の優れた温度特性を有している。
(C)R−Fe−B−Co系樹脂結合型磁石 (1)射出成形法によるR−Fe−B−Co系樹脂結合型磁
石 R−Fe−Co−B系合金磁石粉末を60〜65vol%と有機
系樹脂または金属バインダーを35〜40vol%とを混練す
る。樹脂は、ナイロン12、ナイロン6などを用いる。混
練材を射出成形する際には、当該粉末の磁気特性が優れ
ているために粉末の配向が容易なことから成形磁場は15
kOe以下、好ましくは12kOe程度で射出成形をしてもよ
い。また、射出成形法の特徴を活かすために形状自由度
を改善することにより配向磁場を低くできる。
(2)圧縮成形法によるR−Fe−B−Co系樹脂結合型磁
石 R−Fe−Co−B系合金磁石粉末を80〜90vol%と熱硬
化系樹脂粉末10〜20vol%とを混合する。樹脂には、エ
ポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの粉末
を用いる。合金磁石粉末と樹脂粉末との混合粉末を120
℃以上に加熱し、好ましくは熱硬化性樹脂の最低粘度が
得られる温度に加熱して12kOe以上の磁場中で成形を行
う。加熱温度が高い場合には熱硬化反応が急速に進行す
るために合金磁石粉末の配向が不十分となり磁気特性の
低下を招き、加熱温度が低い場合には熱硬化反応および
合金磁石粉末の配向が不十分となり磁気特性の低下を招
くことになる。
図面の簡単な説明 図1は最大エネルギー積に及ぼす水素吸蔵処理時の加
圧水素ガス圧力と水素吸蔵処理温度の影響を示す。
図2は最大エネルギー積に及ぼす脱水素処理温度の影
響を示す。
図3は実施例3bおよび3cにおける装置の概念図であ
る。
図4は実施例3bおよび比較例における最大エネルギー
積のばらつきを示す。
発明を実施するための最良の形態 実施例 1 実施例1a 希土類としてNdを用い、プラズマアーク炉で溶解、鋳
造してNd−Fe−Co−B系合金の原子%組成でNd12.5Fe
69.0Co11.56.0Ga1.0を主成分とする希土類磁石合金イ
ンゴット1Aを作製した。上記インゴットをArガス雰囲気
中で粗粉砕(以下、粗粉砕工程という)して6〜8mm程
度の粗粉砕粒とし、この粗粉砕粒をボートにいれて管状
炉に装入し、真空度1x10-4Torr以下の真空に排気後、0.
8、1.0、1.2、1.4、1.6kgf/cm2の水素ガスを炉内に流入
し、それぞれのガス圧力を維持しながら保持温度を、60
0、700、750、800、850、900、950および1000℃にて3
時間保持し、水素ガスを吸蔵させる処理を行った。
次いで、水素ガス圧力5x10-5Torrの真空雰囲気になる
まで脱水素処理を800℃にて0.5時間かけて行った。その
後、1.2kgf/cm2のアルゴンガスにて常温まで約10分で常
温まで冷却した。以上の処理を通じて微粉末からなる集
合体(崩壊物)を乳鉢で解きほぐして平均粒径25〜250
μmの微粉末を得た。こうして得られた磁石粉末の磁気
特性を試験し、表1−1〜1−2に示した。その試験に
はVSM振動型磁束計を使用して測定した。
上記の表1−1〜1−2から1.2kgf/cm2以上に加圧し
た水素ガス雰囲気下で水素を吸蔵させることにより磁気
特性の向上が得られる。
実施例1b 希土類としてNdを用い、プラズマアーク炉で溶解、鋳
造してNd−Fe−Co−B系の原子%組成がNd12.5Fe67.0Co
11.56.0Ga3.0を主成分とする希土類磁石合金インゴッ
ト1Bを作製した。上記インゴットをアルゴンガス雰囲気
中で粗粉砕して6〜8mm程度の粗粉砕粒とし、この粗粉
砕粒をボートにいれて管状炉に装入し、真空度1x10-4To
rr以下の真空に排気後、1.2kgf/cm2の水素ガスを炉内に
流入し、ガス 圧力を維持しながら800℃にて3時間保持し、水素吸蔵
処理を行った。
次いで、水素ガス圧力を1.0、1x10-1、1x10-2、1x10
-3、1x10-4、1x10-5Torrの真空度の真空雰囲気になるま
で脱H2処理を800℃にて0.5時間かけて行った。その後、
1.2kgf/cm2のArガスにて常温まで約10分で常温まで冷却
した。以上の処理を通じて微粉末からなる集合体(崩壊
物)を乳鉢で解きほぐして平均粒径25〜250μmの微粉
末を得た。こうして得られた磁石粉末の磁気特性を試験
し、表1−3に示した。
これらの結果から、脱水素ガス圧力として1x10-4Torr
の真空度の真空雰囲気下で脱水素処理により磁気特性が
向上することわかる。
実施例1c 希土類としてNdを用い、プラズマアーク炉で溶解、鋳
造してNd−Fe−Co−B系の原子%組成がNd12.0Dy0.5Fe
70.0Co11.56.0を主成分とする希土類磁石合金インゴ
ットを作製した。
均質化処理温度600〜1300℃までの温度にてArガス雰
囲気中で20時間処理し、粗粉砕工程をへて5〜9mmの大
きさからなる粗粉砕粒として水素吸蔵処理に供した。
それぞれボートにいれた管状炉に装入し、真空度1x10
-4Torr以下の真空に排気後、1.2kgf/cm2の水素ガスを炉
内に流入し、ガス圧力を維持しながら800℃にて3時間
保持し、処理を行った。次いで、水素ガス圧力を1x10-5
Torrの真空雰囲気になるまで脱水素処理を800℃にて0.5
時間かけて行った。
その後、1.2kgf/cm2のアルゴンガスにて常温まで約10
分で常温まで冷却した。以下の処理を通じて微粉末から
なる集合体(崩壊物)を乳鉢で解きほぐして平均粒径25
〜250μmの微粉末を得た。こうして得られた磁石粉末
の磁気特性を試験し、表1−4に示した。
これらの結果から、均質化温度としては800〜1200℃
で均質化することにより磁気特性の向上が得られた。
実施例1d 希土類としてNdを用い、プラズマアーク炉で溶解、鋳
造してNd−Fe−Co−B系の原子%組成がNd12.5Fe69.0Co
11.56.0Ga1.0を主成分とする希土類磁石合金インゴッ
ト1Dを作製した。上記インゴットをアルゴンガス雰囲気
中で1100℃に20時間保持して均質化処理を行い、次いで
アルゴンガス雰囲気中で粗粉砕して5〜7mmの粗粉砕粒
を得た。この粗粉砕粒をボートにいれて管状炉に装入
し、真空度1x10-4Torr以下の真空に排気後、1.2kgf/cm2
の水素ガスを炉内に流入し、ガス圧力を維持しながら85
0℃にて3時間保持し、処理を行った。
次いで、水素ガス圧力を1x10-5Torrの真空雰囲気にな
るまで脱水素処理を800℃にて0.5時間かけて行った。そ
の後、1.2kgf/cm2のArガス雰囲気下で冷却速度を10〜10
0℃/minの5段階について試験した。
以上の処理を通じて微粉末からなる集合体(崩壊物)
を乳鉢で解きほぐして平均粒径25〜250μmの微粉末を
得た。こうして得られた磁石粉末の磁気特性を試験し、
表1−5に示した。
以上の結果から、加圧したArガス雰囲気下において50
℃/min以上の急速冷却することにより磁気特性が向上す
ることがわかる。
実施例 2 表2−1、表2−3および表2−6は、本発明の化学
組成、処理条件(均質化条件、水素吸蔵条件および脱水
素条件を総称していう。)および磁気特性・温度特性に
ついて示し、表2−2、表2−4、表2−5および表2
−7は、比較例の化学組成、処理条件および磁気特性・
温度特性を示す。
表2−1および表2−3において、2A1〜2A15は主と
して化学組成の影響について、2B1〜2B6は主として処理
条件の影響について調査し、その結果として得られた磁
気特性・温度特性を表2−6に示す。
同様に比較例についても、表2−2、表2−4および
表2−5において、2C1〜2C14は主として化学組成の影
響について、2D1〜2B10は主として処理条件の影響につ
いて調査し、その結果として得られた磁気特性・温度特
性を表2−7に示す。
希土類としてNdを用い、プラズマアーク炉で溶解、鋳
造して表2−1および表2−2に示すNd−Fe−B−Co系
の化学組成からなる希土類磁石合金インゴットを作製し
た。
上記インゴットをアルゴンガス雰囲気中で粗粉砕して
8〜15mm程度の粗粉砕塊とし、この粗粉砕塊をボートに
いれて管状炉に装入し、真空度1x10-4Torr以下の真空に
排気した。
その後、表2−4または表2−5に示す所定の加圧し
た水素ガスを炉 内に流入し、それぞれのガス圧力を維持しながら表2−
4または表2−5に示す保持温度にて0.5〜5.0時間保持
し、水素吸蔵処理を行った。
次いで、表2−4または表2−5に示す所定の温度に
おける真空雰囲気になるまで脱水素処理を0.5〜1.0時間
かけて行った。その後、1.2kgf/cm2のアルゴンガスにて
15〜30分間で常温まで冷却した。
以上の処理を通じて微粉末からなる集合体(崩壊物)
を乳鉢で解きほぐして平均粒径25〜420μmの粉末を得
た。
こうして得られた合金磁石粉末の磁気特性および温度
特性について試験した結果を表2−6および2−7に示
す。磁気特性の試験方法は、直径4.0mm、高さ2.5mmのア
ルミパンに得られた合金磁石粉末とパラフィンとの混合
物を入れて磁場配向し、固化させた後にVSM振動型磁束
計を使用して測定した。
また、温度特性の試験方法は、アルミナ製容器に得ら
れた合金磁石を入れて振動型磁束計を使用して測定し
た。
本発明の実施例である表2−6から、Nd−Fe−B−Co
系合金磁石粉末はいずれも最大エネルギー積((BH)ma
x)、残留磁束密度(Br)および保磁力(iHc)からなる
磁気特性は優れており、また温度特性も高いキュリー点
(Tc)が得られている。
表2−6に示すように、Coを20%含有し、BおよびGa
を複合添加した試料2A1〜2A6の合金磁石粉末の製造にお
いて上記に示す処理条件(表2−3)にて、製造するこ
とにより、Co添加にともなうキュリー点の改善と相反す
る保磁力の低下防止を可能とし、優れた磁気特性を達成
したものである。
さらに、試料2A7〜2A15は、Nd−Fe−B−Co合金にM
o、V、TiおよびZrの添加の影響を調査したものであ
る。これらの添加により保磁力が一層の改善され、10.8
〜12.8kOeが得られている。
また、試料2B1〜2B6は、均質化処理における保持温
度、水素吸蔵処理における保持温度、時間およびガス圧
力、ならびに脱水素処理における保持温度、時間および
ガス圧力の影響を調査したものである。いずれの条件下
においても優れた磁気特性とともに温度特性が達成され
ている。
次に、本発明の比較例について説明する。
表2−2に示す試料2C1〜2C13は、処理条件(表2−
4中の試料2C1〜2C13)を本発明の条件として化学組成
の影響について調査したものである。その結果、得られ
た磁気特性および温度特性は表2−7(試料2C1〜2C1
3)に示す。
試料2C1は、Ndが少ないために保磁力が3.0kOeと低下
しており、試料2C2はCoが少ないためにキュリー点が400
℃と低い。
試料2C3は、Coが多いためキュリー点は560℃と改善さ
れるものの保磁力は4.0kOeと低下している。試料2C4
は、CoおよびBが少なく、Gaが多いことにより保磁力は
8.0kOeと、キュリー点は420℃と低下している。試料2C5
は、Bが多いために残留磁束密度が9.0kGと低い。
試料2C7は、Gaが添加されていないために保磁力は6.7
kOeと改善されていない。試料2C8は、Bが少ないために
保磁力が3.8kOeと低く、試料C8は、Gaが多いことにより
保磁力が5.0kOeと低下している。試料2C10は、Ndおよび
Gaが多いために残留磁束密度は9.5kGと、および保磁力
が7.5kOeと低下している。
試料2C11はMoが多いために、試料2C12はVが多いため
に、試料2C13はZrが多いために、そして試料C13はTiが
多いために保磁力はそれぞれ改善されて11.0〜14.0kOe
の値が得られているが、残留磁束密度は8.0〜10.5kGと
低下している。
また、処理条件については、表2−2(表2−2中の
試料2D1〜2D10)に示す試料2D1〜2D10は本発明の化学組
成として、表2−5に示す処理条件にて調査した。その
結果、得られた磁気特性および温度特性は表2−7(試
料2D1〜2D10)に示す。
試料2D1は、均質化処理温度が高いために保磁力は2.0
kOeと、残留磁束密度は8.0kGと低下している。
試料2D2は、水素吸蔵処理における保持温度が高く、
他方試料2D3は水素ガス吸蔵処理における保持温度が低
いことにより保磁力が7.0および4.0kOeといずれも低く
なっている。試料2D4は、水素吸蔵処理における保持温
度が低く、脱水素処理におけるガス圧力が高いために、
保磁力は5.0kOeおよび残留磁束密度は11.0kGと低い。
試料2D5は、均質化処理温度が低いために保磁力が3.0
kOeと低く、残留磁束密度も8.5kGと低い。試料2D6は、
水素吸蔵処理および脱水素処理における保持温度が高い
ことにより保磁力が2.0kOeと低く、残留磁束密度も7.8k
Gと低い。
試料2D7は、水素吸蔵処理におけるガス圧力が低いた
めに、保磁力は4.8kOeと低く、残留磁束密度も9.3kGと
低い。試料2D8は、水素吸蔵処理におけるガス圧力を高
めるとともに試料D6より水素吸蔵処理および脱水素処理
における保持温度が高くしているため、保磁力は3.5kOe
と低く、残留磁束密度も8.5kGと低い。
試料2D9は、脱水素処理における保持温度が低いため
に、保磁力が8.0kOeと低い。試料2D10は、脱水素処理に
おけるガス圧力が高いために、すなわち真空雰囲気が悪
いために保磁力は7.0kOeと低く、残留磁束密度も9.8kG
と低い。
実施例 3 本発明装置による試験条件を特定するために、実施例
3aに予備試験を示し、実施例3bで本試験をしめす。
実施例3a プラズマアーク炉で溶解、鋳造してNd−Fe−Co−B系
合金の原子%組成でNd12.3Fe60.1Co19.86.0Ga1.8を主
成分とする希土類磁石合金インゴットを作製した。上記
インゴットをアルゴンガス雰囲気中で1100℃に40時間保
持して均質化処理を行い、次いでアルゴンガス雰囲気中
で粗粉砕して5〜18mmの粗粉砕塊を得た。この粗粉砕塊
をボートにいれた管状炉に装入し、真空度1x10-5Torr以
下の真空に排気後、1.2〜2.6kgf/cm2の水素ガスを炉内
に流入し、それぞれのガス圧力を維持しながら保持温度
を、700〜900℃にて3時間保持し、水素吸蔵処理を行っ
た。次いで、水素ガス圧力5x10-5Torrの真空雰囲気にな
るまで脱水素処理を700〜900℃にて0.5時間かけて行っ
た。その後、1.2kgf/cm2のアルゴンガスにて常温まで約
10分で常温まで冷却した。以上の処理を通じて粉末から
なる集合体(崩壊物)を乳鉢で解きほぐして平均粒径74
〜105μmの粉末を得た。こうして得られた磁石粉末の
最大エネルギー積((BH)max)を測定し、その結果を
図1〜2に示した。その測定には実施例2と同様に振動
型磁束計を使用した。
図1より、最大エネルギー積((BH)max)は水素吸
蔵処理温度と水素吸蔵処理における水素ガス圧力とに大
きく依存し、その磁気特性の優れた領域は狭い。また、
図2より、最大エネルギー積((BH)max)は脱水素処
理温度にも敏感である。したがって、量産における水素
吸蔵処理時の温度および水素ガス圧力と脱水素処理時の
温度の制御が重要である。
実施例3b Nd−Fe−Co−B系合金の原子%組成でNd12.3Fe60.1Co
19.86.0Ga1.8を主成分とする希土類磁石合金インゴッ
トを真空誘導溶解炉を用いて5kgインゴットを4本作製
した。上記インゴットをアルゴンガス雰囲気中で1100℃
に40時間保持して均質化処理を行い、次いでアルゴンガ
ス雰囲気中で粗粉砕して10〜30mmの粗粉砕塊を得た。こ
の粗粉砕塊を図3に示す本発明装置の各反応管に約1kg
づつ入れて加熱炉に装入した。真空度1x10-4Torr以下の
真空に排気後、1.3kgf/cm2の水素ガスを管内に流入し、
ガス圧力を維持しながら800℃にて5時間保持し、水素
吸蔵処理を行った。
次いで、水素ガス圧力を1x10-5Torrの真空雰囲気にな
るまで脱水素処理を800℃にて1.0時間かけて行った。そ
の後、1.2kgf/cm2のArガス雰囲気下で80℃/minにて冷却
した。
各反応管からそれぞれ5個の試料をサンプリングして
粉末からなる集合体(崩壊物)を乳鉢で解きほぐして平
均粒径25〜250μmの粉末を得た。最大エネルギー積を
測定し、図4に示した。なお、試験方法は実施例3aと同
一条件で行った。
比較例は、本発明で試験したのと同一組成の粗粉末塊
を用いた。同量の約7kgを1本の耐熱性ステンレス鋼か
らなる管状炉にいれて水素吸蔵および脱水素を行った。
これらの処理条件は本発明と同一とした。
管状炉からランダムに35個の試料をサンプリングして
粉末からなる集合体(崩壊物)を乳鉢で解きほぐして平
均粒径25〜250μmの粉末を得た。最大エネルギー積を
測定し、本発明の結果と対比するために図4に示した。
なお、試験方法は実施例3aと同一条件で行った。
図2から、本発明で得られた合金磁石粉末の最大エネ
ルギー積((BH)max)の平均値は38.2MGOeに達し、そ
のばらつきの範囲は36〜40MGOeと狭い。一方、比較例で
はその平均値は32.7MGOeにとどまり、そのばらつきの範
囲は27〜40と広い。
実施例3c 表3−1に本発明の化学組成を、表3−2にその磁気
特性および温度特性を示す。真空誘導溶解炉を用いて10
kgづつ溶解、鋳造して希土類磁石合金インゴット3A〜3E
を作製した。上記インゴットをアルゴンガス雰囲気中で
1100℃に40時間保持して均質化処理を行い、次いでアル
ゴンガス雰囲気中で粗粉砕して10〜30mmの粗粉砕塊を得
た。この粗粉砕塊を図1に示す本発明装置の各反応管に
約1kgづつ入れて加熱炉に装入した。真空度1x10-4Torr
以下の真空に排気後、1.3kgf/cm2の水素ガスを管内に流
入し、ガス圧力を維持しながら800℃にて5時間保持
し、水素吸蔵処理を行った。
次いで、水素ガス圧力を1x10-5Torrの真空雰囲気にな
るまで脱水素処理を800℃にて1.0時間かけて行った。そ
の後、1.2kgf/cm2のアルゴンガス雰囲気下で80℃/minに
て冷却した。
表3−2より、最大エネルギー積((BH)max)は35M
GOe以上、残留磁束密度(Br)は12.5kG以上、保磁力(i
Hc)は10kOe以上の優れた磁気特性とキュリー点(Tc)
は480℃以上の優れた温度特性を示すことがわかる。
実施例4 樹脂結合型磁石の実施例について、はじめに実施例4a
にて射出成形法を説明し、次に4bにて圧縮成形法を説明
する。両者の成形に使用する合金磁石粉末の製造は実施
例4aにてまとめて説明する。
実施例4a 本発明例(試料4A〜4E)および比較例(試料4F〜4H)
の希土類合金磁石粉末に係わる化学組成を表4−1に、
化学組成4A〜4Hを有する合金インゴットから希土類合金
磁石粉末を製造するときの処理条件(均質化条件、水素
吸蔵条件および脱水素条件を総称していう。)について
本発明の処理条件および比較処理条件を表4−2に示
す。従って、表4−3に示す射出成形法により作製した
樹脂結合型磁石の磁気特性および温度特性の結果につい
ては、試料4A1〜4A3、4B1、4C1、4D1および4E1が本発明
例に関する結果であり、試料4A4、4C2、4E2、4F1、4G1
および4H1が比較例に関する結果である。
Nd−Fe−B−Co系の化学組成からなる希土類磁石合金
をプラズマアーク炉で溶解、鋳造して表4−1に示すイ
ンゴットを作製した。このインゴットをArガス雰囲気下
で1080℃、40時間の均質化処理を行った。
次いで、上記インゴットをアルゴンガス雰囲気中で粗
粉砕して8〜15mm程度の粗粉砕塊とし、この粗粉砕塊を
本発明装置に装入し、真空度1x10-4Torr以下の真空に排
気した。
その後、表4−2に示す所定の加圧した水素ガスを炉
内に流入し、それぞれのガス圧力を維持しながら表2に
示す保持温度にて3.0〜5.0時間保持し、水素を吸蔵させ
る処理を行った。
次いで、表4−2に示す所定の温度における真空雰囲
気になるまで脱水素処理を0.5〜1.5時間かけて行った。
その後、1.2kgf/cm2のArガスにて15〜30分間で常温まで
冷却した。
以上の処理を通じて粉末からなる集合体(崩壊物)を
乳鉢で解きほぐして平均粒径44〜300μmの粉末を得
た。
こうして得られた表4−2に示す試料4A1〜H1の13種
類の合金磁石粉末をそれぞれ混練機によるコンパウンド
処理を施し、射出成形機により成形した。
はじめに、合金磁石粉末を60vol%とし、結合剤はナ
イロン12、カップリング剤はシラン系、そして潤滑剤に
はステアリン酸亜鉛を用いて混練してコンパウンドを作
った。
次に射出成形を行った。成形温度は265℃、金型温度
は85℃、成形圧力は85kgf/cm2の条件で行った。成形時
の配向磁場の強さは11kOeであった。なお、成形体の形
状は、10×10×8mmの直方体である。
成形体は、空心コイル中で45kOeの着磁磁場にて着磁
した。
着磁して得られた樹脂結合型磁石について、磁気特性
および温度特性を測定した結果を表4−3に示す。
温度特性については、αはBrの温度係数を、βはiHc
の温度係数をそれぞれ測定して示している。
表4−3の本発明例および比較例から、本発明による
樹脂結合型磁石は磁気特性および温度特性が優れている
ことがわかる。
ここで表4−2に示す試料4F1、4G1および4H1は、処
理条件を本発明の条件として化学組成の影響について調
査したものである。その結果、得られた磁気特性および
温度特性は表4−3(試料4F1、4 G1および4H1)に示す。
試料4F1は、Ndが多いために残留磁束密度が6.6kGと低
下しており、G1はBが多いために残留磁束密度が6.0kG
と低い。試料4H1は、Gaが少ないために最大エネルギー
積、残留磁束密度および保磁力bHcが全て低い。
試料4A4は、水素吸蔵処理のための水素ガス圧力が低
いために最大エネルギー積が低い。試料4C2は、水素吸
蔵処理のための保持温度が高いために最大エネルギー積
と保磁力が低い。試料4E2は脱水素処理のガス圧力が高
いために最大エネルギー積と保磁力が低い。
また、表4−2は従来例について示す。
はじめにSm−Co系異方性樹脂結合型磁石を射出成形法
により作製した。Sm2Co17粉末を60vol%と結合剤として
ナイロン12、カップリング剤はシラン系、そして潤滑剤
にはステアリン酸亜鉛を用いて混練してコンパウンドを
作った。このコンパウンドを、成形磁場15kOeで射出成
形した。成形温度は260℃、金型温度は80℃、成形圧力
は65kgf/cm2の条件により試料4K1を作製した。成形体の
形状は、10×10×8mmの直方体である。
次に、Nd−Fe−B系等方性樹脂結合型磁石を射出成形
法により作製した。Nd14Fe80B6の組成の粉末は、メルト
スピニング法によりフレーク状の磁石を作り、32メッシ
ュ以下に粉砕した。こうして得られた磁石粉末60vol%
と結合剤としてナイロン12、カップリング剤はシラン
系、そして潤滑剤にはステアリン酸亜鉛を用いて混練し
てコンパウンドを作った。このコンパウンドを、成形磁
場15kOeで射出成形した。成形温度は280℃、金型温度は
85℃、成形圧力は65kgf/cm2の条件により試料4K2を作製
した。成形体の形状は、10×10×8mmの直方体である。
これらの成形体を空心コイル中で45kOeの磁場で着磁
した。
こうして得られた樹脂結合型磁石の磁気特性および温
度特性の測定結果を表4−4に示す。
試料4K1および4K2は、ともに本発明例に比べて最大エ
ネルギー((BH)max)が低い。
実施例4b 表4−2に示す試料4A1〜4H1の13種類の合金磁石粉末
と樹脂粉末を混合し加熱圧縮成形した。
はじめに、合金磁石粉末を83vol%とし、結合剤はエ
ポキシ樹脂エピコート1004(油化シェルエポキシ社
製)、硬化剤、硬化促進剤およびシラン系カップリング
剤を17vol%混合した。
次に圧縮成形を行った。成形温度は160℃、成形圧力
は7.5ton/cm2の条件で行った。成形時の配向磁場の強さ
は15kOeであった。なお、成形体の形状は、10×10×8mm
の直方体である。
成形体は、空心コイル中で45kOeの着磁磁場にて着磁
した。
着磁して得られた樹脂結合型磁石について、磁気特性
および温度特性を測定した結果を表4−5に示す。
温度特性については、αはBrの温度係数を、βはiHc
の温度係数をそれぞれ測定して示している。
表4−5の本発明例および比較例から、本発明による
樹脂結合型磁石は磁気特性および温度特性が優れている
ことがわかる。
次に、本発明の比較例について説明する。
表4−2に示す試料4F1、4G1および4H1は、処理条件
を本発明の条件として化学組成の影響について調査した
ものである。その結果、得られた磁気特性および温度特
性は表4−5に示す。
試料4F11は、Ndが多いために残留磁束密度が7.3kGと
低下しており、試料4G11はBが多いために残留磁束密度
が6.7kGと低い。試料4H11は、Gaが少ないために最大エ
ネルギー積、残留磁束密度および保磁力(bHc)の全て
が低い。
試料4A41は、水素吸蔵処理のための水素ガス圧力が低
いために最大エネルギー積が低い。試料4C21は、水素吸
蔵処理のための保持温度が高いために最大エネルギー積
と保磁力が低い。試料4E21は脱水素処理のガス圧力が高
いために最大エネルギー積と保磁力が低い。
フロントページの続き 早期審査対象出願 (72)発明者 杉浦 好宣 愛知県半田市鴉根町2丁目115番地の8 (56)参考文献 特開 平3−146608(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子百分率でNd;12.1〜13.0%、B;5.0〜7.
    0%、Co;19.0〜21.5%、Ga;1.5〜1.8%を含有し、残り
    がFeおよび不可避的な不純物からなるNd−Fe−B−Co系
    合金のインゴットを、不活性ガス雰囲気中で、温度1000
    〜1150℃に保持して均質化処理させた後、当該均質化処
    理インゴットを粗粉砕して得られた粗粉砕塊を、複数個
    の反応管にそれぞれ分配して入れ、これら複数個の反応
    管を同時にまとめて加熱する多芯管炉にて1.2〜1.6kgf/
    cm2に加圧した水素ガス雰囲気中で、これら複数個の反
    応管を同時に温度780〜860℃に保持して上記粗粉砕粒に
    水素ガスを吸蔵させた後、これら複数個の反応管を同時
    に水素ガス圧力1x10-4Torr以下の真空雰囲気になるまで
    温度500〜860℃で脱水素処理し、ついでこれら複数個の
    反応管を同時に急冷することを特徴とする磁気異方性お
    よび温度特性に優れたNd−Fe−B−Co系合金磁石粉末の
    製造方法。
  2. 【請求項2】複数個の反応管は単一の加熱炉内に配置さ
    れ、かつ単一の水素ガス供給系により水素ガス圧が管理
    される請求項1に記載のNd−Fe−B−Co系合金磁石粉末
    の製造方法。
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